(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004318
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ゲル状洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20230110BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20230110BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20230110BHJP
C11D 1/94 20060101ALI20230110BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20230110BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20230110BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20230110BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/62
C11D3/04
C11D1/94
C11D3/48
C11D3/37
C11D1/68
C11D1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105927
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】上西 加純
(72)【発明者】
【氏名】前田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】平岡 知朗
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC06
4H003AC08
4H003AC23
4H003AC24
4H003AD04
4H003AE05
4H003BA15
4H003DA05
4H003DA06
4H003EA19
4H003EB34
4H003ED02
4H003FA10
4H003FA26
4H003FA30
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、塩化ベンザルコニウムを含んでいながら、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できるゲル状洗浄剤組成物を提供することである。
【解決手段】塩化ベンザルコニウムと共に、一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを配合してゲル状洗浄剤組成物を製造することにより、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩化ベンザルコニウム、及び(B)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含有する、ゲル状洗浄剤組成物。
【化1】
[一般式(1)中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。n1、n2、及びn3は、平均付加モル数を示し、それぞれ1以上である。]
【請求項2】
更に、(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む、請求項1に記載のゲル状洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(D)水溶性無機塩化物を含む、請求項1又は2に記載のゲル状洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(E)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含む、請求項1~3のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【化2】
[一般式(2)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。m1、m2、m3、m4、及びm5は、それぞれ平均付加モル数を示し、それぞれ1以上である。]
【請求項5】
更に、(F)両性界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(A)成分の含有量が0.1~10重量%であり、且つ前記(B)成分の含有量が10~50重量%である、請求項1~5のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【請求項7】
トイレの洗浄用である、請求項1~6のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの便器、ガラス、窓、ドア、浴室の壁等の硬質表面に付着させて使用されるゲル状洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの便器等の硬質表面に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すために、様々な洗浄剤が使用されている。例えば、水洗トイレの洗浄剤としては、水洗トイレの手洗い部や貯水タンク内に設置することにより、フラッシュ水に洗浄剤を溶出できるように設計されたオンタンク又はインタンク用のトイレ用洗浄剤が使用されている。しかしながら、近年、タンクレスの水洗トイレが普及しており、オンタンク又はインタンク用のトイレ用洗浄剤では、タンクレスの水洗トイレに適用できないという欠点がある。
【0003】
一方、トイレ便器のリム部に設置し、トイレ便器に流れるフラッシュ水に洗浄剤を流出させるリム部用のトイレ用洗浄剤が知られている。リム部用のトイレ用洗浄剤は、タンクレスの水洗トイレに適用できるが、使用前後にリム部に取り外しすること等が必要であり、衛生面で欠点があるため、広く普及していないのが現状である。
【0004】
