(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044568
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】最適設計方法、誘導加熱装置、および誘導加熱方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/06 20060101AFI20230323BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H05B6/06 355
H05B6/06 351
H05B6/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152663
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】593010659
【氏名又は名称】株式会社中央エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】二保 知也
(72)【発明者】
【氏名】志谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】白井 太助
(72)【発明者】
【氏名】冨田 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】堀江 知義
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AC10
3K059AC33
3K059AD15
3K059CD75
(57)【要約】
【課題】被加熱対象物を適切に加熱すること。
【解決手段】最適設計方法は、被加熱対象物の近傍に複数のコイルを配置するステップと、複数のコイルに交流電流を流して被加熱対象物に磁場を印加して、被加熱対象物を加熱するステップと、被加熱対象物の加熱結果に基づいて、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱対象物の近傍に複数のコイルを配置するステップと、
複数の前記コイルに交流電流を流して前記被加熱対象物に磁場を印加して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、
前記被加熱対象物の加熱結果に基づいて、複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、
を含む、最適設計方法。
【請求項2】
複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、
前記被加熱対象物の磁場分布を算出するステップと、
前記被加熱対象物の磁場分布に基づいて、前記被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差を算出するステップと、
前記被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差を入力データとして、前記被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差と前記コイルに流れる交流電流の値との最小値を予測するための予測モデルを用いて、複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、
を含む、請求項1に記載の最適設計方法。
【請求項3】
複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、
前記被加熱対象物の温度分布を算出するステップと、
前記被加熱対象物の温度分布に基づいて、前記被加熱対象物の全域における温度の標準偏差を算出するステップと、
前記被加熱対象物の全域における温度の標準偏差を入力データとして、前記被加熱対象物の全域における温度の標準偏差と前記コイルに流れる交流電流の値との最小値を予測するための予測モデルを用いて、複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、
を含む、請求項1に記載の最適設計方法。
【請求項4】
複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、最適解の候補となり得る前記コイルに関するパラメータに含まれる複数の項目の組み合わせを複数予測する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の最適設計方法。
【請求項5】
複数の前記コイルに関するパラメータは、形状、巻き数、配置位置、外径、相対位置関係、前記被加熱対象物との距離、前記コイルに流れる交流電流の位相、および前記コイルに流れる交流電流の周波数に関する情報の少なくとも1つを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の最適設計方法。
【請求項6】
複数の前記コイルに関するパラメータは、少なくとも複数の前記コイルに流れる交流電流の位相と周波数との組み合わせに関する情報を含む、
請求項5に記載の最適設計方法。
【請求項7】
前記被加熱対象物は、第1の炭素繊維複合材と、前記第1の炭素繊維複合材とは形状の異なる第2の炭素繊維複合材である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の最適設計方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の最適設計方法で被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを予測して設定する制御装置と、
前記被加熱対象物の近傍に配置される複数の前記コイルと、
前記被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備え、
前記制御装置は、複数の前記コイルのパラメータを設定し、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱し、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する、
誘導加熱装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて、複数の前記コイルのパラメータを設定し、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱し、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する、
請求項8に記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
前記制御装置は、複数の前記コイルを移動させながら、前記被加熱対象物を加熱する、
請求項8または9に記載の誘導加熱装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に応じて、複数の前記コイルを移動させながら、複数の前記コイルの配置パターンを変更する、
請求項8から10のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか1項に記載の最適設計方法で設定された条件にしたがって加熱制御を行う制御装置と、
被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルと、
前記被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備え、
前記制御装置は、前記被加熱対象物に応じて、前記最適設計方法で設定された条件にしたがって、複数の前記コイルのパラメータを設定し、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱し、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する、
誘導加熱装置。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか1項に記載の最適設計方法で被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを予測して設定するステップと、
複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、
前記被加熱対象物の温度を測定するステップと、
測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、
を含む、誘導加熱方法。
【請求項14】
被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて設定された条件に従って、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを設定するステップと、
複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、
前記被加熱対象物の温度を測定するステップと、
