(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043845
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】エッチング処理方法およびエッチング処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
H01L21/302 104C
H01L21/302 101C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135483
(22)【出願日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】17/477,144
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三好 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ピカ ニック
(72)【発明者】
【氏名】阿部 高廣
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA03
5F004BB05
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA01
5F004CA03
5F004CA04
5F004CA06
5F004CB12
5F004DA01
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB12
5F004EA28
(57)【要約】
【課題】エッチング量の高精度な制御と、カーボン系材料に対する選択性を実現する等方性エッチング技術を提供する。
【解決手段】窒化チタン膜1が形成されたウエハ8を真空容器11内部の処理室7内のウエハステージ9上に載置し、ウエハに塩素ラジカルを供給して、窒化チタン膜の表面に改質層6を形成する工程と、ウエハを加熱し、改質層を脱離除去させる工程とを有し、改質層を形成する工程と改質層を脱離除去させる工程とを繰り返すことにより、窒化チタン膜をエッチングする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに形成された窒化チタン膜をエッチングするエッチング処理方法であって、
前記ウエハを真空容器内部の処理室内のウエハステージ上に載置し、
前記ウエハに塩素ラジカルを供給して、前記窒化チタン膜の表面に改質層を形成する工程と、
前記ウエハを加熱し、前記改質層を脱離除去させる工程とを有し、
前記改質層を形成する工程と前記改質層を脱離除去させる工程とを繰り返すエッチング処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ウエハの温度を30℃以下として、前記窒化チタン膜の表面に前記改質層を形成するエッチング処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記ウエハと前記ウエハステージとの間にヘリウムガスを供給しながら、前記窒化チタン膜の表面に前記改質層を形成するエッチング処理方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記改質層は、チタン、窒素、酸素ならびに塩素を含む化合物の層であるエッチング処理方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記真空容器内部に塩素原子を含むガスを導入し、前記真空容器内部にプラズマを発生させることにより前記塩素ラジカルを生成するエッチング処理方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記改質層を形成する工程に先立って、前記ウエハを加熱しつつ、前記ウエハにフッ化水素ガスを供給して、前記ウエハ表面の自然酸化膜を除去する工程を有するエッチング処理方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記ウエハの上方から前記ウエハに可視光から赤外光領域の光を主とする光を照射することにより、前記ウエハを加熱するエッチング処理方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記改質層を形成する工程において、前記ウエハに供給されるガスには、酸素ガス、ラジカルまたはオゾンのいずれも含まれないエッチング処理方法。
【請求項9】
処理室と前記処理室の上方に設けられたプラズマ源とを内部に備える真空容器と、
前記処理室内に設けられ、窒化チタン膜が形成されたウエハが載置されるウエハステージと、
前記プラズマ源に塩素原子を含むガスを供給する第1のマスフローコントローラーと、
前記ウエハを加熱する加熱装置と、
