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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044269
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20230323BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230323BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230323BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230323BHJP
   C09J 101/02 20060101ALI20230323BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20230323BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/08
C09J101/02
H05K1/09 D
H05K3/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152200
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】591023642
【氏名又は名称】中越パルプ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 慶郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 総平
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 道也
(72)【発明者】
【氏名】福本 信次
(72)【発明者】
【氏名】大島 信孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝大
【テーマコード(参考)】
4E351
4J040
5E319
【Fターム(参考)】
4E351AA16
4E351BB01
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD12
4E351DD19
4E351DD20
4E351DD52
4E351DD56
4E351EE12
4E351EE13
4E351EE16
4E351EE18
4E351EE20
4E351EE24
4E351GG20
4J040BA022
4J040EC401
4J040JB02
4J040JB10
4J040KA04
4J040KA32
4J040NA19
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC03
5E319BB11
5E319CC34
5E319CD25
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】本発明は、バインダ樹脂として、柔軟性を有する樹脂を使用し、フレキシブルデバイスに求められるような柔軟な動きを可能にすること、及び基板に変形が生じても電気抵抗率の上昇を抑えることのできる導電性接着剤及び回路基板を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)導電性フィラーと、(B)樹脂とを含む導電性接着剤であって、(C)CNFを含む、導電性接着剤である。
本発明によれば、フレキシブルデバイスに求められるような柔軟な動きを可能にしつつ、基板に変形が生じても電気抵抗率の上昇を抑えることのできる導電性接着剤及び回路基板が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性フィラーと、(B)樹脂とを含む導電性接着剤であって、
(C)セルロースナノファイバーを含む、導電性接着剤。
【請求項2】
前記(B)樹脂はウレタン変性エポキシ樹脂である、請求項1に記載の導電性接着剤。
【請求項3】
フレキシブル基板、電子部品、および接続層を備える回路基板であって、
前記電子部品は、前記接続層を介して前記基板に接着され、
前記接続層は、請求項1または請求項2に記載の導電性接着剤が硬化してなる、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤、および導電性接着剤が用いられた回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルデバイスは、柔軟性を有する基板部分に、硬い部分が存在する電子部品等を接合する必要があるために、硬さの異なる物同士を接合する必要がある。また、フレキシブルデバイスで用いられる基板は、耐熱性が低いものが一般的である。そのため、接合材料として一般的に用いられている鉛フリーはんだは、実装温度が高いため、フレキシブルデバイス用の接合材料として用いることは難しい。
【0003】
そこで、特許文献1には、鉛フリーはんだを使用せずに、被着物同士の接着強度が高い異方導電性接着剤を提供することを目的として、導電性フィラーと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、活性剤とを含有し、エポキシ樹脂成分が、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格のうちの少なくとも一つの骨格と、炭素数6以上の炭化水素骨格とを有するエポキシ樹脂を含有する異方導電性接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-45463号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】X-ray and electron microscope studies of the degradation of cellulose by sulphuric acid Mukherjee, S. M.; Woods, H. J.: Biochim. Biophys. Acta, 10, 499501(1953)
