(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042738
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】欠陥検査システム及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2251 20180101AFI20230320BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20230320BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20230320BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230320BHJP
【FI】
G01N23/2251
G06N3/04
G06N3/02
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150035
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕子
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌義
(72)【発明者】
【氏名】新藤 博之
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001FA01
2G001FA29
2G001HA07
2G001HA13
2G001KA03
2G001LA11
(57)【要約】
【課題】
撮像条件の違いによる検査画像の差を吸収し、または、各検査工程で共通に使用できるフィルタモデルを有することで高効率な検査を可能とし得る欠陥検査システムを提供する。
【解決手段】
欠陥検査システム100は、検査画像4と欠陥を有しない画像である参照画像とを比較して検査画像内の欠陥位置を検出する欠陥検出部104、検出された欠陥位置を虚報若しくは指定された欠陥種に分類するフィルタモデル、フィルタ条件を保持するフィルタ条件保持部106、欠陥検出部104で検出した欠陥位置を所定の距離内毎にひとまとまりとした欠陥領域抽出部、欠陥領域毎にフィルタ条件に該当するか否かを判定し該当する欠陥領域のみを抽出する欠陥フィルタ部105、及び検査画像4を検査時の加工工程と加工工程毎又は撮像条件毎に設定した正規化条件に基づいて正規化を行う正規化部101と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の加工工程により加工される試料において1つ以上の加工工程後に撮像した試料の検査画像に基づき欠陥の有無を検査する欠陥検査システムであって、
前記検査画像と前記検査画像と同一検査点で欠陥を有しない画像である参照画像とを比較して検査画像内の欠陥位置を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部で検出された欠陥位置を虚報若しくは指定された欠陥種に分類するフィルタモデルと、
指定された欠陥種及び/又は欠陥サイズにより構成されるフィルタ条件を保持するフィルタ条件保持部と、
前記欠陥検出部で検出した欠陥位置を所定の距離内毎にひとまとまりとした欠陥領域抽出部と、
前記欠陥領域抽出部で抽出した欠陥領域毎に前記フィルタ条件に該当するか否かを判定し該当する欠陥領域のみを抽出する欠陥フィルタ部と、
前記検査画像を検査時の前記加工工程と加工工程毎又は撮像条件毎に設定した正規化条件に基づいて正規化を行う正規化部と、を有し、
前記フィルタモデルは、前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することにより、前記フィルタモデルを得ることを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検査システムにおいて、
前記フィルタモデルは、複数の加工工程で共通した前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することで正規化条件のみ設定すれば学習データのない加工工程に対しても適用し得ることを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検査システムにおいて、
前記フィルタモデルは、CNN(Convolution Neural Network)を用いた機械学習により前記検査画像に存在する欠陥の有無若しくは欠陥種を特定すること特徴とする欠陥検査システム。
【請求項4】
請求項2に記載の欠陥検査システムにおいて、
