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特開2023-44484マイクロニードルパッチ及びマイクロニードル構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044484
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチ及びマイクロニードル構造体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/15 20060101AFI20230323BHJP
   A61M 37/00 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
A61B5/15
A61M37/00 514
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152537
(22)【出願日】2021-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】高麗 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】金 範ジュン
(72)【発明者】
【氏名】朴 チョンホ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C267
【Fターム(参考)】
4C038TA10
4C038UJ01
4C267AA72
(57)【要約】
【課題】マイクロニードルパッチを検査パッチ等として用いた場合に、迅速に検査等を行うことができ、かつ、基材がテープから剥離しやすかったり、破損しやすかったりするという、紙の基材が有する問題点を解消するマイクロニードルパッチを提供する。
【解決手段】本発明のマイクロニードルパッチ1は、貫通孔15を有する液体非透過性の基材11と、貫通孔15内に充填された液体吸収可能な吸収性材料16と、基材11の一方面側に設けられた、その内部に流路が形成された針状部12と、基材11の他方面側に設けられた機能性部材21とを備える。針状部12と吸収性材料16とが互いに接続し、吸収性材料16と機能性部材21とが互いに接続する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、
前記貫通孔内に充填された液体吸収可能な吸収性材料と、
前記基材の一方面側に設けられた、その内部に流路が形成された針状部と、
前記基材の他方面側に設けられた機能性部材とを備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、
前記吸収性材料と前記機能性部材とが互いに接続することを特徴とするマイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記針状部が、多孔質材料からなることを特徴とする請求項1記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記基材の前記一方面には第一の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記第一の接着剤層が、感圧接着剤層であることを特徴とする請求項3に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記基材の前記他方面には第二の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記貫通孔と、前記機能性材料とは、平面視において少なくとも一部が重複する位置に設けられることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
前記吸収性材料が、前記基材の他方面側から突出し、又は前記基材の他方面と、前記吸収性材料の表面とが、同一の平面に含まれるように充填されたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
前記吸収性材料が、多孔質材料であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
少なくとも前記機能性部材を覆うシートをさらに有し、当該シートが、前記機能性部材側の面に接着剤層を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
前記シートが、前記シートと前記基材との間に滞留した空気を排気する通気手段を備えたことを特徴とする請求項9記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項11】
前記機能性部材が、前記針状部から得られた前記液体を検出する検出部材又は前記針状部から前記液体としての薬剤を投与する薬剤投与部材であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項12】
前記機能性部材が、複数設けられており、
前記機能性部材が、少なくとも第一機能性部材と第二機能性部材とを含み、前記第一機能性部材と前記第二機能性部材は、それぞれ異なる成分を検出する前記検出部材であることを特徴とする請求項11に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項13】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、前記貫通孔内に充填された吸収性材料と、前記基材の一方面側に設けられ、その内部に流路が形成された針状部と、を備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続することを特徴とするマイクロニードル構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルパッチ及びマイクロニードル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薬学的、医学的または美容的効能を有する活性物質の経皮伝達のための手段として、注射針の代用として身体への負担の小さいマイクロニードルが適用されている。例えば、非特許文献1、特許文献1では、マイクロニードルを患者の皮膚に刺して間質液等の体液を採取し、この体液を分析する分析パッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Porous microneedles on a paper for screening test of prediabetes Med Devices Sens. 2020;00:e10109
【特許文献1】国際公開2019/176126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載されたデバイスは、基材の一面に形成されたマイクロニードルから吸い上げた体液を、基材の背面に設けられたセンサー部材を用いて検出・分析しており、簡易な構成で効果的に分析することができる。また、非特許文献1に記載されたデバイスは、マイクロニードルで吸い上げた体液をセンサー部材まで基材の厚さ方向で輸送しているため、輸送距離が短く、分析を迅速に行うことができる。
【0005】
しかしながら、非特許文献1のデバイスのように基材の厚さ方向で体液を輸送したとしても、その輸送速度が十分に速いとはいえなかった。また、実際に検査パッチとして利用するにあたっては、例えば基材の背面側を粘着シートの粘着剤層に固定して、粘着剤層の基材が接着されていない領域を皮膚に貼ることができるように構成することが考えられる。しかしながら、基材が紙であるため粘着シートと基材とが剥離しやすいという問題がある。他方で、特許文献1に記載された発明のように基材がシリコンウェハであれば粘着シートが剥離しやすいという問題はないが、特許文献1に記載された発明では、基材の一面にマイクロニードルもセンサー部材も設けられていて、体液の輸送距離が長く、迅速な分析が要求される検査に用いることが難しい。また、非特許文献1及び特許文献1のいずれについても、センサー部材を薬剤投与部材に変更することで、検査パッチではなく薬剤投与パッチとしても用いることが考えられるが、この場合においても、薬液の輸送速度が速いほうが好ましい。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、マイクロニードルパッチを検査パッチ等として用いた場合に、迅速に検査等を行うことができ、かつ、基材がテープから剥離しやすかったり、破損しやすかったりするという、紙の基材が有する問題点を解消するマイクロニードルパッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、貫通孔を有する液体非透過性の基材と、前記貫通孔内に充填された液体吸収可能な吸収性材料と、前記基材の一方面側に設けられた、その内部に流路が形成された針状部と、前記基材の他方面側に設けられた機能性部材とを備え、前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、前記吸収性材料と前記機能性部材とが互いに接続することを特徴とするマイクロニードルパッチを提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)においては、基材に貫通孔を設け、その内部に液体を吸収できる吸収性材料を充填し、針状部と吸収性材料とが互いに接続し、吸収性材料と機能性部材とが互いに接続することで、このような液体非透過性の基材を用いて液体の輸送流路の短いパッチを作製し、検査パッチである場合には迅速な分析を可能とするとともに、薬剤投与パッチとして利用する場合であっても薬液を迅速に皮膚へ供給することができる。さらに、液体非透過性の基材を用いることで針状部から得られた体液又は針状部へ輸送される薬液が基材内に染み出ることがなく、得られた全量の液体を輸送することができ、検査パッチである場合には迅速な分析を可能とするとともに、薬剤投与パッチとして利用する場合であっても薬液を迅速に体内へ供給することができる。そして、液体非透過性の基材を用いることで、パッチが皮膚へ貼付する粘着シートを備えた場合に、基材が粘着シートから剥離されてしまうことをも抑制できる。即ち、基材自体が液体を透過する材料であると液体が基材内にしみこんで粘着シートと基材との間に侵入しやすく、これが粘着シートと基材との剥離の原因となる。本発明では、液体非透過性の基材を用いることで液体は、基材においては貫通孔内のみを通過できるので、基材にしみこむことがなく、基材が粘着シートから剥離されてしまうことを抑制している。また、液体非透過性の基材を用いることで、基材の破損を抑制できる。即ち、紙の基材であってもそれ自体は破損しやすいものではないが、基材自体が液体を透過する材料であるから液体に触れることで脆弱化しやすいので、本発明では、液体非透過性の基材を用いることで破損も抑制している。