【非特許文献2】Characterization of Amphiphilic Janus-Type Surface in Cellulose Nanofibril Prepared by Aqueous Counter-CollisionTsubasa Tsuji, Kunio Tsuboi, Shingo Yokota, Satomi Tagawa, and Tetsuo KondoBiomacromolecules 2021, 22, 2, 620&#8211;628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,フレキシブルデバイスに求められるような柔軟な動きを可能にするためには、ヤング率が低く、応力を緩和できる柔軟性をもつ接合材料が必要となる。ヤング率の低い樹脂として、ポリウレタン樹脂等が考えられるが,接着強度や耐熱性が低いなどの問題がある。
また,導電性接着剤の導電性は導電性フィラー同士の接触によって得られているため,変形が生じると接触が乖離し導電パスが減少するため電気抵抗率が上昇してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、バインダ樹脂として、柔軟性を有する樹脂を使用し、フレキシブルデバイスに求められるような柔軟な動きを可能にすること、及び基板に変形が生じても電気抵抗率の上昇を抑えることのできる導電性接着剤及び回路基板を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、バインダ樹脂に柔軟な樹脂を用いることで、基板の変形に追従できるようにするために、樹脂に柔軟性を付与すること、及び基板の変形の際に導電性フィラーの乖離により電気抵抗が上昇することを防ぐために、セルロースナノファイバー(以下、CNFということもある。)を添加することによって、導電性フィラーの乖離を抑制することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)導電性フィラーと、(B)樹脂とを含む導電性接着剤であって、(C)CNFを含む、導電性接着剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレキシブルデバイスに求められるような柔軟な動きを可能にしつつ、基板に変形が生じても電気抵抗率の上昇を抑えることのできる導電性接着剤及び回路基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る回路基板である。
図2】4端子法における回路図である。
図3】4点曲げ試験の模式図である。
図4】電気伝導率の測定結果である。
図5】曲げ変形を0~0.6%の範囲で与えたときの電気伝導率変化を示す図である。
図6】曲げ変形を0~2.0%の範囲で与えたときの電気伝導率変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る導電性接着剤および回路基板について、それぞれ詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、発明の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
なお、本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味する。
【0013】
(用語の定義)
本明細書における「CNF」との用語は、CNFとCNCを含み、平均太さ3~200nmであり、平均長さ300nm以上のセルロース繊維のことをいい、平均幅3~4nmのいわゆるシングルセルロースナノファイバー、およびシングルセルロースナノファイバーが、いくつか集合し複数層となっている平均幅10~200nmのシングルセルロースナノファイバー集合体や硫酸等で結晶部のみとしたセルロースナノクリスタル(CNC)を包含する。また、セルロース繊維の長さ方向に枝分かれのないものだけではなく、枝分かれしているものも存在する。
本明細書における「フレキシブルデバイス」との用語は、薄くて柔らかく曲げたり巻いたりすることが可能な素材や基板に圧力を加えた時に変形する基板を使用した電子回路とそれを用いたデバイスのことをいう。具体的にはフレキシブルディスプレイ、フレキシブルセンサ、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル電極基板、フレキシブル照明、及びフレキシブルバッテリー等が挙げられる。
【0014】
(導電性接着剤の構成)
本実施形態に係る導電性接着剤は、(A)導電性フィラーと、(B)樹脂を含み、さらに、(C)CNFを含む。
また、本願発明に係る導電性接着剤は、(D)他の成分として、硬化剤、溶剤、充填剤、難燃剤、イオントラップ剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤及び防腐剤などの成分を含んでも良い。
【0015】
<(A)導電性フィラー>
本実施形態の導電性接着剤は、導電性フィラーとして(A)導電性フィラーを含む。導電性フィラーは、特に制限されないが、導電性の金属粒子を用いることができる。金属粒子の金属の種類としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、スズ(Sn)、これらの合金、カーボンブラック、カーボンロッド、カーボンフィラー及び導電性酸化物等を用いることができる。
導電性フィラーは、単一の材料から構成される粒子でもよく、コア粒子と、コア粒子の表面を被覆するシェル層とからなるコアシェル構造の粒子であってもよい。コアシェル構造の粒子としては、アルミナ、シリカなどのセラミックからなるコア粒子の表面が、上記金属または上記合金によって被覆された粒子等が挙げられる。
【0016】
本発明の実施形態では、導電性フィラーが、銀粒子又は銀を含む合金粒子であることが好ましく、銀粒子であることがより好ましい。銀の電気伝導率は、他の金属と比べて高いので、銀粒子を用いることにより、より高い導電性の導電性接着剤を得ることができる。
【0017】
導電性フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、粒状、フレーク状、又は鱗片状の導電性フィラーを用いることが可能である。
【0018】
導電性フィラーの平均粒径は、0.1μm~50μmが好ましく、0.1μm~10μmがより好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる体積基準メジアン径(D50)を意味する。D50が0.1μm未満の場合、導電性が不十分となるおそれがある。D50が50μmを超える場合、導電性フィラーが塗膜から突出しやすくなり、薄く塗布することが難しい。
