(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042804
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/102 20210101AFI20230320BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230320BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20230320BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230320BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20230320BHJP
H01M 10/18 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H01M50/102
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/121
H01M4/68 A
H01M10/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150147
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD13
5H011DD14
5H017AA01
5H017AS03
5H017AS07
5H017BB11
5H017CC03
5H017CC07
5H017DD01
5H017DD08
5H017EE02
5H017EE07
5H028AA07
5H028AA08
5H028BB01
5H028BB05
5H028CC01
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC19
5H028CC24
5H028EE06
(57)【要約】
【課題】例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供する。
【解決手段】正極用集電体111aを有する正極111、負極用集電体112aを有する負極112、及び正極111と負極112との間に介在するセパレータ113を備え、間隔を開けて積層配置されたセル部材110と、セル部材110の正極111の側および負極112の側の少なくとも一方を覆う基板121を含む空間形成部材120と、正極用集電体111a及び負極用集電体112aを基板121の一方の面或いは他方の面に設ける際に用いられる接着剤150と、を備え、基板121の表面には窪み124が設けられるとともに、窪み124には接着剤150が充填されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記正極用集電体及び前記負極用集電体を前記基板の一方の面或いは他方の面に設ける際に用いられる接着剤と、を備え、
前記基板の表面には窪みが設けられるとともに、前記窪みには前記接着剤が充填されていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記窪みは、前記基板の前記一方の面及び前記他方の面にシボ加工が施されることによって設けられることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記窪みは、前記基板の前記一方の面及び前記他方の面に設けられる溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記溝は、前記空間形成部材の平行する2辺と平行に設けられる第1の溝と、前記平行する2辺に直交する2辺と平行に設けられる第2の溝とが組み合わされて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記溝は、ハニカム状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記窪みは、前記基板の前記一方の面と前記他方の面とで重複しないように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記基板と前記枠体とが接する前記基板の周縁部には、肉厚部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記肉厚部は、前記溝の端部が前記周縁部と接する位置と前記基板及び前記枠体が接する位置との間に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
前記正極用集電体および前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が設けられている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入して接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上記のようなバイポーラ型鉛蓄電池においては、電解液に含有される硫酸によって正極用鉛層が腐食して正極用鉛層の表面に腐食生成物(二酸化鉛や硫酸鉛)の被膜が生成されることがある。この際にガスが発生するが、この発生したガスによってセル部材が収容される空間であるセルにおける圧力が高まり、セルが膨張する可能性がある。
【0007】
バイポーラ型鉛蓄電池の設置の仕方としては、セル部材同士が天地方向に積層されるような場合と、90度傾けた水平方向に積層されるような場合と、に大別される。いずれの場合も、電池の劣化等によりセルが膨張してしまうと、例えば、正極用鉛層と正極用活物質層とが分離して正極用鉛層から正極用活物質層が脱落してしまうおそれがある。特に、セル部材を水平方向に積層する場合は、重力の影響を受けやすく、正極用鉛層から正極用活物質層が脱落しやすくなってしまうことが考えられる。
【0008】
脱落した正極用活物質層は、バイポーラ型鉛蓄電池の下部、或いは、底部に溜まってしまうことになるが、この状態では正常な電圧を維持することができず電池の性能低下、信頼性の低下を招来しかねない。
【0009】
また、セルが膨張することによって生ずる力が基板に掛かり、当該力が想定外となってしまうと、基板の損傷を招く可能性がある。基板が損傷すると、セル部材を保持しておくことができなくなるため、正極用活物質層の脱落だけではなく、セル部材を構成する各部が移動することによる正極側と負極側の短絡等が生ずる可能性があり、この場合にも電池性能の低下、信頼性の低下を招くことになる。
【0010】
