(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044693
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】金属酸化物結晶の製造方法、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、半導体装置の製造方法、金属酸化物結晶、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板、半導体装置、及び金属酸化物結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20230324BHJP
C30B 25/02 20060101ALI20230324BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20230324BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B25/02 Z
C23C16/40
H01L21/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152705
(22)【出願日】2021-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(71)【出願人】
【識別番号】595155439
【氏名又は名称】伊藤忠プラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】今西 正幸
(72)【発明者】
【氏名】森 勇介
(72)【発明者】
【氏名】荒木 理恵
(72)【発明者】
【氏名】秦 雅彦
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
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(57)【要約】
【課題】 ハロゲン元素を含まない原料を使用可能で、かつ、高速での結晶成長が可能である金属酸化物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】 前記目的を達成するために、本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、金属酸化物結晶の製造方法であって、金属酸化物ガス111aと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶204を生成させる金属酸化物結晶生成工程を含むことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物結晶の製造方法であって、
金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの分圧の比が1000:1~1:1000の範囲である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスの分圧が、前記金属酸化物結晶の解離圧以上である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物結晶において、金属元素が、I族元素、II族元素、III族元素、IV族元素、及びランタノイドからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物結晶において、金属元素が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Cu、Ag、Au、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、及びIrからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物結晶が、α-Ga2O3、α-In2O3、α-Ir2O3、α-Al2O3、β-Ga2O3、β-In2O3、β-Ir2O3、β-Al2O3、ε-Ga2O3、ε-In2O3、ε-Ir2O3、ε-Al2O3、c-Ga2O3、c-In2O3、c-Ir2O3、c-Al2O3、Li-Cs-B-O、Li-B-O、Sr-O又はそれらの二以上の結晶により形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物結晶が、金属元素組成又は導電性が異なる二層以上の結晶層の積層体である請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスが、O2、H2O、CO2、CO、NO2、NO、N2O、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記金属酸化物ガスを生成させる金属酸化物ガス生成工程を含み、
前記金属酸化物ガス生成工程において、金属と酸化剤とを加熱状態で反応させて前記金属酸化物ガスを生成させるか、又は、金属酸化物固体原料を加熱状態で還元性ガスと反応させて前記金属酸化物ガスを生成させる請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物ガス生成工程において、前記酸化剤が、O2、H2O、CO2、CO、NO2、NO、N2O、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも一つである請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属酸化物固体原料が、Ga2O3、Ir2O3、In2O3、及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも一つである請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物ガス生成工程において、前記還元性ガスが、H2、H2O、アルコール、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項9又は11記載の製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属と前記酸化剤との反応、又は、前記金属酸化物固体原料と前記還元性ガスとの反応を、650℃以上で行う請求項9から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
反応系中に、さらにH2、N2、空気、及び希ガスからなる群から選択される少なくとも一つを共存させる請求項1から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
反応系中に、さらにドーパントを共存させる請求項1から14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ドーパントが、前記金属酸化物結晶とは異なる他の元素の単体、前記他の元素の酸化物、前記他の元素の水素化物、及び有機化合物からなる群から選択される少なくとも一つである請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
前記金属酸化物結晶が半導体である請求項1から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記金属酸化物結晶がn型半導体及びp型半導体の少なくとも一方である請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
結晶基板上に、請求項1から18のいずれか一項に記載の製造方法により前記金属酸化物結晶をエピタキシャル成長させ、その後、前記金属酸化物結晶を前記結晶基板と分離して自立結晶とする金属酸化物結晶の製造方法。
【請求項20】
結晶基板上に金属酸化物エピタキシャル結晶が積層された金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法であって、
前記金属酸化物エピタキシャル結晶が、請求項1から18のいずれか一項に記載の製造方法により製造される金属酸化物結晶であり、
前記結晶基板上に、請求項1から18のいずれか一項に記載の製造方法により前記金属酸化物エピタキシャル結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とする製造方法。
【請求項21】
前記結晶基板が、前記金属酸化物エピタキシャル結晶と同種の物質により形成された結晶基板又は前記金属酸化物エピタキシャル結晶と異種の物質により形成された結晶基板である請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
前記金属酸化物エピタキシャル結晶がβ-酸化ガリウム単結晶である請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
前記金属酸化物エピタキシャル結晶がα-酸化ガリウム単結晶である請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
金属酸化物結晶又は金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板を含む半導体装置の製造方法であって、
前記金属酸化物結晶を請求項1から23のいずれか一項に記載の製造方法により製造するか、又は、前記金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板を請求項20から23のいずれか一項に記載の製造方法により製造することを特徴とする製造方法。
