(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042827
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】揮発成分担持シリカ組成物、それを用いた化粧料および忌避剤、並びに揮発成分担持シリカ組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230320BHJP
A61Q 17/02 20060101ALI20230320BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230320BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230320BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230320BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230320BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q17/02
A61K8/92
A61K8/02
A61Q13/00 102
A61K8/31
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150182
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】福寿 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】木下 冬弥
(72)【発明者】
【氏名】有福 直樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC032
4C083AC352
4C083BB11
4C083CC20
4C083KK03
(57)【要約】
【課題】 有効成分の持続性に優れた揮発成分担持シリカ組成物、それを用いた化粧料および忌避剤、並びに揮発成分担持シリカ組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 揮発成分担持シリカ組成物は、多孔質シリカに、揮発性の有効成分と、不揮発性のオイルとが担持されている。揮発成分担持シリカ組成物の製造方法は、多孔質シリカに、不揮発性のオイルと揮発性の有効成分を混合した状態で担持する。化粧料は前記揮発成分担持シリカ組成物を含む。忌避剤は前記揮発成分担持シリカ組成物を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカに、揮発性の有効成分と、不揮発性のオイルとが担持されたことを特徴とする揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項2】
前記多孔質シリカは、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~200μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が1~6ml/g、細孔半径のピーク値が3~40nmである請求項1記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項3】
前記多孔質シリカが球状である請求項1または2に記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項4】
前記多孔質シリカが疎水性シリカエアロゲルである請求項1~3のいずれかに記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項5】
前記疎水性シリカエアロゲルは、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~20μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が3~6ml/g、細孔半径のピーク値が10~40nmである請求項4記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項6】
前記有効成分の沸点が150~300℃である請求項1~5のいずれかに記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項7】
前記オイルの沸点が300℃以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の揮発成分担持シリカ組成物。
【請求項8】
請求項1~7記載の揮発成分担持シリカ組成物を含む化粧料。
【請求項9】
前記多孔質シリカの含有割合が0.01~2.0質量%である請求項8載の化粧料。
【請求項10】
前記多孔質シリカは、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~20μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が3~6ml/g、細孔半径のピーク値が10~40nmである疎水性シリカエアロゲルが配合された請求項8または9に記載の化粧料。
【請求項11】
請求項1~7記載の揮発成分担持シリカ組成物を含む忌避剤。
【請求項12】
