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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004300
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ケール加工物配合組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230110BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105902
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立木 賢輔
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE02
4B016LG10
4B016LK10
4B016LK13
4B016LP01
(57)【要約】
【課題】ケール特有の臭いが抑制されたケール加工物を含む組成物等を提供する。
【解決手段】ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)含有する、ケール加工物配合組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)含有する、ケール加工物配合組成物。
【請求項2】
前記大豆抽出物が、大豆タンパク質を70質量%以上で含有する大豆抽出物である、請求項1に記載のケール加工物配合組成物。
【請求項3】
ケール加工物配合組成物中、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となるように配合することを特徴とする、該組成物におけるケール臭マスキング方法。
【請求項4】
大豆抽出物配合組成物にケール加工物を配合する工程を有し、大豆抽出物配合組成物中のケール加工物の配合割合が、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して大豆抽出物が0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となる割合であることを特徴とする、大豆抽出物配合組成物における大豆臭マスキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ケール加工物配合組成物、ケール臭マスキング方法及び大豆臭マスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、1日あたり350g以上の野菜を摂取することが、健康増進の観点から目標とされている。一方、厚生労働省の令和元年の国民健康・栄養調査結果の概要には、野菜摂取量の平均値は280.5g(男性288.3g、女性273.6g)であり、この10年間では有意な増減はみられないことが示されている(非特許文献1)。このように、性別問わずある程度の量の野菜を摂取しているものの、目標量には届いていない。また、40歳代以下では野菜摂取量が一層少ないともいわれている。
【0003】
近年、野菜の粉末剤や青汁といった加工食品等が知られており、不足した野菜を補えるのに加え、生鮮野菜のように鮮度を気にせずに保存できるといった利点がある。ケールは、このような加工食品等において使用されている緑黄色野菜の一種である。しかし、ケールには特有の臭いがあり、このような不快臭は摂取時の苦痛の原因となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要、第2章栄養・生活に関する状況、2.野菜摂取量の状況、24頁、厚生労働省
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ケール特有の臭いが抑制されたケール加工物を含む組成物を提供すること、また、ケール臭のマスキング方法等を提供することを目的とする。加えて、本開示は、大豆臭のマスキング方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、ケール加工物に対して特定の割合で大豆抽出物を組み合わせることにより、ケール特有の臭いを抑制できることを見出した。また、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、大豆抽出物自体にも特有の臭いがあるものの、このように特定の割合でケール加工物と組み合わせることにより、大豆抽出物特有の臭いを抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成されたものである。すなわち、本開示は、次に掲げる発明を包含する。
項1.ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)含有する、ケール加工物配合組成物。
項2.前記大豆抽出物が、大豆タンパク質を70質量%以上で含有する大豆抽出物である、項1に記載のケール加工物配合組成物。
項3.ケール加工物配合組成物中、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となるように配合することを特徴とする、該組成物におけるケール臭マスキング方法。
項4.大豆抽出物配合組成物にケール加工物を配合する工程を有し、大豆抽出物配合組成物中のケールの配合割合が、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して大豆抽出物が0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となる割合であることを特徴とする、大豆抽出物配合組成物における大豆臭マスキング方法。