前記窒化チタン膜のエッチング処理を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記第1のマスフローコントローラーで供給流量が調整された前記塩素原子を含むガスを前記プラズマ源に導入し、前記プラズマ源にプラズマを発生させることにより、生成された塩素ラジカルを前記ウエハに供給して、前記窒化チタン膜の表面に改質層を形成する工程と、前記加熱装置により前記ウエハを加熱して前記改質層を脱離除去させる工程とを繰り返し実行するエッチング処理装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記制御部は、前記窒化チタン膜の表面に前記改質層を形成する工程において、前記ウエハの温度を30℃以下とするエッチング処理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記ウエハと前記ウエハステージとの間にヘリウムガスを供給する第2のマスフローコントローラーを有し、
前記制御部は、前記窒化チタン膜の表面に前記改質層を形成する工程において、前記第2のマスフローコントローラーで供給流量が調整された前記ヘリウムガスを前記ウエハと前記ウエハステージとの間に導入するエッチング処理装置。
【請求項12】
請求項9において、
前記改質層は、チタン、窒素、酸素ならびに塩素を含む化合物の層であるエッチング処理装置。
【請求項13】
請求項9において、
前記処理室にフッ化水素ガスを供給する第3のマスフローコントローラーを有し、
前記制御部は、前記改質層を形成する工程に先立って、前記加熱装置により前記ウエハを加熱しつつ、前記第3のマスフローコントローラーで供給流量が調整された前記フッ化水素ガスを前記ウエハに供給して、前記ウエハ表面の自然酸化膜を除去するエッチング処理装置。
【請求項14】
請求項9において、
前記加熱装置は、前記ウエハの上方から前記ウエハに可視光から赤外光領域の光を主とする光を照射するランプを備えるエッチング処理装置。
【請求項15】
請求項9において、
前記改質層を形成する工程において、前記ウエハに供給されるガスには、酸素ガス、ラジカルまたはオゾンのいずれも含まれないエッチング処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化チタン膜のエッチング処理方法およびエッチング処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの分野では、低消費電力化や記憶容量増大に対する要求のため、更なる微細化、およびデバイス構造の3次元化が進んでいる。3次元構造のデバイスは2次元構造のデバイスに比べ構造が立体的で複雑であり、その製造には、ウエハ面に対して垂直方向にエッチングを行う垂直性(異方性)エッチングに加え、ウエハ面に対して横方向にもエッチングが可能な等方性エッチングが多用されている。
【0003】
等方性エッチングは、従来は薬液を用いたウエット処理により行っていたが、微細化の進展により、薬液の表面張力によるパターン倒れや微細な隙間のエッチング残りの問題が顕在化している。そのため、等方性エッチングでは、従来の薬液を用いたウエット処理から、薬液を用いないドライ処理に置き換える傾向が強まっている。
【0004】
特許文献1は、窒化チタン膜のドライエッチングの一例として、プラズマによって反応性ラジカルを生成し、ラジカル照射によって窒化チタン膜表面を改質し、続いて基板を加熱して改質層を脱離、除去することで窒化チタン膜を除去する処理方法を開示する。
【0005】
また非特許文献1は、窒化チタン膜のドライエッチング方法として、表面をチタン酸化膜に改質し、続いて改質層を除去することで窒化チタン膜を除去する処理方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Younghee Lee, et al.「Thermal Atomic Layer Etching of Titanium Nitride Using Sequential, Self-Limiting Reactions: Oxidation to TiO2 and Fluorination to Volatile TiF4」、Chemistry of Materials, 29 (2017) 、p.8202-8210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばFin型FET(FinFET)やGate-All-Around(GAA)デバイスのゲート周りの加工においては、窒化チタン膜をカーボン系材料やシリコン、さらにはシリコン酸化膜に対して、等方的かつ高選択に原子層レベルの制御性でエッチングする技術が求められることが予想される。
【0009】
図1に、その一例として次世代GAAデバイスでの窒化チタン膜1の等方性加工を示す。Si/SiGeナノワイヤ2を覆うように窒化チタン膜1が成膜されており、またゲート構造の一部はカーボン系材料3によって保護されている。これらのゲート構造の下はシリコン酸化膜層4となっている。このエッチング工程においては、窒化チタン膜1を等方的にエッチングし、かつ3次元構造の全面に渡ってエッチング量を高精度かつ均一に制御することが求められている。
【0010】
