(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042802
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230320BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20230320BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230320BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20230320BHJP
H01M 10/18 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/121
H01M4/14 Z
H01M10/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150145
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田井中 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD13
5H011DD14
5H028AA05
5H028BB01
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC19
5H028CC24
5H028EE04
5H028EE06
5H050AA19
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050DA19
5H050FA03
5H050GA04
5H050GA07
(57)【要約】
【課題】各セル部材に一対のピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを抑制することができる双極型蓄電池を提供する。
【解決手段】双極型蓄電池100において、複数のセル151の各々を形成する積層方向一側のフレームユニット120,110,110及び積層方向他側のフレームユニット110,110,130からそれぞれ突出して互いに対向し、対向する接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を接合させて連結される対をなすピラー123;113,113;113,113;133を有する。また、各セル部材150には、対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143が形成される。貫通孔143の外周面を構成する電解層140の内周面140aには凹部160が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、前記複数のセル部材を個別に収容する複数のセルと、前記複数のセルを形成する複数のフレームユニットと、を備え、積層方向に隣り合う前記セル部材同士が直列に電気的に接続されているとともに、前記複数のセルの各々を形成する積層方向一側の前記フレームユニット及び積層方向他側の前記フレームユニットからそれぞれ突出して互いに対向し、対向する接合面同士を接合させて連結される対をなすピラーを有し、前記複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、前記対をなすピラーが挿通される貫通孔が形成されている双極型蓄電池であって、
前記貫通孔の外周面を構成する前記電解層の内周面に凹部を形成したことを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記凹部が、前記電解層の前記積層方向の一方側端に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記貫通孔の外周面を構成する前記正極用活物質層及び前記負極用活物質層のそれぞれの内周面が、前記凹部を形成した前記電解層の内周面に対し凹んでいることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記複数のセル部材の積層方向が水平方向であり、前記凹部が前記電解層の内周面のうち少なくとも前記対をなすピラーの下方側に位置する箇所に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記正極用活物質層及び前記負極用活物質層のそれぞれの内周面のうち少なくとも前記対をなすピラーの下方側に位置する箇所が、前記凹部を形成した前記電解層の内周面に対し凹んでいることを特徴とする請求項4に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記正極が正極用鉛層を有し、前記負極が負極用鉛層を有する双極型鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されており、中でもエネルギー密度の観点から、双極(バイポーラ)型鉛蓄電池が注目されている。
【0003】
この双極型鉛蓄電池は、正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数のセルを形成する、複数のフレームユニットと、を備え、積層方向に隣り合うセル部材同士が直列に電気的に接続されてなる。
【0004】
そして、この双極型鉛蓄電池において、複数のセルの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットを互いに固定するために、積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットが、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定されるものも開発されている。
【0005】
この双極型鉛蓄電池における、積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットを、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定するもとにして、従来、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
【0006】
特許文献1に示すバイポーラ蓄電池プレートにおいては、各セルを形成する積層方向一側のフレーム及び積層方向他側のフレームが、それぞれのバイポーラプレートから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のスタンドオフによって固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した双極型鉛蓄電池においては、複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、一対のピラーが挿通される貫通孔が形成されている。
この貫通孔を各セル部材に形成する際には、正極用活物質層及び負極用活物質層に貫通孔を加工することになる。この加工の際に、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部がボロボロと崩れることが多い(遊離活物質の発生)。
また、双極型鉛蓄電池の充放電、ガッシング(充放電時に正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれにガスが発生する)等の影響によって正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れることもある。
このように、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れると、正極用活物質層と負極用活物質層との間が架橋された状態となり、短絡してしまうおそれがある。
