(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042231
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】水蒸気選択透過性膜、水蒸気選択透過性膜の製造方法、車載用ランプ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20230317BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230317BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230317BHJP
F21S 41/141 20180101ALI20230317BHJP
F21S 45/30 20180101ALI20230317BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20230317BHJP
F21V 31/03 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/30 D
B32B27/00 M
F21S41/141
F21S45/30
F21S45/10
F21V31/03 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149421
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005407
【氏名又は名称】AGCエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】尾関 義一
【テーマコード(参考)】
3K014
4F100
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA09
4F100AD11B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK17A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CB00B
4F100CB05D
4F100DG01B
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100GB32
4F100JD04A
4F100JL11B
4F100JL13D
(57)【要約】
【課題】膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい水蒸気選択透過性膜及びその製造方法;並びに前記水蒸気選択透過性膜を備えた車載用ランプの提供。
【解決手段】イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層2と、水蒸気選択透過性層2と接し、かつ、不織布を含む不織布層3とを備える積層体からなることを特徴とする水蒸気選択透過性膜P1;イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の表面に、接着性ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液を塗布して塗布層を形成し、次いで、塗布層の表面に不織布を積層し、塗布層中に含まれる溶媒を除去する、水蒸気選択透過性膜の製造方法;及び水蒸気選択透過性膜を備えた、車載用ランプ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層と、
前記水蒸気選択透過性層と接し、かつ、不織布を含む不織布層と、
を備える積層体からなることを特徴とする、水蒸気選択透過性膜。
【請求項2】
前記不織布層が、前記不織布内の空隙に接着性ポリマーを含む接着層を有し、
前記接着層が、前記水蒸気選択透過性層と接する、請求項1に記載の水蒸気選択透過性膜。
【請求項3】
前記不織布層が、前記不織布内の空隙に接着性ポリマーを含まない外層をさらに有する、請求項2に記載の水蒸気選択透過性膜。
【請求項4】
イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の内部に、不織布を含む層が含まれており、前記不織布内の空隙には前記含フッ素ポリマーが充填されていることを特徴とする、水蒸気選択透過性膜。
【請求項5】
前記水蒸気選択透過性層の少なくとも一方の面に、不織布からなる外層及び不織布内の空隙に前記含フッ素ポリマーを含む外層のいずれか一方又は両方を有する、請求項4に記載の水蒸気選択透過性膜。
【請求項6】
前記含フッ素ポリマーが、下式1で表される単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水蒸気選択透過性膜。
-[CF2-CF(-L-(SO3M)n)]- ・・・式1
式1中、Lは、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ炭化水素基であり、nは、1又は2であり、Mは、水素原子又はアルカリ金属である。
【請求項7】
前記水蒸気選択透過性膜の少なくとも一方の面に粘着層をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の水蒸気選択透過性膜。
【請求項8】
前記不織布が、天然繊維、化学繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水蒸気選択透過性膜。
【請求項9】
イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の表面に、接着性ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液を塗布して塗布層を形成し、次いで、前記塗布層の表面に不織布を積層し、前記塗布層中に含まれる前記溶媒を除去することを特徴とする、水蒸気選択透過性膜の製造方法。
【請求項10】
前記含フッ素ポリマーが、下式1で表される単位を含む、請求項9に記載の製造方法。
-[CF2-CF(-L-(SO3M)n)]- ・・・式1
式1中、Lは、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ炭化水素基であり、nは、1又は2であり、Mは、水素原子又はアルカリ金属である。
【請求項11】
前記ポリマー溶液中の溶媒が、前記含フッ素ポリマー及び前記接着性ポリマーの両方を溶解する、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記水蒸気選択透過性膜の少なくとも一方の表面に粘着層をさらに設ける、請求項9~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記不織布が、天然繊維、化学繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
ランプ光源を収容したハウジングと、
前記ハウジングに形成された開口を塞ぐ水蒸気選択透過性膜と、
を備え、
前記水蒸気選択透過性膜が、請求項1~8のいずれか一項に記載の水蒸気選択透過性膜である、車載用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気選択透過性膜、水蒸気選択透過性膜の製造方法、車載用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマーは、水蒸気透過性材料として利用されることがある。例えば、特許文献1では、車両用前部ランプハウジングの通気開口を微多孔質材料の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン膜で覆うことが提案されている。しかし、この延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン膜にあっては、膜強度が不十分である。