従来のウエット処理ではエッチング量の高精度な制御が困難であり、また薬液の表面張力によるパターン倒れや微細な隙間のエッチング残りなどが課題となる。また反応性ラジカルによる自発エッチングでは、ラジカルの供給律速によりパターンの上部と下部で窒化チタン膜のエッチングレートが異なり、窒化チタン膜をパターン上で均一に加工することが困難である。
【0011】
さらに、特許文献1や非特許文献1に示された等方性原子層エッチング方法では、窒化チタン膜を改質するためのラジカルに酸素ラジカルまたはオゾンを用いているため、カーボン系材料に対して高選択なエッチングを実現することが困難である。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、エッチング量の高精度な制御と、カーボン系材料に対する選択性を実現できる等方性エッチング処理方法およびエッチング処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施の態様であるエッチング処理方法は、ウエハに形成された窒化チタン膜をエッチングするエッチング処理方法であって、ウエハを真空容器内部の処理室内のウエハステージ上に載置し、ウエハに塩素ラジカルを供給して、窒化チタン膜の表面に改質層を形成する工程と、ウエハを加熱し、改質層を脱離除去させる工程とを有し、改質層を形成する工程と改質層を脱離除去させる工程とを繰り返す。
【0014】
また、本発明の他の一実施の態様であるエッチング処理装置は、処理室と処理室の上方に設けられたプラズマ源とを内部に備える真空容器と、処理室内に設けられ、窒化チタン膜が形成されたウエハが載置されるウエハステージと、プラズマ源に塩素原子を含むガスを供給する第1のマスフローコントローラーと、ウエハを加熱する加熱装置と、窒化チタン膜のエッチング処理を制御する制御部とを有し、制御部は、第1のマスフローコントローラーで供給流量が調整された塩素原子を含むガスをプラズマ源に導入し、プラズマ源にプラズマを発生させることにより、生成された塩素ラジカルをウエハに供給して、窒化チタン膜の表面に改質層を形成する工程と、加熱装置によりウエハを加熱して改質層を脱離除去させる工程とを繰り返し実行する。
【発明の効果】
【0015】
窒化チタン膜の等方性ドライエッチングにおいて、エッチング量の高精度な制御とカーボン系材料に対する高選択性を実現させることが可能となる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】GAAデバイスの製造プロセスにおける、窒化チタン膜の等方性エッチング工程の概略図である。
【
図2】本実施例のエッチング処理手順の概略図である。
【
図3】本実施例のエッチング処理方法における、エッチングレートのラジカル照射時間依存性を示す図である。
【
図5】本実施例のエッチング処理方法のタイムシーケンスである。
【
図6】本実施例のエッチング処理方法における、エッチングレートとラジカル照射時間との関係の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施の形態を説明する。
【0018】
本実施例のエッチング処理手順の概略を
図2に示す。第1のステップとして、処理対象膜である窒化チタン膜1の表面にフッ化水素ガスを供給し、同時に熱エネルギーをウエハに付与してウエハを加熱することで、窒化チタン膜1表面に形成された自然酸化膜5を除去する。第2のステップとして、気相中に残留したフッ化水素ガスを真空排気する。第3のステップとして、真空容器内部に塩素原子を含むガスを導入し、プラズマ装置により真空装置内部にプラズマを発生させて塩素ラジカルを生成して、窒化チタン膜1の表面にチタン、窒素、酸素ならびに塩素を含む化合物の層(改質層)6を形成する。第4のステップとして、気相中に残留した塩素原子を含むガスを真空排気する。第5のステップとして、熱エネルギーをウエハに付与することで改質層6を揮発性の分子へと熱分解させ、脱離させることで窒化チタン膜1をエッチングする。その後、第6のステップとしてウエハを塩素ラジカル照射時の温度まで冷却する。第3から第6のステップを繰り返すことで最終的にエッチング量を所望の値に制御する。
【0019】
第3から第6のステップを1サイクル実行したときの窒化チタン膜1のエッチング量(エッチングレート)の、ラジカル照射時間(第3のステップ時間)への依存性を
図3に示す。このように、ラジカル照射時間の増加につれて、エッチングレートは増加し、一定の値に飽和する。したがって、パターンの上部と下部でラジカル照射直後のエッチングレートの増加に違いがある場合でも、一定のラジカル照射時間を確保することで、パターン内でエッチングレートをそろえること、すなわちパターン内で均一なエッチングが可能となる。
【0020】
また、改質層6を形成する第3のステップでは気相中に酸素ガス、ラジカル、またはオゾンのいずれも含まれないため、カーボン系材料のエッチングを抑制することが可能であり、カーボン系材料に対して高選択に窒化チタン膜をエッチングすることが可能である。
【0021】
