(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043949
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】光フィルタおよび波長可変レーザ素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20230323BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20230323BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G02B6/12 341
H01S5/14
H01S5/323
G02B6/12 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151713
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】平谷 拓生
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝憲
【テーマコード(参考)】
2H147
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AB04
2H147AB11
2H147AB16
2H147AB17
2H147AC02
2H147AC05
2H147BA06
2H147BD02
2H147BD07
2H147BD08
2H147BE15
2H147BE22
2H147CB03
2H147CD02
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA12C
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
5F173AA08
5F173AB44
5F173AD15
5F173AF54
5F173AF56
5F173AH06
5F173AK22
5F173AR06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特性をモニタすることが可能な光フィルタおよび波長可変レーザ素子を提供する。
【解決手段】第1ループミラー20と、第2ループミラー25と、第1ループミラーおよび第2ループミラーと光学的に結合する第1導波路12と、第1ループミラーおよび第2ループミラーと光学的に結合する第2導波路14と、第1導波路と光学的に結合する第1アクセス導波路10と、第2導波路と光学的に結合する第2アクセス導波路16と、出力部30と、を具備し、第1ループミラーは、第1ループ導波路22と第1合分波器24とを有し、第2ループミラーは、第2ループ導波路26と第2合分波器28とを有し、出力部は、第3ループ導波路32と、第3合分波器31と、第3導波路36と、第4導波路38とを有し、第3ループ導波路は、第2ループ導波路および第3合分波器と光学的に結合し、第3導波路および第4導波路は、第3合分波器と光学的に結合する光フィルタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ループミラーと、
第2ループミラーと、
前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第1導波路と、
前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第2導波路と、
前記第1導波路と光学的に結合する第1アクセス導波路と、
前記第2導波路と光学的に結合する第2アクセス導波路と、
出力部と、を具備し、
前記第1ループミラーは、第1ループ導波路と第1合分波器とを有し、
前記第2ループミラーは、第2ループ導波路と第2合分波器とを有し、
前記第1ループ導波路は、前記第1合分波器と光学的に結合し、
前記第2ループ導波路は、前記第2合分波器と光学的に結合し、
前記第1導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、
前記第2導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、
前記出力部は、第3ループ導波路と、第3合分波器と、第3導波路と、第4導波路とを有し、
前記第3ループ導波路は、前記第2ループ導波路および前記第3合分波器と光学的に結合し、
前記第3導波路および前記第4導波路は、前記第3合分波器と光学的に結合する光フィルタ。
【請求項2】
前記出力部は第4合分波器を有し、
前記第4合分波器は、前記第2ループ導波路および前記第3ループ導波路に光結合し、
前記第3合分波器から前記第4合分波器までにおける、前記第3ループ導波路の右回り方向の前記第3ループ導波路の光路長は、前記第3ループ導波路の左回り方向の前記第3ループ導波路の光路長に等しい、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記第2合分波器から前記第4合分波器までにおける、前記第2ループ導波路の右回り方向の前記第2ループ導波路の光路長は、前記第2ループ導波路の左回り方向の前記第2ループ導波路の光路長に等しい、請求項2に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記第1合分波器の形状は対称であり、前記第2合分波器の形状は対称であり、前記第3合分波器の形状は対称であり、前記第1導波路の形状と前記第2導波路の形状とは対称である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記第1導波路、前記第2導波路、前記第3導波路、前記第4導波路、前記第1ループ導波路、前記第2ループ導波路、前記第3ループ導波路、前記第1アクセス導波路、および前記第2アクセス導波路は、シリコンで形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記第1ループ導波路および前記第2ループ導波路のうち少なくとも一方に設けられ、前記第1ループ導波路および前記第2ループ導波路のうち前記少なくとも一方を伝搬する光の位相を調整する、位相調整部を具備する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光フィルタ。
