(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044450
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230323BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230323BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20230323BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230323BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/17 201
B41J2/17 103
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152489
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 逸郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FA10
2C056FC01
2C056HA44
2C056JC13
2H186AB08
2H186BA08
2H186DA10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AE04
4J039BE12
4J039EA36
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 樹脂を含むインクを用いた場合、画像の耐擦過性が向上する一方で、インクジェットヘッドにおいて生じた固着物等によりデキャップ性及び吐出安定性が低下する課題がある。当該課題の発生は、インク中に有機溶剤を含有させることで抑制可能だが、画像形成の過程で気化した有機溶剤により大気汚染が生じる課題がある。
【解決手段】 被印刷物に対してインクを吐出して付着させる吐出手段を有するインクジェット印刷装置であって、インクジェット印刷装置は、更に、被印刷物のインクが付着した面の反対面側から、被印刷物に付着したインクに含まれていた液体成分の気化物を吸引する吸引手段と、吸引された気化物を凝縮させて凝縮物にする凝縮手段と、凝縮物を貯蔵する貯蔵手段と、有し、インクは、ウレタン樹脂、沸点が250℃以下の有機溶剤、及び水を含有し、沸点が250℃以下の有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して30.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に対してインクを吐出して付着させる吐出手段を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、更に、前記被印刷物の前記インクが付着した面の反対面側から、前記被印刷物に付着した前記インクに含まれていた液体成分の気化物を吸引する吸引手段と、吸引された前記気化物を凝縮させて凝縮物にする凝縮手段と、前記凝縮物を貯蔵する貯蔵手段と、有し、
前記インクは、ウレタン樹脂、沸点が250℃以下の有機溶剤、及び水を含有し、
前記沸点が250℃以下の有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して30.0質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記沸点が250℃以下の有機溶剤として、沸点が200℃以上250℃以下の有機溶剤および沸点が200℃未満の有機溶剤をそれぞれ少なくとも1種含有する請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インクは、更に、沸点が250℃超の有機溶剤を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記吸引手段は、前記反対面側を減圧し、前記気化物を前記反対面側に引き込むことで吸引する請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記凝縮手段は、吸引された前記気化物を冷却することで凝縮させる冷却手段である請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べて、プロセスが簡単で、フルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても、高解像度の画像が得られることから、パーソナル、オフィス用途から、産業用印刷の分野へと広がりつつある。
【0003】
このような産業用印刷の分野においては、高い生産性が必要となり、特に、壁紙、壁布、ホームデコといった用途では、更に、インクにより形成される画像の耐擦過性も向上させる必要がある。
まず、高い生産性を実現させるためには、非印刷状態から印刷状態に移行する際に生じるノズル抜け等の程度を表すデキャップ性、及び印刷状態において安定して連続吐出が可能な程度を表す吐出安定性が優れていることが求められる。
次に、高い耐擦過性を実現させるためには、インク中に樹脂を添加する方法が一般に知られており、樹脂の添加量が多くなるほど耐擦過性が向上する
【0004】
特許文献1~2には、ポリウレタン樹脂を含有するインクが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂を含むインクを用いた場合、インクにより形成される画像における耐擦過性が向上する一方で、インクジェットヘッドのノズル近傍においてインクが乾燥して生じた固着物等によりデキャップ性及び吐出安定性が低下する課題がある。