【請求項25】
請求項1から19のいずれか一項に記載の製造方法により製造される金属酸化物結晶。
【請求項26】
請求項20から23のいずれか一項に記載の製造方法により製造される金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板。
【請求項27】
請求項24記載の製造方法により製造される半導体装置。
【請求項28】
請求項1から24のいずれか一項に記載の製造方法に用いる金属酸化物結晶製造装置であり、
反応容器と、金属酸化物ガス供給機構と、酸素元素含有ガス供給機構とを含み、
前記金属酸化物ガス供給機構により、前記反応容器内に前記金属酸化物ガスを連続的に供給可能であり、
前記酸素元素含有ガス供給機構により、前記反応容器内に前記酸素元素含有ガスを連続的に供給可能であり、
前記反応容器内で、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶生成工程を行うことを特徴とする金属酸化物結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物結晶の製造方法、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、半導体装置の製造方法、金属酸化物結晶、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板、半導体装置、及び金属酸化物結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物結晶は、産業上、広く利用されている重要な物質である。例えば、特許文献1では、酸化ガリウム単結晶を、光学材料、電極、導電体、ガスセンサ、光記録材料等の種々のデバイスに応用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属酸化物結晶のうち、酸化ガリウム結晶の製造方法としては、例えば、MBE(分子線エピタキシー)法、HVPE(ハライド気相成長)法、MOVPE(有機金属気相成長)法、ミストCVD(化学気相成長)法等がある。しかし、HVPE法は、ハロゲン元素を含む原料を用いるため、ハロゲン化合物による環境汚染、装置の腐食等のおそれがある。一方、HVPE法以外の方法は、結晶の成長速度が遅いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ハロゲン元素を含まない原料を使用可能で、かつ、高速での結晶成長が可能である金属酸化物結晶の製造方法、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、半導体装置の製造方法、金属酸化物結晶、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板、半導体装置、及び金属酸化物結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、金属酸化物結晶の製造方法であって、金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法は、
結晶基板上に金属酸化物エピタキシャル結晶が積層された金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法であって、
前記金属酸化物エピタキシャル結晶が、前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法により製造される金属酸化物結晶であり、
前記結晶基板上に、前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法により前記金属酸化物エピタキシャル結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法は、
金属酸化物結晶又は金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板を含む半導体装置の製造方法であって、
前記金属酸化物結晶を前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法により製造するか、又は、前記金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板を前記本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法により製造することを特徴とする。
【0009】
本発明の金属酸化物結晶は、前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法により製造される金属酸化物結晶である。
【0010】
本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板は、前記本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法により製造される金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板である。
【0011】
本発明の半導体装置は、前記本発明の半導体装置の製造方法により製造される半導体装置である。
【0012】
本発明の金属酸化物結晶製造装置は、前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法、前記本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、又は前記本発明の半導体装置の製造方法に用いる金属酸化物結晶製造装置であり、
反応容器と、金属酸化物ガス供給機構と、酸素元素含有ガス供給機構とを含み、
前記金属酸化物ガス供給機構により、前記反応容器内に前記金属酸化物ガスを連続的に供給可能であり、
前記酸素元素含有ガス供給機構により、前記反応容器内に前記酸素元素含有ガスを連続的に供給可能であり、
前記反応容器内で、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶生成工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハロゲン元素を含まない原料を使用可能で、かつ、高速での結晶成長が可能である金属酸化物結晶の製造方法、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、半導体装置の製造方法、金属酸化物結晶、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板、半導体装置、及び金属酸化物結晶製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法に用いる装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の装置を用いたIII族窒化物結晶の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の装置を用いたIII族窒化物結晶の製造方法の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法に用いる装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の装置を用いたIII族窒化物結晶の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法に用いる装置のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の装置を用いたIII族窒化物結晶の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、Ga
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、In
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とGa
2O
3結晶上に存在する各ガス種の平衡分圧との相関関係の解析(理論計算)結果の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果の別の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、結晶成長温度1150℃におけるVI/III比依存性の解析結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、Ga
2O供給分圧(P
o
Ga2O)依存性を示すグラフである。
【
図16】
図16は、Ga
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図17】
図17は、Ga
2O
3結晶生成反応における各気体の分圧の解析(理論計算)結果の別の一例を示すグラフである。
【
図18】
図18は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、結晶成長温度1150℃におけるVI/III比依存性の解析結果を示すグラフである。
【
図20】
図20は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図21】
図21は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図22】
図22は、Ga
2O