そこで、近年、トイレの便器ボウルの表面に付着させて使用するゲル状洗浄剤が開発されている。例えば、特許文献1には、重合度が13~50のポリオキシエチレンと炭素数12~18のアルキル基で構成されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むトイレ用ゲル状洗浄剤を、トイレの便器ボウルの表面に付着させることによって、流水と接触しても、便器ボウルの表面に付着した状態を維持したまま、流水に洗浄剤を持続的に放出できることが報告されている。また、特許文献2には、特定のポリオキシアルキレンブロックポリマーを含むゲル状洗浄剤は、高温条件下でも液化を抑制して性状を安定に維持できることが開示されている。
【0005】
一方、トイレの便器等の硬質表面を衛生的な状態に維持するには、汚垢の洗浄のみならず、除菌作用による雑菌除去やバイオフィルム形成抑制も必要になる。雑菌除去やバイオフィルム形成抑制には、除菌成分の配合が有効であるが、従来、ゲル状洗浄剤に除菌成分を配合したゲル状洗浄剤については十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-57780号公報
【特許文献2】特開2015-199936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、塩化ベンザルコニウムには、除菌作用があり、雑菌除去やバイオフィルム形成抑制に有効であることが知られている。そこで、本発明者は、ゲル状洗浄剤に除菌作用を付与すべく、塩化ベンザルコニウムを配合してゲル状洗浄剤の製造を試みたところ、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できないという問題点に直面した。更に、塩化ベンザルコニウムを配合したゲル状洗浄剤では、硬質表面への付着性の低下、高温でのゲル状態の安定性低下等の問題も生じるという問題点にも直面した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、塩化ベンザルコニウムを含んでいながら、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できるゲル状洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、塩化ベンザルコニウムと共に、特定構造のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを配合してゲル状洗浄剤組成物を製造することにより、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できることを見出した。
【0010】
また、本発明者は、塩化ベンザルコニウム及び特定構造のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと共に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、特定構造のポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及び水溶性無機塩化物よりなる群から選択される少なくとも1種を配合してゲル状洗浄剤組成物を製造することにより、ゲル状洗浄剤組成物の硬質表面に対する付着性も良好になることを見出した。
【0011】
更に、本発明者は、塩化ベンザルコニウム及び特定構造のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと共に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水溶性無機塩化物とを組みあわせて、又は、水溶性無機塩化物と両性界面活性剤とを組み合わせて配合してゲル状洗浄剤組成物を製造することにより、高温保存後でもゲル状態を安定に形成できることを見出した。
【0012】
本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)塩化ベンザルコニウム、及び(B)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含有する、ゲル状洗浄剤組成物。
【化1】
[一般式(1)中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。n1、n2、及びn3は、平均付加モル数を示し、それぞれ1以上である。]
項2. 更に、(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む、項1に記載のゲル状洗浄剤組成物。
項3. 更に、(D)水溶性無機塩化物を含む、項1又は2に記載のゲル状洗浄剤組成物。
項4. 更に、(E)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含む、項1~3のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【化2】
[一般式(2)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。m1、m2、m3、m4、及びm5は、それぞれ平均付加モル数を示し、それぞれ1以上である。]
項5. 更に、(F)両性界面活性剤を含む、項1~4のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
項6. 前記(A)成分の含有量が0.1~10重量%であり、且つ前記(B)成分の含有量が10~50重量%である、項1~5のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
項7. トイレの洗浄用である、項1~6のいずれかに記載のゲル状洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、塩化ベンザルコニウムを含んでいながら、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できるので、トイレの便器等の硬質表面にゲル状態のまま付着させることが可能になっており、硬質表面(特にトイレ便器)の洗浄及び除菌に好適に使用できる。
【0014】