測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、
を含む、誘導加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、最適設計方法、誘導加熱装置、および誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性の複合材料を融着させる方法として、複合材料の近傍に設置されたコイルに交流電流を流すことで、複合材料に対して磁場を印加する誘導加熱が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合材料を誘導加熱で加熱した場合、複合材料の内部で発生する誘導電流(渦電流)が複合材料の端部に集中し、複合材料の端部の温度が周囲よりも高くなることがある。熱融着の品質は温度条件などに依存する。そのため、複合材料の品質を一定に保つためには誘導加熱の際の複合材料の温度を全域で均一にすることが望ましい。複合材料の全域の温度を均一化する方法として、複合材料の近傍に複数のコイルを設置し、複数のコイルに交流電流を流した時に生じる電磁干渉を利用する方法が考えられる。しかしながら、コイルには設計変数が多いため、誘導加熱を適切に行うためのコイルの設計は困難である。
【0005】
本開示は、被加熱対象物を適切に加熱することのできる最適設計方法、誘導加熱装置、および誘導加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の最適設計方法は、被加熱対象物の近傍に複数のコイルを配置するステップと、
複数の前記コイルに交流電流を流して前記被加熱対象物に磁場を印加して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、前記被加熱対象物の加熱結果に基づいて、複数の前記コイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、を含む。
【0007】
本開示の誘導加熱装置は、本開示の最適設計方法で被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを予測して設定する制御装置と、前記被加熱対象物の近傍に配置される複数の前記コイルと、前記被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備え、前記制御装置は、複数の前記コイルのパラメータを設定し、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱し、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する。
【0008】
本開示の誘導加熱装置は、本開示の最適設計方法で設定された条件にしたがって加熱制御を行う制御装置と、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルと、前記被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備え、前記制御装置は、前記被加熱対象物に応じて、前記最適設計方法で設定された条件にしたがって、複数の前記コイルのパラメータを設定し、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱し、前記温度測定装置が測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する。
【0009】
本開示の誘導加熱方法は、被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを設定するステップと、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、前記被加熱対象物の温度を測定するステップと、測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、を含む。
【0010】
本開示の誘導加熱方法は、被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて設定された条件に従って、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを設定するステップと、複数の前記コイルに交流電流を流して、前記被加熱対象物を加熱するステップと、前記被加熱対象物の温度を測定するステップと、測定した前記被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、前記被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る複合材料構造体の解析モデルの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る複合材料構造体の解析モデルの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る解析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る最適設計方法に関するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るコイルの基本配置を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るコイルの基本配置を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るコイルの第1配置パターンを示す上面模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るコイルの第1配置パターンを示す断面模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るコイルの第2配置パターンを示す上面模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係るコイルの第2配置パターンを示す断面模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係るコイルの第3配置パターンを示す上面模式図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るコイルの第3配置パターンを示す断面模式図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係るコイルの第4配置パターンを示す上面模式図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係るコイルの第4配置パターンを示す断面模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係るコイルの第5配置パターンを示す上面模式図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係るコイルの第5配置パターンを示す断面模式図である。
【
図17】
図17は、本実施形態に係るコイルの第6配置パターンを示す上面模式図である。
【
図18】
図18は、本実施形態に係るコイルの第6配置パターンを示す断面模式図である。
【
図19】
図19は、本実施形態に係るコイルの第7配置パターンを示す上面模式図である。
【
図20】
図20は、本実施形態に係るコイルの第7配置パターンを示す断面模式図である。
【
図21】
図21は、本実施形態に係るコイルの第8配置パターンを示す上面模式図である。
【
図22】
図22は、本実施形態に係るコイルの第8配置パターンを示す断面模式図である。
【
図23】
図23は、本実施形態に係るコイルの第9配置パターンを示す上面模式図である。
【
図24】
図24は、本実施形態に係るコイルの第9配置パターンを示す断面模式図である。
【
図25】
図25は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンを示す上面模式図である。
【
図26】
図26は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンを示す断面模式図である。
【
図27】
図27は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンの変形例を示す上面模式図である。
【
図28】
図28は、本実施形態に係るコイルの第11配置パターンを示す上面模式図である。
【
図29】
図29は、本実施形態に係るコイルの第11配置パターンを示す断面模式図である。
【
図30】
図30は、本実施形態に係る誘導加熱装置の構成例を示す図である。
【
図31】
図31は、本実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図32】
図32は、本実施形態に係る第1融着方法に関するフローチャートである。
【
図33】
図33は、本実施形態に係る第2融着方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0014】
[実施形態]