【0009】
上記発明(発明1)において、前記針状部が、多孔質材料からなることが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1、2)において、前記基材の前記一方面には第一の接着剤層が設けられていることが好ましい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明3)において、前記第一の接着剤層が、 感圧接着剤層であることが好ましい(発明4)。
【0012】
上記発明(発明1~4)において、前記基材の前記他方面には第二の接着剤層が設けられていることが好ましい(発明5)。
【0013】
上記発明(発明1~5)において、前記貫通孔と、前記機能性材料とは、平面視において少なくとも一部が重複する位置に設けられることが好ましい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明1~6)において、前記吸収性材料が、前記基材の他方面側から突出し、又は前記基材の他方面と、前記吸収性材料の表面とが、同一の平面に含まれる ように充填されたことが好ましい(発明7)。
【0015】
上記発明(発明1~7)において、前記吸収性材料が、多孔質材料であることが好ましい(発明8)。
【0016】
上記発明(発明1~8)において、少なくとも前記機能性部材を覆うシートをさらに有し、当該シートが、前記機能性部材側の面に接着剤層を有することが好ましい(発明9)。
【0017】
上記発明(発明9)において、前記シートが、前記シートと前記基材との間に滞留した空気を排気する通気手段を備えたことが好ましい(発明10)。
【0018】
上記発明(発明1~10)において、前記機能性部材が、前記針状部から得られた前記液体を検出する検出部材又は前記針状部から前記液体としての薬剤を投与する薬剤投与部材であることが好ましい(発明11)。
【0019】
上記発明(発明1~11)において、前記機能性部材が、複数設けられており、 前記機能性部材が、少なくとも第一機能性部材と第二機能性部材とを含み、 前記第一機能性部材と前記第二機能性部材は、それぞれ異なる成分を検出する前記検出部材であることが好ましい(発明12)。
【0020】
第2に本発明は、貫通孔を有する液体非透過性の基材と、前記貫通孔内に充填された吸収性材料と、前記基材の一方面側に設けられ、その内部に流路が形成された針状部と、を備え、前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続することを特徴とするマイクロニードル構造体を提供する(発明13)。
【0021】
上記発明(発明13)においても、液体非透過性の基材を用いることで、パッチが粘着シートを備えた場合に、基材が粘着シートから剥離されてしまうことを抑制できる。そして、この場合に基材に貫通孔を設け、その内部に液体を吸収できる吸収性材料を充填し、針状部と吸収性材料とが互いに接続することで、このような液体非透過性の基材を用いて、得られた全量の液体を輸送することができるとともに液体の輸送流路の短いパッチを作製できるマイクロニードル構造体を得ることで、検査パッチとして利用する場合には迅速な分析を可能とするとともに、薬剤投与パッチとして利用する場合であっても薬液を迅速に皮膚へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチの平面図である。
図2】(1)第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチのA-A線における断面図である。(2)第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチのB-B線における断面図である。
図3】第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチの製造方法の手順を示す説明図である。
図4】第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチの製造方法の手順を示す説明図である。
図5】第一実施形態にかかるマイクロニードルパッチの製造方法の手順を示す説明図である。
図6】実施例1及び比較例2の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
〔マイクロニードルパッチ〕
図1、2に、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルパッチ1を示す。マイクロニードルパッチ1は、マイクロニードル構造体10を備える。マイクロニードル構造体10は、基材11の一方面側に、所定の間隔で互いに離間した複数の針状部12を備えている。針状部12には、それぞれ孔部13が形成されている。基材11には、貫通孔15が形成されていて、貫通孔15内には吸収性材料16が充填されている。針状部12と吸収性材料16とは接続されている。
【0024】
マイクロニードルパッチ1は、さらに、マイクロニードル構造体10の基材11の背面(他方面)側に、機能性部材21を有する。機能性部材21は、基材11に設けられた貫通孔15に平面視において重複するように設けられている。機能性部材21は、吸収性材料16と接続する。また、本実施形態の機能性部材21は検出部材であり、マイクロニードルパッチ1は、検査パッチとして機能するものである。以下、各部材について詳細に説明する。
【0025】
(1)針状部
針状部12の形状や大きさ、形成ピッチ、形成数は、その目的とするマイクロニードルの用途等によって適宜選択することができる。針状部12の形状としては、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状等が挙げられ、本実施形態では角錐状である。針状部12の最大直径又は断面の最大寸法は、例えば、25~1000μmであることが挙げられ、先端径又は先端の断面の寸法は1~100μmであることが挙げられ、針状部12の高さは、例えば、50~2000μmであることが挙げられる。さらに、針状部12は、基材11の一方向に複数列設けられるとともに、各列に複数形成されてマトリクス状に配されている。
【0026】
針状部12は、その内部に液体が流通する流路としての孔部13が形成されている。孔部13は、どのように構成されていてもよく機械的に孔部を設けてもよいが、針状部12は、多孔質材料からなることが好ましい。針状部12が多孔質材料からなることで、その内部に体液が通過する流路が孔部13として相対的に形成されているので、ナノオーダーの流路を機械的に形成する必要がない。このような多孔質材料を構成する素材としては、例えば、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ藻土、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、モンモリロナイト、カオリン等の粘土鉱物、各種ガラス等の無機素材、各種金属、乳酸カルシウム等の低分子有機化合物、結晶セルロース、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール等のような樹脂素材、樹脂と金属の複合素材等が挙げられる。
【0027】
多孔質材料の多孔構造の形成方法としては、詳しくは後述するが、針状部12の形成と同時、又は、多孔構造が形成されていない突起部32の形成後に、これらの素材に多孔構造を形成する方法が、孔部13を連続的な構造とする観点から好ましい。このような形成方法としては、例えば、2種以上の異なる材料を混合して突起部を形成し、その後少なくとも1種の材料を除去して孔部を形成することで多孔構造を得ればよい。本実施形態では、針状部12は、後述する製造過程において、水不溶性材料と水溶性材料からなる突起部を作製して、除去工程において水に可溶な水溶性材料が除去されて孔部13となるとともに、水に不溶である水不溶性材料が残って多孔性の針状部12としている。
【0028】