また、本発明のゲル状洗浄剤組成物の一態様では、硬質表面に対する付着性も良好であり、流水との接触による洗浄成分及び除菌成分の放出を繰り返し行うこともできる。更に、本発明のゲル状洗浄剤組成物の他の一態様では、高温保存後でもゲル状態を安定に形成できるので、様々な環境で使用される硬質表面の洗浄及び除菌に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、塩化ベンザルコニウム(以下、(A)成分と表記することもある)、一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(以下、(B)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。本発明のゲル状洗浄剤組成物、このような組成を備えることによって、塩化ベンザルコニウムを含んでいながらも、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成することが可能になる。以下、本発明のゲル状洗浄剤組成物について詳述する。
【0016】
[(A)塩化ベンザルコニウム]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、(A)成分として、塩化ベンザルコニウムを含有する。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、塩化ベンザルコニウムは除菌成分として機能し、洗浄対象となる硬質表面を除菌する役割を果たす。従来技術では、塩化ベンザルコニウムを配合したゲル状洗浄剤組成物は、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成できなくなるが、本発明によれば、後述する(B)成分を含有することにより、適度なゲル強度を有するゲル状態の形成が可能になる。
【0017】
本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(A)成分の含有量については、付与すべき抗菌作用の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.1~10重量%が挙げられる。適度なゲル強度を有するゲル状態をより一層好適に形成させるという観点から、本発明のゲル状洗浄剤組成物における(A)成分の含有量として、好ましくは1~8重量%、より好ましくは2~7重量%、更に好ましくは3~6重量%が挙げられる。
【0018】
[(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、(B)成分として、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含有する。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは、適度なゲル強度を有するゲル状態を形成させるためのゲル化剤としての役割と共に、界面活性作用による洗浄成分としての役割を果たす。
【0019】
【0020】
一般式(1)中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(1)中、n1、n2、及びn3は、それぞれ平均付加モル数を示す。n1及びn3は、それぞれ、1以上、好ましくは15~400、より好ましくは50~200を示す。n1及びn3は、略同数であることが好ましい。また、n1+n3としては、例えば、2以上、好ましくは30~800、より好ましくは100~400が挙げられる。n2は、1以上、好ましくは5~100、より好ましくは10~80、更に好ましくは20~70を示す。
【0021】
一般式(1)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、特に制限されないが、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分が総量で0.1~50重量部が挙げられる。適度なゲル強度を有するゲル状態をより一層好適に形成させるという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分が総量で、好ましくは1~20重量部、より好ましくは3~20重量部、更に好ましくは3~10重量部が挙げられる。
【0023】
また、本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(B)成分の含有量については、前述する(A)成分に対する(B)成分の比率を勘案しつつ、水との共存下でゲル状態を形成できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の総量で10~50重量%、好ましくは12~40重量%、更に好ましくは15~25重量%が挙げられる。
【0024】
[(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、(A)成分及び(B)成分に加えて、更にポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以下、(C)成分と表記することもある)を含有してもよい。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む場合には、硬質表面に対する良好な付着性を備えさせることが可能になる。
【0025】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが挙げられる。これらのオキシアルキレン基の中でも、硬質表面に対する付着性をより一層向上させるという観点から、好ましくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、更に好ましくはエチレンオキサイドが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、1種の構造のオキシアルキレン基が単独で含まれていてもよく、2種以上の構造のオキシアルキレン基が組み合わされて含まれていてもよい。
【0026】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の平均付加モル数については、特に制限されないが、例えば、10~100、好ましくは25~75、より好ましくは40~60が挙げられる。
【0027】
