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特開2023-43691インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043691
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230322BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230322BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230322BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20230322BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41M5/00 120
B41M5/00 134
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41J2/175 119
B41J2/175 115
C09D11/40
B41M5/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151449
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 舜介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増田 公則
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056KC02
2H186AB12
2H186AB22
2H186AB23
2H186AB47
2H186AB54
2H186AB58
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA10
2H186FA08
2H186FB03
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB58
4J039AD09
4J039AE04
4J039BC07
4J039BC08
4J039BC09
4J039BC13
4J039BC15
4J039BC31
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA04
4J039CA06
4J039EA33
4J039EA34
4J039EA36
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】
低光沢(マット調)及び高光沢(グロス調)の光沢度差、耐擦過性、耐候性及び乾燥性に優れるインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】
インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であるインクジェット印刷装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、
前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、
前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、
前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱し、
前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、
前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、
前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、前記高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たす、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記非水系クリアインクに含まれる有機溶剤が、アルキレングリコールジエーテル化合物、アルキレングリコールモノエーテル化合物、及びラクトン化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記非水系クリアインクに含まれる樹脂の含有量が、9質量%以上である、請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記非水系クリアインクが更に界面活性剤を含有し、前記界面活性剤の含有量が2質量%以上である、請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記水系インクの40℃における粘度が6.5mPa・s以上30mPa・s以下である、請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して印刷層を形成する工程と、
樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、
前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、
低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱するインクジェット印刷方法。
【請求項10】
樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して印刷層を形成する工程と、
樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、
前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、
低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱するインクジェット印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、壁紙、広告、看板等の産業用途において、テキスタイル、キャンパス生地等の浸透性記録媒体が使用されており、このような浸透性記録媒体に用いられるインクが種々開発されている。
【0003】
このようなインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクなどが広く用いられている。しかし、前記溶剤系インクは、有機溶剤の蒸発による環境への影響が懸念される。前記紫外線硬化型インクは、安全性の面から使用する重合性モノマーの選択肢が限られる。
そこで、環境負荷が少なく、浸透性記録媒体に直接記録できる水性インクを含むインクセットが提案されている。
【0004】
一方、インクジェット記録装置において、光沢制御の機能を有するものが開発されている。例えば、熱可塑性樹脂粒子を含むインクをノズルから着弾対象に向けて噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記着弾対象に着弾したインク滴を加熱する加熱手段と、を備え、前記加熱手段は、前記インク滴の表面の膜化が開始する最低成膜温度に応じた膜化制御温度で加熱することで前記インク滴の表面の膜化の度合いを制御する液体噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低光沢(マット調)及び高光沢(グロス調)の光沢度差、耐擦過性、耐候性及び乾燥性に優れるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクジェット印刷装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、低光沢(マット調)及び高光沢(グロス調)の光沢度差、耐擦過性、耐候性及び乾燥性に優れるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の画像形成方法を実施する画像形成装置の一例を示す図である。
図2図2は、図1の画像形成装置のメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法)
本発明のインクジェット印刷装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であり、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
本発明のインクジェット印刷装置は、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを用いることで低光沢(マット)印刷領域と、高光沢(グロス)印刷領域とを有する印刷物を得ることが可能である。