【請求項7】
光学利得を有する利得部と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光フィルタと、
光を反射する反射部と、を具備し、
前記利得部は、前記光フィルタと前記反射部との間に位置し、前記光フィルタの第1アクセス導波路に光学的に結合する波長可変レーザ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光フィルタおよび波長可変レーザ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利得部と、光を反射するフィルタとを有する波長可変レーザ素子が知られている。利得部から出射される光をフィルタで反射することで、レーザ発振させる。2つのリング共振器でフィルタを形成する技術がある(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“High-Power,Narrow-Linewidth,Miniaturized Silicon Photonic Tunable Laser With Accurate Frequency Control” Y.Gao et. al. Journal of Lightwave Technology,vol.38, No.2, January 15,2020 p265-271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタの特性をモニタできない場合、フィルタの特性を正確に制御することが困難であり、発振波長も不安定になってしまう。そこで、特性をモニタすることが可能な光フィルタおよび波長可変レーザ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る光フィルタは、第1ループミラーと、第2ループミラーと、前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第1導波路と、前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第2導波路と、前記第1導波路と光学的に結合する第1アクセス導波路と、前記第2導波路と光学的に結合する第2アクセス導波路と、出力部と、を具備し、前記第1ループミラーは、第1ループ導波路と第1合分波器とを有し、前記第2ループミラーは、第2ループ導波路と第2合分波器とを有し、前記第1ループ導波路は、前記第1合分波器と光学的に結合し、前記第2ループ導波路は、前記第2合分波器と光学的に結合し、前記第1導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、前記第2導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、前記出力部は、第3ループ導波路と、第3合分波器と、第3導波路と、第4導波路とを有し、前記第3ループ導波路は、前記第2ループ導波路および前記第3合分波器と光学的に結合し、前記第3導波路および前記第4導波路は、前記第3合分波器と光学的に結合する。
【0006】
本開示に係る波長可変レーザ素子は、光学利得を有する利得部と、上記の光フィルタと、光を反射する反射部と、を具備し、前記利得部は、前記光フィルタと前記反射部との間に位置し、前記光フィルタの第1アクセス導波路に光学的に結合する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、特性をモニタすることが可能な光フィルタおよび波長可変レーザ素子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光フィルタを例示する平面図である。
【
図3】
図3は、結合係数と光の取り出しの効率との関係を例示する図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る波長可変レーザ素子を例示する平面図である。
【
図6A】
図6Aは、光フィルタの反射特性を例示する模式図である。
【
図6B】
図6Bは、光フィルタの反射特性を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本開示の一形態は、(1)第1ループミラーと、第2ループミラーと、前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第1導波路と、前記第1ループミラーおよび前記第2ループミラーと光学的に結合する第2導波路と、前記第1導波路と光学的に結合する第1アクセス導波路と、前記第2導波路と光学的に結合する第2アクセス導波路と、出力部と、を具備し、前記第1ループミラーは、第1ループ導波路と第1合分波器とを有し、前記第2ループミラーは、第2ループ導波路と第2合分波器とを有し、前記第1ループ導波路は、前記第1合分波器と光学的に結合し、前記第2ループ導波路は、前記第2合分波器と光学的に結合し、前記第1導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、前記第2導波路は、前記第1合分波器および前記第2合分波器と光学的に結合し、前記出力部は、第3ループ導波路と、第3合分波器と、第3導波路と、第4導波路とを有し、前記第3ループ導波路は、前記第2ループ導波路および前記第3合分波器と光学的に結合し、前記第3導波路および前記第4導波路は、前記第3合分波器と光学的に結合する光フィルタである。第1アクセス導波路および第2アクセス導波路に光を入射すると、第1ループミラーおよび第2ループミラーに共振モードが励振される。共振波長を有する光は、第2ループ導波路から出力部の第3ループ導波路に乗り移る。第3ループ導波路を伝搬する光は、第3導波路および第4導波路から出射される。第3導波路および第4導波路から出射される光は、共振波長で高い強度を有する。出射光を用いて、光フィルタの特性をモニタすることができる。