前記フィルタ条件を構成する欠陥種は、少なくとも、配線の短さ、配線の短絡、配線の先細り、配線の開放、配線の傷、配線上及び/又は配線内に存在する異物、配線以外の欠陥、及びコントラストの違いのいずれか1つであることを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項5】
請求項2に記載の欠陥検査システムにおいて、
前記正規化部は、
前記検査画像を前記フィルタモデルに使用する基準画像に変換するための変換パラメータに基づいて前記検査画像を前記基準画像に変換し、前記フィルタモデルは複数の加工工程で共通に使用できることを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載の欠陥検査システムにおいて、
前記フィルタモデルは、
前記検査画像のピクセル単位で虚報若しくは指定された欠陥種に分類することを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項7】
請求項6に記載の欠陥検査システムにおいて、
正規化条件データベースを備え、
前記正規化部は、予め正規化するための変換パラメータを加工工程毎に算出し、前記正規化条件として正規化条件データベースに格納することを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項8】
1つ以上の加工工程により加工される試料において1つ以上の加工工程後に撮像した試料の検査画像に基づき欠陥の有無を検査する欠陥検査方法であって、
欠陥検出部が、前記検査画像と前記検査画像と同一検査点で欠陥を有しない画像である参照画像とを比較して検査画像内の欠陥位置を検出し、
フィルタモデルが、前記欠陥検出部で検出された欠陥位置を虚報若しくは指定された欠陥種に分類し、
フィルタ条件保持部が、指定された欠陥種及び/又は欠陥サイズにより構成されるフィルタ条件を保持し、
欠陥領域抽出部が、前記欠陥検出部で検出した欠陥位置を所定の距離内毎にひとまとまりとした欠陥領域を抽出し、
欠陥フィルタ部が、前記欠陥領域抽出部で抽出した欠陥領域毎に前記フィルタ条件に該当するか否かを判定し該当する前記欠陥領域のみを抽出し、
正規化部が、前記検査画像を検査時の前記加工工程と加工工程毎又は撮像条件毎に設定した正規化条件に基づいて正規化を行い、
前記フィルタモデルは、前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することにより得られることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の欠陥検査方法において、
前記フィルタモデルは、複数の加工工程で共通した前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することで正規化条件のみ設定すれば学習データのない加工工程に対しても適用し得ることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載の欠陥検査方法において、
前記フィルタモデルが、CNN(Convolution Neural Network)を用いた機械学習により前記検査画像に存在する欠陥の有無若しくは欠陥種を特定すること特徴とする欠陥検査方法。
【請求項11】
請求項9に記載の欠陥検査方法において、
前記フィルタ条件を構成する欠陥種は、少なくとも、配線の短さ、配線の短絡、配線の先細り、配線の開放、配線の傷、配線上及び/又は配線内に存在する異物、配線以外の欠陥、及びコントラストの違いのいずれか1つであることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項12】
請求項9に記載の欠陥検査方法において、
前記正規化部が、 前記検査画像を前記フィルタモデルに使用する基準画像に変換するための変換パラメータに基づいて前記検査画像を前記基準画像に変換し、前記フィルタモデルは複数の加工工程で共通に使用できることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項13】
請求項12に記載の欠陥検査方法において、
前記フィルタモデルは、前記検査画像のピクセル単位で虚報若しくは指定された欠陥種に分類することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項14】
請求項13に記載の欠陥検査方法において、
