(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044543
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230323BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230323BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230323BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H01L21/31 C
H01L21/302 101D
C23C16/511
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152616
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】古屋 治彦
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA04
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4K030LA15
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5F045GB08
(57)【要約】
【課題】プラズマ着火を容易にし、ラジカルの生成効率を向上させる。
【解決手段】チャンバと、前記チャンバ内に設けられた載置台と、前記チャンバの壁面に設けられたマイクロ波透過窓と、前記マイクロ波透過窓を介して前記チャンバ内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記チャンバ内を、前記マイクロ波透過窓が配置された領域であるプラズマ生成空間と、前記載置台が配置された領域である処理空間と、に区画するシャワー板と、前記シャワー板から前記プラズマ生成空間に突出し、少なくとも一部に導体を含む突出部と、を有するプラズマ処理装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた載置台と、
前記チャンバの壁面に設けられたマイクロ波透過窓と、
前記マイクロ波透過窓を介して前記チャンバ内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記チャンバ内を、前記マイクロ波透過窓が配置された領域であるプラズマ生成空間と、前記載置台が配置された領域である処理空間と、に区画するシャワー板と、
前記シャワー板から前記プラズマ生成空間に突出し、少なくとも一部に導体を含む突出部と、
を有するプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記突出部はプラズマ着火源として機能する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記突出部の前記マイクロ波透過窓に近接する部位は誘電体で形成され、
前記導体は、前記誘電体を介して前記マイクロ波透過窓に近接する、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記突出部には、前記マイクロ波透過窓に向けて開口するガス孔が設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ガス孔の端面は、拡径されている、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記導体から前記マイクロ波透過窓の表面までの最短距離は、3mm~10mmである、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記シャワー板には複数の貫通孔が形成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記マイクロ波透過窓は、前記チャンバの壁面の中心部と、前記中心部を囲む外周部と、にそれぞれ設けられ、
前記突出部は、前記中心部のマイクロ波透過窓及び前記外周部のマイクロ波透過窓からなる複数の前記マイクロ波透過窓の少なくともいずれかに対向するように1又は複数設けられる、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記突出部は、前記中心部のマイクロ波透過窓に対向するように設けられる、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記突出部は、前記中心部のマイクロ波透過窓及び前記外周部のマイクロ波透過窓のそれぞれに対向するように複数設けられる、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置が実行するプラズマ処理方法であって、
(a)基板を準備するステップと、
(b)チャンバ内にガスを供給するステップと、
(c)複数の前記マイクロ波透過窓の少なくともいずれかにマイクロ波パワーを供給しプラズマを着火させるステップと、
(d)前記(c)のステップから所定時間経過後に、マイクロ波パワーを供給していない残りの複数の前記マイクロ波透過窓にマイクロ波パワーを供給するステップと、
(e)生成したプラズマにより前記基板に所定の処理を実行するステップと、
を含むプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記(c)のステップは、前記中心部のマイクロ波透過窓にマイクロ波パワーを供給し、
前記(d)のステップは、前記外周部のマイクロ波透過窓にマイクロ波パワーを供給する、