本実施形態に係る最適設計方法は、機械学習の方法を用いて、誘導加熱で複合材料を融着させるために使用する複数のコイルに関する設計変数(パラメータ)を決定する。
【0015】
図1と、
図2を用いて、本実施形態に係る複合材料構造体の解析モデルの一例に説明する。
図1と、
図2とは、本実施形態に係る複合材料構造体の解析モデルの一例を示す図である。
【0016】
解析モデルMは、平板10と、ドライクロス11と、ストリンガ12、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとを含む。解析モデルMは、コイル14aからコイル14dに交流電流を流して平板10と、ストリンガ12とを誘導加熱し、平板10と、ストリンガ12とを熱融着させる複合材料構造体を模したモデルである。
【0017】
平板10は、熱可塑性の炭素繊維複合材(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)のモデルである。平板10は、第1の炭素繊維複合材の一種である。ストリンガ12は、断面がL字状に形成された熱可塑性の炭素繊維複合材のモデルである。ストリンガ12は、平板10の上面で熱融着される。ストリンガ12は、第2の炭素繊維複合材の一種である。本実施形態では、被加熱対象物の1つは平板状の平板10であるものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。本実施形態では、平板10は、例えば、曲面形状に加工された曲面板であってもよい。本実施形態では、ストリンガ12は、L字状に形成された炭素繊維複合材であるものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。ストリンガ12は、例えば、T字状、I字状、ハット状、オメガ状に形成されることもあり得る。
【0018】
ドライクロス11は、平板10と、ストリンガ12との間に位置するカーボンドライクロスのモデルである。ドライクロス11は、発熱体である。ドライクロス11は、平板10およびストリンガ12よりも薄い。ドライクロス11は、平板10とストリンガ12との融着面よりも広い。ドライクロス11を平板10とストリンガ12との融着面よりも広くすることで、平板10に流れる電流が端部に集中することを防止することができる。
【0019】
コイル14aからコイル14dは、平板10の下方に配置されるコイルのモデルである。コイル14aからコイル14dは、平板10の近傍に配置される。コイル14aからコイル14dを、コイル14と総称することもある。コイル14aからコイル14dには、所定の周波数及び位相を持つ交流電流が流れる。コイル14aからコイル14dに交流電流を流すことで、コイル14aからコイル14dの周囲に、磁場が発生する。コイル14aからコイル14dの周囲に発生した磁場は、平板10と、ドライクロス11と、ストリンガ12との内部に誘導電流(渦電流)を生じさせる。平板10と、ドライクロス11と、ストリンガ12とは、それぞれ、内部に誘導電流が流れることで、ジュール発熱により発熱する。平板10と、ドライクロス11と、ストリンガ12とは、それぞれ、発熱することにより、溶融する。ここで、コイル14aからコイル14dは、少なくともドライクロス11を発熱させて溶融させる。これにより、平板10と、ストリンガ12とを融着することができる。
【0020】
本実施形態では、解析モデルMにおいて、平板10を適切に加熱するための機械学習を用いて、平板10を適切に加熱するために配置するコイル14の形状、個数、配置位置、コイルに流す交流電流の位相及び周波数などを含むコイル14の設計変数の最適値を予測する。具体的には、本実施形態では、平板10と、ストリンガ12とを融着する際に、全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流とを最小化することのできる、コイル14の設計変数の最適値を予測する。本実施形態では、コイル14は、ソレノイドコイルであるものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。コイル14は、例えば、シングルパンケーキコイルであってもよいし、融着部の上下に配置されるダブルコイルであってもよい。また、本実施形態ではコイル14の位置を固定した状態で、平板10を加熱するものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。本開示は、例えば、コイル14を移動させながら平板10を加熱してもよい。
【0021】
図3を用いて、本実施形態に係る解析装置の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る解析装置の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、解析装置100は、入力部102と、出力部104と、制御部106と、記憶部108と、を備える。解析装置100は、パーソナルコンピュータなどの演算装置である。解析装置100は、単体の装置で構成してもよいし、演算装置及びサーバ装置などを組み合わせた複数の装置で構成してもよい。
【0023】
入力部102は、マウス、キーボード、及びタッチパネルなどの入力装置で構成されている。
【0024】
出力部104は、モニタ、およびスピーカなどの出力装置で構成されている。
【0025】
制御部106は、解析装置100の各部を制御する。制御部106は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの情報処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの記憶装置とを有する。制御部106は、本発明に係る解析装置100の動作を制御するプログラムを実行する。制御部106は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部106は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0026】
記憶部108は、例えば、制御部106の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部108は、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部108は、予測モデル108aと記憶している。
【0027】
予測モデル108aは、AI(Artificial Intelligence)モデルである。予測モデル108aは、平板10などの被加熱対象物を適切に加熱するための、平板10の近傍に配置されるコイルの設計変数を特定するためのモデルである。予測モデル108aは、被加熱対象物を加熱した際の被加熱対象物の温度分布と、コイルの設計変数とを1つのデータセットとし、複数のデータセットを教師データとして、複数のデータセットを教師データとして学習して構築された、学習済みのAIモデルとなっている。制御部106は、被加熱対象物をコイルで加熱した際の、被加熱対象物の温度分布、コイルの形状、個数、配置位置、コイルに流す交流電流の位相及び周波数などを予測モデル108aに入力する。これにより、制御部106は、被加熱対象物の近傍に配置するコイルの形状、個数、配置位置、コイルに流す交流電流の位相及び周波数などを特定する。予測モデル108aは、AIモデルとしては任意のモデルを用いてよい。例えば、予測モデル108aは、CNN(Conventional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルを用いてよい。なお、予測モデル108aは、被加熱対象物に対しコイル14で磁場を印加した際の被加熱対象物の磁場分布と、コイルの設計変数とを1つのデータセットとし、複数のデータセットを教師データとして、複数のデータセットを教師データとして学習して構築された、学習済みのAIモデルであってもよい。
【0028】
(最適設計方法)
図4を用いて、本実施形態に係る最適設計方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る最適設計方法に関するフローチャートである。
【0029】
制御部106は、初期設定を行う(ステップS10)。具体的には、制御部106は、被加熱対象物に対して複数のコイル14を配置する。より具体的には、制御部106は、複数のコイル14の設計変数を初期状態に設定する。
【0030】
図5と、
図6とを用いて、本実施形態に係るコイルの基本配置について説明する。
図5と、
図6とは、本実施形態に係るコイルの基本配置を説明するための図である。
【0031】
図5に示すように、制御部106は、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルを配置する。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、X軸方向において原点Oと一致している。コイル14cと、コイル14dとは、Y軸方向に沿って並ぶ。コイル14cの中心と、コイル14dの中心とは、Y軸方向において原点Oと一致している。コイル14aと、コイル14bとの間の距離をL1とする。コイル14cと、コイル14dとの間の距離をL2とする。コイル14aからコイル14dは、それぞれ、円形状である。コイル14aからコイル14dは、それぞれ、同形状であるとする。コイル14aからコイル14dの外径は、それぞれ、Diとする。コイル14aと、コイル14bとには、同位相の交流電流が流れるものとする。コイル14cと、コイル14dとには、同位相の交流電流が流れるものとする。コイル14aと、コイル14cとに流れる交流電流の位相差をpとする。
