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特開2023-44279研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044279
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230323BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230323BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230323BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230323BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
H01L21/304 622B
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
C01B33/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152217
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】前 僚太
【テーマコード(参考)】
3C158
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED04
3C158ED05
3C158ED10
3C158ED12
3C158ED13
3C158ED15
3C158ED23
3C158ED26
3C158ED28
4G072AA25
4G072AA28
4G072CC01
4G072DD06
4G072GG02
4G072JJ16
4G072JJ42
4G072KK15
4G072MM02
4G072QQ09
4G072UU30
5F057AA28
5F057BA12
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB09
5F057BB14
5F057BB16
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5F057BB26
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5F057BB29
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5F057BB33
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5F057EA01
5F057EA07
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5F057EA18
5F057EA23
5F057EA27
5F057EA29
5F057EA32
5F057EA37
5F057FA37
(57)【要約】
【課題】カーボンの研磨速度を高めることが可能な研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、界面活性剤と、ホスホン酸系キレート剤と、を含む研磨用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、
界面活性剤と、
ホスホン酸系キレート剤と、を含む研磨用組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤は、アミンオキシドを含む、請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記カチオン性界面活性剤は、ジメチルアミンオキシドを含む、請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記ホスホン酸系キレート剤は、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記ホスホン酸系キレート剤は、フィチン酸を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
pHが3以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記砥粒は、アニオン修飾されたシリカを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記シリカは、表面に有機酸が固定されたシリカである、請求項8に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
前記シリカは、コロイダルシリカである、請求項8又は9に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
カーボンを含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、請求項1から10のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の研磨用組成物の製造方法であって、
ゼータ電位が-5mV以下である前記砥粒と、前記界面活性剤と、前記ホスホン酸系キレート剤と、液状媒体とを混合する工程を含む、研磨用組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、カーボンを含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、半導体基板に成膜されたカーボン膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、半導体装置(デバイス)を製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法である。研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
半導体基板をCMPにより研磨する際に使用する研磨用組成物については、これまでに様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、「酸化ケイ素膜を含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物であって、砥粒と、分配係数の対数値(LogP)が1.0以上である化合物と、分散媒と、を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-37669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板上に成膜されたカーボン膜を研磨する場合がある。カーボン膜の研磨速度に関して、従来の研磨用組成物は、ユーザーの要求を必ずしも満足するものではなかった。カーボン膜の研磨速度の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、カーボンの研磨速度を高めることが可能な研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を進めた。その結果、ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、界面活性剤と、ホスホン酸系キレート剤と、を含む研磨用組成物を使用することにより、カーボンの研磨速度が高くなることを見出し、発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カーボンの研磨速度を高める(向上させる)ことが可能な研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、半導体基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る研磨用組成物は、ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、界面活性剤と、ホスホン酸系キレート剤と、を含む研磨用組成物である。
