IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧 ▶ ADEKAクリーンエイド株式会社の特許一覧

特開2023-43951ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043951
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 137/08 20060101AFI20230323BHJP
   C10M 137/06 20060101ALI20230323BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20230323BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20230323BHJP
   C10M 133/04 20060101ALI20230323BHJP
   C10N 30/16 20060101ALN20230323BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C10M137/08
C10M137/06
C10M107/34
C10M133/06
C10M133/04
C10N30:16
C10N40:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151720
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(71)【出願人】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】草野 公雄
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB41A
4H104BE01C
4H104BE02C
4H104BH04C
4H104BH05C
4H104CB14A
4H104LA08
4H104PA02
(57)【要約】
【課題】
飲料品及び食品等の容器樹を搬送するための樹脂製コンベア及び金属製コンベアにおける搬送時の潤滑性が良好であるとともに、一般細菌だけでなく、カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性にも優れ、長期保管しても良好な貯蔵安定性が示されるベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物及びこれを用いたベルトコンベアの潤滑性向上方法を提供する。
成物の提供。
【解決手段】
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(A)成分として一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤、(B)成分としてカチオン界面活性剤、(C)成分としてL-グルタミン酸二酢酸塩、(D)成分として水、を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤、
【化1】
(式中、Rは酸素原子、窒素原子を有してもよい炭素数6~18の炭化水素基であり、nは酸化エチレンの平均付加モル数を示しn=2~7であり、mは1又は2であり、Mは水素、アルカリ金属、アミン類、NHの何れかである。)
(B)成分としてカチオン界面活性剤、
(C)成分としてL-グルタミン酸二酢酸塩、
(D)成分として水、
を含有することを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項2】
(B)成分のカチオン界面活性剤がアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、N,N-ジデシル-N-メチル-ポリオキシエチル-アンモニウムプロピオネートから選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載のベルトコンベア用除菌性潤滑剤濃縮組成物。
【請求項3】
(B)成分と(C)成分の質量比(B)/(C)が0.14以上、2.50以下である請求項1又は2の何れかに記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項4】
(E)成分としてエチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸塩、1,3-プロパンジアミン四酢酸塩、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸塩から選択される少なくとも1種以上を含有する請求項1から3の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項5】
更に、(F)成分として炭化水素基の炭素数が9~18の脂肪族アルコールに酸化アルキレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤を1質量%以上、6質量%以下含有する請求項1から4の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項6】
更に、(G)成分としてグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールから選択される少なくとも一種以上のポリオールを20質量%以上、45質量%以下含有する請求項1から5の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項7】
組成物の25℃におけるpHが7.0以上、11.0以下である請求項1から6の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、
前記ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に連続的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、
前記ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止工程時間=10:1~1:4となるように間欠的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項10】
請求項1から7の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、
前記ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.04質量%以上、1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上及び/又は搬送物上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止時間=1:10~1:360となるように間欠的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項11】
ベルトコンベアが樹脂製コンベアである請求項10に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物及びベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用いたベルトコンベアの潤滑性向上方法に関し、更に詳細には、飲用水、清涼飲料、牛乳、ジュース、お茶、コーヒー、紅茶、乳飲料、炭酸飲料、ビール、酒類、ドリンク剤等の飲料品及び調味料、加工食品等の食品を容器へ充填し、又は包装する工程において、プラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器及びセラミック製容器等の移動搬送の際に用いられるベルトコンベア用の潤滑剤濃縮組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述する飲料品及び食品等の容器には、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器、セラミック製容器等が使用される。飲料製造工場や食品製造工場におけるこれら容器への内容物の充填や包装工程において、連続的に大量の容器を移動搬送するために一般的にベルトコンベアが使用されている。このような工場においては、ベルトコンベアを連続運転させ、容器等の被搬送物を高速搬送することが一般的であるが、このとき容器とベルトコンベアとの接触面に発生する摩擦により、容器の変形や容器の転倒等が起こる場合があった。そのため、こうした障害を防ぐために潤滑剤をベルトコンベア上等に塗布あるいは噴霧して、容器等の被搬送物とベルトコンベアとの間の摩擦係数を下げることが一般的である。
