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特開2023-4397プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004397
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230110BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
C23C16/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106027
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江崎 匠大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅典
(72)【発明者】
【氏名】山田 和人
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K030EA06
4K030FA03
4K030GA02
4K030HA12
4K030JA10
4K030JA16
4K030KA39
5F004BA09
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA04
5F004CA06
5F004CB12
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】本開示は、基板支持部に載置される基板の温度制御性の改善技術を提供する。
【解決手段】基台と、基板を支持する基板支持面を有する基板支持部と、前記基板支持面の温度を調整可能なヒータと、前記基板支持面の温度を測定するための温度センサと、前記ヒータに供給する電力を調整する電力調整部と、制御部と、を備えるプラズマ処理装置によるプラズマ処理方法であって、前記基板支持面の設定温度を第1温度に設定する工程と、前記プラズマの生成前に、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第1電力を測定する工程と、前記プラズマの生成後に、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第2電力を測定する工程と、前記第1電力と前記第2電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、前記算出した入熱量及び前記基板支持部と前記温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第1温度を第2温度に補正する工程と、を含むプラズマ処理方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台上に配置され、基板を支持する基板支持面を有する基板支持部と、
前記基板支持部の内部に配置され、前記基板支持面の温度を調整可能なヒータと、
前記基板支持面の温度を測定するための温度センサと、
前記ヒータに供給する電力を調整する電力調整部と、
を備えるプラズマ処理装置によるプラズマ処理方法であって、
前記基板支持面の温度を第1温度に設定する工程と、
前記電力調整部から前記ヒータに電力を供給する工程と、
プラズマの生成前に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定したときに、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第1電力を測定する工程と、
前記プラズマの生成後に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定した時に、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第2電力を測定する工程と、
前記第1電力と前記第2電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、
前記算出した入熱量、及び前記基板支持部又は前記基板と前記温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第1温度を第2温度に補正する工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記基板支持部は、誘電体製の本体と、前記本体内に設けられた電極とを含む、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記温度センサは、前記ヒータよりも前記基台側に配置される、
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記基板支持部は、複数の領域を有し、
前記複数の領域ごとに前記ヒータを備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記複数の領域ごとに、前記温度センサを更に備える、
請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記電力調整部は、前記温度センサにより測定した温度が設定した設定温度になるように、前記ヒータに供給する電力を調整する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記基台上に配置され、環状部材を支持するリング支持面を有するリング支持部と、
前記環状部材の温度を調整可能な第2ヒータと、
前記リング支持面の温度を測定するための第2温度センサと、
前記第2ヒータに供給する電力を調整する第2電力調整部と、
を備え、
前記リング支持面の温度を第3温度に設定する工程と、
前記第2電力調整部から前記第2ヒータに電力を供給する工程と、
前記プラズマの生成前に、前記第2温度センサによって測定される前記リング支持面の温度が前記第3温度で安定したときに、前記第2電力調整部が前記第2ヒータに供給する第3電力を測定する工程と、