請求項11に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のプラズマ処理装置は、チャンバの天壁に配置された複数のマイクロ波放射機構と、複数のマイクロ波放射機構の下方に、接地電位に設定された導電性材料からなるシャワー板とを有する。シャワー板は、マイクロ波放射機構からマイクロ波が放射された際に、マイクロ波放射面の直下に形成される表面波を、高電界領域となるマイクロ波放射面とシャワー板とで囲まれた空間に閉じ込め、空間に生成されるプラズマの電力吸収効率を高く維持する。
【0003】
低温で高品質な膜を得るためにプラズマを使用して成膜を行うことは重要である。また、近年成膜において薄膜化が進んできており、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜が取り入れられている。プラズマを用いることで、低温で高品質の薄膜が得られる一方、膜への電気的なダメージや物理的なダメージが課題となる場合がある。これを解決するためにリモートソースを用いたALD法による成膜が提案されている。このようなリモートソースは成膜時にALD法による操作が容易な高周波(マイクロ波帯(300MHz~3THz)よりも低い周波数の高周波)を用いることが多いが、マイクロ波帯のように周波数が高いほどラジカル生成効率が高いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プラズマ着火を容易にし、ラジカルの生成効率を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた載置台と、前記チャンバの壁面に設けられたマイクロ波透過窓と、前記マイクロ波透過窓を介して前記チャンバ内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記チャンバ内を、前記マイクロ波透過窓が配置された領域であるプラズマ生成空間と、前記載置台が配置された領域である処理空間と、に区画するシャワー板と、前記シャワー板から前記プラズマ生成空間に突出し、少なくとも一部に導体を含む突出部と、を有するプラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、プラズマ着火を容易にし、ラジカルの生成効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図。
【
図2】
図1に示すマイクロ波プラズマ源の構成を示すブロック図。
【
図3】
図1に示すA-A面からマイクロ波透過窓とシャワー板を平面視した図。
【
図5】プラズマ電位とフローティング電位との関係の一例を示すグラフ。
【
図6】突出部の配置とプラズマ電子密度との関係を説明するための図。
【
図7】実施形態に係る突出部の変形例1を示す断面図。
【
図8】実施形態に係る突出部の変形例2を示す断面図。
【
図9】実施形態に係るプラズマ処理方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[プラズマ処理装置]
まず、実施形態に係るプラズマ処理装置100について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
図2は
図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源の構成を示すブロック図である。
図3は
図1に示すA-A面からマイクロ波透過窓とシャワー板を平面視した図である。
【0011】
プラズマ処理装置100は、マイクロ波により表面波プラズマを形成してウエハに対して所定のプラズマ処理を行う。プラズマ処理としては、成膜処理またはエッチング処理が例示される。
【0012】
プラズマ処理装置100は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の接地されたチャンバ1と、チャンバ1内にマイクロ波を導入して表面波プラズマを形成するためのマイクロ波プラズマ源2とを有する。チャンバ1の上部には開口部が形成されており、マイクロ波プラズマ源2は開口部からシャワー板151を介してチャンバ1の内部に向かって設けられている。
【0013】
プラズマ処理装置100は、マイクロプロセッサを備えた制御部3を有する。制御部(制御装置)3は、プロセッサ、メモリを有するコンピュータであり得る。制御部3は、演算部、記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備える。制御部3は、マイクロ波プラズマ源2を含むプラズマ処理装置100の各部を制御する。制御部3では、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部3では、表示装置により、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、メモリには、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置100で各種処理を実行するために、制御部3のプロセッサによって実行される。プロセッサが、制御プログラムを実行し、プラズマ処理装置100の各部を制御することにより、レシピデータに従って種々のプロセス、例えば本開示のプラズマ処理方法がプラズマ処理装置100で実行される。
【0014】
チャンバ1内には載置台11が設けられている。載置台11は、基板の一例である半導体ウエハ(以下、ウエハWという)を水平に支持する。載置台11は、チャンバ1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11および支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁部材(セラミックス等)が例示される。
【0015】