【0010】
この研磨用組成物は、単体シリコン、シリコン化合物、金属等の研磨対象物を研磨する用途、例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいて半導体基板である単体シリコン、ポリシリコン、シリコン化合物、金属等を含む表面を研磨する用途に適用してよく、カーボンを含む表面を研磨する用途に好適である。例えば、半導体基板上に成膜されたカーボン膜を研磨する用途に好適である。この研磨用組成物を用いて研磨を行えば、カーボンを含む表面や、半導体基板上に成膜されたカーボン膜を高い研磨速度で研磨できる場合がある。以下に、本実施形態に係る研磨用組成物について詳細に説明する。
【0011】
<砥粒>
本実施形態に係る研磨用組成物は、ゼータ電位が-5mV以下である砥粒を含む。ゼータ電位が-5mV以下である砥粒として、アニオン修飾されたシリカであってもよい。シリカはコロイダルシリカであってもよい。すなわち、砥粒は、アニオン修飾コロイダルシリカであってもよい。
【0012】
(ゼータ電位)
本実施形態に係る研磨用組成物に使用される砥粒は、pH7以下で、-5mV以下のゼータ電位を示すものであることが好ましい。砥粒のゼータ電位は、-10mV以下であることが好ましく、-20mV以下であることがより好ましく、-30mV以下であることがさらに好ましく、-35mV以下であることが特に好ましい。コロイダルシリカがこのような範囲のゼータ電位を有していることにより、カーボンに対する研磨速度をより向上させることができる。
【0013】
ここで、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、研磨用組成物を大塚電子株式会社製ELS-Z2に供し、測定温度25℃でフローセルを用いてレーザードップラー法(電気泳動光散乱測定法)で測定し、得られるデータをSmoluchowskiの式で解析することにより、算出する。
【0014】
(製造方法)
コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても、本発明のコロイダルシリカとして好適に用いられる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、ゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。ゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカは、半導体中に拡散性のある金属不純物や塩化物イオン等の腐食性イオンの含有量が少ないため好ましい。ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシラン又はその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0015】
(表面修飾)
使用するコロイダルシリカの種類は特に限定されないが、例えば、表面修飾したコロイダルシリカの使用が可能である。コロイダルシリカの表面修飾は、例えば、コロイダルシリカの表面に有機酸の官能基を化学的に結合させること、すなわち有機酸の固定化により行うことができる。または、アルミニウム、チタン又はジルコニウムなどの金属、あるいはそれらの酸化物をコロイダルシリカと混合してシリカ粒子の表面にドープさせることによりコロイダルシリカの表面修飾を行うことができる。
【0016】
本実施形態において、研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカは、例えば、有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカである。有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカは、有機酸が固定化されていない通常のコロイダルシリカに比べて、研磨用組成物中でのゼータ電位の絶対値が大きい傾向がある。そのため、研磨用組成物中におけるコロイダルシリカのゼータ電位を-5mV以下の範囲に調整しやすい。
【0017】
なお、コロイダルシリカのゼータ電位は、例えば、pH調整剤として後述する酸を使用することにより、所望の範囲に制御することができる。
【0018】
有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルミン酸基等の有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカが挙げられる。これらのうち、容易に製造できるという観点からスルホン酸、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのが好ましく、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのがより好ましい。
【0019】
コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、コロイダルシリカと有機酸とを単に共存させただけでは果たされない。例えば、有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(スルホン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0020】
あるいは、有機酸の一種であるカルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(カルボン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0021】
(平均一次粒子径)
本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均一次粒子径の下限は、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。また、本発明の研磨用組成物中、コロイダルシリカの平均一次粒子径の上限は、100nm以下であること好ましく、80nm以下であることがより好ましく、65nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に発生しうるスクラッチなどのディフェクトを抑えることができる。なお、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定されるコロイダルシリカの比表面積に基づいて算出される。