多孔質シリカに、揮発性の有効成分を不揮発性のオイルに溶解させた状態で担持することを特徴とする揮発成分担持シリカ組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性の有効成分が担持され、しかも、該有効成分の持続性に優れた揮発成分担持シリカ組成物、それを用いた化粧料および忌避剤、並びに揮発成分担持シリカ組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性の有効成分は、様々な形で利用されているが、例えば、香料として化粧品や洗剤等に添加されることで、良い香を周囲に発散させることを目的とするものや、忌避剤として害虫や害獣を寄せ付けないために利用されるものがある。
揮発性の有効成分は、揮発して空気中に存在することによりその効果を発揮するが、揮発するのが早すぎる場合には、すぐに効果がなくなってしまうため、持続性を高めるための検討が行われてきた。例えば、特許文献1では、多孔質シリカに揮発性の有効成分を担持することにより、有効成分の持続性を高めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように単に揮発性の有効成分を多孔質シリカに担持するのみでは、持続性を高める効果は十分ではなく、更なる改善が求められていた。
本発明の目的は、揮発性の有効成分の効果の持続性に優れた揮発成分担持シリカ組成物、それを用いた化粧料および忌避剤、並びに揮発成分担持シリカ組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、多孔質シリカに揮発性の有効成分を不揮発性のオイルに溶解させた状態で担持することにより、有効成分の持続性を飛躍的に向上させることが可能であることを見出した。これは、多孔質シリカに担持することによる有効成分の持続性を高める効果と不揮発性のオイルによる有効成分の放出を抑制する効果が同時に働いたことによる相乗効果であると推測している。
即ち本発明は、多孔質シリカに、揮発性の有効成分と、不揮発性のオイルとが担持されたことを特徴とする揮発成分担持シリカ組成物である。
また、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記多孔質シリカが、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~200μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が1~6ml/g、細孔半径のピーク値が3~40nmであることが好ましい。
更に、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記多孔質シリカが球状であることが好ましい。
また、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記多孔質シリカが疎水性シリカエアロゲルであることが好ましい。
更に、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記疎水性シリカエアロゲルは、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~20μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が3~6ml/g、細孔半径のピーク値が10~40nmであることが好ましい。
また、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記有効成分の沸点が150~300℃であることが好ましい。
また、本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、前記オイルの沸点が300℃以上であることが好ましい。
【0006】
本発明の化粧料は、上記揮発成分担持シリカ組成物を含む。
また、本発明の化粧料は、前記多孔質シリカの含有割合が0.01~2.0質量%であることが好ましい。
更に、本発明の化粧料は、前記多孔質シリカは、レーザー回折法で測定した体積基準のメジアン径が1~20μm、比表面積が350~1000m2/g、細孔容積が3~6ml/g、細孔半径のピーク値が10~40nmである疎水性シリカエアロゲルが配合されていることが好ましい。
本発明の忌避剤は、上記揮発成分担持シリカ組成物を含む。
本発明の揮発成分担持シリカ組成物の製造方法は、多孔質シリカに、揮発性の有効成分を不揮発性のオイルに溶解させた状態で担持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、揮発性の有効成分の持続性に優れた揮発成分担持シリカ組成物、それを用いた化粧料および忌避剤、並びに揮発成分担持シリカ組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り、数値範囲について「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
【0009】
[揮発成分担持シリカ組成物]
本発明の揮発成分担持シリカ組成物は、多孔質シリカに、揮発性の有効成分と、不揮発性のオイルとが担持されている。
以下、揮発成分担持シリカ組成物の各成分について詳細に説明する。
【0010】
<多孔質シリカ>
以下に、本発明に使用される多孔質シリカの好ましい性状について示す。
(メジアン径)
本発明で用いる多孔質シリカは、レーザー回折式測定による体積頻度の粒度分布におけるメジアン径(以下、単に「メジアン径」と記す場合がある)が1~200μmの範囲であることが好ましい。粒径がこの範囲を超えて小さいものを得ることは難しく、またこの範囲を超えて大きいものは、取扱いの際に粒子が壊れやすくなる。メジアン径が、この好ましい範囲内にあることにより、化粧料や忌避剤に対して、好適に含有させることができる。
