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特開2023-43583基板処理方法、基板処理装置および半導体構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043583
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置および半導体構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 21/314 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/314 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151289
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 真
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴士
(72)【発明者】
【氏名】井福 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】古屋 治彦
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AB03
5F045AB07
5F045AB32
5F045AC11
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AF03
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH02
5F045EH03
5F045EH20
5F045EK07
5F045HA02
5F045HA03
5F058BA06
5F058BC20
5F058BF07
(57)【要約】
【課題】低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜を成膜することができる基板処理方法、基板処理装置および半導体構造を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、基板を処理する基板処理方法であって、表面にシリコン含有膜を有する基板を処理容器内に搬入する搬入工程と、処理容器内に酸素含有ガスを供給し、シリコン含有膜の表面に酸素含有ガスを吸着させて吸着層を形成する第1工程と、処理容器内にアルゴン含有ガスを供給し、アルゴン含有ガスのプラズマで、吸着層とシリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成する第2工程と、処理容器内に炭素含有ガスを供給し、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成する第3工程とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
表面にシリコン含有膜を有する前記基板を処理容器内に搬入する搬入工程と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給し、前記シリコン含有膜の表面に前記酸素含有ガスを吸着させて吸着層を形成する第1工程と、
前記処理容器内にアルゴン含有ガスを供給し、前記アルゴン含有ガスのプラズマで、前記吸着層と前記シリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成する第2工程と、
前記処理容器内に炭素含有ガスを供給し、前記炭素含有ガスのプラズマで、前記シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成する第3工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記第1工程は、載置台の基板支持ピンを上昇させて、搬入された前記基板を第1の位置で保持した状態で実行され、
前記第2工程および前記第3工程は、前記基板支持ピンを下降させて、前記基板を第2の位置で保持した状態で実行される、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の位置は、前記基板を前記載置台の上方に支持した位置であり、
前記第2の位置は、前記基板を前記載置台に載置した位置である、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1の位置は、前記載置台の上面から10mm~15mmの位置である、
請求項2または3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1工程は、前記吸着層の形成後に、前記酸素含有ガスの供給を停止して前記処理容器内を排気させる、
請求項2~4のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1工程の前に、前記シリコン含有膜の表面に形成された酸化物をエッチングする第4工程をさらに有する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第4工程は、水素含有ガスを含む混合ガスのプラズマによる処理によって、前記酸化物をエッチングする、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第3工程の前に、前記アルゴン含有ガスと、炭素含有ガスとを含む混合ガスのプラズマで、前記シリコン酸化層の表面を改質する第5工程をさらに有する、
請求項1~7のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1工程は、第1の温度で実行され、
前記第2工程および前記第3工程は、前記第1の温度より高い第2の温度で実行される、
請求項1~8のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の温度は、250℃以下の温度であり、前記第2の温度は、400℃以上の温度である、
請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
さらに、前記搬入工程の前に、前記処理容器内に前記基板が存在しない状態でプラズマ処理を行う前工程を有し、
前記前工程は、水素含有ガスのプラズマを用いて、前記処理容器内の酸素を引き出して除去するデガス工程を含む、
請求項1~10のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板を処理する基板処理方法であって、