そこで、特許文献2では、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体と織布とを複合した水蒸気選択透過性膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-513504号公報
【特許文献2】特開2005-111415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スルホン酸基等のイオン交換基を有する含フッ素ポリマーは湿潤すると膨張し、乾燥すると収縮するため寸法安定性がよくない。特許文献2の水蒸気選択透過性膜を除湿、加湿の用途に適用すると、膜の膨張と収縮が繰り返される結果、貼付対象物から剥がれやすいという問題がある。
したがって、特許文献2の水蒸気選択透過性膜にあっては、充分な膜強度と貼付対象物からの剥がれにくさを両立できない。
加えて、水蒸気選択透過性膜には優れた透湿性が求められる。
【0005】
本発明は、膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい水蒸気選択透過性膜及びその製造方法;並びに前記水蒸気選択透過性膜を備えた車載用ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層と;前記水蒸気選択透過性層と接し、かつ、不織布を含む不織布層と;を備える積層体からなることを特徴とする、水蒸気選択透過性膜。
[2] 前記不織布層が、前記不織布内の空隙に接着性ポリマーを含む接着層を有し、前記接着層が、前記水蒸気選択透過性層と接する、[1]の水蒸気選択透過性膜。
[3] 前記不織布層が、前記不織布内の空隙に接着性ポリマーを含まない外層をさらに有する、[2]の水蒸気選択透過性膜。
[4] イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の内部に、不織布を含む層が含まれており、前記不織布内の空隙には前記含フッ素ポリマーが充填されていることを特徴とする、水蒸気選択透過性膜。
[5] 前記水蒸気選択透過性層の少なくとも一方の面に、不織布からなる外層及び不織布内の空隙に前記含フッ素ポリマーを含む外層のいずれか一方又は両方を有する、[4]の水蒸気選択透過性膜。
[6] 前記含フッ素ポリマーが、下式1で表される単位を含む、[1]~[5]のいずれかの水蒸気選択透過性膜。
-[CF2-CF(-L-(SO3M)n)]- ・・・式1
式1中、Lは、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ炭化水素基であり、nは、1又は2であり、Mは、水素原子又はアルカリ金属である。
[7] 前記水蒸気選択透過性膜の少なくとも一方の面に粘着層をさらに備える、[1]~[6]のいずれかの水蒸気選択透過性膜。
[8] 前記不織布が、天然繊維、化学繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、[1]~[7]のいずれかの水蒸気選択透過性膜。
[9] イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の表面に、接着性ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液を塗布して塗布層を形成し、次いで、前記塗布層の表面に不織布を積層し、前記塗布層中に含まれる前記溶媒を除去することを特徴とする、水蒸気選択透過性膜の製造方法。
[10] 前記含フッ素ポリマーが、下式1で表される単位を含む、[9]の製造方法。
-[CF2-CF(-L-(SO3M)n)]- ・・・式1
式1中、Lは、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ炭化水素基であり、nは、1又は2であり、Mは、水素原子又はアルカリ金属である。
[11] 前記ポリマー溶液中の溶媒が、前記含フッ素ポリマー及び前記接着性ポリマーの両方を溶解する、[9]又は[10]の製造方法。
[12] 前記水蒸気選択透過性膜の少なくとも一方の表面に粘着層をさらに設ける、[9]~[11]のいずれかの製造方法。
[13] 前記不織布が、天然繊維、化学繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、[9]~[12]のいずれかの製造方法。
[14] ランプ光源を収容したハウジングと;前記ハウジングに形成された開口を塞ぐ水蒸気選択透過性膜と;を備え;前記水蒸気選択透過性膜が、[1]~[8]のいずれかの水蒸気選択透過性膜である、車載用ランプ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい水蒸気選択透過性膜及びその製造方法;並びに前記水蒸気選択透過性膜を備えた車載用ランプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の水蒸気選択透過性膜の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係る車載用ランプの一例の模式図である。
【
図8】各例で透湿度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書における用語の意味は以下の通りである。
ポリマーにおける「単位」は、モノマーが重合して形成された、該モノマー1分子に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを処理して該原子団の一部が別の構造に変換された原子団であってもよい。モノマーに基づく単位を単に「モノマー単位」と記す。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホン酸基(-SO3H)、又はスルホン酸塩基(-SO3M。ただし、Mはアルカリ金属である。)を意味する。
「透湿度」は、実施例に記載の方法によって求める。
本明細書においては、式1で表される単位を、単位1と記す。他の式で表される単位も同様に記す。
【0010】
<水蒸気選択透過性膜>
本発明の水蒸気選択透過性膜は、下記の第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜Pと、下記の第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Qとを少なくとも包含する。
・第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜P:イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層と;前記水蒸気選択透過性層と接し、かつ、不織布を含む不織布層と;を備える積層体からなることを特徴とする水蒸気選択透過性膜。
・第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Q:イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層の内部に、不織布を含む層が含まれており、前記不織布内の空隙には前記含フッ素ポリマーが充填されていることを特徴とする水蒸気選択透過性膜。
【0011】
以下、第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜P、第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Qの一例について図面を参照しながら順に説明する。これら実施形態例はあくまでも例示であり、本発明の水蒸気選択透過性膜はこれら例示に限定されない。