また、本発明のインクジェット印刷装置は、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクを用いて画像形成することが可能であり、前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が10質量%以上であることで、耐候性、耐擦過性を向上することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置は、水系インクが、沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が1質量%以上3質量%以下であることで、耐候性、耐擦過性を向上することができる。
【0011】
本発明のインクジェット印刷装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱し、前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であり、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0012】
本発明のインクジェット印刷方法は、樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して印刷層を形成する工程と、樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱工程において、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0013】
本発明のインクジェット印刷方法は、樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して印刷層を形成する工程と、樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たし、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0014】
従来から、紫外線の照射によって硬化するクリアインク(UVクリアインク)を使用したインクジェット記録装置においては、照射光量を制御することにより、低光沢(マット調)や高光沢(グロス調)に光沢制御できる光沢制御方法が提案されている。しかしながら、UVクリアインクは臭気が強いことが課題であり、印刷物にも臭気が残るので、室内用途の印刷物には不向きである。このため、インクジェット印刷装置の設置場所も、排気ができる環境が必要となり、設置場所が限られてしまう。また、UVクリアインクは紫外線照射装置が必要であり、装置の大型化やコストが高くなるという問題がある。
【0015】
特許文献1の従来技術では、浸透性記録媒体に水系インクで印字を行う場合、水系インクが生地にしみこむためグロス調の印字ができないという問題があり、また、生産性を上げるために乾燥性を向上させたインクを使用すると、被印刷物の表面にインク膜が定着するため耐擦過性に劣るという問題がある。
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、特許文献1の従来技術では、色材を含むカラーインクを用いて加熱手段により、インク滴の表面の膜化が開始する最低成膜温度に応じた膜化制御温度で加熱することによりインク滴の表面の膜化の度合いを制御して光沢度を調整しているが、色材を含むカラーインクは色材を含まないクリアインクに比べて、十分な光沢度差が得られず、低光沢(マット調)及び高光沢の両方の光沢制御に対応できないという知見に基づくものである。
【0016】
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、樹脂及び有機溶剤を含む非水系クリアインクを用いて、加熱温度の制御により高光沢(グロス調)及び低光沢(マット調)の両方の光沢制御を行う。低光沢(マット)付与を行う場合は、印刷時の温度は、高光沢(グロス光沢)付与モードに比べて、高い温度で印刷を行う。印刷時の温度が高いため、樹脂を含んだ非水系クリアインクは、ドットの濡れ広がりが抑制され、隣接ドットの合一が抑制され、かつドット球の高さ(パイルハイト)が高いドットが形成される。これらのドットが、表面凹凸を形成し、低光沢(マット光沢)を付与する。
高光沢付与を行う場合は、低光沢付与モードに比べ、低い温度で印刷を行う。印刷時の温度が低いため、樹脂を含んだ非水系クリアインクは、ドットの濡れ広がり、隣接ドットの合一が促進されて平滑な表面が形成されて、高光沢(グロス光沢)が付与される。
【0017】
画像形成は、樹脂、有機溶剤、水を含有する水系インクを用いて行うことができる。色材を有する水系樹脂インクをカラーインクとして用いて印刷することが好ましい。あらかじめカラーインクで印刷した記録媒体表面に対して高光沢(グロス調)印字を行うことで、非水系クリアインクの層が被印刷物の表面を覆い、耐擦過性が向上する。
【0018】
本発明のインクジェット印刷装置は、樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを用い、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢(マット)印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢(グロス)印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱することにより、又は低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすことにより、低光沢(マット調)及び高光沢(グロス調)の両方の光沢制御に対応できる。
【0019】
本発明のインクジェット印刷装置の加熱手段は、被印刷物の温度が、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱することが好ましく、次式、Tmatte-Tgloss≧20℃、を満たすように加熱することがより好ましい。また、加熱手段の温度HT(℃)としては、低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすこと、HTmatte>HTgloss≧10℃を満たすことが好ましく、HTmatte>HTgloss≧20℃を満たすことがより好ましい。これにより、低光沢印刷モードでは加熱温度を高くして、ドットの濡れ広がりを抑制して、パイルハイトが高いドットを形成して、凹凸の大きな表面を形成する。一方、高光沢印刷モードでは、加熱温度を低くして、ドットの濡れ広がりを促進し、隣接ドットの合一により、平滑な表面を形成することができる。加熱手段の温度HT(℃)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段の設定温度を用いることができる。
【0020】
低光沢印刷モードの印刷部の被印刷物の温度Tmatte(℃)は、50℃以上が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。高光沢印刷モードの印刷部の被印刷物の温度Tgloss(℃)は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)は、50℃以上が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。このような温度範囲とすることで、非水系クリアインクを用いた各印刷モードにおいて、大きな光沢度の変化を実現することができる。
印刷部の被印刷物の温度の測定は、例えば、被印刷物としての記録媒体に熱電対を設置し、直接、記録媒体温度を測定する方法、記録媒体を加熱するヒーターの温度を測定し記録媒体温度とする方法、放射型温度計等により非接触的に記録媒体の周囲の温度を測定し、記録媒体温度とする方法などが挙げられる。
【0021】
本発明においては、低光沢印刷モードで印刷する低光沢(マット)印刷画像の印刷率をDmatteとし、高光沢印刷モードで印刷する高光沢(グロス)印刷画像の印刷率をDglossとすると、次式、Dgloss>Dmatte、を満たすことが好ましく、次式、Dgloss-Dmatte>10%、を満たすことがより好ましい。印刷率が高い方が、平滑表面が形成されやすいため、高光沢印刷モードでは印刷率が高い画像にする。一方、低光沢印刷モードでは、印刷率が高いと、隣接ドットの合一が発生し、表面凹凸が形成されにくくなるため、印刷率が低い画像とする。ここで、印刷率は下記を意味する印刷率(%)=クリアインク印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(ただし、前記式中、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷したドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。なお、同じドット位置となるようにクリアインクを重ねて印刷する場合には、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷した合計のドット数で表す。)
なお、印刷率100%とは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