表面にシリコン含有膜を有する前記基板を第1の処理容器内に搬入する第1工程と、
前記第1の処理容器内に酸素含有ガスを供給し、紫外線を照射して生成した酸素ラジカルと前記シリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成する第2工程と、
前記シリコン含有膜の表面に前記シリコン酸化層が形成された前記基板を第2の処理容器内に搬入する第3工程と、
前記第2の処理容器内に炭素含有ガスを供給し、前記炭素含有ガスのプラズマで、前記シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成する第4工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項13】
基板処理装置であって、
表面にシリコン含有膜を有する基板を収容可能な処理容器と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板を前記処理容器内に搬入するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記処理容器内に酸素含有ガスを供給し、前記シリコン含有膜の表面に前記酸素含有ガスを吸着させて吸着層を形成するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記処理容器内にアルゴン含有ガスを供給し、前記アルゴン含有ガスのプラズマで、前記吸着層と前記シリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記処理容器内に炭素含有ガスを供給し、前記炭素含有ガスのプラズマで、前記シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成するよう前記基板処理装置を制御するように構成される、
基板処理装置。
【請求項14】
基板上のポリシリコン膜またはシリコン基板の表面に形成されたアモルファス構造層と、
前記アモルファス構造層上に形成された二次元構造膜と、
前記二次元構造膜上に形成された金属材料膜と、を備え、
前記アモルファス構造層は、1nm以下のシリコン酸化層であり、前記二次元構造膜は、グラフェン膜であり、
前記グラフェン膜によるフェルミ準位ピンニング効果によって、前記ポリシリコン膜または前記シリコン基板と、前記金属材料膜とがオーミック接合される、
半導体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置および半導体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属窒化膜に代わる新たな薄膜バリア層材料としてグラフェン膜が提案されている。グラフェン成膜技術では、例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、高ラジカル密度・低電子温度にてグラフェン成膜を行うことにより、グラフェン膜をシリコン基板や絶縁膜等の上に直接形成することが提案されている(例えば特許文献1)。また、成膜前に基板の表面に付着した自然酸化膜を除去するために、例えば希釈弗酸溶液を用いたウェット洗浄を行うことが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-055887号公報
【特許文献2】特開2004-152862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜を成膜することができる基板処理方法、基板処理装置および半導体構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、基板を処理する基板処理方法であって、表面にシリコン含有膜を有する基板を処理容器内に搬入する搬入工程と、処理容器内に酸素含有ガスを供給し、シリコン含有膜の表面に酸素含有ガスを吸着させて吸着層を形成する第1工程と、処理容器内にアルゴン含有ガスを供給し、アルゴン含有ガスのプラズマで、吸着層とシリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成する第2工程と、処理容器内に炭素含有ガスを供給し、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成する第3工程とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態における成膜装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本実施形態におけるグラフェン膜の成膜後の基板の状態の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態におけるシリコン酸化層の状態の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態における成膜処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、変形例1における成膜処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、変形例1におけるグラフェン膜の成膜後の基板の状態の一例を示す図である。
図7図7は、変形例1におけるシリコン酸化層の状態の一例を示す図である。
図8図8は、変形例2における成膜処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板処理方法、基板処理装置および半導体構造の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