本発明は、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、正極用集電体及び負極用集電体を基板の一方の面或いは他方の面に設ける際に用いられる接着剤と、を備え、基板の表面には窪みが設けられるとともに、窪みには接着剤が充填されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、正極用集電体及び負極用集電体を基板の一方の面或いは他方の面に設ける際に用いられる接着剤と、を備え、基板の表面には窪みが設けられるとともに、窪みには接着剤が充填されている。このような構成を採用することによって、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における空間形成部材の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態における空間形成部材の平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における空間形成部材の平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における空間形成部材の別の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態における空間形成部材の別の状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態における空間形成部材の別の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0015】
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型蓄電池の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の概略を示す概略断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140とを有する。
【0017】
ここで、
図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0018】
なお、以下においては、
図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(
図1の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0019】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0020】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0021】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0022】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121を間に挟まれた状態で積層されている。
【0023】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0024】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0025】
また、
図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0026】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0027】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0028】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0029】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0030】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0031】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0032】
ここで接着剤150としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。その他、接着剤150としては、例えば、電解液に触れた際に双極型鉛蓄電池の性能を低下させるといった悪影響を与えるものではなく、また、バイポーラプレート120よりも強度を有している素材であればどのようなものであっても採用することができる。
【0033】
また、接着剤150として主剤に単数或いは複数の添加物を混ぜることで成り立つ接着剤を使用することが可能である。さらに基板121に設けられる接着剤150は、1層であっても多層であっても良い。
【0034】
本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには導通体160が配置されている。また、導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、接合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0035】
なお、ここでは導通体160を貫通穴121aに挿入した例を挙げたが、上述した方法の他、例えば導通体160を用いず、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが貫通穴121a内において直接接合される構造を採用することによって、正極側と負極側との間の導通を取ることとしても良い。
【0036】
ここで、さらに本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120について説明する。
図2は、本発明の実施の形態における空間形成部材(バイポーラプレート)120の斜視図である。また、
図3は、本発明の実施の形態における空間形成部材120の平面図である。
【0037】
なお、
図2、
図3では、説明及び図示の都合上、柱部123の描画の有無等、
図1の概略断面図に示すバイポーラプレート120と異なる部分があるが、いずれもバイポーラプレート120と表す。
【0038】
図2に示すバイポーラプレート120において見えている基板121は、正極用鉛箔111aが設けられる一方の面、すなわち、第1の凹部121bである。また、
図1とは異なり、
図2では
図1で断面で示されているバイポーラプレート120を垂直に立てた状態で示している。
【0039】
当該