【0022】
<インク収容部>
前記インク収容部は、非水系クリアインク及び水系インクを収容する。
前記インク収容部としては、インクを収容できる部材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク収容容器、インクタンクなどが挙げられる。
前記インク収容容器としては、前記非水系クリアインク及び前記水系インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
前記インクタンクとしては、メインタンク、サブタンクなどが挙げられる。
【0023】
<吐出ヘッド>
吐出ヘッドは、被印刷物にインクを付与して印刷層を形成する。
吐出ヘッドは、ノズルプレート、加圧室、及び刺激発生手段を有する。
【0024】
-ノズルプレート-
ノズルプレートは、ノズル基板と、前記ノズル基板上に撥インク膜とを有する。
【0025】
-加圧室-
前記加圧室は、前記ノズルプレートに設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
【0026】
-刺激発生手段-
前記刺激発生手段は、インクに印加する刺激を発生する手段である。
前記刺激発生手段における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱(温度)、及び圧力が好ましい。
前記刺激発生手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインク膜の沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0027】
前記刺激が「熱」の場合、前記インク吐出ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズルプレートの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記インク吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記インク吐出ヘッドの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加してインクを飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0028】
<加熱手段>
加熱手段は、被印刷物を加熱する。加熱手段としては、被印刷物としての記録媒体の印刷面や裏面を加熱及び乾燥する手段が含まれる
前記加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
被印刷物としての記録媒体を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクが付与された記録媒体に乾燥手段として温風等の加熱された流体を接触させる方法、インクが付与された記録媒体と加熱部材とを接触させ伝熱により加熱する方法、赤外線や遠赤外線等のエネルギー線を照射することによりインクが付与された記録媒体を加熱する方法などが挙げられる。
前記加熱は、印刷前、印刷中、及び印刷後の少なくともいずれかに行うことができる。
印刷前、印刷中の加熱により、加温したメディアに印刷することが可能となり、印刷後の加熱では、印刷物を乾燥することができる。
加熱時間は、記録媒体の表面温度が所望温度に制御することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
加熱時間の制御は、被印刷物としての記録媒体の搬送速度を制御することにより行うことが好ましい。
【0030】
<非水系クリアインク>
前記非水系クリアインクとは、実質的に色材及び水を含まない無色透明の非水系インクであり、溶媒として有機溶剤を含むインクを意味する。
実質的に色材を含まないとは、色材の含有量が0.5質量%未満であることを意味し、実質的に水を含まないとは、水の含有量が1質量%未満であることを意味する。前記非水系クリアインクは、不純物としての色材及び水を含有することができる。
前記非水系クリアインクとしては、樹脂及び有機溶剤を含有し、界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0031】
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、アクリル-シリコーン樹脂などが挙げられる。
インクを製造する際には、これらの樹脂からなる樹脂粒子として添加するのが好ましい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、インクに添加してもよい。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記樹脂としては、非水系のエマルジョン型ポリマー粒子も樹脂として用いることができる。非水系のエマルジョン型ポリマー粒子とは、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂等の粒子が有機溶剤中に安定に分散している分散液のことである。
前記非水系のエマルジョン型ポリマー粒子として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三洋化成工業株式会社製の「サンプレンIB-501」、「サンプレンIB-F370」等のポリウレタン樹脂、ハリマ化成社製の「N-2043-60MEX」、「N-2043-AF-1」等のアクリルポリオール樹脂などが挙げられる。
【0033】
前記非水系クリアインクに含まれる前記樹脂の含有量としては、9質量%以上が好ましく、9質量%以上25質量%以下がより好ましい。前記含有量が9質量%以上であると、非水系クリアインクが少ない量でも、低光沢(マット光沢)及び高光沢(グロス光沢)を制御できる。前記含有量が25質量%以下であると、インクの吐出安定性が向上する。
【0034】
低光沢(マット光沢)の印刷物は、ドット球の高さ(パイルハイト)の高い孤立ドットを形成し、表面に凹凸を付与し、低光沢(マット調)とすることにより実現される。
前記非水系クリアインク中の樹脂の含有量が多いと、パイルハイトが高いドットが形成されやすくなり、低光沢の印刷物を得やすい点から好ましい。
一方、高光沢(グロス光沢)の印刷物は、表面の凹凸を非水系クリアインクで埋めて、平滑表面を形成することで、平滑性を付与する。表面の凹凸を非水系クリアインクで埋めるには、非水系クリアインク中の樹脂の含有量が多いほうが、少ない非水系クリアインク量で、表面の凹凸を埋めることができ、高光沢の印刷物を得やすい点から好ましい。
【0035】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、アルキレングリコールエーテル化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、常温常圧下で液体である点から、アルキレングリコールエーテル化合物、アルキレングリコールモノエーテル化合物、及びラクトン化合物を1種類以上含むことが好ましい。
【0036】
前記アルキレングリコールエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、メチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルなどが挙げられる。前記アルキレングリコールエーテル化合物は、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。また、片方の水酸基だけを置換したモノエーテル型と両方の水酸基を置換したジエーテル型があり、これらを組み合わせて用いることができる。
【0037】
前記アルキレングリコールモノエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記アルキレングリコールジエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記ラクトン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
その他の非水系溶媒として、例えば、乳酸エステル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、2-ブトキシエチルアセテート(BMGAC)、プロピレンジグリコールアセテート(PGDA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、3-メトキシ-n-ブチル-アセテート(MBA)、1-ブトキシ-2-プロパノール(PNB)、2-オクタノンなどが挙げられる。
【0040】
前記非水系クリアインク中に含まれる前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0041】
<界面活性剤>
非水系クリアインクは、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤をインクに添加することで、表面張力が低下し、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。