【0022】
(平均二次粒子径)
本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均二次粒子径の下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましい。また、本発明の研磨用組成物中、コロイダルシリカの平均二次粒子径の上限は、250nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、120nm以下であることがさらに好ましく、90nm以下であることが特に好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に発生しうるスクラッチなどのディフェクトを抑えることができる。
【0023】
なお、二次粒子とは、砥粒(一次粒子)が研磨用組成物中で会合して形成する粒子をいう。砥粒の平均二次粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により測定することができる。
【0024】
(平均会合度)
砥粒の平均会合度は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.0以下であり、さらにより好ましくは3.0以下である。コロイダルシリカの平均会合度が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨することにより表面欠陥の少ない研磨面を得られやすい。また、砥粒の平均会合度は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.2以上である。砥粒の平均会合度が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の除去速度が向上する利点がある。なお、砥粒の平均会合度は、砥粒の平均二次粒子径の値を平均一次粒子径の値で除することにより得られる。
【0025】
(形状)
本発明において、砥粒の形状は、特に制限されず、球状又は非球形状のどちらであってもよいが、非球状であるのが好ましい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱等の多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有する(例えば、2つの球が互いに接合され、その接合部がくびれのように細くせばまっている)繭型形状、複数の粒子が一体化している会合型球形状、表面に複数の突起を有する金平糖形状、ラグビーボール形状等、数珠つなぎ型形状など、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0026】
(含有量)
砥粒の含有量の下限は、研磨用組成物に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の含有量の上限は、研磨用組成物に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。このような範囲であると、研磨速度をより向上することができる。なお、研磨用組成物が2種以上の砥粒を含む場合には、砥粒の含有量はこれらの合計量を意味する。
【0027】
(シリカ以外の他の粒子)
なお、本実施形態による研磨用組成物は、砥粒として、ゼータ電位が-5mV以下であるシリカ(例えば、アニオン修飾コロイダルシリカ)と、シリカ以外の他の砥粒とを含んでいてもよい。または、研磨用組成物は、ゼータ電位が-5mV以下である、シリカ以外の他の砥粒を含んでもよい。他の砥粒として、例えば、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子等の金属酸化物粒子が挙げられる。
【0028】
<液状媒体>
本実施形態に係る研磨用組成物は、液状媒体を含むことができる。研磨用組成物の各成分(例えば、アニオン修飾コロイダルシリカ、カチオン性界面活性剤、pH調整剤などの添加剤)を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として機能する。液状媒体としては水、有機溶剤があげられ、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることができるが、水を含有することが好ましい。ただし、各成分の作用を阻害することを防止するという観点から、不純物をできる限り含有しない水を用いることが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去した純水や超純水、あるいは蒸留水が好ましい。
【0029】
<pH調整剤>
本実施形態に係る研磨用組成物は、pHの値が7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましく、3以下であることが特に好ましい。また、pHの値は0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。研磨用組成物が酸性であれば、カーボン膜の研磨速度を向上させることができる。上記したpHの値を実現するため、研磨用組成物はpH調整剤を含んでもよい。
【0030】
研磨用組成物のpHの値は、pH調節剤の添加により調整することができる。使用されるpH調節剤は、酸及びアルカリのいずれであってもよく、また、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。
【0031】
pH調整剤としての酸の具体例としては、無機酸や、カルボン酸、有機硫酸等の有機酸があげられる。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等があげられる。pH調整剤としては、無機酸を使用することが好ましく、その中でもリン酸系の無機酸がさらに好ましい。有機酸には、カルボン酸、有機硫酸が含まれる。カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等があげられる。さらに、有機硫酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等があげられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機酸としては、カルボン酸系又はホスホン酸系の有機酸を使用することが好ましい。また、これらの酸は、研磨用組成物にpH調整剤として含まれていてもよいし、研磨速度の向上のための添加剤として含まれていてもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0032】