図2においては、基板121(第1の凹部121b)の四方を囲むように枠体122が設けられているとともに、8つの貫通穴121aが設けられている。一方、上述した柱部123についてはその記載を省略している。
【0040】
本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120では、基板121の表面に窪み124が設けられている。当該窪み124には、正極用鉛箔111aを基板121に設ける際に用いられる接着剤150が充填される。
【0041】
窪み124は、例えば、基板121の表面にシボ加工が施されることによって設けられる。シボの種類としては、例えば、梨地、布目模様、幾何学模様といった、様々な種類があるが、いずれを採用しても良い。また、例えば、ディンプル状の窪み124を形成するようにしても良く、複数のシボやディンプルを組み合わせることとしても良い。
【0042】
このような窪み124は、例えば、基板121の周縁部を除く基板121の表面全域に設けられても良く、例えば、構造上圧力に弱い箇所、領域が認められる場合には、その部分に集中的に形成することもできる。
【0043】
また、窪み124の別の態様として、基板121の表面に溝を設けても良い。溝の一例としては、例えば、バイポーラプレート120の平行する2辺と平行に設けられる第1の溝124aと、これら平行する2辺に直交する別の2辺と平行に設けられる第2の溝124bとが組み合わされて形成される。
【0044】
すなわち、
図2に示されているような基板121の表面に設けられる格子状(ラーメン形状)の溝である。当該窪み124たる溝は、基板121の表面であって、その周縁部付近まで設けられている。また、貫通穴121aの周囲にも貫通穴121aの形状に合わせて円形状に窪み124が設けられている。
【0045】
これら窪み124については、例えばバイポーラプレート120を成型する際に、併せて金型を用いて形成することができる。或いは、エッチング等、化学的な処理を行うことによって形成する方法や基板121の第1の凹部121bや第2の凹部121cを直接切削することで窪み124を設ける方法等、様々な方法を採用することができる。また、窪み124の大きさ、深さ、配置位置、例えば、窪み124が溝状に形成される場合における断面形状等については、任意に設定することができる。
【0046】
正極用鉛箔111aを基板121に設ける際には、まず接着剤150が基板121の一方の面に設けられる。本発明の実施の形態における基板121の表面には上述したように窪み124が形成されていることから、当該窪み124に接着剤150が浸入する。
【0047】
基板121に設けられる接着剤150の量は、窪み124を充分に満たす量となるとともに、正極用鉛箔111aを基板121に接合するに必要な量となるように調整される。そしてこのような接着剤150が設けられた基板121の一方の面に正極用鉛箔111aを載置する。
【0048】
接着剤150が固まることによって、正極用鉛箔111aは基板121に接合される。また、接着剤150は上述したように窪み124に充填されているため、窪み124が形成されている形状に固まることになる。
【0049】
すなわち
図2に示すバイポーラプレート120であれば、格子状に形成されている窪み124の中で接着剤150が固まることで、接着剤150による窪み124の内部におけるアンカー効果によって、窪み124の形に、いわば骨組みができることになり、基板121の強度を高めることが可能となる。
【0050】
また、窪み124としてシボが形成されている場合には、当該シボの部分にも接着剤150が充填されることになる。従って、このシボが形成された領域においては、当該シボと接着剤150との接触面積を増加させることができるため、当該領域における強度向上も期待することができる。従って、基板121の表面において、シボ、溝をそれぞれ個別に、或いは、組み合わせて形成し、接着剤150を充填することによって、効果的に基板121の強度を向上させることができる。
【0051】
さらに、本発明の実施の形態における窪み124の両端は基板121の周縁部に配置され、当該端部から枠体122までの間には、肉厚部125が設けられている。肉厚部125は、例えばリブであり、
図1の概略断面図に示されているように、溝の端部から枠体122に向けて盛り上がるように形成されている。
【0052】
図2に示されているように、基板121の表面に形成されている窪み124の全ての端部に肉厚部125が設けられている。当該肉厚部125は、基板121へ圧力が掛かった場合に、当該窪み124の端部に当該圧力により正極用鉛箔111aが剥離したり、或いは、基板121が破壊されてしまうことを防止するべく、基板121の周縁部を補強する働きを担う。
【0053】
なお、ここで説明した肉厚部125は、上述したように溝(窪み124)の両端に接するように設けられているが、この他に、基板121の周縁部であってその他の部分に設けられていても良い。
【0054】
また、肉厚部125の形状についても、ここでは
図1に示すように窪み124の端部から枠体122に向けて、途中まで一定の厚みで形成され、その後は枠体122に向けて盛り上がるように形成されている。但し、このような形状に限られず、例えば、窪み124の端部から枠体122に向けて一定の角度で盛り上がるような形状となるように形成されていても良い。
【0055】
以上
図2を用いて説明した、基板121の一方の面である第1の凹部121bに形成された窪み124について
図3を用いて説明すると以下の通りである。すなわち、
図3に示される基板121の平面図において、基板121の四方は枠体122に囲まれており、基板121には、溝(窪み124)が形成されている。
【0056】
なお、
図3では、貫通穴121aについては図示を省略している。また、
図3に示すバイポーラプレート120に形成されている溝124及び肉厚部125の幅、数は、
図2に示すバイポーラプレート120に形成されている溝124及び肉厚部125の幅、数とは異なる。すなわち、バイポーラプレート120にどの幅、数で溝124及び肉厚部125を形成するかについては、任意に設定することができる。
【0057】
図3に示すバイポーラプレート120の場合、基板121には、7本の溝(窪み124)が縦横に互いに直交するように形成されている。また、図示しない貫通穴121aの周囲にも溝が形成されている。直線状の溝の両端部であって、基板121の周縁部には、肉厚部125が設けられている。
【0058】
なお、
図2及び
図3においては、シボやディンプルから形成される窪み124については、その描画を省略している。しかしながら、上述したように、溝状に形成される窪み124のみならず、シボ加工によって形成される窪み124を組み合わせて基板121の表面全体に形成しても良い。基板121の表面全体にシボ加工による窪み124を設けることにより、正極用鉛箔111aや負極用鉛箔112aと基板121との界面に接着剤150がより多く存在できるため、接着強度が向上し、剥離などを効果的に抑制できる。