また、化粧品で用いる場合には、感触性を向上させる観点から、当該メジアン径は1~20μmの範囲にあることが好ましく、5~20μmが特に好ましい。忌避剤で用いる場合で、皮膚に塗布するような形態で使用する場合には、化粧品と同様に、1~20μmの範囲にあることが好ましく、5~20μmが特に好ましい。また、忌避剤で用いる場合で、皮膚に塗布する以外の目的で使用する場合には、大きな粒子ほど持続性が高い傾向にあり、粉舞いが少なく扱いやすいという観点から、5~100μmmの範囲にあることが好ましく、10~100μmが特に好ましい。
【0011】
(比表面積)
本発明において、前記多孔質シリカのBET法による比表面積(BET比表面積)は、好ましくは、350~1000m2/gであり、更に好ましくは、400~850m2/gである。比表面積がこの範囲を超えて小さい場合には、持続性を向上させる効果が小さい傾向にあり、比表面積がこの範囲を超えて大きいものを得ることは困難である。比表面積が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
ここで、上記BET法による比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
【0012】
(細孔容積)
本発明で用いる多孔質シリカは、細孔容積が1~6mL/gであることが好ましい。下限値は、3.5mL/g以上、特に、4mL/g以上であることがより好ましい。また、上限は6mL/g以下であることがより好ましい。細孔容積は高いほど好ましいが、6mL/gを超えて大きいものを得ることは困難である。下限値がこの値よりも小さい場合には、空隙が小さくなり、十分な量の有効成分を担持することが困難となる。細孔容積が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
上記細孔容積は、上記のBET比表面積測定の際と同様に吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951)により解析して得られたものである(以下、「BJH細孔容積」ということがある。)。当該方法により測定される細孔は、半径1~100nmの細孔であり、この範囲の細孔の容積の積算値が本発明における細孔容積となる。シリカエアロゲルの場合の一般的な細孔容積は、3mL/g以上である。
【0013】
(細孔半径のピーク値、及び分布)
本発明で用いる多孔質シリカは、その細孔半径のピーク値が、好ましくは3~40nm、更に好ましくは10~30nmのものが推奨される。細孔半径のピークがこの範囲にシャープに存在していることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
上記細孔半径の分布がシャープである疎水性シリカエアロゲルは、細孔半径が5~50nm、特に、10~40nmの範囲内に70%以上が存在することが一般的である。細孔半径の分布が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
尚、本発明において、細孔半径のピーク、及び分布は、前記と同様に取得した吸着側の吸着等温性をBJH法によって解析して得られる、細孔半径の対数による累積細孔容積(体積分布曲線)より求めたものである。
【0014】
(平均円形度)
本発明において、多孔質シリカの粒子形状は特に制限されないが、球状であることが好ましく、その平均円形度が0.8以上であることが好ましく、特に、0.85以上であることが好ましい。
上記「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(1kV~3kV)、倍率1000倍で観察したSEM像を得、個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。この際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
C=4πS/L2 (1)
上記式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表し、Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。
上記平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。よって平均円形度が高ければ化粧料添加剤として利用したときにローリング性が良くなり、優れた触感が得られる。また、空気と接触する面積が少なくなるため、有効成分の揮発を抑えることで持続性を高めることが可能となる。
【0015】
(M値)
上記多孔質シリカは、疎水性であることが、オイルとの馴染みを向上させ担持を容易にし、また揮発性の有効成分の持続性を高める上で好ましい。疎水性であるどうかについては、50mlのガラス製のサンプル瓶に25mlの水を入れ、0.1gの多孔質シリカを添加して良く振り混ぜた後に、当該多孔質シリカが、水に馴染まないことで確認できる。
上記多孔質シリカの疎水性の程度は、M値により測定することができる。当該M値の測定方法は、次の通りである。多孔質シリカ0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加し、メタノールをビュレットから徐々に滴下する。この際ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時攪拌しておく。添加した球多孔質シリカの全量が液中に懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率(%)がM値となる。