前記正規化部、予め正規化するための変換パラメータを加工工程毎に算出し、正規化条件として正規化条件データベースに格納することを特徴とする欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡により取得される試料の検査画像を用いた欠陥検査システムおよび欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体検査には、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を応用した測長SEM(CD-SEM:Critical Dimmension-SEM)等で撮影したSEM画像が用いられる。従来の半導体検査方式として参照画像比較検査があり、検査画像と同一形状で異なる地点の画像である参照画像と検査画像を比較し、それらの画素差から欠陥の有無を判定する。この検査において、微小な欠陥を検出するためには検出感度を上げる必要があるが、検出感度を上げると虚報と呼ばれる誤検出が増加するため、検出感度の調整が困難であるという課題がある。更に、半導体の欠陥種には複数種類が存在するが、参照画像比較検査では検出感度調整による欠陥種識別が困難である。
【0003】
これらの課題を解決するため、参照画像比較検査の検出結果から虚報を除去するための学習モデルが検討されている。この従来技術として、例えば、特許文献1に、欠陥領域の周辺を抽出し、実欠陥と虚報を分類することにより検査精度が十分な欠陥判定方法を実現可能な技術が開示されている。具体的に特許文献1には、正常データの集合を用いて、上記正常データを判別するための第1のモデルを学習する第1の学習部、予め用意された複数の撮影画像の各々から上記第1のモデルに基づいて検出された、異常の候補領域を示す複数の異常候補領域のうち、ユーザにより選択された異常候補領域を正解データ、上記ユーザにより選択されなかった異常候補領域を非正解データとして上記正解データと上記非正解データを識別するための第2のモデルを学習する第2の学習部、上記撮影画像を取得する取得部、前記第1のモデルを用いて上記取得部により取得された上記撮影画像から上記異常候補領域を検出する検出部、上記第2のモデルを用いて上記検出部により検出された上記異常候補領域が上記正解データに属するのか上記非正解データに属するのかを判断する判断部、及び、上記判断部による判断結果を出力する制御を行う出力制御部と、を備える情報処理装置が記載さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体検査の欠陥検出において、検査対象の工程毎に抽出したい欠陥種は異なるため、工程毎に欠陥検出結果をフィルタリングすることが求められる。しかしながら、特許文献1に開示される技術では、フィルタリングするためのモデルを工程毎に学習するため、データ収集や学習に時間を要する。更には、撮像条件の違いにより検査画像が異なる場合にモデルの再学習が必要となる課題が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、撮像条件の違いによる検査画像の差を吸収し、または、各検査工程で共通に使用できるフィルタモデルを有することで高効率な検査を可能とし得る欠陥検査システム及び欠陥検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る欠陥検査システムは、1つ以上の加工工程により加工される試料において1つ以上の加工工程後に撮像した試料の検査画像に基づき欠陥の有無を検査する欠陥検査システムであって、前記検査画像と前記検査画像と同一検査点で欠陥を有しない画像である参照画像とを比較して検査画像内の欠陥位置を検出する欠陥検出部と、前記欠陥検出部で検出された欠陥位置を虚報若しくは指定された欠陥種に分類するフィルタモデルと、指定された欠陥種及び/又は欠陥サイズにより構成されるフィルタ条件を保持するフィルタ条件保持部と、前記欠陥検出部で検出した欠陥位置を所定の距離内毎にひとまとまりとした欠陥領域抽出部と、前記欠陥領域抽出部で抽出した欠陥領域毎に前記フィルタ条件に該当するか否かを判定し該当する前記欠陥領域のみを抽出する欠陥フィルタ部と、前記検査画像を検査時の前記加工工程と前記加工工程毎又は撮像条件毎に設定した正規化条件に基づいて正規化を行う正規化部と、を有し、前記フィルタモデルは、前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することにより、前記フィルタモデルを得ることを特徴とする。