3結晶生成反応における各気体の分圧の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、Ga
2O
3結晶生成反応における各気体の分圧の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図24】
図24は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図25】
図25は、Ga
2O
3結晶生成反応における結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係の解析(理論計算)結果のさらに別の一例を示すグラフである。
【
図26】
図26は、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3と、結晶成長温度及びキャリアガス中水素比F
oとの相関関係の一例を示すグラフである。
【
図27】
図27は、実施例1で製造したGa
2O
3結晶のSEM(走査型顕微鏡)写真である。
【
図28】
図28は、実施例1で製造したGa
2O
3結晶のSEM(走査型顕微鏡)写真のノマルスキー観察像(写真)である。
【
図31】
図31は、実施例1で製造したGa
2O
3結晶のXRD(X線回折)スペクトルである。
【
図32】
図32は、実施例1のGa
2O
3結晶(ヘテロエピタキシー成長により製造)と、実施例2のGa
2O
3結晶(ホモエピタキシー成長により製造)とのXRDスペクトルを、併せて示すグラフである。
【
図33】
図33は、Ga
2O
3結晶のXRDスペクトルを示す図である。
【
図34】
図34は、実施例2で製造したGa
2O
3結晶のSEM(走査型顕微鏡)写真である。
【
図35】
図35は、実施例2で製造した金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板(Ga
2O
3結晶基板上にGa
2O
3エピタキシャル結晶が積層された積層体)のXRDスペクトルを示す図である。
【
図36】
図36は、実施例4で製造したGa
2O
3結晶のSEM像(写真)である。
【
図37】
図37は、実施例4で製造した金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板(GaN結晶基板上にGa
2O
3エピタキシャル結晶が積層された積層体)のXRDスペクトルを示す図である。
【
図38】
図38は、実施例5で結晶成長させた後のサファイア基板表面のSEM写真である。
【
図40】
図40は、前述のSEM-EDSによる元素分析(EDS線分析)結果を示すグラフである。
【
図41】
図41は、
図38のサファイア基板上における、
図39~40とは別の他の領域(表面に薄く堆積物が見られた領域)のSEM-EDSマッピング像(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0016】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの分圧の比が1000:1~1:1000の範囲であってもよい。前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの分圧の比は、例えば、100:1~1:100、1:1~1:100、又は1:1~1:50であってもよい。
【0017】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスの分圧が、前記金属酸化物結晶の解離圧(分解圧)以上であってもよい。
【0018】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスの分圧が、前記金属酸化物結晶の解離圧(分解圧)を超える圧力であってもよい。
【0019】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶において、金属元素が、I族元素、II族元素、III族元素、IV族元素、及びランタノイドからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記I族元素は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、銅(Cu)、銀(Ag)及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記II族元素は、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記III族元素は、ガリウム(Ga)であることが特に好ましい。前記IV族元素は、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、及び鉛(Pb)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0020】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶において、金属元素が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Cu、Ag、Au、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、及びIrからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0021】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶が、α-Ga2O3、α-In2O3、α-Ir2O3、β-Ga2O3、β-In2O3、β-Ir2O3、β-Al2O3、ε-Ga2O3、ε-In2O3、ε-Ir2O3、ε-Al2O3、c-Ga2O3、c-In2O3、c-Ir2O3、c-Al2O3、LiCsB6O10、LiB3O5、SrB4O7又はそれらの二以上の結晶により形成されていてもよい。本発明において、「金属酸化物結晶」は、例えば、元素として金属及び酸素のみを含んでいてもよいが、さらに金属及び酸素以外の元素を含んでいてもよい。金属及び酸素以外の元素としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素(B)等が挙げられる。また、本発明において、「金属酸化物結晶」は、例えば、元素として一種類の金属及び酸素のみを含む二元系の結晶でもよいが、さらに他の元素を一種類又は二種類以上含む三元系、四元系等の結晶でもよい。三元系、四元系等の結晶としては、例えば、前述のLi-Cs-B-O、Li-B-O等が挙げられる。なお、本発明において、金属酸化物結晶が二以上の結晶により形成されている場合としては、例えば、前記金属酸化物結晶が異なる二層以上の結晶層の積層体である場合、及び、前記金属酸化物結晶が二以上の結晶の混晶である場合等が挙げられる。前記混晶は、特に限定されないが、例えば、ランタノイド元素およびアルミニウム元素を含む混晶等であってもよい。
【0022】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶が、金属元素組成又は導電性が異なる二層以上の結晶層の積層体であってもよい。
【0023】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガスが、Ga2O、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、I族元素酸化物、II族元素酸化物、III族元素酸化物、IV族元素酸化物、及びランタノイド酸化物からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記酸化インジウムは、例えば、In2O(酸化インジウム(I))等であってもよい。前記酸化アルミニウムは、例えば、Al2O(酸化アルミニウム(I))等であってもよい。前記酸化イリジウムは、例えば、Ir2O(酸化イリジウム(I))等であってもよい。また、I族元素酸化物、II族元素酸化物、III族元素酸化物、IV族元素酸化物、ランタノイド酸化物のそれぞれにおいて、I族元素、II族元素、III族元素、IV族元素、ランタノイドは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、前述した各元素でもよい。
【0024】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスが、単体酸素及び酸素化合物の少なくとも一方を含んでいてもよい。本発明において、単体酸素としては、特に限定されないが、例えば、O2(酸素)、O3(オゾン)、O2-(酸化物イオン)、O2
2-(過酸化物イオン)等が挙げられ、O2が特に好ましい。本発明において、酸素化合物としては、特に限定されないが、例えば、H2O(水)、CO2(二酸化炭素)、CO(一酸化炭素)、NO2(二酸化窒素)、NO(一酸化窒素)、N2O(一酸化二窒素)、アルコール等が挙げられる。前記アルコールも特に限定されないが、例えば、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、1-プロパノール(n-プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等が挙げられる。