針状部12を構成する水不溶性材料は、製造工程における取り扱いの容易さを考慮すると、水不溶性樹脂であることが好ましい。水不溶性樹脂はその融点が常温より高くかつ250℃以下である水不溶性樹脂が好ましく、その融点が40℃より高くかつ200℃以下である水不溶性樹脂がより好ましく、その融点が45℃より高くかつ150℃以下である水不溶性樹脂が特に好ましく、その融点が45℃より高くかつ80℃以下である水不溶性樹脂が特に好ましい。融点が常温より高いことにより、常温では当該水不溶性樹脂が固体となって針状部12を形成することができ、また、融点が150℃よりも低いと基材として用いることができる材質の選択の自由度が増すとともに、作業性も向上する。
【0029】
また、このような水不溶性樹脂は、さらに人体に対して影響を及ぼしにくい水不溶性の生分解性樹脂であることが好ましい。生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステルおよびその誘導体が好ましく用いられ、さらにポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびそれらを構成する単量体同士を共重合した共重合体等からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、これらの生分解性樹脂の2種以上の混合物を用いてもよい。最も好ましくは、水不溶性材料が、融点が60℃である生分解性樹脂であるポリカプロラクトン又はカプロラクトンと他の生分解性樹脂を構成する単量体との共重合体であることである。水不溶性樹脂の分子量は、通常5,000~300,000、好ましくは7,000~200,000、より好ましくは8,000~150,000である。
【0030】
本実施形態では、孔部13は、前述したように、水不溶性材料と水溶性材料からなる突起部から水溶性材料が除去されて形成された空隙であり、体液や薬液はこの孔部13を流路として通過する。針状部12の断面に示すように、水溶性材料の除去により複数の空隙が形成されて互いに連通したことで形成されるものである。孔部13によっては基材11の一方面に至るまで延設されている。孔部13は、マイクロニードル構造体10を用いる検査パッチ等の用途によりその開口の大きさが規定されるが、液体を通過しやすくする等の観点から、その開口が0.1~50.0μmであることが好ましく、0.5~25.0μmであることがより好ましく、1.0~10.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明において体液とは、血液や組織液、間質液等を含む。
【0031】
また、針状部12は、基材11の一方面側との間に少なくとも針状部12が形成された領域にわたって基部14を有していてもよい〕本実施形態では、基部14は、基材11の一方面全体にわたって層状に設けられている。基部14は、個々の針状部12の土台となるものであって、個々の針状部12と同様に孔部13を有する。基部14は、例えば厚さ0.1~500μmで形成される。
この程度の厚さがあることで、基材11の強度を高めるとともに、針状部12と基部14と基材11との間で好ましい接着性を得る。
【0032】
基部14も、針状部12と同様に多孔性であることが好ましく、針状部12の多孔質材料と同じものを用いることができる。基部14に多孔質材料を用いる場合には、その内部に液体が流通する流路が形成されているので機械的に孔部を形成する必要がなく、針状部12からの液体が基部14を通過して貫通孔15の吸収性材料16を介して機能性部材21に到達することができ好ましい。本実施形態では、この基部14が、針状部12について説明した材料と同一の多孔質材料からなり、また同一の工程により形成されるものであるので、簡易に作製できるだけでなく、針状部12と基材11とが基部14を介してのより良好な接着性を得ることができ好ましい。さらには、本実施形態では、この基部14が基材11の一方面全体に亘って設けられていることで、基材11の針状部12が形成されていない部分も多孔質材料が存在し、基材11に付着した状態となっているので、マイクロニードル構造体10の強度が全体としてさらに向上する。
【0033】
(2)基材
基材11は、液体非透過性を有する。基材11が液体非透過性を有することで、基材11の液体吸収を抑制することができるので、液体は、基材11においては貫通孔15内のみを通過できる。そのため、針状部12から得られた体液又は針状部12へ輸送される薬液が基材11内に染み出ることがなく、全量を貫通孔15を介して流通させることができ、検査パッチである場合には迅速な分析を可能とするとともに、薬剤投与パッチとして利用する場合であっても薬液を迅速に皮膚へ供給することができる。さらに、液体が基材11に染み込むことがなく、基材11がテープ22から剥離されてしまうこと等を抑制している。このような液体非透過性を有する材料としては、樹脂フィルム、金属含有シート、ガラスフィルム等が挙げられる。金属含有シートとしては、金属箔が挙げられる。また、樹脂フィルムのうち、耐水性の低いものに金属層を蒸着等により形成し、耐水性を向上させたものを金属含有シートとして用いてもよい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ポリ乳酸、アクリル樹脂等の樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。また、液体非透過性を有しない材料、例えば不織布や紙などであっても、これらに水不溶性の樹脂を積層して全体として液体を透過しないように構成したラミネート樹脂フィルムであってもよい。
【0034】
基材11は、皮膚への追従性が高い、柔軟性を有する材料からなることがより好ましい。上述した材料の中では、樹脂フィルムや水不溶性の樹脂を含侵させた不織布がこの点からは好ましく、特に、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン等の樹脂からなる樹脂フィルムが好ましい。水不溶性の樹脂を含侵させた不織布としては、ポリエステル不織布にエチレン酢酸ビニル共重合体を含浸させたもの等が挙げられる。
【0035】
また、基材11は、液体非透過性を有するものであれば、単層であっても複数層が積層されている構成であってもよい。本実施形態では、基材11として、ポリエチレンテレフタレートからなる第一層111及び第二層112を積層したものを用いている。この場合、第一層111及び第二層112のいずれを針状部12との積層面としてもよいが、本実施形態では、第一層111側に針状部12を形成している。
【0036】
基材11の厚さ(後述する第一接着剤層114及び第二接着剤層115、並びに第一プライマー層及び第二プライマー層を除いた厚さ)は3~200μmであることが好ましく、より好ましくは10~140μmであり、更に好ましくは30~115μmである。3μm以上の厚さであると、基材11としての強度を保持しやすく、また、200μm以下の厚さであると皮膚への追従性が向上し、また、液体の輸送時間を短くすることが可能である。
【0037】
第一層111と第二層112とを積層する場合、接着剤を塗布や印刷して接着剤層を形成して第一層111と第二層112とを接着してもよいし、両面テープにより第一層111と第二層112とを貼り合わせてもよい。本実施形態では、両面テープ113により第一層111と第二層112とを積層している。
【0038】
基材11の針状部12が形成されている面(一方面)には、本実施形態のように第一接着剤層114が設けられていることが好ましい。この第一接着剤層114が設けられていることで、針状部12と、基材11との接着性を向上させることができる。このような第一の接着剤層としては、感圧接着剤が好ましく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられ、より好ましくは、アクリル系粘着剤を用いることができる。また、基材11に第一接着剤層114を設けることで、後述するマイクロニードル構造体の製造方法において、基材11に予めに固体状組成物31を接着させておき、基材11と固体状組成物31とを型に入れ、加熱加圧工程において加熱押圧することで、マイクロニードル構造体10を簡易に得ることが可能である。なお、このような効果は得られないが、針状部12と、基材11との接着性を向上させる目的で、第一接着剤層114に代えて、第一プライマー層(図示せず。)を設けてもよい。また、基材11が第一接着剤層114を有する場合であっても、基材11と第一接着剤層114の間に、中間層としての第一プライマー層を設けてもよい。プライマー層としては、アクリル系のプライマー層、ポリエステル系のプライマー層等が挙げられる。
【0039】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を重合して得られるアクリル重合体を含むものを用いることができる。アクリル系重合体は、アクリル酸アルキルエステルと、その他の単量体との共重合体であってもよい。その他の単量体としては、水酸基を有するアクリル酸エステル、カルボキシル基を有するアクリル酸エステル、エーテル基を有するアクリル酸エステル等の、アクリル酸アルキルエステル以外のアクリル酸エステルや、酢酸ビニル、スチレン等のアクリル酸エステル以外の単量体が挙げられる。
【0040】
アクリル系重合体は、上記の水酸基を有するアクリル酸エステル、カルボキシル基を有するアクリル酸エステル等に由来する官能基と、架橋剤との反応により架橋されたものであってもよい。
【0041】
アクリル系粘着剤は、上記の成分以外に、粘着付与剤、可塑剤、帯電防止剤、充填材、硬化性成分等を含有していてもよい。
【0042】
アクリル系粘着剤を得るための塗工液としては、溶剤系、エマルション系のいずれも用いることができる。
【0043】