【0059】
次に、これまで説明してきた窪み124及び肉厚部125は、
図2及び
図3に示すように、基板121の一方の面に設けられていることを例に挙げて説明しているが、これら窪み124及び肉厚部125は、基板121の他方の面にも設けられている。
【0060】
図4は、本発明の実施の形態における空間形成部材120の平面図である。
図4は、
図3と同様、基板121の一方の面から、すなわち第1の凹部121bを見た平面図であるが、他方の面に設けられる窪み124及び肉厚部125についても破線で示している。
【0061】
図4に示されているように、破線で示されている、裏面に当たる他方の面(第2の凹部121cの側)に形成される窪み124及び肉厚部125をみると、実線で示される、一方の面に形成される窪み124及び肉厚部125とは互いに重複しない位置に配置されている。
【0062】
すなわち、窪み124及び肉厚部125は他方の面にも形成されているが、他方の面において窪み124が形成されている位置は、一方の面に形成されている窪み124の位置とはずれている。
【0063】
このように窪み124の位置を表裏でずらすことにより、基板121に生じる曲げモーメントへの強度(剛性)が向上する。つまり、表裏で互いに補完し合うように反力が生じるため、例えば、セルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保できる。従って、基板121に設けられる窪み124は、表裏で重複しないように設けられることが好ましい。
【0064】
なお、表裏で窪み124が重複する場合は、貫通しないことはもちろんのこと、基板121に十分な剛性を確保できる程度に窪みの深さを設定すれば重複する位置に窪みを設けても良い。
【0065】
このように窪み124は基板121の表裏両面において重複した位置とならない位置に形成される。これに伴い、
図4に示すように、肉厚部125についても、表裏両面において異なる位置に設けられることになる。
【0066】
なお、ここでいう「窪み124が異なる位置に設けられる」とは、基板121の表裏に設けられる窪み124が「基板121の表裏で“パターン”が異なる、或いは、配置位置がずれている」という意であり、表裏の窪み124同士が「全く“交差”しない」というわけではない。
【0067】
以上、窪み124が溝状に形成される場合として、溝が第1の溝124aと第2の溝124bとからなる格子状に形成される例を挙げたが、窪み124が溝状に形成される場合であって、異なる形状に形成されても良い。
【0068】
すなわち溝状の窪み124の種類としては、
図2ないし
図4に示す格子状の窪み124以外に、例えば、
図5ないし
図7に示すハニカム状の溝からなる窪み124Aも挙げることができる。
図5は、本発明の実施の形態における空間形成部材120の別の状態を示す斜視図であり、
図6及び
図7は、本発明の実施の形態における空間形成部材120の別の状態を示す平面図である。
【0069】
図5に示すバイポーラプレート120において見えている基板121Aは、正極用鉛箔111aが設けられる一方の面、すなわち、第1の凹部121Abである。また、上述した
図2と同様、
図5では
図1において断面で示されているバイポーラプレート120を垂直に立てた状態で示している。
【0070】
図5に示す基板121Aには、窪み124Aが設けられており、ハニカム状である。なお、
図5においてはバイポーラプレート120Aを斜めから見ているため、当該窪み124Aが1本の線のように見えているが、実際には
図6や
図7に示すように凹状に窪んでいる。また、ハニカム状の窪み124Aの状態を明確に示すために、貫通穴121Aa及び柱部123については、
図5においてその記載を省略している。
【0071】
また、窪み124Aであるハニカムの大きさについては、
図5(ないし
図7)に示す大きさに限定されるものではなく、例えば、貫通穴121Aa等の配置位置を考慮して設定することができる。さらに、基板121Aの周縁部であって窪み124Aと接する位置には、肉厚部125が形成されている。
【0072】
図6は、バイポーラプレート120Aの一方の面、すなわち、正極用鉛箔111aが設けられる第1の凹部121Abを示す平面図である。
図5に示すバイポーラプレート120Aの基板121Aには、
図5で示したハニカム状の窪み124Aである溝が形成されている。
【0073】
また
図5とは異なり、
図6及び
図7において図示される貫通穴121Aaの周囲には、ハニカム状の溝(窪み124A)が設けられている。すなわち、
図6及び
図7に示すバイポーラプレート120Aにおける窪み124Aはハニカム状の溝であって、第1の凹部121Abの領域と貫通穴121Aaの周囲に形成されている。
【0074】
なお、
図6及び
図7においては、上述したように、貫通穴121Aaの周囲に設けられる窪み124Aもハニカム状に形成された例を示している。但し、このような形状に形成されず、例えば、これまでの格子状の窪み124が形成されていた場合と同様、円形状の溝(窪み)となるように形成されていても良い。
【0075】
図7は、基板121Aの他方の面(第2の凹部121Ac)にも形成されたハニカム状の窪み124Aについても示したものである。すなわち、
図7に示すバイポーラプレート120Aには、正極用鉛箔111aが設けられる基板121の一方の面に形成される窪み124Aの他、負極用鉛箔112aが設けられる他方の面にも窪み124Aが形成された状態が示されている。当該他方の面に形成される窪み124Aは、一方の面に形成される窪み124Aと区別するために破線で示されている。
【0076】
図7の基板121Aに示されているように、一方の面及び他方の面それぞれの窪み124Aは、それぞれ重複しないように配置される。上述したように、基板121Aの表裏両面から窪み124Aを形成することによって板厚が薄くなることを回避するためである。
【0077】
またここでは、
図6及び
図7に示されているように、基板121Aの表裏両面において貫通穴121Aaの周囲に設けられる窪み124Aが重複しないように形成されている。具体的には、一方の面である第1の凹部121Abには、
図6及び
図7において4つ設けられている貫通穴121Aaのうち、上部の2つの貫通穴121Aaの周囲にのみ窪み124Aが形成されている。一方、下部の2つの貫通穴121Aaの周囲には、
図7において示されているように他方の面である第2の凹部121Acの側にのみ窪み124Aが形成されている。
【0078】
なお、
図6及び
