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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043487
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】角度検出器および位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230322BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/244 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151153
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿丞
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶顕
(72)【発明者】
【氏名】水谷 都
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077NN02
2F077PP06
2F077UU07
(57)【要約】
【課題】高次の誤差を除去した高精度な角度検出を可能としつつ、小型化することができる角度検出器および位置測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】角度検出器は、複数のパターンが周方向に沿って配列されて形成されたスケールパターンを有するロータリースケールと、それぞれ前記スケールパターンから前記パターンを読み取る複数の検出ヘッドと、を備え、前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの周方向に沿ってずらして設置されるとともに、前記ロータリースケールの径方向にずらして設置されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパターンが周方向に沿って配列されて形成されたスケールパターンを有するロータリースケールと、
それぞれ前記スケールパターンから前記パターンを読み取る複数の検出ヘッドと、を備え、
前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの周方向に沿ってずらされるとともに、前記ロータリースケールの径方向にずらして設置されたことを特徴とする角度検出器。
【請求項2】
前記複数の検出ヘッドは、基準検出ヘッドと、当該基準検出ヘッドが設置された基準位置を0°としたときに、当該基準位置に対して(360°/2n)回転させた位置に設置されたn次誤差成分検出ヘッドを含むことを特徴とする請求項1に記載の角度検出器。
【請求項3】
前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの全周を周方向に沿ってN等分された間隔を保持して設置されたことを特徴とする請求項1に記載の角度検出器。
【請求項4】
前記ロータリースケールは、それぞれ周方向に沿って配列された複数のパターンを有し、それぞれ径方向にずらして設けられた複数のトラックを備え、
前記複数の検出ヘッドは、前記複数のトラックに対応させて設置されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の角度検出器。
【請求項5】
前記複数のトラックは、第1トラックと当該第1トラックよりも周方向内側に設けられた第2トラックと、を含み、
前記複数の検出ヘッドは、周方向に隣接する検出ヘッドを前記第1トラックと前記第2トラックとに振り分けて設置されたことを特徴とする請求項4に記載の角度検出器。
【請求項6】
前記パターンは、それぞれ前記ロータリースケールの径方向に沿って放射状に延びていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の角度検出器。
【請求項7】
複数のパターンが周方向に沿って配列されて形成されたスケールパターンを有するロータリースケールと、
それぞれ前記スケールパターンから前記パターンを読み取る複数の検出ヘッドと、を備え、
前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの周方向に沿ってずらされるとともに、前記ロータリースケールの径方向にずらして設置された角度検出器と、
前記複数の検出ヘッドの角度検出値に基づいて計測誤差を算出する演算部と、を有することを特徴とする位置測定装置。
【請求項8】
前記複数の検出ヘッドは、基準検出ヘッドと、当該基準検出ヘッドが設置された基準位置を0°としたときに、当該基準位置に対して(360°/2n)回転させた位置に設置されたn次誤差成分検出ヘッドを含み、
前記演算部は、前記n次誤差成分検出ヘッドによって検出された角度検出値に基づいてn次誤差成分の算出値を取得し、当該算出値を前記基準検出ヘッドによって検出された角度検出値から減算して補正検出値を取得することを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。
【請求項9】