基材11の針状部12が形成されていない面(他方面、背面)には、本実施形態のように第二接着剤層115が設けられていることが好ましい。第二接着剤層115が設けられていることで、基材11とテープ22との間での密着性がより向上し、剥離をさらに抑制することが可能である。また、基材11とテープ22との間での密着性が向上することで、機能性部材21はテープ22からの圧力を受けることができ、機能性部材21とテープ22との密着性も向上する。このような第二接着剤層としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられ、アクリル系粘着剤が好ましい。第二接着剤層に用いるアクリル系粘着剤としては、第一接着剤層114に用いるものと同じものを用いることができる。また、第二接着剤層115と基材11との間に、又は、第二接着剤層115に代えて、第二プライマー層(図示せず。)が設けられていてもよい。第二プライマー層としては、第一プライマー層と同種のものを用いることができる。また、本実施形態では、第一接着剤層114及び第二接着剤層115として、それぞれ同じ粘着剤(例えば、いずれもアクリル系粘着剤)を用いてもよいし、第一接着剤層114及び第二接着剤層115とで異なる接着剤を用いてもよい。
【0044】
基材11が液体非透過性を有する材料からなることから、針状部12と機能性部材21との間で液体を流通させるべく、基材11には、貫通孔15が形成されている。貫通孔15の形状は、本実施形態では円形状であるが、これに限定されず、矩形状等でもよい。また、貫通孔15は、本実施形態では基材11の中央に設けているが、これに限定されず、基材11のどこに形成されていてもよく、また、複数形成されていてもよい。いずれにせよ、本実施形態においては、針状部12と機能性部材21との間で液体を輸送するにあたり、基材11が液体非透過性を有するため、液体が基材11内に染み出ることがなく、かつ、貫通孔15を介して基材11の厚さ方向に液体を流通させるので、輸送距離が短く、検出パッチとして構成された場合には高い分析速度で検出を行うことができ、薬剤投与パッチとして構成された場合には、薬液を早期に投与することが可能である。
【0045】
貫通孔15の面積は、基材11の面積に対し、0.05~15%であることが好ましく、より好ましくは0.75~10%、さらに好ましくは1~5%である。貫通孔15の面積が基材11の面積に対し15%以下であると、基板11の剛性を担保しやすい。また、貫通孔15の面積が基材11の面積に対し0.05%以上であると、基板11を介して体液をより効率的に取得することができる。
【0046】
(3)吸収性材料
貫通孔15内部には、液体吸収可能な吸収性材料16が充填されている。貫通孔15内部に吸収性材料を充填することで、吸収性材料16と針状部12とが、また、吸収性材料16と機能性部材21とが接続されて液体が針状部12と機能性部材21との間を流通することが可能である。吸収性材料16としては、セルロース、シリカ等の親水性物質の粒状体、不織布、紙、布帛、編地、脱脂綿等の繊維集合体、多孔質材料等を用いることができる。このうち、貫通孔15に合わせた形状を得ることが容易である観点から、繊維集合体又は多孔質材料が好ましい。また、吸収性材料16を、上記した二以上の材料からなるように形成してもよい。
【0047】
吸収性材料16における多孔質材料としては、針状部12の説明において多孔質材料として列挙したものを用いることができるが、針状部12と異なり、剛性は不要であるため、スポンジ等の柔軟な多孔質材料も用い得る。また、針状部12を形成する多孔質材料と同じ多孔質材料を用いて吸収性材料16を作製する場合には、針状部12と同時に形成することができ簡易であるためより好ましい。本実施形態では、吸収性材料16として針状部12と同じ水不溶性材料を用いて、針状部12の形成時に同時に貫通孔15内に水不溶性材料を充填して吸収性材料16としている。
【0048】
また、貫通孔15内に充填された吸収性材料16は、基材11の背面と吸収性材料16の表面とが同一の平面に含まれるように、即ち基材11の貫通孔15内を満たすか、基材11の貫通孔15よりも上側に突出するように設けられていることが好ましい。吸収性材料16の上面が、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれるか、それよりも上側に突出するように設けられていることで、吸収性材料16と機能性部材21とが確実に接続し、吸収性材料16と機能性部材21との間で液体が流通しやすくなる。本実施形態では、貫通孔15の上面よりも突出した吸収性材料16には、吸収性材料16から延設されて突出部17が形成されている。そして、この突出部17が機能性部材21に直接接続している。このように突出部17が形成されていることで、吸収性材料16と機能性部材21とがより確実に接続し、吸収性材料16と機能性部材21との間で液体が流通しやすくなる。なお、吸収性材料16の上面が、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれず、かつ、それよりも上側に突出するように設けられてもいない場合、すなわち、吸収性材料16の上面が基材11の背面に対してやや凹部となるように形成されている場合には、機能性材料21を押圧した状態で設けることで、機能性部材21と吸収性材料16とが接続することができる。しかし、この場合に、吸収性材料16と機能性部材21とが直接接触する接点を持たないこともありえる。あるいは、吸収性材料16の上面の一部のみが、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれるように形成された場合には、両者の接触部分の面積は小さくなることもなる。これらの場合であっても、液体の輸送が吸収性材料16と機能性部材21との間で許容できる程度に行われれば、本発明における「吸収性材料16と機能性部材21とは接続されている」に含まれる。
【0049】
(4)機能性部材
機能性部材21は、得られた体液を検出し、検出した体液に基づいて分析や判定を行う等の検出機能、または体内に投与する薬剤を貯留する等の薬剤投与機能等を有する部材である。機能性部材21は、紙等のシートにこれらの検出機能や薬剤投与機能として機能する成分を含有させて構成することができる。機能性部材21は、少なくともその一部が、貫通孔15内の吸収性材料16に直接に接続するように、貫通孔15に平面視において重複するように設けられている。このような構成とすることで、マイクロニードル構造体10における液体の輸送が、もっぱら貫通孔15を介して基材11の厚さ方向に液体を流通させることのみによるため、輸送距離をきわめて短くすることができる。機能性部材21が、貫通孔15に平面視において重複するように設けられていない場合には、機能性部材21と吸水性材料16とを、液体が流通し得る材料により間接的に接続してもよい。液体が流通し得る材料としては、吸水性材料16に用いたものと同じものを用いることができる。
【0050】
本実施形態では、機能性部材21は、円形のシート状で平面視において貫通孔15の真上に、貫通孔15の中心と機能性部材21との中心が略一致するように載置されて、貫通孔15に露出している吸収性材料16の全面を覆っている。なお、機能性部材21の形状や配置は上記のものに限定されず、矩形状等でもよく、貫通孔15の直上になくてもよい。
【0051】
この本実施形態の機能性部材21は、針状部12を対象の皮膚に刺すことにより針状部12の孔部13から流入し、貫通孔15の吸収性材料16及び突出部17を通過し機能性部材21に到達した体液を分析して検査を行うための検出機能を有する。このような検出機能を備えたものとしては、例えば体液中のグルコース濃度に応じて変色するグルコース測定ペーパーが挙げられる。機能性部材21としてグルコース測定ペーパーを用いた場合には、マイクロニードル構造体10により採取した間質液をグルコース測定ペーパーが吸収して変色し、この変色の度合いで血糖値を経時的に測定する血糖値測定用のマイクロニードルパッチ1として利用することができる。
【0052】
マイクロニードルパッチ1は、基材11から針状部12を介して皮膚から体内に薬剤を投与する薬剤投与機能を有するマイクロニードルパッチ1として利用することも可能である。この場合には、機能性部材21を紙状基材に薬剤を含有させたものとして構成する。例えば、機能性部材21として生理活性物質含有シートを設け、基材11および針状部12を介して生理活性物質含有シートからの生理活性物質を皮膚内に投与することができる薬剤投与用のマイクロニードルパッチ1として利用することができる。
【0053】
マイクロニードルパッチ1は、複数の機能性部材21を有していてもよく、さらに、複数の機能性部材21が同じ機能を有するものであっても、異なる機能を有するものであってもよい。もちろん、複数の機能性部材21がすべて同じ機能を有するか、異なる機能を有するかに限定されない。例えば機能性部材21のうち、複数の第一の機能性部材はそれぞれ同じ成分を検出して分析する機能を有し、複数の第二の機能性部材もそれぞれ同じ成分を検出して分析する機能を有するが、第一の機能性部材と第二の機能性部材とは、異なる成分を検出するようにそれぞれを構成してもよい。
【0054】