図7においては、4つの貫通穴121Aaを示して窪み124Aの形成の例を説明したが、貫通穴121Aaの個数、配置位置やどの貫通穴121Aaに対して一方の面及び他方の面のいずれにおいて窪み124Aを形成するかについては、任意に設定することができる。
【0079】
さらに、窪み124Aのうち基板121Aの周縁部と接する部分には、この基板121Aの周縁部に肉厚部125が設けられている。ここでの肉厚部125についても、上述したような形状を採用することができる。
【0080】
図1に戻り、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0081】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0082】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0083】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0084】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0085】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0086】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが上述したような接着剤150を介して配置されている。また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、
図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0087】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0088】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0089】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0090】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0091】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0092】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0093】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、
図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0094】
なお、ここでは説明しなかったが、バイポーラプレート120の基板121と同様に、第1のエンドプレート130の基板131と第2のエンドプレート140の基板141の表面にも接着剤150を充填するための窪み124が形成されていても良い。
【0095】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0096】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0097】
なお図面には示されていないが、枠体が有する四つの端面のうちの一つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0098】
〔製造方法〕
この本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。
【0099】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
まず、バイポーラプレート120を用意し、正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aがそれぞれ設けられるバイポーラプレート120の基板121の表面である第1の凹部121b及び第2の凹部121cに、それぞれ予め決められた窪み124を形成する。窪み124の形成に当たっては、上述したように、例えば、金型を使用したり、或いは、化学的な処理を行うことができる。
【0100】
そして、このようなバイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、第1の凹部121bに接着剤150を塗布する。この際、接着剤150が第1の凹部121bに形成された窪み124に流れ込み、窪み124を満たす。なお、この際、塗布される接着剤150の量は、窪み124を充填するに十分な量であるとともに、例えば、窪み124から若干あふれるくらいの量といった、基板121に正極用鉛箔111aや負極用鉛箔112aを設けるに十分な量であれば良い。
【0101】
このような状態の第1の凹部121b内に、正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。そして、この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0102】
また併せて、形成された窪み124に充填された接着剤150も窪み124の形状に硬化する。接着剤150の硬化に伴う基板121の表面との間におけるアンカー効果も期待することができるため、基板121の強度を向上させることができる。
【0103】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体160を挿入する。そして、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。
【0104】
そして、この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける。また、接着剤150が硬化することによる基板121の強度の向上も期待することができる。さらに、上述したように、基板121の一方の面と他方の面とで形成される窪み124の位置がずれているので、基板121の強度をより確保することができる。
【0105】
そして抵抗溶接を行って、正極用鉛箔111a、導通体160、及び負極用鉛箔112aを接合する。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0106】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置き、凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0107】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置き、凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。