前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの全周を周方向に沿ってN等分された間隔を保持して設置され、
前記演算部は、N個の検出ヘッドのそれぞれによって検出された角度検出値の平均値を算出して当該平均値を補正検出値とすることを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。
【請求項10】
前記ロータリースケールは、それぞれ周方向に沿って配列された複数のパターンを有し、それぞれ径方向にずらして設けられた複数のトラックを備え、
前記複数の検出ヘッドは、前記複数のトラックに対応させて設置されたことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の位置測定装置。
【請求項11】
前記複数のトラックは、第1トラックと当該第1トラックよりも周方向内側に設けられた第2トラックと、を含み、
前記複数の検出ヘッドは、周方向に隣接する検出ヘッドを前記第1トラックと前記第2トラックとに振り分けて設置されたことを特徴とする請求項10に記載の位置測定装置。
【請求項12】
前記パターンは、それぞれ前記ロータリースケールの径方向に沿って放射状に延びていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、角度検出器および位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度に角度の検出を行うために、ロータリエンコーダ等の角度検出器における高次の誤差を検出するための提案が種々行われている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1や、特許文献2では、複数の検出ヘッドを同一円周上において周方向にずらして配置し、これにより角度検出器における高次の誤差の検出を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-262518号公報
【特許文献2】特開2006-98392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今、角度検出器は、高精度の角度検出性能だけでなく、角度検出器自体の小型化も求められている。しかしながら、特許文献1や、特許文献2で開示された角度検出器を小型化しようとした場合、検出ヘッドの配置が密となり、検出ヘッド同士が干渉する可能性がある。このため、特許文献1や、特許文献2で開示された角度検出器の小型化には限界があり、この点において改良の余地があった。
【0005】
1つの側面では、本発明は、高次の誤差を除去した高精度な角度検出を可能としつつ、小型化することができる角度検出器および位置測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、角度検出器は、複数のパターンが周方向に沿って配列されて形成されたスケールパターンを有するロータリースケールと、それぞれ前記スケールパターンから前記パターンを読み取る複数の検出ヘッドと、を備え、前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの周方向に沿ってずらされるとともに、前記ロータリースケールの径方向にずらして設置されたことを特徴とする。
【0007】
上記角度検出器において、前記複数の検出ヘッドは、基準検出ヘッドと、当該基準検出ヘッドが設置された基準位置を0°としたときに、当該基準位置に対して(360°/2n)回転させた位置に設置されたn次誤差成分検出ヘッドを含む態様とすることができる。
【0008】
また、上記角度検出器において、前記複数の検出ヘッドは、前記スケールパターンの全周を周方向に沿ってN等分された間隔を保持して設置された態様としてもよい。
【0009】
さらに、上記角度検出器において、前記ロータリースケールは、それぞれ周方向に沿って配列された複数のパターンを有し、それぞれ径方向にずらして設けられた複数のトラックを備え、前記複数の検出ヘッドは、前記複数のトラックに対応させて設置された態様とすることができる。
【0010】
また、上記角度検出器において、前記複数のトラックは、第1トラックと当該第1トラックよりも周方向内側に設けられた第2トラックと、を含み、前記複数の検出ヘッドは、周方向に隣接する検出ヘッドを前記第1トラックと前記第2トラックとに振り分けて設置された態様とすることができる。
【0011】
さらに、上記角度検出器において、前記パターンは、それぞれ前記ロータリースケールの径方向に沿って放射状に延びている態様としてもよい。
【0012】
1つの態様では、位置測定装置は、複数のパターンが周方向に沿って配列されて形成されたスケールパターンを有するロータリースケールと、それぞれ前記スケールパターンから前記パターンを読み取る複数の検出ヘッドと、を備え、前記複数の検出ヘッドは、前記ロータリースケールの周方向に沿ってずらされるとともに、前記ロータリースケールの径方向にずらして設置された角度検出器と、前記複数の検出ヘッドの角度検出値に基づいて計測誤差を算出する演算部と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記位置測定装置において、前記複数の検出ヘッドは、基準検出ヘッドと、当該基準検出ヘッドが設置された基準位置を0°としたときに、当該基準位置に対して(360°/2n)回転させた位置に設置されたn次誤差成分検出ヘッドを含み、前記演算部は、前記n次誤差成分検出ヘッドによって検出された角度検出値に基づいてn次誤差成分の算出値を取得し、当該算出値を前記基準検出ヘッドによって検出された角度検出値から減算して補正検出値を取得する態様とすることができる。