【発明の効果】
【0007】
ケール加工物と大豆抽出物とを特定量で組み合わせて用いることにより、ケール特有の臭いが抑制されたケール配合組成物を提供することができる。ケール加工物と大豆抽出物とを特定量で組み合わせることにより、ケール配合組成物においてケール特有の臭いをマスキングすることができる。ケール加工物と大豆抽出物とを特定量で組み合わせることにより、大豆抽出物において大豆抽出物特有の臭いマスキングすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。
【0009】
本開示は、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)含有する、ケール加工物配合組成物を包含する。
【0010】
ケール加工物の原料であるケールは、アブラナ科アブラナ属に属する植物である。ケールの使用部位は制限されず、葉、茎、根、花、実、植物体全体等のいずれであってもよく、好ましくは葉、茎が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
ケール加工物としては、原料となるケールの粉砕物、乾燥物、搾汁、抽出物等が挙げられる。
【0012】
粉砕物は、ジェットミル等の本分野で公知の粉砕手段によりケールを粉砕したものであれば特に制限されず、粉末、顆粒等が例示される。
【0013】
乾燥物は、ケールを乾燥させたものであれば特に制限されず、天日乾燥、遠赤外線照射、乾燥機(熱風乾燥、冷風乾燥、真空凍結乾燥等)等の従来公知の乾燥方法に従って得ることができる。乾燥物中の水分量としては、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8重量%以下が更により好ましい。本発明において乾燥物の形態は問わず、ケールそのものの乾燥物、乾燥物の粉砕物等のいずれでもよい。乾燥粉砕物は、前記粉砕物と同様の方法に従って得ることができる。また、本開示を制限するものではないが、乾燥物として、ケール中の酵素を失活等させる目的で加熱処理した後に乾燥して得られたものを使用してもよく、ケールを発酵処理や酵素処理した後に乾燥して得られたものを使用してもよく、該処理等の前及び/または後にケールを裁断等してもよい。水分量は乾燥減量法によって決定される。
【0014】
搾汁は、従来公知の手法によりケールから得たものであれば制限されない。搾汁の形態も、液状、ペースト状、その乾燥物等のいずれであってもよく、また、乾燥物の粉砕物等であってもよい。
【0015】
抽出物の製造方法(抽出方法)及び抽出条件等は特に限定されず、従来公知の方法に従えばよい。例えば、ケールをそのまま、必要に応じて裁断、粉砕または乾燥等したのち、溶媒抽出によって抽出物を得ることができる。溶媒抽出の方法としては、本分野において公知の方法を採用すればよく、例えば水(温水、熱水を含む)抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の従来公知の抽出方法を利用することができる。
【0016】
抽出溶媒としては例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルム等が挙げられる。溶媒として好ましくは水、低級アルコール、1,3-ブチレングリコール等であり、より好ましくは水、メタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコールであり、更に好ましくは水、メタノール、含水エタノールであり、特に好ましくは水である。これらの抽出溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本開示において、このように溶媒抽出を経て得た抽出物を特に溶媒抽出物と称することができる。また、本開示を制限するものではないが、溶媒抽出物は、例えば抽出溶媒として水を用いた場合は水抽出物、低級アルコール類を用いた場合は低級アルコール抽出物、エタノールを用いた場合はエタノール抽出物等と称することができる。
【0018】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて粉末状や顆粒状等の固形状態で使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、濃縮処理、高活性画分の分離処理等を施してもよい。また、例えば、得られた抽出物(更にはその乾燥物、精製処理物、濃縮処理物、高活性画分等)を凍結乾燥処理に供して粉末化する方法等の従来公知の方法に従って粉末化し、本開示で用いる抽出物としてもよい。また、該抽出物を、必要に応じて水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0019】
本開示において使用するケール加工物は市販品でもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。
【0020】
本開示において使用するケール加工物は、粉末状、顆粒状、粒状、繊維状、ペースト状、液状のいずれであってもよく、好ましくは粉末状、顆粒状、粒状、繊維状等の固形状である。
【0021】
ケール加工物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
大豆抽出物は、大豆を原料とする抽出物を意味する。大豆抽出物はこの限りにおいて制限されないが、例えば、大豆抽出物中のタンパク質(大豆タンパク質)の含有量は、乾燥物換算で、好ましくは70質量%以上が挙げられ、より好ましくは75~95質量%、更に好ましくは80~90質量%が挙げられる。ここで、大豆抽出物中のタンパク質の含有量は、燃焼法によって決定される。燃焼法は、食品検体で用いられている従来公知の一般的なタンパク質量の測定法であって、検体中の窒素は全てタンパク質由来とみなす測定法であり、「食品表示基準について(平成27年3月30日消食第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」に従うものである。燃焼法では、全窒素量を測定し、それに所定の定数を乗じてタンパク質量が算出され、全窒素量は検体を酸素存在下(100%)において高温で完全燃焼させて得た窒素量を測定することにより得る。