【0019】
導電性フィラーの製造方法は、特に限定されず、例えば、還元法、粉砕法、電解法、アトマイズ法、熱処理法、あるいはそれらの組合せによって製造することができる。
【0020】
本願発明に係る導電性接着剤における導電性粒子の配合割合は、100体積部の導電性接着剤に対して15~70体積部が好ましく、40~60体積部がより好ましい。40体積部未満の場合、導電性が不十分となる傾向がある。60体積部を超える場合、相対的に樹脂の配合割合が低下し接着強度の低下を招くためである。
【0021】
<(B)樹脂>
樹脂は、接着性を有するものであり、導電性接着剤に接着性を付与する。樹脂としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることができる。ただし、使用容易性の観点からは、熱硬化性樹脂が好ましい。被対象物である2つの部材間に配置して加熱するという簡便な作業によって容易に硬化させることができ、硬化に伴い2つの部材を強固に接着させることができるためである。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。塗布の容易性、および硬化後の強度に優れる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ樹脂は、本発明の効果がより優れる理由から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
また、本発明において、エポキシ樹脂は、変性エポキシ樹脂を使用することができる。変性エポキシ樹脂としては、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのなかでも、特にウレタン変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
本発明におけるウレタン変性エポキシ樹脂は、ビスフェノール系エポキシ樹脂(a)を、中高分子量ポリオール化合物(b)、イソシアネート化合物(c)及び鎖延長剤としての低分子ポリオール化合物(d)によって変性して得られる。さらに、得られたウレタン変性エポキシ樹脂に後述する(C)CNFを添加してもよい。
【0026】
中高分子量ポリオール化合物(b)としては、数平均分子量が1500~5000で、ビスフェノール系エポキシ樹脂(a)との相溶性に優れるものが好ましい。例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを開環重付加させたポリエチレングリコール類やポリプロピレングリコール類が例示できる。数平均分子量が1500~5000、好ましくは2000~3000のポリプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールが、ウレタン変性エポキシ樹脂組成物を増粘もしくは半固形化させず、柔軟性を付与する観点から好ましい。
【0027】
イソシアネート化合物(c)としては、エポキシ樹脂(a)との相溶性に優れるものが好ましい。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。
低分子量で増粘性がなく低価格、安全性などの観点から4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0028】
鎖延長剤として使用される低分子量ポリオール化合物(d)は、概ね数平均分子量が200未満のポリオール化合物である。具体的には、1,4-ブタンジオール、1,6-ペンタンジオール等の多価アルコールなどが挙げられる。好ましくはOH基を2つ有するジオールであり、入手の容易さ、価格と特性のバランスの良さの点から1,4-ブタンジオールが、より好ましい。
【0029】
本願発明に係る導電性接着剤における樹脂の配合割合は、100体積部の導電性接着剤に対して30~85体積部が好ましく、40~60体積部がより好ましい。40体積部未満の場合、導電性接着剤の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる傾向がある。60体積部を超える場合、相対的に導電性粒子の配合割合が低下し、これに伴い導電性接着剤の導電性が不十分となる傾向がある。
【0030】
<(C)CNF>
本願発明に用いることのできるCNFとしては、特許第6867613号公報に記載の微細状繊維の製造方法や特許第6704551号公報に記載の天然高分子としてセルロースを用いたセルロースナノファイバー及び非特許文献1に記載の調製方法や各公報に記載の他の原料等を由来成分とする微細状繊維の製造方法を参照することができる。
また、本願発明に用いることのできるCNFとしては、特許第6245779号公報に記載の誘導体化CNFの製造方法によって、得られる誘導体化CNFを用いることもできる。
【0031】
これらCNF分散液の原料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。また原料の多糖としてはα-セルロース含有率60%~99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α-セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすく、α-セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、熱安定性が高く、着色抑制効果が良好である。一方、99質量%以上のものを用いた場合、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
【0032】
CNFの結晶化度は結晶化度50以上が好ましい。結晶化度については、X線回折法等によって測定することができ、結晶化度50未満の場合は、セルロースの天然結晶が有する特性を十分に引き出せなくなるほか、腐敗等による保管時の経時劣化を引き起こす虞がある。
【0033】
特許第6704551号の0018段落に記載のACC法(水中対向衝突法)により、平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上であるCNFが得られる。平均太さと平均繊維長さの測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を適宜選択し、CNFを観察・測定し、得られた写真から20本以上を選択し、これをそれぞれ平均化することにより求める。なお、非特許文献2に記載の蛍光増幅を利用する蛍光顕微鏡観察する方法を採用してもよい。