図示はしていないが、載置台11には、ウエハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウエハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路、およびウエハWを搬送するために昇降する昇降ピン等が設けられている。さらに、載置台11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が電気的に接続されている。高周波バイアス電源14から載置台11に高周波電力が供給されることにより、ウエハW側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0016】
チャンバ1の底部には排気管15が接続され、排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させることによりチャンバ1内が排気され、これにより、チャンバ1内を所定の真空度まで高速に減圧できる。チャンバ1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口17と、搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0017】
マイクロ波プラズマ源2は、マイクロ波出力部30と、マイクロ波供給部40と、マイクロ波放射板50とを有する。マイクロ波出力部30は、複数経路に分配してマイクロ波を出力する。マイクロ波供給部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送し、マイクロ波をチャンバ1内に放射する。
【0018】
マイクロ波放射板50は、チャンバ1の天壁を構成する。マイクロ波放射板50は、チャンバ1の天壁面に設けられたマイクロ波透過窓44a~44g(
図3参照)を有し、マイクロ波透過窓44a~44gの下面をマイクロ波放射面とする。マイクロ波透過窓44a~44gは、総称してマイクロ波透過窓44ともいう。
図1には、7つのマイクロ波透過窓44のうちの3つのマイクロ波透過窓44a、44b、44eが示されている。マイクロ波供給部40は、マイクロ波透過窓44を介してチャンバ1内にマイクロ波を供給する。
【0019】
シャワー板151は、マイクロ波透過窓44の直下位置に、マイクロ波透過窓44と対向するように設けられている。シャワー板151は導電性材料からなり、複数の貫通孔151aを有しており、チャンバ1の側壁に支持されるとともに接地されている。シャワー板151は、チャンバ1内を、マイクロ波透過窓44側の領域であるプラズマ生成空間U1と、載置台11側の領域である処理空間U2とに区画する。
【0020】
マイクロ波放射板50には、シャワー構造の第1ガス導入部21が設けられている。第1ガス導入部21には、ガス供給管111を介して第1ガス供給源22が接続されている。第1ガス供給源22から第1ガス導入部21を介してプラズマ生成空間U1内に、プラズマ生成用のガス、例えばArガスや、高エネルギーで分解させたいガス、例えばO2ガスやN2ガス等の第1ガスが供給される。
【0021】
チャンバ1の側壁には、シャワー板151の下方でかつ載置台11の上方の位置に円環状をなす第2ガス導入部23が設けられている。第2ガス導入部23には、第2ガス供給源25から、成膜処理やエッチング処理等のプラズマ処理の際に、第1ガスと比較して分解させずに供給したい処理ガス、例えばシラン(SiH4)ガスやC5F8ガス等の第2ガスが供給される。第1ガス供給源22および第2ガス供給源25から供給されるガスとしては、プラズマ処理の内容に応じた種々のガスを用いることができる。
【0022】
次に、マイクロ波プラズマ源2の詳細な構造について説明する。マイクロ波プラズマ源2は、上述したように、マイクロ波出力部30と、マイクロ波供給部40と、マイクロ波放射板50とを有する。
図2に示すように、マイクロ波出力部30は、マイクロ波電源31と、マイクロ波発振器32と、発振されたマイクロ波を増幅するアンプ33と、増幅されたマイクロ波を複数に分配する分配器34とを有する。
【0023】
マイクロ波発振器32は、所定周波数のマイクロ波を例えばPLL発振させる。分配器34では、マイクロ波の損失ができるだけ起こらないように、入力側と出力側のインピーダンス整合を取りながらアンプ33で増幅されたマイクロ波を分配する。なお、マイクロ波の周波数としては、700MHzから3GHzの範囲の種々の周波数を用いることができる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、マイクロ波供給部40は、分配器34にて分配されたマイクロ波を主に増幅する複数のアンプ部42と、アンプ部42に対応して設けられた複数のマイクロ波放射機構43とを有する。マイクロ波供給部40は、アンプ部42とマイクロ波放射機構43とを7個ずつ有している。7個のマイクロ波放射機構43は、外周部に円周状に6個およびそれらの中心部に1個、円形をなすマイクロ波放射板50に設けられている。7個のマイクロ波放射機構43を伝搬したマイクロ波は、7つのマイクロ波透過窓44からチャンバ1内に向けて放射する。
【0025】
図3は
図1に示すA-A面からマイクロ波透過窓とシャワー板を平面視した図であり、本体部120の図示を省略している。
図3に示すように、マイクロ波透過窓44は、チャンバ1の天壁面の中心部と、この中心部を囲む外周部とにそれぞれ設けられ、1つの中心部のマイクロ波透過窓44aと、6つの外周部のマイクロ波透過窓44b~44gとからなる。
【0026】
マイクロ波供給部40のアンプ部42は、
図2に示すように、分配器34にて分配されたマイクロ波を増幅して各マイクロ波放射機構43に導く。アンプ部42は、位相器46と、可変ゲインアンプ47と、メインアンプ48と、アイソレータ49とを有している。
【0027】