(2)前記出力部は第4合分波器を有し、前記第4合分波器は、前記第2ループ導波路および前記第3ループ導波路に光結合し、前記第3合分波器から前記第4合分波器までにおける、前記第3ループ導波路の右回り方向の前記第3ループ導波路の光路長は、前記第3ループ導波路の左回り方向の前記第3ループ導波路の光路長に等しくてもよい。第3ループ導波路を伝搬する光の位相が整合する。2つの共振モードのうち1つを第3導波路から出射し、もう1つを第4導波路から出射することができる。
(3)前記第2合分波器から前記第4合分波器までにおける、前記第2ループ導波路の右回り方向の前記第2ループ導波路の光路長は、前記第2ループ導波路の左回り方向の前記第2ループ導波路の光路長に等しくてもよい。第3ループ導波路を伝搬する光の位相が整合する。2つの共振モードのうち1つを第3導波路から出射し、もう1つを第4導波路から出射することができる。
(4)前記第1合分波器の形状は対称であり、前記第2合分波器の形状は対称であり、前記第3合分波器の形状は対称であり、前記第1導波路の形状と前記第2導波路の形状とは対称でもよい。2つの共振モードの共振波長は互いに等しい。2つの共振モードのFSRは互いに等しい。2つの共振モードのうち1つの共振波長およびFSRを測定することで、光フィルタの特性をモニタすることができる。
(5)前記第1導波路、前記第2導波路、前記第3導波路、前記第4導波路、前記第1ループ導波路、前記第2ループ導波路、前記第3ループ導波路、前記第1アクセス導波路、および前記第2アクセス導波路は、シリコンで形成されてもよい。光の損失を抑制することができる。
(6)前記第1ループ導波路および前記第2ループ導波路のうち少なくとも一方に設けられ、前記第1ループ導波路および前記第2ループ導波路のうち前記少なくとも一方を伝搬する光の位相を調整する、位相調整部を具備してもよい。光の位相を調整することで、光の波長を変化させることができる。
(7)光学利得を有する利得部と、上記の光フィルタと、光を反射する反射部と、を具備し、前記利得部は、前記光フィルタと前記反射部との間に位置し、前記光フィルタの第1アクセス導波路に光学的に結合する波長可変レーザ素子である。利得部の出射光は、光フィルタおよび反射部で反射される。波長可変レーザ素子がレーザ発振する。レーザ光の一部は、出力部に乗り移り、出力部の第3導波路から出射される。出力部の第4導波路から出射される光を用いて、光フィルタの特性をモニタすることができる。レーザ光の発振波長を制御することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光フィルタおよび波長可変レーザ素子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る光フィルタ100を例示する平面図である。
図1に示すように、光フィルタ100は、アクセス導波路10(第1アクセス導波路)、導波路12(第1導波路)、導波路14(第2導波路)、アクセス導波路16(第2アクセス導波路)、ループミラー20(第1ループミラー)、ループミラー25(第2ループミラー)、および出力部30を備える。
【0013】
アクセス導波路10および16、導波路12および14、ループミラー20および25、ならびに出力部30は、基板40に形成されている。基板40の上面は、XY平面に広がる。基板40の2つの辺は、X軸方向に延伸する。基板40の2つの辺は、Y軸方向に延伸する。X軸方向はY軸方向に直交する。Z軸方向は、基板40の厚さ方向であり、X軸方向およびY軸方向に直交する。基板40のX軸方向の1つの端部を端部40aとし、もう1つの端部を端部40bとする。
【0014】
X軸方向において、ループミラー20とループミラー25とが並ぶ。ループミラー20は、基板40の端部40a側に位置する。ループミラー25は、端部40b側に位置する。
【0015】
ループミラー20は、ループ導波路22(第1ループ導波路)と合分波器24(第1合分波器)とを有する。ループミラー25は、ループ導波路26(第2ループ導波路)と合分波器28(第2合分波器)とを有する。ループ導波路22および26は、それぞれループ状の光導波路である。ループミラー20は、合分波器24の入力端に光が入力されると、合分波器24の入力端に光を反射する反射構造である。ループミラー25は、合分波器28の入力端に光が入力されると、合分波器28の入力端に光を反射する反射構造である。
【0016】
合分波器24および28は、例えば3dBカプラである。
図1の例における合分波器24および28は、方向性結合器である。方向性結合器においては、2つの光導波路が、伝搬する光の波長程度の距離まで近づいている。合分波器24および28それぞれの電力結合係数は、0.5である。合分波器として、方向性結合器以外に2入力2出力(2×2)多モード干渉導波路(MMI:Multi Mode Interference、マルチモードインターフェレンス)を用いてもよい。ループ導波路22は合分波器24と光学的に結合する。ループ導波路26は合分波器28と光学的に結合する。
【0017】
導波路12および14は、X軸方向に延伸し、ループミラー20とループミラー25との間に位置し、ループミラー20とループミラー25とに接続されている。導波路12と導波路14とが並ぶY軸方向において、導波路12と導波路14とは対称である。言い換えれば、導波路14をX軸に関して折り返すと、導波路12に重なる。
【0018】
導波路12および14のそれぞれは、合分波器24および28に近づくように湾曲し、合分波器24および28に光学的に結合する。より詳細には、導波路12の第1の端部は、合分波器24と光学的に結合する。導波路12の第2の端部は、合分波器28と合学的に結合する。導波路14の第1の端部は、合分波器24と光学的に結合する。導波路14の第2の端部は、合分波器28と合学的に結合する。2つのループミラー20および25と、導波路12とは、共振器11を形成する。2つのループミラー20および25、導波路14とは、共振器13を形成する。光フィルタ100の光導波路の構成の例は、第2実施形態で説明する。
【0019】
Y軸方向に沿って、アクセス導波路10、導波路12、導波路14、およびアクセス導波路16がこの順に並ぶ。アクセス導波路10は、X軸方向に延伸し、かつ導波路12に近づくように湾曲する。アクセス導波路10は、導波路12から例えば数百nmの距離をあけて離間し、導波路12に光学的に結合する。アクセス導波路16は、X軸方向に延伸し、かつ導波路14に近づくように湾曲する。アクセス導波路16は、導波路14から例えば数百nmの距離をあけて離間し、導波路14に光学的に結合する。