【0025】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記酸素元素含有ガスが、O2、H2O、CO2、CO、NO2、NO、N2O、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0026】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの反応を650℃以上で行ってもよい。例えば、酸化ガリウム(III)すなわちGa2O3を結晶成長により製造する場合、低温ではα型(α-Ga2O3)が成長しやすく、高温ではβ型(β-Ga2O3)が成長しやすい。そのα型とβ型との閾値が約650℃であるため、β-Ga2O3を製造する場合は、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの反応を650℃以上で行うことが好ましい。
【0027】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの反応を650℃未満で行ってもよい。前述のとおり、Ga2O3を結晶成長により製造する場合、低温ではα型(α-Ga2O3)が成長しやすく、高温ではβ型(β-Ga2O3)が成長しやすく、α型とβ型との閾値が約650℃である。このため、α-Ga2O3を製造する場合は、前記金属酸化物ガスと前記酸素元素含有ガスとの反応を650℃未満で行うことが好ましい。
【0028】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、前記金属酸化物結晶生成工程の反応温度は特に限定されない。例えば、製造しようとする金属酸化物結晶がIrO2である場合、IrO2がIrO3となって揮発することを抑制又は防止するために、前記金属酸化物結晶生成工程の反応温度を900℃以下又は900℃未満としてもよい。
【0029】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、さらに、前記金属酸化物ガスを生成させる金属酸化物ガス生成工程を含み、前記金属酸化物ガス生成工程において、金属と酸化剤とを加熱状態で反応させて前記金属酸化物ガスを生成させるか、又は、金属酸化物固体原料を加熱状態で還元性ガスと反応させて前記金属酸化物ガスを生成させてもよい。
【0030】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法の前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属は、特に限定されないが、例えば、前記金属酸化物結晶の金属元素として例示した金属の一種類又は二種類以上であってもよい。すなわち、前記金属は、例えば、I族元素、II族元素、III族元素、IV族元素、及びランタノイドからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記I族元素は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、銅(Cu)、銀(Ag)及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記II族元素は、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記III族元素は、ガリウム(Ga)であることが特に好ましい。前記IV族元素は、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、及び鉛(Pb)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記金属は、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Cu、Ag、Au、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、In、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、及びIrからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記金属は、例えば、前述のとおり、製造される前記金属酸化物結晶に含まれる金属元素と同一の元素からなる金属であってもよい。
【0031】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物ガス生成工程において、前記酸化剤が、O2、H2O、CO2、CO、NO2、NO、N2O、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0032】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属酸化物固体原料が、Ga2O3、Ir2O3、In2O3、及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0033】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物ガス生成工程において、前記還元性ガスが、H2、H2O、アルコール、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記炭化水素は、特に限定されないが、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン(2-メチル-2-プロパン)、エチレン、アセチレン等が挙げられ、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。
【0034】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属と前記酸化剤との反応、又は、前記金属酸化物固体原料と前記還元性ガスとの反応を、650℃以上で行ってもよい。
【0035】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、反応系中に、さらにH2、N2、空気、及び希ガスからなる群から選択される少なくとも一つを共存させてもよい。前記反応系は、特に限定されず、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程の反応系でもよいし、前記金属酸化物ガス生成工程の反応系でもよい。H2、N2、空気、及び希ガスは、例えば、金属酸化物結晶の原料(前記金属酸化物ガス、前記酸素元素含有ガス、前記金属、前記酸化剤、前記金属酸化物固体原料、前記還元性ガス等)との反応性が低いことを利用して、気流制御ガスとして利用できる。なお、以下において、前記気流制御ガスを「キャリアガス」という場合がある。前記希ガスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)等が挙げられ、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。
【0036】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、反応系中に、さらにドーパントを共存させてもよい。前記反応系は、特に限定されず、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程の反応系でもよいし、前記金属酸化物ガス生成工程の反応系でもよい。前記ドーパントは、例えば、製造される前記金属酸化物結晶の導電性を制御するために用いることができる。本発明の金属酸化物結晶の製造方法により製造される前記金属酸化物結晶は、例えば、導電性を制御することにより、半導体等の用途に用いることができる。ただし、前記ドーパントを添加する目的は、これらに限定されず、他の任意の目的に用いてもよい。
【0037】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、前記ドーパントは、特に限定されないが、例えば、前記金属酸化物結晶とは異なる他の元素の単体、他の元素の酸化物、前記他の元素の水素化物、及び有機化合物からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記他の元素としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素(Si)等が挙げられる。前記他の元素の単体は、特に限定されないが、例えば、シリコン(ケイ素単体)等であってもよい。例えば、本発明の金属酸化物結晶の原料である単体金属(例えば金属ガリウム)中にドーパントとしてのシリコンを混合しておいて用いてもよい。前記他の元素の酸化物としては、特に限定されず、また、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。前記他の元素の水素化物としては、特に限定されず、また、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。前記有機化合物としては、特に限定されず、また、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。
【0038】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶が半導体であってもよい。
【0039】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、前記金属酸化物結晶がn型半導体及びp型半導体の少なくとも一方であってもよい。例えば、前記金属酸化物結晶が二層以上の金属酸化物結晶の積層体であり、かつ、n型半導体の層及びp型半導体の層を含む積層体であってもよい。