【0032】
図6に示すように、コイル14は、平板10の下方に配置される。平板10と、コイル14との間の距離をziとする。コイル14の巻き数をnとする。
【0033】
本実施形態では、距離L1、距離L2、外径Di、交流電流の位相差p、距離zi、および巻き数nが、設計変数となる。なお、設計変数は、これらに限定されず、その他の物理量を設計変数として用いてもよい。
【0034】
初期状態では、例えば、距離L1を2mm、距離L2を8mm、外径Diを18mm、交流電流の位相差pを180°、距離ziを2mm、コイルの巻き数nを9ターンとする。初期状態としては、その他の値を用いてもよい。
【0035】
制御部106は、被加熱対象物の温度分布を解析する(ステップS12)。具体的には、制御部106は、コイル14aからコイル14dに所定の交流電流を流して、平板10を誘導加熱した際の、融着箇所が適切な温度に達したときの平板10の全域における温度分布を解析する。より具体的には、制御部106は、電磁場-伝熱連成解析の手法を用いて、平板10の全域における温度分布を解析する。なお、制御部106は、平板10の全域の磁場分布の解析のみを行うようにしてもよい。すなわち、制御部106は、平板10の全域の磁場分布の解析のみを行って、加熱方法の最適な条件を算出するようにしてもよい。そして、ステップS14に進む。
【0036】
制御部106は、被加熱対象物の全域における温度のバラつきを算出する(ステップS14)。具体的には、制御部106は、ステップS12の解析結果に基づいて、平板10の全域における温度の標準偏差を算出する。そして、ステップS16に進む。
【0037】
制御部106は、被加熱対象物の全域における温度のバラつきの算出結果を、学習データとして追加する(ステップS16)。具体的には、制御部106は、複数のコイル14の設計変数と、平板10の全域における温度の標準偏差とを関連付けた学習データを予測モデル108aに追加する。そして、ステップS18に進む。
【0038】
制御部106は、最適化処理を実行する(ステップS18)。制御部106は、ステップS16の解析結果に基づいて、予測モデル108aを用いて、平板10の全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流とを最小化するための多目的最適化処理を実行する。具体的には、制御部106は、ステップS10で設定された初期値から設計変数を変更し、設計変数の各種の組み合わせにおいて、被加熱対象物の温度分布を解析する。具体的には、制御部106は、多目的最適化処理を実行して、平板10の全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流とを最小化するための設計変数のパレート解集合を算出する。そして、制御部106は、設計変数の各種の組み合わせにおける、被加熱対象物の温度分布の解析結果を比較する。制御部106は、比較結果に基づいて、平板10の全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流とを最小化するための設計変数を特定する。これにより、例えば、制御部106は、距離L1を2mm、距離L2を26mm、外径Diを26mm、交流電流の位相差pを80°、距離ziを2mm、コイルの巻き数nを17ターンといったパレート解を算出する。そして、ステップS20に進む。
【0039】
制御部106は、設計変数を更新する(ステップS20)。制御部106は、ステップS10で初期値に設定した設計変数を、ステップS18で算出された設計変数に更新する。具体的には、制御部106は、ステップS18で算出されたパレート解集合のうち、ユーザによって選択されたパレート解に従って設計変数を変更する。制御部106は、パレート解集合のうち、最適なものを自動で選択する機能を有していてもよい。そして、ステップS22に進む。
【0040】
制御部106は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS22)。制御部106は、所望の設計変数の値が得られた場合、および処理を終了する操作を受け付けた場合などに処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS22;Yes)、
図4の処理を終了する。処理を終了すると判定されない場合(ステップS22;No)、ステップS12に進む。すなわち、本実施形態では、所望の設計変数の値が得られない場合、および処理を終了する操作を受け付けたと判定されない場合には、ステップS12からステップS20の処理を繰り返し実行する。
【0041】
最適設計方法には、例えば、平板10の温度が適切な温度に達するまでの時間を設定する処理が含まれていてもよい。これにより、平板10と、ストリンガ12とを融着するための時間も適切に設定することができるようになる。
【0042】
最適設計方法には、例えば、加熱箇所を設定する処理が含まれてもよい。例えば、最適設計方法には、平板10において、加熱する箇所と、加熱しない箇所とを設定する処理が含まれてもよい。例えば、最適設計方法には、平板10の全域を加熱したり、特定の箇所のみを加熱したりすることを設定する処理が含まれてもよい。これにより、平板10を適切に加熱することができるようになる。
【0043】
最適設計方法には、コイル14aからコイル14dに流れる交流電流の位相と周波数とを設定する処理が含まれていてもよい。例えば、コイル14aからコイル14dに流れる交流電流の位相をそれぞれ異なる位相に設定してもよい。例えば、コイル14aからコイル14dに流れる交流電流の周波数をそれぞれ周波数に設定してもよい。
【0044】
本実施形態では、多目的最適化処理と平板10の全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流とを最小化するための設計変数を特定する処理について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、多目的処理としては、所望の温度に到達するための時間を最小化するための設計変数を特定してもよい。
【0045】
本実施形態では、多目的最適化処理と平板10の全域における温度の標準偏差と、コイル14に流れる交流電流との2つのパラメータを最小化するための設計変数を特定する処理について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、本実施形態では、3つ以上のパラメータを最小化するための設計変数を特定してもよい。
【0046】
[コイルの配置パターン]
本実施形態においては、
図4の処理を実行することで、コイル14の配置パターンを決定する。以下において、コイル14の配置パターンの算出例について説明する。
【0047】
(第1配置パターン)
図7と、
図8とを用いて、本実施形態に係るコイルの第1配置パターンについて説明する。
図7は、本実施形態に係るコイルの第1配置パターンを示す上面模式図である。
図8は、本実施形態に係るコイルの第1配置パターンを示す断面模式図である。第1配置パターンは、本実施形態の基本配置パターンである。
【0048】
図7に示すように、第1配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状である。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、XY平面において、ひし形状に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14cと、コイル14dとは、Y軸方向に沿って並ぶ。コイル14cの中心と、コイル14dの中心とは、XY平面において、同じY軸上に位置する。コイル14aと、コイル14cとの間の距離、コイル14cと、コイル14bとの間の距離、コイル14bと、コイル14dとの間の距離、コイル14dと、コイル14aとの間の距離は、同じである。
【0049】
図8は、
図7におけるA-A断面図を示す。
図8に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図8では示していないが、コイル14cと、コイル14dとは、コイル14aと、コイル14bと同様に配置される。
【0050】
(第2配置パターン)
図9と、
図10とを用いて、本実施形態に係るコイルの第2配置パターンについて説明する。
図9は、本実施形態に係るコイルの第2配置パターンを示す上面模式図である。
図10は、本実施形態に係るコイルの第2配置パターンを示す断面模式図である。
【0051】