位相器46は、マイクロ波の位相を変化させる機能を有し、この位相制御により放射特性を変調させる。例えば、マイクロ波放射機構43毎に位相を調整することにより指向性を制御してプラズマ分布を変化させる。また、隣り合うマイクロ波放射機構43において90°ずつ位相をずらすようにして円偏波を得ることができる。また、位相器46は、アンプ内の部品間の遅延特性を調整し、マイクロ波放射機構43内での空間合成を目的として使用することができる。ただし、このような放射特性の変調やアンプ内の部品間の遅延特性の調整が不要な場合には位相器46は設けなくてもよい。
【0028】
可変ゲインアンプ47は、メインアンプ48へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整し、プラズマ強度の調整をするためのアンプである。可変ゲインアンプ47をマイクロ波放射機構43毎に変化させることによって、発生するプラズマに分布を生じさせることができる。
【0029】
メインアンプ48は、ソリッドステートアンプを構成し、例えば、入力整合回路と、半導体増幅素子と、出力整合回路と、高Q共振回路とを有する。
【0030】
アイソレータ49は、
図1及び
図3に示すスロットアンテナSで反射してメインアンプ48に向かうマイクロ波の反射波を分離するものであり、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、反射波をダミーロードへ導き、ダミーロードはサーキュレータによって導かれた反射波を熱に変換する。
【0031】
図1に示すように、マイクロ波放射機構43はチューナ60を有している。チューナ60は、アンプ部42から給電されたマイクロ波を伝送するとともにインピーダンスを整合する機能を有している。チューナ60はマイクロ波放射板50の上面に取り付けられている。
【0032】
マイクロ波放射板50は、金属製の本体部120を有する。本体部120を構成する金属としては、アルミニウムや銅のような熱伝導率の高い金属が好ましい。本体部120の開口には、マイクロ波放射機構43の一部を構成する遅波材121とマイクロ波透過窓44が嵌め込まれている。遅波材121およびマイクロ波透過窓44は誘電体からなり、円板状をなしており、各チューナ60に対応する位置に設けられている。本体部120内の遅波材121とマイクロ波透過窓44との間の部分にはスロットS(
図3参照)が形成されており、平面状のスロットアンテナを構成する。
【0033】
遅波材121は、真空よりも大きい誘電率を有しており、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成されている。真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、遅波材121はマイクロ波の波長を短くしてアンテナを小さくする機能を有する。
【0034】
マイクロ波透過窓44は、マイクロ波を透過する材料である誘電体材料で構成されており、周方向に均一な表面波プラズマを形成する機能を有している。マイクロ波透過窓44は、遅波材121と同様、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成することができる。マイクロ波透過窓44の放射面(下面)は、本体部120の下面から内側に窪んだ位置においてチャンバ1のプラズマ生成空間U1に露出する。
【0035】
スロットSは、遅波材121に接する上面位置からマイクロ波透過窓44に接する下面位置まで貫通して設けられており、所望のマイクロ波放射特性になるような形状、例えば円弧状や円周状をなしている。本体部120とマイクロ波透過窓44との間のスロットSの周囲部分は、シールリング(図示せず)によりシールされており、マイクロ波透過窓44がスロットSを覆って密閉し、真空シールとして機能する。
【0036】
スロットS内は真空であってもよいが、誘電体が充填されていることが好ましい。スロットSに誘電体を充填することにより、マイクロ波の実効波長が短くなり、スロットの厚さを薄くすることができる。スロットSに充填する誘電体としては、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂を用いることができる。
【0037】
チューナ60をTEM波として伝送されたマイクロ波は、マイクロ波放射板50の内部に導入され、遅波材121を透過した後、スロットアンテナのスロットSに伝送されてTE波にモード変換される。さらにマイクロ波は、マイクロ波透過窓44を透過してチャンバ1内に放射され、マイクロ波透過窓44の表面に表面波が形成される。この表面波により第1ガス導入部21からチャンバ1内に導入された第1ガスがプラズマ化され、チャンバ1の空間に表面波プラズマが生成される。したがって、マイクロ波透過窓44の下面がマイクロ波放射面となる。
【0038】
マイクロ波放射面からマイクロ波が放射された際のチャンバ1内の電界強度は、マイクロ波放射面であるマイクロ波透過窓44の下面位置で最も大きく、マイクロ波放射面から離れるほど急激に小さくなる。
【0039】
マイクロ波放射板50の直下に設けられたシャワー板151は、このような高電界形成領域に配置されている。マイクロ波放射板50は、マイクロ波放射面を含む下面の周囲に下方に延びるチャンバ1の側壁の一部を構成する外周壁を有しており、シャワー板151はマイクロ波放射板50の外周壁とチャンバ1の側壁部との間に取り付けられている。そして、マイクロ波放射板50とシャワー板151とでプラズマ生成空間U1が形成される。マイクロ波放射機構43からマイクロ波が放射された際にプラズマ生成空間U1が高電界領域となり、プラズマ生成空間U1にプラズマが形成される。
【0040】
シャワー板151は、接地電位に設定されている。シャワー板151は、マイクロ波透過窓44のマイクロ波放射面からマイクロ波が放射された際にマイクロ波放射面の直下に形成される表面波を高電界領域となるプラズマ生成空間U1に閉じ込めてプラズマの電力吸収効率を高く維持する機能を有している。