図4を用いてエッチング処理装置の全体構成の概略を説明する。処理室7はベースチャンバー(真空容器)11により構成され、その中にはウエハ8を載置するためのウエハステージ9が設置されている。処理室7の上方には、ICP(Inductively Coupled Plasma)放電方式を用いたプラズマ源(ICPプラズマ源)が設置されている。ICPプラズマ源はプラズマによるチャンバー内壁のクリーニングやプラズマによる反応性ガスの生成に用いる。
【0022】
ICPプラズマ源を構成する円筒型の放電管12が、処理室7の上方に設置されており、放電管12の外側にはICPコイル20が設置されている。ICPコイル20にはプラズマ生成のための高周波電源21が、整合機22を介して接続されている。高周波電源21の高周波電力の周波数は13.56MHzなど、数十MHzの周波数帯を用いるものとする。放電管12の上部には天板25が設置されている。天板25の下部にはガス分散板24とシャワープレート23が設置されており、処理ガスはガス分散板24とシャワープレート23を介して放電管12内に導入される。放電管12と高周波電源21とでプラズマ源を構成する。
【0023】
処理ガスはガス種毎に設置されたマスフローコントローラー50によって供給流量が調整される。また、マスフローコントローラー50の下流側にはガス分配器51が設置されており、放電管12の中心付近に供給するガスと外周付近に供給するガスの流量や組成をそれぞれ独立に制御して供給する。これにより、処理ガスの分圧の空間分布を詳細に制御できる。なお
図4ではAr、N
2、CHF
3、CF
4、SF
6、O
2、NF
3、HF、Cl
2、BCl
3、NH
3、H
2、CH
2F
2、CH
3F、CH
3OHを処理ガスとして使用する例を示しているが、他のガスを用いてもよい。
【0024】
処理室7の下部には処理室を減圧するため、真空排気配管16を介して、排気機構15が接続されている。排気機構は例えば、ターボ分子ポンプやメカニカルブースターポンプやドライポンプで構成されるものとするがそれに限られない。また、処理室7の圧力を調整するため、調圧機構14が排気機構15につながる真空排気配管16に設置されている。
【0025】
ウエハステージ9の上部にはウエハ8を加熱するためのIRランプユニットが設置されている。IRランプユニットはIRランプ60、IR光を反射する反射板61、IR光透過窓72を備える。ここでは、IRランプ60にそれぞれサークル型(円形状)のIRランプ60-1、60-2、60-3を用いている。
【0026】
IRランプ60は、可視光から赤外光領域の光を主とする光(ここではIR光と呼ぶ)を放出するものとする。この例では3サークルのIRランプ60-1、60-2、60-3が同心円状に設置されているものとしたが、2サークル、または4サークル以上としてもよい。IRランプ60の上方にはIR光を下方(ウエハ設置方向)に向けて反射するための反射板61が設置されている。
【0027】
IRランプ60にはIRランプ用電源73が接続されており、その途中には高周波電力のノイズがIRランプ用電源73に流入しないようにするための高周波カットフィルタ74が設置されている。また、IRランプ60-1~3に供給する電力を独立に制御する機能がIRランプ用電源73に設けられており、ウエハの加熱量の径方向分布を調節できるようになっている(配線は一部図示を省略した)。
【0028】
IRランプユニットの中央には流路27が形成されている。この流路27にはプラズマ中で生成されたイオンや電子を遮蔽し、中性のガスや中性のラジカルのみを透過させてウエハに照射するための複数の穴の開いたスリット板26が設置されている。
【0029】
ウエハステージ9にはステージを冷却するための冷媒の流路39が内部に形成されており、チラー38によって冷媒が流路39を介して循環供給されるようになっている。また、ウエハ8を静電吸着によって固定するため、板状の電極板30がステージに埋め込まれており、DC電源31が接続されている。
【0030】
また、ウエハ8を効率よく冷却するため、ウエハ8の裏面とウエハステージ9との間にマスフローコントローラー55によって流量調節されたヘリウム(He)ガスが供給できるようになっている。また、ウエハを吸着したまま、加熱・冷却を行って、ウエハの裏面に傷がつかないようにするため、ウエハステージ9の表面(ウエハ載置面)はポリイミド等の樹脂でコーティングされているものとする。さらに、ウエハステージ9の内部にはステージの温度を測定するための熱電対70が設置されており、この熱電対は熱電対温度計71に接続されている。
【0031】
本実施例のエッチングプロセスについて
図5を用いて説明する。
図5のシーケンスは、エッチング処理装置の制御部80により制御される。制御部80は、エッチング処理装置の電源、機構、コントローラーと制御線81を介して接続されており、これらを所定のシーケンスを実行するように制御する。まず処理室7に設けられた搬送口(図示省略)を介してウエハ8を処理室7に搬送した後に、DC電源31の給電によりウエハ8をウエハステージ9に静電吸着により固定するとともに、ウエハ8の裏面にウエハ冷却用のHeガスを供給する。