複数の機能性部材21を有する場合、一つの貫通孔15中の吸収性材料16と複数の機能性部材21の一部とが接続していてもよいし、複数の貫通孔15を設けて、複数の機能性部材21がそれぞれ別の貫通孔15中の吸収性材料16に接続するように構成されていてもよい。本実施形態においては、基材11は二つの貫通孔15を有し、それぞれ別の機能を有する機能性部材21が設けられている。即ち、基材11の中央の貫通孔15には、上述した検出機能を有する機能性部材21が設けられているが、基材11の角部にも別の貫通孔15Aを設け、この貫通孔15Aには、水を検出するリファレンスシートである機能性部材21Aを備えている。機能性部材21Aは、貫通孔15A内の吸収性材料16Aと接続するようにこの別の貫通孔15Aの直上に設けられている。リファレンスシートは、体液中の水の検出により変色する成分を含ませたペーパーである。リファレンスシートを設けることで、リファレンスシートが変色することにより間質液の機能性部材21への到達を知ることができ、その後に間質液中のグルコースの分析を開始することが可能である。
【0055】
(5)テープ
テープ22は、少なくとも機能性部材21を覆って機能性部材21を保護するものであればよいが、本実施形態では、テープ22は、機能性部材21だけでなく基材11も覆った状態で、基材11の外側に該当する部分が直接皮膚へ貼付される。
【0056】
テープ22は、貼付した皮膚への追従性を考慮すると、柔軟性、さらには伸縮性を有する材料からなるのが好ましいが、かかる材料に限定されるものではない。テープ22の好ましい材料としては、伸縮性織布が挙げられ、従来公知のものを使用することができる。
【0057】
テープ22は、機能性部材21を基材11に固定するため、かつ、皮膚へ貼付されるために接着剤層23が設けられている。この接着剤層23は、皮膚へ貼付されることから生体安全性を有する接着剤であることが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0058】
また、テープ22の機能性部材21の周囲には、通気手段としての通気孔224が形成されていて、テープ22の貼付時に通気孔24から外部へ空気を押し出すことができるように構成している。このように構成することで、テープ22の外部と内部との間で通気をすることが可能である。したがって、針状部12の流路及び吸収性材料16が液体を吸収した場合に、内部にあった空気は通気孔24から押し出されるため、空気が針状部12の流路及び吸収性材料16における液体の吸収を妨げることを防止することができる。なお、通気手段としてはこのような通気孔24に限定されず、例えば、接着剤層23表面に凹凸を設けてテープ22と基材11との間に凹凸により通気孔を形成し、この通気孔を介してテープ22外部との間での通気を可能としたものを用いてもよい。
【0059】
また、本実施形態では図示しないが、マイクロニードルパッチ1には、テープ22の露出された接着剤層23、針状部13及び基材11の一方面を覆う剥離シートを設けてもよい。剥離シートとしては、公知の剥離シートを設けることができる。
【0060】
本実施形態では、テープ22は、機能性部材21を保護するだけでなく、皮膚への粘着テープとしての機能も有するものであるが、これに限定されず、例えば、テープ22は基材11を覆うものとして構成し、テープ22のさらに上からテープ22よりも大きいテープをかぶせて、当該テープが皮膚に貼付されるように構成してもよい。すなわち、テープ22は機能性部材21を保護及び基材11の背面に固定する機能のみとして、皮膚への粘着テープとしての機能を別の部材が有するように構成してもよい。この場合には、テープ22の接着剤層23は、上述したものの他に、生体安全性のレベルが皮膚貼付用相当に達しないものも用いることができる。また、基材11の第二接着剤層115によりテープ22を接着させることで、接着剤層23を省略してもよい。テープ22のさらに上からテープ22よりも大きいテープをかぶせることに代えて、加圧用のゴムバンドをテープ22上から巻くこと等により、生体の皮膚上にマイクロニードル構造体10を固定してもよい。
【0061】
〔マイクロニードル構造体の製造方法〕
【0062】
図3から図5に、本発明の実施形態に係るマイクロニードルパッチ1の製造方法を示す。本実施形態では、水不溶性材料および水溶性材料を有する固体状組成物31を基材11に設けて(接着工程)、その後固体状組成物31を加熱加工することで突起部32を形成し(加熱加圧工程)、その後突起部32から水溶性材料を除去して(除去工程)、突起部32を針状部12とする。以下、詳細に説明する。
【0063】
(接着工程)
基材11及び固体状組成物31の作製についてまず説明する。初めに、水不溶性材料および水溶性材料を加熱して溶融せしめて混合して混合物33を調製する。混合物33の調製に当たっては、樹脂を溶融させた場合に、粘度を低下させられるように40℃以上かつ基材11に与える影響が小さい180℃以下で加熱をすることが好ましく、55~140℃で加熱することがより好ましく、70~120℃で加熱することがさらに好ましい。
【0064】
水溶性材料としては、融点が常温よりも高い水溶性材料が好ましい。水溶性材料は有機物であってもよいし、無機物であってもよく、塩化ナトリウム、塩化カリウム、芒硝、炭酸ナトリウム、硝酸カリウム、ミョウバン、砂糖、水溶性樹脂等が挙げられる。水溶性樹脂としては、水溶性の熱可塑性樹脂が好ましく、融点が常温よりも高いものが好ましい。水溶性の熱可塑性樹脂としては、後述する生分解性樹脂のほか、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。水溶性の熱可塑性樹脂は、さらに、人体への影響を考慮して、生分解性樹脂であることがより好ましい。このような生分解性樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、コラーゲンおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、ポリアルキレングリコールが特に好ましい。ポリアルキレングリコールの分子量は、例えば200~4,000,000であることが好ましく、600~500,000であることがより好ましく、1,000~100,000であることが特に好ましい。ポリアルキレングリコールの中でも、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0065】
水不溶性材料と水溶性材料とは、質量比で9:1~1:9で混合されることが好ましく、8:2~2:8で混合されることがより好ましく、7:3~3:7で混合されることが特に好ましい。この割合で液状組成物3が構成されていることで、所望の空隙率の針状部12を形成し、針状部12の液体透過性と強度を両立させやすくなる。
【0066】
なお、混合物には不揮発性固形分として水不溶性材料および水溶性材料のみだけでなく、さらに別の材料が含まれていてもよい。例えば、さらに針状部の強度を高めるために、シリカフィラー等の樹脂以外の水不溶性材料が含まれていてもよい。
【0067】
当該混合物33を、図3(a)に示すように、固体状組成物用モールド(型)41に形成された固体状組成物用凹部42に注入する。固体状組成物用凹部42は、所望の量の混合物33を貯留できる形状、容量で形成されていればよい。さらに、固体状組成物用凹部42に混合物33が貯留された状態で、その表面の平坦化のため固体状組成物用凹部42の上面に、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる固体状組成物用シート43を載置する。
【0068】
固体状組成物用モールド41の材質も特に限定されるものではないが、例えば、正確な型を作りやすく、固化して得た固体状組成物31を剥がしやすいシリコーン化合物等で形成されていることが好ましく、本実施形態ではポリジメチルシロキサンからなる。
【0069】
その後、固体状組成物用モールド41ごと-10~3℃で1~60分間保持することで、溶融していた混合物33が固化して固体状となるので、固体状組成物用モールド41から固体状組成物用シート43ごと剥離し、その後固体状組成物用シート43を剥離する。これにより、図3(b)に示す固体状組成物31を得る。
【0070】
次に、図3(c)に示すように、基材11を作製する。基材11は上述のように単層でもよいが、本実施形態では、両面テープ113の下面側に、テープ基材である第一層111及び第一接着剤層114を有する粘着テープを貼り、また、両面テープ113の上面側に、テープ基材である第二層112及び第二接着剤層115を有する粘着テープを貼って複数層からなる基材11を作製する。この場合に、各粘着シートの第一接着剤層114及び第二接着剤層115が両面テープ113とは逆側となるように、各粘着シートを両面テープ113に貼付する。これにより、第一接着剤層114及び第二接着剤層115が露出した基材11が形成される。
【0071】
本実施形態では、基材11として2枚の粘着テープを両面テープ113に貼ることでの第一接着剤層114及び第二接着剤層115を有する基材11を作製したが、これに限定されない。例えば、一方の粘着テープの基材が露出している面に粘着剤層を形成することで、両面に接着剤層が形成された基材11を作製することも可能である。
【0072】
次いで、図3(d)に示すように、基材11に貫通孔15を形成する。貫通孔15の形成方法は特に限定されず、例えば打ち抜きにより形成することができる。そして、図3(e)のように、基材11の第一接着剤層114に固体状組成物31を貼り付けて基材11と固体状組成物31とを一体とする。このように、第一接着剤層114を有することで、基材11に予めに固体状組成物31を接着させておき、基材11と固体状組成物31とを型に入れて後述の加熱加圧工程において加熱押圧することで、マイクロニードル構造体10を簡易に得ることができる。また、基材11と固体状組成物31とが一体となることで、搬送等の取扱いが容易になる。
【0073】