また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、10~24、好ましくは13~22、より好ましくは14~18、更に好ましくは16が挙げられる。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0028】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、硬質表面に対する付着性をより一層向上させるという観点から、好ましくはポリオキシエチレン(平均付加モル数10~100)アルキル(炭素数14~18)エーテル、更に好ましくはポリオキシエチレン(付加モル数40~60)セチルエーテルが挙げられる。
【0029】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(C)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(C)成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(C)成分が総量で0.1~10重量部、好ましくは0.2~5重量部、より好ましくは0.5~3重量部が挙げられる。
【0031】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(C)成分を含有させる場合、本発明のゲル状洗浄剤組成物における(C)成分の含有量としては、例えば、(C)成分の総量で1~40重量%、好ましくは2~15重量%、更に好ましくは3~7重量%が挙げられる。
【0032】
[(D)水溶性無機塩化物]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、水溶性無機塩化物(以下、(D)成分と表記することもある)を含有してもよい。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、(D)成分を含む場合には、硬質表面に対する良好な付着性を備えさせることが可能になる。
【0033】
水溶性無機塩化物の種類については、4℃程度の水に溶解できるものであることを限度として、特に制限されないが、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物;塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム等の2価金属の塩化物;塩化アンモニウム等が挙げられる。これらの水溶性無機塩化物の中でも、硬質表面に対する付着性をより一層向上させるという観点から、好ましくはアルカリ金属の塩化物、塩化アンモニウム、更に好ましくは塩化ナトリウム、塩化アンモニウムが挙げられる。
【0034】
水溶性無機塩化物として、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明のゲル状洗浄剤組成物において使用される水溶性無機塩化物の好適な一例として、アルカリ金属の塩化物と塩化アンモニウムの組み合わせが挙げられる。アルカリ金属の塩化物と塩化アンモニウムを併用する場合、これらの比率については、付与すべき特性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、アルカリ金属の塩化物の総量1重量部当たり、塩化アンモニウムが0.01~100重量部、好ましくは0.1~10重量部、更に好ましくは0.5~5重量部となる比率が挙げられる。
【0036】
本発明のゲル状洗浄剤組成物の好適な一実施形態として、前記(A)成分及び(B)と共に、(C)成分と(D)成分を組み合わせて含むことが挙げられる。このように、本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(C)成分と(D)成分を含む場合には、高温保存後でもゲル状態を安定に形成させることも可能になる。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(C)成分と(D)成分を組み合わせて含有させる場合、両成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(C)成分の総量1重量部当たり、(D)成分が、総量で0.001~10重量部、好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~1重量部が挙げられる。
【0037】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(D)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(D)成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(D)成分が総量で0.01~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは0.1~1重量部が挙げられる。
【0038】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(D)成分を含有させる場合、本発明のゲル状洗浄剤組成物における(D)成分の含有量としては、例えば、(D)成分の総量で0.1~10重量%、好ましくは0.3~5重量%、更に好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。
【0039】
[(E)ポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(以下、(E)成分と表記することもある)を含有してもよい。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、(E)成分を含む場合には、硬質表面に対する良好な付着性を備えさせることが可能になる。
【0040】
【0041】
一般式(2)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(2)中、m1、m2、m3、m4、及びm5は、それぞれ平均付加モル数を示す。m1及びm5は、それぞれ、1以上、好ましくは15以上、より好ましくは15~175、更に好ましくは35~175を示す。m1及びm5は、略同数であることが好ましい。m1及びm5の合計値(エチレンオキサイドの平均付加モル数)は、2以上、好ましくは30以上、より好ましくは30~350、更に好ましくは70~350である。m2及びm4は、それぞれ、1以上、好ましくは1~30、更に好ましくは1~20、特に好ましくは5~20を示す。m2及びm4は、略同数であることが好ましい。また、m2及びm4の合計値(ブチレンオキサイドの付加モル数)は、2以上、好ましくは2~60、より好ましくは2~40、更に好ましくは10~40である。m3は、1以上、好ましくは1~60、より好ましくは15~60、更に好ましくは15~30を示す。