【0023】
また、大豆抽出物はこの限りにおいて制限されないが、好ましくは大豆抽出物中、乾燥物換算で、脂質の含有量が10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6%以下が例示される。脂質の含有量の下限値は制限されないが、理論的に0質量%より高い値である。ここで、大豆抽出物中の脂質の含有量は、酸分解法によって決定される。酸分解法も食品検体で用いられている従来公知の一般的な脂質測定法であって、検体に塩酸を加えて加熱し、エーテルを用いて脂質を抽出する方法である。
【0024】
また、大豆抽出物はこの限りにおいて制限されないが、好ましくは大豆抽出物中、乾燥物換算で、水の含有量が12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6%以下が例示される。ここで、大豆抽出物中の水の含有量は乾燥減量法によって決定される。
【0025】
また、大豆抽出物はこの限りにおいて制限されないが、大豆抽出物の好ましい例示として、大豆抽出物中、乾燥物換算で、大豆タンパク質70質量%以上、脂質10質量%以下が挙げられる。また、大豆抽出物はこの限りにおいて制限されないが、大豆抽出物の好ましい例示として、大豆抽出物中、乾燥物換算で、タンパク質70質量%以上、脂質10質量%以下、水12質量%以下が挙げられ、また、タンパク質70質量%以上、脂質10質量%以下、水12質量%以下であって、大豆抽出物が10質量%となるように水と混合した場合の水溶液のpHが25℃で8以下である大豆抽出物が挙げられる。該pHの下限値は特に制限されないが、4以上が例示され、好ましくは5以上、5.5以上が例示される。pHは、pHメータ(製品名卓上型pHメータ、型番F-72、堀場製作所社製)で測定される。
【0026】
大豆抽出物はこの限りにおいて制限されず、例えば、大豆抽出物は分離大豆タンパク、濃縮大豆タンパク等として公知のものであってもよい。本開示を制限するものではないが、例えば、大豆抽出物は、脱脂大豆を水で抽出して得た液に酸を添加して凝固後、得られたカードを分取、中和、乾燥させることにより得ることもでき、このようにして得た大豆抽出物が例示される。
【0027】
本開示において使用する大豆抽出物は市販品でもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。
【0028】
大豆抽出物は、粉末状、顆粒状、粒状、繊維状、ペースト状、液状のいずれであってもよく、好ましくは粉末状、顆粒状、粒状、繊維状等の固形状である。
【0029】
大豆抽出物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本開示において、ケール加工物配合組成物中、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物は、乾燥物換算で0.5~4.5質量部であり、好ましくは0.5~3質量部、より好ましくは1.5~2.5質量部が例示される。
【0031】
ケール加工物配合組成物中、ケール加工物と大豆抽出物との含有量はこの限りにおいて制限されないが、該組成物中、ケール加工物は乾燥物換算で好ましくは20~65質量%、より好ましくは25~50質量%、更に好ましくは30~40質量%が例示される。
【0032】
また、ケール加工物配合組成物中、ケール加工物と大豆抽出物との含有量も制限されないが、該組成物中、ケール加工物と大豆抽出物との合計量は、乾燥物換算で好ましくは40~100質量%、より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは60~80質量%が例示される。
【0033】
本開示のケール加工物配合組成物は経口、非経口の別を問わず、好ましくは経口で使用される。また、該組成物の形態も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよく、固形状、半固形状、液状のいずれであってもよい。このことから、該組成物は、粉末剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルを含む)、トローチ、チュアブル、ゲル状、ペースト状、クリーム状、液剤、懸濁液、乳剤、スプレー剤、液状形態の凍結乾燥物等のいずれであってもよい。また、例えば本開示の組成物が固形状である場合、これは水等と混合して使用してもよい。
【0034】
また、該組成物の使用態様も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよく、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、病者用食品を含む)、医薬組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。
【0035】
本開示のケール加工物配合組成物は、前述の各種形態、使用態様等における従来公知の通常の手順に従い製造すればよく、ケール加工物と、大豆抽出物と、更に必要に応じて、本開示の効果を妨げないは範囲で、薬学的に許容される成分、香粧品学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分とを混合等して製造すればよい。
【0036】