上記多孔質シリカの疎水性の指標であるM値は、20~60が好ましく、30~50であることがより好ましい。M値がこの範囲を超えて小さいものは、疎水性であることで持続性が向上する効果が十分に得られなくなり、また、この範囲を超えて大きいものを得ることは困難である。M値が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
【0016】
(シリル化)
上記M値を示す多孔質シリカにおいて、疎水性が付与される態様の具体例としては、シリル化剤で処理されていることにより、表面に有機シリル基が導入された形態を挙げることができる。当該有機シリル基としては前記したM値の範囲となりやすい点でトリメチルシリル基であることが好適である。
上記シリル化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン等のクロロシラン類、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、ヘキサメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類、シロキサンオクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサンなどが挙げられる。そのうち、M値を前記した範囲に制御しやすい点で、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンが特に好ましい。一般的には、上記シリル化剤と多孔質シリカのシラノール基とが反応し、多孔質シリカの表面に対応する疎水基が導入される。
【0017】
(吸油量)
本発明において、前記多孔質シリカは、前述のとおり比表面積、細孔容積共に大きいことが好ましく、その吸油量は、通常、200mL/100g以上を有することが、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルの担持量を増やすことができるため、好ましい。より好ましい吸油量は300mL/100g以上であり、さらには350mL/100g以上、特に好ましくは400mL/100g以上である。上限は特に限定されるものではないが、粒子強度を考慮すると800mL/100g以下であることが好ましく、700mL/100g以下であることがより好ましい。当該吸油量は、JIS K5101-13-1「精製あまに油法」記載の方法により測定した値である。吸油量の下限値がこの範囲を超えて小さいと、有効成分を十分に担持することが困難となる。シリカエアロゲルの場合の一般的な吸油量は、400mL/g以上である。
【0018】
本発明の多孔質シリカは、公知のものを使用することができ、例えば、シリカエアロゲル、ゲル法シリカ、沈降法シリカ、メソポーラスシリカ等が挙げられる。このうち、単位重量当りの吸油量が高く、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルを効率よく担持できるため、シリカエアロゲルを用いることが好ましい。
上記シリカエアロゲルとは、乾燥収縮を起こさせない製法で製造したシリカであり、超臨界乾燥や乾燥前に疎水化処理を行い水以外の溶剤がシリカに含まれた状態で乾燥を行う常圧乾燥法により製造することができる。
【0019】
<揮発性の有効成分>
本発明の揮発性の有効成分は、常温、常圧で徐々に揮発するような性質を有するものであり、常温、常圧で液体もしくは固体として存在する。好ましい沸点の範囲は、常圧で100~300℃である。また、本発明の揮発成分担持シリカ組成物においては、常圧の沸点が100~200℃の揮発性の有効成分を担持した際に、持続性を高める効果が特に顕著となる。沸点が、この範囲を超えて小さい場合には、取扱いが難しくなり、この範囲を超えて大きいものは、揮発性が小さく有効成分としての効果を発揮し難くなる。
本発明の揮発性の有効成分は、上記のような性質を示すものを、公知のものから選択して使用することが可能である。例示すると、天然香料では、バラ油、ジャスミン油、ネロリ油、ラベンダー油、イランイラン油、チェベロース油、クラリセージ油、クローブ油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パチョリ油、サンダルウッド油、シナモン油、コリアンダー油、ナツメグ油、ペパー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、オポポナックス油、ベチバー油、オリス油、オークモス油、ムスク油、シベット油、カストリウム油、アンバーグリス油等が挙げられ、合成香料では、リモネン、β-カリオフィレン、シス-3-ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β-フェニルエチルアルコール、2,6-ノナジエナール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、β-イオノン、l-カルボン、シクロペンタデカノン、酢酸リナリル、安息香酸ベンジル、γ-ウンデカラクトン、オイゲノール、ローズオキシド、インドール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、オーランチオール等が挙げられる。また、忌避剤としては、リモネン、ピネン、テルピネン、リナロール、テルピネロール、シンナムアルデヒド、アザディラクティン、アリルイソシアネート、アクチレイティッドグリセリド、ナフタレン、トランスフルスリン、メトフルスリン等が挙げられる。これらの揮発性の有効成分は、複数を同時に添加しても良い。
【0020】
<不揮発性のオイル>
本発明の不揮発性のオイルは、常温、常圧では実質的に揮発することない性質のものであり、好ましくは、沸点が300℃以上である。沸点がこの範囲より小さい場合には、揮発してしまうため、十分な効果を発揮し難くなる。不揮発性のオイルの沸点が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