当該課題に対しては、インク中に有機溶剤を含有させることでインクの乾燥を抑制可能だが、吐出されたインクによる画像形成の過程で気化した有機溶剤により大気汚染が生じる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被印刷物に対してインクを吐出して付着させる吐出手段を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印刷装置は、更に、前記被印刷物の前記インクが付着した面の反対面側から、前記被印刷物に付着した前記インクに含まれていた液体成分の気化物を吸引する吸引手段と、吸引された前記気化物を凝縮させて凝縮物にする凝縮手段と、前記凝縮物を貯蔵する貯蔵手段と、有し、前記インクは、ウレタン樹脂、沸点が250℃以下の有機溶剤、及び水を含有し、前記沸点が250℃以下の有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して30.0質量%以下であることを特徴とするインクジェット印刷装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクにより形成される画像の耐擦過性が優れ、印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性が優れ、且つ印刷時における大気汚染が抑制されるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、インクジェット印刷装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、インクジェット印刷装置の部分構成(排気ブロア、冷却装置、及び貯蔵タンク)の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、吐出安定性の評価において使用した吐出評価用印刷画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0010】
<<インクジェット印刷装置>>
本実施形態のインクジェット印刷装置は、被印刷物に対してインクを吐出して付着させる吐出手段を有し、必要に応じて、下記の各種手段を有する。
また、インクジェット印刷装置は、被印刷物のインクが付着した面の反対面側から、被印刷物に付着したインクに含まれていた液体成分の気化物を吸引する吸引手段と、吸引された気化物を凝縮させて凝縮物にする凝縮手段と、凝縮物を貯蔵する貯蔵手段と、を有する。
【0011】
図1を用いて、インクジェット印刷装置の一例について説明する。
図1は、インクジェット印刷装置の構成の一例を示す模式図である。液体吐出装置であるインクジェット印刷装置1は、シリアル型のインクジェット印刷装置である。
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、所望の画像を印刷する画像形成部2と、乾燥装置3と、ロールメディア収納部4と、搬送機構5と、を備えている。
【0012】
ロールメディア収納部4は、被印刷物の一例であるロールメディア40を収納する。なお、ロールメディア収納部4は、幅方向のサイズが異なる記録用メディア40を収納可能である。記録用メディア40は、布や合成紙などの浸透メディアが望ましい。
【0013】
搬送機構5は、ロール・ツー・ロール方式の搬送手段を構成する。搬送機構5は、一対のニップローラ51と、一対の従動ローラ52と、巻き取りローラ53とを記録用メディア40の搬送経路54上に備えている。ニップローラ51は、画像形成部2の手前側(搬送方向Aの上流側)に設けられている。ニップローラ51は、モータの駆動に伴って回転することで挟み込んだ記録用メディア40を画像形成部2に向けて搬送する。また、巻き取りローラ53は、モータの駆動に伴って回転することにより印字後の記録用メディア40を巻き取る。従動ローラ52は、記録用メディア40の搬送に従動して回転する。
【0014】
また、搬送機構5は、搬送速度を検出するためのホイールエンコーダを備えている。搬送機構5は、目標値とホイールエンコーダからの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づくモータの制御により、搬送速度を制御される。
【0015】
すなわち、ロールメディア収納部4に収納された記録用メディア40は、従動ローラ52を介して、ニップローラ51の回転によって画像形成部2へと搬送される。画像形成部2に到達した記録用メディア40は、画像形成部2によって所望の画像を印刷される。そして、印刷後の記録用メディア40は、巻き取りローラ53の回転により巻き取られることになる。
【0016】
画像形成部2は、キャリッジ21を備えている。キャリッジ21は、ガイドロッド(ガイドレール)22によって摺動可能に保持されている。キャリッジ21は、モータの駆動に伴って記録用メディア40の搬送方向Aと直交する方向(主走査方向)にガイドロッド(ガイドレール)22上を移動する。より詳細には、キャリッジ21は、主走査方向の移動可能領域である主走査領域のうち、搬送機構5により搬送される記録用メディア40に対して画像形成部2により印刷可能な印刷領域内を往復移動する。
【0017】
キャリッジ21は、被印刷物に対してインクを吐出して付着させる吐出手段の一例である、液滴を吐出する吐出口であるノズル孔を複数配列する記録ヘッド20を搭載している。なお、記録ヘッド20は、記録ヘッド20にインクを供給するタンクを一体的に備えている。ただし、記録ヘッド20は、タンクを一体的に備えているものに限るものではなく、タンクを別体で備えるものであっても良い。記録ヘッド20は、液体吐出ユニットとして機能するものであって、プロセスカラーの記録液であるブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する。ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、は、画像形成用のインクの一例である。
【0018】
また、画像形成部2は、記録ヘッド20における印刷の際に、記録ヘッド20の下方で記録用メディア40を支持するプラテン23を備えている。
【0019】
また、画像形成部2は、キャリッジ21の主走査方向に沿ってキャリッジ21の主走査位置を検知するためのエンコーダシートを備えている。また、キャリッジ21は、エンコーダを備えている。画像形成部2は、キャリッジ21のエンコーダによってエンコーダシートを読み取ることにより、キャリッジ21の主走査位置を検知する。
【0020】
キャリッジ21は、キャリッジ21の移動に従って記録用メディア40の端部を光学的に検知するセンサ24を備えている。このセンサ24による検知信号は、記録用メディア40の端部の主走査方向の位置と記録用メディア40の幅との算出に用いられる。
【0021】
乾燥装置3は、プリヒータ30と、プラテンヒータ31と、乾燥ヒータ32と、温風ファン33、排気ブロア34、冷却装置35、回収タンク36とを備えている。プリヒータ30とプラテンヒータ31と乾燥ヒータ32は、例えばセラミックやニクロム線を用いた電熱ヒータである。
【0022】
