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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043161
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】体腔ドレーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20230320BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61M25/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140986
(22)【出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021149834
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】平良 隆行
【テーマコード(参考)】
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161GG24
4C161GG25
4C267AA03
4C267BB02
4C267BB10
4C267BB12
4C267BB27
4C267BB40
4C267CC21
4C267HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、体腔内への挿入の前後で、体腔内に留置される外筒に対して、固定と非固定の状態が替わる、内視鏡を備えた体腔ドレーンカテーテルを提供する。
【解決手段】本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、経皮的に穿刺する内套針である内筒1が、内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒3に挿入された、二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、内筒は、内視鏡2を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、外周側に、穿刺方向とは反対の方向に傾斜した突片が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外周側に、穿刺方向とは反対の方向に傾斜した突片が形成されている
ことを特徴とする体腔ドレーンカテーテル。
【請求項2】
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒との間に、穿刺方向とは反対の内筒の端部から連通する管によって空気の注入と排出が行われることで膨張と収縮が自在な第1バルーン部が形成されている
ことを特徴とする体腔ドレーンカテーテル。
【請求項3】
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒には、内筒が挿入された外筒を挟むクランプが取り付けられている
ことを特徴とする体腔ドレーンカテーテル。
【請求項4】
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒には、内筒が挿入された外筒を締め付ける締付部材が取り付けられている
ことを特徴とする体腔ドレーンカテーテル。
【請求項5】
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外周側に、螺旋状のネジ山が形成されており、
外筒の内周側には、内筒のネジ山に螺合するネジ溝が形成されている
ことを特徴とする体腔ドレーンカテーテル。
【請求項6】
前記の外筒の外周側には、
穿刺方向とは反対の外筒の端部から連通する管によって空気の注入と排出が行われることで膨張と収縮が自在な第2バルーン部が形成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の体腔ドレーンカテーテル。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、特に内視鏡を備えた体腔ドレーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故や肺炎、心不全などが原因で胸水や気胸が溜まった際、体腔内に体腔ドレーンカテーテルを挿入して処置をする必要がある。