界面活性剤は、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、両性に分類される。
また、疎水基の構造により、フッ素系、シリコーン系、アセチレン系等に分類される。
本発明においては、主にフッ素系界面活性剤を用いるが、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下が更に好ましい。界面活性剤の含有量を2質量%以下とすることにより、低光沢(マット光沢)印刷モードにおいて、大きな光沢度低下が得られる。
【0042】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するもの等の高pHでも分解しないものなどが挙げられる。
前記シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0044】
前記シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることができ、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0045】
[一般式(S-1)]
(但し、前記一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0046】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社製)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられ、これらは、起泡性が小さいことから好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0048】
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0049】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0050】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、起泡性が少ないことから、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が好ましく、下記一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表される化合物がより好ましい。
【0052】
[一般式(F-1)]
前記一般式(F-1)で表される化合物において、mは、0~10の整数が好ましく、nは、0~40の整数が好ましい。
【0053】
[一般式(F-2)]
CnF2n+1-CHCH(OH)CH-O-(CHCHO)a-Y
前記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0054】
前記フッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも旭硝子株式会社製)、フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも住友スリーエム株式会社製)、メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれもDIC株式会社製)、ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれもChemours社製)、FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(いずれもオムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印刷品質、発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、及び均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが好ましい。
【0055】
<その他の成分>
前記非水系クリアインクに含まれる前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0056】
-消泡剤-
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0057】
-防腐防黴剤-
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0058】
-防錆剤-
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0059】
-pH調整剤-
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0060】
前記非水系クリアインクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
前記非水系クリアインクの25℃での粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷濃度及び文字品位が向上し、良好な吐出安定性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
前記粘度としては、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用し、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の測定条件で測定可能である。
【0062】
前記非水系クリアインクの25℃での表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
【0063】
前記非水系クリアインクのpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7以上12以下が好ましく、8以上11以下がより好ましい。
【0064】
<水系インク>
前記水系インクとしては、樹脂、有機溶剤及び水を含有し、色材、及び界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記水系インクは、樹脂の含有量が10質量%以上である。これにより耐候性、耐擦過性を向上することができる。
前記水系インクは、沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が1質量%以上3質量%以下である。前記含有量が、1質量%以上であると、耐候性を向上することができ、前記含有量が、3質量%以下であると、耐擦過性を向上することができる。
【0065】
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。これらの中でも、ポリウレタン樹脂が好ましい。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとの反応性生物であり、凝集力が弱いポリオール成分からなるソフトセグメントと、凝集力の強いウレタン結合からなるハードセグメントのそれぞれの性能を発揮する。前記ソフトセグメントは、やわらかく、引き伸ばしや折り曲げなど基材の変形に強く、前記ハードセグメントは、基材に対する密着性が高く、耐摩耗性に優れる。
【0067】
前記ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0068】
前記樹脂の含有量としては、乾燥性の点から、10質量%以上であり、35質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0069】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラックWave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0070】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては、沸点240℃以上の有機溶剤を含み、必要に応じて沸点が240℃未満のその他の有機溶剤を含むことができる。前記水系インクが、沸点240℃以上の有機溶剤を含むことで、壁紙、キャンバス生地への十分な定着性を確保することができとともに、ノズル近傍での乾燥を抑えて吐出不良を軽減することができる。
【0071】
前記沸点240℃以上の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン(沸点:290℃)、ジエチレングリコール(沸点:244.8℃)、ブチルカルビトールアセテート(沸点:246.8℃~247℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点:241℃~249℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:247℃)、2-ピロリドン(沸点:245℃)、などが挙げられる。
【0072】