従来、薄膜バリア層材料として金属窒化膜(例えば、TiN)が用いられてきた。これに対し、グラフェンは、炭素六員環構造を有する二次元結晶構造であり、緻密で平坦な原子構造、高熱伝導率、化学的・物理的安定性を兼ね備えている。例えば、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、多結晶シリコン(Poly-Si:以下、ポリシリコンともいう。)上にグラフェンを成膜する場合、表面に付着した自然酸化膜を除去する必要がある。自然酸化膜の除去は、上述のようにウェット洗浄によって行うことが知られているが、洗浄された基板は、グラフェン成膜前に大気暴露や搬送などの影響で基板表面が再酸化され、基板表面の酸化物がグラフェン成膜に影響することがある。また、多結晶シリコンに金属膜を積層する場合、多結晶シリコンと金属膜の界面では、仕事関数が異なるため、ショットキー接合となり整流作用が発生して高抵抗となる。これに対し、多結晶シリコンと金属膜との間にグラフェン膜を形成することで、フェルミ準位ピンニング(Fermi Level Pinning)効果が起こり、多結晶シリコンと金属膜の仕事関数差が低減されて、オーミック接合として低抵抗化することが考えられる。ところが、多結晶シリコン上にグラフェン膜を成膜すると、SiCおよびSiO2の混合界面層が形成され、グラフェン膜を介した多結晶シリコンと金属膜との間が高抵抗となる場合がある。つまり、均一な膜厚制御が難しく、SiCおよびSiO2の絶縁膜層が厚く形成されてしまうことがある。そこで、界面層状態の制御を行うとともに、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜を成膜することが期待されている。
【0010】
[成膜装置1の構成]
図1は、本開示の一実施形態における成膜装置の一例を示す概略断面図である。図1に例示される成膜装置1は、例えばRLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置として構成される。なお、成膜装置1は、基板処理装置の一例である。
【0011】
成膜装置1は、装置本体10と、装置本体10を制御する制御部11とを備える。装置本体10は、チャンバ101と、ステージ102と、マイクロ波導入機構103と、ガス供給機構104と、排気機構105とを有する。
【0012】
チャンバ101は、略円筒状に形成されており、チャンバ101の底壁101aの略中央部には開口部110が形成されている。底壁101aには、開口部110と連通し、下方に向けて突出する排気室111が設けられている。チャンバ101の側壁101sには、基板(以下、ウエハともいう。)Wが通過する開口部117が形成されており、開口部117は、ゲートバルブ118によって開閉される。なお、チャンバ101は、処理容器の一例である。
【0013】
ステージ102には、処理対象となる基板Wが載せられる。ステージ102は、略円板状をなしており、AlN等のセラミックスによって形成されている。ステージ102は、排気室111の底部略中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材112により支持されている。ステージ102の外縁部には、ステージ102に載せられた基板Wを囲むようにエッジリング113が設けられている。また、ステージ102の内部には、基板Wを昇降するための昇降ピン(図示せず)がステージ102の上面に対して突没可能に設けられている。
【0014】
さらに、ステージ102の内部には抵抗加熱型のヒータ114が埋め込まれており、ヒータ114はヒータ電源115から給電される電力に応じてステージ102に載せられた基板Wを加熱する。また、ステージ102には、熱電対(図示せず)が挿入されており、熱電対からの信号に基づいて、基板Wの温度を、例えば350~850℃に制御可能となっている。さらに、ステージ102内において、ヒータ114の上方には、基板Wと同程度の大きさの電極116が埋設されており、電極116には、バイアス電源119が電気的に接続されている。バイアス電源119は、予め定められた周波数および大きさのバイアス電力を電極116に供給する。電極116に供給されたバイアス電力により、ステージ102に載せられた基板Wにイオンが引き込まれる。なお、バイアス電源119はプラズマ処理の特性によっては設けられなくてもよい。
【0015】
マイクロ波導入機構103は、チャンバ101の上部に設けられており、アンテナ121と、マイクロ波出力部122と、マイクロ波伝送機構123とを有する。アンテナ121には、貫通孔である多数のスロット121aが形成されている。マイクロ波出力部122は、マイクロ波を出力する。マイクロ波伝送機構123は、マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波をアンテナ121に導く。
【0016】
アンテナ121の下方には誘電体で形成された誘電体窓124が設けられている。誘電体窓124は、チャンバ101の上部にリング状に設けられた支持部材132に支持されている。アンテナ121の上には、遅波板126が設けられている。アンテナ121の上にはシールド部材125が設けられている。シールド部材125の内部には、図示しない流路が設けられており、シールド部材125は、流路内を流れる水等の流体によりアンテナ121、誘電体窓124および遅波板126を冷却する。
【0017】
アンテナ121は、例えば表面が銀または金メッキされた銅板またはアルミニウム板等で形成されており、マイクロ波を放射するための複数のスロット121aが予め定められたパターンで配置されている。スロット121aの配置パターンは、マイクロ波が均等に放射されるように適宜設定される。好適なパターンの例としては、T字状に配置された2つのスロット121aを一対として複数対のスロット121aが同心円状に配置されているラジアルラインスロットを挙げることができる。スロット121aの長さや配列間隔は、マイクロ波の実効波長(λg)に応じて適宜決定される。また、スロット121aは、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、スロット121aの配置形態は特に限定されず、同心円状の他、例えば、螺旋状、放射状に配置されてもよい。スロット121aのパターンは、所望のプラズマ密度分布が得られるマイクロ波放射特性となるように、適宜設定される。
【0018】
遅波板126は、石英、セラミックス(Al2O3)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等の真空よりも大きい誘電率を有する誘電体で形成されている。遅波板126は、マイクロ波の波長を真空中より短くしてアンテナ121を小さくする機能を有している。なお、誘電体窓124も同様の誘電体で構成されている。
【0019】
誘電体窓124および遅波板126の厚さは、遅波板126、アンテナ121、誘電体窓124、および、プラズマで形成される等価回路が共振条件を満たすように調整される。遅波板126の厚さを調整することにより、マイクロ波の位相を調整することができる。アンテナ121の接合部が定在波の「腹」になるように遅波板126の厚さを調整することにより、マイクロ波の反射が極小化され、マイクロ波の放射エネルギーを最大とすることができる。また、遅波板126と誘電体窓124を同じ材質とすることにより、マイクロ波の界面反射を防止することができる。