体腔ドレーンカテーテルを挿入する際、超音波検査で間接的に体腔内を確認しながら挿入するが、体腔内を直接確認することができないことから、挿入した後は盲目的になる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入位置や挿入方向が適切でない場合、体腔ドレーンカテーテルが、心臓や肺などの臓器を損傷させたり、皮下に入るミスもあるほか、患者はドレナージの不良などを原因とする合併症を起こすリスクもある。
このようなミスやリスクを回避するためには、体腔内を視認できる状態で、ドレーンカテーテルを体腔内に挿入することが望ましく、体腔内を視認する方法として、内視鏡を用いる方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、体腔や手術用ポータルに医療用機器を挿入する際に利用される医療用オーバーチューブにおいて、処置対象に挿入される部分に、柔軟な折り畳み構造を有するルーメンを含む複数のルーメンを備え、把持部分は径方向に硬性を有し、処置対象に挿入しやすく、医療用機器が容易に挿入し、薬剤の投与も容易なオーバーチューブが開示されている。
これによれば、内視鏡で観察しながら、鼻道から前頭洞の手前まで、オーバーチューブを挿入させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2019/193747公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ドレナージのために用いられるドレーンカテーテルは、体腔内に挿入されたあと、ドレーンカテーテルの外筒が体腔に留置される必要がある。
そのため、ドレーンカテーテルとともに体腔内に挿入される内視鏡は、ドレーンカテーテルの挿入時は、ドレーンカテーテルの外筒と共に挿入されるが、挿入後は、外筒から分離して抜去されなければならない。
つまり、内視鏡は、ドレーンカテーテルの挿入時にのみ、ドレーンカテーテルと共に挿入されれば足り、挿入後は、ドレーンカテーテルの外筒のみを残して抜去される必要があるため、挿入の前後で、外筒に対して、固定と非固定の状態が替わる構造であることが求められるが、そのような構造は、特許文献1はもちろん、その他の先行技術文献にも一切開示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、体腔内への挿入の前後で、体腔内に留置される外筒に対して、固定と非固定の状態が替わる、内視鏡を備えた体腔ドレーンカテーテルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外周側に、穿刺方向とは反対の方向に傾斜した突片が形成されている
ことを特徴とする。
【0008】
内筒と外筒は、いずれも軸方向に沿って中空に形成されている。
内筒は、中空部分に、内視鏡が挿入される。
外筒は、中空部分に、内視鏡が挿入された内筒が挿入される。
この二重構造からなる体腔ドレーンカテーテルを、内筒に内視鏡が挿入された状態で、体腔内に穿刺した後は、外筒のみを体腔内に留置し、内視鏡とともに内筒を外筒から抜去する。
そのため、外筒の中空部分の内径は、内筒の外径よりも僅かに大きい。
これにより、内視鏡を挿入した内筒は、外筒の中空内に挿入でき、外筒から抜去できる。
【0009】
穿刺方向とは反対の方向に傾斜した突片は、内筒と外筒の間の、内筒の外周側に形成されており、「返し」の役割を果たす。
そのため、
ドレーンカテーテルの挿入時は、
内筒の外周側に形成された突片が、外筒の内周側に引っ掛かり、内視鏡を挿入した内筒を外筒とともに体腔内に挿入でき、
ドレーンカテーテルの挿入後は、
内筒の外周側に形成された突片が、穿刺方向とは反対の方向に傾斜している形状をなしていることで、外筒の内周側に引っ掛かることなく、内視鏡を挿入した内筒のみを抜去して、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0010】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒との間に、穿刺方向とは反対の内筒の端部から連通する管によって空気の注入と排出が行われることで膨張と収縮が自在な第1バルーン部が形成されている
ことを特徴とする。
【0011】
穿刺方向とは反対の内筒の端部から連通する管によって空気の注入と排出が行われることで膨張と収縮が自在な第1バルーン部は、内筒と外筒の間に形成されており、内筒を外筒から抜去するときの「抵抗」の役割を果たす。
つまり、第1バルーン部に空気を注入して、第1バルーン部が膨張すると、第1バルーン部が、内筒と外筒をそれぞれ押圧し、内筒が外筒内を軸方向に摺動する際の抵抗になるため、内筒を外筒から抜去できなくなり、
第1バルーン部から空気を排出して、第1バルーン部が収縮すると、第1バルーン部が、内筒と外筒を押圧する力が無くなり、内筒が外筒内を軸方向に摺動する際の抵抗が無くなるため、内筒を外筒から抜去できるようになる。