前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量としては、1質量%以上3質量%以下であり、1.2質量%以上2質量%以下が好ましい。前記含有量が、1質量%以上であると、耐候性を向上することができ、前記含有量が、3質量%以下であると、耐擦過性を向上することができる。
【0073】
前記その他の有機溶剤としては、特に制限はなく、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0074】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
270℃以上の有機溶剤の組成について、インク組成のうち6%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
【0075】
<水>
前記水の含有量としては、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、1質量%以上であり、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0076】
<色材>
前記色材としては、例えば、顔料、染料を使用可能である。
【0077】
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどが挙げられる。前記公知の方法とは、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの方法が挙げられる。
有機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0078】
前記顔料の黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
【0079】
前記染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0080】
前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性や吐出安定性の点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0081】
前記顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については、特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度は20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0083】
<その他の成分>
前記水系インクに含まれる前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
前記水系インクに含まれる前記その他の成分としては、前記非水系クリアインクに用いられるその他の成分と同じものを用いることができる。
【0084】
前記水系インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0085】
前記水系インクの25℃での粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷濃度及び文字品位が向上し、良好な吐出安定性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、6.5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
前記水系インクの40℃での粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷濃度及び文字品位が向上し、良好な吐出安定性が得られる点から、6.5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましい。
前記粘度としては、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用し、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の測定条件で測定可能である。
【0086】
前記水系インクの25℃での表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
【0087】
前記水系インクのpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7以上12以下が好ましく、8以上11以下がより好ましい。
【0088】
<被印刷物>
被印刷物としては、記録媒体として用いられるものに限られず、例えば、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツ等の衣料用布、テキスタイル、皮革などを適宜使用することができる。なお、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、被印刷物としてセラミックス、ガラス、金属などを使用することもできる。
記録媒体としては、特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0089】
本発明においては、低光沢印刷モードでは、光沢度が高い被印刷物を用いることが好ましい。光沢度が高い被印刷物の方がクリアインクによる低光沢効果が強調されやすい点から好ましい。
一方、高光沢印刷モードでは、光沢度が低い被印刷物を用いることが好ましい。光沢度が低い被印刷物の方がクリアインクによる高光沢効果が強調されやすい点から好ましい。
したがって、低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たすことが好ましく、Gmatte-Ggloss≧100を満たすことがより好ましい。
【0090】
(印刷画像の光沢度制御方法)
本発明に関わる印刷画像の光沢度制御方法としては、
被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含む印刷画像の光沢度制御方法であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有する水系クリアインクであり、
前記印刷画像の光沢度制御方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モー
ド及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を高くする制御を行い、
前記高光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を低くする制御を行う。
【0091】
(印刷物)
本発明に関する印刷物は、被印刷物と、前記被印刷物上に印刷層とを有する印刷物であって、前記印刷層が樹脂を含むクリアインク層からなり、
前記印刷物が、低光沢(マット光沢)印刷モードで印刷する低光沢(マット)印刷画像と、高光沢(グロス光沢)印刷モードで印刷する高光沢(グロス)印刷画像とを有し、
前記高光沢(グロス)印刷画像の60°光沢度Gaと、高光沢(グロス光沢)印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gbとの光沢度差(Ga-Gb)が20以上であり、
前記低光沢(マット)印刷画像の60°光沢度Gcと、低光沢(マット光沢)印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gdとの光沢度差(Gc-Gd)が-20以下である、インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法により画像形成して印刷物とすることができる。
【0092】
以下の本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法の説明では、ブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを用いた場合について説明するが、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、水系クリアインクを用いることができる。
本発明で用いられる水系クリアインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
インクジェット印刷装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、インクジェット印刷装置には、卓上型だけでなく、広幅の記録装置や、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
本発明において、インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法とは、記録媒体に対してインク及び各種処理液等を吐出することが可能な装置、前記装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インク及び各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