【0034】
本願発明に係る導電性接着剤におけるCNF分散液の配合割合は、0.02~5重量%が好ましく、0.04~2.5重量%がより好ましい。0.04重量%未満の場合、CNF繊維の機能を十分に発現することができず、導電性粒子の凝集性および導電パス数が不十分となるおそれがある。2.5体積%を超える場合、粘度が高くなって取扱性に悪影響を与えたり、気泡混入の原因になるおそれがあるからである。
【0035】
<(D)他の成分>
本実施形態に用いる硬化剤としては、イミダゾール類、イミダゾール誘導体およびエポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
イミダゾール類としては、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンなどが挙げられる。これらの中でも、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、および1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどを用いることが好ましい。
イミダゾール類の市販品としては、2P4MHZ、2PHZ-PW、2E4MZ-A、2MZ-A、2MA-OK、2PZ-CN、2PZCNS-PW、C11Z-CN、およびC11Z-Aなど(四国化成工業社製など、商品名)が挙げられる。
【0037】
イミダゾール誘導体は、イミダゾール類から誘導して得られるものである。前記イミダゾール誘導体の市販品としては、サンマイド LH-210、Imicure AMI-2、および、Imicure HAPIなど(エアープロダクツ社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN-23、PN-F、MY-24、VDH、UDH、PN-31、PN-40(味の素ファインテクノ社製、商品名)、EH-3615S、EH-3293S、EH-3366S、EH-3842、EH-3670S、EH-3636AS、EH-4346S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
【0038】
硬化剤成分の配合量は、樹脂100質量%に対して、1質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以上、6質量%以下である。
【0039】
本実施形態に用いる溶剤には、導電性接着剤の作製時の作業性及び使用時の塗布作業性をより良好にするため、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、α-テルピネオール等の有機溶剤を用いることができる。
これらの希釈剤を含有する場合、希釈剤の含有量は、導電性接着剤の全量に対して0~40質量%であることが好ましい。40質量%を超えると乾燥硬化時のマイグレーションによる不均一化が生じる。
【0040】
<導電性接着剤の製造方法>
本実施形態に係る導電性接着剤の製造方法は特に制限されず、混合機を用いて、各成分を所定の配合割合で配合することにより製造することができる。混合機としては、ライカイ機、プロペラ攪拌機、ニーダー、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサーなどが挙げられる。
【0041】
<導電性接着剤が用いられた回路基板の製造>
本実施形態に係る回路基板10は、次のようにして製造することができる。図1を参照しながら説明する。まず基板1上に、従来公知の方法により導電体(図示せず)をプリントする。次に、導電体の表面のうち、電子部品2を接続させる部分に、本願発明に係る導電性接着剤を塗布する。
なお、導電体としては、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、およびこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。
また、基板1としては、特に制限されることなく、公知のものを使用することができる。
さらに、電子部品2としては、集積回路、抵抗器、コンデンサなどが挙げられる。
【0042】
導電性接着剤の塗布方法は特に制限されず、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディスペンサーの利用など、任意の方法を用いることができる。
ここで、導電性接着剤に有機溶剤などの揮発成分が含まれる場合には、導電性接着剤を導電体の表面に塗布した後、常温または加熱環境下で揮発成分を揮発させることが好ましい。揮発成分が残ることに由来する導電性または密着性への悪影響の可能性を排除ためである。
【0043】
次に、導電性接着剤上に電子部品2を配置する。そして導電性接着剤を加熱して樹脂を硬化させる。加熱の温度および時間は、樹脂および硬化剤の種類に応じて適宜調整されるが、好ましくは150℃~200℃程度、より好ましくは150℃~185℃程度が挙げられる。硬化時間としては、好ましくは0.1時間~2.0時間程度、より好ましくは0.2時間~1.2時間程度が挙げられる。硬化は、大気、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)等の雰囲気下で行うことができる。硬化手段としては、特に制限されず、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、フラッシュランプ照射、マイクロウェーブ等が挙げられる。これにより導電性接着剤が硬化して接続部3となる。
【実施例0044】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(参考例1~6)
エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、CNF含有ウレタン変性エポキシ樹脂を調製し、硬化剤の2-フェニル-4-メチル5-ヒドロキシメチルイミダゾールを添加して、脱泡攪拌後、一次処理(100℃、30分間)後に、(180℃、15分間)加熱硬化させ、硬さ試験測定用サンプル1~6(参考例1~6)を作成して、硬さ試験の測定を行った。