【0020】
マイクロ波出力部122は、マイクロ波発振器を有している。マイクロ波発振器は、マグネトロン型であってもよく、ソリッドステート型であってもよい。マイクロ波発振器によって生成されるマイクロ波の周波数は、例えば300MHz~10GHzの周波数である。一例として、マイクロ波出力部122は、マグネトロン型のマイクロ波発振器により、2.45GHzのマイクロ波を出力する。マイクロ波は、電磁波の一例である。
【0021】
マイクロ波伝送機構123は、導波管127と、同軸導波管128とを有する。なお、さらにモード変換機構を有してもよい。導波管127は、マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波を導く。同軸導波管128は、アンテナ121の中心に接続された内導体、および、その外側の外導体を含む。モード変換機構は、導波管127と同軸導波管128との間に設けられている。マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波は、TEモードで導波管127内を伝播し、モード変換機構によってTEモードからTEMモードへ変換される。TEMモードに変換されたマイクロ波は、同軸導波管128を介して遅波板126に伝搬し、遅波板126からアンテナ121のスロット121a、および、誘電体窓124を介してチャンバ101内に放射される。なお、導波管127の途中には、チャンバ101内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部122の出力インピーダンスに整合させるためのチューナ(図示せず)が設けられている。
【0022】
ガス供給機構104は、チャンバ101の内壁に沿ってリング状に設けられたシャワーリング142を有する。シャワーリング142は、内部に設けられたリング状の流路166と、流路166に接続されその内側に開口する多数の吐出口167とを有する。流路166には、配管161を介してガス供給部163が接続されている。ガス供給部163には、複数のガスソースおよび複数の流量制御器が設けられている。一実施形態において、ガス供給部163は、少なくとも1つの処理ガスを、対応するガスソースから対応の流量制御器を介してシャワーリング142に供給するように構成されている。シャワーリング142に供給されたガスは、複数の吐出口167からチャンバ101内に供給される。
【0023】
また、基板W上にグラフェン膜が成膜される場合、ガス供給部163は、予め定められた流量に制御された炭素含有ガス、水素含有ガス、および希ガスをシャワーリング142を介してチャンバ101内に供給する。本実施形態において、炭素含有ガスとは、例えばC2H2ガスである。なお、C2H2ガスに代えて、または、C2H2ガスに加えて、C2H4ガス、CH4ガス、C2H6ガス、C3H8ガス、またはC3H6ガス等が用いられてもよい。また、本実施形態において、水素含有ガスとは、例えば水素ガスである。なお、水素ガスに代えて、または、水素ガスに加えて、F2(フッ素)ガス、Cl2(塩素)ガス、またはBr2(臭素)ガス等のハロゲン系ガスが用いられてもよい。また、本実施形態において、希ガスとは、例えばArガスである。Arガスに代えて、Heガス等の他の希ガスが用いられてもよい。
【0024】
排気機構105は、排気室111と、排気室111の側壁に設けられた排気管181と、排気管181に接続された排気装置182とを有する。排気装置182は、真空ポンプおよび圧力制御バルブ等を有する。
【0025】
制御部11は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件等を含むレシピが格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、装置本体10の各部を制御する。
【0026】
例えば、制御部11は、後述する成膜方法を行うように、成膜装置1の各部を制御する。詳細な一例を挙げると、制御部11は、表面にシリコン含有膜を有する基板(ウエハW)をチャンバ101内に搬入する搬入工程を実行する。制御部11は、チャンバ101内に酸素含有ガスを供給し、シリコン含有膜の表面に酸素を吸着させて吸着層を形成する第1工程を実行する。制御部11は、チャンバ101内にアルゴン含有ガスを供給し、アルゴン含有ガスのプラズマで、吸着層とシリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層を形成する第2工程を実行する。制御部11は、チャンバ101内に炭素含有ガスを供給し、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層上にグラフェン膜を形成する第3工程を実行する。ここで、炭素含有ガスは、ガス供給部163から供給されるアセチレン(C2H2)ガスを用いることができる。また、アルゴン含有ガスは、ガス供給部163から供給されるArガスを用いることができる。また、酸素含有ガスは、ガス供給部163から供給されるO2ガスを用いることができる。また、炭素含有ガスはアセチレンに限るものではない。例えば、エチレン(C2H4)、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等でもよい。また、酸素含有ガスはO2ガスに限らず、O3ガスなどでもよい。
【0027】
[シリコン酸化層]
次に、図2および図3を用いてグラフェン膜の成膜後の基板の状態について説明する。図2は、本実施形態におけるグラフェン膜の成膜後の基板の状態の一例を示す図である。図2に示すように、ウエハWは、シリコン基板20上にポリシリコン膜21が形成されている。ポリシリコン膜21は、シリコン含有膜の一例である。ポリシリコン膜21の表面には、シリコン酸化層22が形成されている。また、シリコン酸化層22上には、グラフェン膜23が形成されている。
【0028】
図3は、本実施形態におけるシリコン酸化層の状態の一例を示す図である。図3に示すように、シリコン酸化層22は、ポリシリコン膜21の表面に形成された、例えば1nm以下の極薄膜のアモルファス構造の酸化層である。つまり、シリコン酸化層22とグラフェン膜23とは、アモルファス構造の酸化層と二次元結晶材料であるグラフェンとの複合バリア構造を形成している。グラフェン膜23の成膜の前に、安定なシリコン酸化層22がポリシリコン膜21の表面に形成されることで、グラフェン膜23の初期層のSiC形成を抑制し、シリコン酸化層22上に直接グラフェンを積層することが可能となる。つまり、ポリシリコン膜21とグラフェン膜23との間の界面に入る絶縁層が、シリコン酸化層22のみとなるので、フェルミ準位ピンニング(Fermi Level Pinning)の管理が容易となる。また、意図的にシリコン酸化層22を形成することで、シリコン酸化層22の厚さを1nm以下で管理することができる。