【0042】
一般式(2)で表されるポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0043】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(E)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(E)成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(E)成分が総量で0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.5~3重量部が挙げられる。
【0044】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(E)成分を含有させる場合、本発明のゲル状洗浄剤組成物における(E)成分の含有量としては、例えば、(E)成分の総量で0.1~40重量%、好ましくは1~30重量%、更に好ましくは5~20重量%が挙げられる。
【0045】
[(F)両性界面活性剤]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、両性界面活性剤(以下、(F)成分と表記することもある)を含有してもよい。
【0046】
両性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明のゲル状洗浄剤組成物の好適な一実施形態として、前記(A)成分及び(B)と共に、(D)成分と(F)成分を組み合わせて含むことが挙げられる。このように、本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(D)成分と(F)成分を含む場合には、高温保存後でもゲル状態を安定に形成することも可能になる。本発明のゲル状洗浄剤組成物において、(D)成分と(F)成分を組み合わせて含有させる場合、両成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(D)成分の総量1重量部当たり、(F)成分が、総量で0.001~100重量部、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.5~2重量部が挙げられる。
【0049】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(F)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(F)成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(F)成分が総量で0.01~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは0.1~1重量部が挙げられる。
【0050】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に(F)成分を含有させる場合、本発明のゲル状洗浄剤組成物における(F)成分の含有量としては、例えば、(F)成分の総量で0.1~15重量%、好ましくは0.3~10重量%、更に好ましくは0.5~5重量%が挙げられる。
【0051】
[香料]
本発明のゲル状洗浄剤組成物には、使用する空間に芳香を付与するために、必要に応じて、香料が含まれていてもよい。香料は、ゲル状洗浄剤組成物の用途に応じて、所望の芳香を呈する香料成分を適宜選択すればよい。
【0052】
香料の種類は、付与すべき香りに応じて適宜設定すればよく、単品香料、調合香料、精油等のいずれであってもよい。
【0053】
本発明のゲル状洗浄剤組成物に香料を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0超~15重量%、好ましくは1~12重量%、更に好ましくは3~10重量%が挙げられる。
【0054】
[香料]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、前記前述する成分と共に、水を含有させることによりゲル状に調製される。
【0055】
本発明のゲル状洗浄剤組成物において、水の含有量については、ゲル状態を形成できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、30~80重量%、好ましくは40~75重量%、更に好ましくは50~70重量%が挙げられる。
【0056】
[その他の成分]
本発明のゲル状洗浄剤組成物には、前述する成分の他に、必要に応じて、水以外の溶剤、(B)成分及び(F)成分以外の界面活性剤、酵素、殺菌剤、キレート剤、着色剤、顔料、消臭剤、乳化剤、可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤等の添加剤を適量含むことができる。
【0057】
[ゲル強度]
本発明のゲル状洗浄剤組成物のゲル強度については、使用時において、硬質表面に付着させるのに適度なゲル強度を備えていることを限度として、特に制限されないが、例えば、25℃でのゲル強度として、100gf以上、好ましくは100~300gfが挙げられる。なお、本発明において、25℃でのゲル強度は、レオメーターを使用して、直径10mmの感圧軸を用い、せん断速度60mm/min(モード20)の条件下にて測定される値である。
【0058】
[製造方法]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、常温において、前記(A)及び(B)成分、水、必要に応じて添加される他の成分を所定量混合することによって製造される。
【0059】
[用途]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、硬質表面の洗浄及び除菌に使用される。具体的には、硬質表面に付着させ、硬質表面上に付着した本発明のゲル状洗浄剤組成物に水を接触させることにより、水に配合成分が流出し、硬質表面の洗浄及び除菌が行われる。