【0014】
また、上記位置測定装置において、前記複数の検出ヘッドは、前記スケールパターンの全周を周方向に沿ってN等分された間隔を保持して設置され、前記演算部は、N個の検出ヘッドのそれぞれによって検出された角度検出値の平均値を算出して当該平均値を補正検出値とする態様としてもよい。
【0015】
さらに、上記位置測定装置において、前記ロータリースケールは、それぞれ周方向に沿って配列された複数のパターンを有し、それぞれ径方向にずらして設けられた複数のトラックを備え、前記複数の検出ヘッドは、前記複数のトラックに対応させて設置された態様とすることができる。
【0016】
また、上記位置測定装置において、前記複数のトラックは、第1トラックと当該第1トラックよりも周方向内側に設けられた第2トラックと、を含み、前記複数の検出ヘッドは、周方向に隣接する検出ヘッドを前記第1トラックと前記第2トラックとに振り分けて設置された態様としてもよい。
【0017】
さらに、上記位置測定装置において、前記パターンは、それぞれ前記ロータリースケールの径方向に沿って放射状に延びている態様とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
高次の誤差を除去した高精度な角度検出を可能としつつ、小型化することができる角度検出器および位置測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は第1実施形態に係る角度検出器の概略構成を示す模式図である。
図2図2は第1実施形態に係る位置検出装置の構成を例示するブロック図である。
図3図3は第1実施形態において基準検出ヘッドの角度検出値とn次誤差成分検出ヘッドによって検出された角度検出値との差分tnと、差分tnを周方向に沿ってX°シフトさせたシフト値の推移の一例を示すグラフである。
図4図4は第1実施形態において基準検出ヘッドの角度検出値と3次誤差成分検出ヘッドによって検出された角度検出値との差分t3(=sn(0°))と、差分t3を周方向に沿って120°シフトさせたシフト値sn(120°)と、差分t3を周方向に沿って240°シフトさせたシフト値sn(240°)の推移を示すグラフである。
図5図5は第1実施形態において3次誤差成分を例示するグラフである。
図6図6は第2実施形態に係る角度検出器の概略構成を示す模式図である。
図7図7は第3実施形態に係る角度検出器の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、図1から図5を参照して、第1実施形態の角度検出器1と、この角度検出器1を装備した位置検出装置1000について説明する。図1は第1実施形態に係る角度検出器1の概略構成を示す模式図である。図2は第1実施形態に係る位置検出装置1000の構成を例示するブロック図である。図3は第1実施形態において基準検出ヘッドの角度検出値とn次誤差成分検出ヘッドによって検出された角度検出値との差分tnと、差分tnを周方向に沿ってX°シフトさせたシフト値の推移の一例を示すグラフである。図4は第1実施形態において基準検出ヘッド5の角度検出値と3次誤差成分検出ヘッド8によって検出された角度検出値との差分t3(=sn(0°))と、差分t3を周方向に沿って120°シフトさせたシフト値sn(120°)と、差分t3を周方向に沿って240°シフトさせたシフト値sn(240°)の推移を示すグラフである。図5は第1実施形態において3次誤差成分を例示するグラフである。
【0022】
図1を参照すると、第1実施形態の角度検出器1は、電磁誘導式のロータリエンコーダを形成している。角度検出器1は、ロータリースケール2、基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6、2次誤差成分検出ヘッド7、3次誤差成分検出ヘッド8、4次誤差成分検出ヘッド9及び8次誤差成分検出ヘッド10を備えている。また、図2を参照すると、位置検出装置1000は、演算部11を備える。演算部11には、基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6、2次誤差成分検出ヘッド7、3次誤差成分検出ヘッド8、4次誤差成分検出ヘッド9及び8次誤差成分検出ヘッド10が電気的に接続されている。演算部11には、これらの検出ヘッドから、検出信号が入力される。なお、角度検出器1は、光電式エンコーダとしてもよい。
【0023】
第1実施形態の角度検出器1は、基準検出ヘッド5で検出された角度検出値から、各n次誤差成分検出ヘッド6~10によって検出された角度検出値に基づく高次誤差成分を減算することで高精度な角度検出を行う。
【0024】