前記インクジェット印刷装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
また、前記インクジェット印刷装置及び前記インクジェット印刷記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、前記インクジェット印刷装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、前記インクジェット印刷装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0093】
前記インクジェット印刷装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、前記インクジェット印刷装置の斜視説明図である。図2は、メインタンクの斜視説明図である。前記インクジェット印刷装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱可能に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0094】
前記インクジェット印刷装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0095】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0096】
インクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字、画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段、乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物及び構造体に対して、加熱延伸、打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーター、操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0097】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0098】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0099】
(製造例1)
-非水系クリアインクAの製造-
市販のウレタン樹脂液(サンプレンIB-F370、三洋化成工業株式会社製、不揮発分:40質量%、非水系、溶媒:メトキシプロパノールとイソプロパノールの混合溶媒)19.5質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテル55質量%、γ-ブチロラクトン13.1質量%、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10質量%、シリコーン系界面活性剤(BYK-UV3500、BYK社製)0.6質量%、及びアセチレングリコール系界面活性剤(E-1010、日信化学工業株式会社製)1.8質量%を添加し、混合撹拌して混合物を調製した。
次いで、得られた混合物を、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルター(商品名:BetafineポリプロピレンプリーツフィルターPPGシリーズ、3M社製)にてろ過することにより、非水系クリアインクAを作製した。
【0100】
(製造例2~3)
-非水系クリアインクB~Cの製造-
製造例1において、表1に示すインク組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、非水系クリアインクB~Cを作製した。
【0101】
【表1】
【0102】
前記表1中の各成分の詳細については、以下のとおりである。
・ウレタン樹脂液(サンプレンIB-F370、三洋化成工業株式会社製、不揮発分:40質量%、非水系、溶媒:メトキシプロパノールとイソプロパノールの混合溶媒)
・アクリル樹脂液(N-2043-60MEX、ハリマ化成工業株式会社製、不揮発分:60質量%)
・シリコーン系界面活性剤(BYK-UV3500、BYK社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤(E-1010、日信化学工業株式会社製)
【0103】
(調製例1)
-ウレタン樹脂エマルジョンAの調製-
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌器を備えた窒素置換された容器中で、2倍量のポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD-X-2251、DIC株式会社製、平均分子量2,000)200.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g、イソホロンジイソシアネート48.0g、有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1gを、DMTDL(ジブチルスズジラウレート)0.06gを触媒として使用し反応させた。前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。前記反応物の平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール1.4gを投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4g加えて、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで、水715.3gを加えて十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、ウレタン樹脂エマルジョンAを得た。
得られたウレタン樹脂エマルジョンAについて、造膜温度試験装置(株式会社井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は、74℃であった。
【0104】
(調製例2)
-ウレタン樹脂エマルジョンBの調製-
攪拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と称することがある)220g、及びN-メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することがある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られたイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを80℃まで冷却し、トリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強攪拌下で水5,400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500gを投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、ウレタン樹脂エマルジョンBを得た。
得られたウレタン樹脂エマルジョンBについて、造膜温度試験装置(株式会社井元製作所製)で測定したところ、最低造膜温度は、55℃であった。
【0105】
(調製例3)
-アクリル系樹脂エマルジョンAの調製-
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、ラテムルS-180を17.5g、及びイオン交換水350gを加えて混合し、65℃に昇温した。昇温後、反応開始剤であるt-ブチルパーオキソベンゾエート3.0g、及びイソアスコルビン酸ナトリウム1.0gを加え、5分後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸-2-エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、ビニルトリエトキシシラン15g、ラテムルS-180を8.0g、及びイオン交換水340gを混合し、3時間かけて滴下を行った。その後、80℃で2時間加熱熟成を行った後、常温まで冷却し、水酸化ナトリウムでpHを7~8に調整した。エバポレータを用いてエタノールを留去し、水分を調節して固形分40質量%のアクリル系樹脂エマルジョンAを作製した。
得られたアクリル系樹脂エマルジョンAについて、造膜温度試験装置(株式会社井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は、95℃であった。
【0106】
(調製例4)
-アクリル系樹脂エマルジョンBの調製-