次いで、図4(a)に示すように、基材11を備えた固体状組成物31を、凹部51を有するモールド52に、固体状組成物31が凹部51に面するように載置する。凹部51の底面中央には、突起部形成用凹部53も設けられている。突起部形成用凹部53は、針状部12を形成するためのものであり、針状部12に対応した形状、大きさで形成されている。
【0074】
基材11の第二接着剤層115側にはモールド52の蓋54を設置する。この蓋54も、例えばポリジメチルシロキサンからなる。この蓋54には、本実施形態のように、基材11の貫通孔15に対応した位置に、上に向かって凹んだ蓋凹部55が形成されていることが好ましい。この蓋凹部55を設けることで、次の加熱加圧工程により加熱加圧された固体状組成物31が貫通孔15に流入し充填されて吸収性材料16となり、さらに蓋凹部55が充填されて吸収性材料16と接続された突出部17が形成されるか、または、少なくとも吸収性材料16の上面が基材11の上面と同一の平面に含まれるように形成される。したがって、蓋凹部55も所望の突出部17の大きさ、形状にあわせて、又は、突出部17が形成されない程度に固体状組成物31が基材の背面と同一平面に到達するように形成される。本実施形態では、蓋54に蓋凹部55を設けたが、これに限定されない。蓋54に蓋凹部55が形成されていない場合には、突出部17が形成されず、吸収性材料16の一部のみが基材11の上面と同一面に含まれるか、吸収性材料16の上面が基材11の上面に対して凹部となるように吸収性材料16が形成される可能性もあるが、それであっても吸収性材料16と機能性部材21との間で液体の輸送が可能である程度には接続するように形成されている。なお、本実施形態では、吸収性材料16は後述の除去工程において水溶性材料が除去されることで多孔構造が形成され、吸収性を示すようになるが、本工程においても、相当する部材は吸収性を有しないものの、便宜上これを吸収性材料16と呼ぶ。
【0075】
(加熱加圧工程)
次いで、図4(b)に示す加熱加圧工程を行う。加熱加圧工程は、所望の形状の突起部等を形成するためのものであり、加熱加圧を一度に行ってもよいが、本実施形態のように、モールド52の凹部51に固体状組成物31を十分に充填させるために、基材11を備えた固体状組成物31の溶融を開始するための予備工程と、溶融した固体状組成物31を凹部51等に十分に充填するための本工程とからなることが好ましい。
【0076】
まず、予備工程および本工程においては、図4(b)に示すように、固体状組成物31が凹部51に載置された状態で、モールド52と蓋54とで基材11及び固体状組成物31を挟持する。そして、その状態で、モールド52および蓋54を、下部ステージ56上に載置するとともに上部ステージ57をモールド52および蓋54の上に設置する。
【0077】
予備工程および本工程における加熱条件としては、40℃以上かつ基材11に与える影響が小さい180℃以下で少なくとも加熱をすればよく、好ましくは、55~140℃で加熱することであり、70~120℃で加熱することがさらに好ましい。本実施形態では、固体状組成物31が溶融可能な温度で加熱している。なお、固体状組成物31の加熱のため、下部ステージ37を加熱してもよいし、上部ステージ38を加熱してもよい。本工程では、予備工程の後、加熱を維持すればよく、適宜温度を変更してもよい。
【0078】
この状態で上部ステージ57と下部ステージ56との間でモールド52を押圧(加圧)する。この予備工程での圧力は、0.1~5.0MPであることが好ましい。この範囲の圧力であることで、固体状組成物31を短い時間で溶融させることができる。そして、10秒~10分間保持することで、固体状組成物31が溶融された状態となる。なお、予備工程と本工程で、加圧条件を変更してもよい。例えば、本工程においては、予備工程よりも高圧、長時間の条件で加圧を行うことができる。
【0079】
本実施形態のように予備工程と本工程とを行うことで、固体状組成物31が十分に溶融されるとともに、凹部51、突起部形成用凹部53、貫通孔15、及び蓋凹部55に充填される。
【0080】
その後、下部ステージ37からモールド52を外して溶融した固体状組成物31を-10~3℃で1~60分間保持する(冷蔵固化工程)ことで冷蔵固化する。これにより、突起部形成用凹部53に応じた形状の転写性の高い突起部32等が形成される。
【0081】
(除去工程)
接着工程の完了の後、そして、図4(c)に示すように、固化された突起部32と基材11とが接着されたものをモールド52から離間し、次いで突起部32および基材11の水溶性材料を除去する除去工程を行う。
【0082】
この除去工程における洗浄液は水を含むものであり、除去工程は、本実施形態では、突起部32等と基材11とが接着されたものを洗浄液58中に静置することで行う。水を含む洗浄液中に静置することで、突起部32等に含有されていた水溶性材料のうち、外部に露出するか、もしくは露出した部分と連通していた部分は溶解し、水中に流れ出て除去される。なお、洗浄液は水とアルコール等の混合溶媒であってもよい。この除去により、突起部32等に孔部13が形成され、針状部12として形成される。即ち、水溶性材料が除去されることで、針状部12以外にも、基部14、吸収性材料16、及び突出部17も同じ多孔性として形成される。これにより、本実施形態のマイクロニードル構造体10を得る。
【0083】
(マイクロニードルパッチの製造方法)
図5(a)に示すように、例えばポリジメチルシロキサンからなる載置台61上に設けられた凹部62に、マイクロニードル構造体10の針状部12が形成された領域が収まるように、マイクロニードル構造体10を載置する。そして、接着剤層23が形成されたテープ22を所定の大きさに切断し、テープ22の接着剤層23に機能性部材21を貼付する。図5(b)に示すように、その後、得られたマイクロニードル構造体10の基材11の背面側の所定の位置に機能性部材21を配置するように機能性部材21をテープ22の接着剤層に積層することで(設置工程)、マイクロニードルパッチ1を製造することが可能である。本実施形態では、機能性部材21をテープ22の接着剤層に積層することで積層したが、積層方法はこれに限定されずに従来公知の方法を用いることができ、例えば、基材11の背面側に機能性部材21を載置したのちに、一般的に用いられる、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤層をテープ基材上に形成したテープ22を積層することでマイクロニードルパッチ1を製造してもよい。薬剤投与機能を有するマイクロニードルパッチ1を作製する場合も、同様の方法により製造することが可能である。
【0084】
(製造方法の変形例)
本実施形態では、水溶性材料を除去することで孔部13を容易に形成するために水不溶性材料を用いて針状部12を形成したが、針状部12の作製方法は特に限定されない。例えば、水溶性材料と水不溶性材料と溶媒とを含有する液体状組成物を形成し、前記溶媒を蒸発させて溶媒以外の組成物を突起部生成用凹部に充填し、乾燥させることで突起部を形成してもよい。また、例えば、基材11上に、水溶性材料及び水不溶性材料を含有させた状態で粘度が0.1~1000mP・sであるように調製してディスペンサー等で液状組成物を滴下し、これにより針状部12を形成してもよい。
【0085】
また、本実施形態では、固体状組成物31として、水溶性材料および水不溶性材料とを含有するものを説明したが、針状部12等に多孔構造を形成することができれば材料は特に限定されない。水溶性材料を除去することによるもの以外の多孔構造の形成方法としては、針状部12を成型するために鋳型に固体状組成物31を充填した後、何らかの公知の方法により固体状組成物31中で気体を発生させ、発泡させながら多孔質材料からなる針状部12を形成する方法、鋳型中で樹脂を含む固体状組成物31の粉末を焼結して結着させ、多孔質材料からなる針状部12を得る方法等が挙げられる。本実施形態のように固体状組成物31を用いる場合には、組成物が溶媒を含有しないので、基材11の変色や変形を抑制できるため好ましい。
【0086】
また、本実施形態では、接着工程において固体状組成物31を第一接着剤層114により接着して基材11に固定したが、これに限定されず、固体状組成物31を加熱することで溶融して基材11に接着せしめ、その後冷却して基材11に固定することとしてもよい。この場合には、第一接着剤層114を設けなくてもよい。
【0087】
さらに、本実施形態において、接着工程と加熱加圧工程の順序を入れ替え、加熱加圧工程後に接着工程を行ってもよい。すなわち、突起部32を形成した後に基材11に突起部32を接着してもよい。
【0088】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
〔実施例〕
(実施例1)
水溶性材料としてのポリエチレングリコール(重量平均分子量4kDa)を3g、水不溶性材料としてのポリカプロラクトン(融点60℃)7gを110℃で加熱しながら加熱攪拌することにより溶融させ、混合して混合物を調製した。ポリジメチルシロキサンからなる固体状組成物用モールド41を準備し、この固体状組成物用モールド41は、固体状組成物用凹部42の開口部が直径15mm×15mmの矩形状で深さが1.5mmであった。この固体状組成物用凹部42に混合物33を注入した。
【0089】
次いで、ポリジメチルシロキサンからなる固体状組成物用シート43を蓋として混合物33を注入した固体状組成物用モールド41に積載し、固体状組成物31の表面を平坦化した。この状態で3℃で5分保持し、溶融されていた混合物33が固化して固体状となったので、固体状組成物用モールド41から離間して固体状組成物31を得た。