なお、図1に描かれている基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6、2次誤差成分検出ヘッド7、3次誤差成分検出ヘッド8、4次誤差成分検出ヘッド9及び8次誤差成分検出ヘッド10は、実際の寸法を表していない。つまり、図1は、これらの検出ヘッドのロータリースケール2に対する位置関係及び検出ヘッド間の位置関係を示すものであり、各検出ヘッド間の距離や、各検出ヘッドの寸法及びロータリースケール2の寸法を正確に表すものではない。
【0025】
ロータリースケール2は、円盤状の部材であり、図示しない角度検出の対象物の回転軸と回転中心Cとを一致させてその対象物に装着される。ロータリースケール2には、第1トラック3と第2トラック4とが設けられている。第1トラック3は、ロータリースケール2の周方向に沿って配列された複数のパターン3a1を含むスケールパターン3aを有している。第2トラック4は、ロータリースケール2の周方向に沿って配列された複数のパターン4a1を含むスケールパターン4aを有している。第1トラック3と第2トラック4は、いずれも円形に設けられているが、第1トラック3の直径は、第2トラック4の直径よりも大きい。つまり、第2トラック4は、第1トラック3よりも周方向内側に設けられ、これにより、第1トラック3と第2トラック4は、径方向にずらして設置されている。なお、図1は、第1トラック3と第2トラック4との位置関係を示しているが、両者間の距離を正確に表すものではない。
【0026】
図1に示すように、θ=0°の位置を基準位置としたときに、基準検出ヘッド5は、この基準位置に合わせて設置されている。基準検出ヘッド5は、θ=0°、かつ、第1トラック3に合わせて設置されている。
【0027】
1次誤差成分検出ヘッド6~8次誤差成分検出ヘッド10は、nが誤差成分の次数を表すときに、(360°/2n)回転させた位置に設置されている。また、基準検出ヘッド5と1次誤差成分検出ヘッド6から8次誤差成分検出ヘッド10は、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて設置されている。
【0028】
1次誤差成分検出ヘッド6は、θ=180°、かつ、第2トラック4に合わせて設置されている。2次誤差成分検出ヘッド7は、θ=90°、かつ、第1トラック3に合わせて設置されている。3次誤差成分検出ヘッド8は、θ=60°、かつ、第2トラック4に合わせて設置されている。4次誤差成分検出ヘッド9は、θ=45°、かつ、第1トラック3に合わせて設置されている。8次誤差成分検出ヘッド10は、θ=22.5°、かつ、第2トラック4に合わせて設置されている。
【0029】
8次誤差成分検出ヘッド10が第2トラック4に合わせて設置されているのは、8次誤差成分検出ヘッド10と周方向に隣接する基準検出ヘッド5が第1トラック3に設置されているからである。4次誤差成分検出ヘッド9が第1トラック3に合わせて設置されているのは、4次誤差成分検出ヘッド9と周方向に隣接する8次誤差成分検出ヘッド10が第2トラック4に設置されているからである。3次誤差成分検出ヘッド8が第2トラック4に合わせて設置されているのは、3次誤差成分検出ヘッド8と周方向に隣接する4次誤差成分検出ヘッド9が第1トラック3に設置されているからである。2次誤差成分検出ヘッド7が第1トラック3に合わせて設置されているのは、2次誤差成分検出ヘッド7と周方向に隣接する3次誤差成分検出ヘッド8が第2トラック4に設置されているからである。1次誤差成分検出ヘッド6が第2トラック4に合わせて設置されているのは、1次誤差成分検出ヘッド6と周方向に隣接する2次誤差成分検出ヘッド7が第1トラック3に設置されているからである。
【0030】
このように、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて設置することで、検出ヘッド同士の干渉を回避することができる。つまり、各検出ヘッドを接近させて設置することができるため、角度検出器1を小型化することができる。特に、θ=60°からθ=90°の間には5つの検出ヘッドが設置されている。仮にこれらの検出ヘッドをひとつの円周上に設置すると、設置に要する周方向距離が長くなってしまい、角度検出器1の小型化が困難となる。これに対し、第1実施形態のように検出ヘッドを径方向にずらして配置することで、検出ヘッド同士の干渉を回避することができる。
【0031】
ここで、第1実施形態の位置検出装置1000による角度検出方法の一例について説明する。初めに、第1実施形態における角度検出方法の方針について説明する。この方針は、特開2003-262518号公報に開示された角度検出器によって行われる処理と一致している。位置検出装置1000によって角度検出をするためには、まず、(1)予めn次誤差成分検出ヘッド毎に角度検出値を取得し、これに基づいて各高次誤差成分を求めておく。そして、(2)これらの各高次誤差成分を基準検出ヘッド5によって取得された角度検出値から減算する。以下、この方針に従って、角度検出方法について説明する。なお、減算等の演算は演算部11によって実行される。
【0032】
まず、n次の高次誤差成分の取得について説明する。n次の高次誤差成分を求めるために、角度θ=0°に設置された基準検出ヘッド5により取得した角度検出値と、角度θ=360°/2に設置されたn次誤差成分検出ヘッド6~10により取得した角度検出値との差分tnを求める。ここで、角度θに設置した検出ヘッドによって検出された角度検出値をGS(θ)と表記することとすると、基準検出ヘッド5により検出した角度検出値はGS(0°)と表される。同様に、n次誤差成分検出ヘッドによって検出した角度検出値はGS(360°/2n)と表記される。