加熱硬化前の各サンプルの量を表1に示し、測定結果を表2に示す。
【0046】
以下に、硬さ試験の測定条件について記載する。
(硬さ試験)
ダイナミック超微小硬度計株式会社島津製作所社製)を用いて、稜間角115°三角錐圧子を試料表面に設定試験力になるまで押し付けくぼみを作り、その大きさ(L)を測定し、下記の式から、くぼみ読み取り硬さ(HT115)を算出した。
HT115=160.07×70/L
【0047】
(参考例1)
下記の[材料A]に示す各材料を用いてウレタン変性エポキシ樹脂を作成し、上述の硬さ試験測定用サンプル1を作成した。
[材料A]
(a)ビスフェノールF型エポキシ樹脂((商品名:「EPICLON830-S」、DIC株式会社製))
(b)ポリエチレングリコール(2000)((商品名:「ポリエチレングリコール 2,000」、キシダ化学株式会社製))
(c)4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート((商品名:「Methylenediphenyl 4,4’-Diisocyante」、東京化成工業株式会社製))
【0048】
(参考例2)
上記参考例1に、さらにセルロースナノファイバー((商品名:「nanoforest-S、BB-C」、中越パルプ工業株式会社製)))を2.5vol%添加したこと以外、参考例1と同様の方法によりCNF含有ウレタン変性エポキシ樹脂を作成して、上述の硬さ試験測定用サンプル2を調製した。
【0049】
(参考例3)
上記参考例1に、さらにセルロースナノファイバー((商品名:「nanoforest-S、BB-C」、中越パルプ工業株式会社製)))を5.0vol%添加したこと以外、参考例1と同様の方法によりCNF含有ウレタン変性エポキシ樹脂を作成して、硬さ試験測定用サンプル3を調製した。
【0050】
(参考例4)
上記参考例1の、ウレタン変性エポキシ樹脂に代えて、エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:「EPICLON830-S」、DIC株式会社製))を用いて、上述の硬さ試験測定用サンプル4を作成した。
【0051】
(参考例5)
上記参考例4に、さらにセルロースナノファイバー((商品名:「nanoforest-S、BB-C」、中越パルプ工業株式会社製)))を2.5vol%添加したこと以外、参考例4と同様の方法によりエポキシ樹脂を作成して、上述の硬さ試験測定用サンプル5を調製した。
【0052】
(参考例6)
上記参考例5に、さらにセルロースナノファイバー((商品名:「nanoforest-S、BB-C」、中越パルプ工業株式会社製)))を5.0vol%添加したこと以外、参考例4と同様の方法によりエポキシ樹脂を作成して、上述の硬さ試験測定用サンプル6を調製した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表2により、CNFを含有していないウレタン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の約27%の硬さとなることが明らかとなり、エポキシ樹脂にポリウレタンの柔軟性を付加できることが明らかとなった。
また、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂とともにCNFを含有することによって、樹脂の硬さが上がることが明らかとなった。
【0056】
(実施例1、2、比較例1)
表3に示す各成分を含有する導電性接着剤を調製した。
水分散CNFを乳鉢で15分間すりつぶした。CNFとIPAを混合し1時間共沸することで水とIPAを置換し、ここにエポキシ樹脂を加え100℃程度に加熱し、IPAを揮発させた。そこに希釈剤、硬化剤、銀フィラーの順に加え、15分混合攪拌した。その後、自転公転ミキサーで0.6kPa、1500rpmで5分間脱泡攪拌を行った。
以上の製造方法により、導電性接着剤を調製した。次いで、得られた導電性接着剤をFR-4基板に塗布し、溶剤揮発のために100℃で30分、硬化のために180℃で15分間加熱した。その後、硬化後の基板を用いて、電気伝導率と曲げ変形を与えたときの電気伝導率を測定した。
電気伝導率の測定結果を図4に示す。また、曲げ変形を0~0.6%の範囲で与えたときの電気伝導率変化を図5に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
(実施例3,4、比較例2)
表4に示す各成分を含有する導電性接着剤を調製した。
水分散CNFを乳鉢で15分間すりつぶした。CNFとIPAを混合し1時間共沸することで水とIPAを置換し、ここにウレタン変性エポキシ樹脂を加え100℃程度に加熱し、IPAを揮発させた。そこに希釈剤、硬化剤、銀フィラーの順に加え、15分混合攪拌した。その後、自転公転ミキサーで0.6kPa、1500rpmで5分間脱泡攪拌を行った。
なお、ウレタン変性エポキシ樹脂の製造法は、上記参考例1におけるウレタン変性エポキシ樹脂の製造方法と同様に作成した。
以上の製造方法により、導電性接着剤を調製した。次いで、得られた導電性接着剤をFR-4基板に塗布し、溶剤揮発のために100℃で30分、硬化のために180℃で15分間加熱した。その後、硬化後の基板を用いて、電気伝導率と曲げ変形を与えたときの電気伝導率を測定した。
電気伝導率の測定結果を図4に示す。また、曲げ変形を0~0.6%の範囲で与えたときの電気伝導率を図5に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
以下に、電気的特性評価の測定方法について記載する。
【0061】
(4端子法による電気伝導率の算出)
4端子法の回路を図2に示す。両端の電極間4及び5に定電圧定電流電源を用いて電流を流し、1Ωのシャント抵抗(R)にかかる電圧から電流値(i)を算出した。電流値を求める式を下記の式(1)に示す。
i=V/R (1)
また,中央電極間20mmの電圧(VAB)と算出した電流値(i)からAB間の電気抵抗(RAB)を測定した。電気抵抗を求める式を下記の式(2)に示す。
R=VAB/i (2)
また,算出した電気抵抗値を長さ(l)で割り,断面積(S)をかけることで電気抵抗率を求めた。導電性接着剤6を塗布したFR-4基板の断面から導電性接着剤部の断面積を測定した。電気抵抗率を求める式を下記の式(3)に示す。
ρ=S/lR (3)
また、その逆数の電気伝導率を下記の式(4)より求めた.