本発明の不揮発性のオイルは、上記のような性質を有するものを、公知のものから選択して使用することが可能である。例示すると、油脂類としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サンフラワー油、大豆油、トウモロコシ胚芽油、ナタネ油、バーシック油、パーム核油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、綿実油等が挙げられ、炭化水素類としては、α―オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、スクワラン、セレシン、パラフィン、フィルネサン等が挙げられ、エーテル類としては、ジイソノニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アルキルグリセリルエーテルバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられ、エステル類としては、直鎖脂肪酸と低級アルコールのエステルであるオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルであるパルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミルスチル等、直鎖脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステルであるミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル等、直鎖脂肪酸と多価アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸トリグリセリド等、分岐脂肪酸と低級アルコールのエステルであるイソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル等、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルである2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル等、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステルであるイソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル等、水酸基をもつ脂肪酸とアルコールとのエステルである乳酸ミルスチル、乳酸セチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル等、二塩基酸とアルコールとのエステルであるアジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等、脂肪酸とステロール類のエステルであるヒドロキシステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル等が挙げられ、シリコーンオイル類としては、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルニルシリコーン油、環状シリコーン油、メチルハイドロジェンシリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油等が挙げられる。
【0021】
<揮発成分担持シリカ組成物>
(含有量)
本発明の揮発成分担持シリカ組成物において、各成分の含有量は、多孔質シリカが、好ましくは10~50質量%、更に好ましくは、15~40質量%、揮発性の有効成分は、好ましくは20~60質量%、更に好ましくは、30~50質量%、不揮発性のオイルは、好ましくは20~60質量%、更に好ましくは、30~50質量%である。
ここで、多孔質シリカの含有量がこの好ましい範囲内にあることにより、当該組成物は、粉状で存在することが可能となるため、パウダファンデーションやフェイスパウダーのような粉状の化粧品に好適に用いることが可能となる。多孔質シリカの含有量がこの範囲を超えて小さい場合には、液状成分を多孔質シリカ内部の空隙に保持することが難しくなり、べとつくような感触となる場合があり、この範囲を超えて大きい場合には、相対的に揮発性の有効成分の含有量が少なくなるため、有効成分の目的の効果が小さくなる場合がある。
揮発性の有効成分の含有量が、この範囲を超えて小さい場合には、空気中に存在する有効成分の量がすくなくなるため、有効成分の効果を十分に発揮できない可能性があり、この成分を超えて大きい場合には、多孔質シリカの内部の空隙に保持できなくなり、べとつくような感触となる場合がある。揮発性の有効成分の含有量が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすく、また、化粧品に対して好適に含有することが可能となる。
不揮発性のオイルの含有量が、この範囲を超えて小さい場合には、不揮発性のオイルによる揮発性の有効成分の放出を抑える効果が小さくなるため、揮発性の有効成分の持続性を高めることが難しくなり、この成分を超えて大きい場合には、相対的に揮発性の有効成分の含有量が少なくなるため、空気中に存在する有効成分の量がすくなくなるため、有効成分の目的の効果が小さくなる場合がある。不揮発性のオイルの含有量が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすい。
【0022】
(空隙占有率)