図1~
図7における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同一の語句及び符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0012】
(第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜P)
図1は、本発明の第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜Pの一例を模式的に示す断面図である。水蒸気選択透過性膜P1は、イオン交換基を有する含フッ素ポリマーを含む水蒸気選択透過性層2と;水蒸気選択透過性層2と接し、かつ、不織布を含む不織布層3と;を備える積層体からなる。
【0013】
水蒸気選択透過性層2は、イオン交換基を有する含フッ素ポリマー(以下、「含フッ素ポリマーI」と記す。)を含む。水蒸気選択透過性層2は含フッ素ポリマーIを含むため、水蒸気濃度の高い方から低い方へ、水蒸気を選択的に透過させることができる。
ここで、水蒸気選択透過性層2における含フッ素ポリマーIの含有量は、水蒸気選択透過性が発現する程度であればよく、特に限定されない。水蒸気選択透過性層2は、含フッ素ポリマーI以外の他の成分をさらに含み得るが、含フッ素ポリマーIからなる層であることが好ましい。
【0014】
含フッ素ポリマーIにおいて、イオン交換基は特に限定されない。例えば、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基、ホスホン酸基、カルボン酸基、ケトイミド基、及びこれらの塩基が挙げられる。
なかでも、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基及びこれらの塩基が好ましく、スルホン酸基、スルホンイミド基及びこれらの塩基がより好ましく、スルホン酸基及びスルホン酸塩基がさらに好ましい。
【0015】
含フッ素ポリマーIは水蒸気選択透過性能、透湿性、機械的特性の点から、単位1を含むことが好ましい。
-[CF2-CF(-L-(SO3M)n)]- ・・・式1
式1中、Lは、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ炭化水素基であり、nは、1又は2であり、Mは、水素原子又はアルカリ金属である。
【0016】
式1中、n+1価のペルフルオロ炭化水素基がエーテル性の酸素原子を含む場合、酸素原子は、ペルフルオロ炭化水素基中の末端に位置していてもよく、炭素原子間に位置していてもよい。n+1価のペルフルオロ炭化水素基の炭素数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0017】
Lとしては、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよいn+1価のペルフルオロ脂肪族炭化水素基が好ましく、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよい2価のペルフルオロアルキレン基(n=1の態様)、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよい3価のペルフルオロ脂肪族炭化水素基(n=2の態様)がより好ましい。
2価のペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
【0018】
単位1としては、例えば、以下の単位1-1、単位1-2、単位1-3が好ましい。
-[CF2-CF(-O-Rf1-SO3M)]- ・・・式1-1
-[CF2-CF(-Rf1-SO3M)]- ・・・式1-2
【0019】
【0020】
式1-1~式1-3中、Rf1は、炭素原子間にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Mは、前記式1と同様である。
式1-3中、mは0又は1であり、Rf2は、単結合又は炭素原子間にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキレン基である。
Rf1、Rf2におけるペルフルオロアルキレン基中の炭素数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。また、Rf1、Rf2のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を含む場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
【0021】
単位1-1としては、例えば、以下の単位1-1-1、単位1-1-2、単位1-1-3が挙げられる。
-[CF2-CF(-O-(CF2)w-SO3M)]- ・・・式1-1-1
-[CF2-CF(-O-CF2CF(CF3)-O-(CF2)w-SO3M)]- ・・・式1-1-2
-[CF2-CF(-(O-CF2CF(CF3))x-SO3M)]- ・・・式1-1-3
wは1~8の整数であり、xは1~5の整数であり、Mは、前記式1と同様である。
【0022】
単位1-2としては、例えば、以下の単位1-2-1、単位1-2-2が挙げられる。
-[CF2-CF(-(CF2)w-SO3M)]- ・・・式1-2-1
-[CF2-CF(-CF2-O-(CF2)w-SO3M)]- ・・・式1-2-2
wは1~8の整数であり、Mは、前記式1と同様である。
【0023】
単位1-3としては、単位1-3-1が好ましい。
【0024】
【0025】
式1-3-1中、Rf3は炭素数1~6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、Rf4は単結合又は炭素原子間にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい炭素数1~6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、Mは前記式1と同様であり、mは前記式1-3と同様である。
【0026】
式1-3-1中、Rf4としては、炭素原子間にエーテル性の酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基が好ましい。Rf4がエーテル性の酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基であれば、単位1-3-1を有する含フッ素ポリマーIの柔軟性が向上する。柔軟性が高い含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層2は、湿潤状態における膨潤と乾燥状態における収縮とを繰り返しても破損しにくく、耐久性が良好となりやすい。また、湿潤状態における弾性率と乾燥状態における弾性率の差が少なくなりやすく、湿潤状態における膨潤と乾燥状態における収縮とを繰り返して発生したシワに起因する亀裂が進展しにくい。
【0027】
単位1-3としては、例えば、以下の単位が挙げられる。
【0028】
【0029】
含フッ素ポリマーIとしては、機械的特性の点から、単位1とテトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)とを含む、ペルフルオロカーボンポリマーが好ましい。
ただし、含フッ素ポリマーIは、単位1及びTFE単位以外の他のモノマーに基づく単位(以下、「他の単位」とも記す。)をさらに含んでもよい。