【0040】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、結晶基板上に、前記本発明の金属酸化物結晶の製造方法により前記金属酸化物結晶をエピタキシャル成長させ、その後、前記金属酸化物結晶を前記結晶基板と分離して自立結晶とする製造方法であってもよい。
【0041】
本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法において、前記結晶基板は、例えば、前記金属酸化物エピタキシャル結晶と同種の物質により形成された結晶基板(以下、単に「同種基板」という場合がある。)であってもよい。本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法において、前記結晶基板は、例えば、前記金属酸化物エピタキシャル結晶と異種の物質により形成された結晶基板(以下、単に「異種基板」ということがある。)であってもよい。ここで「金属酸化物エピタキシャル結晶と異種の物質」は、金属酸化物エピタキシャル結晶と組成が異なる場合だけでなく、金属酸化物エピタキシャル結晶と組成は同じであるが結晶形が異なる場合も含む。例えば、前記結晶基板がβ-酸化ガリウム単結晶であり、前記金属酸化物エピタキシャル結晶がα-酸化ガリウム単結晶であってもよい。また、例えば、サファイア(酸化アルニミウム結晶)、SiC(炭化ケイ素)結晶等を、異種基板である前記結晶基板として用い、その上に、前記金属酸化物エピタキシャル結晶(例えば酸化ガリウム結晶であり、例えばβ-酸化ガリウム単結晶又はα-酸化ガリウム単結晶等)を積層させてもよい。
【0042】
本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法は、例えば、前記結晶基板がβ-酸化ガリウム単結晶であってもよい。前記結晶基板がβ-酸化ガリウム単結晶である場合において、前記結晶基板の面方位は、特に限定されないが、結晶成長によって前記結晶基板の結晶欠陥が解消される(前記金属酸化物エピタキシャル結晶から前記結晶基板由来の結晶欠陥が消える)面方位であることが好ましく、具体的には、例えば(-201)、(010)、(001)、(100)等である。
【0043】
本発明の金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法において、前記金属酸化物エピタキシャル結晶は、例えば、β-酸化ガリウム単結晶であってもよいし、α-酸化ガリウム単結晶であってもよい。これらのβ-酸化ガリウム単結晶又はα-酸化ガリウム単結晶は、それぞれ、単層でも多層でもよいし、ドープされていてもよいし、ドープされていなくてもよい。また、これらの場合において、前記結晶基板は、同種基板でもよいし異種基板でもよい。
【0044】
つぎに、本発明の具体的な実施形態について、例を挙げてさらに詳細に説明する。
【0045】
〔1.本発明の金属酸化物結晶の製造方法〕
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、前述のとおり、金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程を含むことを特徴とする。
【0046】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、原料としてハロゲン化物(例えばGaCl等)を用いなくても良いので、ハロゲンを含む副生成物の生成を防止できる。このため、本発明の製造方法によれば、前記副生成物による結晶生成への悪影響を抑制することができる。この結果、例えば、金属酸化物結晶を、長時間にわたって生成することが可能であり、大型で厚膜の金属酸化物結晶を得ることができる。さらに、本発明の製造方法によれば、例えば、後述のように、基板上へのエピタキシャル成長により金属酸化物結晶を得ることができるとともに、得られる金属酸化物結晶の着色を抑制することが可能である。
【0047】
また、本発明の金属酸化物結晶の製造方法においては、例えば、前述のとおり、さらに、前記金属酸化物ガスを生成させる金属酸化物ガス生成工程を含み、前記金属酸化物ガス生成工程において、金属と酸化剤とを加熱状態で反応させて前記金属酸化物ガスを生成させるか、又は、金属酸化物固体原料を加熱状態で還元性ガスと反応させて前記金属酸化物ガスを生成させてもよい。このようにすると、例えば、前記金属酸化物結晶生成工程において、固体状の副生成物を発生することなく、金属酸化物結晶を得ることが可能である。前記金属酸化物結晶生成工程において固体状の副生成物が発生しないと、例えば、副生成物を除去するためのフィルタ等を導入する必要がないため、コストの面において優れる。また、前記金属酸化物ガス生成工程においても、例えば、還元性ガスを共存させて反応させることで、副生成物(例えば、固体の副生成物)の生成がさらに抑制される。
【0048】
なお、以下において、本発明の金属酸化物結晶の製造方法のうち、前記金属酸化物ガス生成工程において、金属と酸化剤とを加熱状態で反応させて前記金属酸化物ガスを生成させる製造方法を「金属酸化物結晶の製造方法(A)」ということがある。また、以下において、本発明の金属酸化物結晶の製造方法のうち、前記金属酸化物ガス生成工程において、金属酸化物固体原料を加熱状態で還元性ガスと反応させて前記金属酸化物ガスを生成させる製造方法を「金属酸化物結晶の製造方法(B)」ということがある。
【0049】
また、本発明の金属酸化物結晶の製造方法によれば、前述のとおり、高速での結晶成長が可能である。ただし、本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、結晶の成長速度は特に限定されず任意であり、低速で結晶を成長させてもよい。本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、金属酸化物結晶の成長速度は、例えば、0.001μm/時間以上、0.01μm/時間以上、0.1μm/時間以上、0.5μm/時間以上、又は1μm/時間以上であってもよく、例えば、10000μm/時間以下、1000μm/時間以下、500μm/時間以下、100μm/時間以下、又は50μm/時間以下であってもよく、例えば、0.001~10000μm/時間、0.01~1000μm/時間、0.1~500μm/時間、1~500μm/時間、又は1~100μm/時間であってもよい。
【0050】
〔1-1.金属酸化物結晶の製造方法の例及び結晶成長速度等〕
以下に、本発明の金属酸化物結晶の製造方法における種々の例を示すとともに、金属酸化物結晶の成長速度の理論計算結果等について示す。なお、本願明細書において示す理論計算結果は、特定の条件での理論上の計算結果である。実際に本発明を実施した結果は、種々の条件の変動により、必ずしも理論計算結果と一致しない場合がある。
【0051】
図8のグラフに、下記化学反応式(1)~(4)によるGa
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果を示す。下記化学反応式(1)及び(3)の反応は、本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程に該当する。下記化学反応式(2)及び(4)の反応は、HVPE法における反応の例である。下記化学反応式(1)~(4)において、(g)は気体であることを表し、(s)は固体であることを表す。以下の全ての反応式において同様である。また、
図8のグラフにおいて、縦軸は、平衡定数Kの常用対数を表す。横軸は、結晶成長温度[℃]又は1000/T[K
-1](ただし、Tは結晶成長温度[K])を表す。なお、
図8のグラフにおいて、平衡定数Kの解析(理論計算)は、実験的に得られている、下記文献[1]~[3]等の熱力学データベースに掲載されているデータを用い導出した。以下の各図においても同様である。
(1)Ga
2O(g)+O
2(g)=Ga
2O
3(s)
(2)2GaCl(g)+(3/2)O
2(g)=Ga
2O
3(s)+Cl
2(g)
(3)Ga
2O(g)+2H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2H
2(g)
(4)2GaCl(g)+3H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2HCl(g)+2H
2(g)
[1] M.W. Chase Jr. (Ed.), NIST-JANAF Thermochemical Tables, fourth ed. The American Chemical Society and the American Institute of Physics for the National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg, 1998.
[2] L.V. Gurvich, I.V. Veyts, C.B. Alcock (Eds.), Thermodynamic Properties of Individual Substances, vol. 3, USSR Academy of Sciences, Institute for High Temperatures and State Institute of Applied Chemistry in cooperation with the National Standard Reference Data Service of the U.S.S.R., Moscow, 1994.
[3] I. Barin (Ed.), Thermochemical Data of Pure Substances, Wiley, New York, 1989.