【0029】
なお、シリコン酸化層22は、極薄膜であるので、ポリシリコン膜21とグラフェン膜23との間で電子がトンネリングする。つまり、ポリシリコン膜21とグラフェン膜23との間は、電気伝導性を有する。すなわち、グラフェン膜23上に図示しない金属膜(例えば、タングステン(W)含有膜。)が形成される場合、シリコン酸化層22およびグラフェン膜23を介したポリシリコン膜21と金属膜との間は、オーミック接合となって低抵抗となる。なお、シリコン酸化層22は、ポリシリコン膜21を設けないシリコン基板20上に直接形成してもよい。つまり、ウエハWには、ポリシリコン膜21またはシリコン基板20の表面に形成された1nm以下のアモルファス構造層であるシリコン酸化層22と、シリコン酸化層22上に形成された二次元構造膜であるグラフェン膜23と、グラフェン膜23上に形成された金属膜(金属材料膜)とを備え、グラフェン膜23によるフェルミ準位ピンニング効果によって、ポリシリコン膜21またはシリコン基板20と、金属膜とがオーミック接合される半導体構造が形成される。
【0030】
また、グラフェン膜23のバリア性については、グラフェンは炭素六員環構造を有するシート状の二次元結晶材料であり、材料自体のバリア性は高い。しかしながら、CVDによるグラフェン形成では多結晶材料となるため、結晶粒界(ドメイン粒界)が存在する。結晶粒界は、炭素結合の疎な箇所となるのでバリア性が低下する。これに対し、シリコン酸化層22は、アモルファス構造を有するため粒界がなく、バリア性を補完することができる。このため、シリコン酸化層22とグラフェン膜23を複合して用いることで、良好なバリア性を提供することができる。
【0031】
さらに、グラフェン膜23の結晶性については、炭素六員環構造の連続性が高いほど、結晶性のよいグラフェンとなり、電気伝導度やバリア性が向上する。グラフェン成膜は、下層膜上に核を形成し、形成した核から平面方向に広がるように成長する。このとき、下層膜との格子のミスフィットによるグラフェン六員環の不整合が生じると、グラフェン内の結晶欠陥となってグラフェン六員環が不連続となる。この不連続性を改善するためには、下層膜表面が結晶性を持たないアモルファス構造であることが重要である。アモルファス構造の表面は、結晶性を持たないため、グラフェンは下層膜に対して格子ミスフィットを持つことなく、欠陥が少なく結晶性が高いグラフェンを形成することができる。すなわち、シリコン酸化層22がアモルファス構造を有するので、ポリシリコン膜21の結晶格子表面をキャンセルすることができる。つまり、シリコン酸化層22上には、結晶性の高いグラフェン膜23を成膜することができる。
【0032】
[成膜方法]
続いて、本実施形態に係る成膜処理について説明する。図4は、本実施形態における成膜処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
本実施形態に係る成膜処理では、まず、制御部11は、ゲートバルブ118を制御することにより、開口部117を開放する。ウエハWは、開口部117が開放されているときに、開口部117を介してチャンバ101の処理空間に搬入され、ステージ102に載置される。つまり、制御部11は、チャンバ101内にウエハWを搬入する(ステップS1)。制御部11は、ゲートバルブ118を制御することにより、開口部117を閉鎖する。
【0034】
制御部11は、図示しない基板支持ピンで受け取ったウエハWを第1の位置で保持した状態で、チャンバ101内の圧力を所定の圧力(例えば、5mTorr~400mTorr。)に減圧する。ここで、第1の位置は、ウエハWをステージ102の上方に支持した位置であり、例えば、ステージ102の上面から10mm~15mmの位置である。制御部11は、吐出口167から、プラズマ生成ガスである水素含有ガスをチャンバ101に供給する。なお、水素含有ガスは、水素(H2)ガスと不活性ガス(Arガス)とを含むガスである。また、制御部11は、マイクロ波導入機構103のマイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波をアンテナ121に導き、アンテナ121から放射させ、プラズマを着火させる。制御部11は、所定時間(例えば5秒~15分。)、水素含有ガスのプラズマにてポリシリコン膜21上の酸化物を除去するエッチング工程を実行する(ステップS2)。このとき、制御部11は、ウエハWの温度が250℃以下となるように、酸化物を除去する時間(エッチング時間)を制御する。なお、エッチング工程は、第4工程の一例である。また、エッチング工程で除去する酸化物は、自然酸化膜を含んでもよい。なお、ウェット洗浄等の他の手法によりポリシリコン膜21上の酸化物を除去する場合には、エッチング工程は省略することができる。
【0035】
制御部11は、エッチング工程が完了すると、ウエハWを第1の位置で保持した状態で、マイクロ波を停止させてプラズマの生成を停止する。制御部11は、吐出口167から、酸素含有ガスをチャンバ101に供給する。制御部11は、所定時間(例えば10~60秒。)、ポリシリコン膜21の表面を酸素含有ガスにさらさせることで、ポリシリコン膜21の表面を酸化させることなく、ポリシリコン膜21の表面に酸素を吸着させて吸着層を形成する吸着工程を実行する(ステップS3)。このとき、制御部11は、ウエハWの温度が250℃以下となるように、吸着工程の時間を制御する。また、制御部11は、吸着工程において、所定時間が経過して吸着層が形成された後に、酸素含有ガスの供給を停止させるとともに、排気機構105を制御してチャンバ101内を排気させる。このとき、チャンバ101に供給されるガスを、酸素含有ガスからアルゴン含有ガスに切り替えるようにしてもよい。なお、吸着工程は、第1工程の一例である。
【0036】