【0012】
そのため、
ドレーンカテーテルの挿入時は、
第1バルーン部に空気を注入して、第1バルーン部を膨張させることで、第1バルーン部が、内筒と外筒をそれぞれ押圧し、内筒が外筒内を軸方向に摺動する際の抵抗になるため、内視鏡を挿入した内筒を外筒とともに体腔内に挿入でき、
ドレーンカテーテルの挿入後は、
第1バルーン部から空気を排出して、第1バルーン部を収縮させることで、第1バルーン部が、内筒と外筒を押圧する力が無くなり、内筒が外筒内を軸方向に摺動する際の抵抗が無くなるため、
内視鏡を挿入した内筒のみを抜去して、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0013】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒には、内筒が挿入された外筒を挟むクランプが取り付けられている
ことを特徴とする。
【0014】
外筒に取り付けられているクランプは、内筒が挿入された外筒を挟むことで、内筒を外筒に「固定」する役割を果たす。
そのため、
ドレーンカテーテルの挿入時は、
内視鏡が挿入された内筒を挿入した状態の外筒をクランプで挟むことで、外筒とともに内筒を外筒側から圧迫することで、内筒が外筒に固定され、内視鏡を挿入した内筒を外筒とともに体腔内に挿入でき、
ドレーンカテーテルの挿入後は、
外筒を挟むクランプを緩めることで、内筒が外筒に固定された状態から解放され、内視鏡を挿入した内筒のみを抜去することができ、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0015】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外筒には、内筒が挿入された外筒を締め付ける締付部材が取り付けられている
ことを特徴とする。
【0016】
外筒に取り付けられている締付部材は、外筒を内筒とともに締め付けることで、内筒を外筒に「固定」するための役割を果たす。
そのため、
ドレーンカテーテルの挿入時は、
内視鏡が挿入された内筒が挿入された外筒を、内筒とともに締付部材で締め付けることで、内筒が外筒に固定され、内視鏡を挿入した内筒を外筒とともに体腔内に挿入でき、
ドレーンカテーテルの挿入後は、
内視鏡が挿入された内筒が挿入された状態の外筒を締め付ける締付部材を緩めることで、内筒が外筒に固定された状態から解放され、内視鏡を挿入した内筒のみを抜去して、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0017】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
経皮的に穿刺する内套針である内筒が、
内筒を抜去した後、体腔内に留置され、皮膚に固定される外筒に挿入された、
二重構造をなしている、ドレナージに用いる体腔ドレーンカテーテルにおいて、
内筒は、
内視鏡を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成された、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されており、
外周側に、螺旋状のネジ山が形成されており、
外筒の内周側には、内筒のネジ山に螺合するネジ溝が形成されている
ことを特徴とする。
【0018】
内筒と外筒の間の、内筒の外周側に、螺旋状のネジ山が形成されており、外筒の内周側に、内筒のネジ山が螺合するネジ溝が形成されている。
これにより、ネジ締めの要領で、内筒を螺進させて、外筒に挿入し、外筒に固定でき、内筒を螺退させれば、外筒から取り外すことができる。
つまり、ドレーンカテーテルの挿入時は、
内筒の外周側に形成されたネジ山が、外筒の内周側のネジ溝に螺合させることで、内視鏡を挿入した内筒を外筒とともに体腔内に挿入でき、
ドレーンカテーテルの挿入後は、
ネジを緩める要領で内筒を螺退させて、内視鏡を挿入した内筒のみを抜去し、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0019】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、
前記の外筒の外周側には、
穿刺方向とは反対の外筒の端部から連通する管によって空気の注入と排出が行われることで膨張と収縮が自在な第2バルーン部が形成されている
ことを特徴とする。
【0020】
第2バルーン部は、外筒を体腔内に留置する際、皮膚に近い位置に形成される。
第2バルーン部が形成された外筒を、体腔内に留置した後、