前記プラズマの生成後に、前記第2温度センサによって測定される前記リング支持面の温度が前記第3温度で安定した時に、前記第2電力調整部が前記第2ヒータに供給する第4電力を測定する工程と、
前記第3電力と前記第4電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、
前記算出した入熱量、及び前記リング支持部又は前記環状部材と前記温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第3温度を第4温度に補正する工程とを含む、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記リング支持部は、前記基板支持部と別体に設けられる、
請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
基台と、
前記基台上に配置され、環状部材を支持するリング支持面を有するリング支持部と、
前記環状部材の温度を調整可能な第2ヒータと、
前記リング支持面の温度を測定するための第2温度センサと、
前記第2ヒータに供給する電力を調整する第2電力調整部と、
を備えるプラズマ処理装置によるプラズマ処理方法であって、
前記リング支持面の温度を第3温度に設定する工程と、
前記第2電力調整部から前記第2ヒータに電力を供給する工程と、
プラズマの生成前に、前記第2温度センサによって測定される前記リング支持面の温度が前記第3温度で安定したときに、前記第2電力調整部が前記第2ヒータに供給する第3電力を測定する工程と、
前記プラズマの生成後に、前記第2温度センサによって測定される前記リング支持面の温度が前記第3温度で安定した時に、前記第2電力調整部が前記第2ヒータに供給する第4電力を測定する工程と、
前記第3電力と前記第4電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、
前記算出した入熱量、及び前記リング支持部又は前記環状部材と前記第2温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第3温度を第4温度に補正する工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【請求項10】
前記第2温度センサは、前記第2ヒータよりも前記基台側に配置される、
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記リング支持部は、複数の領域を有し、
前記複数の領域ごとに前記第2ヒータを備える、
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記複数の領域ごとに、前記第2温度センサを更に備える、
請求項11に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
基台と、
前記基台上に配置され、基板を支持する基板支持面を有する基板支持部と、
前記基板支持部内に配置され、前記基板支持面の温度を調整可能なヒータと、
前記基板支持面の温度を測定するための温度センサと、
前記ヒータに供給する電力を調整する電力調整部と、
プラズマを生成するためのプラズマ生成部と、
制御部と、
を備えるプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
前記基板支持面の設定温度を第1温度に設定する工程と、
前記電力調整部に前記ヒータに電力を供給させる工程と、
前記プラズマの生成前に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定したときに、前記電力調整部に前記ヒータに供給する第1電力を測定させる工程と、
前記プラズマの生成後に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定した時に、前記電力調整部に前記ヒータに供給する第2電力を測定させる工程と、
前記第1電力と前記第2電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、
前記算出した入熱量、及び前記基板支持部又は前記基板と前記温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第1温度を第2温度に補正する工程と、を実行する、
プラズマ処理装置。
【請求項14】
前記温度センサは、前記ヒータよりも前記基台側に配置される、
請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持部材と、基台を備える載置台が開示されている。支持部材は、ヒータを有する載置領域と、載置領域を囲む外周領域を有する。特許文献1には、複数のヒータが載置領域にも配置され、それぞれのヒータに個別に調整された電力が供給され、載置領域の複数の部分領域の温度が個別に調整されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-001688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板支持部に保持される基板の温度制御性の改善技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、基台と、前記基台上に配置され、基板を支持する基板支持面を有する基板支持部と、前記基板支持部の内部に配置され、前記基板支持面の温度を調整可能なヒータと、前記基板支持面の温度を測定するための温度センサと、前記ヒータに供給する電力を調整する電力調整部と、を備えるプラズマ処理装置によるプラズマ処理方法であって、前記基板支持面の設定温度を第1温度に設定する工程と、前記電力調整部から前記ヒータに電力を供給する工程と、前記プラズマの生成前に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定したときに、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第1電力を測定する工程と、前記プラズマの生成後に、前記温度センサによって測定される前記基板支持面の温度が前記第1温度で安定した時に、前記電力調整部が前記ヒータに供給する第2電力を測定する工程と、前記第1電力と前記第2電力に基づいて、前記プラズマからの入熱量を算出する工程と、前記算出した入熱量及び前記基板支持部と前記温度センサとの間の熱抵抗に基づき、前記第1温度を第2温度に補正する工程と、を含むプラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板支持部に保持される基板の温度制御性の改善技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の一例の構成例を説明する図である。