プリヒータ30は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの上流に設けられている。プリヒータ30は、搬送機構5により搬送される記録用メディア40を予備的に加熱する。
【0023】
プラテンヒータ31は、プラテン23に配設されている。プラテンヒータ31は、記録ヘッド20のノズル孔から噴射されるインク滴を着弾させる記録用メディア40を加熱する。
【0024】
乾燥ヒータ32は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。乾燥ヒータ32は、画像形成部2により印刷した記録用メディア40を引き続き加熱し、着弾したインク滴の乾燥を促す。
【0025】
温風ファン33は、乾燥ヒータ32(画像形成部2)に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。温風ファン33は、インクが着弾した記録用メディア40の記録面に対して温風を吹き付ける。温風ファン33は、記録用メディア40の記録面のインクに対して直接温風を当てることにより、記録用メディア40の記録面周辺の雰囲気の湿度を下げ、完全に乾燥させる。
【0026】
吸引手段の一例である排気ブロア34は、記録用メディア40のインクが付着した面の反対面側から、被印刷物に付着したインクに含まれていた液体成分(有機溶剤等)の気化物を吸引する。すなわち、記録用メディア40のインクが付着した面の反対面側が減圧され、上記気化物が当該反対面側に引き込まれることで吸引される。これにより、被印刷物に付着したインクに含まれていた液体成分(有機溶剤等)の気化が促進され、インクにより形成される画像の耐擦過性が向上する。また、被印刷物のインクが付着した面の反対面側から気化物を吸引することで、気化物がインクジェットヘッドのノズル近傍において凝集することが抑制され、吐出安定性の低下が抑制される。また、排気ブロア34の吸込口は乾燥装置3の内部に設置され、吐出口は乾燥装置3の外部に設置されており、本構成により液体成分の気化物を凝集した後の空気を乾燥装置3の外部に排出する。排気ブロアの一例としては、San Ace B97(三共電機株式会社製)などが挙げられる。なお、吸引手段により吸引される上記液体成分(有機溶剤等)は、被印刷物に付着したインクの少なくとも一部であればよく、全量である必要はない。また、吸引手段により吸引される上記液体成分(有機溶剤等)の種類は、被印刷物に付着したインクに含まれる複数種類の液体のうち少なくとも一種類であればよく、全種類である必要はない。
【0027】
凝縮手段の一例である冷却装置35(冷却手段)は、排気ブロア34により吸引された上記気化物を冷却することで凝縮させて凝縮物にする。冷却装置35としては、例えば、ペルチェ素子を用いることができる。
【0028】
貯蔵手段の一例である貯蔵タンク36は、気化物が冷却装置35により冷却されて凝縮した凝縮物を貯蔵する。具体的には、
図2に示す通り、排気ブロア34により吸引された気化物が冷却装置35により冷却されて凝縮した凝縮物を、傾斜をつけた経路に沿って流して貯蔵タンク36に誘導し、凝縮物を貯蔵タンク36にて貯蔵する。
【0029】
インクジェット印刷装置が、吸引手段、凝縮手段、及び貯蔵手段を有することで、被印刷物に付着したインクに含まれていた液体成分(有機溶剤等)の気化物の少なくとも一部を回収することができ、これにより液体成分(有機溶剤等)が大気中に拡散することを抑制することができ、結果として印刷時における大気汚染が抑制される。
【0030】
<インク>
インクジェット印刷装置に用いられるインクは、水、有機溶剤、及び樹脂を含有し、必要に応じて、色材、及び界面活性剤等の成分を含んでもよい。
【0031】
-水-
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~50質量%がより好ましい。
【0032】
-有機溶剤-
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0033】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0034】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、被印刷物として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0035】
--沸点が250℃以下の有機溶剤--
インクに用いられる有機溶剤としては、沸点が250℃以下の有機溶剤を含有し、沸点が150℃以上250℃以下の有機溶剤を含有することが好ましい。インク中に沸点が250℃以下の有機溶剤を含有することで、当該インクを用いたインクジェット印刷装置の印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性が向上する。なお、本開示において、「沸点」は標準圧力(101.3kPa)下におけるものであるとする。
また、沸点が250℃以下の有機溶剤としては、沸点が200℃以上250℃以下の有機溶剤および沸点が200℃未満の有機溶剤をそれぞれ少なくとも1種含有することが好ましい。インク中に沸点が200℃以上250℃以下の有機溶剤および沸点が200℃未満の有機溶剤をそれぞれ少なくとも1種含有することで、当該インクを用いたインクジェット印刷装置の印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性がより向上する。
【0036】
沸点が200℃以上250℃以下の有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール(沸点244.3℃)、1,3-ブタンジオール(沸点204℃)、1,4-ブタンジオール(沸点230℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点206℃)、1,3-ペンタンジオール(沸点209℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点239℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)、1,3-ヘキサンジオール(沸点221.7℃)、2,5-ヘキサンジオール(沸点217℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点244℃)