IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知製鋼株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-永久磁石型ステータ 図1
  • 特開-永久磁石型ステータ 図2
  • 特開-永久磁石型ステータ 図3
  • 特開-永久磁石型ステータ 図4
  • 特開-永久磁石型ステータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042220
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】永久磁石型ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/17 20060101AFI20230317BHJP
   H02K 1/12 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H02K1/17
H02K1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149409
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔梧
(72)【発明者】
【氏名】萱野 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】金 忠植
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601BB18
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H622AA00
5H622CA01
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
(57)【要約】
【課題】 電動モータの大型化及び質量の増大を抑制しつつ、磁気飽和の発生を抑制可能な永久磁石型ステータの一例を開示する。
【解決手段】 ヨーク22は、磁極境界に対応する部位に強磁性材料製の凸部23(ヨークピース22B)を有し、ヨーク22のうち凸部23が設けられた部位の径方向寸法が当該部位以外の径方向寸法に比べて大きい。これにより、当該ステータ20によれば、ヨーク22のうち磁極境界に対応する部位の断面積が大きくなるので、磁極境界付近において、磁束密度が緩和され、磁気飽和が発生することが抑制される。さらに、ヨーク22のうち磁極境界に対応する部位以外には、凸部23に相当する部位が設けられていないので、ヨーク22全体の大型化及び質量の増加が抑制される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータに用いられる永久磁石型ステータにおいて、
永久磁石の外周を囲む筒状のヨークであって、強磁性材料にて構成されたヨークと、
前記ヨークのうち前記永久磁石の磁極境界に対応する部位に設けられた凸部であって、強磁性材料にて構成された凸部とを備え、
前記ヨークのうち前記凸部が設けられた部位の径方向寸法は、当該部位以外の径方向寸法に比べて大きい永久磁石型ステータ。
【請求項2】
前記ヨークは、円筒状のヨーク本体及び前記凸部を構成するヨークピースを有して構成されている請求項1に記載の永久磁石型ステータ。
【請求項3】
前記ヨークピースは、前記ヨーク本体より透磁率が大きい材料にて構成されている請求項2に記載の永久磁石型ステータ。
【請求項4】
前記ヨークピースは、前記ヨーク本体と同一の材料にて構成されている請求項2に記載の永久磁石型ステータ。
【請求項5】
前記ヨークピースは、前記ヨーク本体の外周側に配置されている請求項2ないし4のいずれか1項に記載の永久磁石型ステータ。
【請求項6】
前記ヨークを外周側から覆うとともに、当該ヨークと一体化された樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングとの一体成形品である固定用フランジ部と
を備える請求項1ないし5のいずれか1項に記載の永久磁石型ステータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の永久磁石型ステータと、
前記永久磁石型ステータ内で回転するロータと
を備える電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータに用いられる永久磁石型ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石型ステータは、例えば、特許文献1に示されるように、永久磁石及び強磁性材料にて構成されたヨーク等を少なくとも備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-27261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヨークは、永久磁石に発生した磁束の経路を構成する継鉄である。このため、ヨークの断面積が小さいと、当該ヨークにて磁気飽和してしまうので、大きな磁束を発生させることができない。