【0003】
ベルトコンベア用潤滑剤としては、界面活性剤を含有する水溶液が用いられることが一般的である。また衛生上の問題からベルトコンベアは雑菌による汚染の防止が要求されるため、ベルトコンベア用潤滑剤は、潤滑成分と共に殺菌成分を含有するものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、殺菌性を有するカチオン界面活性剤と、当該カチオン界面活性剤との相溶性が良好であり金属製コンベアでの潤滑性に優れるアルキルリン酸エステル塩とを含有する水溶液からなるコンベアベルト用潤滑剤が開示されている。
また特許文献2には、リン酸エステル型アニオン界面活性剤と第4級アンモニウム塩型界面活性剤とを特定の比率で配合した殺菌性コンベア潤滑剤が開示されている。
また特許文献3には、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、カチオン界面活性剤、キレート剤及び水を含有するコンベア用除菌性潤滑剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2797289号
【特許文献2】特許3126338号
【特許文献3】特許5843645号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の潤滑剤は、潤滑剤の使用環境においてカチオン界面活性剤に対して抵抗性を有する菌が増殖しバイオフィルムによる汚れが環境を汚染するといった問題を有していた。
一方、特許文献3によれば、特許文献3に記載のコンベア用除菌性潤滑剤組成物は、一般細菌だけでなく、カチオン界面活性剤に対し抵抗性を持つ菌も除菌又は抑制することができる旨、記載されている。しかしながら、特許文献3に記載のコンベア用除菌性潤滑剤組成物は、貯蔵安定性が悪く、特に保管期間が長くなることが想定される濃縮組成物として提供することが実質的に困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、飲料品及び食品等の容器樹を搬送するための樹脂製コンベア及び金属製コンベアにおける搬送時の潤滑性が良好であるとともに、一般細菌だけでなく、カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性にも優れ、長期保管しても良好な貯蔵安定性が示されるベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物及びこれを用いたベルトコンベアの潤滑性向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、(A)特定構造のアニオン界面活性剤と、(B)カチオン界面活性剤と、(C)L-グルタミン酸二酢酸塩と、(D)水、を含有するコンベア用除菌性潤滑剤濃縮組成物を用いることによって、驚くべきことに良好な潤滑性を発揮する上、一般細菌の除菌性だけでなくカチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性にも優れ、更に貯蔵安定性に優れるため濃縮組成物としての提供が実質的に可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)(A)成分として、下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤、
【化1】
(式中、Rは酸素原子、窒素原子を有してもよい炭素数6~18の炭化水素基であり、nは酸化エチレンの平均付加モル数を示しn=2~7であり、mは1又は2であり、Mは水素、アルカリ金属、アミン類、NHの何れかである。)
(B)成分としてカチオン界面活性剤、
(C)成分としてL-グルタミン酸二酢酸塩、
(D)成分として水、
を含有することを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(2)(B)成分のカチオン界面活性剤がアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、N,N-ジデシル-N-メチル-ポリオキシエチル-アンモニウムプロピオネートから選択される少なくとも1以上である上記(1)に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(3)(B)成分と(C)成分の質量比(B)/(C)が0.14以上、2.50以下である上記(1)又は(2)に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(4)(E)成分としてエチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸塩、1,3-プロパンジアミン四酢酸塩、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸塩から選択される少なくとも1種以上を含有する上記(1)~(3)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(5)更に、(F)成分として炭化水素基の炭素数が9~18の脂肪族アルコールに酸化アルキレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤を1質量%以上、6質量%以下含有する上記(1)~(4)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(6)更に、(G)成分としてグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールから選択される少なくとも一種以上のポリオールを20質量%以上、45質量%以下含有する上記(1)~(5)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物、
(7)組成物の25℃におけるpHが7.0以上、11.0以下である上記(1)~(6)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物
(8)上記(1)~(7)の何れか一項に記載のコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、前記コンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に連続的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(9)上記(1)~(7)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、
上記ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止工程時間=10:1~1:4となるように間欠的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(10)上記(1)~(7)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、上記ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.04質量%以上、1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上及び/又は搬送物上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止時間=1:10~1:360となるように間欠的に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(11)ベルトコンベアが樹脂製コンベアである上記(10)に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、樹脂製コンベア及びステンレス等の金属製コンベアにおける飲料容器や食品容器等に対する潤滑性及び除菌性に優れる。本発明における除菌性効果は、一般細菌だけでなく、カチオン界面活性剤に対し抵抗性を持つカチオン界面活性剤抵抗性菌に対しても良好に発揮される。また本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は貯蔵安定性に優れ、長期保管されても濁り、褐色変化又は沈殿物等の発生が確認され難い。そのため、本発明は、長期間の保管が予想されるベルトコンベア用潤滑剤の濃縮組成物としての提供を実質的に可能とした。