【0060】
本発明のゲル状洗浄剤組成物において、洗浄対象となる硬質表面としては、水との接触が可能な硬質表面であればよく、例えば、トイレ便器、トイレの手洗い部、ガラス、窓、ドア、浴室の壁等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトイレ便器が挙げられる。
【0061】
本発明のゲル状洗浄剤組成物をトイレ便器の洗浄に使用する場合、本発明のゲル状洗浄剤組成物は、フラッシュ水として供給される水と接触する部位に付着させればよい。このような付着部位として、好ましくは便器ボウルの表面が挙げられるが、貯水タンクの上に手洗い部が付いている水洗トイレの場合であれば、当該手洗い部の受け皿(貯水タンクの上蓋表面)であってもよい。本発明のゲル状洗浄剤組成物は、このような部位に付着させても、硬質表面に対する優れた付着性を備えているため、フラッシュ水が流れても、又はフラッシュ水として貯水タンクに供給される水と接触しても、付着した状態を維持することができる。
【0062】
本発明のゲル状洗浄剤組成物を硬質表面に付着させるには、硬質表面に対して本発明のゲル状洗浄剤組成物を収容した容器から押出又は噴射させればよい。
【0063】
[収容する容器]
本発明のゲル状洗浄剤組成物は、チューブ容器、ボトル容器、シリンジ型容器等の押出式容器;エアゾール容器等の噴射式容器等に収容して供給される。押出式容器の押出機構については、特に制限されず、手動式、圧縮式等のいずれであってもよい。
【実施例0064】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、エチレンオキサイドをEO、プロピレンオキサイドをPO、ブチレンオキサイドをBOと略記することもある。
【0065】
試験例1
(1)洗浄剤組成物の調製
表1に示す各成分を、容器(柏洋硝子株式会社製マヨネーズ瓶;M140/容量140ml)に所定量添加して混合することにより、洗浄剤組成物(容器中に50g収容)を調製した。なお、表1及び2に示す各成分の略号は、以下の通りである。また、表1及び2に示す含有量は、添加した添加剤(商品)に含まれる溶媒を除いた各成分の実質的な量を示す。
【0066】
(2)ゲル強度の測定
レオメーターCR500DX(株式会社サン科学製)を使用して、直径10mmの感圧軸を用い、25℃、せん断速度60mm/min(モード20)の条件下でゲル強度の測定を行った。測定したゲル強度について、以下の判定基準に従って、ゲル強度を判定した。なお、ゲル強度が50gf以上の場合であれば、硬質表面に付着させるゲル状洗浄剤組成物として適度なゲル強度を備えており、ゲル強度が80gf以上であれば、硬質表面に付着させるゲル状洗浄剤組成物として更に適度なゲル強度を備えており、ゲル強度が100gf以上であれば、硬質表面に付着させるゲル状洗浄剤組成物として特に適度なゲル強度を備えているといえる。
(ゲル強度の判定基準)
◎:ゲル強度が100gf以上である。
○:ゲル強度が80gf以上100gf未満である。
△:ゲル強度が50gf以上80gf未満である。
×:ゲル強度が50gf未満である、又は液化しておりゲル強度を測定できない。
【0067】
(3)硬質表面への付着性の評価」
各洗浄剤組成物3.5gを「ブルーレット デコラル」(小林製薬株式会社)の容器に充填し、TOTO社製便器C730のボウル表面に、中心から最外縁まで約20mmの花びら形状を5枚有する形状となるように塗布した。塗布後直ぐに、TOTO社製S731Bタンクを用いてフラッシュを連続50回行い、便器ボウルの表面上の洗浄剤組成物の状態を観察した。
(硬質表面への付着性の判定基準)
◎:フラッシュ回数50回でも便器ボウルから剥がれておらず、安定に付着している。
○:フラッシュ回数9回までは便器ボウルから剥がれないが、フラッシュ回数50回までに便器ボウルから剥がれる。
△:フラッシュ回数3回では便器ボウルから剥がれないが、フラッシュ回数9回までに便器ボウルから剥がれる。
×:フラッシュ回数3回までに便器ボウルから剥がれる。
【0068】
(4)ゲル状態の安定性の評価
各洗浄剤組成物を60℃の温度条件で2週間保存した後の性状を目視にて確認し、以下の判定基準に従って、ゲル状態を評価した。なお、各洗浄剤組成物を収容した容器を90度傾けた状態で5秒間静止し、目視にて流動が確認できなかったものを「ゲル状」であると評価した。
<ゲル状態の判定基準>
○:ゲル状態に変化がなく、形状を安定に維持できている。
△:明らかな軟化又は硬化が認められ、ゲル状態に変化が認められる。
×:液化したり、硬くなり過ぎて容器から出し難くなったりしている。
【0069】
得られた洗浄剤組成物について、外観を観察し、以下の判定基準に従って、透明性を評価した。
(透明性の判定基準)
○:透明である。
△:やや白濁している。
×:明らかに白濁している。
【0070】
(5)結果
得られた結果を表1に示す。塩化ベンザルコニウムを含まない場合には、EO・BO・POブロックポリマーを使用することにより、優れたゲル強度、透明性、及び硬質表面への付着性を備えることができていたが(参考例1)、EO・BO・POブロックポリマーと共に塩化ベンザルコニウムを添加すると、ゲル強度、硬質表面への付着性、及び透明性の全てが不十分になり、硬質表面に付着して使用される洗浄剤としては実用に供し得ないものであった(比較例1)。これに対して、これに対して、塩化ベンザルコニウムと共にEO・POブロックポリマーを含む場合には、適度なゲル強度を備えることができ、良好なゲル状態を形成できていた(実施例1~10)。また、塩化ベンザルコニウム及びEO・POブロックポリマーに加えて、ポリオキシエチレンセチルエーテル、EO・BO・POブロックポリマー、及び水溶性無機塩化物(塩化アンモニウム、塩化ナトリウム)の少なくとも1種を含む場合には、硬質表面に対する付着性も良好であった(実施例3~10)。更に、塩化ベンザルコニウム及びEO・POブロックポリマーに加えて、ポリオキシエチレンセチルエーテル及び水溶性無機塩化物(塩化アンモニウム、塩化ナトリウム)を含む場合には、高温保存後でもゲル状態を安定に形成できていた(実施例5)。また、塩化ベンザルコニウム及びEO・POブロックポリマーに加えて、水溶性無機塩化物(塩化アンモニウム、塩化ナトリウム)及び両性界面活性剤を含む場合でも、高温保存後でもゲル状態を安定に形成できていた(実施例6)。
【0071】