また、本発明に係る欠陥検査方法は、1つ以上の加工工程により加工される試料において1つ以上の加工工程後に撮像した試料の検査画像に基づき欠陥の有無を検査する欠陥検査方法であって、欠陥検出部が、前記検査画像と前記検査画像と同一検査点で欠陥を有しない画像である参照画像とを比較して検査画像内の欠陥位置を検出し、フィルタモデルが、前記欠陥検出部で検出された欠陥位置を虚報若しくは指定された欠陥種に分類し、フィルタ条件保持部が、指定された欠陥種及び/又は欠陥サイズにより構成されるフィルタ条件を保持し、欠陥領域抽出部が、前記欠陥検出部で検出した欠陥位置を所定の距離内毎にひとまとまりとした欠陥領域を抽出し、欠陥フィルタ部が、前記欠陥領域抽出部で抽出した欠陥領域毎に前記フィルタ条件に該当するか否かを判定し該当する前記欠陥領域のみを抽出し、正規化部が、前記検査画像を検査時の前記加工工程と前記加工工程毎又は撮像条件毎に設定した正規化条件に基づいて正規化を行い、前記フィルタモデルは、前記正規化部で正規化された検査画像を用いて学習することにより得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像条件の違いによる検査画像の差を吸収し、または、各検査工程で共通に使用できるフィルタモデルを有することで高効率な検査を可能とし得る欠陥検査システム及び欠陥検査方法を提供することが可能となる。
例えば、撮像条件の違いによる検査画像の差を吸収し、各検査工程で共通のフィルタモデルを用いて実欠陥と虚報を分離することが可能となる。更に、工程毎に抽出したい欠陥種および欠陥サイズのみを出力することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の欠陥検査システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す欠陥検査システムを構成するデータ処理部による学習時の主要機能部ブロック図である。
【
図3】
図1に示す欠陥検査システムによる学習時のフローチャートである。
【
図4】
図1に示す欠陥検査システムを構成するデータ処理部による推論時の主要機能ブロック図である。
【
図5】
図1に示す欠陥検査システムによる推論時のフローチャートである。
【
図6】実施例1における、具体的な欠陥検査フローの詳細図である。
【
図7】実施例1に係る欠陥フィルタ部の動作を示す図である。
【
図8】実施例1に係る欠陥フィルタ部のフローチャートである。
【
図9】実施例1に係る検査画像正規化部のフローチャートである。
【
図10】実施例1に係る検査画像正規化部の効果を表す図である。
【
図11】実施例1における、学習用GUIを表す図である。
【
図12】実施例1における、推論用GUIを表す図である。
【
図13】本発明の他の実施例に係る実施例2の欠陥検査システムによる学習時のフローチャートである。
【
図14】従来の具体的な欠陥検査フローの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0011】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の欠陥検査システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、欠陥検査システム100は、試料1、撮像レシピ2、検査装置3、検査画像4、データ処理部10、及び欠陥分類結果9が出力される出力部11から構成される。試料1(例えば半導体ウエハ)を検査装置3に入力し、撮像レシピ2により検査画像4を取得する。取得した検査画像4はデータ処理部10に入力される。検査装置3は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を応用した測長SEM(CD-SEM:Critical Dimmension-SEM)或いは検査SEM等を指す。
【0012】
データ処理部10は、検査画像DB5、正規化条件DB6、計算機7、フィルタモデルDB8、フィルタモデル学習部103、フィルタ条件保持部106、正規化条件作成部107、及び正規化用基準画像保持部108から構成される。また、計算機7は、検査画像正規化部101、変換後検査画像102、欠陥検出部104、及び欠陥フィルタ部105を有する。ここで、フィルタモデル学習部103、正規化条件作成部107、検査画像正規化部101、欠陥検出部104、及び欠陥フィルタ部105は、例えば、図示しないCPUなどのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に可能するRAM、外部記憶装置などの記憶装置にて実現されると共に、CPUなどのプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0013】
加工工程毎に取得する検査画像4は検査画像DB5へ保持される。検査画像DB5には、検査画像と同一形状で異なる地点の無欠陥画像である参照画像も含まれる。また、正規化条件作成部107は、加工工程毎の検査画像4を計算機7で使用する基準画像に変換するための変換パラメータを算出し、その変換パラメータは正規化条件DB6へ保持される。計算機7を構成する欠陥検出部104は、検査画像に存在する欠陥を検出する。また、計算機7を構成する欠陥フィルタ部105は、欠陥検出部104の検出結果に含まれる正常部を欠陥と誤検出する虚報を除去し、さらに欠陥サイズや欠陥種を特定する。詳細は