図9に示すように、第2配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状である。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、XY平面において、正方形状に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14aと、コイル14cとは、Y軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14cの中心とは、Y軸方向において同軸上に位置する。コイル14cと、コイル14dとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14cの中心と、コイル14dの中心とは、XY平面において、同じX軸方向に位置する。コイル14bと、コイル14dとは、Y軸方向に沿って並ぶ。コイル14bの中心と、コイル14dの中心とは、Y軸方向において同軸上に位置する。コイル14aと、コイル14cとの間の距離、コイル14cと、コイル14bとの間の距離、コイル14bと、コイル14dとの間の距離、コイル14dと、コイル14aとの間の距離は、同じである。なお、コイル14aからコイル14dとの4つのコイルは、XY平面において、長方形状に配置することもあり得る。
【0052】
図10は、
図9におけるB-B断面図を示す。
図10に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図10では示していないが、コイル14cと、コイル14dとは、コイル14aと、コイル14bと同様に配置される。
【0053】
(第3配置パターン)
図11と、
図12とを用いて、本実施形態に係るコイルの第3配置パターンについて説明する。
図11は、本実施形態に係るコイルの第3配置パターンを示す上面模式図である。
図12は、本実施形態に係るコイルの第3配置パターンを示す断面模式図である。
【0054】
図11に示すように、第3配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状である。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、XY平面において、平行四辺形状に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14cと、コイル14dは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14cの中心と、コイル14dの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14aと、コイル14bとの間の距離と、コイル14cと、コイル14dとの間の距離は、同じである。コイル14aと、コイル14cとの間の距離と、コイル14bと、コイル14dとの間の距離は同じである。コイル14aの中心と、コイル14cの中心とを結ぶ直線と、コイル14bの中心と、コイル14dの中心とを結ぶ直線とは、平行である。
【0055】
図12は、
図11におけるC-C断面図を示す。
図12に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図12では示していないが、コイル14cと、コイル14dとは、コイル14aと、コイル14bと同様に配置される。
【0056】
(第4配置パターン)
図13と、
図14とを用いて、本実施形態に係るコイルの第4配置パターンについて説明する。
図13は、本実施形態に係るコイルの第4配置パターンを示す上面模式図である。
図14は、本実施形態に係るコイルの第4配置パターンを示す断面模式図である。
【0057】
図13に示すように、第4配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状である。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、XY平面において、台形状に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14cと、コイル14dは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14cの中心と、コイル14dの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14aと、コイル14bとの間の距離は、コイル14cと、コイル14dとの間の距離よりも長い。
【0058】
図14は、
図13におけるD-D断面図を示す。
図14に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図14では示していないが、コイル14cと、コイル14dとは、コイル14aと、コイル14bと同様に配置される。
【0059】
(第5配置パターン)
図15と、
図16とを用いて、本実施形態に係るコイルの第5配置パターンについて説明する。
図15は、本実施形態に係るコイルの第5配置パターンを示す上面模式図である。
図16は、本実施形態に係るコイルの第5配置パターンを示す断面模式図である。
【0060】
図15に示すように、第5配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとの3つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14cは、同一の円形状である。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14cは、XY平面において、三角形状に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、X軸方向に沿って並ぶ。コイル14aの中心と、コイル14bの中心とは、XY平面において、同じX軸上に位置する。コイル14aと、コイル14bとの間の距離と、コイル14aと、コイル14cとの間の距離と、コイル14bと、コイル14cとの間の距離とは、同じである。すなわち、
図15に示す例では、コイル14aからコイル14cは、正三角形状に配置されている。コイル14aからコイル14cは、二等辺三角形状に配置されることもあり得る。
【0061】
図16は、
図15におけるE-E断面図を示す。
図16に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図16では示していないが、コイル14cは、コイル14aと、コイル14bと同様に配置される。
【0062】
(第6配置パターン)
図17と、
図18とを用いて、本実施形態に係るコイルの第6配置パターンについて説明する。
図17は、本実施形態に係るコイルの第6配置パターンを示す上面模式図である。
図18は、本実施形態に係るコイルの第6配置パターンを示す断面模式図である。
【0063】
図17に示すように、第6配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dと、コイル14eとの5つのコイルが配置される。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dと、コイル14eとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状である。コイル14eは、コイル14aからコイル14dよりも小さい円形状である。コイル14aからコイル14dは、XY平面において、第2配置パターンと同様に配置される。コイル14eは、XY平面において、コイル14aからコイル14dの中心に配置される。
【0064】
コイル14eは、XY平面において、コイル14aからコイル14dの中心以外の位置に配置されていてもよい。コイル14aからコイル14eは、それぞれが、異なる形状であってもよい。また、第6配置パターンでは、コイル14aからコイル14eの5個のコイル14が配置されているが、6個以上のコイル14が配置されることもあり得る。
【0065】
図18は、
図17におけるF-F断面図を示す。
図18に示すように、コイル14aと、コイル14bと、コイル14eとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bと、コイル14eとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図18では示していないが、コイル14cと、コイル14dとは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14eと同様に配置される。
【0066】
(第7配置パターン)
図19と、
図20とを用いて、本実施形態に係るコイルの第7配置パターンについて説明する。
図19は、本実施形態に係るコイルの第7配置パターンを示す上面模式図である。
図20は、本実施形態に係るコイルの第7配置パターンを示す断面模式図である。
【0067】
図19に示すように、第7配置パターンでは、コイル14Aaと、コイル14Abと、コイル14Acと、コイル14Adとの4つのコイルが配置される。コイル14Aaからコイル14Adは、同一の四角形状である。コイル14Aaと、コイル14Abと、コイル14Acと、コイル14Adとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14Aaからコイル14Adは、第2パターンと同様に配置される。
【0068】