【数1】
【0033】
そして、式(1)で表される差分tnを一周に亘って求める。ここで、差分tnをθ=0°から角度X°シフトした値をシフト値sn(X°)と定義する。シフト値sn(X°)を例示すると、図3に示すグラフのように表される。
【0034】
このように定義されるシフト値sn(X°)を合算した値が、n次誤差成分の合計値Gnとなる。つまり合計値Gnは以下の式(2)により求めることができる。
【数2】
【0035】
式(2)を用いてn次誤差成分毎にその合計値Gnを算出し、それらを基準検出ヘッド5により取得した角度検出値から減算すれば、高次の誤差を除去した高精度な角度検出を行うことができる。なお、式(2)において、kは0≦k<nを満たす整数である。
【0036】
ここで、n次の高次誤差成分の算出例を示すため、n=3、つまり、3次誤差成分の合計値G3の算出について説明する。
【0037】
3次誤差成分の合計値G3を算出するためには、まず、以下の式(3)を用いて差分t3を算出する。差分t3は、θ=0°の位置に設置された基準検出ヘッド5の角度検出値GS(0°)と、θ=60°の位置に設置された3次誤差成分検出ヘッド8の角度検出値GS(60°)の差である。θ=60°は、(360°/2n)にn=3を代入することで得られる。
【数3】
【0038】
つぎに、式(3)で表される差分t3を一周に亘って求める。ここでは、差分t3を0°シフトしたシフト値sn(0°)、差分t3を120°シフトしたシフト値sn(120°)及び差分t3を240°シフトしたシフト値sn(240°)を求める。シフト値sn(0°)は式(2)においてk=0としたときの値、シフト値sn(120°)は式(2)においてk=1としたときの値、シフト値sn(240°)は式(2)においてk=2としたときの値である。なお、シフト値sn(0°)は差分t3を全くシフトしていない値であるため、差分t3そのものである。
【0039】
シフト値sn(0°)、シフト値sn(120°)及びシフト値sn(240°)は、図4に示すグラフのように描くことができる。これらのシフト値を、式(4)を用いて合計することで、図5に示すグラフに描かれた3次誤差成分の合計値G3を得ることができる。
【数4】
【0040】
3次誤差成分以外のn次誤差成分についても同様の要領で算出することができる。演算部11は、このようにして算出した各合計値Gnを基準検出ヘッド5により取得した角度検出値から減算して最終的に検出した角度の値とする。
【0041】
第1実施形態の角度検出器1は、複数の検出ヘッドがロータリースケール2の周方向に沿ってずらされて設置されているため、高次の誤差を除去した高精度な角度検出が可能である。また、複数の検出ヘッドがロータリースケール2の径方向にずらして配置されているため、角度検出器1を小型化することができる。
【0042】
第1実施形態の角度検出器1は、基準検出ヘッド5と、基準検出ヘッド5が配置された基準位置を0°としたときに、この基準位置に対して(360°/2n)回転させた位置に設置されたn次誤差成分検出ヘッドを備えている。これにより、高次の誤差を除去した高精度な角度検出が可能である。
【0043】
第1実施形態の角度検出器1によれば、ロータリースケール2は、径方向にずらして配置された複数のトラックを備え、複数の検出ヘッドを複数のトラックに対応させて配置させているので角度検出器1を小型化することができる。
【0044】
また、第1実施形態の角度検出器1によれば、第1トラック3と第1トラック3よりも周方向内側に設けられた第2トラック4を有し、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて配置している。これにより、検出ヘッド同士の干渉を回避することができ、角度検出器1を小型化することができる。
【0045】
(第2実施形態)
つぎに、図6を参照して、第2実施形態の角度検出器50について説明する。図6は第2実施形態に係る角度検出器50の概略構成を示す模式図である。
【0046】
図6を参照すると、第2実施形態の角度検出器50は、電磁誘導式のロータリエンコーダを形成している。角度検出器50は、ロータリースケール2、第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58を備えている。ロータリースケール2は、第1実施形態で採用されているものと共通するため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0047】
第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、第1実施形態における基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6~8次誤差成分検出ヘッド10に替えて装備されている。このため、第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、第1実施形態における基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6~8次誤差成分検出ヘッド10と同様に、演算部11(図2参照)に電気的に接続されている。演算部11には、これらの検出ヘッドから、検出信号が入力される。なお、角度検出器1は、光電式エンコーダとしてもよい。