σ=1/ρ (4)
【0062】
(4点曲げ試験)
次に,曲げ変形は4点曲げにより与えた。4点曲げ試験の模式図を図3に示す。変位量をs,長さをL,厚さをhとすると,曲げひずみ量εfは式(5)によって求められる.
εf=4.7sh/L
なお、L=60mm,厚さ(h)=1.5mmとした。
【0063】
(電気伝導率測定結果)
図4より、樹脂をエポキシ樹脂からウレタン変性樹脂に代えることによって、電気伝導率が上昇することが明らかとなった。また、CNFを添加すると電気伝導率が上昇することが明らかとなった。
【0064】
(曲げ変形を0~0.6%の範囲で与えたときの電気伝導率変化の測定結果)
図5より、ウレタン変性エポキシ樹脂を用いることで、電気伝導率の減少割合が小さくなることが明らかとなった。また、CNFを添加することによって、電気伝導率の減少割合が大きくなることが明らかとなった。さらに、0.6%曲げひずみでは、硬さが硬いほど、電気伝導率の減少割合が大きくなることが明らかとなった。
【0065】
(実施例5、比較例3,4)
表5に示す各成分を含有する導電性接着剤を調製した。
水分散CNFを乳鉢で15分間すりつぶした。CNFとIPAを混合し1時間共沸することで水とIPAを置換し、ここにウレタン変性エポキシ樹脂(実施例5)、エポキシ樹脂(比較例3,4)を加え100℃程度に加熱し、IPAを揮発させた。そこに希釈剤、硬化剤、銀フィラーの順に加え、15分混合攪拌した。その後、自転公転ミキサーで0.6kPa、1500rpmで5分間脱泡攪拌を行った。
以上の製造方法により、導電性接着剤を調製した。次いで、得られた導電性接着剤をFR-4基板に塗布し、溶剤揮発のために100℃で30分、硬化のために180℃で15分間加熱した。その後、硬化後の基板を用いて、曲げ変形を与えたときの電気伝導率を測定した。
曲げ変形を0~2.0%の範囲で与えたときの電気伝導率変化を図6に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
(破断時の曲げひずみ量)
図6より、比較例4では、曲げひずみ量を大きくしていくと徐々に電気伝導率が減少していき、1.2%の曲げひずみ量で電気伝導率が0となり、導通が消滅した。
また、比較例3においても、比較例4と同様に、曲げひずみ量を大きくしていくと徐々に電気伝導率が減少していき、1.6%の曲げひずみ量で電気伝導率が0となり、導通が消滅した。
一方、実施例3においては、2%の曲げひずみ量を与えても導通は消滅しなかった。
これは、ウレタン変性エポキシ樹脂を用いていることに加えて、CNFを添加することによって細かく分散された空隙が応力緩和を担っていることや、CNF繊維状に導電フィラーが規則的に担持されて並び効率的な導電パスを形成していることが推測される。
また、電気伝導率の上昇については、CNF添加による粘性の上昇からボイドが残留し、その他の部分の銀フィラー体積率が上昇している可能性やCNFによって金属粒子の凝集性が向上したことによる高導電パス形成の可能性が考えられる。さらに、CNFが導電フィラーを吸着することで溶媒と導電フィラーの馴染みを低下させ溶媒のガス化と蒸散を促進したとも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6