【0005】
したがって、ヨークの断面積は、磁気飽和が発生しない大きな断面積とすることが望ましい。しかし、ヨークの断面積が大きくなると、電動モータの大型化及び質量の増大を招いてしまう。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、電動モータの大型化及び質量の増大を抑制しつつ、磁気飽和の発生を抑制可能な永久磁石型ステータの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、「特に、磁極境界(Mb)付近において磁束密度が大きくなることから、磁極境界(Mb)付近において磁気飽和が発生し易い」ことを発見した。そして、本件は、当該発見に着目してなされたものである。
【0008】
すなわち、電動モータに用いられる永久磁石型ステータは、例えば、永久磁石の外周を囲む筒状のヨーク(22)であって、強磁性材料にて構成されたヨーク(22)と、ヨーク(22)のうち永久磁石(21)の磁極境界(Mb)に対応する部位に設けられた凸部(23)であって、強磁性材料にて構成された凸部(23)とを備え、ヨーク(22)のうち凸部(23)が設けられた部位の径方向寸法(T1)は、当該部位以外の径方向寸法(T2)に比べて大きいことが望ましい。
【0009】
これにより、当該永久磁石型ステータによれば、ヨーク(22)のうち磁極境界(Mb)に対応する部位の断面積が大きくなるので、磁極境界(Mb)付近において磁気飽和が発生することが抑制され得る。
【0010】
さらに、磁極境界(Mb)に対応する部位以外には、凸部(23)に相当する部位が設けられていないので、ヨーク(22)全体の大型化及び質量の増加が抑制される。延いては、当該永久磁石型ステータであれば、電動モータの大型化及び質量の増大を抑制しつつ、磁気飽和の発生を抑制することが可能となり得る。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る電動モータを示す図である。
図2】第1実施形態に係るステータ等を示す図である。
図3】第1実施形態に係るステータを示す図である。
図4】従来のステータにおける磁束密度の分布を示す図である。
図5】第1実施形態に係るステータにおける磁束密度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0014】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された電動モータは、少なくとも符号が付されて説明された構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.電動モータの概要>
本実施形態は、ワイパー駆動装置やパワーウインドウ装置等の車両用アクチュエータに適用される電動モータに本開示に係る電動モータの一例が適用されたものである。当該電動モータ10は、図1に示されるように、永久磁石型ステータ(以下、ステータという。)20、ロータ30及びハウジング40等を有して構成されている。
【0017】
ハウジング40は、略円筒状に構成されたステータ20(図2参照)の少なくとも外周側を覆う樹脂製のケーシングである。当該ハウジング40には、フランジ部41が設けられている。フランジ部41は、電動モータ10を減速機ハウジング(図示せず。)に固定するための固定部である。
【0018】
このため、フランジ部41には、固定用ボルト(図示せず。)が挿入される挿入穴42が少なくとも1つ(本実施形態では、複数)設けられている。なお、当該フランジ部41は、円筒状のハウジング40と共に樹脂にて一体成形された一体成形部である。
【0019】
ロータ30は、ステータ20内で回転する回転子である。ロータ30は、コア部31、ロータ軸32及びコイル部(図示せず。)等を有する。なお、コア部31は、ロータ軸32の軸線方向と平行な方向に積層された多数枚の電磁鋼板にて構成されている。
【0020】
<2.ステータの構成>
ステータ20は、図3に示されるように、マグネット部21及びヨーク22等を少なくとも備える。マグネット部21は、円筒状又はリング状に形成された永久磁石にて構成されている。
【0021】
当該マグネット部21には、円周方向に沿って複数の磁極境界Mbが存在する。なお、図3の二点鎖線が磁極境界Mbである。つまり、円周方向において隣り合う磁極境界Mb間を、仮に、1つの永久磁石とみなすと、マグネット部21は、当該仮想の永久磁石(以下、仮想磁石という。)が円周方向に沿って複数(図3では、4つ)並べられた構造に等しい。
【0022】
因みに、当該仮想磁石のN極又はS極は、マグネット部21の内周面又は外周面に存在し、かつ、各仮想磁石のN極及びS極は、円周方向に沿って交番している。つまり、特定の仮想磁石の外周面がN極の場合、その特定の仮想磁石の内周面、及び隣合う2つの仮想磁石の外周面は、S極である。
【0023】