図2図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の処理について説明する図である。
図3図3は、本実施形態に係るプラズマ処理装置について、プラズマが生成していない状態での熱の流れを説明する図である。
図4図4は、本実施形態に係るプラズマ処理装置について、プラズマが生成している状態での熱の流れを説明する図である。
図5図5は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ処理方法について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。なお、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0009】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0010】
以下に、プラズマ処理装置の構成例について図1を用いて説明する。
【0011】
容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持体11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持体11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持体11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0012】
基板支持体11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台115及び基板支持部116を含む。基板支持部116は、例えば、誘電体製の本体と本体内に設けられた電極を含む静電チャックである。また、基板支持部116は、リングアセンブリ112を保持するリング支持部としてもよい。基板支持部116は、接着剤層117を介して基台115に固定される。基台115は、導電性部材を含む。基台115の導電性部材は下部電極として機能する。基板支持部116は、基台115の上に配置される。基板支持部116の上面は、基板支持面111aを有する。基板支持部116は、内部に基板支持面111aの温度を調整可能なヒータ118(図2参照)を含む。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持体11は、基板支持部116、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持体11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。基板支持体11は、基板支持部116のヒータ118よりも基台115側に、基板支持面111aの温度を測定するための温度センサ150を備える。なお、基板支持部116は、基板支持面111aとリング支持面111bとが一体となっているが、基板支持面111aを有する基板支持部と、リング支持面111bを有するリング支持部とを別体に備えるようにしてもよい。
【0013】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0014】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0015】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持体11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持体11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0016】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持体11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持体11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持体11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持体11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0017】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持体11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持体11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、基板支持部116内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0018】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
プラズマ処理装置1は、制御部2を含む。制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0020】
<本実施形態に係るプラズマ処理方法>
本実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置1の処理について説明する図である。具体的には、図2は、プラズマ処理装置1の基板支持体11の部分断面を示す。