コイル14Aaからコイル14Adは、正方形状であってもよいし、長方形状であってもよい。コイル14Aaからコイル14Adは、その他の多角形状であってもよい。コイル14Aaからコイル14Adは、それぞれが異なる多角形状であってもよい。コイル14Aaからコイル14Adの少なくとも一つが、円形状であってもよい。
【0069】
図20は、
図19におけるG-G断面図を示す。
図20に示すように、コイル14Aaと、コイル14Abとは、平板10の下部に配置される。コイル14Aaと、コイル14Abとは、Z軸方向において同じ位置に配置される。
図20では示していないが、コイル14Acと、コイル14Adとは、コイル14Aaと、コイル14Abと同様に配置される。
【0070】
(第8配置パターン)
図21と、
図22とを用いて、本実施形態に係るコイルの第8配置パターンについて説明する。
図21は、本実施形態に係るコイルの第8配置パターンを示す上面模式図である。
図22は、本実施形態に係るコイルの第8配置パターンを示す断面模式図である。
【0071】
図21に示すように、第8配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとは、上面および下面が平板10に対して平行に配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状を有している。コイル14aからコイル14dは、XY平面においては、第1パターンと同様に配置される。
【0072】
図22は、
図21におけるH-H断面図を示す。
図22に示すように、コイル14aは、平板10の下部に配置される。コイル14bは、平板10の上部に配置される。すなわち、第8配置パターンでは、コイル14は平板10の上部および下部に配置される。平板10と、コイル14aとの間の距離と、平板10と、コイル14bとの間の距離とは同じである場合も、異なる場合もある。
図22では示していないが、コイル14cは、平板10の上部に配置される場合と、平板10の下部に配置される場合とがあり得る。コイル14dは、平板10の上部に配置される場合と、平板10の下部に配置される場合とがあり得る。コイル14aからコイル14dのそれぞれが、平板10の上部に配置される場合もあり得る。
【0073】
(第9配置パターン)
図23と、
図24とを用いて、本実施形態に係るコイルの第9配置パターンについて説明する。
図23は、本実施形態に係るコイルの第9配置パターンを示す上面模式図である。
図24は、本実施形態に係るコイルの第9配置パターンを示す断面模式図である。
【0074】
図23に示すように、第9配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cと、コイル14dとの4つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14dは、同一の円形状を有している。コイル14aからコイル14dは、XY平面においては、第1パターンと同様に配置される。
【0075】
図24は、
図23におけるI-I断面図を示す。
図24に示すように、コイル14aと、コイル14bとは、平板10の下部に配置される。コイル14aと、コイル14bとは、平板10に対して傾けて配置される。
図24に示す例では、コイル14aと、コイル14bとは、例えば、X軸方向において上面が平板10の中心を向くように傾けて配置される。コイル14aと、コイル14bとは、それぞれの上面が異なる方向を向くように配置される場合もあり得る。
図24では示していないが、コイル14cとは、コイル14bとは、任意の方向に向けて配置され得る。コイル14aからコイル14dのうち、少なくとも1つが平板10に対して、上面および下面が平行に配置される場合もあり得る。コイル14aからコイル14dの少なくとも1つが平板10の上部において、傾けて配置されることもあり得る。
【0076】
(第10配置パターン)
図25と、
図26とを用いて、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンについて説明する。
図25は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンを示す上面模式図である。
図26は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンを示す断面模式図である。
【0077】
図25に示すように、第10配置パターンでは、コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとの3つのコイルが配置される。コイル14aからコイル14cは、XY平面上において、Y軸方向に沿って直線状に配置される。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとは、上面および下面が平板10と平行に配置される。コイル14aと、コイル14bとの間の距離と、コイル14aと、コイル14cとの間の距離とは、同じである。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとは、X軸方向に沿って直線状に配置されることもあり得る。
【0078】
図26は、
図25におけるJ-J断面図を示す。
図26に示すように、コイル14aは、平板10の下部に配置される。
図26では示していないが、コイル14bと、コイル14とは、コイル14aと同様に配置される。コイル14aと、コイル14bと、コイル14cとの少なくも1つが、平板10の上部に配置されることもあり得る。
【0079】
(第10配置パターンの変形例)
第10配置パターンの変形例について説明する。
図25と、
図26に示した、第10配置パターンは、3個のコイルが直線状に並ぶものとして説明したが、本開示はこれに限定されない。
図27は、本実施形態に係るコイルの第10配置パターンの変形例を示す上面模式図である。
【0080】
図27に示すように、第10の配置パターンの変形例は、コイル14aと、コイル14bとの2つのコイルが配置されている。コイル14aと、コイル14bとは、Y軸方向に沿って直線状に配置される。すなわち、Y軸方向に沿って並ぶコイルの数は、2つであることもあり得る。
【0081】
(第11配置パターン)
図28と、
図29とを用いて、本実施形態に係るコイルの第11配置パターンについて説明する。
図28は、本実施形態に係るコイルの第11配置パターンを示す上面模式図である。
図29は、本実施形態に係るコイルの第11配置パターンを示す断面模式図である。
【0082】
図28に示すように、第11配置パターンは、コイル14Bが1つ配置されている。コイル14Bは、レーストラック形状を有している。コイル14Bは、Y軸方向の長さがX軸方向の長さよりも長い。コイル14Bは、X軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長いこともあり得る。コイル14Bの設計変数は、長径、短径、および直線部の長さ、移動方向に対する配置角度になり得る。
【0083】
図29は、
図28におけるK-K断面図を示す。
図29に示すように、コイルBは、平板10の下部に配置される。コイル14Bは、上面が平板10と平行に配置される。コイル14Bは、上面が平板10に対して傾いて配置されることもあり得る。コイル14Bは、平板10の上部に配置されることもあり得る。
【0084】
上述のとおり、解析装置100は、例えば、第1配置パターンから第11配置パターンに示したように、被加熱対象物に応じて、被加熱対象物に対するコイル14の配置パターンを算出する。解析装置100により算出されたコイルの配置パターンで被加熱対象物を加熱することで、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0085】
また、上記では第1配置パターンから第11配置パターンの算出例について説明したが、本開示はこれらに限定されない。例えば、本開示では、第1配置パターンから第11配置パターンを適宜組わせてもよい。例えば、第1配置パターンから第11配置パターンとは異なる配置パターンであってもよい。
【0086】
[誘導加熱装置]
図30を用いて、本実施形態に係る誘導加熱装置の構成例について説明する。
図30は、本実施形態に係る誘導加熱装置の構成例を示す図である。
【0087】
図30に示すように、誘導加熱装置200は、制御装置210と、温度測定装置220と、コイル230aと、コイル230bと、コイル230cと、コイル240dと、を備える。制御装置210には、電源300が接続されている。制御装置210は、電源300から電力を受ける。電源300は、制御装置210に電力を供給する。
【0088】
誘導加熱装置200は、平板20と、ストリンガ22とを融着させるために、コイル230aからコイル230dを用いて、平板20を加熱するための装置である。平板20は、平板10に対応する実際の熱可塑性の炭素繊維複合材である。ストリンガ22は、ストリンガ12に対応する実際の熱可塑性の炭素繊維複合材である。
【0089】
制御装置210は、誘導加熱装置200の各部を制御する。
図31は、本実施形態に係る制御装置210の構成を示す図である。
図31に示すように、制御装置210は、通信部212と、制御部214と、記憶部216と、を備える。