他のモノマーとしては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ペルフルオロα-オレフィン(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン(ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン(3-ペルフルオロオクチル-1-プロペン等)、ペルフルオロビニルエーテル(ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等)、国際公開第2011/013578号に記載された5員環を有するペルフルオロモノマー等が挙げられる。
含フッ素ポリマーIは、単位1および他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
【0030】
含フッ素ポリマーIのイオン交換容量は、0.8~2.00ミリ当量/gが好ましく、0.9~1.90ミリ当量/gがより好ましい。イオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、水蒸気透過能がさらによく、透湿性がさらに優れる。イオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、含フッ素ポリマーIの膨潤を抑制しやすいため、機械的強度がさらに優れ、寸法安定性も向上する。
【0031】
各単位の割合は、水蒸気選択透過性膜に要求される水蒸気選択透過性(透湿度)、機械的特性、イオン交換容量等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、単位1の割合が多いほど、イオン交換容量が高く、また、水蒸気選択透過性(透湿度)がさらに優れる。また、TFE単位の割合が多いほど、膜強度が高くなり、機械的特性がさらに優れる。
【0032】
単位1の割合は、含フッ素ポリマーIに含まれる全構成単位の100モル%のうち、17.4~36.5モル%が好ましく、18.1~29.9モル%がより好ましく、18.7~28.2モル%がさらに好ましい。単位1の割合が前記範囲の下限値以上であれば、水蒸気選択透過性膜の水蒸気選択透過性(透湿度)がさらに優れる。単位1の割合が前記範囲の上限値以下であれば、単位1以外の構成単位による効果を阻害しにくい。
【0033】
TFE単位の割合は、含フッ素ポリマーIに含まれる全構成単位の100モル%のうち、63.5~82.6モル%が好ましく、70.1~81.9モル%がより好ましく、71.8~81.3モル%がさらに好ましい。TFE単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、水蒸気選択透過性膜の機械的特性がさらに優れる。TFE単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、TFE単位以外の構成単位による効果を阻害しにくい。
【0034】
他の単位の合計の割合は、含フッ素ポリマーIに含まれる全構成単位の100モル%のうち、0~19.1モル%が好ましく、0~11.8モル%がより好ましく、0~9.5モル%がさらに好ましい。他の単位の合計の割合が前記範囲の上限値以下であれば、単位1、TFE単位による効果を阻害しにくい。
【0035】
含フッ素ポリマーIの合成方法は特に限定されない。含フッ素ポリマーIは、例えば、国際公開第2017/221840号等に開示されるように公知の方法によって合成できる。
【0036】
水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIは、1種でも2種以上でもよい。また、水蒸気選択透過性層2は、発明の効果が損なわれない範囲内であれば、含フッ素ポリマーI以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0037】
水蒸気選択透過性層2としては、非多孔質である水蒸気選択透過性層が好ましい。
例えば、特許文献1の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン膜のように、従来の微多孔質にあっては、車載用ランプのハウジングの開口を塞ぐ用途に適用すると、ハウジング内にごみ等の異物が混入するおそれがあり、また、微多孔がごみ等の異物で目詰まりして水蒸気透過性能が著しく低下するおそれがある。また、車の高圧洗浄時にハウジング内に水が混入し、車載用ランプの液だれの原因となるおそれもある。
対して、水蒸気選択透過性層が非多孔質である場合には、ハウジングの開口を水蒸気選択透過性膜で塞ぐ用途に適用した際、ハウジング内に異物が混入しにくく、目詰まりによる水蒸気透過性の低下もなく、また、車の高圧洗浄時の水の混入も低減される。
【0038】
水蒸気選択透過性層2の厚みは、5~50μmが好ましく、10~40μmがより好ましく、15~25μmがさらに好ましい。
水蒸気選択透過性層2の厚みが前記数値範囲の下限値以上であれば、ピンホールが生じにくく、非多孔質膜として水蒸気選択透過性層2を形成しやすい。水蒸気選択透過性層の厚みが前記数値範囲の上限値以下であれば、水蒸気選択透過性膜が貼付対象物からさらに剥がれにくくなる。
【0039】
不織布層3は、水蒸気選択透過性層2と接している。そのため、不織布層3を構成する不織布が水蒸気選択透過性層2の膨張と収縮に伴う寸法変化に追従できる。
不織布層3は、不織布内の空隙に接着性ポリマーを含む接着層31を有する。接着層31は、水蒸気選択透過性層2と接着面31aで接している。接着層31は、不織布層3と水蒸気選択透過性層2との接着強度の向上に寄与する。
【0040】
接着性ポリマーは、不織布層3を構成する不織布を水蒸気選択透過性層2に接着することができれば特に限定されない。そのため、接着性ポリマーは、接着層31と水蒸気選択透過性層2との間の剥離強度が実用上充分となるように任意のポリマーから選択できる。
【0041】
水蒸気選択透過性層2と不織布との接着機構に応じて、接着性ポリマーとして例えば、下記の接着性ポリマーX1~X3が挙げられる。
・接着性ポリマーX1:水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIを溶解する溶媒Yに溶解可能であるポリマー。
・接着性ポリマーX2:水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIの分子鎖と相互作用する極性基を有するポリマー。
・接着性ポリマーX3:水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIと化学的に反応し、共有結合またはイオン結合を形成する反応性基を有するポリマー(ただし、接着性ポリマーX2を除く。)。
【0042】
接着性ポリマーX1は、水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIを溶解する溶媒Yに溶解可能である。そのため、製造時に接着性ポリマーX1が溶媒Yに溶解したポリマー溶液を調製できる。このポリマー溶液を水蒸気選択透過性層2の表面に塗布することで、水蒸気選択透過性層2の表面の一部の含フッ素ポリマーIを溶解させることができる。その後、溶解した水蒸気選択透過性層2の表面と接着性ポリマーX1が溶着して一体化することで、不織布と水蒸気選択透過性層2とを接着することができる。
【0043】
溶媒Yは、100gの溶媒Yに対する含フッ素ポリマーIの25℃での溶解量が5g以上であればよく、特に限定されない。例えば、アセトン、メタノール、2-メトキシエタノール、エタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、1,1,2-トリクロルエタン、1,1,2,2-テトラクロルエタン、トリエチルホスフェート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