穿刺方向とは反対の外筒の端部から連通する管から、第2バルーン部に空気を注入することで、第2バルーン部は膨張する。
この状態であれば、仮に、不意に患者が動いても、体腔内に留置した外筒は、第2バルーン部が体腔内でひっかかり、体腔外に抜けてしまうことがなく、皮膚に固定された状態を維持できる。
体腔内に留置した外筒を取り外すときは、
穿刺方向とは反対の外筒の端部から連通する管から、第2バルーン部から空気を排出させることで、第2バルーン部は収縮する。
この状態であれば、体腔内に留置した外筒は、第2バルーン部が体腔内でひっかかることなく、体腔外に簡単に引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0021】
内視鏡で直視した状態で、体腔内に体腔ドレーンカテーテルを挿入できるため、挿入位置の異常による、臓器損傷や合併症を起こすリスクを無くすことができる。
緊急時でも、レントゲンで挿入位置や合併症の確認をする必要がなく、また、挿入時に、肺の損傷の有無などの診断を内視鏡で行うことができ、迅速に患者の治療を行うことができる。
挿入時は、外筒とともに内視鏡を挿入した内筒を体腔内に挿入でき、挿入後は、内視鏡を挿入した内筒のみを抜去できることで、外筒をドレナージチューブとして体腔内に留置でき、挿入と留置を1つのドレーンカテーテルによって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】内視鏡を挿入した状態の体腔ドレーンカテーテルを示す上方斜視図
図2】第1実施例の体腔ドレーンカテーテルの軸方向の断面構造を示す断面図
図3】第2実施例の体腔ドレーンカテーテルの軸方向の断面構造を示す断面図
図4】第3実施例の体腔ドレーンカテーテルを示す上方斜視図
図5】第4実施例の体腔ドレーンカテーテルを示す上方斜視図
図6】第6実施例の体腔ドレーンカテーテルの軸方向の断面構造を示す断面図
図7】第5実施例の体腔ドレーンカテーテルの使用例を示すイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を、図面をもとに説明する。
【0024】
本発明にかかる体腔ドレーンカテーテルは、軸方向に沿って中空に形成され、中空部分に内視鏡が挿入される内筒と、同じく軸方向に沿って中空に形成され、内視鏡が挿入された内筒が挿入される外筒とからなり、内筒と外筒による二重構造になっている。
この体腔ドレーンカテーテルは、図1に示すように、内筒1に内視鏡2が挿入された状態で、体腔内に穿刺した後は、皮膚に固定される外筒3のみを体腔内に留置し、内視鏡2とともに内筒1を外筒3から抜去する方法で使用される。
そのため、外筒3の中空部分の内径は、内筒1の外径よりも僅かに大きく、これにより、内視鏡2を挿入した内筒1は、外筒3の中空内に挿入でき、外筒3から抜去できる。
【0025】
内筒1は、経皮的に穿刺する内套針であり、中空部分に内視鏡2が挿入された状態で、体腔内に穿刺されることで、内視鏡2で直視した状態で、体腔内に体腔ドレーンカテーテルを挿入できる。
そのため、挿入位置の異常による、臓器損傷や合併症を起こすリスクを無くすことができ、緊急時でも、レントゲンで挿入位置や合併症の確認をする必要がなく、また、挿入時に、肺の損傷の有無などの診断を内視鏡2で行うことができ、迅速に患者の治療を行うことができる。
挿入時は、外筒3とともに内視鏡2を挿入した内筒1を体腔内に挿入でき、挿入後は、内視鏡2を挿入した内筒1のみを抜去できることで、外筒3をドレナージチューブとして体腔内に留置でき、挿入と留置を1つのドレーンカテーテルによって実現できる。
【0026】
また、内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、内筒1が、内視鏡2を挿入できるように、軸方向に沿って中空に形成されている。
これによって、中空部分に、内視鏡2を挿入した状態で、体腔内に穿刺されることで、内視鏡2で直視しながら、体腔内に体腔ドレーンカテーテルを挿入できる。
【0027】
さらに、内筒1は、穿刺方向の先端部が、挿入される内視鏡2が先端部から穿刺方向に向かって飛び出ないように縮径されている。
これによって、中空部分に挿入された内視鏡2が、内筒1の穿刺方向の先端部から飛び出すことがない。
【0028】
このような構成の体腔ドレーンカテーテルにおいて、挿入と留置を1つのドレーンカテーテルによって実現する具体的な実施例を説明する。
【0029】
<実施例1>
中空部分に内視鏡2が挿入される内筒1は、図2に示すとおり、外周側に、穿刺方向とは反対の方向に傾斜した突片4が形成されている。