また本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法は、上述する本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物による優れた効果を享受し、食品や飲料品の容器等の搬送をスムーズに行うことを可能とするとともに、搬送に用いられるベルトコンベアの衛生状態を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物における(A)成分のアニオン界面活性剤は下記一般式(1)で表される化合物である。尚、以下において、一般式(1)における酸化エチレン(エチレンオキシド)を単にEOと表記する場合がある。
【化2】
(式中、Rは酸素原子、窒素原子を有してもよい炭素数6~18の炭化水素基であり、nは酸化エチレンの平均付加モル数を示しn=2~7であり、mは1又は2であり、Mは水素、アルカリ金属、アミン類、NHの何れかである。)
【0012】
一般式(1)式におけるRは、炭素数6~18の炭化水素基である。このような炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、等が挙げられる。なかでも潤滑性に優れることからドデシル基、イソトリデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基が好ましく、Rとしてドデシル基、オクタデセニル基がより好ましい。
【0013】
一般式(1)において、酸化エチレンの平均付加モル数を示すnは、n=2~7である。nが上記数値範囲を超えた場合、潤滑性や貯蔵安定性が十分でない場合がある。
【0014】
また一般式(1)において、mは1又は2であり、潤滑性に優れることからmは1であることが好ましいが、化学合成上、単一成分の酸化エチレンを精製することは困難であるため、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(A)成分としてmが1であるアニオン界面活性剤及びmが2であるアニオン界面活性剤を両方含んでいてもよい。mが3であると潤滑性及び水溶性が著しく低下するため好ましくない。
【0015】
一般式(1)において、Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン類、NHの何れかである。
アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウムが挙げられる。アミン類としては、たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-t-ブチルエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、アミノメチルプロパノール、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
(A)成分は、一般式(1)におけるMが水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン類、NHの何れかである1種の化合物であってもよいし、Mが異なる2種以上の化合物の組み合わせであってよい。これらのうち、潤滑性に優れることから、(A)成分として、Mが、ナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンから選択された1種以上である(A)成分が含まれることが好ましく、更に貯蔵安定性に優れることから、Mがモノエタノールアミンである(A)成分、Mがトリエタノールアミンである(A)成分、Mがモノイソプロパノールアミンである(A)成分から選択された1種以上が含まれることがより好ましい。
【0016】
(A)成分であるアニオン界面活性剤は、一般式(1)における、炭素数6~18の炭化水素基であるR1、酸化エチレンの平均付加モル数を示すn、m、及びMの全てが同じである1種の化合物であってもよく、あるいは、これらのうちの何れか又は全てが異なる2種以上の化合物を含んでいてもよい。
一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤のより具体的な例としては、ポリオキシエチレン(EO4モル)C6~C10アルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO2モル)ラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO4モル)ラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO3モル)トリデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO6モル)トリデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO2モル)ステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO3モル)ステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO4モル)オレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO7モル)オレイルエーテルリン酸、からなる群から選択される化合物のナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。尚、上述列記するリン酸は、リン酸エステルを含む。
特に優れた潤滑性を示しうるという観点からは、(A)成分として、ポリオキシエチレン(EO2モル)ラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO4モル)ラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO4モル)オレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(EO7モル)オレイルエーテルリン酸から選択された1種以上を含むことが好ましい。
【0017】
(A)成分は、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に2質量%以上、10質量%以下含有されていることが好ましく、2質量%以上、8質量%以下含有されていることがより好ましく、3質量%以上、7質量%以下含有されていることが更に好ましく、3質量%以上、6質量%以下含有されていることが特に好ましい。(A)成分の含有量が2質量%未満であると、ステンレスなどの金属製コンベアに用いた際の潤滑性が十分でない場合があり、10質量%を超えて配合すると、樹脂製コンベアに用いた際の潤滑性が十分でない場合がある。なお、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中の上記(A)成分の割合は、(A)成分中のMがアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン類、NHの何れかである場合は、成分のMを水素として換算した量より求めた割合である。
【0018】
上述する(A)成分は、優れたベルトコンベア潤滑性を示し得る反面、他のリン酸エステル型アニオン界面活性剤と同様、当該(A)成分を含む一般的な組成物は、除菌性(特にはカチオン界面活性剤抵抗性菌の除菌性)の点で十分ではなく、また濃縮組成物とした際、希釈した際に沈殿物が生じてしまう場合があった。これに対し本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(A)成分とともに、後述する(B)成分及び(C)成分を組み合わせて用いることで、良好な潤滑性を示し、一般細菌だけでなくカチオン界面活性剤抵抗菌対する除菌性にも優れ、かつ貯蔵安定性に優れたベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の提供を可能とする。また、本発明は、希釈安定性にも優れるため、濃縮物として好ましい。