接着性ポリマーX1は、含フッ素ポリマーIであってもよく、含フッ素ポリマーI以外のポリマーであってもよい。接着性ポリマーX1が含フッ素ポリマーIである場合、接着性ポリマーX1は水蒸気選択透過性層2における含フッ素ポリマーIと同種類の含フッ素ポリマーIであってもよく、異なる種類の含フッ素ポリマーIであってもよい。ただし、水蒸気選択透過性層2と不織布層3との接着性の点で、接着性ポリマーX1は、水蒸気選択透過性層2における含フッ素ポリマーIと同種類の含フッ素ポリマーIであることが好ましい。
【0045】
接着性ポリマーX1が含フッ素ポリマーI以外のポリマーである場合、接着性ポリマーX1は、水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIを溶解する溶媒Yに溶解可能であればよく、特に限定されない。ただし、湿潤状態における膨潤と乾燥状態における収縮とを繰り返しても貼付対象物から剥がれにくいことから、含フッ素ポリマーI以外の接着性ポリマーX1の線膨張率は、水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIの線膨張率と同程度であることが好ましい。
【0046】
接着性ポリマーX2は、水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIの分子鎖と相互作用する極性基を有する。そのため、接着性ポリマーX2における極性基と含フッ素ポリマーIにおける分子鎖との間で、ファンデルワールス力が働き、不織布と水蒸気選択透過性層2とを接着することができる。
【0047】
接着性ポリマーX2における極性基としては、例えば、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。カルボニル基含有基としては、例えば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
【0048】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキレン基等が挙げられる。ここで、アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を構成する炭素を含まない状態での炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわちハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
【0049】
接着性ポリマーX3は、水蒸気選択透過性層2の含フッ素ポリマーIと化学的に反応し、共有結合またはイオン結合を形成する反応性基を有する。反応性基は、含フッ素ポリマーIのイオン交換基と反応し得る基であればよい。例えば、含フッ素ポリマーIがスルホン酸基等を有する場合、接着性ポリマーX3における反応性基はスルホン酸基と反応し得る基であればよい。
【0050】
接着性ポリマーX1~X3は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、接着性ポリマーX2、接着性ポリマーX3のなかには、接着性ポリマーX1に該当するポリマーが存在し得る。接着性ポリマーX1にも該当する接着性ポリマーX2、接着性ポリマーX3を用いた場合には、接着性ポリマーX1としての接着機構に加えて、接着性ポリマーX2としての接着機構、接着性ポリマーX3としての接着機構がそれぞれ重畳的に得られる場合があると考えられる。
【0051】
接着層31においては、不織布の繊維間の空隙が残存するように接着性ポリマーが含まれている。すなわち、接着層31における不織布内には空隙が接着層31の全体にわたってまばらに存在する。接着性ポリマーの接着機構、不織布の繊維の材質にもよるが、不織布内の空隙において、繊維の表面及び繊維の内部に接着性ポリマーが存在すると考えられる。
【0052】
水蒸気選択透過性膜P1においては、不織布層3が、不織布内の空隙に接着性ポリマーを含まない外層32をさらに有する。外層32は接着性層31の接着面31aと厚み方向で反対側の表面31bに設けられている。
外層32においては、接着前の不織布のすべての空隙がそのまま残存している。そのため、外層32は不織布からなる層であるとも言える。
【0053】
外層32を構成する不織布は、接着性層31を構成する不織布と一体的な不織布でもよく、接着性層31を構成する不織布と別々の分離可能な不織布であってもよい。外層32が接着性層31を構成する不織布と一体的な不織布である場合、接着前の一枚の不織布の厚み方向の一部が接着性層31を構成し、厚み方向の残部がそのまま外層32を構成する。
外層32が接着性層31を構成する不織布と別々の不織布である場合、水蒸気選択透過性層2と不織布を接着して接着層31のみを形成した後、当該接着層31の表面に接着層31とは異なる不織布を別途設け、外層32を形成してもよい。
【0054】
不織布層3の厚みは、50~300μmが好ましく、80~200μmがより好ましく、100~150μmがさらに好ましい。
不織布層3の厚みが前記数値範囲の下限値以上であれば、水蒸気選択透過性膜の膜強度がさらに優れる。不織布層3の厚みが前記数値範囲の上限値以下であれば、不織布層3の柔軟性がさらに優れ、水蒸気選択透過性層2の膨張と収縮に伴う寸法変化にさらに追従しやすい。
【0055】
不織布の繊維の材質は、特に限定されない。例えば、天然繊維、化学繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む不織布が挙げられる。
また不織布は、1種類の繊維からなる不織布であってもよく、複数種類の繊維からなる混織の不織布でもあってもよい。
【0056】
天然繊維は植物由来の繊維であってもよく、動物由来の繊維であってもよい。植物由来の繊維としては、例えば、綿、カポック繊維、竹繊維、亜麻繊維、麻繊維、パルプ繊維、マニラ麻繊維等が挙げられる。動物由来の繊維としては、例えば、羊毛、山羊毛、馬毛、ラマ毛等が挙げられる。
化学繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアミド、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリル、ポリウレタンが挙げられる。なかでもコストパフォーマンスの点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアミド、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリウレタンが好ましい。
炭素繊維としては、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。いずれの炭素繊維を用いた場合においても、膜強度に優れた水蒸気選択透過性膜が得られる。
【0057】
なかでも、水蒸気選択透過性層2における含フッ素ポリマーIがスルホン酸基等の強酸性のイオン交換基を有する場合においては、耐酸性に優れる化学繊維が好ましい。耐酸性に優れる化学繊維として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、レーヨン、ポリプロピレン、ポレフェニレンサルファイドが挙げられる。不織布がこれら耐酸性に優れる化学繊維を含むと、含フッ素ポリマーIがスルホン酸基等の強酸性のイオン交換基を有する場合であっても長期的な強度安定性が優れる。
【0058】
不織布の目付け量は、5~120g/m2が好ましく、15~100g/m2がより好ましく、20~80g/m2がさらに好ましい。
不織布の繊維の目付け量が前記数値範囲の下限値以上であれば、水蒸気選択透過性膜の膜強度がさらに優れる。不織布の繊維の目付け量が前記数値範囲の上限値以下であれば、不織布の柔軟性がさらに優れる。