【0021】
基板支持体11は、基台115と、基板支持部116と、を備える。基板支持部116は、接着剤層117を介して基台115に取り付けられる。
【0022】
基台115は、金属により形成される基台本体115aと、基台本体115aの内部に設けられる流路115cと、を備える。流路115cには、設定された温度に調節されたブライン等の冷媒が流れる。
【0023】
流路115cを流れる冷媒を熱交換することにより、基台115は、設定された温度に調整される。そして、基台115に取り付けられた基板支持部116は、基台115により冷却される。
【0024】
基板支持部116は、内部にヒータ118を備える。ヒータ118は、基板支持面111aに載置される基板を加熱する。
【0025】
基板支持体11は、温度センサ150を備える。温度センサ150は、ヒータ118よりも基台115側に配置されてよい。温度センサ150は、基板支持面111aの温度を測定する。
【0026】
ヒータ118と温度センサ150は、電力調整部200に接続される。電力調整部200は、温度センサ150で検出された温度が、制御部2により設定された設定温度Tsetになるように、ヒータ118に供給する電力を調整する。電力調整部200は、ヒータ118に供給する電力を、例えば、PID(Proportional-Integral-Differential)制御により、温度センサ150で検出された温度が設定温度Tsetになるように制御する。
【0027】
ここで、プラズマ処理装置1において、プラズマが生成していない場合と、プラズマが生成している場合における熱の流れについて説明する。
【0028】
図3は、本実施形態に係るプラズマ処理装置1について、プラズマが生成していない状態での熱の流れを説明する図である。図4は、本実施形態に係るプラズマ処理装置1について、プラズマが生成している状態での熱の流れを説明する図である。
【0029】
図3及び図4は、基板支持部116の表面Se(基板支持面111a)から流路115cの表面Scまでの熱の流れをモデル化した図である。
【0030】
基板支持部116の表面Seから流路115cの表面Scの間には、表面Seとヒータ118との間の熱抵抗Rshと、ヒータ118と温度センサ150との間の熱抵抗Rhtと、温度センサ150と流路115cまでの熱抵抗Rtcと、があるとする。また、表面Seの温度を温度Ts、ヒータ118の温度を温度Th、温度センサ150の温度を温度Tt、流路115cの温度、すなわち、流路115cを流れる冷媒の温度を温度Tcとする。
【0031】
なお、熱抵抗Rsh、熱抵抗Rht及び熱抵抗Rtcは、設計値や実測値により既知であるとする。
【0032】
流路115cの冷媒は、熱容量が十分大きいと考えられることから、ヒータ118から流入する熱を吸収しても、温度Tcは一定と考えることができる。
【0033】
図3のプラズマが生成していない状態において、熱的に平衡状態になったときには、表面Seの温度Tsとヒータ118の温度Thは等しくなる。このとき、電力調整部200は、温度センサ150の温度Ttが設定温度になるように、ヒータ118に供給する電力を調整する。
【0034】
ヒータ118から供給された熱量Qhtr1は、熱抵抗Rhtと熱抵抗Rtcを通って、表面Scから冷媒に流出する。
【0035】
一方、図4のプラズマが生成している状態では、表面Seから熱量Qrfが流入する。熱量Qrfは、熱抵抗Rsh、熱抵抗Rht及び熱抵抗Rtcを順に通過して表面Scから流出する。また、電力調整部200は、温度センサ150の温度Ttが設定温度になるように、ヒータ118に供給する電力を調整する。
【0036】
温度センサ150の設定温度を、プラズマが生成していない状態と生成している状態とで同じ温度Ttとすると、熱量Qhtr2は、プラズマから熱量Qrfが流入する分だけ熱量Qhtr1より小さくなる。すなわち、熱量Qhtr2は、式1のように表される。
【0037】
【数1】
【0038】
プラズマが生成している状態では、表面Seの温度Tsと温度センサ150の温度Ttの間には、式2に示す温度差ΔT(ケルビン)が生じる。
【0039】
【数2】
なお、式2では、例えば、熱量QrfをQrf(ワット)、熱量Qhrt2をQhrt2(ワット)、熱抵抗RhtをRht(ケルビン/ワット)、熱抵抗RshをRsh(ケルビン/ワット)とする。
【0040】
なお、プラズマが生成していない状態では、表面Seの温度Tsと温度センサ150の温度Ttの間には、式3に示す温度差ΔT0(ケルビン)が生じる。しかしながら、熱抵抗Rht及び熱量Qhtr1は既知であることから、温度差ΔT0を補正することは可能である。
【0041】
【数3】
なお、式3では、例えば、熱量Qhrt1をQhrt1(ワット)、熱抵抗RhtをRht(ケルビン/ワット)とする。
【0042】
本実施形態に係るプラズマ処理方法では、プラズマが発生している状態において、表面Seの温度が所望の温度になるように、ヒータ118に供給する電力を補正する。
【0043】
図5は、本実施形態に係るプラズマ処理装置1のプラズマ処理方法について説明するフローチャートである。なお、処理を開始する段階では、プラズマが生成していない状態であるとする。
【0044】
最初に、制御部2は、電力調整部200の設定温度Tset、すなわち、基板支持面111aの設定温度Tsetを第1温度T1に設定する(ステップS10)。次に、制御部2は、電力調整部200を制御し、電力調整部200からヒータ118に電力を供給する(ステップS20)。制御部2は、電力調整部200からヒータ118に電力を供給してから、温度センサ150による測定温度が設定温度Tsetである第1温度T1に安定するまで待機する。
【0045】
なお、温度センサ150で測定した温度が第1温度T1になったという判定は、温度センサ150で測定した温度が、第1温度T1に完全に一致する場合に限らず、例えば、温度センサ150で測定した温度が、第1温度T1を含む制御範囲に含まれる場合も含む。
【0046】