特許文献1においては、一対のスタンドオフとこれらスタンドオフが挿通されるセル部材の貫通孔については言及されておらず、特許文献1に示されたバイポーラ蓄電池プレートにおいても同様に、正極用活物質と負極用活物質との間が架橋された状態となって、短絡してしまうおそれがある。
【0009】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、各セル部材に対をなすピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを抑制することができる双極型蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有する双極型蓄電池を提供する。
(1)正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、前記複数のセル部材を個別に収容する複数のセルと、前記複数のセルを形成する複数のフレームユニットと、を備える。積層方向に隣り合うセル部材同士が直列に電気的に接続されている。
(2)前記複数のセルの各々を形成する積層方向一側の前記フレームユニット及び積層方向他側の前記フレームユニットからそれぞれ突出して互いに対向し、対向する接合面同士を接合させて連結される対をなすピラーを有し、前記複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、前記対をなすピラーが挿通される貫通孔が形成されている。
(3) 前記貫通孔の外周面を構成する前記電解層の内周面に凹部を形成してある。
ここで、「対をなすピラー」は、積層方向一側のフレームユニットから突出するピラーと、積層方向他側のフレームユニットから突出するピラーとが対向していればよく、積層方向一側のフレームユニットから突出するピラーの突出長と、積層方向他側のフレームユニットから突出するピラーの突出長とが同じであっても異なっていてもよいものを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る双極型蓄電池によれば、貫通孔の外周面を構成する電解層の内周面に凹部を形成したので、電解層の内周面に何も形成しない場合に比べて凹部の分だけ正極用活物質層の孔端部から負極用活物質層の孔端部に至るまでの沿面距離が長くなる。これにより、各セル部材に対をなすピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層と負極用活物質層との間が架橋されるおそれは少なくなり、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、凹部が、電解層の積層方向の一方側端に形成されているので、電解層の内周面に凹部を加工するに際しその凹部を例えば面取り形状とし、凹部の加工を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、貫通孔の外周面を構成する正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの内周面が、凹部を形成した電解層の内周面に対し凹んでいるので、電解層の内周面に凹部を形成した場合よりも更に正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの内周面が電解層の内周面に対し凹んでいる分だけ正極用活物質層の孔端部から負極用活物質層の孔端部に至るまでの沿面距離が長くなる。これにより、各セル部材に対をなすピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層と負極用活物質層との間が架橋されるおそれはより少なくなり、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのをより抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、複数のセル部材の積層方向が水平方向であり、凹部が電解層の内周面のうち少なくとも対をなすピラーの下方側に位置する箇所に形成されている。複数のセル部材の積層方向を水平方向とする場合、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れた場合に、崩れた正極用活物質及び負極用活物質が対をなすピラーよりも下側に位置する正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部近傍に落下し、堆積する。そして、堆積した正極用活物質及び負極用活物質が架橋して互いに接触して、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生することが多い。この場合に、前述の凹部が電解層の内周面のうち少なくとも対をなすピラーの下方側に位置する箇所に形成されていることで、崩れた正極用活物質及び負極用活物質が当該孔端部近傍に落下し、堆積したとしても、崩れた正極用活物質及び負極用活物質の一部が凹部に捕獲されることになり、正極用活物質層と負極用活物質層とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、複数のセル部材の積層方向が水平方向であり、凹部が電解層の内周面のうち少なくとも対をなすピラーの下方側に位置する箇所に形成される場合において、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの内周面のうち少なくとも対をなすピラーの下方側に位置する箇所が、凹部を形成した電解層の内周面に対し凹んでいる。これにより、正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの孔端部が崩れた場合に、崩れた正極用活物質及び負極用活物質が対をなすピラーよりも下側に位置する正極用活物質層及び負極用活物質層のそれぞれの内周面の箇所近傍に落下し、堆積する。この場合に、崩れた正極用活物質及び負極用活物質が堆積する箇所が電解層の内周面に対し凹んでいるので、その凹んでいる箇所に崩れた正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが収まり、正極用活物質層と負極用活物質層とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、正極が正極用鉛層を有し、負極が負極用鉛層を有する双極型鉛蓄電池であるので、双極型鉛蓄電池において、各セル部材に対をなすピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合の本発明の作用を説明するための図である。
【
図3】参考例に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合に堆積した正極用活物質層及び負極用活物質層が架橋して互いに接触する様子を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図4に示す本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合の本発明の作用を説明するための図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合の本発明の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る双極型蓄電池の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1において、左右方向(水平方向)をセル部材の積層方向とし、「左側」を積層方向一側、「右側」を積層方向他側として説明する。