該任意の成分として、溶剤(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない)等)、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、香料、着色料、甘味料、矯味剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、浸透促進剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、コーティング剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、酸化防止剤、清涼剤、皮膜形成剤、ゲル化剤、アミノ酸、酵素、有用微生物(乳酸菌等)、各種栄養成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、その含有量も適宜決定すればよい。
【0037】
該組成物は、この限りにおいて制限されないが、後述の実施例に示す通り、大豆粉砕物(大豆を粉砕したもの、所謂きなこ)を用いた場合には、ケール臭の抑制効果が劣る。このことから、本開示の組成物の一実施態様として、大豆粉砕物を含有しないものが例示される。
【0038】
本開示において、該組成物の対象者(対象動物)も制限されず、ヒト、ヒト以外の哺乳動物等が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、牛、馬等の動物、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の動物が例示される。
【0039】
本開示の組成物の対象者(対象動物)への適用量は特に制限されず、対象者(対象動物)の体格、年齢、症状、適用形態、使用目的等に応じて適宜設定すればよい。本発明を制限するものではないが、経口で適用される場合、1日投与(摂取)量として、体重60kgの成人を基準として、ケール加工物(乾燥重量換算)が、好ましくは100~10000mg、より好ましくは500~5000mgが例示される。該組成物は、1日あたり単回投与(摂取)であってもよく複数回投与(摂取)であってもよい。また、本開示を制限するものではないが、例えば1回投与(摂取)量として、ケール加工物(乾燥重量換算)が、好ましくは500mg~4000mg、800mg~3000mg等が例示される。非経口で適用される場合やヒト以外に適用される場合、その適用量、適用回数等は、該経口適用での説明に基づき適宜決定すればよい。
【0040】
本開示の組成物は、このように、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)で含有するものであって、これによりケール臭を抑制することができる。このように、本開示によればケール加工物に起因するケール臭を抑制できることから、本開示はまた、ケール加工物配合組成物中、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して、大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となるように配合することを特徴とする、該組成物におけるケール臭マスキング方法を提供することを包含する。該方法によれば、ケール加工物を配合した組成物において、ケール加工物と大豆抽出物とを前記特定の割合で組み合わせることにより、ケール臭をマスキングすることができる。該方法に関する説明、すなわち、ケール加工物、大豆抽出物、該組成物中のこれらの成分の含有量(質量比等)、該組成物に配合可能な任意の成分等の各種説明は、前述の組成物に関する説明が適用される。
【0041】
また、後述の実施例に示す通り、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)で組み合わせることにより、大豆臭を抑制することができる。このことから、本開示はまた、大豆抽出物配合組成物にケール加工物を配合する工程を有し、大豆抽出物配合組成物中のケール加工物の配合割合が、ケール加工物1質量部(乾燥物換算)に対して大豆抽出物が0.5~4.5質量部(乾燥物換算)となる割合であることを特徴とする、大豆抽出物配合組成物における大豆臭マスキング方法を提供することを包含する。該方法によれば、大豆抽出物を配合した組成物において、ケール加工物と大豆抽出物とを前記特定の割合で組み合わせることにより、大豆臭をマスキングすることができる。ここで、大豆抽出物配合組成物は、大豆抽出物を含む組成物であり、該大豆抽出物は前述と同様に説明される。そして、このように、該大豆抽出物配合組成物は、前述のケール加工物と組み合わせることにより大豆臭がマスキングされ、該組み合わせ等はいずれも前述と同様に説明される。このため、該方法に関する説明、すなわち、大豆抽出物、ケール加工物、大豆抽出物配合組成物中のこれらの成分の含有量(質量比等)、該組成物に配合可能な任意の成分等の各種説明は、前述においてケール加工物配合組成物を大豆抽出物配合組成物に置き換えた以外は、前述のケール加工物配合組成物に関する説明と同様に説明されるといえる。このことから、本開示によれば、ケール加工物配合組成物や大豆抽出物配合組成物において、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物を0.5~4.5質量部(乾燥物換算)で組み合わせることにより、ケール臭をマスキングできると共に大豆臭をマスキングすることができるともいえる。
【実施例0042】
以下、例を示して本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0043】
試験例
組成物の調製