pH調整剤としてのアルカリの具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等があげられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等があげられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等があげられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等があげられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等があげられる。
【0033】
水酸化第四級アンモニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウム又はその塩を含み、具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等があげられる。さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
【0034】
これらのアルカリは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルカリの中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びアミンが好ましく、さらに、アンモニア、カリウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化第四級アンモニウム化合物、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムがより好ましい。また、研磨用組成物には、アルカリとして、金属汚染防止の観点からカリウム化合物を含むことがさらに好ましい。カリウム化合物としては、カリウムの水酸化物又はカリウム塩があげられ、具体的には水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等があげられる。
【0035】
<界面活性剤>
本実施形態に係る研磨用組成物には界面活性剤を含む。界面活性剤は、研磨後の研磨対象物の研磨表面に親水性を付与する作用を有しているので、研磨後の研磨対象物の洗浄効率を良好にし、汚れの付着等を抑制することができる。界面活性剤として、カチオン性界面活性剤であってもよい。
【0036】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、その中でもアミンオキシドが好ましい。
【0037】
アミンオキシドの具体例としては、N,N-ジメチルデシルアミン-N-オキシド、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ピリジン-N-オキシド、N-メチルモルホリン-N-オキシド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、トリメチルアミン-N-オキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシドが挙げられ、その中でもデシルジメチルアミンオキシドが好ましい。
【0038】
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量が多いほど、研磨後の研磨対象物の洗浄効率がより向上する。このため、研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量(濃度)は、0.01g/L以上であることが好ましく、0.05g/L以上であることがより好ましく、0.1g/L以上であることがさらに好ましい。
【0040】
また、研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量が少ないほど、研磨後の研磨対象物の研磨面への界面活性剤の残存量が低減され、洗浄効率がより向上する。このため、研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量は10g/L以下であることが好ましく、5.0g/L以下であることがより好ましく、2.0g/L以下であることがさらに好ましい。
【0041】
<ホスホン酸系キレート剤>
本実施形態に係る研磨用組成物は、ホスホン酸系キレート剤を含む。研磨用組成物にホスホン酸系キレート剤を添加することにより、カーボンの研磨速度を向上させることができる。
【0042】
ホスホン酸系キレート剤として、例えば、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、フィチン酸、エチドロン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)等が挙げられる。
【0043】
研磨用組成物全体におけるホスホン酸系キレート剤の含有量の下限値は、少量でも効果を発揮するため特に限定されるものではないが、ホスホン酸系キレート剤の含有量が多いほど研磨用組成物によるカーボンの研磨速度が向上する。例えば、研磨用組成物全体におけるホスホン酸系キレート剤の含有量(濃度)は、0.01g/L以上であることが好ましく、0.1g/L以上であることがより好ましく、1g/L以上であることがさらに好ましい。
【0044】
また、研磨用組成物全体におけるホスホン酸系キレート剤の含有量が少ないほど、カーボンを含む研磨対象物の溶解が生じにくく段差解消性が向上する。よって、研磨用組成物全体におけるホスホン酸系キレート剤の含有量は、20g/L以下であることが好ましく、10g/L以下であることがより好ましく、5g/L以下であることがさらに好ましい。
【0045】
<水溶性高分子>
本実施形態に係る研磨用組成物は、水溶性高分子を含んでもよい。研磨対象物にポリシリコンが含まれる場合は、研磨用組成物に水溶性高分子を添加することにより、研磨速度を高くしたり低くしたりするなど、研磨速度を調整することができる。
【0046】
水溶性高分子として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、オキシエチレン(EO)とオキシプロピレン(PO)の共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストリン、プルラン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒及びTEOS表面への界面活性剤の影響を妨げさせないという観点(ゼータ電位を変動させない)から、水溶性高分子の中でもノニオン性高分子が好ましい。
【0047】
なお、水溶性高分子は、ノニオン性高分子に限定されるものではない。水溶性高分子は、カチオン性でもよいし、アニオン性でもよい。カチオン性高分子として、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン等が挙げられる。アニオン性高分子として、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルスルホン酸、ポリアネトールスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0048】
<酸化剤>