【0052】
図8のグラフから分かるとおり、酸素元素含有ガスとしてO
2(g)を用いた場合、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(1)の方がHVPE法(2)よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。また、酸素元素含有ガスとしてH
2O(g)を用いた場合、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(3)の方がHVPE法(4)よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。すなわち、
図8の解析結果からは、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法の方がHVPE法よりも結晶成長速度が速いことが確認できた。
【0053】
また、
図9のグラフに、下記化学反応式(1a)~(4a)によるIn
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果を示す。下記化学反応式(1a)及び(3a)の反応は、本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程に該当する。下記化学反応式(2a)及び(4a)の反応は、HVPE法における反応の例である。下記化学反応式(1a)~(4a)において、(g)は気体であることを表し、(s)は固体であることを表す。以下の全ての反応式において同様である。また、
図9のグラフにおいて、縦軸は、反応速度Kの常用対数を表す。横軸は、結晶成長温度[℃]又は1000/T[K
-1](ただし、Tは結晶成長温度[K])を表す。
(1a)In
2O(g)+O
2(g)=In
2O
3(s)
(2a)2InCl(g)+(3/2)O
2(g)=In
2O
3(s)+Cl
2(g)
(3a)In
2O(g)+2H
2O(g)=In
2O
3(s)+2H
2(g)
(4a)2InCl(g)+3H
2O(g)=In
2O
3(s)+2HCl(g)+2H
2(g)
【0054】
図9のグラフから分かるとおり、酸素元素含有ガスとしてO
2(g)を用いた場合、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(1a)の方がHVPE法(2a)よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。また、酸素元素含有ガスとしてH
2O(g)を用いた場合、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(3a)の方がHVPE法(4a)よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。すなわち、
図9の解析結果からは、In
2O
3結晶を製造する場合も、Ga
2O
3を製造する場合と同様に、理論上、本発明の金属酸化物結晶の製造方法の方がHVPE法よりも結晶成長速度が速いことが確認できた。
【0055】
つぎに、
図8の化学反応式(3)における反応では、前記化学反応式(3)(下記に再掲)以外に、例えば、下記(a)~(g)の反応が起きていると考えられる。
(3)Ga
2O(g)+2H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2H
2(g)
(a)Ga
2O(g)=GaO(g)+Ga(g)
(b)Ga
2O(g)=2Ga(g)+(1/2)O
2(g)
(c)Ga
2O(g)+H
2O(g)=2GaH(g)+O
2(g)
(d)Ga
2O(g)+2H
2O(g)=2GaH
2(g)+(3/2)O
2(g)
(e)Ga
2O(g)+3H
2O(g)=2GaH
3(g)+2O
2(g)
(f)Ga
2O(g)+H
2O(g)=2GaOH(g)
(g)H
2(g)+(1/2)O
2(g)=H
2O(g)
【0056】
前記化学反応式(3)及び前記化学反応式(a)~(g)の反応に関与しているガス種は、Ga
2O、GaO、Ga、O
2、H
2、H
2O、GaH、GaH
2、GaH
3、GaOH、及びInertgas(IG)の11種類である。これら11のガス種がGa
2O
3基板上に同時に存在するとする。これらのガス種は、前記化学反応式(3)及び前記化学反応式(a)~(g)の8個の独立した化学反応式で関連づけられる。成長条件は、成長部温度、全圧、Ga
2O供給分圧(P
o
Ga2O)、H
2O供給分圧(P
o
H2O)、キャリアガス中の水素比率F
oによって決められる。前記8個の化学反応の平衡の式に加え(たとえば、(3)の化学反応式からは下記(3A)の平衡の式が得られる)、束縛条件として、全圧一定の式、Ga
2O
3生成に関する化学量論比(Gaおよび酸素原子数比2対3)を与える式、気相中の水素、IGの原子数は不変であることを与える式の合計11種類の式を考える。これらを連立方程式で解くことにより、11種類のガス種の平衡分圧が得られる。
図10に、得られた温度を関数としたGa
2O
3結晶上に存在する各ガス種の平衡分圧を示す。
【数3A】
【0057】
図10のグラフにおいて、横軸は、成長部温度、すなわち各気体の温度であり、これを結晶成長温度に等しいと推定した。縦軸は、各物質(気体)の平衡分圧[atm]である。なお、1.0atmは、1.01325×10
5Paに等しい。
図10のグラフの理論計算は、反応条件を下記条件と仮定して行った。
・成長部温度=結晶成長温度(変数)
・全圧P
tot=1.0atm
・Ga
2O供給分圧P
o
Ga2O=1.0×10
-4atm
・H
2O供給分圧P
o
H2O=1.0×10
-3atm
・供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
H2O)/2P
o
Ga2O)=5.5
・キャリアガス中水素比F
o=P
o
H2/(P
o
H2+P
o
IG)=1.0×10
-4
【0058】
図10のグラフに示すとおり、結晶成長温度が高すぎると、結晶成長温度の上昇とともに、Ga
2O
3分解反応により、Ga
2O(g)の平衡分圧が増加することが確認された。具体的には、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)は、1100℃以上の成長温度で減少し、1320℃以上ではGa
2O
3結晶成長のマイナス成長(エッチング)の方向に働くことが確認された。ただし、
図10の結果は、前述の条件での理論計算結果である。実際の実験結果は、種々の条件の変動により、必ずしも
図10の結果と一致しない場合がある。また、ΔP
Ga2O3は、各気体の分圧から、下記計算式により計算できる。
ΔP
Ga2O3=(1/2)[2P
o
Ga2O-(P
Ga+P
GaO+2P
Ga2O+P
GaH+P
GaH2+P
GaH3+P
GaOH)]
【0059】
図11のグラフに、
図10の条件でキャリアガス中水素比F
oを1.0×10
-4~1の範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。
図11において、横軸は結晶成長温度(℃)であり、縦軸はΔP
Ga2O3である。図示のとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、結晶成長温度及びF
oの増加に伴い減少した。このことから、理論上、F
oが小さいほどGa
2O