【0048】
第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、ロータリースケール2の全周を周方向に沿ってN=8等分された間隔を保持して設置されている。具体的に、第1検出ヘッド51はθ=0°の位置、第2検出ヘッド52はθ=45°の位置、第3検出ヘッド53はθ=90°の位置、第4検出ヘッド54はθ=135°の位置に設置されている。また、第5検出ヘッド55はθ=180°の位置、第6検出ヘッド56はθ=225°の位置、第7検出ヘッド57はθ=270度の位置、第8検出ヘッド58はθ=315°の位置に設置されている。
【0049】
これらの第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、ロータリースケール2の径方向にずらして設置されている。具体的に、第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて設置されている。つまり、第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58のうち、第1検出ヘッド51、第3検出ヘッド53、第5検出ヘッド55及び第7検出ヘッド57は、第1トラック3に合わせて設置されている。そして、第2検出ヘッド52、第4検出ヘッド54、第6検出ヘッド56及び第8検出ヘッド58は、第2トラック4に合わせて設置されている。
【0050】
このように、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて設置することで、検出ヘッド同士の干渉を回避することができる。つまり、各検出ヘッドを接近させて設置することができるため、角度検出器50を小型化することができる。
【0051】
ここで、各検出ヘッドの寸法とロータリースケール2の寸法の関係の一例について説明する。各検出ヘッドのロータリ-スケール2の周方向に沿った寸法が40mm程度であるとする。そして、ロータリースケール2の直径が60mmであるとする。この場合、ロータリースケールの周方向長さは60πmmであるため、複数の検出ヘッドをひとつの円周上に設置しようとすると、検出ヘッドの数は4個が限界であり、5個以上の検出ヘッドを設置することはできない。これに対し、本実施形態のように複数の検出ヘッドをロータリースケール2の径方向にずらして設置するようにすれば、5個以上の検出ヘッドを設置する余地が生じる。このように検出ヘッドの設置に余裕が生じることで、角度検出器50を小型化することができるようになる。
【0052】
第2実施形態では、8個の検出ヘッドが設置されているが、これらの検出ヘッドをロータリースケール2の径方向にずらして設置することで、検出ヘッドの周方向の並びを維持しつつ、角度検出器50の小型化を図ることができる。なお、第2実施形態の角度検出器50では、N=8として、360°(=2π)が8等分された間隔を保持して検出ヘッドが設置されているが等分する数は、これに限定されず、Nは1以外の他の自然数とすることができる。
【0053】
このように、ロータリースケール2の全周を周方向にN等分された間隔を保持して複数の検出ヘッドを設置した場合、「等分割平均法」を用いて角度検出を行うことができる。「等分割平均法」は、複数の検出ヘッドを用いて高精度に角度検出を行う際に用いられる手法であり、第2実施形態においても、この「等分割平均法」の基本方針を踏襲した演算を行う。以下、第2実施形態における角度検出の一例につき説明する。なお、以下の説明では、θ=0°を基準位置として設定して説明する。
【0054】
ここで、2πをN等分割した位置に設置した検出ヘッドをそれぞれk=0,1,…,N-1と番号付けし、各検出ヘッドの角度検出値をLとすると、等分割平均法によって求められる角度検出値Mは、式(5)に示す一般式で表される。本実施形態では、基準位置であるθ=0°に合わせて第1検出ヘッド51が設置されており、この第1検出ヘッド51がk=0の検出ヘッドに相当する。そして、第2検出ヘッド52がk=1の検出ヘッドに相当し、第3検出ヘッド53以下の検出ヘッドについても同様の要領でその対応関係が設定されることになる。
【数5】
【0055】
式(5)を用いた演算を行うことで、高精度の角度検出を行うことができるが、ここで、式(5)を用いることで高精度の角度検出を行うことができる理由について角度検出値等を一般化して説明する。
【0056】
一般に、ロータリーエンコーダの基準位置に対する位置θの検出ヘッドの検出値H(θ)は以下の式(6)のように表される。
【数6】
【0057】
式(6)において、θは基準位置から0~2πの範囲で表される角度位置、ε(θ)は誤差項である。2πをN等分割の位置に配置した検出ヘッドをそれぞれ、k=0,1,…,N-1と番号付けする。0番目の検出ヘッドを設置したθ=0°を基準位置とすると、k番目の検出ヘッドでは、誤差項の位相が2πk/Nだけずれるため、検出値Hn,k(θ)は以下の式(7)で表される。
【数7】
【0058】
ロータリーエンコーダでは1回転すると元の位置に戻るため、誤差項は閉じた周期曲線になる。このため、誤差項は以下の式(8)のように表される。