【0019】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物における(B)成分はカチオン界面活性剤である。カチオン界面活性剤としては、塩化ベンゼトニウム、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩、デシルイソノニルジメチルアンモニウム塩、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウム塩、アルキルベンジルイミダゾリウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム塩、アルキルジメチルメチルベンジルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、トリアルキルアミン塩、アルキルトリアミン塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、1,4-ビス(3,3’-(1デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド等が挙げられる。これらは、(B)成分として、1種で用いられてもよく、2種以上を混合して用いられてもよい。
上述する(B)成分のカチオン界面活性剤の塩としては、塩素イオン、臭素イオン、炭素数1又は2のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上、12以下の脂肪酸イオン、炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。中でも、除菌性に優れることから、(B)成分として、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、N,N-ジデシル-N-メチル-ポリオキシエチル-アンモニウムプロピオネートから選択される1種以上を含むことが好ましく、カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性にも優れることからジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドから選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0020】
(B)成分は本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に1質量%以上、15質量%以下含有されていることが好ましく、2質量%以上、10質量%以下含有されていることがより好ましく、3質量%以上、7質量%以下含有されていることが特に好ましい。(B)成分の含有量が2質量%未満であると、除菌性及びステンレス製コンベアの潤滑性が十分でない場合があり、15質量%を超えて配合すると飲料に対する混合性の低下の問題が発生し、更に樹脂製コンベアでの潤滑性が十分でない場合がある。尚、本発明に関し、飲料に対する混合性の低下の問題とは、充填機、ボトルキャップ巻締機、及び缶蓋シーマー等のベルトコンベアやその周辺にこぼれ落ちた飲料と、ベルトコンベア又はその周辺に供給された潤滑剤とが、良好に相溶せず沈殿物などが発生する問題をいう。かかる問題が発生すると、ベルトコンベアやその周辺の機器内部において生じた沈殿物(異物)により、搬送環境が汚染され衛生上望ましくない。
【0021】
発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物における(C)成分は、L-グルタミン酸二酢酸塩であり、塩の形態としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。本発明において(C)成分は、1種のL-グルタミン酸二酢酸塩であってもよく、また塩が異なる2種以上のL-グルタミン酸二酢酸塩を含んでもよい。
【0022】
(C)成分は本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に6質量%以上、15質量%以下含有されていることが好ましく、8質量%以上、15質量%以下含有されていることがより好ましく、10質量%以上、15質量%以下含有されていることが特に好ましい。(C)成分の含有量が6質量%未満であると、カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性及び潤滑性、希釈液安定性が十分でない場合があり、15質量%を超えて配合しても性能が頭打ちになるためコスト面で好ましくない。尚、本発明に関し希釈安定性とは、濃縮組成物を使用に適した濃度に希釈した際の安定性を指し、希釈安定性が悪い場合には、濃縮組成物を希釈して得られた処理液に沈殿物が発生し実用性がないと判断される。潤滑成分として上述する(A)成分を含有する本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(C)成分が含有されることによって良好な希釈安定性が示される。
【0023】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物において、(D)成分の水は特に限定はなく、水道水、井水、イオン交換水、軟水などが挙げられる。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。
【0024】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(B)成分と(C)成分の質量比(B)/(C)が0.14以上、2.50以下であることが好ましく、カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性、潤滑性、希釈液安定性の点から0.20以上、0.90以下であることがより好ましく、0.20以上、0.70以下であることが特に好ましい。このように、(B)成分と(C)成分の配合割合を調整することによって、本発明の所期の課題がより良好に達成される。質量比(B)/(C)が0.14未満であると、一般細菌及びカチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性及びステンレスなどの金属製コンベアに対する潤滑性が十分でない場合があり、また2.50を超えると、樹脂製コンベアに対する潤滑性が十分でない場合がある。
【0025】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、更に(E)成分としてエチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸塩、1,3-プロパンジアミン四酢酸塩、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸塩から選択される少なくとも1種以上を含有することが好ましい。これらは単独で用いてもよく、また組み合わせて用いてもよい。(E)成分の塩の形態としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらの中でも、(E)成分として、除菌性及び希釈液安定性の点からエチレンジアミン四酢酸塩を含有することが好ましい。(E)成分は、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に0.4質量%以上、8質量%以下含有されていることが好ましく、0.5質量%以上、4質量%以下含有されていることがより好ましく、1質量%以上、3質量%以下含有されていることが特に好ましい。(E)成分の含有量が0.4質量%未満であると希釈液安定性が低下する場合があり、8質量%を超えて配合しても性能が頭打ちになるためコスト面で好ましくない。
【0026】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、更に(F)成分として炭化水素基の炭素数が9~18の脂肪族アルコールに酸化エチレンなどの酸化アルキレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。(F)成分に使用できる脂肪族アルコールにおける炭化水素基としては、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、オクタデセニル基等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、また組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも潤滑性に優れることから、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基が好ましく、特にステンレス製コンベアの潤滑性に優れることからノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基がより好ましい。