【0020】
図1に示す双極(バイポーラ)型蓄電池100は、正極141が正極用鉛層101を有し、負極142が負極用鉛層102を有する双極型鉛蓄電池であり、複数(本実施形態にあっては3つ)のセル部材150と、複数(本実施形態にあっては2つ)の内部用フレームユニット(フレームユニット)110と、第一の端部用フレームユニット120(フレームユニット)と、第二の端部用フレームユニット(フレームユニット)130とを備えている。
複数のセル部材150は、水平方向(
図1における左右方向)に、間隔を空けて積層配置されている。
複数の内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、及び第二の端部用フレームユニット130は、複数のセル部材150を個別に収容する複数のセル(空間)151を形成する。
【0021】
各内部用フレームユニット110は、平面形状が長方形で積層方向一面(左面)上に負極142を配設されて積層方向他面(右面)上に正極141を配設されるバイポーラプレート111と、バイポーラプレート111の周縁に設けられる、例えば、四角状の枠形(額縁形)のリム112とを備えている。バイポーラプレート111は、セル部材150の積層方向で隣り合うセル部材150の間に配置されている。各内部用フレームユニット110の各リム112は、セル部材150の積層方向で互いに対向する接合面112aを備えている。
【0022】
バイポーラプレート111は、リム112の内側に一体化されている。内部用フレームユニット110は、耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(アクリル樹脂)、アクリルニトリルーブタンジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート等)製である。バイポーラプレート111は、リム112の厚さ方向(積層方向)の中程に位置している。リム112は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。
【0023】
第一の端部用フレームユニット120は、平面形状が長方形の第一のエンドプレート121と、四角状の枠形(額縁形)のリム122とからなる。第一のエンドプレート121はリム122の内側に一体化されている。第一の端部用フレームユニット120は耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
第一の端部用フレームユニット120は、双極型蓄電池100の積層方向一側端(
図1における左側端)において、セル部材150の側面と正極141側を囲うものである。第一のエンドプレート121がセル部材150の正極141側を囲い、リム122が、セル部材150の側面を囲っている。
第一のエンドプレート121は、内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111と平行に配置され、リム122は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。つまり、リム122は、セル部材150の積層方向(
図1における左右方向)で、内部用フレームユニット110のリム112と対向する接合面122aを備えている。
【0024】
第一のエンドプレート121は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。リム122は、第一のエンドプレート121の厚さよりも厚い厚さとなっている。第一のエンドプレート121は、リム122の厚さ方向(積層方向)で一方端(積層方向一側端)に位置するように設定されている。
【0025】
第二の端部用フレームユニット130は、平面形状が長方形の第二のエンドプレート131と、四角状の枠形(額縁形)のリム132とからなる。第二のエンドプレート131はリム132の内側に一体化されている。第二の端部用フレームユニット130は耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
第二の端部用フレームユニット130は、双極型蓄電池100の積層方向他側端(
図1における右側端)において、セル部材150の側面と負極142側を囲うものである。第二のエンドプレート131がセル部材150の負極142側を囲い、リム132が、セル部材150の側面を囲っている。
第二のエンドプレート131は、内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111と平行に配置され、リム132は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。つまり、リム132は、セル部材150の積層方向(
図1における左右方向)で、内部用フレームユニット110のリム112と対向する接合面132aを備えている。
【0026】
第二のエンドプレート131は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。リム132は、第二のエンドプレート131の厚さよりも厚い厚さとなっている。第二のエンドプレート131は、リム132の厚さ方向(積層方向)で他方端(積層方向他側端)に位置するように設定されている。
【0027】
バイポーラプレート111の積層方向一面(
図1における左面)上には、負極用鉛層102が配設されている。バイポーラプレート111の積層方向他面(
図1における右面)上には、正極用鉛層101が配設されている。負極用鉛層102上には、負極用活物質層104が配設され、負極用鉛層102及び負極用活物質層104により負極142が構成されている。正極用鉛層101上には、正極用活物質層103が配設され、正極用鉛層101及び正極用活物質層10により正極141が構成されている。
【0028】
対向する正極用活物質層103と負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
【0029】
第一のエンドプレート121の積層方向他面(
図1における右面)上には、正極用鉛層101が配設されている。第一のエンドプレート121上の正極用鉛層101には、正極用活物質層103が配設され、正極用鉛層101及び正極用活物質層103により正極141が構成されている。第一のエンドプレート121上の正極用活物質層103と、対向するバイポーラプレート111の負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
【0030】
第二のエンドプレート131の積層方向一面(
図1における左面)上には、負極用鉛層102が配設されている。第二のエンドプレート131上の負極用鉛層102には、負極用活物質層104が配設され、負極用鉛層102及び負極用活物質層104により負極142が構成されている。第二のエンドプレート131上の負極用活物質層104と、対向するバイポーラプレート111の正極用活物質層103との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
【0031】
第一のエンドプレート121上の正極用鉛層101には、第一のエンドプレート121の外側へ導通する正極端子105が設けられている。第二のエンドプレート131上の負極用鉛層102には、第二のエンドプレート131の外側へ導通する負極端子106が設けられている。
【0032】
つまり、第1実施形態に係る双極型蓄電池100は、正極用活物質層103を有する正極141、負極用活物質層104を有する負極142、および正極141と負極142との間に介在する電解層140を備えた複数のセル部材150と、複数のセル部材150を個別に収容する複数のセル151と、複数のセル151を形成する複数のフレームユニット(複数の内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、第二の端部用フレームユニット130)とを備えている。