【数8】
【0059】
式(8)において、Cnは誤差のn次成分の振幅であり、αnは誤差のn次成分の移相である。
【0060】
ここで、N個の検出ヘッドの角度検出値の平均値AN,k(θ)を考えると、以下の式(9)のように表すことができる。
【数9】
【0061】
そして、この式(9)を整理すると、以下の式(10)が得られる。
【数10】
【0062】
さらに、εに関する式(8)を式(10)に代入することで、以下の式(11)が得られる。
【数11】
【0063】
ここで、jを任意の自然数とすると、以下の式(12)と式(13)が成り立つ。
n=jNのとき
【数12】

n≠jNのとき
【数13】
【0064】
式(12)及び式(13)は、等間隔に配置した検出ヘッドの角度検出値の平均値AN,k(θ)には、Nの倍数次の誤差だけが残留し、その他の成分は0になるということを示している。
【0065】
このため、第2実施形態のように、8個の検出ヘッドを等間隔に設置した場合に、等間隔平均法を用いると、残留する誤差成分は、8次、16次、24次、…となる。すなわち、1-7次、9-15次,17-23次、…次の誤差を排除することができ、この結果、高精度に角度検出を行うことができる。
【0066】
第2実施形態の角度検出器50は、複数の検出ヘッドがロータリースケール2の周方向に沿ってずらされて設置されているため、高次の誤差を除去した高精度な角度検出が可能である。また、複数の検出ヘッドがロータリースケール2の径方向にずらして配置されているため、角度検出器1を小型化することができる。
【0067】
第2実施形態の角度検出器50は、ロータリースケール2の全周を周方向に沿ってN等分された間隔を保持して設置された複数の検出ヘッドを備える。これにより、等間隔平均法を用いて高精度に角度検出を行うことができる。
【0068】
第2実施形態の角度検出器50によれば、ロータリースケール2は、径方向にずらして配置された複数のトラックを備え、複数の検出ヘッドを複数のトラックに対応させて配置させているので角度検出器50を小型化することができる。
【0069】
また、第2実施形態の角度検出器50によれば、第1トラック3と第1トラック3よりも周方向内側に設けられた第2トラック4を有し、周方向に隣接する検出ヘッドを第1トラック3と第2トラック4とに振り分けて配置している。これにより、検出ヘッド同士の干渉を回避することができ、角度検出器50を小型化することができる。
【0070】
(第3実施形態)
つぎに、図7を参照して、第3実施形態の角度検出器100について説明する。図7は第3実施形態に係る角度検出器100の概略構成を示す模式図である。
【0071】
第3実施形態の角度検出器100は、第2実施形態の角度検出器50が備えるロータリースケール2に替えて、ロータリースケール102を備えている。その他の点は、第2実施形態の角度検出器50と異なるところがないため、共通する構成要件については、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0072】
ロータリースケール102は、その径方向にそって放射状に延びているパターン103を備えている。つまり、ロータリースケール102は、第1実施形態や第2実施形態におけるロータリースケール2が備える第1トラック3及び第2トラック4に替えてパターン103を備えている。
【0073】
角度検出器100は、第2実施形態の角度検出器50と同様にロータリースケール102の全周を周方向に沿ってN=8等分された間隔を保持して設置された第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58を備えている。このため、角度検出器100は、角度検出器50と同様に、等間隔平均法を用いて高精度に角度検出を行うことができる。また、これらの第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58は、パターン103が設けられているロータリースケール102の径方向の範囲内で、その径方向にずらして設置されているため、角度検出器100を小型化することができる。
【0074】
なお、角度検出器100は、第1検出ヘッド51~第8検出ヘッド58に替えて、第1実施形態における基準検出ヘッド5、1次誤差成分検出ヘッド6~8次誤差成分検出ヘッド10を採用してもよい。この場合、第1実施形態で説明した要領で、高精度の角度検出を行うことができる。
【0075】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1、50 角度検出器
2、102 ロータリースケール
3 第1トラック
3a、4a スケールパターン
3a1、4a1、103 パターン
4 第2トラック
5 基準検出ヘッド
6 1次誤差成分検出ヘッド
7 2次誤差成分検出ヘッド
8 3次誤差成分検出ヘッド
9 4次誤差成分検出ヘッド
10 8次誤差成分検出ヘッド
11 演算部
51 第1検出ヘッド
52 第2検出ヘッド
53 第3検出ヘッド
54 第4検出ヘッド
55 第5検出ヘッド
56 第6検出ヘッド
57 第7検出ヘッド
58 第8検出ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7