【0020】
アクセス導波路10の端部10aおよびアクセス導波路16の端部16aは、基板40の端部40aに位置する。アクセス導波路10のもう1つの端部10bおよびアクセス導波路16のもう1つの端部16bは、基板40の端部40bに位置する。
【0021】
出力部30は、ループミラー25のループ導波路26と、基板40の端部40bとの間に位置する。出力部30は、合分波器31(第3合分波器)、ループ導波路32(第3ループ導波路)、合分波器34(第4合分波器)、導波路36(第3導波路)、および導波路38(第4導波路)を有する。合分波器31は例えば方向性結合器であり、所望の取り出し効率に応じて電力結合効率が任意に決められる。合分波器34は3dBカプラであり、例えば方向性結合器である。合分波器34の電力結合係数は、0.5である。
【0022】
ループ導波路32は、ループ状の光導波路であり、ループ導波路26の隣に位置し、ループ導波路26と光学的に結合する。より詳細には、ループ導波路32とループ導波路26とが、光の波長程度まで近づくことで、方向性結合器(合分波器31)が形成される。ループ導波路32は合分波器34と光学的に結合する。
【0023】
Y軸方向に沿って、導波路36と導波路38とが並ぶ。導波路36および38は、ループ導波路32と基板40の端部40bとの間に位置し、合分波器34と光学的に結合する。導波路36および38は、合分波器34から端部40bに向けて、X軸方向に延伸する。導波路36の端部36a、および導波路38の端部38aは、端部40bに位置する。出力部30は、ループミラー20のループ導波路22と光学的に結合してもよい。
【0024】
アクセス導波路10の端部10aおよび10bのうち一方(例えば端部10a)、ならびにアクセス導波路16の端部16aおよび16bのうち一方(例えば端部16a)を、光フィルタ100の入射ポートとする。導波路36の端部36aおよび導波路38の端部38aを、光フィルタ100の出射ポートとする。
【0025】
光フィルタ100の外部に配置した不図示の光源から、
図1に矢印A1で示すように、端部10aを通じてアクセス導波路10に光を入射すると、共振器11に共振モードが励振される。共振波長を有する光は、ループ導波路26から出力部30のループ導波路32に乗り移り、導波路36を伝搬し、矢印A7で示すように端部36aから光フィルタ100の外部に出射される。矢印A4で示すように端部16aを通じてアクセス導波路16に光を入射すると、共振器13に共振モードが励振される。共振波長を有する光は、ループ導波路26から出力部30のループ導波路32に乗り移り、導波路38を伝搬し、矢印A8で示すように端部38aから光フィルタ100の外部に出射される。
【0026】
より詳細には、端部10aから入射された光は、アクセス導波路10を伝搬し、アクセス導波路10から導波路12に乗り移る。導波路12を伝搬する光は、合分波器24および28に入力される。導波路12から合分波器24を通じて、ループ導波路22の両端に光が分配される。分配される光の強度は1:1であり、位相は互いにπ/2ずれる。ループ導波路22を右回りに伝搬する光に対して、左回りに伝搬する光の位相はπ/2遅延する。
【0027】
ループ導波路22を左回りに伝搬する光は、合分波器24を通じて、位相の変化なしで導波路12に分配され、かつπ/2の位相の遅延を伴って導波路14に分配される。ループ導波路22を右回りに伝搬する光は、合分波器24を通じて、π/2の位相の遅延を伴って導波路12に分配され、かつ位相の変化なしで導波路14に分配される。ループ導波路22を右回りに伝搬して導波路14に入力される光と、ループ導波路22を左回りに伝搬して導波路14に入力される光とは、互いに逆位相であり、打ち消しあう。一方、ループ導波路22を左回りに伝搬して導波路12に入力される光と、ループ導波路22を右回りに伝搬して導波路12に入力される光とは、互いに同位相であり、打ち消しあわずに合波される。
【0028】
導波路12から合分波器28を通じて、ループ導波路26の両端に光が分配される。ループ導波路26を右回りに伝搬して導波路14に入力される光と、ループ導波路26を左回りに伝搬して導波路14に入力される光とは、互いに逆位相であり、打ち消しあう。一方、ループ導波路26を左回りに伝搬して導波路12に入力される光と、ループ導波路26を右回りに伝搬して導波路12に入力される光とは、互いに同位相であり、合波される。
【0029】
アクセス導波路10から導波路12に光が乗り移ることで、共振器11に共振モードが発生する。共振器11の共振波長は、2つのループミラー20および25を一周したときの光の位相の変化が2πn(nは整数)になる波長である。共振波長を有する光は、導波路12からアクセス導波路10に乗り移り、
図1に矢印A2で示すようにアクセス導波路10の端部10aに向けて反射される。共振波長以外の波長を有する光は、
図1に矢印A3で示すように、アクセス導波路10の端部10bから出射される。共振波長を有する光の一部は、合分波器31を通じて、ループ導波路26から出力部30のループ導波路32に乗り移る。
【0030】
ループ導波路26を左回りに伝搬する光は、合分波器31を通じて、π/2の位相の遅延を伴ってループ導波路32に乗り移り、ループ導波路32を右回りに伝搬する。ループ導波路26を右回りに伝搬する光は、合分波器31を通じて、π/2の位相の遅延を伴ってループ導波路32に乗り移り、ループ導波路32を左回りに伝搬する。合分波器31における光の強度の分配比は、例えば1:1である。
【0031】
ループ導波路32を伝搬する光は、合分波器34を通じて導波路36および38に分配される。ループ導波路32を右回りに伝搬する光は、位相の変化なしで導波路38に入力され、π/2の位相の変化を伴い導波路36に入力される。ループ導波路32を左回りに伝搬する光は、π/2の位相の変化を伴い導波路38に入力され、位相の変化なしで導波路36に入力される。ループ導波路32を右回りに伝搬して導波路38に入力される光と、ループ導波路32を左回りに伝搬して導波路38に入力される光とは、互いに逆位相であり、打ち消しあう。一方、ループ導波路32を左回りに伝搬して導波路36に入力される光と、ループ導波路32を右回りに伝搬して導波路36に入力される光とは、互いに同位相であり、合波される。