この突片4は、「返し」の役割を果たす。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、内筒1の外周側に形成された突片4が、外筒3の内周側に引っ掛かり、内視鏡2を挿入した内筒1を外筒3とともに体腔内に挿入できる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、内筒1の外周側に形成された突片4が、穿刺方向とは反対の方向に傾斜している形状をなしていることで、内筒1が外筒3の内周側に引っ掛かることなく内筒1を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0030】
<実施例2>
内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、図3のとおり、内筒1と外筒3との間に、穿刺方向とは反対の内筒1の端部から連通する管5が配設されている。
そして、管5の先には第1バルーン部6が形成されている。
この管5を通じて、第1バルーン部6に、空気の注入と排出が行われる。
空気の注入が行われると、第1バルーン部6は膨張し、空気の排出が行われると、第1バルーン部6は収縮する。
この第1バルーン部6は、中空部分に内視鏡2が挿入された内筒1を、外筒3から抜去するときの「抵抗」の役割を果たす。
【0031】
つまり、第1バルーン部6に空気を注入して、第1バルーン部6が膨張すると、第1バルーン部6が、内筒1と外筒3をそれぞれ押圧し、内筒1が外筒3内を軸方向に摺動する際の抵抗になるため、中空部分に内視鏡2が挿入された内筒1を、外筒3から抜去できなくなる。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、第1バルーン部6に空気を注入して、第1バルーン部6を膨張させることで、第1バルーン部6が、内筒1と外筒3をそれぞれ押圧し、内筒1が外筒3内を軸方向に摺動する際の抵抗になり、内視鏡2を挿入した内筒1を外筒3とともに体腔内に挿入できる。
【0032】
これに対し、第1バルーン部6から空気を排出して、第1バルーン部6が収縮すると、第1バルーン部6が、内筒1と外筒3を押圧する力が無くなり、内筒1が外筒3内を軸方向に摺動する際の抵抗が無くなるため、内筒1を外筒3から抜去できるようになる。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、第1バルーン部6から空気を排出して、第1バルーン部6を収縮させることで、第1バルーン部6が、内筒1と外筒3を押圧する力が無くなり、内筒1が外筒3内を軸方向に摺動する際の抵抗を外筒3から受けることなく内筒1を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0033】
<実施例3>
内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、図4のとおり、外筒3に、内筒1が挿入された外筒3を挟むクランプ7が取り付けられている。
クランプ7は、内筒1が挿入された状態の外筒3を挟むことで、内筒1を外筒3に「固定」する役割を果たす。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、内視鏡2が挿入された内筒1を挿入した状態の外筒3をクランプ7で挟むことで、外筒3とともに内筒1を外筒3側から圧迫し、内筒1が外筒3に固定され、内視鏡2を挿入した内筒1を、外筒3とともに体腔内に挿入できる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、外筒3を挟むクランプ7を緩めることで、内筒1が外筒3に固定された状態から解放され、内視鏡2が挿入された内筒1を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0034】
<実施例4>
内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、外筒3に、内筒1が挿入された外筒3を締め付ける締付部材が取り付けられている。
締付部材は、外筒3を内筒1とともに締め付けることで、内筒1を外筒3に「固定」するための役割を果たす。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、内視鏡2が挿入された内筒1が挿入された外筒3を、内筒1とともに締付部材で締め付けることで、内筒1が外筒3に固定され、内視鏡2を挿入した内筒1を外筒3とともに体腔内に挿入できる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、内視鏡2が挿入された内筒1が挿入された状態の外筒3を締め付けている締付部材を緩めることで、内筒1が外筒3に固定された状態から解放され、内視鏡2が挿入された内筒1を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0035】