温度センサ150による測定温度が第1温度T1に安定すると、制御部2は、電力調整部200を制御し、電力調整部200がヒータ118に供給する第1電力P1を測定する(ステップS30)。なお、ステップS10、ステップS20及びステップS30は、プラズマが生成していない状態で、すなわち、プラズマ生成前に、実行される。
【0047】
次に、制御部2は、ガス供給部20から処理ガスを供給し、電源30からRF電力を供給して、すなわち、プラズマ生成部を制御して、プラズマを生成する(ステップS40)。そして、制御部2は、プラズマの生成を開始してから、温度センサ150で測定した温度が第1温度T1に安定するまで待機する。温度センサ150による測定温度が第1温度T1に安定すると、制御部2は、電力調整部200を制御し、電力調整部200がヒータ118に供給する第2電力P2を測定する(ステップS50)。なお、ステップS50は、プラズマが生成している状態で、すなわち、プラズマ生成後に、実行される。
【0048】
次に、制御部2は、第1電力P1と第2電力P2に基づいて、プラズマが生成している状態において、単位時間あたりにプラズマから入熱する入熱量Qinを算出する(ステップS60)。第1電力P1をヒータ118に供給したときにヒータ118が発生する単位時間あたりの熱量を熱量Q1、第2電力P2をヒータ118に供給したときにヒータ118が発生する単位時間あたりの熱量を熱量Q2とすると、入熱量Qinは式4で表される。
【0049】
【数4】
【0050】
ヒータ118の電力の算出方法について説明する。例えば、電力調整部200は、ヒータ118をPWM(Pulse Width Modulation)制御で電力制御するとする。最初に、電力調整部200がヒータ118に直流電圧を供給する場合について説明する。ヒータ118のヒータ抵抗をRhtr(オーム)、電力調整部200から電力を供給する際の直流電圧をVsup(ボルト)、PWM制御を行う際のデューティ比をp(%)、ヒータ118から出力される単位時間あたりの熱量をPhtr(ワット)とすると、ヒータ118から出力される電力は、式5で表される。
【0051】
【数5】
【0052】
式5により算出した電力を用いて、ヒータ118から発生する単位時間あたりの熱量を計算する。
【0053】
次に、電力調整部200がヒータ118に交流電圧を供給する場合について説明する。ヒータ118のヒータ抵抗をRhtr(オーム)、電力調整部200から電力を供給する際の交流電圧の振幅をVsup2(ボルト)、PWM制御を行う際のデューティ比をp(%)、ヒータ118から出力される単位時間あたりの熱量をPhtr(ワット)とすると、ヒータ118から出力される電力は、式6で表される。なお、cosθは力率を表す。
【0054】
【数6】
【0055】
式6により算出した電力を用いて、ヒータ118から発生する単位時間あたりの熱量を計算する。
【0056】
また、補正前の設定温度TsetをTset1(℃)、補正後の設定温度TsetをTset2(℃)とすると、設定温度Tset2は式7のように表される。
【0057】
【数7】
なお、式7では、例えば、熱量Q1をQ1(ワット)、入熱量QinをQin(ワット)、熱抵抗RhtをRht(ケルビン/ワット)、熱抵抗RshをRsh(ケルビン/ワット)とする。
【0058】
なお、基板支持部116の表面Seとヒータ118との間の熱抵抗Rsh及びヒータ118と温度センサ150との間の熱抵抗Rhtは、基板支持部116と温度センサ150との間の熱抵抗の一例である。
【0059】
さらに、基板支持面111aに載置したウェハの温度を制御したい場合には、ウェハの熱抵抗をRw(ケルビン/ワット)、ウェハと基板支持面111aとの接触熱抵抗をRcon(ケルビン/ワット)、補正後の設定温度TsetをTsetw(℃)とすると、設定温度Tsetwは式8のように表される。
【0060】
【数8】
なお、式8では、例えば、熱量Q1をQ1(ワット)、入熱量QinをQin(ワット)、熱抵抗RhtをRht(ケルビン/ワット)、熱抵抗RshをRsh(ケルビン/ワット)とする。
【0061】
なお、基板支持部116の表面Seとヒータ118との間の熱抵抗Rsh、ウェハの熱抵抗Rw、ウェハと基板支持面111aとの接触熱抵抗Rcon及びヒータ118と温度センサ150との間の熱抵抗Rhtは、基板Wと温度センサ150との間の熱抵抗の一例である。
【0062】
なお、上記の説明では、基板支持面111aについて説明したが、リングアセンブリ112の環状部材を支持する環状領域(リング支持面)111bについても同様の処理を行うことによって、リングアセンブリ112の環状部材の温度を所望の温度に調整できる。
【0063】
例えば、本体部111の環状領域111bに、ヒータ(第2ヒータ)及び当該ヒータ(第2ヒータ)に電力を供給する電力調整部(第2電力調整部)と、リング支持面111bの温度を測定する温度センサ(第2温度センサ)と、含むようにしてもよい。
【0064】
また、上記の説明では、基板支持部116が有するヒータ118及び温度センサ150の個数については言及していないが、ヒータ118及び温度センサ150は複数であってもよい。すなわち、基板支持部116は、複数の領域を有し、複数の領域ごとにヒータ118と温度センサ150を備えるように構成されてもよい。また、本体部111の環状領域111bが第2ヒータを備える場合も同様に、環状領域111bは、複数の領域を有し、複数の領域ごとに第2温度センサを備えるように構成されてもよい。
【0065】
<作用・効果>
本開示のプラズマ処理装置1によれば、プラズマが生成している状態において、基板支持部に載置される基板の温度制御性を改善することができる。
【0066】
今回開示された本実施形態に係るプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 容量結合プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持体
20 ガス供給部
30 電源
111 本体部
111a 基板支持面
111a 中央領域(基板支持面)
111b 環状領域(リング支持面)
112 リングアセンブリ
115 基台
115a 基台本体
115c 流路
116 基板支持部
117 接着剤層
118 ヒータ
150 温度センサ
200 電力調整部
図1
図2
図3
図4
図5