【0032】
次にエッチングガスを希釈するためのArガスを、マスフローコントローラー50、ガス分配器51、シャワープレート23を介して処理室7に供給する。以後、エッチングが終了するまで希釈用のArガスを流し続ける。
【0033】
第1のステップでは、フッ化水素(HF)ガスを処理室7に供給し、同時にIRランプ60によってウエハ8を加熱して、窒化チタン膜1の表面に形成された自然酸化膜5を除去する。このときのウエハ温度は100℃以上とすることが望ましい。IRランプ60による加熱効率を上げるため、この処理に先立って、ウエハ8の裏面へのHeガスの供給を停止しておく。
【0034】
第2のステップでは、気相中に残留したHFガスを真空排気する。これとともに、ウエハ8の裏面にウエハ冷却用のHeの供給を再開する。
【0035】
第3のステップでは、処理室7に塩素原子を含むガス(Cl2ガス、BCl3ガスなど)を導入し、高周波電源21をONにして放電領域13内にプラズマを形成し、塩素(Cl)ラジカルを生成する。プラズマ中で生成された塩素ラジカルは流路27、及びスリット板26を介して処理室7に供給され、ウエハ8の表面に吸着する。塩素ラジカルと窒化チタン膜1の表面とが反応することで、窒化チタン膜1の表面にチタン、窒素、酸素ならびに塩素を含む化合物の層(改質層)6を形成する。その後、高周波電源21をOFFにしてプラズマ生成を停止する。
【0036】
第4のステップでは、気相中に残留した塩素原子を含むガスを真空排気する。
【0037】
第5のステップでは、IRランプ60によってウエハを加熱して、膜表面に形成された改質層6を熱分解、脱離させることによって、窒化チタン膜1をエッチング(除去)する。このときのウエハ温度も100℃以上とすることが望ましい。IRランプ60による加熱効率を上げるため、この処理に先立って、ウエハ8の裏面へのHeガスの供給を停止しておく。
【0038】
第6のステップでは、ウエハ8の裏面にウエハ冷却用のHeガスを供給することでウエハを冷却し、ウエハ温度をウエハステージ9の温度に戻す。
【0039】
第3から第6のステップを繰り返すことで最終的にエッチング量を所望の値に制御する。
【0040】
図3について説明したように、本実施例のエッチング処理ではエッチングレートがラジカル照射時間に対して飽和するため、パターン内で均一なエッチングを可能としている。ここで、本実施例のエッチング処理によるエッチングレートのラジカル照射時間への依存性に関する実験結果を
図6に示す。エッチングレートのラジカル照射時間への依存性はウエハ温度(冷媒温度)によって異なることが分かる。ラジカル照射中(第3のステップ)のウエハ温度が-10℃の場合は、エッチングレートがラジカル照射時間の増加に対して早い段階で飽和する一方、飽和時のエッチングレートは小さい。一方、ラジカル照射中のウエハ温度が30℃の場合は、全体として飽和傾向はみられるが、ラジカル照射時間の増加に対しエッチングレートの増加傾向が一貫して見られる。また、ウエハ温度が30℃の場合のエッチングレートはウエハ温度が-10℃の場合のエッチングレートよりも大きい。したがって、エッチングするパターンの複雑性に応じてラジカル照射中のウエハ温度を調整することが望ましい。例えば、比較的に複雑でない構造をもつパターンのエッチング処理を行う場合には、ラジカル照射中のウエハ温度を少なくとも30℃以下としてなるべく高いエッチングレートが得られるようにする一方、より複雑な構造をもつパターンのエッチング処理を行う場合には、ラジカル照射中のウエハ温度をより低温に保つことで、より複雑なパターンについても均一なエッチングを実現することが可能となる。
【0041】
なお本実施例ではウエハの加熱にIRランプ60を用いる例を示したが、加熱方法はこれに限定されるものではなく、例えばウエハステージを加熱する方法や、加熱のみを行う装置にウエハを別途輸送して加熱処理を行う方法でもよい。
【0042】
また本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態における構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態における構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:窒化チタン膜、2:Si/SiGeナノワイヤ、3:カーボン系材料、4:シリコン酸化膜層、5:自然酸化膜、6:改質層、7:処理室、8:ウエハ、9:ウエハステージ、11:ベースチャンバー、12:放電管、13:放電領域、14:調圧機構、15:排気機構、16:真空排気配管、20:ICPコイル、21:高周波電源、22:整合機、23:シャワープレート、24:ガス分散板、25:天板、26:スリット板、27:流路、30:電極板、31:DC電源、38:チラー、39:流路、50,55:マスフローコントローラー、51:ガス分配器、60:IRランプ、61:反射板、70:熱電対、71:熱電対温度計、72:IR光透過窓、73:IRランプ用電源、74:高周波カットフィルタ、80:制御部、81:制御線。