また、この締付部材を使用することで、内視鏡2を、直接、外筒3に「固定」することもできる。
つまり、この場合の体腔ドレーンカテーテルは、外筒3のみからなり、内視鏡2が挿入された外筒3を締め付ける締付部材が取り付けられることになる。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、内視鏡2が挿入された外筒3を締付部材で締め付けることで、内視鏡2が外筒3に固定され、内視鏡2を挿入した外筒3を体腔内に挿入できる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2のみを抜去するときは、内視鏡2が挿入された状態の外筒3を締め付けている締付部材を緩めることで、内視鏡2が外筒3に固定された状態から解放され、内視鏡2を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0036】
なお、締付部材は、例えば、図5に示すように、外筒3の周囲に取り付けた小径筒状体8の先端部を、図示しない大径筒状体の内径部に摺動可能に挿入させ、外筒3を周囲から締め付けられる構造の部材を使用できる。
小径筒状体8の外径部には、軸方向に延びる複数条のガイドリブが突設され、大径筒状体における小径筒状体8が出入する開口部側の内径部には、ガイドリブが嵌合する摺動溝が形成されることで、大径筒状体を回転させながら、小径筒状体8の先端部を、大径筒状体の内径部に挿入させることで、大径筒状体が小径筒状体8とともに、外筒3を周囲から締め付けることができる。
締付部材は、この構造以外にも、外筒3を周囲から締め付けることができれば、どのような構造でも採用できる。
【0037】
<実施例5>
内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、図6のとおり、内筒1と外筒3とのの間の、内筒1の外周側に、螺旋状のネジ山10が形成されており、外筒3の内周側には、内筒1のネジ山10が螺合するネジ溝11が形成されている。
これにより、ネジ締めの要領で、内筒1を螺進させれば、外筒3に挿入し、外筒3に固定でき、内筒1を螺退させれば、外筒3から取り外すことができる。
そのため、体腔ドレーンカテーテルの挿入時は、内筒1の外周側に形成されたネジ山10が、外筒3の内周側のネジ溝11に螺合して固定されるため、内視鏡2を挿入した内筒1を外筒3とともに体腔内に挿入できる。
そして、体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、ネジを緩める要領で内筒1を螺退させれば、内視鏡2を挿入した内筒1のみを引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0038】
<実施例6>
実施例1から5の、内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルは、外筒3の外周側に、穿刺方向とは反対の外筒3の端部から連通する管5が配設されている。
そして、管5の先には、外筒3を体腔内に留置したときの体腔内側の皮膚に近い位置に、図7のとおり、第2バルーン部9が環状に形成されている。
この管5を通じて、第2バルーン部9に、空気の注入と排出が行われる。
空気の注入が行われると、第2バルーン部9は膨張し、空気の排出が行われると、第2バルーン部9は収縮する。
この第2バルーン部9は、外筒3を体腔内に留置した状態で皮膚に固定したときに、外筒3が体腔外に抜けないようにするための障害物としての役割を果たす。
【0039】
つまり、第2バルーン部9が形成された外筒3を、体腔内に留置した後、穿刺方向とは反対の外筒3の端部から連通する管5から、第2バルーン部9に空気を注入して、第2バルーン部9を膨張させる。
この状態であれば、仮に、不意に患者が動いても、体腔内に留置した外筒3は、第2バルーン部9が体腔内でひっかかり、体腔外に抜けてしまうことがなく、皮膚に固定された状態を維持できる。
【0040】
これに対し、体腔内に留置した外筒3を体腔外に取り出すときは、穿刺方向とは反対の外筒3の端部から連通する管5から、第2バルーン部9から空気を排出させて、第2バルーン部9を収縮させる。
この状態であれば、体腔内に留置した外筒3は、第2バルーン部9が体腔内でひっかかることなく、体腔外に簡単に引き抜くことができる。
【0041】
以上の構成からなる実施例1から6までの体腔ドレーンカテーテルは、以下のように使用することができる。
【0042】