制御部11は、吸着工程が完了すると、図示しない基板支持ピンを下降させて、ウエハWをステージ102に載置する。つまり、ウエハWは、第2の位置に保持される。制御部11は、ウエハWがステージ102上に載置された状態で、チャンバ101内の圧力を所定の圧力(例えば、5mTorr~500mTorr。)に制御する。また、制御部11は、ウエハWの温度を所定の温度(例えば400℃以上。)となるように制御する。つまり、制御部11は、ウエハWの温度を吸着工程よりも高い温度となるように制御する。制御部11は、吐出口167から、プラズマ生成ガスであるアルゴン含有ガスをチャンバ101に供給する。また、制御部11は、マイクロ波導入機構103を制御してプラズマを着火させる。制御部11は、所定時間(例えば、5秒~60秒。)、アルゴン含有ガスのプラズマで、吸着層とポリシリコン膜21の表面とを反応させてシリコン酸化層22を形成する反応工程を実行する(ステップS4)。なお、反応工程におけるウエハWの温度は、成膜工程におけるウエハWの温度より高くなっても構わない。また、アルゴン含有ガスには、水素(H2)ガスを混合してもよい。水素ガスを混合することで、ポリシリコン膜21の表面における反応に関与しない余剰分の酸素を取り除き、シリコンとの余剰な酸化反応を低減することができる。なお、反応工程は、第2工程の一例である。
【0037】
また、吸着工程および反応工程は、ウエハWを第1の位置で保持した状態で、吸着工程を実行した後、第1の位置かつ酸素含有ガスをチャンバ101に供給したまま、プラズマを着火させてもよい。この場合、ステージ102に載置する場合よりも低温にてシリコン酸化層22を形成することができる。
【0038】
制御部11は、反応工程が完了すると、ウエハWがステージ102上に載置された状態で、チャンバ101内の圧力を所定の圧力(例えば、5mTorr~500mTorr。)に制御する。また、制御部11は、ウエハWの温度を所定の温度(例えば400℃以上。)となるように制御する。つまり、制御部11は、ウエハWの温度を吸着工程よりも高い温度となるように制御する。制御部11は、吐出口167から、プラズマ生成ガスである炭素含有ガスをチャンバ101に供給する。また、制御部11は、マイクロ波導入機構103を制御してプラズマを着火させる。制御部11は、所定時間(例えば、5秒~60分。)、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層22上にグラフェン膜23を形成する成膜工程を実行する(ステップS5)。なお、成膜工程は、第3工程の一例である。
【0039】
制御部11は、成膜工程が完了すると、ゲートバルブ118を制御することにより、開口部117を開放する。制御部11は、図示しない基板支持ピンをステージ102の上面から突出させてウエハWを持ち上げる。ウエハWは、開口部117が開放されているときに、開口部117を介して図示しない搬送室のアームによりチャンバ101内から搬出される。つまり、制御部11は、チャンバ101内からウエハWを搬出する(ステップS6)。
【0040】
制御部11は、ウエハWを搬出すると、チャンバ101内をクリーニングするクリーニング工程を実行する(ステップS7)。クリーニング工程では、ダミーウエハをステージ102に載置してクリーニングガスをチャンバ101内に供給し、チャンバ101の内壁に付着したアモルファスカーボン膜等のカーボン膜をクリーニングする。なお、クリーニングガスとしてはO2ガスを用いることができるが、COガス、CO2ガス等の酸素を含むガスであってもよい。また、クリーニングガスは、Arガス等の希ガスが含まれていてもよい。また、ダミーウエハはなくてもよい。制御部11は、クリーニング工程が完了すると、成膜処理を終了する。このように、ポリシリコン膜21の表面にシリコン酸化層22を形成し、シリコン酸化層22上にグラフェン膜23を形成するので、界面層状態を制御できるとともに、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜23を成膜することができる。
【0041】
[変形例1]
上記の実施形態では、シリコン酸化層22の上に直接グラフェン膜23を成膜したが、シリコン酸化層22の最表面をSiOCに改質する改質工程を設けてもよく、この場合の実施の形態につき、変形例1として説明する。なお、変形例1における成膜装置1は、上記の実施形態の成膜装置1と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。
【0042】
図5は、変形例1における成膜処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、制御部11は、上述の実施形態と同様に、ステップS1~S4の処理を実行する。制御部11は、ステップS4に続いて、ウエハWがステージ102上に載置された状態で、吐出口167から、プラズマ生成ガスであるアルゴン含有ガスと炭素含有ガスとを含む混合ガスをチャンバ101に供給する。なお、混合ガスにおける炭素含有ガスの比率は、成膜工程よりも低い割合とする(例えば、アルゴン含有ガスに対する炭素含有ガスの比率が0.1~5.0%。)。また、制御部11は、マイクロ波導入機構103を制御してプラズマを着火させる。制御部11は、所定時間(例えば、5秒~60秒。)、上述の混合ガスのプラズマで、シリコン酸化層22の表面を改質する改質工程を実行する(ステップS11)。なお、改質工程は、第5工程の一例である。制御部11は、改質工程が完了すると、ステップS5の成膜工程に進む。改質工程により、シリコン酸化層22の最表面は、活性化されたSiO2にプラズマ雰囲気中の炭素が作用してSiOC結合が形成される、つまりSiOCに改質されるので、グラフェン膜23の密着性を改善することができる。
【0043】
また、変形例1において、SiOCへの改質を行うアルゴン含有ガスと炭素含有ガスとを含む混合ガスには、水素(H2)ガスを混合してもよい。水素ガスを混合することで、ポリシリコン膜21の表面における反応に関与しない余剰分の酸素を取り除き、シリコンとの余剰な酸化反応を低減することができる。また、水素が入ることでC-C結合がエッチングされるので、シリコン酸化層22の最表面には、SiOC結合が優先して形成される。そして、この後にC-C結合であるグラフェン膜23を成膜することで、より結晶性の高いグラフェンを形成することが可能となる。
【0044】
ここで、図6および図7を用いて改質工程を実行した場合のウエハの状態について説明する。図6は、変形例1におけるグラフェン膜の成膜後の基板の状態の一例を示す図である。図6に示すように、ウエハW1は、シリコン基板20上にポリシリコン膜21が形成されている。また、ポリシリコン膜21の表面には、シリコン酸化層22が形成されている。シリコン酸化層22の最表面は、SiOCに改質されて改質層22aとなる。また、改質層22a上には、グラフェン膜23が形成されている。
【0045】