【0033】
そして、積層方向に隣り合うセル部材150同士は電気的に直列に接続されている。このため、積層方向に隣り合うセル部材150同士の間に介在するバイポーラプレート111は、正極用鉛層101と負極用鉛層102とを電気的に接続する手段を備えている。
【0034】
また、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士、隣接する第一の端部用フレームユニット120のリム122の接合面122a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士、及び隣接する第二の端部用フレームユニット130のリム132の接合面132a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士は、接着剤又は振動溶着により接合される。
振動溶着は、例えば、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する際には、一方の接合面112aを他方の接合面112aに対して押圧し、振動させて摩擦熱を発生させ、一方の接合面112aと他方の接合面112aとを溶融させるものである。
【0035】
そして、双極型蓄電池100は、複数のセル151の各々を形成する積層方向一側のフレームユニット120,110,110及び積層方向他側のフレームユニット110,110,130からそれぞれ突出して互いに対向し、対向する接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を接合させて連結される対をなすピラー123;113,113;113,113;133を有している。
【0036】
具体的に説明すると、積層方向一側端のセル151を形成する積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120の第一のエンドプレート121には、平面視でそのほぼ中央部に第一のエンドプレート121から積層方向他側(
図1では右側)に向けて突出するピラー123が設けられている。ピラー123は、第一のエンドプレート121と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面123aとしてある。
また、第一の端部用フレームユニット120と対向する積層方向他側の内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向一側(
図1では左側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、ピラー123と対向するようにバイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
そして、積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120のピラー123の接合面123aと、積層方向他側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aとを接合し、積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120と積層方向他側の内部用フレームユニット110とが固定される。この接合面123a,113a同士の接合は、第一の端部用フレームユニット120のリム122の接合面122a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。
なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー113の突出長と積層方向一側のピラー123の突出長とは同一となっている。
【0037】
また、積層方向中央のセル151を形成する積層方向一側の内部用フレームユニット110(この内部用フレームユニットは積層方向一側端のセル151を形成する積層方向他側の内部用フレームユニット110と同一である)のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向他側(
図1では右側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、バイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
また、積層方向他側の内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向一側(
図1では左側)に向けて突出するピラー113が設けられている。このピラー113は、積層方向一側の前述のピラー113と対向するようにバイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
そして、積層方向一側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aと、積層方向他側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aとを接合し、積層方向一側の内部用フレームユニット110と積層方向他側の内部用フレームユニット110とが固定される。この接合面113a,113a同士の接合は、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。
なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー113の突出長と積層方向一側のピラー113の突出長とは同一となっている。
【0038】
また、積層方向他側端のセル151を形成する積層方向一側の内部用フレームユニット110(この内部用フレームユニットは積層方向中央のセル151を形成する積層方向他側の内部用フレームユニット110と同一である)のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向他側(
図1では右側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、バイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
また、積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130の第二のエンドプレート131には、平面視でそのほぼ中央部に第二のエンドプレート131から積層方向一側(
図1では左側)に向けて突出するピラー133が設けられている。このピラー133は、積層方向一側の前述のピラー113と対向するように第二のエンドプレート131と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面133aとしてある。
そして、積層方向一側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aと、積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130のピラー133の接合面133aとを接合し、積層方向一側の内部用フレームユニット110と積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130とが固定される。この接合面113a,133a同士の接合は、第二の端部用フレームユニット130のリム132の接合面132a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。
なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー133の突出長と積層方向一側のピラー113の突出長とは同一となっている。
【0039】
そして、双極型蓄電池100において、複数のセル151の各々に収容される各セル部材150には、積層方向に貫通し、対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143が形成されている。
【0040】
具体的に説明すると、積層方向一側端に形成されるセル151に収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、対をなすピラー123;113が挿通される貫通孔143が形成されている。
【0041】
また、同様に、積層方向中央に形成されるセル151に収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、対をなすピラー113;113が挿通される貫通孔143が形成されている。
【0042】
更に、同様に、積層方向他側端に形成されるセル151に収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、対をなすピラー113;133が挿通される貫通孔143が形成されている。
各セル部材150において、貫通孔143を形成することで、
図2に示すように、貫通孔143の外周面を構成する電解層140の内周面140a、正極用鉛層101の内周面101a、負極用鉛層102の内周面102a、正極用活物質層103の内周面103a、及び負極用活物質層104の内周面104aは、面一となっている。
【0043】
このように構成された双極型蓄電池100において、正極用活物質層103及び負極用活物質層104に貫通孔143を加工する際に、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部がボロボロと崩れることが多い(遊離活物質の発生)。
また、双極型蓄電池100の充放電、ガッシング(充放電時に正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれにガスが発生する)等の影響によって正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れることもある。
このように、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れると、
図3の参考例に示すように、双極型蓄電池400において、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが対をなすピラー123;113,113;113,113;133(
図3では、113,113のみ図示)よりも下側に位置する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部近傍に落下し、堆積する。そして、堆積した正極用活物質103b及び負極用活物質104bが電解層140の孔端部近傍で架橋して互いに接触して、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生することが多い。
【0044】
この問題を解決するために、本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池100においては、
図1及び
図2に示すように、貫通孔143の外周面を構成する電解層140の内周面140aに凹部160が形成されている。
【0045】
凹部160につき、具体的に説明すると、断面が矩形状の凹部160が電解層140の内周面140aの積層方向の中央部に内周面140aの全周にわたって形成されている。
このように、第1実施形態に係る双極型蓄電池100によれば、電解層140の内周面140aに凹部160を形成することにより、正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離は、正極用活物質層103の孔端部から電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向一側端部までの距離L1、電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向一側端部から凹部160の底面の積層方向一側端部までの距離L2、凹部160の底面の積層方向一側端部から積層方向他側端部までの距離L3、凹部160の底面の積層方向他側端部から電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向他側端部までの距離L4、及び電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向他側端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの距離L5を合わせたL1+L2+L3+L4+L5となる。
【0046】
この沿面距離L1+L2+L3+L4+L5は、電解層140の内周面140aに何も形成しない場合(
図3に示す参考例の場合)の正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離L6(=L1+L3+L5)と比べて凹部160の分(L2+L4)だけ、長くなる。
これにより、各セル部材150に対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143を形成した場合において、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層103と負極用活物質層104との間が架橋されるおそれは少なくなり、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを抑制することができる。
【0047】
特に、第1実施形態に係る双極型蓄電池100の場合、複数のセル部材150の積層方向が水平方向であり、凹部160が電解層140の内周面140aの全周にわたって形成されている。このため、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に、
図2に示すように、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが対をなすピラー123;113,113;113,113;133よりも下側に位置する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部近傍に落下し、堆積したとしても、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bの一部が凹部160に捕獲されることになり、正極用活物質層103と負極用活物質層104とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の断面図である。
図5は、
図4に示す本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合の本発明の作用を説明するための図である。
図4及び
図5において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図4及び
図5に示す第2実施形態に係る双極型蓄電池200は、その基本構成は
図1及び
図2に示す第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同一である。しかし、第2実施形態に係る双極型蓄電池200においては、凹部160が、電解層140の積層方向の一方側端に形成されている点で第1実施形態に係る双極型蓄電池100と相違している。