多孔質シリカの吸油量に対する揮発性の有効成分と不揮発性オイルの容量の和の割合(以下、「空隙占有率」ともいう)が、好ましくは40~90%、更に好ましくは、60~80%となるようにすることが好ましい。ここで、空隙占有率がこの範囲を超えて大きくなると、組成物にべたつきが生じるようになり、この範囲を超えて小さくなると、揮発性の有効成分の効力を発揮しにくくなる。空隙占有率が、この好ましい範囲内にあることにより、揮発性の有効成分の持続性を高める効果が発揮されやすく、また、化粧品に対して好適に含有することが可能となる。
空隙占有率の計算方法を下記に示す。
(揮発性の有効成分の量(ml)+不揮発性オイルの量(ml))÷(多孔質シリカの量(g)×多孔質シリカの吸油量(ml/100g)/100)×100・・・(1)
(揮発性の有効成分と不揮発性のオイルの質量比)
本発明の揮発成分担持シリカ組成物において、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルの質量比は、1:3~3:1であることが、有効成分の効力を維持しつつ持続性を高める上で好ましい。
【0023】
[揮発成分担持シリカ組成物の製造方法]
本発明の揮発成分担持シリカ組成物の製造方法において、多孔質シリカに、揮発性の有効成分を不揮発性のオイルに溶解させた状態で担持することが好ましい。担持の方法は、公知の方法により行うことができ、例えば、多孔質シリカをミキサーで混合しながら、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルの混合物を滴下する方法や、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルの混合物に対して多孔質シリカを添加し混合する方法により行うことができる。
【0024】
[化粧品]
本発明の揮発成分担持シリカ組成物を配合する化粧品は、特に限定されない。例えば、ファンデーション、ローション、口紅、日焼け止め、スキンケア用化粧品、ヘアケア用化粧品等に配合することができる。配合する際の揮発成分担持シリカ組成物の添加量としては、好ましくは、0.1~20%、更に好ましくは、1~5%程度とすることができる。前記添加量がこの範囲を超えて小さい場合には、十分な効果を発揮することが難しくなり、この範囲を超えて大きい場合には、感触性が悪くなる可能性がある。
【0025】
[忌避剤]
本発明の揮発成分担持シリカ組成物を配合する忌避剤は、特に限定されない。好ましい形態としては、液体かパウダー状である。配合する際の揮発成分担持シリカ組成物の添加量としては、好ましくは、0.1~40%、更に好ましくは、1~20%程度とすることができる。前記添加量がこの範囲を超えて小さい場合には、十分な効果を発揮することが難しくなり、この範囲を超えて大きい場合には、忌避剤として配合する他の成分の効果を阻害する可能性がある。
【実施例0026】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
<多孔質シリカ>
実施例で使用した多孔質シリカを表1に示す。シリカエアロゲルについては、特開2014-218433記載の方法により作製した。また、ゲル法シリカは、特開昭59-54619記載の方法により作製した。
【0027】
【0028】
(平均円形度の測定)
2000個以上の多孔質シリカ粒子についてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、上述の定義に従って平均円形度を算出した。
(レーザー回折によるメジアン径、粒度分布の測定)
40mlのエタノールに対して当該疎水化金属酸化物エアロゲル粉末を0.3g添加し、シャープマニュファクチュアリング株式会社製の超音波洗浄機UT-105Sを用いて、出力100wで5分間分散させた。尚、上記分散は、容量50mlのラボランスクリュー管瓶を使用し、適正量の水を入れた洗浄槽内に設置して行った。
その分散液の粒度分布をマイクロトラック・ベル株式会社社製 Microtrac MT3000を用いて測定を行った。溶媒の屈折率は1.38とし、粒子の屈折率は1.46とした。得られた粒度分布から、体積分布に対するメジアン径を評価した。
(比表面積、細孔容積の測定)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP-maxにより行った。吸油量の測定は、JIS K5101-13-1に規定されている「精製あまに油法」により行った。
【0029】
<揮発成分含有シリカ組成物の製造方法>
揮発性の有効成分としてリモネン(沸点176℃)を用い、不揮発性のオイルとしてパルミチン酸エチルヘキシル(沸点400℃程度)を用いて、表2に示す添加量に従ってパルミチン酸エチルへシルにリモネンを溶解し、その混合物を表2に示す多孔質シリカに対してヘラで混合しながらスポイトで滴下することで、パウダー状の揮発成分含有シリカ組成物を得た。
【0030】
<揮発性有効成分の持続性の試験>
100mlのビーカー(外径57mm、高さ67mm)に、表2に示す組成の揮発成分含有シリカ組成物を入れ、23℃の条件で保持した。ニオイセンサー(新コスモス電機製、XP-329m)により、ビーカーの面方向は真中、高さ方向は、ビーカー上部から22mmの位置にセンサーの先端をあわせ、匂いの強度を測定し、その経時による変化を調べた。ニオイセンサーの出力が100に減少するまでの時間により、持続性の評価を行った。評価を行った結果を表2に示す。
【0031】
【0032】
実施例1~7は、多孔質シリカに対して、揮発性の有効成分と不揮発性のオイルが担持されており、持続時間が長い。それに対し、比較例1では、不揮発性のオイルと多孔質シリカが無く、比較例2では、多孔質シリカが無く、比較例3では、不揮発性のオイルが無いため、持続時間が短い。