図4で説明する。計算機7は、検査画像DB5に保持されている検査画像と、正規化条件DB6に保持されている変換パラメータと、フィルタモデルDB8に保持されている欠陥種を分類するためのフィルタモデルを用いて、検査画像4に含まれる虚報、欠陥サイズ、欠陥種を特定し、欠陥分類結果9を出力部11へ出力する。したがって、試料1の検査画像4をデータ処理部10に入力すると、検査画像4に含まれる虚報、欠陥サイズ、欠陥種を特定することが可能となる。なお、出力部11は、例えば、図示しないLCD(Liquid Crystal Display)或いはEL(Electro Luminescence)等のディスプレイにて実現される。また、出力部11は、タッチパネル等の表示のみならずユーザによる入力を受け付ける、所謂、入出力装置GUI(Graphical User Interface)として機能する。
【0014】
図2は、
図1に示す欠陥検査システムを構成するデータ処理部による学習時の主要機能部ブロック図である。
図2に示すように欠陥検査システム100を構成するデータ処理部10は、検査画像DB5、正規化条件DB6、検査画像正規化部101、フィルタモデル学習部103、及びフィルタモデルDB8から構成される。まず、検査画像正規化部101は、検査画像DB5に格納されている検査対象の加工工程における検査画像の学習用データセットを取り出す。それと同時に、正規化条件DB6に格納されている対象の加工工程における検査画像を基準画像に変換するための変換パラメータを取り出す。ここで、正規化条件DB6に格納されている変換パラメータは、フィルタモデル(分類モデルと称される場合もある)を学習する前に持っておく必要がある。そこで、例えば、1回目の欠陥検査で使用する検査画像を基準画像とする場合は、2回目以降の欠陥検査に使用する検査画像を入手した時点で、2回目の検査画像を1回目の検査画像に変換するための変換パラメータを算出し、正規化条件DB6へ格納しておく。この場合、上述の
図1に示す正規化用基準画像保持部108が1回目の欠陥検査で使用する検査画像を基準画像として保持する。正規化条件作成部107は、正規化用基準画像保持部108に保持された1回目の欠陥検査で使用する検査画像を読み出し、2回目の検査画像を1回目の検査画像に変換するための変換パラメータを算出する。或いは、基準画像を予め決定しておき、検査画像を入手した時点で、正規化用基準画像保持部108に保持された検査画像を、正規化条件作成部107が予め決定した基準画像に変換するための変換パラメータを算出し、正規化条件DB6へ格納しておく。なおここで、基準画像とは、正規化の基準となる画像を意味する。取り出した検査画像のデータセットと、変換パラメータを検査画像正規化部101に入力する。検査画像正規化部101は、例えば、アフィン変換を適用し、以下の式(1)を用いて検査画像を基準画像へ変換する。
【0015】
【0016】
ここで、fi(li)=aili+biで、ai、biは画像上の座標iにおける変換パラメータである。ai<0の場合、画素の反転が可能である。式(1)は、画像上の任意の座標における輝度値を線形に変更し、基準画像の輝度値lbaseとの差を最小にする。この変換式を適用することで、加工工程の異なる検査画像であっても、同一座標は基準画像と同じ輝度値に変換することが可能となる。これが変換後検査画像102となる。変換後検査画像102(正規化を行った検査画像とも賞される)は、加工工程に関わらず共通の検査画像であるため、加工工程毎にフィルタモデルを持つ必要がなく、全ての加工工程で共通のフィルタモデルを持てば良い。フィルタモデル学習部103は、例えば、U-NetなどのCNN(Convolution Neural Network)を使用する。フィルタモデル学習部103で学習したフィルタモデルは、フィルタモデルDB8へ格納される。
【0017】
図3は
図1に示す欠陥検査システム100による学習時のフローチャートである。まず、ステップS101では、撮像レシピ2に基づいて、検査装置3により取得された検査画像4を検査画像DB5へ格納する。次に、ステップS102では、予めフィルタモデルの学習に使用する基準画像を決めておく。その後、ステップS103にて、正規化条件作成部107が加工工程別に検査画像のデータセットを用意し、検査画像を基準画像へ変換するための変換パラメータa
i、b