本実施形態に係る研磨用組成物は、酸化剤を含んでもよい。研磨対象物にシリコン、例えばPoly-Si(多結晶シリコン)が含まれる場合は、研磨用組成物に酸化剤を添加することにより、研磨速度を調整することができる。すなわち、研磨用組成物に添加する酸化剤の種類を選択することで、Poly-Siの研磨速度を早くしたり、遅くしたりできる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸、過硫酸塩等があげられる。過硫酸塩の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等があげられる。これら酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸化剤の中でも、過硫酸塩、過酸化水素が好ましく、特に好ましいのは過酸化水素である。
【0049】
研磨用組成物全体における酸化剤の含有量が多いほど、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を変化させやすい。よって、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量(濃度)は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量が少ないほど、研磨用組成物の材料コストを抑えることができる。また、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。さらに、酸化剤による研磨対象物の表面の過剰な酸化が起こりにくくなる。よって、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
<防カビ剤、防腐剤>
研磨用組成物は、防カビ剤、防腐剤を含んでもよい。防カビ剤、防腐剤の具体例としては、イソチアゾリン系防腐剤(例えば2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノールがあげられる。これらの防カビ剤、防腐剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
<研磨用組成物の製造方法>
本実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、界面活性剤と、ホスホン酸系キレート剤と、液状媒体とを混合する工程を含む。例えば、砥粒としてアニオン修飾されたコロイダルシリカと、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤(例えば、アミンオキシド)と、ホスホン酸系キレート剤としてエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)又はフィチン酸と、必要に応じて各種添加剤(例えば、pH調整剤、水溶性高分子、酸化剤、防カビ剤、防腐剤等)とを、水等の液状媒体中で攪拌、混合することによって、本実施形態に係る研磨用組成物を製造することができる。混合時の温度は特に限定されるものではないが、例えば10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を向上させるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
【0052】
<研磨対象物>
本実施形態に係る研磨用組成物は、カーボンの研磨速度の向上が可能である。このため、研磨対象物は、カーボン、カーボンを含む研磨対象物、又は、半導体基板等に成膜されたカーボン膜であることが好ましい。ただし、本実施形態において、研磨対象物の種類はカーボンに限定されるものではなく、単体シリコン、SiN膜以外のシリコン化合物、金属等であってもよい。単体シリコンとしては、例えば単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン等があげられる。また、シリコン化合物としては、例えば、二酸化ケイ素、炭化ケイ素等があげられる。二酸化ケイ素は、テトラエトキシシラン((Si(OC))を用いて形成される膜(以下、TEOS膜)であってもよい。シリコン化合物膜には、比誘電率が3以下の低誘電率膜が含まれる。さらに、金属としては、例えば、タングステン、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タンタル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等があげられる。これらの金属は、合金又は金属化合物の形態で含まれていてもよい。
【0053】
<研磨方法>
研磨装置の構成は特に限定されるものではないが、例えば、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと、回転速度を変更可能なモータ等の駆動部と、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤と、を備える一般的な研磨装置を使用することができる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、液状の研磨用組成物が溜まるような溝加工が施されているものを使用することができる。
【0054】
研磨条件は特に制限はないが、例えば、研磨定盤の回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.3s-1)が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下が好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の一態様の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る研磨用組成物は一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水等の希釈液を使って、例えば10倍以上に希釈することによって調製されてもよい。
【0056】
研磨終了後、基板を例えば流水で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、例えばシリコン含有材料を含む層を有する基板が得られる。このように、本実施形態に係る研磨用組成物は、基板の研磨の用途に用いることができる。本実施形態に係る研磨用組成物を用いて、半導体基板(基板の一例)上に設けられたカーボン膜等の研磨対象物の表面を研磨することにより、研磨済み半導体基板を製造することができる。半導体基板としては、例えば、単体シリコン、SiN膜等のシリコン化合物、金属等を含む層を有するシリコンウェーハが挙げられる。
【0057】
<半導体基板の製造方法>
本実施形態に係る半導体基板の製造方法は、上記の研磨用組成物を用いて、半導体基板の表面を研磨する工程を含む。この工程における研磨の方法は、例えば<研磨方法>の欄に記載した通りである。
【実施例0058】
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、以下の実施例には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0059】