3結晶成長速度が大きくなる傾向にあることが確認された。
【0060】
図12のグラフに、
図10の条件で供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
H2O)/2P
o
Ga2O)を0.5~250.5の範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。
図12において、横軸は結晶成長温度(℃)であり、縦軸はΔP
Ga2O3である。図示のとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、供給VI/III比の増加に伴い増加した。このことから、理論上、供給VI/III比が大きいほどGa
2O
3結晶成長速度が大きくなる傾向にあることが確認された。
【0061】
図13に、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、結晶成長温度1150℃におけるVI/III比依存性の解析結果を示す。
図13(a)において、縦軸は、各物質(気体)の平衡分圧[atm]であり、横軸はVI/III比である。VI/III比の定義は、
図10及び
図12で説明したとおりである。
図13(a)より、VI/III比が約1以上でP
H2O>P
Ga2Oとなることが確認された。この結晶成長条件下では、Ga
2O(g)+2H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2H
2(g)の反応によりGa
2O
3結晶成長が進行すること、及び、VI/III比が約1以下では、H
2O供給分圧が不足し、Ga
2O
3結晶成長のマイナス成長(エッチング)の方向に働くことが確認された。一方、
図13(b)において、縦軸は、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3であり、横軸はVI/III比である。
図13(b)に示すとおり、この結晶成長条件下では、VI/III比が約10以上で成長の駆動力の傾きが変化することが確認された。
【0062】
図14のグラフに、
図10の条件でGa
2O供給分圧P
o
Ga2Oを1.0×10
-4atm~1.0×10
-3atmの範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。なお、同図では、H
2O供給分圧P
o
H2Oは、常にVI/III比((P
o
Ga2O+P
o
H2O)/2P
o
Ga2O)を5.5とし、、1.0×10
-3atm~1.0×10
-2atmの範囲で変動させた。
図14において、横軸は結晶成長温度(℃)であり、縦軸はΔP
Ga2O3である。図示のとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、Ga
2O供給分圧P
o
Ga2Oの増加に伴い増加した。このことから、理論上、Ga
2O供給分圧P
o
Ga2Oが大きいほどGa
2O
3結晶成長速度が大きくなる傾向にあることが確認された。
【0063】
図15のグラフに、結晶成長温度1150℃におけるGa
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、Ga
2O供給分圧(P
o
Ga2O)依存性を示す。
図15において、横軸はP
o
Ga2Oであり、縦軸はΔP
Ga2O3である。
図15に示すとおり、Ga
2O
3成長の駆動力(ΔP
Ga2O3)は、Ga
2O供給分圧の増加に比例して増加することが確認された。
【0064】
図16のグラフに、下記化学反応式(1)~(7)によるGa
2O
3結晶生成反応における平衡定数Kの解析(理論計算)結果を示す。下記化学反応式(1)~(4)は、それぞれ、
図1における化学反応式(1)~(4)と同一である。また、下記化学反応式(5)~(7)は、それぞれ、本発明の金属酸化物結晶の製造方法において、金属酸化物ガスと酸素元素含有ガスとを反応させて前記金属酸化物結晶を生成させる金属酸化物結晶生成工程に該当する。下記化学反応式(5)は、酸素元素含有ガスが一酸化二窒素(N
2O)である例である。下記化学反応式(6)は、酸素元素含有ガスが二酸化炭素(CO
2)である例である。下記化学反応式(7)は、酸素元素含有ガスが一酸化窒素(NO)である例である。
図16のグラフにおいて、縦軸は、平衡定数Kの常用対数を表す。横軸は、結晶成長温度[℃]又は1000/T[K
-1](ただし、Tは結晶成長温度[K])を表す。なお、
図16のグラフにおいて、平衡定数Kの解析(理論計算)は、
図8と同様のデータを用い導出した。
(1)Ga
2O(g)+O
2(g)=Ga
2O
3(s)
(2)2GaCl(g)+(3/2)O
2(g)=Ga
2O
3(s)+Cl
2(g)
(3)Ga
2O(g)+2H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2H
2(g)
(4)2GaCl(g)+3H
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2HCl(g)+2H
2(g)
(5)Ga
2O(g)+2N
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2N
2(g)
(6)Ga
2O(g)+2CO
2(g)=Ga
2O
3(s)+2CO(g)
(7)Ga
2O(g)+2NO(g)=Ga
2O
3(s)+N
2(g)
【0065】
図16のグラフから分かるとおり、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(5)及び(7)は、他の全ての反応よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。また、本発明の金属酸化物結晶の製造方法(6)も、HVPE法(4)よりも平衡定数Kが大きい、すなわち反応速度(結晶成長速度)が速いことが確認できた。このように、本発明の金属酸化物結晶の製造方法によれば、HVPE法に匹敵し得る高速での結晶成長が可能であることが確認できた。
【0066】
図16の化学反応式(6)における反応では、前記化学反応式(6)(下記に再掲)以外に、例えば、下記(h)~(q)の反応が起きていると考えられる。
図17のグラフに、これらの反応における各物質の分圧の理論計算結果について示す。
(6)Ga
2O(g)+2CO
2(g)=Ga
2O
3(s)+2CO(g)
(h)Ga
2O(g)=GaO(g)+Ga(g)
(i)Ga
2O(g)=2Ga(g)+(1/2)O
2(g)
(j)Ga
2O(g)+2H
2(g)=2GaH(g)+H
2O(g)
(k)Ga
2O(g)+3H
2(g)=2GaH
2(g)+H
2O(g)
(l)Ga
2O(g)+4H
2(g)=2GaH
3(g)+H
2O(g)
(m)Ga
2O(g)+H
2(g)+CO
2(g)=2GaOH(g)+CO(g)
(n)CO
2(g)=CO(g)+(1/2)O
2(g)
(o)CO
2(g)=C(g)+O
2(g)
(p)CO
2(g)+4H
2(g)=CH
4(g)+2H
2O(g)
(q)H
2(g)+(1/2)O
2(g)=H
2O(g)
前記化学反応式(6)及び前記化学反応式(h)~(q)の反応に関与しているガス種は、Ga
2O、GaO、Ga、GaH、GaH
2、GaH
3、GaOH、CO
2、CO、C、CH
4、O
2、H
2O、H
2、及びIGの15種類である。これら15のガス種がGa