【0059】
水蒸気選択透過性膜P1は例えば、後述の<水蒸気選択透過性膜の製造方法>の項に記載の方法によって製造できる。
【0060】
図1に示す一例では不織布層3が接着層31と外層32とを有する形態であるが、水蒸気選択透過性膜Pはこの一例に限定されない。水蒸気選択透過性膜Pは、
図2に示す一例のように、接着層31のみからなる不織布層3’を備えた水蒸気選択透過性膜P2のような形態を包含する。不織布層3’の詳細及び好ましい態様は、不織布層3について説明した内容と同様である。
水蒸気選択透過性膜P2は例えば、キャスト法によって製造できる。
【0061】
水蒸気選択透過性膜Pは、
図1、2に示す例の他にも、
図3に示す一例のように、外層32のみからなる不織布層3’’を備えた水蒸気選択透過性膜P3のような形態を包含する。
水蒸気選択透過性膜P3においては、外層32のみからなる不織布層3’’が水蒸気選択透過性層2と接する。水蒸気選択透過性膜P3においては、外層32と水蒸気選択透過性層2との間の界面には、層とは呼べないような非常に薄い接着領域があると考えられる。
また、不織布層3’’の詳細及び好ましい態様も、不織布層3について説明した内容と同様である。
水蒸気選択透過性膜P3は例えば、水蒸気選択透過性層2と不織布とを熱プレスすることで製造できる。
【0062】
以上いくつかの例を示して説明した第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜Pは、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択性層を有するため、透湿性に優れる。また、水蒸気選択透過性層は不織布を含む不織布層と接している。そのため、不織布が水蒸気選択透過性層の補強材として機能でき、水蒸気選択透過性膜Pの膜強度が向上する。
加えて、不織布は織布と比較して柔軟性に優れる。そのため、除湿、加湿の用途に適用した際に水蒸気選択透過性層が膨張と収縮を繰り返しても、水蒸気選択透過性層と接した不織布が水蒸気選択透過性層の寸法変化に追従できる。その結果、膜全体の寸法安定性がよくなり、貼付対象物との粘着面での移動量が抑制され、充分な膜強度と貼付対象物からの剥がれにくさを両立できる。
したがって、水蒸気選択透過性膜Pは膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい。
【0063】
(第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Q)
本発明の第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Qは、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層の内部に、不織布を含む層が含まれており、前記不織布内の空隙には前記含フッ素ポリマーが充填されていることを特徴とする。
【0064】
図4は、本発明の第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Qの一例を模式的に示す断面図である。水蒸気選択透過性膜Q1は、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層20を有する。そして、水蒸気選択透過性層20の内部には、不織布を含む層が含まれている。
【0065】
水蒸気選択透過性層20の内部の不織布内の空隙には含フッ素ポリマーIが充填されている。すなわち、水蒸気選択透過性層20の内部の不織布内の繊維間には含フッ素ポリマーIが充填され、不織布内に空隙が存在しない。そのため、水蒸気選択透過性層20において、水蒸気選択透過性及び優れた透湿性が発現する。
含フッ素ポリマーI、不織布の詳細及び好ましい態様については、水蒸気選択透過膜Pについて説明した内容と同様である。
【0066】
水蒸気選択透過性層20の厚みは、50~300μmが好ましく、80~200μmがより好ましく、100~150μmがさらに好ましい。
水蒸気選択透過性層2の厚みが前記数値範囲の下限値以上であれば、膜強度がさらに優れる。水蒸気選択透過性層の厚みが前記数値範囲の上限値以下であれば、水蒸気選択透過性膜が貼付対象物からさらに剥がれにくくなる。
【0067】
図4に示す一例では、水蒸気選択透過性膜Q1は水蒸気選択透過性層20からなる形態であるが、水蒸気選択透過性膜Qは、水蒸気選択透過性層の少なくとも一方の面に、不織布からなる外層及び不織布内の空隙に含フッ素ポリマーIを含む外層のいずれか一方又は両方を有してもよい。
不織布内の空隙に含フッ素ポリマーIを含む外層においては、不織布の繊維間の空隙が残存するように含フッ素ポリマーIが含まれている。すなわち不織布内の空隙に含フッ素ポリマーIを含む外層においては、不織布内の空隙が全体にわたってまばらに存在する。不織布の繊維の材質にもよるが、不織布内の空隙において、繊維の表面及び繊維の内部に含フッ素ポリマーIが存在すると考えられる。
【0068】
水蒸気選択透過性膜Q1は、例えば、キャスト法によって製造できる。例えば、含フッ素ポリマーIを含む溶液を基材の表面に塗布して塗布層を形成し、塗布層の中に不織布を浸漬することで製造できる。このとき、不織布内の空隙を含フッ素ポリマーIで充填する。不織布内の空隙を確実に含フッ素ポリマーIで充填するために、含フッ素ポリマーIを含む溶液を塗布する操作を複数回繰り返してもよい。
【0069】
水蒸気選択透過性膜Qは、
図4に示す例の他にも、
図5に示す一例のように、水蒸気選択透過性層20の一方の面20aに、不織布からなる外層32を有する水蒸気選択透過性膜Q2のような形態を包含する。外層32については、水蒸気選択透過性膜Pについて説明した内容と同様である。
【0070】
以上いくつかの例を示して説明した第2の態様に係る水蒸気選択透過性膜Qにおいては、水蒸気選択透過性層20の内部に、不織布を含む層が含まれているため、不織布が補強材として機能でき、水蒸気選択透過性膜Qの膜強度が向上する。この不織布は、第1の態様に係る水蒸気選択透過性膜Pと同様に柔軟性に優れ、水蒸気選択透過性層の寸法変化に追従可能である。そのため、除湿、加湿の用途に適用した際に水蒸気選択透過性層が膨張と収縮を繰り返しても、膜全体の寸法安定性がよく、貼付対象物との粘着面での移動量が抑制される。結果、充分な膜強度と貼付対象物からの剥がれにくさを両立できる。
加えて、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層の内部において、不織布内の空隙には含フッ素ポリマーIが充填されているため、水蒸気選択透過性膜Qが優れた透湿性を具備する。
したがって、水蒸気選択透過性膜Qは膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい。
【0071】
(一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜)
以下、水蒸気選択透過性膜P、水蒸気選択透過性膜Qを包含する実施形態について、一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜として説明する。すなわち、以下の説明において「一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜」は、水蒸気選択透過性膜P、水蒸気選択透過性膜Qを包含する。
【0072】