【0090】
次いで、2枚の粘着テープ(PET基材:厚さ100μm/アクリル系粘着剤層:厚さ25μm)を、それぞれの基材の粘着剤が設けられていない面を両面テープ(ニチバン株式会社、製品名:ナイスタック NW-25)により両面テープの両面に貼り合わせて、第一接着剤層114及び第二接着剤層115が露出した基材11を得た。その後、作製した基材11を30mm角のサイズにカットし、中央部に円形の貫通孔15(5mm径)を形成した。得られた基材11の第一接着剤層114と固体状組成物31とを接着せしめた。
【0091】
加熱加圧工程を行うために、突起部形成用凹部53を有するモールド52を準備した。モールド52は、ポリジメチルシロキサンからなりその表面に突起部形成用凹部53が下記の詳細のように形成されたものであった。
・突起部形成用凹部53の形状:断面正方形の四角錘形状
・突起部形成用凹部53の最大断面の一辺の長さ:500μm
・突起部形成用凹部53の高さ:900μm
・突起部形成用凹部53の配置:正方形格子状
・突起部形成用凹部53のピッチ:1000μm
・突起部形成用凹部53の数:一列13本、13列の計169本
【0092】
固体状組成物31、基材11、モールド52を用いて加熱加圧工程を行った。加熱プレス機(アズワン株式会社製、AH-1T)の下部ステージ56上に固体状組成物31とモールド52とを載置して、その上から30mm四方の正方形状のポリジメチルシロキサン製の蓋54を重ねた。蓋54には、その中央部にその開口が円形状の蓋凹部55(5.0mm径、125μm深さ)が形成されていた。この蓋凹部55が基材11の貫通孔15に対向するように蓋54は載置されていた。
【0093】
加熱プレス機の加熱設定温度を、下部ステージ56:100℃、上部ステージ57:90℃として加熱しながら及び2MPaで、蓋54及びモールド52を介して固体状組成物31を2分間押圧して予備工程を行った。その後、同様の加熱を行いながら、4MPaで30秒押圧して本工程を行った。さらに蓋54及びモールド52に収められた基材11及び固体状組成物31を3℃の冷蔵庫にて10分間保管し固体状組成物31を固化させた。その後、モールドから基材11及び成型された固体状組成物31を剥離して25℃の精製水に24時間浸漬させて、水溶性材料としてのポリエチレングリコールを溶解させ除去して針状部13、基部14、吸収性材料16を形成した。その後、乾燥オープンにおいて30℃で5時間静置し、水分を蒸発させて乾燥し、マイクロニードル構造体10を得た。
【0094】
30mm角にサイズカットした粘着シート(厚さ80μmのポリオレフィン製基材フィルムのマット加工面に、アクリル系粘着剤(ビッグテクノス株式会社製、AR-2040)を20μmの厚さで塗工したもの)であるテープ22の中央部に機能性材料21としてのグルコース測定ペーパー(5mm径の円形状。グルコースを検知するもの)を貼付した。テープ22の機能性部材21の周辺部分に通気孔24としての貫通孔(200μm径)を複数個開けた。
【0095】
ポリジメチルシロキサンからなる載置台61上に設けられた凹部62に、マイクロニードル構造体10の針状部12が形成された領域が収まるように載置し、基材11の貫通孔15とテープ22の機能性部材21とが重なるようにテープ22を貼付し、マイクロニードルパッチ1を得た。なお、マイクロニードルパッチ1の各評価を終えた後に、このマイクロニードルパッチが突出部17を有することを、断面を顕微鏡で観察することにより確認した。
【0096】
(実施例2)
実施例1とは、蓋54に蓋凹部55が形成されていない点以外はすべて同一の条件でマイクロニードルパッチ1を得た。また、マイクロニードルパッチ1の各評価を終えた後に、断面の観察により、このマイクロニードルパッチが突出部17を有さないことを確認した。
【0097】
(実施例3)
実施例1とは、一枚の粘着テープ(PET基材:厚さ100μm/アクリル系粘着剤層:厚さ25μm)を、第一の接着剤層114のみが形成された基材11として用いた点、蓋54に蓋凹部55が形成されていない点以外はすべて同一の条件でマイクロニードルパッチを得た。すなわち、本実施例によるマイクロニードルパッチ1は、第二の接着剤層115を有していない点で実施例1で得られたマイクロニードルパッチ1とは異なる。また、マイクロニードルパッチ1の各評価を終えた後に、断面の観察により、このマイクロニードルパッチが突出部17を有さないことを確認した。
【0098】
(実施例4)
実施例1とは、一枚の粘着テープ(PET基材:厚さ100μm/アクリル系粘着剤層:厚さ25μm)を、第一の接着剤層114のみが形成された基材11として用いた点以外はすべて同一の条件でマイクロニードルパッチを得た。すなわち、本実施例によるマイクロニードルパッチ1は、第二の接着剤層115を有していない点で実施例1で得られたマイクロニードルパッチ1とは異なる。なお、マイクロニードルパッチ1の各評価を終えた後に、このマイクロニードルパッチが突出部17を有することを、断面を顕微鏡で観察することにより確認した。
【0099】
(比較例1)
比較例として、基材11の代わりに水透過性基材(円形定性ろ紙NO.2(ADVANTEC社製)、貫通孔なし)を用いた点、蓋部54に蓋凹部55が形成されていない点以外はすべて同一の条件でマイクロニードルパッチを得た。
【0100】
(比較例2)
比較例として、基材11の代わりに水透過性基材(円形定性ろ紙NO.2(ADVANTEC社製)、貫通孔なし)を用いた点、蓋54に蓋凹部55が形成されていない点、以下に示す追加工程を行った点以外はすべて同一の条件でマイクロニードルパッチを得た。
【0101】
追加工程としては、両面テープ(紙の芯材を用いた市販品)を直径5mmの円形に裁断し、その中央部に直径3mmの円形の開口を形成した。水透過性基材の背面上の針状部形成領域に対応する領域に開口した両面テープを貼付した。次いで、両面テープの開口部に、食用粉末セルロースを開口部内に十分に充填した。開口した両面テープに機能性部材としてのグルコース測定ペーパーが重なるようにマイクロニードル構造体にテープを貼付した。
【0102】
(比較例3)
基材11の代わりに、水透過性基材(円形定性ろ紙NO.2(ADVANTEC社製))の両面に、アクリル系粘着剤からなる厚さ20μmの粘着剤層を設けたシートを用いた点以外は、全て実施例1と同一の条件でマイクロニードルパッチを得た。なお、マイクロニードルパッチ1の各評価を終えた後に、このマイクロニードルパッチが突出部17を有することを、断面を顕微鏡で観察することにより確認した。
【0103】
実施例1~4及び比較例1~3で得られたマイクロニードルパッチを、アガロースゲル(1質量%)にグルコース(5モル%)を添加したものの上に載置して、上から軽く指で5秒間押圧し、5分間穿刺した。その後、ピンセットを用いて基材とテープとの剥離が可能かどうかを確認した。剥離ができないものは評価を「A」(高評価)とし、剥離ができたものは評価を「B」(低評価)とした。結果を「剥離性評価」として表1に示す。
【0104】
また、実施例1~4及び比較例1~3で得られたマイクロニードルパッチのグルコース測定ペーパーがグルコースを検出して変色しやすいかどうかを確認した。変色部分がグルコース測定ペーパーの面積で80%以上であれば評価を「A」(高評価)とし、50%以上80%未満であれば「B」とし、50%未満であれば「C」(低評価)とした。なお、変色の確認は、穿刺の5分後に行った。結果を「センシング評価」として表1に示す。
【0105】
また、実施例1~4及び比較例2で得られたマイクロニードルパッチのグルコース測定ペーパーが穿刺の何分後からグルコースを検出による変色を明確に確認できるかどうか1分経過ごとに目視により観察し、着色開始までの時間として結果を表1に示す。また、図6に実施例1及び比較例2のマイクロニードルパッチの変色変化の写真を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示すように、実施例1から4については剥離性評価、センシング評価のいずれも評価は高く、マイクロニードルパッチ自体の強度も高く、また、十分に針状部12から液体を吸収して検出を行うことができることが分かった。
また、図6に示すように、実施例1のマイクロニードルパッチ1は、すぐにグルコースを検出して変色した。実施例1では着色開始までの時間も短かったため、分析速度も速いことがわかった。他方で、比較例1から3については、いずれも水透過性の基材を用いたため、水分が基材に浸透してしまい剥離性評価、センシング評価、着色開始までの時間のいずれも、もしくは少なくともいずれかの評価が低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のマイクロニードルパッチは、例えば、薬剤投与パッチや検査パッチとして使用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 マイクロニードルパッチ
10 マイクロニードル構造体
11 基材
12 針状部
13 孔部
21 機能性部材
22 テープ
23 接着剤層
24 通気孔
31 固体状組成物
32 突起部
33 混合物
41 固体状組成物用モールド
42 固体状組成物用凹部
51 凹部
52 モールド
53 突起部形成用凹部
54 蓋
55 蓋凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、
前記貫通孔内に充填された液体吸収可能な吸収性材料と、
前記基材の一方面側に設けられた、その内部に流路が形成された針状部と、