iを算出し、正規化条件DB6へ格納する。そして、ステップS104にて、検査画像正規化部101が、変換式(1)を用いて、検査対象となる検査画像を基準画像へ変換する。その後、ステップS105にて、変換後検査画像(基準画像)102をフィルタモデル学習部103であるCNNへ入力し、参照画像と検査画像の画素差から、ピクセル単位で虚報、欠陥サイズ、欠陥種を識別する。虚報、欠陥サイズ、欠陥種の識別は、具体的には、ピクセル毎に実欠陥である確率(確信度)や欠陥種が、例えば、「配線が短い」欠陥である確信度を算出する。ここで、学習の際に使用する教師情報は、例えば、人手によるアノテーションで欠陥部位を囲んだバウンディングボックス内に存在する欠陥検出結果を実欠陥、ボックス外に存在する欠陥検出結果を虚報と設定する。更に、アノテーション時に欠陥種やサイズも教師情報として設定しておく。また、教師あり学習に限らず、教師なし学習でも良い。最後に、ステップS106にて、学習済のフィルタモデルをフィルタモデルDB8へ格納する。これにより、複数の加工工程において、共通のフィルタモデルを用いて、虚報、欠陥サイズ、欠陥種を識別することができる。これは、同一のパターンが存在する工程間においてフィルタモデル(分類モデル)を共通化できるためである。
【0018】
図4は
図1に示す欠陥検査システムを構成するデータ処理部による推論時の主要機能ブロック図である。
図4に示すように欠陥検査システム100を構成するデータ処理部10は、欠陥検出部104、欠陥フィルタ部105、正規化条件DB6、検査画像正規化部101、フィルタモデルDB8、及びフィルタ条件保持部106から構成される。また、計算機7は、欠陥検出部104、欠陥フィルタ部105、及び検査画像正規化部101から構成される。まず、検査画像正規化部101は検査画像DB5に格納されている検査対象の加工工程における検査画像の推論用データセットを取り出す。検査対象の加工工程における検査画像の変換パラメータを正規化条件DB6から取り出し、推論用データセットと共に検査画像正規化部101へ入力する。検査画像正規化部101により、検査画像はフィルタモデルで使用可能な基準画像へ変換される。欠陥検出部104は、例えば、検査画像と参照画像を比較し、その画素差を欠陥として検出するD2D(Die-to-Die)検査や、検査画像と設計図を比較し欠陥を検出するD2DB(Die-to-Database)検査を実行する。したがって、欠陥検出部104は、検査画像を入力とし、例えば、欠陥箇所を1、それ以外を0とした画像を欠陥検出結果として欠陥フィルタ部105へ出力する。欠陥検出部104から出力された欠陥検出結果と、検査画像正規化部101から出力された基準画像を欠陥フィルタ部105へ入力し、フィルタモデルDB8から読み込んだ学習済みのフィルタモデルを用いて、ピクセル単位で虚報、欠陥サイズ、欠陥種を特定する。その後、フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件にて指定された確信度、欠陥サイズ及び/又は欠陥種のみをフィルタリングし、出力部11から最終結果を出力する。フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件は、欠陥サイズや欠陥種で指定される。欠陥種は、例えば、配線パターンが短いもの、配線パターンが短絡しているもの(本来繋がっているべき配線が断線している状態)、配線パターンが先細りしているもの、配線パターンが開放しているもの(本来離れているべき配線が繋がっている状態)、配線パターン上に傷があるもの、配線パターン上あるいは配線パターン外に異物が乗っているもの、配線パターン以外の部分の欠陥、コントラスト等がある。試料の加工工程により、最終的に出力したい欠陥サイズや欠陥種は異なるため、フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件により各加工工程で必要な欠陥のみを抽出する必要がある。
【0019】
図5は、
図1に示す欠陥検査システム100による推論時のフローチャートである。まず、ステップS201にて、撮像レシピ2に基づき、検査装置3により検査画像を取得する。次に、ステップS202にて、欠陥検出部104が参照画像比較検査にて、欠陥検出結果を取得する。その後、ステップS203にて検査画像正規化部101が、上述の変換式(1)を用いて、検査対象となる検査画像を基準画像(正規化の基準となる画像)へ変換する。そして、ステップS204では、欠陥フィルタ部105がフィルタモデルDB8から学習済のフィルタモデルを読み込む。そして、ステップS205にて、欠陥フィルタ部105に、欠陥検出部104の欠陥検出結果と、基準画像を入力し、読み込んだ学習済みのフィルタモデル(分類モデル)を使用して、ピクセル単位で虚報、欠陥サイズ、欠陥種を特定する。最後に、ステップS206にて、欠陥フィルタ部105が、フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件で設定された欠陥サイズ及び/又は欠陥種のみを出力部11へ出力する。これにより、前回とは異なる加工工程における欠陥検査においても、フィルタモデルを学習せずに、既存のフィルタモデルを用いて、虚報、欠陥サイズ、欠陥種を識別することができる。更に、欠陥を検出しにくい加工工程における検査において、学習データを収集してフィルタモデルを学習しなくとも、既存のフィルタモデルを用いて、虚報、欠陥サイズ、欠陥種を識別することができる。ここで、欠陥を検出しにくい加工工程における検査とは、欠陥が少なくて学習データの収集が困難である場合を意味する。