【0027】
(F)成分は、上記の脂肪族アルコールに酸化アルキレンを付加することによって得られる。酸化アルキレンとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンが挙げられるが、経済性の点で酸化エチレン、酸化プロピレンが好ましい。酸化アルキレンの重合形態としては単独重合体、共重合体どちらでも良く、単独重合体としては酸化エチレンの単独重合体が好ましい。共重合形態としては酸化エチレンと酸化プロピレンとのランダム共重合体、ブロック共重合体、ランダム/ブロック共重合体等の何れでもよい。(F)成分のノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基(酸化エチレン+酸化プロピレン)の重合度が6~20であるものが好ましく、より好ましくは6~15であり、更に好ましく6~11である。ポリオキシアルキレン基の重合度が6未満であるとベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の貯蔵安定性が十分でない場合があり、20を超えるとステンレス製コンベアの潤滑性が十分でない場合がある。(F)成分のノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基に占める酸化エチレン基の割合が50モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、60モル%以上、100モル%以下であることがより好ましい。酸化エチレン基の割合が50モル%未満になると、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。(F)成分は、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に1質量%以上、6質量%以下含有されていることが好ましく、1質量%以上、4質量%以下含有されていることがより好ましく、1質量%以上、3質量%以下含有されていることが特に好ましい。(F)成分の含有量が1質量%未満であるとベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の飲料に対する混合性が低下する場合がある。一方で、6質量%を超えて配合するとステンレスコンベアの潤滑性が十分でない場合がある。
【0028】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、更に(G)成分としてグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上のポリオールを含有することが好ましい。ポリエチレングリコールに対する酸化エチレンの重合度(平均付加モル数)は4モル以上、20モ以下が好ましく、4モル以上、16モル以下がより好ましく、4モル以上、8モル以下が特に好ましい。ポリエチレングリコールの重合度(平均付加モル数)が4モル未満又は20モルを超えると潤滑性が十分でない場合がある。(G)成分としては、潤滑性に優れることからグリセリン及び/又はポリエチレングリコールを用いることが好ましく、特に経済性の点からグリセリンを用いることが好ましい。(G)成分は、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に20質量%以上、60質量%以下含有されていることが好ましく、30質量%以上、45質量%以下含有されていることがより好ましく、30質量%以上、40質量%以下含有されていることが特に好ましい。(G)成分の含有量が20質量%未満であると樹脂製コンベアにおいて長時間間欠使用した際に潤滑性が十分でない場合があり、60質量%を超えて配合しても潤滑性能が飽和するため経済的に好ましくなく、またベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の貯蔵安定性が十分でない場合がある。尚、長時間間欠使用とは、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を希釈して調製した処理液をベルトコンベアに供給する供給工程と、処理液の供給を停止する供給停止工程とを繰り返し長時間適用する態様を指す。
【0029】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、コンベア用潤滑剤濃縮組成物の製剤形態に応じ、その他成分として当該技術分野で通常使用される成分を更に1種以上含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、金属腐食抑制剤、pH調整剤、粘稠剤等が挙げられる。尚、上記製剤形態としては液体および固体(ペレット、粉体等)が例示されるが、成分濃度の均一性などの観点からは液体であることが好ましい。
【0030】
防腐剤としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
金属腐食抑制剤としては、短鎖のジカルボン酸やトリカルボン酸等のポリカルボン酸、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びメルカプトベンゾチアゾール等のトリアゾール、1 - ヒドロキシエチリデン- 1 , 1 - ジホスホン酸等のようなホスホン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
pH調整剤として用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、pH調整剤として用いる酸としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸などが挙げられるが、好ましくは、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、キュメンスルホン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、塩基成分や酸成分を添加して、pHを7.0以上、11.0以下の範囲に調整して使用することが好ましく、8.5以上、10.0以下の範囲に調整して使用することがより好ましく、9.0以上、10.0以下に調整して使用することが特に好ましい。処理液のpHが7.0未満であると十分な除菌性や希釈液安定性が得られない場合があり、またpHが11.0を超えるとPETボトルに対する亀裂やひび割れ抑制性が低下し、被搬送物であるPETボトルに亀裂やひび割れが発生する等の問題が生じる場合がある。pHの調整方法としては、上記のpH調整剤を本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に適量配合して調整する方法等が挙げられる。
【0034】
次に本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法(以下、単に本発明の潤滑性向上方法ともいう)について説明する。
本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、水で希釈した希釈液(処理液)をベルトコンベア上及び/又はベルトコンベア上の被搬送品に供給することでベルトコンベアと被搬送品との間の摩擦係数を低下させ、ベルトコンベアの潤滑性を向上することができる。ベルトコンベアに対する供給方法としては、(A)成分濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下となるようベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を希釈して調製した低濃度範囲の処理液(以下、単に低濃度処理液という場合がある)を、連続供給又は間欠供給して処理する方法、(A)成分濃度が0.04質量%以上、1質量%以下となるようベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を希釈して調製した高濃度範囲の処理液(以下、単に高濃度処理液という場合がある)を連続供給又は間欠供給して処理する方法が挙げられる。
低濃度処理液を供給する方法では、処理液の(A)成分濃度が0.007質量%以上、0.08質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上、0.07質量%以下であることがより好ましい。