図7は、変形例1におけるシリコン酸化層の状態の一例を示す図である。図7に示すように、、ポリシリコン膜21の表面には、例えば1nm以下の極薄膜のアモルファス構造の酸化層であるシリコン酸化層22が形成されている。シリコン酸化層22の最表面は、改質層22aに改質されている。変形例1では、シリコン酸化層22の最表面を活性化してSiOC結合(改質層22a)に改質するので、プラズマ雰囲気中の炭素がシリコン酸化層22を超えてポリシリコン膜21内に侵入しない。また、改質層22aは、シリコン酸化層22とグラフェン膜23との間の結合層として機能するので、グラフェン膜23の密着性を向上させることができる。すなわち、グラフェン膜23のポリシリコン膜21への密着性を向上させることができる。
【0046】
[変形例2]
上記の実施形態では、ポリシリコン膜21の表面に吸着させた酸素をプラズマ処理で反応させてシリコン酸化層22を形成したが、これに限定されない。例えば、紫外線を照射して反応させてシリコン酸化層22を形成してもよく、この場合の実施の形態につき、変形例2として説明する。なお、変形例2における成膜装置1は、上記の実施形態の成膜装置1と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。
【0047】
図8は、変形例2における成膜処理の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、制御部11は、図示しない紫外線照射用のチャンバのゲートバルブを制御することにより開口部を開放する。ウエハWは、開口部が開放されているときに、開口部を介してチャンバの処理空間に搬入され、ステージに載置される。つまり、制御部11は、紫外線照射用のチャンバ内にウエハWを搬入するよう制御する(ステップS21)。制御部11は、ゲートバルブを制御することにより、開口部を閉鎖する。なお、変形例2において、紫外線照射用のチャンバは第1の処理容器の一例であり、チャンバ101は第2の処理容器の一例である。
【0048】
制御部11は、紫外線照射用のチャンバ内の図示しない基板支持ピンで受け取ったウエハWをステージに載置するよう制御する。制御部11は、紫外線照射用のチャンバ内の圧力を所定の圧力(例えば、5mTorr~200mTorr。)に減圧する。制御部11は、酸素含有ガス(例えば、O2ガスやO3ガス。)を紫外線照射用のチャンバに供給する。制御部11は、紫外線ランプを制御してウエハWに紫外線を所定時間(例えば、5秒~10分。)照射し、チャンバ内に生成した酸素ラジカルとポリシリコン膜21の表面とを反応させてシリコン酸化層22を形成する照射工程を実行する(ステップS22)。照射する紫外線は、例えば、200nm以下の波長の紫外線を用いることができる。ここで、酸素ラジカルは、イオン性の指向エネルギーを持たないため、ポリシリコン膜21の膜厚方向に酸化を進めることなく、最表面にのみシリコン酸化層22を形成することができる。なお、酸化反応を制御するために、ウエハWは加熱されてもよい。
【0049】
制御部11は、照射工程が完了すると、紫外線照射用のチャンバのゲートバルブを制御することにより開口部を開放する。制御部11は、図示しない基板支持ピンをステージの上面から突出させてウエハWを持ち上げるよう制御する。ウエハWは、開口部が開放されているときに、開口部を介して図示しない搬送室のアームにより紫外線照射用のチャンバ内から搬出される。制御部11は、チャンバ101のゲートバルブ118を制御することにより、開口部117を開放する。ウエハWは、開口部117が開放されているときに、開口部117を介してチャンバ101の処理空間に搬入され、ステージ102に載置される。つまり、制御部11は、ポリシリコン膜21の表面にシリコン酸化層22が形成されたウエハWをチャンバ101内に搬入するよう制御する。すなわち、制御部11は、紫外線照射用のチャンバからチャンバ101にウエハWを移動させるよう制御する(ステップS23)。制御部11は、ゲートバルブ118を制御することにより、開口部117を閉鎖する。制御部11は、ウエハWがチャンバ101に移動されると、ステップS5の成膜工程に進む。このように、紫外線照射によっても、ポリシリコン膜21の表面にシリコン酸化層22を形成することができる。
【0050】
なお、紫外線照射用のチャンバとチャンバ101とは、クラスタとして連結されて真空雰囲気のままウエハWが搬送されてもよいし、スタンドアロンの装置間で大気開放されてウエハWが搬送されてもよい。なお、ウエハWは、紫外線照射用のチャンバにおいてシリコン酸化層22が形成されているため、シリコン酸化層22自体が酸素に対するバリア層となる。従って、ウエハWを真空雰囲気から一旦出しても、シリコン酸化層22以上に酸化が進むことはない。
【0051】
[変形例3]
上記の実施形態では、ウエハWの搬入前に、チャンバ101の内部に対して特に処理を行わなかったが、クリーニング工程の影響を低減するためにチャンバ101の内壁等に残留した酸素成分を取り除くデガス工程を実行するようにしてもよく、この場合の実施の形態につき、変形例3として説明する。なお、変形例3における成膜装置1は、上記の実施形態の成膜装置1と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。
【0052】
変形例3では、実施形態のウエハWの搬入前、つまりステップS1の前に、前回のクリーニング工程の影響を低減するためのデガス工程を実行する。制御部11は、吐出口167から、水素含有ガスをチャンバ101に供給する。また、制御部11は、チャンバ101内の圧力を所定の圧力(例えば、50mTorr~1Torr。)に制御する。デガス工程における水素含有ガスとしては、例えばH2ガスやAr/H2ガスを用いることができる。制御部11は、マイクロ波導入機構103を制御してプラズマを着火させる。制御部11は、所定時間(例えば、120~180秒。)、水素含有ガスのプラズマにてデガス工程を実行する。デガス工程では、チャンバ101内に残存するO2、H2O等の酸化成分をOHラジカルとして排出する。なお、クリーニング工程およびデガス工程では、ダミーウエハを用いなくてもよい。また、デガス工程に窒素を添加してもよい。窒素を添加することで、OHに加えてNOラジカルとして排出効果を向上することができる。また、デガス工程では、工程の実行中に圧力を多段階に変化させてもよい。圧力を多段階に変化させることで、プラズマの広がりが制御できる。圧力を変化させてプラズマの広がりを制御することで、チャンバ101内に残留する酸素に対して、プラズマを効率的に照射できるので、残留酸素を除去する効果を向上させることができる。
【0053】