【0032】
アクセス導波路10に光を入力することで、共振器11に共振モードを励振することができる。共振器11の共振モードは、導波路14には伝搬せず、導波路12を伝搬し、アクセス導波路10に反射される。共振モードの一部は、出力部30に乗り移る。共振モードは、導波路38では打ち消され、導波路36を伝搬し、導波路36の端部36aから光フィルタ100の外部に出射される。
【0033】
矢印A4で示すように、アクセス導波路16に光を入射することで、共振器13に共振モードが励振される。共振器13の共振モードは、導波路12には伝搬せず、導波路14を伝搬し、矢印A5で示すようにアクセス導波路16に反射される。共振波長以外の波長を有する光は、矢印A6で示すように、アクセス導波路16を透過する。共振モードの一部は、出力部30のループ導波路32に乗り移る。共振モードは、導波路36では打ち消され、導波路38を伝搬し、矢印A8で示すように導波路38の端部38aから光フィルタ100の外部に出射される。
【0034】
共振器11の共振モードが、導波路38では打ち消され、導波路36を伝搬する。共振器13の共振モードが、導波路36では打ち消され、導波路38を伝搬する。上記の光の伝搬を可能とするために、合分波器の間における光路長が等しければよい。合分波器28から合分波器31まで、ループ導波路26を右回りする方向におけるループ導波路26の光路長は、合分波器28から合分波器31まで左回りする方向におけるループ導波路26の光路長に等しい。言い換えれば、合分波器28と合分波器31とによって、ループ導波路26は二等分される。合分波器31から合分波器34まで、ループ導波路32を右回りする方向におけるループ導波路32の光路長は、合分波器31から合分波器34まで左回りする方向におけるループ導波路32の光路長に等しい。言い換えれば、合分波器31と合分波器34とによって、ループ導波路32は二等分される。
【0035】
X軸に関して、合分波器24の形状が対称であり、合分波器28の形状が対称であり、導波路12と導波路14とが対称である。この場合、共振器11の共振波長と共振器13の共振波長とは、原理的に一致する。共振器11のFSR(Free Spectral Range、共振周波数間隔)と共振器13のFSRとは、原理的に一致する。共振器11の共振モードおよび共振器13の共振モードのうち、一方の共振波長およびFSRがわかれば、もう一方の共振波長およびFSRもわかる。合分波器24の形状は、合分波器24自身の中心に関して点対称でもよい。合分波器28の形状は、合分波器28自身の中心に関して点対称でもよい。
【0036】
(特性)
図2Aおよび
図2Bは、光フィルタ100の特性を例示する図である。
図2Aの縦軸は、反射率を表す。反射率は、アクセス導波路10への入射光の強度と反射光の強度とに基づいて取得される。
図2Bの縦軸は、透過率を表す。透過率は、アクセス導波路10への入射光の強度と透過光の強度とに基づいて取得される。
図2Aおよび
図2Bの横軸は、光の波長を表す。
図2Aおよび
図2Bにおける複数の線は、結合係数κの異なる例を表す。太い実線は、κ=0.1の例である。点線は、κ=0.3の例である。破線は、κ=0.5の例である。一点鎖線は、κ=0.7の例である。細い実線は、κ=0.9の例である。
【0037】
図2Aに示すように、共振器11の3つの共振波長において反射率は極大になる。
図2Bに示すように、3つの共振波長において透過率は極小になる。反射率のピークおよび透過率のピークの幅は、アクセス導波路10と導波路12との結合係数κで決まる。結合係数が低いほど、反射率および透過率のピークは狭く、鋭くなる。結合係数が高いほど、ピークは広く、緩やかになる。
【0038】
アクセス導波路10と導波路12との結合係数は、アクセス導波路10と導波路12との距離に依存する。アクセス導波路10と導波路12との距離を小さくすると、アクセス導波路10と導波路12との結合係数が高くなり、共振器11のQ値は低くなる。反射率および透過率のピークは広くなる。アクセス導波路10と導波路12との距離を大きくすると、アクセス導波路10と導波路12との結合係数が低くなり、Q値は高くなる。反射率および透過率のピークは狭くなる。
【0039】
アクセス導波路16においても
図2Aと同様の反射特性および
図2Bと同様の透過特性が得られる。アクセス導波路16と導波路14との結合係数は、アクセス導波路10と導波路12との結合係数に等しくてもよいし、アクセス導波路10と導波路12との結合係数より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0040】
先述のように、共振器11の共振モードは、出力部30に乗り移り、導波路36を伝搬する。共振器13の共振モードは、出力部30に乗り移り、導波路38を伝搬する。導波路36を伝搬する光の強度、および導波路38を伝搬する光の強度は、
図2Aと同様に共振波長でピークを示す。すなわち、出力部30の導波路36および38から、共振波長の光を高い強度で取り出すことができる。
【0041】
第1実施形態によれば、光フィルタ100は、アクセス導波路10および16、導波路12および14、ループミラー20および25、ならびに出力部30を有する。導波路12は、ループミラー20および25に光学的に結合し、共振器11を形成する。導波路14は、ループミラー20および25に光学的に結合し、共振器13を形成する。
【0042】
アクセス導波路10に入射された光が、導波路12に乗り移り、共振器11の共振モードが励振される。共振器11を伝搬する光の一部は、ループミラー25のループ導波路26から出力部30のループ導波路32に乗り移り、導波路36から出射される。アクセス導波路16に入射された光が、導波路14に乗り移り、共振器13の共振モードが励振される。共振器13を伝搬する光の一部は、ループ導波路26から出力部30のループ導波路32に乗り移り、導波路38から出射される。出力部30から、共振波長の光を取り出すことが可能である。導波路36および38からの出射光を観測することで、光フィルタ100の共振波長およびFSRなどといった特性を、直接的にモニタすることができる。
【0043】