【0041】
本開示では、中心部のマイクロ波透過窓44aに対応して突出部24が設けられている。突出部24は、シャワー板151の上面から中心部のマイクロ波透過窓44aの略中央に向かってプラズマ生成空間U1に突出し、少なくとも一部に導体を含む。突出部24はプラズマ着火源として機能する。突出部24の構成及び機能については後述する。
【0042】
これにより、プラズマ生成空間U1で安定した放電が生じやすくなり、異常放電を生じ難くすることができるとともに、プラズマの着火性を良好にすることができる。シャワー板151を構成する導電性材料としては、アルミニウムや銅等の電気伝導性の良好な金属を好適に用いることができる。また、シャワー板151の厚さは10~30mm程度が好ましく、シャワー板151の貫通孔151aの孔径は3~5mm程度が好ましい。
【0043】
シャワー板151のイオン遮蔽機能を有効に発揮するためには、マイクロ波放射面からシャワー板151の上面までの距離が13mm~28mmが好ましく、18mm~28mmがより好ましい。
【0044】
プラズマ生成空間U1は、マイクロ波放射板50とシャワー板151とで囲まれているが、プラズマ生成空間U1の側面および底面の金属部分によりプラズマ中のラジカルが消失する可能性がある。ラジカルの消失を回避するためには、プラズマ生成空間U1のチャンバ側面に対応するマイクロ波放射板50の外周壁内側を絶縁部材で被覆すること、および、プラズマ生成空間U1の下面を構成するシャワー板151の上面を絶縁部材で被覆することが好ましい。
【0045】
[突出部(プラズマ着火源)]
かかる構成のプラズマ処理装置100において、7個のマイクロ波放射機構43のマイクロ波透過窓44を有するマイクロ波供給部40を搭載し、マイクロ波透過窓44と載置台11との間にシャワー板151を配置する。そして、中心部のマイクロ波透過窓44aの対向位置に突出部24を設けることで突出部24をプラズマ着火源として機能させ、プラズマ着火の性能を向上させることができる。
【0046】
突出部24の構成及び機能について
図1及び
図4を参照して説明する。マイクロ波を使用したプラズマ着火では、式(1)に示す放電電界E
bdにより着火性能が決定される。
【0047】
【0048】
これに対して、平行平板型のプラズマ処理装置では、対向する下部電極及び上部電極間における高周波電力による放電によって、パッシェンの法則に従い、式(2)に示す放電電圧Vbdにより着火性能が決定される。
【0049】
【0050】
なお、式(1)のD及びKは、ガス種によって定まる係数であり、pはチャンバ内の圧力であり、fは電磁波の周波数である。mは、ガス種によって定まる定数(概ね0.5)である。また、式(2)のA及びBは、ガス種によって定まる係数であり、pはチャンバ内の圧力であり、dは、下部電極及び上部電極の電極間距離であり、γseは、2次電子放出係数である。2次電子放出係数は、下部電極及び上部電極の材料と表面状態によって定まる係数である。
【0051】
つまり、マイクロ波プラズマ源2では、プラズマ着火にパッシェンの法則は成立しない。よって、マイクロ波プラズマ源2では、式(2)に示す放電電圧Vbdにより着火性能は決定されない。マイクロ波プラズマ源2では、式(1)に示す放電電界Ebdを強くすれば着火し易くなる。
【0052】
そこで、突出部24は、マイクロ波および150MHz以上のVHF波に特有の着火し易い形状及び配置を有し、プラズマ生成空間U1においてプラズマの着火を容易にする。具体的には、突出部24は、プラズマ生成空間U1内にてシャワー板151から突出し、マイクロ波透過窓44aから離間して設けられている。突出部24は、概ねマイクロ波透過窓44aの中心に向かって突出する。
【0053】
マイクロ波がマイクロ波透過窓44のマイクロ波放射面からプラズマ生成空間U1内に放射されると、放射されたマイクロ波が対向面から突出する突出部24の導体で反射して、マイクロ波(反射波)がマイクロ波透過窓44a側に戻る。そうすると、マイクロ波透過窓44から出力されるマイクロ波の入射波と突出部24で反射した反射波との間で定在波が生じる。マイクロ波が放射された際のプラズマ生成空間U1内の電界強度は、マイクロ波放射面であるマイクロ波透過窓44の下面位置で最も大きい。かつ、プラズマ生成空間U1のギャップが狭いため、プラズマ生成空間U1内の突出部24とマイクロ波透過窓44aとの間で高電界が生じ、プラズマの着火が容易になる。一方、プラズマ着火後は、プラズマ生成空間U1内の突出部24とマイクロ波透過窓44aとの間の電界は高くならない。
【0054】
このようにプラズマ着火源として機能する突出部24は、導体又は導体を埋め込んだ誘電体である。突出部24の一例としては、導電性の棒状部材を有し、例えば先端がキノコの先端のような形状(先端の断面が略台形)であってもよい。突出部24の全体又は先端部を誘電体で覆ってもよい。例えば、突出部24のマイクロ波透過窓44の近接部位は誘電体で形成され、誘電体を介して導体がマイクロ波透過窓44に近接してもよい。
【0055】
図4は、実施形態に係る突出部24の一例を示す断面図である。
図4(a)では、突出部24は導体の棒状部材24b(先端部24aを含む)を有し、その表面はセラミックス等の誘電体24cでコーティングされている。内部の棒状部材24bはシャワー板151と同電位であり、グランド電位である。誘電体24cはなくてもよい。
【0056】
図4(b)に示すように、突出部24は導体の棒状部材24bの先端部24aのみを誘電体24cでコーティングしてもよい。
図4(b)では、シャワー板151と棒状部材24bとの間に絶縁部材24dを挟むことで棒状部材24bをフローティング電位とする。
【0057】
図4(c)は、棒状部材24b(先端部24aを含む)自体をセラミックス等の誘電体で作り、その内部にパッシブ着火源として機能する導体の電極24eを配置する。