【0049】
凹部160は、具体的に説明すると、電解層140の内周面140aの負極用活物質層104側の端に内周面140aの全周にわたって面取り形状で形成されている。
【0050】
第2実施形態に係る双極型蓄電池200においては、電解層140の内周面140aの負極用活物質層104側の端に凹部160を形成しているので、正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離は、正極用活物質層103の孔端部から電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向一側端部までの距離L7、電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向一側端部から負極用活物質層104までの面取り斜面の長さL8、及び凹部160の面取り斜面と負極用活物質層104との交点から負極用活物質層104の孔端部までの距離L9を合わせたL7+L8+L9となる。
【0051】
この沿面距離L7+L8+L9は、電解層140の内周面140aに何も形成しない場合(
図3に示す参考例の場合)の正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離L6と比べて長い。
これにより、各セル部材150に対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143を形成した場合において、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層103と負極用活物質層104との間が架橋されるおそれは少なくなり、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを抑制することができる。
【0052】
また、凹部160は、電解層140の積層方向の一方側端に形成されているので、電解層140の内周面140aに凹部160を加工するに際しその凹部160を面取り形状とすることでその凹部160の加工を容易に行うことができる。
【0053】
なお、凹部160が形成される電解層140の積層方向の一方側端は、電解層140の負極用活物質層104側の端である。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の断面図である。
図7は、
図6に示す本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれの孔端部が崩れた場合の本発明の作用を説明するための図である。
図6及び
図7において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図6及び
図7に示す第3実施形態に係る双極型蓄電池300は、その基本構成は
図1及び
図2に示す第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同一である。しかし、第3実施形態に係る双極型蓄電池300においては、貫通孔143の外周面を構成する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aが、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し凹んでいる点で相違している。
【0055】
凹部160は、第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同様に、断面が矩形状に形成され、電解層140の内周面140aの積層方向の中央部に内周面140aの全周にわたって形成されている。
【0056】
そして、正極用活物質層103の内周面103a及び負極用活物質層104の内周面104aは面一に形成され、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し内周面103a及び内周面104aの全周にわたって凹んでいる。
また、正極用鉛層101の内周面101a及び負極用鉛層102の内周面102aは、正極用活物質層103の内周面103a及び負極用活物質層104の内周面104aと面一に形成され、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し内周面101a及び内周面102aの全周にわたって凹んでいる。
【0057】
このように、第3実施形態に係る双極型蓄電池300によれば、貫通孔143の外周面を構成する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aが、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し凹んでいる。これにより、正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離は、
図7に示すように、正極用活物質層103の孔端部から電解層140の内周面104aの積層方向一側端部までの距離L10、電解層140の内周面104aの積層方向一側端部から凹部160の積層方向一側端部までの距離L11、電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向一側端部から凹部160の底面の積層方向一側端部までの距離L12、凹部160の底面の積層方向一側端部から積層方向他側端部までの距離L13、凹部160の底面の積層方向他側端部から電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向他側端部までの距離L14、電解層140の内周面104aにおける凹部160の積層方向側他端部から電解層140の内周面104aの積層方向他側端部までの距離L15、及び電解層140の内周面104aの積層方向他側端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの距離L16を合わせたL10+L11+L12+L13+L14+L15+L16となる。
【0058】
この沿面距離L10+L11+L12+L13+L14+L15+L16は、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aを電解層140の内周面140aと面一とする第1実施形態の場合の沿面距離に比べて、正極用活物質層103の孔端部から電解層140の内周面104aの積層方向一側端部までの距離L10及び電解層140の内周面104aの積層方向他端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの距離L16を合わせた分だけ、長くなる。
これにより、各セル部材150に対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143を形成した場合において、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層103と負極用活物質層104との間が架橋されるおそれは少なくなり、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのをより抑制することができる。
【0059】
また、第3実施形態に係る双極型蓄電池300によれば、複数のセル部材150の積層方向が水平方向であり、正極用活物質層103の内周面103a及び負極用活物質層104の内周面104aは、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し内周面103a及び内周面104aの全周にわたって凹んでいる。これにより、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に、