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(沸点232℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点256℃)、2-ピロリドン(沸点245℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点204℃)、γ-ブチロラクトン(沸点204℃)、ホルムアミド(沸点210℃)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(沸点215.2℃)、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(沸点215℃)、スルホラン(沸点285℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点244℃)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(沸点232℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
沸点が200℃未満の有機溶剤としては、例えば、例えば、1,2-プロパンジオール(沸点188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、エチレングリコール(沸点197.3℃)、1,2-プロパンジオール(沸点188.2℃)、2,3-ブタンジオール(沸点182℃)、2,4-ペンタンジオール(沸点198℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)、N-メチルホルムアミド(沸点199℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
沸点が250℃以下の有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して30.0質量%以下であり、5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下であることが更に好ましい。30.0質量%以下であることで、当該インクを用いたインクジェット印刷装置の印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性を維持しつつ、沸点が250℃以下の有機溶剤の含有量を一定量以下にすることができ、当該インクによる画像形成の過程で気化した有機溶剤による大気汚染を抑制することができる。
【0039】
沸点が200℃以上250℃以下の有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
沸点が200℃未満の有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。また、沸点が200℃未満の有機溶剤が実質的に含まれていなくてもよい。沸点が200℃未満の有機溶剤が実質的に含まれていない場合とは、例えば、沸点が200℃未満の有機溶剤の含有量が、インクの質量に対して0.1質量%以下である場合を表す。
【0041】
--沸点が250℃超の有機溶剤--
インクに用いられる有機溶剤としては、沸点が250℃超の有機溶剤を含有することが好ましい。インク中に沸点が250℃超の有機溶剤を含有することで、当該インクを用いたインクジェット印刷装置の印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性が向上する。
【0042】
沸点が250℃超の有機溶剤としては、例えば、トリエチレングリコール(沸点276℃)、グリセリン(沸点290℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点312℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点256℃)、ジエタノールアミン(沸点269℃)、スルホラン(沸点285℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
沸点が250℃超の有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。10.0質量%以下であることで、当該インクを用いたインクジェット印刷装置の印刷時におけるデキャップ性及び吐出安定性を維持しつつ、沸点が250℃超の有機溶剤の含有量を一定量以下にすることができ、当該インクによる画像形成の際の乾燥性を向上させることができる。
【0044】
-樹脂-
インクは、樹脂として、ウレタン樹脂を含み、必要に応じて他の種類の樹脂を更に含んでもよい。
他の種類の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0046】
樹脂のインク中の形態としては特に限定されないが、樹脂粒子であることが好ましい。 樹脂粒子の形態でインク中に含まれている場合、樹脂粒子の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nm以上120nm以下が好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂粒子の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分散性、及び耐薬品性の点から、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、吐出信頼性の点から、80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下がより好ましい。酸価は、例えば、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製)を用いて測定することができる(JIS K 2501-2003 )。
【0047】
以降、ウレタン樹脂について詳細を説明する。
【0048】
--ウレタン樹脂--
インクに含有される樹脂としてはウレタン樹脂を用いる。ウレタン樹脂を用いた場合、インクにより形成される画像における耐擦過性が向上する。一方で、ウレタン樹脂を用いた場合、インクジェットヘッドのノズル近傍においてインクが乾燥して生じた固着物等によりデキャップ性及び吐出安定性が低下しやすい傾向にある。デキャップ性及び吐出安定性の低下に対しては、インク中に有機溶剤を含有させることでインクの乾燥を抑制可能であるため、ウレタン樹脂を用いたとしても、耐擦過性、デキャップ性、及び吐出安定性を両立することができる。