高濃度処理液を供給する方法では、処理液の(A)成分濃度が0.05質量%以上、0.8質量%以下であることが好ましく、0.1質量%を超えて、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
処理液をベルトコンベアに対し供給する供給手段としては、滴下、塗布、スプレーによる噴霧等が挙げられるが、比較的少量を無駄なく広範囲に均一に供給できることから、高濃度処理液により処理する場合、スプレーによる噴霧が好ましい。供給手段としてスプレーによる噴霧を選択した場合、ベルトコンベア上の広範囲に比較的少量のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の処理液を無駄なく均一に供給可能である。スプレーによる噴霧の形態はスプレーノズルの種類によって変わるが、用途に応じて使い分ければよい。たとえば公知のスプレーノズルから適宜選択して使用することができる。上記スプレーノズルの例としては、処理液に液圧をかけることによって噴霧する一流体ノズルが挙げられる。
【0036】
スプレーノズルの液噴霧口のオリフィス径は、好ましくは0.3mm以上、2.4mm以下であり、より好ましくは0.4mm以上、1.0mm以下である。スプレー圧力としては、好ましくは0.1MPa以上、2.5MPa以下であり、より好ましくは0.1MPa以上、1.0MPa以下であり、さらに好ましくは0.1MPa以上、0.3MPa以下である。スプレーノズルから供給される処理液の液滴サイズとしては、50ミクロン以上、5,500ミクロン以下が好ましいが、均一に処理液を噴霧でき、ベルトコンベアの磨耗を防止できることから、100ミクロン以上、2,000ミクロン以下がより好ましい。スプレー角度としては、30°以上、150°以下であることが好ましく、60°以上、140°以下であることがより好ましい。尚、スプレー角度とは噴射された液体が広がった角度のことである。処理液の噴霧量としては、1つのノズルに対して、10mL/分以上、100mL/分以下であることが好ましく、最適な潤滑性の維持の点から10mL/分以上、50mL/分以下がより好ましい。噴霧の形状はスプレーノズルの種類によって変わるが、用途に応じて使い分ければよく、公知のものであれば何れも使用することはできるが、中でも、ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレー、ソリッドスプレー、エアーアトマイジングスプレー等の使用が好ましい。これらのスプレーのゾルを使用して処理液をベルトコンベア上に噴霧して供給することができる。
【0037】
低濃度範囲の処理液により処理する場合、低濃度処理液を滴下、塗布等により10~150mL/分の流量で連続供給又は間欠供給する方法、スプレーにより10~150mL/分の流量で連続噴霧供給又は間欠噴霧供給する方法が挙げられる。低濃度処理液の間欠噴霧供給の場合、低濃度処理液を10~150mL/分で20~120秒間程度噴霧し、その後30~120秒間程度噴霧を止める工程を連続的に繰り返し行うことが好ましい。また、間欠供給の場合は、供給時間に対し4倍以下の停止時間を設ける短時間間欠による供給方法が好ましい。停止時間が4倍を超えると潤滑性が低下する虞がある。
【0038】
一方、高濃度処理液により処理する場合、高濃度処理液を樹脂製又はSUS製のチューブを通して滴下、塗布等により10~100mL/分の流量で連続供給又は間欠供給する方法、スプレーにより10~50mL/分の流量で連続噴霧供給又は間欠噴霧供給する方法が挙げられる。高濃度処理液を供給する場合、使用する薬剤量の無駄の少ない間欠供給が好ましく、特に処理液を均一に供給できる間欠噴霧供給が好ましい。
【0039】
高濃度処理液を間欠供給する場合、供給時間に対して10~360倍の停止時間を設ける長時間間欠による供給方法が可能であるが高濃度処理液の間欠噴霧供給の場合、高濃度処理液を10~100mL/分程度の噴霧量で5~180秒間程度噴霧し、その後10~120分間程度噴霧を止める工程を連続的に繰り返し行うことが好ましい。間欠噴霧において、噴霧停止時にも潤滑性が保たれる理由は、一度噴霧した潤滑剤がベルトコンベア上に残存しているためである。
【0040】
たとえば本発明の潤滑性向上方法の具体的な第一の態様としては、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、当該濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に連続的に供給する潤滑性向上方法が挙げられる。
このように低濃度処理液の連続供給、連続噴霧供給によりベルトコンベアを処理する方法は、ステンレス製コンベア及び樹脂製コンベアの何れにも適用可能であるが、飲料と混合した際に生じる汚れがコンベアを汚染することを防止できる点から特にステンレス製コンベアや飲料充填機、キャッパー、シーマー、キャンフィードチェーン等の金属製コンベアの処理に適している。
【0041】
また本発明の潤滑性向上方法の具体的な第二の態様としては、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、当該濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止工程時間=10:1~1:4となるように間欠的に供給する潤滑性向上方法が挙げられる。
このように低濃度処理液の間欠供給、間欠噴霧供給により処理する方法は、ステンレス製コンベア及び樹脂製コンベアの何れにも適用可能であるが、供給の停止時間を設けても潤滑性が低下しにくい点から特に樹脂コンベアの処理に適している。
【0042】
また本発明の潤滑性向上方法の具体的な第三の態様としては、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を用い、当該濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度が0.04質量%以上、1質量%以下の範囲となるよう調製された処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベア上及び/又は搬送物上に、処理液供給工程時間:処理液供給停止時間=1:10~1:360となるように間欠的に供給する潤滑性向上方法が挙げられる
このように高濃度処理液を用い、かつ、処理液供給停止時間が長い上記第三の態様は、ステンレス製コンベア及び樹脂製コンベアの何れにも適用可能であるが、コンベア上で生じる摩耗粉由来の汚れを防止できる点から特に樹脂製コンベアの処理に適している。
第三の態様は、供給される処理液の濃度が高いため、供給量が少なくてよく、これに伴い使用する希釈水の使用量も少なくてよい。したがって、節水の観点から第三の態様は好ましい。処理液の供給間隔が長くても良好の潤滑性及び除菌性が維持されるという観点からは、第三の態様において、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に含有される(A)成分の濃度は、0.1質量%を超えて、1質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0043】
尚、第一の態様から第三の態様の潤滑性向上方法に用いられるベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分をバランスよく含有していればよいが、本発明のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物は、貯蔵安定性及び希釈安定性に優れるため、濃縮した状態で容易に取り扱うことができる。したがって本発明の潤滑性向上方法は、(A)成分がベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物中に2質量%以上、10質量%以下含有されているベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を好適に使用することができる。
【0044】