ヨーク22は、マグネット部21の外周を囲むように略円筒状に形成された強磁性材料製の部材である。当該ヨーク22は、マグネット部21で発生した磁束を誘導する継鉄を構成する。
【0024】
ヨーク22のうち磁極境界Mbに対応する部位には、強磁性材料にて構成された凸部23が設けられている。このため、ヨーク22のうち凸部23が設けられた部位の径方向寸法T1は、当該部位以外の径方向寸法T2に比べて大きくなっている。
【0025】
換言すれば、本実施形態に係るヨーク22は、円筒状のヨーク本体22A及び凸部23を構成するヨークピース22Bを有して構成されている。そして、ヨークピース22B、つまり凸部23は、ヨーク本体22Aの外周側に配置されている。
【0026】
本実施形態に係るヨークピース22Bは、ヨーク本体22Aと別部材であって、かつ、ヨーク本体22Aより透磁率が大きい材料にて構成されている。そして、ヨーク本体22A及びヨークピース22Bは、ハウジング40の成形時にインサート成形法により、ハウジング40と共に一体化されている。
【0027】
つまり、ヨーク本体22A及びヨークピース22Bは、ハウジング40が成形される際に、当該ハウジング40の成形用金型のキャビティ内に配置される。そして、当該状態で溶融状態の樹脂がキャビティ内に注入されることにより、ヨーク本体22A及びヨークピース22Bが当該樹脂にて固定される。
【0028】
<3.本実施形態に係る電動モータ(特に、ステータ)の特徴>
従来のステータ、つまり凸部23が設けられていないステータでは、図4に示されるように、磁極境界Mb付近において磁束密度が大きくなる。つまり、磁束線は、N極から出てS極に入る、つまりdivB=0である。このため、従来のステータでは、磁極境界Mb付近において磁気飽和が発生し易い。
【0029】
これに対して、本実施形態に係るヨーク22では、磁極境界Mbに対応する部位に強磁性材料製の凸部23、つまりヨークピース22Bが設けられ、ヨーク22のうち凸部23が設けられた部位の径方向寸法T1が当該部位以外の径方向寸法T2に比べて大きい。
【0030】
これにより、当該ステータ20によれば、ヨーク22のうち磁極境界Mbに対応する部位の断面積が大きくなるので、図5に示されるように、磁極境界Mb付近において、磁束密度が緩和され、磁気飽和が発生することが抑制される。
【0031】
さらに、ヨーク22のうち磁極境界Mbに対応する部位以外には、凸部23に相当する部位が設けられていないので、ヨーク22全体の大型化及び質量の増加が抑制される。延いては、当該ステータ20であれば、電動モータ10の大型化及び質量の増大を抑制しつつ、磁気飽和の発生を抑制して電動モータ10の出力を向上させることが可能となり得る。
【0032】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ヨークピース22Bは、ヨーク本体22Aと別部材であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ヨークピース22Bがヨーク本体22Aと同一の材料にて一体成形された構成、又はヨークピース22Bがヨーク本体22Aと同一材料にて別部材とされた構成であってもよい。
【0033】
上述の実施形態では、ヨーク22のうち凸部23が設けられた部位の径方向寸法T1は一定であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ヨーク22のうち凸部23が設けられた部位は、径方向寸法が徐々に変化するような山形状の滑らかな凸形状であってもよい。なお、当該構成においては、磁極境界Mb付近が最大の径方向寸法となるような形状であることが望ましい。
【0034】
上述の実施形態では、ヨークピース22Bがヨーク本体22Aの外周側に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ヨークピース22Bがヨーク本体22Aの内周側に設けられた構成であってもよい。
【0035】
上述の実施形態に係る電動モータは、車両用アクチュエータに適用される電動モータであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、その他の電動モータにも適用可能である。
【0036】
上述の実施形態に係るマグネット部21は、環状又は円筒状に構成された1つの永久磁石において、複数の磁極境界Mbが存在するものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0037】
すなわち、当該開示は、例えば、複数の永久磁石が円周状に配置されてマグネット部が構成されたものであってもよい。なお、当該構成では、隣り合う永久磁石と境界が磁極境界Mbとなる。
【0038】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10… 電動モータ
20… ステータ
21… マグネット部
22… ヨーク
22A… ヨーク本体
22B… ヨークピース
23… 凸部
30… ロータ
図1
図2
図3
図4
図5