【0058】
突出部24はパッシブ着火源であり、それ自体には電圧を印加しない。突出部24はマイクロ波を反射するための電極(導体)を有する必要がある。よって、突出部24は
図4(a)~
図4(c)の形態にとどまらず、パッシブ着火源として機能するための電極(導体)をマイクロ波透過窓44の近傍に設けた形態であればよい。なお、突出部24導体部分は、グランド電位であってもフローティング電位であってもよいが、グランド電位よりもフローティング電位の方が望ましい。突出部24の導体部分がグランド電位でもパッシブ着火源として機能する。ただし、コンタミネーション、パーティクル、ダメージを考慮すると突出部24の先端部24a(電極、導体部分)がフローティング電位であることが好ましい。その理由について
図5を参照しながら説明する。
【0059】
図5は、プラズマ電位とフローティング電位との関係の一例を示すグラフである。
図5のグラフの横軸Zは、マイクロ波透過窓44の表面から突出部24の電極(導体)先端までの距離(Z)を示し、縦軸は、プラズマ電位及びフローティング電位を示す。線Pは、距離(Z)に応じたプラズマ電位であり、線fは、距離(Z)に応じたフローティング電位である。線fは、突出部24がフローティング電位を有するように構成された場合を示す。本実験では、プラズマ生成空間U1内の圧力を0.5Torr(67Pa)に制御し、Arガスをプラズマ生成空間U1内に供給し、Arガスのプラズマを生成した。
【0060】
これによれば、突出部24の棒状部材がグランド電位であると、プラズマ電位自体が棒状部材へイオンが入射するときの力を示す入射電位になる。この結果、Zが10mm程度のとき17eV程度の電圧が棒状部材へかかる。これに対して、棒状部材がフローティング電位であると、Zが10mm程度のとき10eV程度の電圧が棒状部材へかかり、線Pのプラズマ電位と線fのフローティング電位との電位差分だけ棒状部材へかかる電圧を軽減できる。10eV程度の電圧であれば棒状部材がセラミックスでコーティングされている場合、突出部24の表面にダメージはほとんど生じない。
【0061】
以上から、突出部24の先端に位置する導体からマイクロ波透過窓44の放射面(表面)までの最短距離は、3mm~10mm程度離間していればよい。ただし、この最短距離が5mm~10mm程度離間すればコンタミネーション、パーティクル、ダメージをより抑制でき、より好ましい。よって、この最短距離が5mm~10mm程度であればさらに好ましい。
【0062】
突出部24は、プラズマをオンする時間を短縮できる。この理由について説明する。通常の整合器では、まず、プラズマ着火位置に整合器内の整合位置を合わせる。プラズマ着火後、整合位置を次の整合位置(プラズマ着火後の整合位置)に機械的に移動させる。この整合位置の機械的な移動に時間を要する。
【0063】
これに対して、マイクロ波プラズマ源2は、プラズマ着火後の整合位置に予め設定されて構成されている。通常はプラズマ着火後の整合位置ではプラズマは着火しないが、マイクロ波プラズマ源2では突出部24を設けることにより、プラズマ着火後の整合位置でも容易にプラズマ着火するように構成されている。よって、プラズマが着火した後に整合位置の移動が不要になる。
【0064】
このため、突出部24は、整合位置の移動を不要とし、プラズマをオンする時間を短縮できる。これにより、ガスを入れ替えて素早くプラズマ着火できるため、ALD(atomic layer deposition)プロセスにより適した構成であり、生産性を高めることができる。ただし、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜にも適用できる。
【0065】
例えば、
図1では、突出部24は中心部のマイクロ波透過窓44aに対向した位置に1つ設けられている。CVD法による成膜ではALDようにプラズマのオン及びオフを数秒程度の短時間で繰り返すプロセスは行わない。よって、中心部のマイクロ波透過窓44aにマイクロ波パワーを供給し、中心部のマイクロ波透過窓44aと突出部24との間でプラズマ着火すれば、中心部で着火したプラズマ中の電子によって、外周部のマイクロ波透過窓44b~44gの近傍も確実にプラズマ着火する。このとき、中心部のマイクロ波透過窓44a側の着火から外周部のマイクロ波透過窓44b~44g側の着火までの遅延時間はミリ秒のオーダーである。例えば、中心部のマイクロ波透過窓44aにマイクロ波パワーを供給した後、1ms~1s遅れて外周部のマイクロ波透過窓44b~44gにマイクロ波パワーを供給する。外周部のマイクロ波透過窓44b~44g側のプラズマ着火が中心部のマイクロ波透過窓44a側のプラズマ着火から1ms~1s遅れてもウエハWへのプロセスに影響はない。このため、突出部24は、中心部のマイクロ波透過窓44aに対向する位置に一つだけ配置されればよい。また、突出部24は、中心部のマイクロ波透過窓44a及び外周部のマイクロ波透過窓44b~44gからなる複数のマイクロ波透過窓44の少なくともいずれかに対向するように設けられてもよい。ただし、7つの突出部24を中央部及び外周部のマイクロ波透過窓44a~44gのそれぞれに対向して設けることで、よりプラズマ着火の性能を向上できる。
【0066】
ALD法による成膜ではプラズマのオン及びオフの切り替えを短時間で繰り返すプロセスが行われる。よって、ミリ秒のオーダーでプラズマ着火のオンを制御する可能性がある。このため、中央部のマイクロ波透過窓44a側がプラズマ着火してからミリ秒のオーダーで遅延して外周部のマイクロ波透過窓44b~44g側がプラズマ着火すると、成膜プロセスに影響が生じる場合がある。
【0067】
そこで、