被搬送品の形状、構造、材質等は特に規定されないが、飲料物用の容器が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製、ポリアミド製、ポリカーボネート製等のプラスチック製容器;紙パック等の紙製容器(ワックス仕上げや樹脂コーティングを含む);鉄製、アルミニウム製、錫製、銅製、亜鉛製、あるいはこれらの複合材料等からなる金属製容器;ガラス製容器;セラミックス製容器等が挙げられる。これらの容器の中でも、本発明の効果が顕著に表れることから、鉄製容器又はアルミ製容器が好ましい。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。実施例、比較例のベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物において配合に用いた各成分を下記表1~6に示す。尚、下記表1~6に示す配合量に関する数値は、ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物に対する各成分の純分の割合(質量%)であり、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量%を示す。尚、括弧内のCに続く数はアルキル又はアルケニル基の炭素数を、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの平均付加モル数を表す。
【0046】
(A)成分:アニオン界面活性剤
A-1:ポリオキシエチレン(EO4モル)アルキル(C6~10混合)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールRA-600」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A-2:ポリオキシエチレン(EO2モル)アルキル(C12)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールML-220」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A-3:ポリオキシエチレン(EO4モル)アルキル(C12)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールML-240」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A-4:ポリオキシエチレン(EO7モル)アルキル(不飽和C18)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(株式会社ADEKA製「アデカコールPS-807」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A-5:ポリオキシエチレン(EO4モル)アルキル(不飽和C18)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールRB-410」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A-6:ポリオキシエチレン(EO2モル)アルキル(C12)エーテルリン酸エステルトリエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールML-220」をトリエタノールアミンで完全中和したもの)
A-7:ポリオキシエチレン(EO4モル)アルキル(C12)エーテルリン酸エステルモノイソプロパノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールML-240」をモノイソプロパノールアミンで完全中和したもの)
尚、上述するA-1~A-7は、何れも上述する一般式に関しm=1の化合物、及びm=2の化合物が混合して用いられたアニオン界面活性剤であり、Mは、水素である。
【0047】
(A)成分の比較成分
A′-1:ポリオキシエチレン(EO1モル)アルキル(C4)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールBH-650」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A′-2:アルキル(C12)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製「フォスファノールML-200」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
A′-3:ポリオキシエチレン(EO10モル)アルキル(C13)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(東邦化学工業株式会社製、「フォスファノールRS-710」をモノエタノールアミンで完全中和したもの)
【0048】
(B)成分:カチオン界面活性剤
B-1:アルキル(C8~18混合)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド
B-2:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド
B-3:ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート
B-4:ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド
B-5:オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド
B-6:アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド
B-7:N,N-ジデシル-N-メチル-ポリオキシエチル-アンモニウムプロピオネート
【0049】
(C)成分:L-グルタミン酸二酢酸塩
C-1:L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(昭和電工株式会社製「GLDA-4Na」)
【0050】
(C)成分の比較成分
C′-1:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(BASF社製「Trilon M Liquid」)
【0051】
(D)成分:水
D-1:東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)
【0052】
(E)成分:エチレンジアミン四酢酸塩
E-1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(ヌーリオンジャパン社製「ディゾルビンE-39」)
E-2:ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム(キレスト株式会社製「キレストP」)
E-3:トリエチレンテトラアミン六酢酸ナトリウム(キレスト株式会社製「キレストQ」)
E-4:1,3-プロパンジアミン四酢酸(キレスト株式会社製「キレストPD-4H」)
E-5:1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(キレスト株式会社製「キレストRA」)
【0053】
(F)成分:ノニオン界面活性剤
F-1:ドデシルアルコール(C12)のEO9モル付加物
F-2:オクタデセニルアルコール(C18)のEO9モル付加物
F-3:合成アルコール(C9~C11混合)のEO7モル付加物
F-4:ドデシルアルコール(C12)のEO5モル、PO3モル付加物
F-5:ドデシルアルコール(C12)のEO12モル、PO3モル付加物
【0054】
(G)成分:ポリオール
G-1:グリセリン
G-2:プロピレングリコール
G-3:分子量200のポリエチレングリコール(EO4モル付加物)
【0055】
(H)その他の成分:防腐剤
H-1:1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(ソー・ジャパン株式会社製「アクティサイドB20(N)」)
【0056】
(I)その他成分:pH調整剤
I-1:クエン酸
I-2:モノエタノールアミン
【0057】
実施例1~48、比較例1~8
東京都荒川区の水道水を用い、表1~6に示す配合でベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を調製し、これを用いて下記の試験を行い評価した。結果を表1~6に示す。
【0058】
※1-1 樹脂製コンベア潤滑性試験
以下の試験方法により樹脂製コンベアとボトルの間の動摩擦係数を測定し、潤滑剤濃縮組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を水道水で0.5質量%に希釈し、ベルトコンベアスピード30m/分、長さ1.5mのステンレス製コンベア上に、内径6mmの樹脂製チューブを介して100mL/分の供給速度で5分間連続供給した。5分後、供給を続けながら350mL容積のアルミ缶をベルトコンベア上に置き、摩擦係数を測定し、以下の基準で評価した。尚、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、ベルトコンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