次の表1に従い、ケール加工物と大豆抽出物とを袋に入れて混合し、100メッシュのふるいにかけ、袋に戻して再度混合し、得られた混合物10gを別の袋に入れた。このようにして組成物(実施例1~9、比較例1~7)を得た。表1に示すケール加工物のみ、大豆抽出物のみについても同様にふるいにかけ、袋に戻し、10gを別の袋に入れた(参考例1及び2)。
【0044】
大豆抽出物を大豆粉砕物(きなこ)に代えた以外は前述と同様にして、次の表2に従いケール加工物と大豆粉砕物とを混合し、ふるいにかけ、再度混合し、10gを別の袋に入れた。このようにして組成物(比較例8~23)を得た。ケール加工物のみ、大豆粉砕物のみについても前述と同様にした(参考例1及び3)。
【0045】
大豆抽出物を牛乳プロテインに代えた以外は前述と同様にして、次の表3に従いケール加工物と牛乳プロテインとを混合し、ふるいにかけ、再度混合し、10gを別の袋に入れた。このようにして組成物(比較例24~39)を得た。ケール加工物のみ、牛乳プロテインのみについても前述と同様にした(参考例1及び4)。
【0046】
本試験例において使用した成分は次の通りである。
ケール加工物:ケール粉砕物(粉末)、商品名ケールパウダー、こだま食品株式会社製
大豆抽出物:粉末状大豆タンパク(濃縮大豆タンパク、大豆タンパク質を70質量%以上、脂質10質量%以下、水分10質量%以下、pH8以下(10質量%水溶液(pHは、25℃、pHメータ(製品名卓上型pHメータ、型番F-72、堀場製作所社製)で発明者が測定))。
大豆粉砕物:大豆粉砕物(きな粉、水分10質量%以下)
牛乳プロテイン:分離ホエイタンパク(粉末)、商品名ビプロ、ダビスコ社製
【0047】
臭いの評価
臭いに関する専門パネラー5名に、前述の通り調製した組成物10gの臭いをかがせ、ケール臭、大豆臭または牛乳臭について、次の0~4点の基準に従い点数化した。
4点:ほとんど感じない
3点:わずかに感じる
2点:感じる
1点:強く感じる
0点:非常に強く感じる
【0048】
前記4点は、ケール臭または大豆臭を意識しないと気が付かない;前記2点は、ケール臭または大豆臭を食品として許容できる程度に気付く;前記0点は、ケール単独での臭いまたは大豆単独での臭いと同じであることを基準とした。なお、表1~3に記載する参考例1がケール単独での臭いに相当し、表1、2に記載する参考例2、3がそれぞれ大豆単独での臭いに相当する。なお、本試験例で用いた牛乳プロテインには牛乳臭がなく、従って、いずれにおいても前述の4点であり、評価が◎であった。
【0049】
次に、パネラーの平均値を下の基準に当てはめて4段階で評価した。
◎:3点以上
〇:2点以上3点未満
△:1点以上2点未満
×:1点未満
【0050】
結果
結果を表1~3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
表1に示す通り、ケール加工物、大豆抽出物のいずれか一方のみの場合は、それぞれ特有のケール臭、大豆臭があり、評価は×であった(参考例1、2)。これに対して、ケール加工物と大豆抽出物とを特定の配合割合で組み合わせることにより、特有のケール臭を抑制できた。特に、この場合、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物を0.5質量部で組み合わせるだけで、その抑制効果が○となり、大豆抽出物を用いた場合、効率良くケール臭を抑制することができることが分かった。また、ケール加工物と大豆抽出物とを特定の配合割合で組み合わせることにより、特有の大豆臭も抑制できた。
【0055】
一方、表2に示す通り、大豆抽出物に代えて大豆粉砕物(きなこ)を用いた場合、ケール加工物、大豆粉砕物のいずれか一方のみの場合は、それぞれ特有のケール臭、大豆臭があり、評価は×であった(参考例1、3)。また、ケール加工物と大豆粉砕物とを組み合わせた場合、大豆粉砕物の配合割合が多くなるほど、ケール臭を抑制できたが、同時に大豆臭が強くなった。このように、ケール加工物と大豆粉砕物とを組み合わせた場合、食品として許容できる程度にケール臭を抑制し且つ大豆臭を抑制することはできなかった。また、表2から理解できる通り、大豆粉砕物を用いた場合は、ケール加工物1質量部に対して大豆粉砕物を3.5質量部で組み合わせた場合にようやくケール臭抑制効果が○となったが、これは、前述の大豆抽出物を用いた場合(表1、ケール加工物1質量部に対して大豆抽出物を0.5質量部で用いた場合に抑制効果が○)と比較して、非常に高い割合で大豆粉砕物を組み合わせる必要があり、ケール臭抑制の効率が著しく劣るものであり、また、前述の通り大豆臭の問題も生じるものであった。
【0056】
表3に示す通り、大豆抽出物に代えて牛乳プロテインを用いた場合、牛乳プロテイン自体に臭いは感じられず評価は◎であった(参考例4)。ケール加工物と牛乳プロテインとを組み合わせた場合、牛乳プロテインの配合割合を高くすると、ケール臭が抑制される傾向が認められたが、ケール臭を十分に抑制することはできなかった。
【0057】
このように、ケール加工物と大豆粉砕物を組み合わせた場合よりも、驚くべきことに、ケール加工物と大豆抽出物とを組み合わせた場合において効果的にケール臭をマスキングすることができた。また、ケール加工物と大豆抽出物とを組み合わせることにより、大豆臭をマスキングすることができた。つまり、ケール臭と大豆臭の両方を効果的にマスキングすることができた。また、本発明者らは、大豆粉砕物と大豆抽出物との主な違いとして、大豆粉砕物よりも大豆抽出物においてタンパク質の含有量が多いことに着目した。そこで、大豆抽出物に代えて牛乳プロテインを用いて試験を行ったが、表3の通り、牛乳プロテインを用いてもケール臭を十分にマスキングすることはできなかった。このように、表1において認められたケール臭マスキング効果は、大豆粉砕物や牛乳プロテインには認められない、大豆抽出物特有の効果であると理解できた。