【0020】
図6は、本実施例における具体的な欠陥検査フローの詳細図である。
図6に示すように、試料は、加工工程1、加工工程2、加工工程3、加工工程4を経て完成する場合を考える。加工工程1と加工工程3において、それぞれ欠陥を分類する場合、従来は加工工程毎に学習部や欠陥分類部を有する必要があった(
図14参照)。しかし、
図6に示すように、検査画像DBと正規化条件DBを有し、加工工程1及び加工工程3の検査画像を検査画像DBへ、加工工程1及び加工工程3のそれぞれの検査画像を基準画像に変換するための変換パラメータを正規化条件DBへ格納しておくことで、加工工程1と加工工程3の検査画像を同一の基準画像に変換することができるため、学習部や欠陥分類部を各加工工程で共通にすることができる。更に、欠陥が出やすい検査画像を用いてフィルタモデルを学習し、学習済のフィルタモデルを用いて欠陥が出にくい別の加工工程の検査ができることも利点である。
【0021】
図7は、本実施例に係る欠陥フィルタ部の動作を示す図である。欠陥フィルタ部105は、検査画像、参照画像、欠陥検出結果をフィルタモデルDB8に格納されているフィルタモデルに入力すると、ピクセル単位で欠陥サイズや欠陥種を判定する。
図7では、例として配線パターンが短いもの、短絡しているもの、先細りしているもの、開放しているものの4パターンの欠陥種に分類する場合を示す。その後、フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件により、例えば、欠陥サイズは250pix以上、欠陥種は配線パターンが短いもの、短絡しているもの、開放しているものの3種類のみを検出するように設定し、欠陥フィルタ部105にフィルタモデルによる分類結果と、フィルタ条件を入力すると、最終的に配線パターンが先細りしているもの以外の3種類のみを出力することができる。なお、フィルタ条件の欠陥種のうち、先細りについては未検出となっているが、これは先細りについては検出不要であることを意味する。
【0022】
図8は、本実施例に係る欠陥フィルタ部105のフローチャートである。まず、ステップS301では、ピクセル単位で表示されるフィルタモデルの出力を、所定のピクセル内の検出結果を一塊とする。ここで一塊とは、各ピクセルに入っている情報が0以外の連続した領域(連結領域)を1つの塊と定義する。その後、ステップS302では、ステップS301で作成した塊毎に欠陥サイズおよび欠陥種を特定する。最後に、ステップS303では、フィルタ条件保持部106に保持されたフィルタ条件106により示される所定の欠陥サイズ、欠陥種に属さないフィルタモデルの出力を検出無しに変更する。これにより、任意の加工工程において必要な欠陥サイズ、欠陥種のみを抽出することができる。
【0023】
図9は、本実施例に係る検査画像正規化部101のフローチャートである。まず、ステップS401では、予めフィルタモデルの学習に使用する基準画像を決めておく。次に、ステップS402にて、加工工程別に検査画像を用意し、検査画像と基準画像を同一画像に変換するための変換パラメータa
i、b
iを算出し、それらを正規化条件DB6へ格納する。最後に、S403にてステップ検査画像正規化部101が、検査画像を、上述の変換式(1)を用いて基準画像へ変換する。これにより、加工工程が異なる検査画像を、全ての加工工程において共通のフィルタモデルで使用可能な基準画像に変換することができる。
【0024】
図10は、本実施例に係る検査画像正規化部101の効果の一例を表す図である。
図10に示すように、加工工程A、加工工程B、加工工程Cがあり、それぞれの検査画像は、配線パターンは同じだが、色味が異なる場合を考える。ここで、加工工程A、加工工程B、加工工程Cは、例えばエッチング工程やリソグラフィ工程等を意味する。検査画像正規化部101にて、3枚の検査画像を上述の変換式(1)を用いてそれぞれ変換すると、3枚全てが同一の基準画像になる。これにより、加工工程が異なっていても、同一のフィルタモデルを用いて欠陥種を分類することができる。
【0025】
図11と