【0108】
これにより、正極用鉛箔付きエンドプレート及び負極用鉛箔付きエンドプレートの作製が完了する。なお、第1のエンドプレート130の凹部131b及び第2のエンドプレート140の凹部141bに、上述したような窪み124が形成されていても良い。
【0109】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aが固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置き、正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く。
【0110】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0111】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0112】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合され、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0113】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0114】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0115】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0116】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0117】
以上でバイポーラプレート120に正極用活物質層111b、負極用活物質層112b、及び、セパレータ113の載置、各プレート同士の積層、接合が行われる流れを説明した。
【0118】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0119】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る基板121には、窪み124が形成されている。そして、当該窪み124に接着剤150を充填した上で正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aを設ける際に用いる接着剤150が硬化することによって、基板121の表裏両面に、いわば硬化した接着剤150による骨組が形成されることになる。また、基板121の周縁部であって、窪み124の端部と接する部分から枠体122までの間には、肉厚部125が形成されている。
【0120】
このような基板121を用いることによって、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することができる。
【0121】
なお、上記説明においては、窪み124の例として、基板121の表面にシボ加工が施される場合と溝が形成される場合とを挙げた。また、溝の例としても格子状とハニカム状の2種類の形状を説明した。但し、窪み124としてはこれらに限定されず、例えば、ダイヤ状といった、様々な形状を採用することができる。
【0122】
また、格子状及びハニカム状のいずれについても、基板121の表裏両面において同じ形状の窪み124を形成することを説明したが、例えば、一方の面に格子状、他方の面にハニカム状の窪み124を形成するといった、基板121の表裏両面において異なる形状の窪み124を形成しても良い。
【0123】
さらに、上述したような一定のパターンに基づく形状ではなく、例えば、基板121に掛かる応力をより分散させることができるようなランダムな形状を形成したり、或いは、
基板121全面に同じパターンの窪み124を形成するのではなく、基板121の部分ごとに異なる形状を備えるように窪み124を形成することも可能である。
【0124】
なお、上述した本発明の実施の形態においては、肉厚部125が上述したような形状を採用していることから、正極用鉛箔111aの周縁部に設けられる、当該周縁部を覆うためのカバープレート(エッジカバー)については説明を省略した。但し、肉厚部125の形状を工夫することによって、カバープレートを設けることが可能である。
【0125】
このカバープレートは、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレートの内縁部が正極用鉛箔111aの周縁部と重なり、カバープレートの外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なる。
【0126】
そして、カバープレートは接着剤150により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの周縁部とに亘って固定される。これにより、正極用鉛箔111aの周縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレートで覆われる。なお、負極用鉛箔112aの周縁部も正極用鉛箔111aの周縁部を覆っているカバープレートと同様のカバープレートで覆われていても良い。
【0127】
このようなカバープレートを設けることにより、電解液の漏洩が生じた場合であっても電解液が正極用鉛箔111aと基板121(接着剤150)との間に浸入することを防止することができる。従って、電解液が正極から負極に滲出することによる短絡を防止し、電池性能の維持、長寿命化を図ることができる。
【0128】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電板に鉛ではなく他の金属(例えば、アルミニウム、銅、ニッケル)や合金、導電性樹脂を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0129】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイポーラプレート
121・・・バイポーラプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイポーラプレートの枠体
123・・・柱部
124・・・窪み
125・・・肉厚部
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
C・・・セル(セル部材を収容する空間)