例えば、アクセス導波路10および16に入射する光の波長を変えながら、導波路36および38から出射される出射光を、フォトダイオードなどの受光素子で受光する。光の強度が極大になる波長が共振波長である。2つの共振波間の間隔(FSR)も測定することができる。
【0044】
経時変化により光導波路の屈折率などが変わり、光フィルタ100の特性が変化することがある。導波路36および38からの出射光を用いて、例えば共振波長のシフトなど、光フィルタ100の特性の経時変化を直接モニタすることができる。
【0045】
アクセス導波路10の端部10bおよびアクセス導波路16の端部16bからも、光が出射される。端部10bおよび16bにおける出射光は、共振波長で消光しており、共振波長以外の波長で高い強度を有する。一方、導波路36および38からの出射光は、共振波長以外の波長に比べて、共振波長で高い強度を有する。導波路36および38からの出射光を検知することで、共振波長などの特性を直接に測定することができる。
【0046】
合分波器31から合分波器34まで、右回り方向に沿ったループ導波路32の光路長は、左回り方向に沿ったループ導波路32の光路長に等しい。言い換えれば、合分波器31と合分波器34とによって、ループ導波路32は二等分される。ループ導波路32を伝搬する光の位相が整合する。共振器11の共振モードは、導波路38では打ち消され、導波路36を伝搬する。共振器13の共振モードは、導波路36では打ち消され、導波路38を伝搬する。2つの共振器11および13の共振モードを、分離して取り出すことができる。導波路36の出射光を用いて、共振器11の共振波長およびFSRをモニタすることができる。導波路38の出射光を用いて、共振器13の共振波長およびFSRをモニタすることができる。
【0047】
合分波器28から合分波器31まで、右回り方向に沿ったループ導波路26の光路長は、左回り方向に沿ったループ導波路26の光路長に等しい。言い換えれば、合分波器28と合分波器31とによって、ループ導波路26は二等分される。ループ導波路26を伝搬する光の位相が整合する。ループ導波路26および32の光路長を、2つの合分波器の間で等しくすることで、ループ導波路26および32を伝搬する光の位相が整合する。共振器11の共振モードは、導波路38では打ち消され、導波路36を伝搬する。共振器13の共振モードは、導波路36では打ち消され、導波路38を伝搬する。2つの共振器11および13の共振モードを分離して、取り出すことができる。
【0048】
導波路12と導波路14とが並ぶY軸方向において、導波路12の形状と導波路14の形状とは対称である。合分波器24の形状は対称である。合分波器28の形状は対称である。共振器11の共振モードの共振波長は、共振器13の共振モードの共振波長に一致する。共振器11の共振モードのFSRは、共振器13の共振モードのFSRに一致する。例えば導波路38からの出射光を用いて、共振器13の共振モードの共振波長およびFSRを測定することで、共振器11の共振モードの共振波長およびFSRもモニタすることができる。導波路36からの出射光は、特性のモニタ以外の用途に用いることができる。合分波器24の形状は、合分波器24自身の中心に対して点対称でもよい。合分波器28の形状は、合分波器28自身の中心に対して点対称でもよい。
【0049】
図1におけるループ導波路32の形状は、ループ導波路26をY軸に関して折り返した形状である。ループ導波路32の形状は、ループ導波路26と異なってもよい。ループ導波路32の光路長は、ループ導波路22の光路長およびループ導波路26の光路長に等しくてもよいし、異なってもよい。ループ導波路22の光路長は、ループ導波路26の光路長に等しくてもよいし、異なってもよい。光フィルタ100の光導波路に、
図4で後述する電極60を設けてもよい。電極60がヒータとして機能するため、共振波長を変えることができる。
【0050】
図3は、結合係数と光の取り出しの効率との関係を例示する図である。横軸は、ループ導波路26とループ導波路32との結合係数である。縦軸は、ループ導波路26からループ導波路32への光の取り出しの効率である。
図3に示すように、取り出しの効率は、結合係数の二乗に比例して増加する。ループ導波路26と出力部30との結合係数は、ループ導波路26とループ導波路32との間の距離に依存する。ループ導波路26とループ導波路32との間の距離を調整することで、出力部30のループ導波路32に乗り移る光の強度を変えることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る波長可変レーザ素子200を例示する平面図である。波長可変レーザ素子200は、光フィルタ100、光フィルタ110、および利得部50を有する。
【0052】
光フィルタ100は、
図1に示したものと同じ構成を有する。光フィルタ110は、光フィルタ100から出力部30を除いた構成を有する。光フィルタ100および110は、基板40に形成されている。利得部50は、例えばIII-V族化合物半導体で形成された発光素子であり、基板40の上面に接合されている。
【0053】
光フィルタ100と光フィルタ110とは、アクセス導波路10を共有する。アクセス導波路10の端部10aは、基板40の端部40aに位置する。アクセス導波路10の端部10bは、基板40の端部40bに位置する。
【0054】
光フィルタ100のアクセス導波路16-1の端部16aは、基板40のY軸方向の端部40cに位置する。アクセス導波路16-1の端部16bは、基板40の端部40bに位置する。光フィルタ110のアクセス導波路16-2の端部16cは、端部40cに位置する。アクセス導波路16-2の端部16dは、端部40aに位置する。アクセス導波路10の端部10a、アクセス導波路16-1の端部16aおよびアクセス導波路16-2の端部16cは、入射ポートとして機能する。導波路36の端部36aおよび導波路38の端部38aは、基板40の端部40bに位置し、出射ポートとして機能する。
【0055】
光フィルタ100および110は、複数の電極60を有する。電極60は、光フィルタ100および110それぞれのループ導波路22および26の上、アクセス導波路10の上に設けられている。電極60は金属で形成されており、ヒータとして機能し、電流が入力されることで発熱する。電極60が発熱すると、光導波路の屈折率が変化し、光導波路を伝搬する光の位相が変化する。光の位相の変化により、共振波長を変えることができる。