図12を用いて、欠陥検査システム100の制御に用いる入出力装置GUI(Graphical User Interface)の具体例について説明する。なお上述したように、この入出力装置GUIは、例えば、
図1に示す出力部11に相当する。
図11は学習用GUIを表す図である。学習用GUIには、(1)学習データ選択部、(2)正規化条件選択部、(3)学習条件設定部、(4)変換後検査画像確認部、(5)学習結果確認部等が設定される。(1)学習データ選択部では、欠陥検査の対象となる加工工程における検査画像を選択する。(2)正規化条件選択部では、(1)で選択した検査画像を基準画像に変換するための変換パラメータa
i、b
iを選択する。(3)学習条件設定部では、損失回数や学習回数、学習率等を設定する。この条件の元で、まず検査画像を基準画像に変換し、その結果を(4)変換後検査画像確認部に出力する。出力された基準画像を用いてフィルタモデルを学習し、学習結果は(5)学習結果確認部に出力される。出力された学習結果を確認し、評価指標であるPrecision(検出精度)、Recall(欠陥検出率)、虚報除去率が目標値に達していなければ、再度(3)学習条件設定部で学習条件を設定し直し、フィルタモデルを学習する。
【0026】
図12は推論用GUIを表す図である。推論用GUIには、(1)推論データ選択部、(2)フィルタモデル選択部、(3)正規化条件選択部、(4)フィルタ条件設定部、(5)変換後検査画像確認部、(6)推論結果確認部等が設定される。(1)推論データ選択部では、欠陥検査の対象となる加工工程における検査画像を選択する。(2)フィルタモデル選択部では、検査対象の加工工程で使用可能なフィルタモデルを選択する。(3)正規化条件選択部では、学習用GUIと同様に、(1)で選択した検査画像を基準画像に変換するための変換パラメータa
i、b
iを選択する。(4)フィルタ条件設定部では、検査対象の加工工程において、抽出したい欠陥サイズや欠陥種を設定する。検査画像を基準画像に変換した結果は(5)変換後検査画像確認部に出力される。出力された基準画像は、(2)フィルタモデル選択部で指定したフィルタモデルによって推論され、所定のピクセル内の塊単位で欠陥種を分類する。その後、(4)フィルタ条件設定部で設定された条件に基づき、加工工程毎に抽出したい欠陥のみが出力される。これらの推論結果は、(6)推論結果確認部に出力される。
【0027】
以上の通り本実施例によれば、各検査工程で共通に使用できるフィルタモデルを有することで高効率な検査を可能とし得る欠陥検査システム及び欠陥検査方法を提供することが可能となる。
具体的には、加工工程の異なる検査画像を共通の基準画像に変換することで、フィルタモデルを加工工程毎に有する必要がなくなり、全ての加工工程で共通のフィルタモデルを使用可能となるため、検査時間を短縮できる。また、管理すべきフィルタモデルの数が少なくなるため、管理も容易になるという利点がある。更に、欠陥検出結果に含まれる虚報を除去するだけでなく、加工工程毎に欠陥サイズや欠陥種を特定することができる。そして、欠陥を検出しにくい加工工程における検査において、学習データを収集してフィルタモデルを学習しなくとも、既存のフィルタモデルを用いて、虚報、欠陥サイズ、欠陥種を識別することができる。
本実施例では、撮像条件が異なることによる変形量、画質、コントラストが変わる点に着目したもので有り、また、加工工程毎に、最適な撮像条件も変化し得る点を考慮したものである。
以上の通り本実施例によれば、撮像条件の違いによる検査画像の差を吸収することが可能となり高効率な検査を可能とし得る欠陥検査システム及び欠陥検査方法を提供することが可能となる。
具体的には、撮像条件が異なることによる変形量、画質、コントラストが変わる場合、或いは、加工工程毎に最適な撮像条件が変化する場合においても、検査画像の差を吸収することが可能となる。
上述の実施例1及び実施例2では、欠陥検査システム100を構成するデータ処理部10は検査装置3とは別で構成されていたが、検査装置3の内部に設ける構成としても良い。また、実施例11及び実施例2では、計算機7の内部に欠陥検出部104、欠陥フィルタ部105、検査画像正規化部101を設ける構成としたが、これに限られるものではない。例えば、欠陥フィルタ部105及び検査画像正規化部101は、欠陥検出部104とは別の計算機或いは装置に設ける構成としても良い。
また、上述の実施例1及び実施例2では、半導体に対する欠陥検査システム100を一例としたが、半導体に限らず、画像を用いる外観検査装置であれば適用可能である。例えば、部品の不良品検査など、量産ラインにおける外観検査に適用できる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。