【0049】
ウレタン樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得ることができる。
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオール等を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。反応させた後のポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、塗膜堅牢性向上、特に耐擦過性の向上の点から、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネートポリウレタン樹脂とポリエステルポリウレタン樹脂を併用することが特に好ましい。
【0050】
ウレタン樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以上-30℃以下であるポリカーボネートポリウレタン樹脂を用いると、高い吐出信頼性が得られる点から好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上60℃以下であるポリエステルポリウレタン樹脂を用いると、高堅牢性に優れた印刷物を得られる点から好ましく、これら2つのポリウレタン樹脂を併用することが特に好ましい。
ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)で測定できる。具体的には、樹脂4.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで-80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、ガラス転移点(Tg)を求める。
【0051】
ウレタン樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、タケラックWS-4000、W-6010、W-5030、W-635、W-6110、WS-5000、WS-5100、WS-4022、WS-5984(以上、三井化学株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以上-30℃以下であるポリカーボネートポリウレタン樹脂の市販品としてタケラックW-6110(Tg:-20℃)、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上60℃以下であるポリエステルポリウレタン樹脂の市販品としてタケラックWS-5000(Tg:60℃)が特に好ましい。
【0052】
以下、ウレタン樹脂の合成に用いるポリオールのうち、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオールについて説明する。また、ウレタン樹脂の合成に用いるポリイソシアネートについても説明する。
【0053】
---ポリエーテルポリオール---
ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
出発原料としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
また、アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
ポリエーテルポリオールとしては、非常に優れた耐擦過性を付与可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0054】
---ポリカーボネートポリオール---
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することできる。
炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0055】
---ポリエステルポリオール---
ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ-ル等を使用することができる。
ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0056】
---ポリイソシアネート---
ウレタン樹脂を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。
なお、インクにより形成される画像の用途として、ポスターや看板などの屋外向けを想定している場合、非常に高い長期耐候性を持つ塗膜を形成する観点から脂肪族又は脂環式ジイソシアネートを使用することが好ましい。
更に、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを入れることにより目的とする塗膜強度を得やすくすることができる。特に、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。脂環式ジイソシアネートの割合は全イソシアネート化合物中の60重量%以上であることが好ましい。
【0057】
---製造方法---
ウレタン樹脂は、従来一般的に用いられている製造方法により得ることができるが、例えば次の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、ポリオールとポリイソシアネートを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させて、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、アセトニトリルなどの二トリル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
また、鎖延長剤としては、ポリアミンやその他の活性水素基含有化合物が挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類、コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