一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜の50%RHにおける透湿度は、600~2500g/m2・24hが好ましく、800~2000g/m2・24hがより好ましく、1000~1400g/m2・24hがさらに好ましい。50%RHにおける透湿度が前記範囲の下限値以上であれば、水蒸気選択透過性膜が高湿度環境下での透湿性に優れていると言える。50%RHにおける透湿度が前記範囲の上限値以下であれば、水蒸気選択透過性膜が高湿度環境下でも貼付対象物から剥がれにくいと考えられる。
【0073】
一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜は、少なくとも一方の面に粘着層をさらに備えてもよい。粘着層は、水蒸気選択透過性膜を貼付対象物に粘着させるための粘着性の層である。粘着層が設けられる表面は、水蒸気選択透過性膜の適用用途、貼付対象物、所望の水蒸気透過性能を考慮して決定すればよい。
粘着層は、平面視において水蒸気選択透過性膜の一部の表面に部分的に設けられてもよく、全面にわたって設けられてもよい。例えば、粘着層は、水蒸気選択透過性膜の外縁に沿って、水蒸気選択透過性膜の表面の一部に設けられてもよい。
【0074】
粘着層は粘着剤を塗布して形成してもよく、プライマーで水蒸気選択透過性膜の表面を処理して形成してもよい。
粘着剤は特に限定されない。例えば、アクリル重合体を含む粘着剤が挙げられるが、この例示に限定されない。水蒸気選択透過性膜の適用用途、貼付対象物、所望の水蒸気透過性能を考慮して種々の粘着剤から選択すればよい。この場合、粘着層は、水蒸気選択透過性膜の用途、貼付対象物に応じて、粘着剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
粘着層の厚みも特に限定されず、適用用途、貼付対象物、所望の水蒸気透過性能に応じて決定すればよい。粘着層として、粘着テープを用いてもよい。
【0075】
<水蒸気選択透過性膜の製造方法>
本発明の水蒸気選択透過性膜の製造方法は、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層の表面に、接着性ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液を塗布して塗布層を形成し、次いで、塗布層の表面に不織布を積層し、塗布層中に含まれる溶媒を除去することを特徴とする。
含フッ素ポリマーI、接着性ポリマー及び不織布の詳細及び好ましい態様は、<水蒸気選択透過性膜>の項で説明した内容と同様である。
【0076】
ポリマー溶液は、接着性ポリマーと溶媒とを含む。ポリマー溶液中の溶媒としては、含フッ素ポリマーI及び接着性ポリマーの両方を溶解することが好ましい。すなわち、ポリマー溶液中の溶媒としては、溶媒Yが好ましい。溶媒Yの詳細及び好ましい態様は、<水蒸気選択透過性膜>の項で説明した内容と同様である。
製造コストの点から、ポリマー溶液における接着性ポリマーとしては、接着性ポリマーX1が好ましく、含フッ素ポリマーIが好ましい。
ポリマー溶液は、発明の効果が損なわれない範囲内であれば、接着性ポリマー及び溶媒以外の他の成分をさらに含んでもよい。
【0077】
図6は、一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
図6に示す一例においては、まず、基材7に設けられた水蒸気選択透過性層2をあらかじめ準備する。この水蒸気選択透過性層2は、例えば、含フッ素ポリマーIが溶媒Yに溶解した溶液を基材7の表面に塗布し、次いで、乾燥、固化することで、基材7の表面に設けられる。
【0078】
基材7はキャスト法で使用される基材フィルムであればよく、特に限定されない。
基材の材質は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド等が挙げられるが、これら例示に限定されない。基材は単層フィルムでもよく、多層フィルムでもよい。
【0079】
基材7の表面への溶液の塗布量は、特に限定されない。水蒸気選択透過性層2の厚みが<水蒸気選択透過性膜>の項で説明した好ましい数値の範囲内となるように調整するのが好ましい。
また、基材7の厚みも特に限定されない。基材7は流通時に水蒸気選択透過性膜を保護するための剥離層となり、使用時に剥がされることを考慮すれば、基材7(剥離層)の厚みは、50~200μm程度でもよく、75~125μm程度でもよい。
【0080】
次いで、水蒸気選択透過性層2の表面に、接着性ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液を塗布して塗布層8を形成する。塗布層8の厚みは特に限定されない。例えば、90~180μmが好ましく、120~150μmがより好ましい。塗布層8の厚みが前記下限値以上であれば、水蒸気選択透過性層2と不織布との接着強度が向上しやすい。塗布層8の厚みが前記上限値以下であれば生産性が向上しやすい。
【0081】
ポリマー溶液が含フッ素ポリマーIを含む場合、塗布層8における含フッ素ポリマーIは、1種でも2種以上でもよい。また、塗布層8における含フッ素ポリマーIは、水蒸気選択透過性層2内の含フッ素ポリマーIと同種類でも異なる種類でもよい。
【0082】
次いで、不織布30を塗布層8の表面に積層し、塗布層8中に含まれる溶媒を除去する。
不織布30を塗布層8の表面に積層することで、塗布層8のポリマー溶液が不織布内に染み込み、水蒸気選択透過性層2と不織布30とが一体化する。その後、塗布層8中に含まれる溶媒を除去することで、水蒸気選択透過性層2と不織布層3とが強固に接着される。このとき、不織布3の一部の繊維に、ポリマー溶液の接着性ポリマーが含浸する。
【0083】
不織布30を塗布層8の表面に積層する際には、接着強度を高める点から加圧して積層してもよい。
また、不織布30の積層後に塗布層8中に含まれる溶媒を除去する方法としては、自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。
【0084】
本発明の水蒸気選択透過性膜の製造方法においては、水蒸気選択透過性膜の少なくとも一方の表面に粘着層をさらに設けてもよい。粘着層の詳細及び好ましい態様は、<水蒸気選択透過性膜>の項で説明した内容と同様である。
【0085】
(作用機序)
以上説明した一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜の製造方法は、含フッ素ポリマーIを含む水蒸気選択透過性層の表面に、含フッ素ポリマーIを含む溶液を塗布し、次いで、含フッ素ポリマーIを含む溶液の塗布層の表面に不織布を重ねることを特徴とする。そのため、含フッ素ポリマーを含む溶液が不織布内に染み込み、柔軟性に優れる不織布が水蒸気選択透過性層と一体的に接着される。
その結果、除湿、加湿の用途に適用した際に、不織布が水蒸気選択透過性層の寸法変化に追従しやすく、水蒸気選択透過性膜全体の寸法安定性がよくなり、貼付対象物との粘着面での移動量が抑制される。また、不織布は水蒸気選択透過性膜の膜強度の向上に寄与し、水蒸気選択透過性膜は透湿性の向上に寄与する。
したがって一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜の製造方法によれば、膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい水蒸気選択透過性膜が得られる。
【0086】
<用途>
一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜は、膨潤、伸縮が頻繁に繰り返されるような条件下で使用しても、貼付対象物から剥がれにくい。そのため、一実施形態に係る水蒸気選択透過性膜は、例えば、流体の除湿用又は加湿用の用途に適用できる。
【0087】
水蒸気選択透過性膜の用途の一例として、車載用ランプの除湿用又は加湿用の用途が挙げられる。