図7に示すように、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが対をなすピラー123;113,113;113,113;133よりも下側に位置する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aの箇所近傍に落下し、堆積する。この場合に、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが堆積する箇所が電解層140の内周面140aに対し凹んでいるので、その凹んでいる箇所に崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bのそれぞれが収まり、正極用活物質層103と負極用活物質層104とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1乃至第3実施形態に係る双極型蓄電池100,200,300において、セル151の数は、3つに限らず2つ以上の複数であればよい。
また、第1実施形態及び第3実施形態に係る双極型蓄電池100,300において凹部160は断面が矩形状に形成され、第2実施形態に係る双極型蓄電池200において凹部160は面取り形状に形成されているが、内周面140aから凹んでいる形状であればよく、断面が矩形状や面取り形状に限定されない。
【0061】
また、第1乃至第3実施形態に係る双極型蓄電池100,200,300において、複数のセル部材150の積層方向は水平方向としてあるが、当該積層方向を垂直方向(
図1、
図4、
図6における上下方向)としてもよい。
複数のセル部材150の積層方向を垂直方向としても、貫通孔143の外周面を構成する電解層140の内周面140aに凹部160を形成したので、電解層140の内周面140aに何も形成しない場合に比べて凹部160の分だけ正極用活物質層103の孔端部から負極用活物質層104の孔端部に至るまでの沿面距離が長くなる。これにより、各セル部材150に対をなすピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143を形成した場合において、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に正極用活物質層103と負極用活物質層104との間が架橋されるおそれは少なくなり、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを抑制することができる。
【0062】
また、第1及び第2実施形態に係る双極型蓄電池100,200において、凹部160は、電解層140の内周面140aに内周面140aの全周にわたって形成されているが、必ずしもその必要はなく、凹部160が電解層140の内周面140aのうち少なくとも対をなすピラー123;113,113;113,113;133の下方側に位置する箇所に形成されていればよい。
このように、複数のセル部材150の積層方向が水平方向であり、凹部160が電解層140の内周面140aのうち少なくとも対をなすピラー123;113,113;113,113;133の下方側に位置する箇所に形成されている。これにより、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが対をなすピラー123;113,113;113,113;133よりも下側に位置する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部近傍に落下し、堆積したとしても、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bの一部が凹部160に捕獲されることになり、正極用活物質層103と負極用活物質層104とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0063】
また、第3実施形態に係る双極型蓄電池300においても、凹部160は電解層140の内周面140aのうち少なくとも対をなすピラー123;113,113;113,113;133の下方側に位置する箇所に形成されていればよく、この場合に、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aのうち少なくとも対をなすピラー123;113,113;113,113;133の下方側に位置する箇所が、凹部160を形成した電解層140の内周面140aに対し凹んでいればよい。
これにより、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部が崩れた場合に、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが対をなすピラー123;113,113;113,113;133よりも下側に位置する正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの内周面103a,104aの箇所近傍に落下し、堆積する。この場合に、崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bが堆積する箇所が電解層140の内周面140aに対し凹んでいるので、その凹んでいる箇所に崩れた正極用活物質103b及び負極用活物質104bのそれぞれが収まり、正極用活物質層103と負極用活物質層104とが架橋するおそれが少なくなる。これにより、正極用活物質層103と負極用活物質層104との短絡が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0064】
また、第1乃至第3実施形態に係る双極型蓄電池100,200,300において、積層方向他側のピラー113,113,133の突出長と積層方向一側のピラー123,113,113の突出長とは同一となっているが、異なっていても良い。
また、第1乃至第3実施形態に係る双極型蓄電池100,200,300においては、正極141が正極用鉛層101を有し、負極142が負極用鉛層102を有する双極型鉛蓄電池としてあるが、正極141及び負極142に鉛以外の金属を用いた双極型蓄電池としてもよい。
また、第2実施形態に係る双極型蓄電池200において、凹部160は、電解層140の負極用活物質層104側の端に形成されているが、電解層140の正極用活物質層103側の端に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る双極型蓄電池は、各セル部材に対をなすピラーが挿通される貫通孔を形成した場合において、正極用活物質層と負極用活物質層との短絡が発生するのを抑制することができるので、各種産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
100,200,300 双極(バイポーラ)型蓄電池
101 正極用鉛層
101a 内周面
102 負極用鉛層
102a 内周面
103 正極用活物質層
103a 内周面
103b 正極用活物質
104 負極用活物質層
104a 内周面
104b 負極用活物質
105 正極端子
106 負極端子
110 内部用フレームユニット
111 バイポーラプレート
112 リム
112a 接合面
113 ピラー
113a 接合面
120 第一の端部用フレームユニット
121 第一のエンドプレート
122 リム
122a 接合面
123 ピラー
123a 接合面
130 第二の端部用フレームユニット
131 第二のエンドプレート
132 リム
132a 接合面
133 ピラー
133a 接合面
140 電解層
140a 内周面
141 正極
142 負極
143 貫通孔
150 セル部材
151 セル(セル部材を収容する空間)
160 凹部