図6(b)に示すように、すべてのマイクロ波透過窓44a~44gに対向する位置に一つずつ、合計で7つの突出部24をシャワー板151から各マイクロ波透過窓44に向けて突出するように配置する。これにより、7つのマイクロ波透過窓44の下方にて短時間でプラズマをオン及びオフできる。このため、ALD法による成膜プロセスに好適であり、CVD法による成膜プロセスにも使用できる。
【0068】
突出部24の配置とプラズマ電子密度との関係について、
図6(a)及び(b)を参照しながら説明する。
図6(a)の参考例は、中央部のマイクロ波透過窓44a及び外周部のマイクロ波透過窓44b~44gのいずれの対向位置にも突出部24がない場合のプラズマ電子密度Neの分布をグラフに示す。
図6(b)の本実施形態は、中央部のマイクロ波透過窓44a及び外周部のマイクロ波透過窓44b~44gのすべての対向位置に突出部24を設けた場合のプラズマ電子密度Neの分布をグラフに示す。
【0069】
これによれば、
図6(a)の参考例では、7つのマイクロ波透過窓44から放射されるマイクロ波によってプラズマ生成空間U1にて生成されるプラズマは、各マイクロ波透過窓44の下方で最も高いプラズマ電子密度Neのピークを有し、プラズマ電子密度Neが山型分布となる。よって、参考例では、プラズマ生成空間U1におけるプラズマ電子密度Neの分布にバラツキが生じている。
【0070】
一方、
図6(b)の本実施形態では、7つのマイクロ波透過窓44の下方のプラズマ生成空間U1にて生成されるプラズマはドーナツ形状であり、各マイクロ波透過窓44の下方のプラズマ電子密度Neのピークが平坦化する。これにより、低圧時にプラズマ電子密度Neが山型分布になることを緩和し、プラズマ電子密度Neの分布のバラツキを抑制できる。
【0071】
なお、7つのマイクロ波透過窓44の下方に7つの突出部24を設けた場合に限らず、1つのマイクロ波透過窓44aに対向して中央部に1つの突出部24を設けた場合にも、参考例と比較して低圧時のプラズマ電子密度Neの山型分布を緩和することができる。
【0072】
[突出部の変形例]
以上に説明したプラズマ着火源として機能する突出部24の変形例1、2について、
図7、
図8を参照しながら説明する。
図7は、突出部の変形例1を示す図である。
図8は、突出部の変形例2を示す図である。
【0073】
変形例1、2にかかる突出部24は、シャワー板151に一部が埋め込まれ、マイクロ波透過窓44に近接するようにシャワー板151から突出し、少なくとも一部に導体を含んでいる。導体は電極として機能する。更に、変形例1、2にかかる突出部24にはマイクロ波透過窓44に向けて開口するガス孔24jが設けられ、ガス孔24jの端面は、拡径されている。突出部24のガス孔24jは、第1ガス導入部21に替えて又は第1ガス導入部21とともに第1ガス供給源22に接続され、第1ガス供給源22からの第1ガスをプラズマ生成空間U1に供給する。
【0074】
図7の変形例1の突出部24は、円柱状の全体をアルミナ、AlN、石英等の誘電体24gで形成されている。変形例1に係る突出部24の内部には、突出部24を貫通するガス孔24jが形成されている。ガス孔24jは、細孔24j1と細孔24j1から拡径された拡径部24j2を有し、ガス孔24j先端の開口部24hは拡径部24j2からマイクロ波透過窓44に向けて開口する。ガス孔24jから還元ガスが供給される。
【0075】
変形例1の突出部24では、誘電体24gの中に導体24iが埋め込まれている。導体24iは、アルミニウムなどの金属により形成され、内部電極として機能する。導体24iは、ドーナツ形状(環状)であり、ガス孔24jの端面近傍であって拡径部24j2の外周に埋め込まれている。導体24iは、突出部24を形成する誘電体24gに覆われ、ガス孔24jの内壁に露出しない。
【0076】
変形例2に係る突出部24は、円柱状の全体を導体24kで形成し、導体24kの周囲をアルミナ等の誘電体24fで被覆している。この場合にも突出部24の内部にガス孔24jが形成され、ガス孔24jは、細孔24j1と拡径部24j2を有し、ガス孔24j先端の開口部24hは拡径部24j2からマイクロ波透過窓44に向けて開口する。ガス孔24jの細孔24j1及び拡径部24j2のサイズは変形例1、2で同一であり、拡径部24j2のガス孔24jの先端からの深さ(長さ)は、5mm以上である。ガス孔24jの細孔24j1の直径は、1mmよりも小さく、例えば0.3mmである。拡径部24j2及び開口部24hの直径は、3mm以上であって、かつ、プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λの1/8以下である。このように、拡径部24j2を設けることにより、ガス孔24jでの異常放電を抑制することができる。
【0077】
図7の導体24iの先端又は
図8の導体24kの先端からマイクロ波透過窓44の表面までの距離Dは、導体24iの先端近傍の電界が十分低くなる距離であり、3mm~10mm程度離間されていればよい。ただし、距離Dは5mm~10mm程度離間すればコンタミネーション、パーティクル、ダメージをより抑制でき、より好ましい。
【0078】
導体24iを誘電体24g内に埋め込むこと、及び導体24kを誘電体24fでコーティングすることで、突出部24のプラズマ耐性を高め、プラズマによる消耗及び劣化を抑制することができる。突出部24の変形例1、2の構成によってもプラズマ着火を容易にし、ガスの分解効率を向上させることができる。なお、
図7および
図8に示した突出部24の先端部の形状は、角部を面取りした丸みを帯びた形状としてもよい。
【0079】
突出部24のガス孔24jは、マイクロ波透過窓44に向かってガスを吐出する。このため、電磁波のエネルギーが集中した範囲にガスを噴射することでプラズマ生成空間U1にてN2ガス等の還元ガスである第1ガスを充分に解離させることができる。これにより、ガスの分解効率とラジカルの生成効率をより向上させることができる。これにより、変形例1、2にかかる突出部24は、プラズマ着火源としての機能に加え、ガスノズルとしての機能を有する。