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900質量部、及びラウリル硫酸ナトリウム1質量部を加え、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。反応容器内の温度を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム4質量部を添加して溶解し、溶解後にイオン交換水450質量部、ラウリル硫酸ナトリウム3質量部、アクリルアミド20質量部、スチレン365質量部、ブチルアクリレート545質量部、及びメタクリル酸10質量部を撹拌下で加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下の終了後に3時間保持し、得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整して固形分30質量%のアクリル系樹脂エマルジョンBを得た。
得られたアクリル系樹脂エマルジョンBについて、造膜温度試験装置(株式会社井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は、85℃であった。
【0107】
(製造例4)
-水系インクA(ブラックインクA)の製造-
ブラック顔料(カーボンブラック)3質量部、分散剤(パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製)0.5質量部、及びジエチレングリコールジエチルエーテル58.5質量部をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で3時間循環分散して、ブラック顔料分散体を得た。
【0108】
次に、得られたブラック顔料分散体18.7質量部、前記ウレタン樹脂エマルジョンA17.1質量部、ウレタン樹脂エマルジョンB20.6質量部、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPD)(東京化成株式会社製)0.3質量部、グリセリン1.2質量部、イソプレングリコール29.0室両部、シリコーン系界面活性剤KF-643(信越化学工業株式会社)0.8質量部、消泡剤サーフィノールAD01(日信化学工業株式会社製)0.2質量部、高純水を加えて全体を100質量部とし、混合撹拌して、混合物を調製した。得られた混合物を、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルター(商品名:BetafineポリプロピレンプリーツフィルターPPGシリーズ、3M社製)にてろ過することにより、水系インクA(ブラックインクA)を作製した。
【0109】
(製造例5~10)
-水系インクB~G(ブラックインクB~G)の製造-
製造例4において、表2及び表3に示す組成に変更した以外は、製造例4と同様にして、水系インクB~G(ブラックインクB~G)を作製した。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
(実施例1)
インクジェットプリンターGXe5500改造機(株式会社リコー製)のインクカートリッジに製造例1の非水系クリアインクA、製造例4の水系インクA(ブラックインクA)を充填し、インクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンターGXe5500改造機に装着して、水系インクA(ブラックインクA)を用いてインクジェット印刷を実施した。
その後、非水系クリアインクAを用いてインクジェット印刷を実施した。インクジェットプリンターGXe5500改造機には、印刷前、印刷中、及び印刷後において記録媒体を裏面から加熱することができるように、ヒーター(温度調節コントローラ、型式MTCD、株式会社ミスミ製)を設けた。これにより、印刷前、及び印刷中においてヒーターにより加熱された記録媒体に印刷が可能となり、印刷後においてヒーターにより印刷物の加熱乾燥が可能となる。高光沢(グロス光沢)印刷モード及び低光沢(マット光沢)印刷モードで記録媒体の種類、加熱条件、及び印刷画像を変更して印刷を実施した。
【0113】
-記録媒体-
高光沢(グロス光沢)印刷モードでは、記録媒体1として、株式会社ユポ・コーポレーション製合成紙VJFN160(白色ポリプロピレンフィルム、光沢度16(60°光沢値))を使用した。
低光沢(マット光沢)印刷モードでは、記録媒体2として、リンテックサインシステム株式会社製ウインドウフィルムGIY-0305(透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、光沢度159(60°光沢値))を使用した。
【0114】
-カラー印刷条件-
カラー印刷では、印刷前、印刷中、及び印刷後に配置した各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を45℃、45℃、及び60℃に設定し、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像を印刷した。
【0115】
-非水系クリアインクの加熱条件-
非水系クリアインクの加熱条件としては、高光沢(グロス光沢)印刷モードでは、印刷前、印刷中、及び印刷後に配置した各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を45℃、45℃、及び60℃に設定し、低光沢(マット光沢)印刷モードでは、印刷前、印刷中、及び印刷後に配置した各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を65℃、65℃、及び70℃に設定した。
印刷中の記録媒体の温度を測定すると、高光沢(グロス光沢)印刷モードの記録媒体温度(Tgloss)は45℃であり、印刷中の高光沢(グロス光沢)印刷モードにおける加熱手段の温度(HTgloss)は45℃である。また、印刷中の記録媒体の温度を測定すると、低光沢印刷モードの記録媒体温度(Tmatte)は64℃であり、印刷中の低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(HTmatte)は65℃である。
印刷中の記録媒体の温度の測定は、デジタル放射温度センサ(FT-H10、株式会社キーエンス製)により行った。高光沢(グロス光沢)印刷モードで印刷した画像は、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像であった。
【0116】
-印刷率-
なお、印刷率については、ここでは、下記を意味する。
印刷率(%)=クリアインク印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(ただし、前記式中、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷したドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。同じドット位置となるようにクリアインクを重ねて印刷する場合には、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷した合計のドット数で表す。)
記録媒体上に非水系クリアインクAを、直接、同じドット位置に重なるように1回重ね塗りすることにより印刷した。次に、得られた印刷物について、以下のようにして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表4に示す。
【0117】
<光沢度>
非水系クリアインクAを印刷したクリアインク印刷部、及び非水系クリアインクAを印刷していないクリアインク未印刷部(記録媒体)のそれぞれの60°光沢値を、光沢度測定機器(マイクロトリグロス、BYK社製)を用いて測定した。なお、60°光沢値を光沢度とした。(評価方法)クリアインク印字部とクリアインク未印刷部(記録媒体)の光沢度差を以下の基準で評価した。〇が実用可能な範囲である。
(評価基準)
○:光沢度差20以上
×:光沢度差20未満
【0118】
<耐擦過性>
被印刷物の表面に水系インク(ブラックインク)及び非水系クリアインクを印字し、画像形成した。一時間放置後、形成した前記画像に学振試験機を用いて金巾を擦過させ、金巾へ転写した画像濃度(OD)を、xRite(PANTONE製)を用いて測定し、耐候性を評価した。印字条件は600×600dpi、荷重は200gf、擦過回数は25回とした。下記評価基準で、△以上が実用可能な範囲であり、○が好ましい。
(評価基準)
○:0.15未満
△:0.15以上0.28未満
×:0.28以上
【0119】
<耐候性>
被印刷物の表面に水系インク(ブラックインク)及び非水系クリアインクを印字し、画像形成した。形成した画像をウェザーメーター(SX75)に設置し、出力180W/m、総受光量324MJ/m、露光時間500時間の条件で露光した。露光前後で画像濃度(OD)を測定し、OD変化を下記の基準で評価した。〇が実用可能な範囲である。
(評価基準)
○:0.1未満
×:0.1以上
【0120】
<乾燥性>