【0090】
通信部212は、制御装置210と、外部装置との間の通信を実行する。通信部212は、例えば、制御装置210と、温度測定装置220との間の通信を実行する。
【0091】
制御部214は、誘導加熱装置200の各部を制御する。制御部214は、例えば、CPUやMPUなどの情報処理装置と、RAM又はROMなどの記憶装置とを有する。制御部214は、本発明に係る誘導加熱装置200の動作を制御するプログラムを実行する。制御部214は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現されてもよい。制御部214は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0092】
記憶部216は、例えば、制御部214の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部216は、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置、HDD等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部216は、予測モデル216aを記憶している。
【0093】
予測モデル216aは、予測モデル108aに対応するAIモデルである。すなわち、予測モデル216aは、平板20を適切に加熱するための、平板20のコイル230aからコイル230dの設計変数を特定するためのモデルである。言い換えれば、制御装置210は、最適設計方法で用いた予測モデル108aに対応する予測モデル216aを予め記憶している。
【0094】
温度測定装置220は、平板10の温度を測定する。温度測定装置220は、例えば、サーモカメラで実現される。温度測定装置220は、熱電対であってもよい。温度測定装置220は、その他の温度測定装置であってもよい。
【0095】
コイル230aからコイル230dは、コイル14aからコイル14dに対応する誘導コイルである。コイル230aからコイル230dの設計変数は、解析装置100による算出された設計変数に従って設計されている。コイル230aからコイル230dは、コイル230と総称することもある。
【0096】
[融着方法]
図32を用いて、本実施形態に係る第1融着方法について説明する。
図32は、本実施形態に係る第1融着方法に関するフローチャートである。
【0097】
制御部214は、最適化処理の結果に基づいて、被加熱対象物に応じて、コイル230のパラメータを設定する(ステップS30)。具体的には、制御部214は、平板20に応じて、予測モデル216aを用いて、コイル230aからコイル230dのX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の位置を設定する。コイル230aからコイル230dの外径や巻き数などは、被加熱対象物である平板20に応じて、予め設定されているとよい。そして、ステップS32に進む。
【0098】
制御部214は、被加熱対象物を加熱する(ステップS32)。具体的には、制御部214は、平板20に応じて、予測モデル216aを用いて、コイル230aからコイル230dに交流電流を流して、コイル230aからコイル230dの周辺に磁場を発生させることで、平板20を加熱する。そして、ステップS34に進む。
【0099】
制御部214は、温度情報を取得する(ステップS34)。具体的には、制御部214は、温度測定装置220を制御して、コイル230aからコイル230dにより加熱されている、平板20の温度を測定させて、温度測定装置220から温度の測定結果に関する温度情報を取得する。そして、ステップS36に進む。
【0100】
制御部214は、平板20の温度は適切であるか否かを判定する(ステップS36)。具体的には、制御部214は、平板20の温度が平板20とストリンガ22とを融着する温度として適切であるか否かを判定する。温度が適切であると判定された場合(ステップS36;Yes)、ステップS38に進む。温度が適切であると判定されない場合(ステップS36;No)、ステップS32に進む。
【0101】
制御部214は、被加熱対象物を融着させる(ステップS38)。具体的には、制御部214は、例えば、図示しない加圧装置などを用いて、平板20と、ストリンガ22とを加圧して、平板20と、ストリンガ22とを融着させる。そして、
図32の処理を終了する。
【0102】
図33を用いて、本実施形態に係る第2融着方法について説明する。
図33は、本実施形態に係る第2融着方法に関するフローチャートである。
【0103】
ステップS50の処理は、
図32に示すステップS30の処理と同一なので、説明を省略する。
【0104】
制御部214は、コイル230を移動させながら被加熱対象物を加熱する(ステップS52)。制御部214は、平板20に応じて、予測モデル216aを用いて、コイル230aからコイル230dに交流電流を流し、かつコイル230aからコイル230dを移動させながら平板20の全域を加熱する。例えば、制御部214は、予測モデル216aに基づいて、平板20の垂直方向の発熱分布を算出する。制御部214は、例えば、平板20の垂直方向の発熱分布が均一となるように、コイル230aからコイル230dを移動させながら平板20の全域を加熱する。そして、ステップS54に進む。
【0105】
ステップS54の処理は、
図32に示すステップS34の処理と同一なので、説明を省略する。
【0106】
制御部214は、平板20が適切に加熱されているか否かを判定する(ステップS56)。具体的には、制御部214は、ステップS54で取得された温度情報に基づいて、平板20の全域の温度の標準偏差を算出し、算出した温度の標準偏差が所定値以下である場合に、適切に加熱されていると判定する。温度の標準偏差の所定値は、設計に応じて任意に設定してよい。温度の標準偏差の所定値は、例えば、0℃であってもよいし、5℃以下のように設定してもよい。適切に加熱されていると判定された場合(ステップS56;Yes)、ステップS58に進む。適切に加熱されていると判定されない場合(ステップ56;No)、ステップS62に進む。
【0107】
ステップS58と、ステップS60との処理は、それぞれ、
図32に示すステップS36と、ステップS38との処理と同一なので、説明を省略する。
【0108】
ステップS56でNoと判定された場合、制御部214は、加熱条件を変更する(ステップS62)。具体的には、制御部214は、ステップS56で設定条件と、ステップS56での標準偏差の算出結果を予測モデル216aに登録する。制御部214は、予測モデル216aに基づいて、コイル230aからコイル230dの配置位置、平板20との距離、コイル230aからコイル230dに流す交流電流の位相および周波数の条件、コイル230aからコイル230dの移動条件などを変更する。コイル230aからコイル230dに流れる交流電流の位相は、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。コイル230aからコイル230dに流れる交流電流の周波数は、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、ステップS64に進む。
【0109】
制御部214は、変更後の加熱条件で平板20を加熱する(ステップS64)。具体的には、制御部214は、ステップS62で変更した加熱条件に従って、平板20を加熱する。例えば、制御部214は、コイル230aからコイル230dを移動させながら、コイル230aからコイル230dの配置パターンを変更しつつ、平板20を加熱する。そして、ステップS54に進む。すなわち、制御部214は、平板20の加熱結果に基づいて、コイル230aからコイル230dをフィードバック制御する。
【0110】
本実施形態では、被加熱対象物を加熱する加熱装置は、複数のコイルを用いて誘導加熱の手法で被加熱対象物を加熱する誘導加熱装置200について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、被加熱対象物を加熱する加熱装置は、被加熱対象物に対してレーザを照射して加熱するレーザ加熱装置であってもよい。
【0111】
また、誘導加熱装置200は、予測モデル216aを搭載しているものとして、説明したが、本開示はこれに限定されない。誘導加熱装置200は、例えば、予測モデル216aの代わりに、予測モデル216aに従って学習された加熱条件に関する情報を記憶していてもよい。この場合であっても、誘導加熱装置200は、加熱条件に従って被加熱対象物を加熱することができる。
【0112】
本実施形態に記載の最適設計方法、誘導加熱装置、および誘導加熱方法は、例えば、以下のように把握される。
【0113】
第1の態様の最適設計方法は、被加熱対象物の近傍に複数のコイルを配置するステップと、複数のコイルに交流電流を流して被加熱対象物に磁場を印加して、被加熱対象物を加熱するステップと、被加熱対象物の加熱結果に基づいて、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、を含む。
【0114】