[計算式1]
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)・・・(1)
評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.13以上0.16未満(滑りが良好)。
△:摩擦係数(μ)=0.16以上0.20未満(問題なく滑る)。
×:摩擦係数(μ)=0.20以上(滑りが悪い)。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0059】
※1-2 樹脂製コンベア潤滑性試験
以下の試験方法により樹脂製コンベアとボトルの間の動摩擦係数を測定し、潤滑剤濃縮組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を水道水で5質量%に希釈し、ベルトコンベアスピード30m/分、長さ1.5mの樹脂製コンベア上に、フルコーンスプレーノズルを介して50mL/分の供給速度で20秒間噴霧した後、350mL容積のアルミ缶をベルトコンベア上に置き、噴霧終了直後の摩擦係数(付着直後)と、噴霧終了30分後の乾燥時の摩擦係数(乾燥後)を測定し、以下の基準で評価した。尚、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、ベルトコンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
[計算式2]
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)・・・(2)
評価基準:
○:噴霧終了直後と、噴霧終了30分後の何れの場合も摩擦係数(μ)の値が0.08以上0.11未満(滑りが良好)。
△:噴霧終了直後と、噴霧終了30分後の何れか若しくは両方で摩擦係数(μ)の値が0.11以上0.13未満(問題なく滑る)。
×:噴霧終了直後と、噴霧終了30分後の両方で摩擦係数(μ)の値が0.13以上(滑りが悪い)又は0.08未満(滑りすぎる)。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0060】
※2 ステンレス製コンベア潤滑性試験
以下の試験方法によりステンレス製ベルトコンベアとボトルの間の動摩擦係数を測定し、潤滑剤濃縮組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を水道水で0.5質量%に希釈し、ベルトコンベアスピード30m/分、長さ1.5mのステンレス製コンベア上に、内径6mmの樹脂製チューブを介して100mL/分の供給速度で5分間連続供給した。5分後、供給を続けながら350mL容積のアルミ缶をベルトコンベア上に置き、摩擦係数を測定し、以下の基準で評価した。尚、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、ベルトコンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
[計算式3]
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)・・・(3)
評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.13以上0.16未満(滑りが良好)。
△:摩擦係数(μ)=0.16以上0.20未満(問題なく滑る)。
×:摩擦係数(μ)=0.20以上(滑りが悪い)。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0061】
※3 貯蔵安定性試験
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物について、以下の方法で安定性試験を行い、評価した。
試験方法:
各ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物100gを透明ガラス瓶に入れ、40℃で1ヶ月静置した後に外観を観察し、以下の基準で評価した。
評価基準:
○:透明である。
×:濁り、褐色変化又は沈殿が生じている。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
【0062】
※4 希釈液安定性試験
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物について、以下の方法で希釈液の安定性試験を行い、評価した。
試験方法:
硬度50ppmの人工硬水を用いてベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の0.3%希釈液を100g調製し、透明ガラス瓶に入れ室温で一晩静置した後の外観を観察し、以下の基準で評価した。
評価基準:
○:透明である。
△:白濁するが沈殿しない。
×:沈殿が生じている。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0063】
※5 除菌性試験
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の除菌性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
緑膿菌(供試菌株:NBRC13736)を、滅菌したSCD培地を用いて37℃で24時間培養し、10の9乗レベルcfu/mLの菌液とした。ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を純水で0.5質量%に希釈した水溶液10mLに対して菌液100μLを添加し25℃で15分接触した後、この1mLを分取して滅菌したSCDLP寒天培地で混釈培養し、生菌数を確認して以下の基準で評価した。
評価基準:
○:供試菌のLog reductionが6以上の菌数減少。
△:供試菌のLog reductionが4以上、6未満の菌数減少。
×:供試菌のLog reductionが4未満の菌数減少。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0064】
※6 カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性試験
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物のカチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
SCD寒天培地で培養した下記供試菌株を滅菌した生理食塩水に懸濁し、10の8乗レベルcfu/mLの菌液とした。40℃で1か月静置したベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を純水で0.5質量%に希釈した水溶液30mLに対して菌液300μLを添加し25℃にて7日間接触させた後、この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認して以下の基準で評価した。尚、使用する希釈水は硬度50ppmの人工硬水を用いた。
供試菌株:
食品工場で採取し、分離同定したカチオン界面活性剤抵抗性菌株であるSerratia marcescensを用いた。
評価基準:
○:供試菌のLog reductionが6以上の菌数減少
△:供試菌のLog reductionが4以上、6未満の菌数減少
×:供試菌のLog reductionが4未満の菌数減少
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0065】
※7 飲料混合性試験
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物の飲料混合性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
ベルトコンベア用潤滑剤濃縮組成物を水道水で0.5質量%に希釈した水溶液50mLと市販のビール50mLを100mL容ガラス製サンプル瓶中で混合し室温で5時間静置した後、混合液の外観及びサンプル瓶の底の状態を目視により以下の基準で評価した。
飲料混合性評価基準:
○:混合液が透明で沈殿物がない。
△:混合液に濁りが見られるが沈殿物がない。
×:沈殿物が見られる。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】