【0080】
周波数が高いほどラジカル生成効率が高い。よって、本開示のプラズマ処理装置100によれば、一般的な高周波(マイクロ波帯よりも低い周波数)よりも周波数の高いマイクロ波リモートプラズマの機能によってラジカル生成効率を向上させることができる。
【0081】
そして、本開示のプラズマ処理装置100によれば、マイクロ波リモートプラズマの機能を実現するために、シャワー板151にプラズマ着火源(パッシブ着火源)として機能する突出部24を設置する構造とする。つまり、複数のマイクロ波透過窓44の放射面の中心の直下に5mm程度の距離を置いて導体を有する突出部24を設置し、これをプラズマ着火源として作用させる。これによれば、マイクロ波を放射するマイクロ波透過窓44の放射面下の着火電界が最も強い領域に突出部24を設置することでマイクロ波透過窓44下の電界をさらに強めることができる。この強められた電界によりプロセス実施時の整合位置のままでのプラズマ着火が可能となり、インピーダンス整合時間を省略してプロセスを実行することが可能となる。これによりプラズマ着火のオン及びオフを高速で切り替え可能なマイクロ波リモートプラズマを提供できる。
【0082】
このようにしてプラズマ生成空間U1において生成されたプラズマのうちイオンの多くがシャワー板151を通過する際に除去される。これにより、プラズマのうちイオンを最小限にして多くのラジカルを処理空間U2に供給するマイクロ波リモートプラズマを提供できる。
【0083】
[プラズマ処理方法]
7つの突出部24を7個のマイクロ波透過窓44に設置した場合、すべてのマイクロ波放射機構43を介してマイクロ波透過窓44の放射面からマイクロ波パワーを同時に供給し、各マイクロ波透過窓44の下方でプラズマ着火する。
【0084】
突出部24を中央部のマイクロ波透過窓44aのみに設置した場合、プラズマ着火シーケンスは、中央部のマイクロ波透過窓44a側を先にプラズマ着火させ、その着火より遅延して外周部のマイクロ波透過窓44b~44g側でプラズマ着火させ、全体をプラズマ着火させる。後者のプラズマ着火シーケンスについてプラズマ処理方法を、
図9を参照しながら説明する。このプラズマ処理方法は、制御部3が制御し、プラズマ処理装置100が実行する。
【0085】
まず、ステップS1において、制御部3は、ウエハWをチャンバ1内に搬入し、載置台11上に載置する。次に、ステップS3において、制御部3は、第1ガス供給源22から高エネルギーで分解させたい還元ガス等の第1ガスを供給し、第1ガス導入部21からプラズマ生成空間U1へ吐出する。変形例に係る突出部24を使用する場合には、制御部3は、ガス孔24jから第1ガスをプラズマ生成空間U1のマイクロ波透過窓44の近傍へ供給する。ガス孔24j及び/又は第1ガス導入部21から第1ガスを供給してもよい。また、制御部3は、第2ガス供給源25から分解させたくないシランガス等の第2ガスを供給し、第2ガス導入部23から処理空間U2に直接供給する。
【0086】
次に、ステップS5において、制御部3は、中央部のマイクロ波透過窓44aからマイクロ波を放射する。次に、ステップS7において、制御部3は、所定時間が経過したかを判定する。所定時間は、例えば1ms~1sである。
【0087】
ステップS7において、制御部3は、所定時間が経過するまで待ち、所定時間が経過したと判定した場合、中央部のマイクロ波透過窓44a側でプラズマが着火したと判定する。そして、ステップS9において、制御部3は、外周部のマイクロ波透過窓44b~44gからマイクロ波を放射する。これにより、外周部のマイクロ波透過窓44b~44g側も確実にプラズマ着火することができる。
【0088】
次に、ステップS11において、制御部3は、ウエハWにシリコン含有膜等の成膜処理を行い、本処理を終了する。
【0089】
本実施形態では、チャンバ1内において、マイクロ波放射面を有するマイクロ波透過窓44が露出したマイクロ波放射板50の直下の高電界形成領域に接地電位のシャワー板151を設ける。これにより、マイクロ波透過窓44からマイクロ波を放射した際にマイクロ波放射板50とシャワー板151とで形成されるプラズマ生成空間U1が高電界領域となり、プラズマ生成空間U1に供給された第1ガスのプラズマが生成される。このとき、マイクロ波放射面直下に形成された表面波が高電界領域であるプラズマ生成空間U1に閉じ込められる。このため、プラズマ生成空間U1中ではプラズマの電力吸収効率を高く維持することができる。更にマイクロ波透過窓44の近傍に突出部24を設け、プラズマ着火源として機能させる。これにより、プラズマ生成空間U1中で安定した放電が生じやすくなり、異常放電を生じ難くすることができる。これにより、プラズマ着火を容易にし、ラジカルの生成効率を向上させることができる。
【0090】
突出部24は、絶縁プローブとしてプラズマの状態を検出するように構成することができる。これにより、絶縁プローブから取得した信号を突出部24に接続されたコンピュータに送信し、コンピュータにより解析することで、チャンバ1内のプラズマ電子密度とプラズマ電子温度をモニタでき、プラズマの状態を解析できる。
【0091】
この場合、チャンバ1に計測用の窓を開け、プラズマ計測のモニタ(OES(Optical Emission Spectrometer:発光分光分析器)、絶縁プローブ等)を取り付け、プラズマの状態を検出するようにしてもよい。
【0092】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 プラズマ処理装置
1 チャンバ
2 マイクロ波プラズマ源
3 制御部
11 載置台
21 第1ガス導入部
23 第2ガス導入部
24 突出部
30 マイクロ波出力部
40 マイクロ波供給部
43 マイクロ波放射機構
44 マイクロ波透過窓
50 マイクロ波放射板
151 シャワー板
U1 プラズマ生成空間
U2 処理空間