最初に、上記した実施例1から5のいずれかの実施例の、内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルの内筒1に内視鏡2を挿入し、内視鏡2を挿入した内筒1を、外筒3に挿入する。
次に、一般的な、体腔内にドレーンカテーテルを挿入する手順に沿って、患者のドレーン挿入部位を切開し、皮下組織を鈍的に剥離したのち、体腔への交通を確認したうえで、内視鏡2の電源を入れ、内視鏡2を挿入した体腔ドレーンカテーテルを、体腔内に挿入する。
【0043】
この際、内視鏡2の機械的トラブル(電源が入らない、視界が不明瞭である等)が無いことを、挿入開始前に確認する。
また、内視鏡2が、体腔ドレーンカテーテルに固定され、その状態で可動できるか、問題なく任意に行えるかを、患者への挿入前に確認する。
【0044】
患者の体腔内に交通している孔を内視鏡2で確認しながら、慎重に体腔ドレーンカテーテルを挿入する。
患者の体腔内に入った後も、臓器の位置を、内視鏡2で確認しながら、体腔ドレーンカテーテルを挿入する。
体腔ドレーンカテーテルの挿入後、内視鏡2が挿入された内筒1のみを抜去するときは、内視鏡2が挿入された内筒1が挿入された状態の外筒3を締め付けている締付部材8があれば、これを緩めることで、内筒1が外筒3に固定された状態から解放され、内視鏡2が挿入された内筒1を引き抜くことができ、外筒3のみをドレナージチューブとして体腔内に留置できる。
【0045】
次に、実施例1から5の体腔ドレーンカテーテルの外筒3の外周側に、穿刺方向とは反対の外筒3の端部から連通する管5が配設され、管5の先に第2バルーン部9が環状に形成された、実施例6の体腔ドレーンカテーテルを使用する手順を説明する。
【0046】
上記した実施例1から5のいずれかの実施例の、内筒1と外筒3からなる体腔ドレーンカテーテルの内筒1に内視鏡2を挿入し、内視鏡2を挿入した内筒1を、外筒3に挿入する。
次に、一般的な、体腔内にドレーンカテーテルを挿入する手順に沿って、患者のドレーン挿入部位を切開し、皮下組織を鈍的に剥離したのち、体腔への交通を確認したうえで、内視鏡2の電源を入れ、内視鏡2を挿入した体腔ドレーンカテーテルを、体腔内に挿入する。
体腔ドレーンカテーテルの外筒3の外周側には、穿刺方向とは反対の外筒3の端部から連通する管5が配設され、管5の先には第2バルーン部9が環状に形成されているため、第2バルーン部9までが体腔内に入った時点で、管5を通じて第2バルーン部9に空気を注入し、第2バルーン部9を拡張させる。
【0047】
これによって、体腔内側の皮膚に近い位置に、体腔ドレーンカテーテルを固定した状態で留置できる。
具体的には、術者が体腔ドレーンカテーテルを固定したい位置に、体腔ドレーンカテーテルの先端を移動させたのち、内視鏡2とともに内筒1を抜去する。
その後、糸針を用いて、挿入部位の皮膚に、体腔ドレーンカテーテルを固定する。
【0048】
通常であれば、体腔ドレーンカテーテルを挿入した後の体腔内での位置確認を、胸部X線検査もしくは胸部CT検査で行うが、本実施例においては、体腔ドレーンカテーテルの内筒1に挿入した内視鏡2の映像から、挿入箇所は確認できているため、これらの検査は必要がない。
体腔ドレーンカテーテルを抜去するときは、管5を通じて第2バルーン部9から空気を排出し、第2バルーン部9を収縮させる。
これにより、体腔ドレーンカテーテルを体腔内から抜去できる。
【0049】
なお、全ての実施例における、内視鏡2を挿入する内筒1は、必ずしも中空部分が形成された筒型の形状である必要は無く、内視鏡2を保持するとともに、内視鏡2を外筒3に挿入し、または、内視鏡2を外筒3から抜去する時に、内視鏡2と共に挿入または抜去できれば足りるため、例えば、内筒1の長手方向に沿って、予め切れ目が形成されており、その切れ目が形成された内筒1の側面から、内視鏡2を、内筒1の中心部分に収められるような形態でもよい。
【0050】
また、図1乃至6には、内筒1の先端部分が開口した実施例を表しているが、先端部分が閉口した内筒1を使用することもできる。
特に、内筒1の先端部分が閉じていれば、内視鏡2が患者の組織や体液に触れることがないため、衛生的で、何度も使用できて経済的である。
例えば、内筒1の先端部分が透明の素材であれば、内視鏡2の視野を邪魔することなく、内視鏡2で直視した状態で、体腔ドレーンカテーテルを安全に体腔内に挿入できる。
【符号の説明】
【0051】
1 内筒
2 内視鏡
3 外筒
4 突片
5 管
6 第1バルーン部
7 クランプ
8 小径筒状体
9 第2バルーン部
10 ネジ山
11 ネジ溝




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7