前記基材の他方面側に設けられた機能性部材とを備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、
前記吸収性材料と前記機能性部材とが互いに接続し、
前記針状部が、多孔質材料からなるとともに、前記吸収性材料も、当該多孔質材料と同じ多孔質材料である
ことを特徴とするマイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記基材の前記一方面には第一の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1載のマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記第一の接着剤層が、感圧接着剤層であることを特徴とする請求項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記基材の前記他方面には第二の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記貫通孔と、前記機能性部材とは、平面視において少なくとも一部が重複する位置に設けられることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記吸収性材料が、前記基材の他方面側から突出し、又は前記基材の他方面と、前記吸収性材料の表面とが、同一の平面に含まれるように充填されたことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
少なくとも前記機能性部材を覆うシートをさらに有し、当該シートが、前記機能性部材側の面に接着剤層を有することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
前記シートが、前記シートと前記基材との間に滞留した空気を排気する通気手段を備えたことを特徴とする請求項記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
前記機能性部材が、前記針状部から得られた前記液体を検出する検出部材又は前記針状部から前記液体としての薬剤を投与する薬剤投与部材であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
前記機能性部材が、複数設けられており、
前記機能性部材が、少なくとも第一機能性部材と第二機能性部材とを含み、前記第一機能性部材と前記第二機能性部材は、それぞれ異なる成分を検出する前記検出部材であることを特徴とする請求項記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項11】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、前記貫通孔内に充填された吸収性材料と、前記基材の一方面側に設けられ、その内部に流路が形成された針状部と、を備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、
前記針状部が、多孔質材料からなるとともに、前記吸収性材料も、当該多孔質材料と同じ多孔質材料である
とを特徴とするマイクロニードル構造体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記発明(発明1~5)において、前記貫通孔と、前記機能性部材とは、平面視において少なくとも一部が重複する位置に設けられることが好ましい(発明6)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
また、貫通孔15内に充填された吸収性材料16は、基材11の背面と吸収性材料16の表面とが同一の平面に含まれるように、即ち基材11の貫通孔15内を満たすか、基材11の貫通孔15よりも上側に突出するように設けられていることが好ましい。吸収性材料16の上面が、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれるか、それよりも上側に突出するように設けられていることで、吸収性材料16と機能性部材21とが確実に接続し、吸収性材料16と機能性部材21との間で液体が流通しやすくなる。本実施形態では、貫通孔15の上面よりも突出した吸収性材料16には、吸収性材料16から延設されて突出部17が形成されている。そして、この突出部17が機能性部材21に直接接続している。このように突出部17が形成されていることで、吸収性材料16と機能性部材21とがより確実に接続し、吸収性材料16と機能性部材21との間で液体が流通しやすくなる。なお、吸収性材料16の上面が、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれず、かつ、それよりも上側に突出するように設けられてもいない場合、すなわち、吸収性材料16の上面が基材11の背面に対してやや凹部となるように形成されている場合には、機能性部材21を押圧した状態で設けることで、機能性部材21と吸収性材料16とが接続することができる。しかし、この場合に、吸収性材料16と機能性部材21とが直接接触する接点を持たないこともありえる。あるいは、吸収性材料16の上面の一部のみが、貫通孔15の上面と同一の平面に含まれるように形成された場合には、両者の接触部分の面積は小さくなることもなる。これらの場合であっても、液体の輸送が吸収性材料16と機能性部材21との間で許容できる程度に行われれば、本発明における「吸収性材料16と機能性部材21とは接続されている」に含まれる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
30mm角にサイズカットした粘着シート(厚さ80μmのポリオレフィン製基材フィルムのマット加工面に、アクリル系粘着剤(ビッグテクノス株式会社製、AR-2040)を20μmの厚さで塗工したもの)であるテープ22の中央部に機能性部材21としてのグルコース測定ペーパー(5mm径の円形状。グルコースを検知するもの)を貼付した。テープ22の機能性部材21の周辺部分に通気孔24としての貫通孔(200μm径)を複数個開けた。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、
前記貫通孔内に充填された液体吸収可能な吸収性材料と、
前記基材の一方面側に設けられた、その内部に流路が形成された針状部と、
前記基材の他方面側に設けられた機能性部材とを備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、
前記吸収性材料と前記機能性部材とが互いに接続し、
前記針状部が、多孔質材料からなるとともに、前記吸収性材料も、当該多孔質材料と同じ多孔質材料である
ことを特徴とするマイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記基材の前記一方面には第一の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記第一の接着剤層が、感圧接着剤層であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記基材の前記他方面には第二の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記貫通孔と、前記機能性部材とは、平面視において少なくとも一部が重複する位置に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記吸収性材料が、前記基材の他方面側から突出し、又は前記基材の他方面と、前記吸収性材料の表面とが、同一の平面に含まれるように充填されたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
少なくとも前記機能性部材を覆うシートをさらに有し、当該シートが、前記機能性部材側の面に接着剤層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
前記シートが、前記シートと前記基材との間に滞留した空気を排気する通気手段を備えたことを特徴とする請求項7記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
前記機能性部材が、前記針状部から得られた液体を検出する検出部材又は前記針状部から液体としての薬剤を投与する薬剤投与部材であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
前記機能性部材が、複数設けられており、
前記機能性部材が、少なくとも第一機能性部材と第二機能性部材とを含み、前記第一機能性部材と前記第二機能性部材は、それぞれ異なる成分を検出する前記検出部材であることを特徴とする請求項9記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項11】
貫通孔を有する液体非透過性の基材と、前記貫通孔内に充填された吸収性材料と、前記基材の一方面側に設けられ、その内部に流路が形成された針状部と、を備え、
前記針状部と前記吸収性材料とが互いに接続し、
前記針状部が、多孔質材料からなるとともに、前記吸収性材料も、当該多孔質材料と同じ多孔質材料である
ことを特徴とするマイクロニードル構造体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記発明(発明1~10)において、前記機能性部材が、前記針状部から得られた液体を検出する検出部材又は前記針状部から液体としての薬剤を投与する薬剤投与部材であることが好ましい(発明11)。