その他の活性水素基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等が挙げられる。これらは、インクの保存安定性が低下しない範囲内であれば、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
-色材-
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0059】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、インク全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0060】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0063】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-CmF
2m+1でmは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0064】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、インク全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0065】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0066】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0067】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0068】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0069】
-インクの物性-
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0070】
<インク収容容器>
インク収容容器は、インクを収容するインク収容部を備え、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してもよい。
インク収容容器は、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部を有するもの、大容量のインクタンクなどが好適である。
【実施例0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
<顔料分散体の製造例>
-シアン顔料分散体の製造-
C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:クロモファインブルー、大日精化工業株式会社製)20g、下記構造式(A)に記載の化合物20mmol、及びイオン交換水200mLを、室温環境下、Silversonミキサー(6,000rpm(0.6質量%))で混合し、スラリーを得た。得られたスラリーのpHが4より高い場合は、硝酸20mmolを添加した。30分間後に、少量のイオン交換水に溶解された亜硝酸ナトリウム(20mmol)を上記スラリーにゆっくりと添加した。更に、撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させた。これにより、C.I.ピグメントブルー15:3表面に下記構造式(A)に記載の化合物を付加した改質顔料を得た。
次いで、NaOH水溶液によりpH10に調整することにより、30分間後に改質顔料分散体を得た。改質顔料分散体とイオン交換水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料濃度が15質量%となる親水性官能基としてビスホスホン酸基を有するシアン顔料分散体(自己分散型)を得た。
【化4】
【0073】
-マゼンタ顔料分散体の製造-
シアン顔料分散体の製造において、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:クロモファインブルー、大日精化工業株式会社製)20gを、C.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の製造と同様にして、顔料濃度が15質量%であるマゼンタ顔料分散体を作製した。
【0074】
-イエロー顔料分散体の製造-
シアン顔料分散体の製造において、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:クロモファインブルー、大日精化工業株式会社製)20gを、C.I.ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業株式会社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の製造と同様にして、顔料濃度が15質量%であるイエロー顔料分散体を作製した。
【0075】
-ブラック顔料分散体の製造-
シアン顔料分散体の製造において、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:クロモファインブルー、大日精化工業株式会社製)20gを、カーボンブラック(NIPEX160、degussa社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の製造と同様にして、顔料濃度が15質量%であるブラック顔料分散体を作製した。
【0076】
<樹脂粒子の製造例>
-ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の作製-
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と称することもある)220g、及びN-メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することもある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500gを投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が40質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液を得た。