第1の態様の最適設計方法によれば、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータの予測値を、被加熱対象物の加熱結果に基づいて、予測することができる。これにより、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを得ることができる。
【0115】
第2の態様の最適設計方法は、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、被加熱対象物の磁場分布を算出するステップと、被加熱対象物の磁場分布に基づいて、被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差を算出するステップと、被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差を入力データとして、被加熱対象物の全域における磁場の標準偏差とコイルに流れる交流電流の値との最小値を予測するための予測モデルを用いて、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、を含む。これにより、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータの予測値をAIモデルである予測モデルを用いて、最適化することができる。そのため、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータの予測値を容易に算出することができる。
【0116】
第3の態様の最適設計方法は、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、被加熱対象物の温度分布を算出するステップと、被加熱対象物の温度分布に基づいて、被加熱対象物の全域における温度の標準偏差を算出するステップと、被加熱対象物の全域における温度の標準偏差を入力データとして、被加熱対象物の全域における温度の標準偏差とコイルに流れる交流電流の値との最小値を予測するための予測モデルを用いて、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップと、を含む。これにより、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータの予測値をAIモデルである予測モデルを用いて、最適化することができる。そのため、被加熱対象物を加熱するための複数のコイルの配置位置などを含むパラメータの予測値を容易に算出することができる。
【0117】
第4の態様の最適設計方法は、複数のコイルに関するパラメータの最適値を予測するステップは、最適解の候補となり得るコイルに関するパラメータに含まれる複数の項目の組み合わせを複数予測する。これにより、複数の最適解の候補から条件に応じた、所望の最適解を容易に設定することができる。
【0118】
第5の態様の最適設計方法は、複数のコイルに関するパラメータは、形状、巻き数、配置位置、外径、相対位置関係、被加熱対象物との距離、コイルに流れる交流電流の位相、およびコイルに流れる交流電流の周波数に関する情報の少なくとも1つを含む。これにより、コイルに関する各種のパラメータを適切に設計することができる。
【0119】
第6の態様の最適設計方法は、複数のコイルに関するパラメータは、少なくとも複数のコイルに流れる交流電流の位相と周波数との組み合わせに関する情報を含む。これにより、第6の態様の最適設計方法は、被加熱対象物をより適切に加熱するための条件を設定することができる。
【0120】
第7の態様の最適設計方法は、被加熱対象物は、第1の炭素繊維複合材と、第1の炭素繊維複合材とは形状の異なる第2の炭素繊維複合材である。これにより、被加熱対象物の形状に応じた適切な条件を設定することができる。
【0121】
第8の態様の誘導加熱装置は、第1から第7の態様のいずれかに記載の最適設計方法で被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを予測して設定憶する制御装置と、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルと、被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備える。制御装置は、複数のコイルのパラメータを設定し、複数のコイルに交流電流を流して、被加熱対象物を加熱し、温度測定装置が測定した被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する。
【0122】
第8の態様の誘導加熱装置によれば、複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを最適設計方法に従って最適化して、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0123】
第9の態様の誘導加熱装置は、制御装置は、被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて、複数のコイルのパラメータを設定する。制御装置は、複数のコイルに交流電流を流して、被加熱対象物を加熱し、温度測定装置が測定した被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する。第9の態様の誘導加熱装置によれば、複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを最適設計方法に従って、予測モデルを用いて最適化して、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0124】
第10の態様の誘導加熱装置は、制御装置は、複数のコイルを移動させながら、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物をより適切に加熱することができる。
【0125】
第11の態様の誘導加熱装置は、制御装置は、温度測定装置が測定した被加熱対象物の温度の測定結果に応じて、複数のコイルを移動させながら、複数のコイルの配置パターンを変更する。これにより、被加熱対象物の加熱結果に基づいてフィードバック制御をすることができるので、被加熱対象物をより適切に加熱することができる。
【0126】
第12の態様の誘導加熱装置は、第1から第5の態様のいずれかに記載の最適設計方法で設定された条件にしたがって加熱制御を行う制御装置と、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルと、被加熱対象物の温度を測定する温度測定装置と、を備える。制御装置は、被加熱対象物に応じて、最適設計方法で設定された条件にしたがって、複数のコイルのパラメータを設定し、複数のコイルに交流電流を流して、被加熱対象物を加熱し、温度測定装置が測定した被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定する。
【0127】
第12の態様の誘導加熱装置によれば、複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを最適設計方法で設定された条件に従って最適化して、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0128】
第13の態様の誘導加熱方法は、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを予測して設定するステップと、複数のコイルに交流電流を流して、被加熱対象物を加熱するステップと、被加熱対象物の温度を測定するステップと、測定した被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、を含む。
【0129】
第13の態様の誘導加熱方法によれば、複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを最適設計方法に従って最適化して、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0130】
第14の態様の誘導加熱方法によれば、被加熱対象物に応じて、予測モデルを用いて設定された条件に従って、被加熱対象物の近傍に配置される複数のコイルのパラメータを設定するステップと、複数のコイルに交流電流を流して、被加熱対象物を加熱するステップと、被加熱対象物の温度を測定するステップと、測定した被加熱対象物の温度の測定結果に基づいて、被加熱対象物の温度が適切であるか否かを判定するステップと、を含む。
【0131】
第14の態様の誘導加熱装置によれば、複数のコイルの配置位置などを含むパラメータを最適設計方法で設定された条件に従って最適化して、被加熱対象物を加熱する。これにより、被加熱対象物を適切に加熱することができる。
【0132】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0133】
10,20 平板
12,22 ストリンガ
14,230 コイル
100 解析装置
102 入力部
104 出力部
106,214 制御部
108,216 記憶部
108a,216a 予測モデル
200 誘導加熱装置
210 制御装置
212 通信部
220 温度測定装置
300 電源