【0056】
図5Aは、
図4の線A-Aに沿った断面図であり、アクセス導波路10の断面を図示する。
図5Bは、
図4の線B-Bに沿った断面図であり、ループ導波路22の断面を図示する。
図5Aおよび
図5Bに示すように、基板40は、SOI(Silicon on Insulator、シリコン・オン・インシュレータ)基板であり、基板42、クラッド層44(ボックス層)およびシリコン(Si)層46を有する。基板42は、例えばSiで形成されている。クラッド層44は、例えば酸化シリコン(SiO
2)などで形成されている。
【0057】
クラッド層44は、基板42の上面に積層されている。Si層46は、クラッド層44の内部に埋め込まれており、基板42の上面から離間している。Si層46と基板42の上面との間の距離は、例えば3μmである。Si層46は、テラス45および導波路コア48を含む。テラス45は、XY平面内に広がる面である。導波路コア48は、XY平面内でSi層46から離間する。導波路コア48の厚さは、例えば0.22μmである。導波路コア48の幅は、例えば0.42μmである。
【0058】
導波路コア48とテラス45との間には、溝47が設けられている。溝47は、導波路コア48の両側に位置し、導波路コア48と同じ方向に延伸する。溝47の内側はSiO
2で埋め込まれている。
図5Aから
図5Cにおいて、溝47はSiが設けられていない部分である。溝47は、例えばSi層46のうちテラス45よりも窪んだ部分でもよい。
図5Bに示すように、電極60は、クラッド層44の上面に設けられ、Z軸方向において導波路コア48の上に位置する。
【0059】
波長可変レーザ素子200の光導波路のうち、電極60が設けられていない部分は、
図5Aと同じ構成を有する。波長可変レーザ素子200の光導波路のうち、電極60が設けられている部分は、
図5Bと同じ構成を有する。
【0060】
図4に示すように、X軸方向において、利得部50の片側に光フィルタ100が位置し、反対側に光フィルタ110が位置する。利得部50は、アクセス導波路10の上に位置し、アクセス導波路10と光学的に結合する。利得部50の光フィルタ110側の端部および光フィルタ100側の端部は、アクセス導波路10の延伸方向(X軸方向)に沿って先細りのテーパ形状である。
【0061】
図5Cは、
図4の線C-Cに沿った断面図であり、利得部50の断面を図示する。基板40のうち利得部50が接合される部分では、クラッド層44は基板40とSi層46との間に設けられ、Si層46の上には設けられていない。
【0062】
利得部50は、クラッド層52および56、活性層54、およびコンタクト層58を有する。クラッド層52は、基板40のSi層46に接合されている。クラッド層52の下面と、Si層46の上面とは接触している。活性層54、クラッド層56およびコンタクト層58は、クラッド層52の上にこの順に積層され、メサ51を形成する。メサ51は、基板40の導波路コア48の上に位置する。メサ51の外側にはクラッド層52が広がる。
【0063】
クラッド層52の上面、メサ51の側面および上面は、絶縁膜57に覆われている。絶縁膜57は、クラッド層52の上、およびメサ51の上に開口部を有する。電極53は、クラッド層52の上に設けられ、絶縁膜57の開口部を通じてクラッド層52の上面に接触する。電極55は、メサ51の上に設けられ、絶縁膜57の開口部を通じてコンタクト層58の上面に接触する。
【0064】
クラッド層52は、例えばn型のインジウムリン(InP)で形成されている。活性層54は、例えばアルミニウムガリウムインジウム砒素(AlGaInAs)などで形成され、多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)を有する。クラッド層56は、例えばp型のInPで形成されている。コンタクト層58は、例えばp型のインジウムガリウム砒素(InGaAs)で形成されている。電極53は、例えば金、ゲルマニウムおよびニッケルの積層体(Au/Ge/Ni)などの金属で形成されている。電極55は、例えばチタン、白金、および金の積層体(Ti/Pt/Au)などの金属で形成されている。
【0065】
光フィルタ100の2つのループミラーの光路長の合計は、光フィルタ110の2つのループミラーの光路長の合計と異なる。光フィルタ100のFSRは、光フィルタ110のFSRとは異なる。
【0066】
図6Aは光フィルタ110の反射特性を例示する模式図である。
図6Bは光フィルタ100の反射特性を例示する模式図である。横軸は、光の波長を表す。縦軸は、反射率を表す。
【0067】
図6Aに示すように、光フィルタ110の反射率は、共振波長λ1、λ2およびλ3においてピークを示す。隣り合う2つの共振波長の間隔(FSR)は、Δλ1である。
図6Bに示すように、光フィルタ100の反射率は、共振波長λ4、λ5およびλ6においてピークを示す。隣り合う2つの共振波長の間隔(FSR)は、Δλ2であり、Δλ1より小さい。2つの光フィルタ100および110によるバーニア効果を利用して、レーザ発振を行う。
【0068】
利得部50は、光学利得を有している。電極53および55を用いて、メサ51に電流を注入する。活性層54は、キャリアが注入されることで、光を生成する。利得部50の両端から光が出射される。利得部50の第1の端部から出射される光は、アクセス導波路10を伝搬して光フィルタ110に入力される。利得部50の第2の端部から出射される光は、アクセス導波路10を伝搬して光フィルタ100に入力される。
【0069】
アクセス導波路10から光フィルタ110に光が入力されることで、共振器11の共振モードが励振される。共振波長を有する光が反射され、利得部50に向けてアクセス導波路10を伝搬する。光フィルタ100からも、共振波長を有する光が反射され、利得部50に向けてアクセス導波路10を伝搬する。
【0070】
光フィルタ100と光フィルタ110とで光が繰り返し反射されることで、波長可変レーザ素子200がレーザ発振する。光フィルタ100の共振波長と、光フィルタ110の共振波長とが一致する波長が、発振波長である。
【0071】
図6Cは、レーザ光の強度を例示する模式図である。横軸は、光の波長を表す。縦軸は、光の強度を表す。