以上、本実施形態によれば、基板処理装置(成膜装置1)は、表面にシリコン含有膜(ポリシリコン膜21)を有する基板(ウエハW)を収容可能な処理容器(チャンバ101)と、制御部11とを有する。制御部11は、表面にシリコン含有膜を有する基板を処理容器内に搬入する搬入工程と、処理容器内に酸素含有ガスを供給し、シリコン含有膜の表面に酸素含有ガスを吸着させて吸着層を形成する第1工程(吸着工程)と、処理容器内にアルゴン含有ガスを供給し、アルゴン含有ガスのプラズマで、吸着層とシリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層22を形成する第2工程(反応工程)と、処理容器内に炭素含有ガスを供給し、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層22上にグラフェン膜23を形成する第3工程(成膜工程)とを実行する。その結果、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜23を成膜することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1工程は、載置台(ステージ102)の基板支持ピンを上昇させて、搬入された基板を第1の位置で保持した状態で実行され、第2工程および第3工程は、基板支持ピンを下降させて、基板を第2の位置で保持した状態で実行される。その結果、シリコン酸化層22の膜厚を制御して極薄膜とすることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1の位置は、基板を載置台の上方に支持した位置であり、第2の位置は、基板を載置台に載置した位置である。その結果、シリコン酸化層22の膜厚を制御して極薄膜とすることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第1の位置は、載置台の上面から10mm~15mmの位置である。その結果、シリコン酸化層22の膜厚を制御して極薄膜とすることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、第1工程は、吸着層の形成後に、酸素含有ガスの供給を停止して処理容器内を排気させる。その結果、シリコン酸化層22の膜厚を制御して極薄膜とすることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、第1工程の前に、シリコン含有膜の表面に形成された酸化物をエッチングする第4工程(エッチング工程)をさらに有する。その結果、ポリシリコン膜21上に膜厚が制御されたシリコン酸化層22を形成することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、第4工程は、水素含有ガスを含む混合ガスのプラズマによる処理によって、酸化物をエッチングする。その結果、ポリシリコン膜21上に膜厚が制御されたシリコン酸化層22を形成することができる。
【0060】
また、変形例1によれば、第3工程の前に、アルゴン含有ガスと、炭素含有ガスとを含む混合ガスのプラズマで、シリコン酸化層22の表面を改質する第5工程(改質工程)をさらに有する。その結果、グラフェン膜23のポリシリコン膜21への密着性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第1工程は、第1の温度で実行され、第2工程および第3工程は、第1の温度より高い第2の温度で実行される。その結果、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜23を成膜することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、第1の温度は、250℃以下の温度であり、第2の温度は、400℃以上の温度である。その結果、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜23を成膜することができる。
【0063】
また、変形例3によれば、さらに、搬入工程の前に、処理容器内に基板が存在しない状態でプラズマ処理を行う前工程を有し、前工程は、水素含有ガスのプラズマを用いて、処理容器内の酸素を引き出して除去するデガス工程を含む。その結果、吸着工程および反応工程の制御性を向上させることができる。
【0064】
また、変形例2によれば、基板処理装置は、表面にシリコン含有膜を有する基板を収容可能な第1の処理容器および第2の処理容器と、制御部11とを有する。制御部11は、表面にシリコン含有膜を有する基板を第1の処理容器内に搬入する第1工程と、第1の処理容器内に酸素含有ガスを供給し、紫外線を照射して生成した酸素ラジカルとシリコン含有膜の表面とを反応させてシリコン酸化層22を形成する第2工程と、シリコン含有膜の表面にシリコン酸化層22が形成された基板を第2の処理容器内に搬入する第3工程と、第2の処理容器内に炭素含有ガスを供給し、炭素含有ガスのプラズマで、シリコン酸化層22上にグラフェン膜23を形成する第4工程とを実行する。その結果、低抵抗かつバリア性が優れたグラフェン膜23を成膜することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、半導体構造は、基板上のポリシリコン膜21またはシリコン基板20の表面に形成されたアモルファス構造層と、アモルファス構造層上に形成された二次元構造膜と、二次元構造膜上に形成された金属材料膜と、を備え、アモルファス構造層は、1nm以下のシリコン酸化層22であり、二次元構造膜は、グラフェン膜23であり、グラフェン膜23によるフェルミ準位ピンニング効果によって、ポリシリコン膜21またはシリコン基板20と、金属材料膜とがオーミック接合される。その結果、ポリシリコン膜21またはシリコン基板20と金属材料膜とを、低抵抗かつバリア性が優れた状態で接合することができる。
【0066】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、プラズマ源としてマイクロ波プラズマを用いてウエハWに対してエッチングや成膜等の処理を行う成膜装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いてウエハWに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源はマイクロ波プラズマに限られず、例えば、容量結合型プラズマ、誘導結合型プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 成膜装置
11 制御部
20 シリコン基板
21 ポリシリコン膜
22 シリコン酸化層
22a 改質層
23 グラフェン膜
101 チャンバ
102 ステージ
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8