<研磨用組成物の調整方法>
(実施例1~5)
下記の表1に示すように、ゼータ電位が-5mV以下である砥粒と、ホスホン酸系キレート剤と、カチオン性界面活性剤と、液状媒体である水とを攪拌、混合して、混合液を作成した。作成した混合液に必要に応じてpH調整剤を加えて、実施例1~5の研磨用組成物を製造した。なお、表1中、「-」はその成分を用いなかったこと、又は、単位が無いことを示す。
【0060】
実施例1~5において、砥粒には、アニオン修飾コロイダルシリカを用いた。実施例1、2、4、5において、研磨用組成物におけるアニオン修飾コロイダルシリカの濃度は2.0質量%とした。以下、質量%をwt%と表記する。実施例3において、研磨用組成物におけるアニオン修飾コロイダルシリカの濃度は0.5wt%とした。実施例1~5において、アニオン修飾コロイダルシリカの一次粒子径は35nm、二次粒子径は70nm、ゼータ電位は-40mVである。
【0061】
実施例1~4では、カチオン性界面活性剤として、デシルジメチルアミンオキシドを用いた。実施例1~4において、研磨用組成物におけるデシルジメチルアミンオキシドの濃度は、0.4g/Lとした。実施例5では、カチオン性界面活性剤として、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを用いた。実施例5において、研磨用組成物におけるオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートの濃度は、0.4g/Lとした。
【0062】
実施例1、3~5では、ホスホン酸系キレート剤として、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)を用いた。実施例1、3~5において、研磨用組成物におけるEDTMPの濃度は、2.0g/Lとした。実施例2では、ホスホン酸系キレート剤として、フィチン酸を用いた。実施例2において、研磨用組成物におけるフィチン酸の濃度は、1.0g/Lとした。
【0063】
実施例2では、pH添加剤として、硝酸(HNO)を用いた。実施例1~3、5では研磨用組成物のpHの値を2に調整した。実施例4では研磨用組成物のpHの値を5に調整した。研磨用組成物(液温:25℃)のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))により測定した。
【0064】
(比較例1~5)
表1に示す種類、濃度等の各成分を用い、各研磨用組成物のpHを表1に示す値に調整したこと以外は、実施例1~5と同様に操作して、各研磨用組成物を調製した。
【0065】
実施例1~5との違いとして、比較例1、2では、研磨用組成物に界面活性剤を添加しなかった。比較例3、4では、砥粒のゼータ電位を0mV、35mVとした。比較例2、5では、研磨用組成物にホスホン酸系キレート剤を添加しなかった。
【表1】
【0066】
<評価>
実施例1~5及び比較例1~5の研磨用組成物を用いて、下記の研磨条件で直径200mmのシリコンウェーハの研磨を行った。
・研磨装置:アプライド・マテリアルズ製200mm用CMP片面研磨装置 Mirra
・研磨パッド:ニッタ・ハース株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
・研磨圧力:5psi(1psi=6894.76Pa)
・研磨定盤回転数:107rpm
・ヘッド回転数:113rpm
・研磨用組成物の供給:掛け流し
・研磨用組成物供給量:200mL/分
・研磨時間:60秒間
【0067】
研磨に供したシリコンウェーハは、カーボン膜付きシリコンウェーハである。光干渉式膜厚測定装置を用いて、研磨前のカーボン膜の膜厚と、研磨後のカーボン膜の膜厚とをそれぞれ測定した。そして、膜厚差と研磨時間とから、カーボン膜の研磨速度を算出した。検査速度の結果を表1に示す。
【0068】
表1に示すように、実施例1~5はいずれも、比較例1~5と比べて、カーボンの研磨速度が高いことが確認された。以下、詳細に比較する。
【0069】
(実施例1、比較例1の比較)
実施例1と比較例1は、研磨用組成物が界面活性剤を含むか否かの点で互いに異なる。実施例1の研磨用組成物はカチオン性界面活性剤を含み、比較例1の研磨用組成物は界面活性剤を含まない。それ以外の点は、実施例1と比較例1とにおいて同じである。実施例1、比較例1から、研磨用組成物にカチオン性界面活性剤を添加すると、これを添加しない場合と比べて、カーボンの研磨速度が高くなる(向上する)ことが確認された。
【0070】
(実施例1、比較例2の比較)
実施例1と比較例2は、研磨用組成物が界面活性剤及びホスホン酸キレート剤を含むか否かの点で互いに異なる。実施例1の研磨用組成物はカチオン性界面活性剤及びホスホン酸キレート剤を含み、比較例2の研磨用組成物は界面活性剤及びホスホン酸キレート剤を含まない。また、比較例2では、pHを2に調整するために、pH調整剤として硝酸を添加している。それ以外の点は、実施例1と比較例2とにおいて同じである。実施例1、比較例2から、研磨用組成物にカチオン性界面活性剤及びホスホン酸キレート剤を添加すると、これらを添加しない場合と比べて、カーボンの研磨速度が高くなる(向上する)ことが確認された。
【0071】
(実施例1、比較例3、4の比較)
実施例1と、比較例3、4は、研磨用組成物に含まれる砥粒のゼータ電位が互いに異なる。実施例1の研磨用組成物に含まれる砥粒のゼータ電位は-40mVであり、比較例3、4の研磨用組成物に含まれる砥粒のゼータ電位はそれぞれ0mV、35mVである。それ以外の点は、実施例1と比較例3、4とにおいて同じである。実施例1、比較例3、4から、研磨用組成物に含まれる砥粒のゼータ電位は、0mV、35mVよりも、-40mVの方が、カーボンの研磨速度が高いことが確認された。
【0072】
(実施例4、比較例5の比較)
実施例4と比較例5は、研磨用組成物がホスホン酸キレート剤を含むか否かの点で互いに異なる。実施例4の研磨用組成物はホスホン酸キレート剤を含み、比較例5の研磨用組成物はホスホン酸キレート剤を含まない。また、比較例5では、pHを5に調整するために、pH調整剤として硝酸を添加している。それ以外の点は、実施例4と比較例4とにおいて同じである。実施例4、比較例5から、研磨用組成物にホスホン酸キレート剤を添加すると、これを添加しない場合と比べて、カーボンの研磨速度が高くなる(向上する)ことが確認された。
【0073】
(実施例1、3の比較)
実施例1、3は、研磨用組成物に含まれる砥粒の濃度が互いに異なる。実施例1の砥粒の濃度は2.0wt%であり、実施例3の砥粒の濃度は0.5wt%である。それ以外の点は実施例1、3において同じである。実施例1、3から、砥粒の濃度は0.5wt%よりも2.0wt%の方が、カーボンの研磨速度が高いことが確認された。
【0074】
(実施例1、4の比較)
実施例1、4は、研磨用組成物のpHが互いに異なる。実施例1の研磨用組成物のpHは2であり、実施例4の研磨用組成物のpHは5である。それ以外の点は実施例1、4において同じである。実施例1、4から、研磨用組成物のpHは5よりも2の方が、カーボンの研磨速度が高いことが確認された。