被印刷物の表面に水系インク(ブラックインク)及び非水系クリアインクを印字し、画像形成した。画像形成後30秒毎に、前記インク塗膜表面に、2cm四方に切り取った前記非浸透性被印刷物と同一の被印刷物を押し当てた。押し当て荷重は103g/cm、押し当て時間は10秒とした。前記被印刷物を前記インク塗膜からはがし、前期インク塗膜の転写・剥離がなくなるまでにかかった時間を測定し、下記基準で評価した。下記評価基準で、△以上が実用可能な範囲であり、○が好ましい。
(評価基準)
○:7分未満
△:7分以上9分未満
×:9分以上
【0121】
(実施例2)
実施例1において、非水系クリアインクAを、非水系クリアインクBに変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表4に示す。
【0122】
(実施例3)
実施例1において、非水系クリアインクAを、非水系クリアインクCに変更し、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクB(ブラックインクB)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表4に示す。
【0123】
(実施例4)
実施例1において、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクD(ブラックインクD)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表4に示す。
【0124】
(実施例5)
実施例1において、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクE(ブラックインクE)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表4に示す。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクC(ブラックインクC)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表5に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例1において、非水系クリアインクを使用しない点以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表5に示す。
【0127】
(比較例3)
実施例1において、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクF(ブラックインクF)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表5に示す。
【0128】
(比較例4)
実施例1において、水系インクA(ブラックインクA)を、水系インクG(ブラックインクG)に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性を測定した。結果を表5に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
表4及び表5における実施例1及び比較例2を比較した結果、非水系クリアインクと水系インクの組み合わせによって光沢率、耐擦過性、耐候性、及び乾燥性が向上することが確認された。
表4における実施例1及び実施例2を比較した結果、非水系クリアインク中の樹脂の含有量が少ないほうが、乾燥性が向上することが確認された。
表4における実施例1及び実施例3を比較した結果、実施例1の方が耐擦過性に関して向上することが確認された。
表4及び表5における実施例1及び比較例1を比較した結果、沸点が240℃以上であるグリセリンの含有量が3質量%以下であると、光沢度、耐擦過性及び乾燥性が向上することが確認された。
【0132】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱手段が、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、
前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、
前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、
前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置である。
<2> 前記加熱手段が、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱する前記<1>に記載のインクジェット印刷装置である。
<3> インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱し、
前記インクが、樹脂及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクと、樹脂、有機溶剤及び水を含有する水系インクと、を有し、
前記水系インクに含まれる樹脂の含有量が、10質量%以上であり、
前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点240℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点240℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置である。
<4> 前記低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、前記高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<5> 前記非水系クリアインクに含まれる有機溶剤が、アルキレングリコールジエーテル化合物、アルキレングリコールモノエーテル化合物、及びラクトン化合物から選択される少なくとも1種である前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<6> 前記非水系クリアインクに含まれる樹脂の含有量が、9質量%以上である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<7> 前記非水系クリアインクに含まれる樹脂の含有量が、9質量%以上20質量%以下である、前記<6>に記載のインクジェット印刷装置である。
<8> 前記非水系クリアインクが更に界面活性剤を含有し、前記界面活性剤の含有量が2質量%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<9> 前記水系インクの40℃における粘度が6.5mPa・s以上である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<10> 前記水系インクに含まれる有機溶剤が沸点270℃以上の有機溶剤を含み、前記沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が、1質量%以上3質量%以下である、前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<11> 樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して画像を印刷する工程と、
樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、
前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、
低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱するインクジェット印刷方法である。
<12> 樹脂を10質量%以上、沸点240℃以上の有機溶剤を1質量%以上3質量%以下、及び水を含有する水系インクを、被印刷物に付与して印刷層を形成する工程と、
樹脂、及び有機溶剤を含有する非水系クリアインクを、被印刷物に付与する工程と、
前記被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を有し、
低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、前記非水系クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱するインクジェット印刷方法である。
【0133】
前記<1>から<10>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置、及び前記<11>から<12>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0134】
400 画像形成装置
401 外装
401c カバー
404 カートリッジホルダ
410、410k、410c、410m、410y メインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
L インク収容容器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特開2015-3397号公報
図1
図2