図6Aの複数の共振波長のうち1つ(例えばλ2)と、
図6Bの複数の共振波長のうち1つ(例えばλ5)とが一致すると、当該波長においてレーザ光が生じる。
図6Cに示すように、波長λa(=λ2=λ5)が発振波長になり、高い強度のレーザ光が発振する。
【0072】
レーザ光は、アクセス導波路10を伝搬し、アクセス導波路10から光フィルタ100の導波路12に乗り移り、ループミラー20および25を伝搬する。レーザ光の一部は、ループミラー25のループ導波路26からループ導波路32に乗り移る。ループ導波路32を伝搬するレーザ光は、導波路38では打ち消される。一方、ループ導波路32から導波路36に乗り移るレーザ光は、導波路36の端部36aから外部に出射される。
【0073】
波長可変レーザ素子200の外部の光源から、
図4に示す端部16aを通じて光フィルタ100のアクセス導波路16-1に光を入射し、端部16cを通じて光フィルタ110のアクセス導波路16-2に光を入射する。光フィルタ100および110において、共振器13の共振モードが励振される。共振波長を有する光は、光フィルタ100で反射され、アクセス導波路16-1を伝搬し、端部16aから外部に出射される。共振波長を有する光は、光フィルタ110で反射され、アクセス導波路16-2を伝搬し、端部16cから外部に出射される。共振波長以外の波長を有する光(透過光)は、アクセス導波路16-1を伝搬し、端部16bから外部に出射される。透過光は、アクセス導波路16-2を伝搬し、端部16dから外部に出射される。
【0074】
光フィルタ100の共振器13に発生する共振モードの一部は、出力部30に乗り移り、導波路36では打ち消され、導波路38を伝搬し、導波路38の端部38aから外部に出射される。
【0075】
第2実施形態によれば、利得部50は2つの光フィルタ100および110に光学的に結合する。利得部50の出射光は、光フィルタ100および110により反射される。光フィルタ100のFSRは光フィルタ110のFSRとは異なる。光フィルタ100および110のバーニア効果によりレーザ光を発振させる。レーザ光の一部は、光フィルタ100の出力部30に遷移し、導波路36から出射される。アクセス導波路16-1に光を入射すると、光フィルタ100の共振器13に共振モードが励振する。共振波長を有する光は、出力部30に遷移し、導波路38から出射される。
【0076】
導波路36および38から、波長可変レーザ素子200の外部に光を取り出すことができる。導波路36からは、レーザ光が出射される。導波路36から出射されるレーザ光を、例えば光通信などに用いることができる。導波路38からは、共振波長で高い強度を有する光が出射される。導波路38の出射光は、光フィルタ100の特性のモニタに用いる。導波路36および38からの光の取り出し量は、
図3に示したようにループ導波路26とループ導波路32との結合係数に依存する。ループ導波路26とループ導波路32との距離を小さくすることで、結合係数を高め、出射光の強度を大きくすることができる。例えば、利得部50側に反射する光の強度と、導波路36から外部に出射する光の強度とが適切な大きさになるように、ループ導波路間の距離を定める。
【0077】
アクセス導波路10の端部10aおよびアクセス導波路16-2の端部16dからも光が出射される。アクセス導波路16-2からの出射光は、光フィルタ110の特性のモニタに用いることができる。出射光が消光する波長が、光フィルタ110の共振波長である。
【0078】
電極60に電流を流すことで、光導波路の屈折率を変化させ、光の位相を調整する。位相の変化により、光フィルタ100および110の共振波長を変化させる。すなわち、
図6Aおよび
図6Bのスペクトルをシフトさせる。発振波長を、
図6Cのλaから変化させることができる。以上のように、波長可変レーザ素子200では、レーザ光の発振波長を変えることが可能である。
【0079】
電極60は、光フィルタのループ導波路22および26に設けることが有効である。電極60によりループ導波路を加熱することで、ループ導波路の屈折率を変え、光路長を変化させる。光路長の変化により、共振器11および13の共振波長を制御することができる。電極60は、光フィルタのループ導波路22および26のうち少なくとも一方に設けられてもよい。電極60は、
図4に示した位置以外の位置に設けてもよい。光の位相を調整する構成は、電極60以外でもよい。
【0080】
光フィルタ100および110の光導波路は、Siの導波路コア48を有する。導波路コア48は、SiO2のクラッド層44に囲まれている。Siの屈折率は約3.5である。SiO2の屈折率は約1.4である。クラッド層44に比べて高い屈折率を有する導波路コア48に、光を強く閉じ込めることができる。アクセス導波路、ループ導波路のように、屈曲した光導波路における光の損失が抑制される。
【0081】
利得部50、光フィルタ100および110を、化合物半導体基板にモノリシック集積してもよい。光導波路は、例えばIII-V族化合物半導体を含むハイメサ構造とする。波長可変レーザ素子200の光フィルタ110を、光を反射させる構成としてもよい。反射のための構成(反射部)として、例えば光フィルタ110以外のフィルタまたは反射鏡などを用いてもよい。利得部50を光フィルタ100と反射部との間に配置する。利得部50の1つの端部からの出射光を光フィルタ100で反射し、もう1つの端部からの出射光を反射部で反射することで、レーザ発振が可能である。光を取り出す側に光フィルタ100を配置することで、高い強度の光を出射することができる。
【0082】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、16、16-1、16-2 アクセス導波路
10a、10b、16a、16b、16c、16d 端部
11、13 共振器
12、14、36、38 導波路
20、25 ループミラー
22、26、32 ループ導波路
24、28、31 合分波器
30 出力部
40、42 基板
44、52、56 クラッド層
45 テラス
47 溝
48 導波路コア
57 絶縁膜
50 利得部
51 メサ
53、55、60 電極
54 活性層
58 コンタクト層
100、110 光フィルタ
200 波長可変レーザ素子