次に、得られたポリカーボネートウレタン樹脂粒子液について、樹脂のガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)で測定した。まず、直径50mmのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製シャーレに樹脂エマルジョン4gを均一に広がるように入れ、50℃で1週間乾燥後、得られた樹脂膜から5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで-80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析したところ、Tgは-20℃であった。
【0077】
-ポリエステル系ウレタン樹脂粒子液の作製-
ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の作製において、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)を、ポリエステルポリオール(「ポリライトOD-X-2420」、DIC株式会社製、重量平均分子量:2,000)に変更した以外は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の作製と同様にして、固形分濃度30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂粒子液を得た。
次に、得られたポリエステル系ウレタン樹脂粒子液について、ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の作製と同様にして、樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、57℃であった。
【0078】
<インクの製造例>
-インク1-1の製造-
ブラック顔料分散体(顔料固形分濃度15質量%)15.0質量%、ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液(固形分濃度40質量%)20.0質量%、ポリエステル系ウレタン樹脂粒子液(固形分濃度30質量%)20.0質量%、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ株式会社製、沸点:173℃)30.0質量%、ポリエーテル変性界面活性剤(商品名:Wet270:TEGO社製)2.0質量%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)0.10質量%、及び高純水12.9質量%を添加し、これを混合撹拌して、平均孔径1.0μmのポリプロピレンフィルターにて濾過することにより、インク1-1を得た。
【0079】
-インク1-2~1-14
インク1-1の製造において、表1~2に示す材料及び含有量に変更した以外はインク1-1の製造と同様にしてインク1-2~1-14を得た。なお、表1~2において、各材料の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。また、各顔料分散体及び各ウレタン樹脂の含有量は全量を示し、有効成分濃度(固形分濃度)を示すものではない。
【0080】
-インク2-1~2-6
インク1-1の製造において、表3に示す材料及び含有量に変更した以外はインク1-1の製造と同様にしてインク2-1~2-6を得た。なお、表3において、各材料の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。また、各顔料分散体及び各ウレタン樹脂の含有量は全量を示し、有効成分濃度(固形分濃度)を示すものではない。
【0081】
<画像形成>
(実施例1~14、比較例1~6)
次に、得られたインク1-2~1-14及びインク2-1~2-6を
図1のインクジェット印刷装置にそれぞれ充填し、PE壁紙メディア(Sunlight 110、TAYA社製)に対してベタ画像を印刷した。
なお、インク1-2~1-14及びインク2-3を充填した
図1のインクジェット印刷装置においては、吸引手段(排気ブロア34)、凝縮手段(冷却装置35)、及び貯蔵手段(貯蔵タンク36)を機能させたため、印刷後の貯蔵手段(貯蔵タンク36)には吐出されたインクによる画像形成の過程で気化した有機溶剤の凝集物が貯蔵されていた。
一方で、インク2-1~2-2及び2-4~2-6を充填した
図1のインクジェット印刷装置においては、吸引手段(排気ブロア34)、凝縮手段(冷却装置35)、及び貯蔵手段(貯蔵タンク36)を機能させなかったため、印刷後の貯蔵手段(貯蔵タンク36)には吐出されたインクによる画像形成の過程で気化した有機溶剤の凝集物は貯蔵されていなかった。
【0082】
<デキャップ性>
図1に示したインクジェット印刷装置を用いてデキャップ性を評価した。
まず、得られたインクをインクジェット印刷装置に充填し、ノズルチェックパターンを印刷し「ノズル抜け」が発生していないことを確認した後で、12時間インクジェット印刷装置を放置した。12時間放置後、クリーニングメンテナンスを行わないでノズルチェックパターンを印刷し、発生した「ノズル抜け」をカウントし、下記評価基準に基づき、「デキャップ性」を評価した。評価がA以上であることが実使用上望ましい。なお、「ノズル抜け」とは、インクが吐出されず正常にインク画像が描画されないことを意味する。
〔評価基準〕
A+:ノズル抜けが1箇所以下
A:ノズル抜けが2箇所
B:ノズル抜けが3箇所以上4箇所以下
C:ノズル抜けが5箇所以上
【0083】
<吐出安定性>
図1に示したインクジェット印刷装置を用いて吐出安定性を評価した。
図1に示したインクジェット印刷装置にて600dpiの解像度で
図3に示す吐出評価用印刷画像を60分間連続で印刷し、印刷直後にクリーニングメンテナンスを行わないでノズルチェックパターンを印刷し、発生した「ノズル抜け」をカウントし、下記評価基準に基づき、「吐出安定性」を評価した。評価がA以上であることが実使用上望ましい。
〔評価基準〕
A+:ノズル抜けが2箇所以下
A:ノズル抜けが3箇所以上5箇所以下
B:ノズル抜けが6箇所以上10箇所以下
C:ノズル抜けが11箇所以上
【0084】
<耐擦過性>
上記の通り作成した各ベタ画像を乾いた木綿(カナキン3号)で200gの荷重をかけて25回擦過し、画像の状態を目視で観察し、下記評価基準に基づき、「耐擦過性」を評価した。評価がA以上であることが実使用上望ましい。
〔評価基準〕
A:画像が変化しなかった
B:多少の傷が残るが画像濃度には影響しなかった
C:画像濃度が低下した
【0085】
【0086】
【0087】