図7は、一実施形態に係る車載用ランプの一例の模式図であり、除湿用又は加湿用の非多孔質の平膜の水蒸気選択透過性膜1を備えた車載用ランプ10を示す。
車載用ランプ10は、ランプ光源(LEDライト)13及びソケット14を収容したハウジング11と;ハウジング11に形成された開口12を塞ぐ水蒸気選択透過性膜1と;を備える。LEDは、Light Emitting Diodeの略である。
車載用ランプ10によれば、水蒸気選択透過性膜1でハウジング11の開口12が覆われているため、ハウジング11の内外で湿度差があるとき、水蒸気Dの濃度の高い方から低い方へ水蒸気Dを選択的に透過させることができる。
【0088】
水蒸気選択透過性膜1は、ハウジング11の外側の表面に貼り付けられている。また、水蒸気選択透過性膜1は、水蒸気選択透過性層がハウジング11の内部側に位置するように配置されている。そのため、ハウジング11内外の水分交換量が高くなると期待される。
加えて、水蒸気選択透過性膜1は膜強度及び透湿性に優れ、しかも、膨張と収縮が繰り返されても、ハウジング11から剥がれにくい。結果、車載用ランプ10の長期的な耐久性が向上すると期待される。
【0089】
ハウジング11の材質は特に限定されないが、吸湿性の樹脂であると、発明の効果が顕著に得られる。例えば、ハウジング11の材質がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の吸湿性の樹脂である場合、ハウジング11は外部の大気中の水分を吸収し、水分が吸湿性の樹脂中で拡散して保持される。その後太陽光、ランプ等によってハウジング11が加熱されると、大気から吸収した水分が蒸発し、水蒸気Dがハウジング11内で拡散する。このような水蒸気Dは車載用ランプ10の曇り、結露のような安全性の不具合、ハウジング内の液だれのような外観上の不具合の原因となり得る。
これらの不具合に対して、車載用ランプ10は、ハウジング11の開口12が水蒸気選択透過性膜1で覆われているため、ハウジング11内外の水分交換量が多い。そのため、ハウジング11内の湿度が高くなると、水蒸気選択透過性膜1によってハウジング11内が除湿される。その結果、車載用ランプ10の曇り、結露、液だれが効果的に抑制される。
【0090】
水蒸気選択透過性膜1は非多孔質の平膜である。そのため、水蒸気選択透過性膜1は、ハウジング11内へのごみ等の異物の混入を防ぐための防塵フィルムとしても機能し得る。水蒸気選択透過性膜1が非多孔質の平膜であるため、ハウジング11内へのごみ等の異物の混入を低減できる。また、車の高圧洗浄時にもハウジング11内に水が混入しにくい。
【0091】
車載用ランプ10においては、水蒸気選択透過性膜1がハウジング11の外側で開口12を覆って塞いでいるが、他の実施形態例において、水蒸気選択透過性膜1はハウジング11の内側で開口12を覆って塞いでいてもよい。
また、開口12の大きさ、形状は特に限定されない。車載用ランプ10においては、開口12の数は1つであるが、他の実施形態例においては、開口の数は複数でもよい。
【0092】
車載用ランプ10は一実施形態例としての例示である。したがって、一実施形態に係る車載用ランプは、
図7に図示されないような種々の構成を備え得る。例えば、車載用ランプのハウジングには内部の圧力を調整するための通気口が形成されていてもよい。
また、
図7の車載用ランプ10においては、ランプ光源の一例として、LEDライトを例示したが、他の実施形態例においてランプ光源は、ハロゲンライトでもよく、HIDライトでもよい。ランプ光源は、車両のライトとして使用されるものであれば特に限定されない。HIDは、High Intensity Dischargeの略である。
他にも、車両への取付のための取付部(接続端子等)、車載用ランプの動作を車両で制御するための制御部等の種々の構成を車載用ランプは備え得る。
【0093】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0094】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。例1は実施例であり、例2、3は比較例である。
【0095】
<測定方法>
(透湿度)
JIS Z 0208に規定の透湿度試験方法(カップ法)に倣い、透湿度(g/m2・24h)を測定した。具体的には非透湿性の測定容器を準備し、測定容器内に塩化カルシウムを約23g充填した。測定容器の容積は24mlであり、底面積は300mm2であり、高さは80mmであった。また、塩化カルシウムは、測定容器の底面からの高さが約77mmとなるように充填した。
次いで、角形の評価膜を測定容器の開口部の形状と一致するように切り出し、測定容器の開口部の外縁に固定した後、測定容器を電子天秤に静置した。その後、電子天秤ごと測定容器を温度20℃、30%RHの恒温機に入れ、透湿度(g/m2・24h)の測定を開始した。各評価膜について、透湿度(g/m2・24h)を塩化カルシウムの質量変化により求めた。具体的には、測定開始から17時間から24時間経過時の全平均を算出し、透湿度(g/m2・24h)とした。
続いて、恒温機の条件を50%RH、80%RHに変えた以外は同様にして、各湿度条件下での透湿度(g/m2・24h)を測定した。
【0096】
<原料>
(含フッ素ポリマー)
市販品のフレミオンFSS-2(商品名、AGC社製、エタノール溶液)を使用した。
【0097】
(不織布)
ポリエチレンとポリプロピレンを混紡した厚みが約130μmの不織布(日本バイリーン社製)を準備した。
【0098】
<例1>
PETフィルム上にフレミオンFSS-2のエタノール溶液を塗布し、乾燥して塗布層を固化させ、フレミオンFSS-2を含む水蒸気選択透過性層をPETフィルムに設けた。PETフィルム上に設けられた水蒸気選択透過性層の厚みは、25μmであった。
その後、PETフィルム上に設けた水蒸気選択透過性層の表面にフレミオンFSS-2のエタノール溶液を塗布し、厚みが120μmの塗布層を設けた。その後、フレミオンFSS-2のエタノール溶液が乾燥して固化する前に、塗布層の表面に不織布を積層し、エタノールを乾燥除去し、例1の水蒸気選択透過性膜を得た。
得られた水蒸気選択透過性膜を40mm×20mm角に切り出し、角形の水蒸気選択透過性膜の外縁に沿って両面テープを貼り付け、透湿度を測定した。
【0099】
<例2>
延伸ETFE多孔質膜(ゴア社製、商品名「オートモーティブベント」)を評価対象膜として用いた。延伸ETFE多孔質膜を40mm×20mm角に切り出し、角形の延伸ETFE多孔質膜の外縁に沿って両面テープを貼り付け、透湿度を測定した。
【0100】
<例3>
例3では、PTFE多孔質膜(日東電工株式会社製、商品名「TEMISH」)を評価対象膜として用いた。PTFE多孔質膜を40mm×20mm角に切り出し、角形のPTFE多孔質膜の外縁に沿って両面テープを貼り付け、透湿度を測定した。
【0101】
図8は、各例で透湿度を測定した結果を示す図である。
図8中「ブランク」は、測定容器の開口部に何ら膜を固定しなかったときの透湿度の測定結果を示す。そのため、「ブランク」のプロットは、各測定条件下における透湿度の最大値に相当する。
図8に示すように、例1では、周囲環境の相対湿度が高くなるにしたがい、ブランクで示す透湿度の最大値との差が例2、3と比較して縮まる結果であった。この結果から、相対湿度50%以上の高湿度環境下で優れた透湿性が発揮されることを確認できた。
一実施形態によれば、膜強度及び透湿性に優れ、貼付対象物から剥がれにくい水蒸気選択透過性膜及びその製造方法;並びに前記水蒸気選択透過性膜を備えた車載用ランプが提供される。
1…水蒸気選択透過性膜、2、20…水蒸気選択透過性層、3…不織布層、7…基材、8…塗布層、10…車載用ランプ、11…ハウジング、12…開口、13…ランプ光源(LEDライト)、14…ソケット、30…不織布、31…接着層、32…外層。