2O
3基板上に同時に存在するとする。これらのガス種は、前記化学反応式(6)及び前記化学反応式(h)~(q)の11個の独立した化学反応式で関連づけられる。成長条件は、成長部温度、全圧、Ga
2O供給分圧(P
o
Ga2O)、CO
2供給分圧(P
o
CO2)、キャリアガス中の水素比率F
oによって決められる。前記11個の化学反応の平衡の式に加え(たとえば、(6)の化学反応式からは下記(6A)の平衡の式が得られる)、束縛条件として、全圧一定の式、Ga
2O
3生成に関する化学量論比(Gaおよび酸素原子数比2対3)を与える式、気相中の炭素、水素、IGの原子数は不変であることを与える2式の合計15種類の式を考える。これらを連立方程式で解くことにより、15種類のガス種の平衡分圧が得られる。
図17に、得られた温度を関数としたGa
2O
3結晶上に存在する各ガス種の平衡分圧を示す。
【数6A】
【0067】
図17のグラフにおいて、横軸は、成長部温度、すなわち各気体の温度であり、これを結晶成長温度に等しいと推定した。縦軸は、各物質(気体)の分圧[atm]である。なお、1.0atmは、1.01325×10
5Paに等しい。
図17のグラフの理論計算は、反応条件を下記条件と仮定して行った。
・成長部温度=結晶成長温度(変数)
・全圧P
tot=1.0atm
・Ga
2O供給分圧P
o
Ga2O=1.0×10
-4atm
・CO
2供給分圧P
o
CO2=5.0×10
-4atm
・供給VI/III比((P
oGa
2O+2P
oCO
2)/2P
oGa
2O)=5.5
・F
o=0 (完全非水素系)
【0068】
図17のグラフに示すとおり、結晶成長温度が高すぎると、結晶成長温度の上昇とともに、Ga
2O
3分解反応により、Ga
2O(g)の平衡分圧が増加することが確認された。具体的には、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)は、1100℃以上の成長温度で減少し、1550℃以上ではGa
2O
3結晶成長のマイナス成長(エッチング)の方向に働くことが確認された。ただし、
図17の結果は、前述の条件での理論計算結果である。実際の実験結果は、種々の条件の変動により、必ずしも
図17の結果と一致しない場合がある。また、ΔP
Ga2O3は、各気体の分圧から、下記計算式により計算できる。
ΔP
Ga2O3=(1/2)[2P
o
Ga2O-(P
Ga+P
GaO+2P
Ga2O)]
【0069】
図18のグラフに、供給VI/III比((P
o
Ga2O+2P
o
CO2)/2P
o
Ga2O)を0.55~500.5の範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。なお、同図において、CO
2供給分圧P
o
CO2は、供給VI/III比を変動させるために、5.0×10
-6atm~5.0×10
-2atmの範囲で変動させた。すなわち、他の気体の分圧は変動させずに固定し、CO
2供給分圧P
o
CO2のみを変動させることで、供給VI/III比((P
o
Ga2O+2P
o
CO2)/2P
o
Ga2O)を変動させた。なお、キャリアガス中水素比F
oは1.0×10
-4とした。
図18において、横軸は結晶成長温度(℃)であり、縦軸はΔP
Ga2O3である。図示のとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、供給VI/III比の増加に伴い増加した。このことから、理論上、供給VI/III比が大きいほどGa
2O
3結晶成長速度が大きくなる傾向にあることが確認された。
【0070】
図19に、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)の、結晶成長温度1150℃におけるVI/III比依存性の解析結果を示す。なお、キャリアガス中水素比F
oは1.0×10
-4とした。図において、縦軸は、各物質(気体)の平衡分圧[atm]であり、横軸はVI/III比である。VI/III比の定義は、
図17及び
図18で説明したとおりである。図に示すとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、供給VI/III比の増加に伴い増加し、VI/III比が約20以上で成長の駆動力の傾きが変化し、ほぼ一定となることが確認された。
【0071】
図20のグラフに、Ga
2O供給分圧Po
Ga2Oを1.0×10
-4atm~1.0×10
-3atmの範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。なお、同図では、CO
2供給分圧P
o
CO2は、5.0×10
-4atm~5.0×10
-3atmの範囲で変動させた。供給VI/III比((P
o
Ga2O+2P
o
CO2)/2P
o
Ga2O)は5.5で固定した。なお、キャリアガス中水素比F
oは1.0×10
-4とした。同図に示すとおり、供給VI/III比を5.5で固定した場合、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、Ga
2O供給分圧Po
Ga2Oの増加に伴い増加することが確認された。
図20では、条件を選択することで、結晶成長温度約1700℃以下ではGa
2O
3結晶のマイナス成長(エッチング)なしで結晶成長が可能であることが確認された。
【0072】
図21のグラフの理論計算は、反応条件を下記条件と仮定して行った。
・成長部温度=結晶成長温度(変数)
・全圧P
tot=1.0atm
・Ga
2O供給分圧P
o
Ga2O=1.0×10
-4atm
・CO
2供給分圧P
o
CO2=5.0×10
-4atm
・供給VI/III比((P
o
Ga2O+2P
o
CO2)/2P
o
Ga2O)=5.5
・キャリアガス中水素比F
o=P
o
H2/(P
o
H2+P
o
IG)=0~1.0
【0073】
また、
図21の条件で、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、下記数式で表すことができる。
ΔP
Ga2O3=(1/2)[2P
o
Ga2O-(P
Ga+P
GaO+2P
Ga2O+P
GaH+P
GaH2+P
GaH3+P
GaOH)]
【0074】
図21に示すとおり、この条件では、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、結晶成長温度及びキャリアガス中水素比F
oの増加に伴い減少した。このことから、水素ガスH
2が存在しない非水素系(F
o=0)において最も高温高速成長が可能であることが確認された。さらに、1000℃以上でGa
2O
3成長するには、F
o=1×10
―3 以下にする必要があることが確認された。
【0075】
図22のグラフに、
図21の条件において非水素系(F
o=0)又は完全水素系(F
o=1)で反応を行った場合の各物質の分圧の理論計算結果について示す。
図22の左右いずれのグラフも、横軸は、成長部温度、すなわち各気体の温度であり、これを結晶成長温度に等しいと推定した。また、両グラフの縦軸は、各物質(気体)の分圧[atm]である。なお、1.0atmは、1.01325×10
5Paに等しい。
図22に示すとおり、非水素系では1100℃の高温でGa
2O
3の結晶成長が可能であるのに対し、水素系ではGa
2O
3の結晶成長が可能な最高温度は700℃であった。これは、水素供給分圧を上げると、水素によるGa
2O
3分解が顕著となり成長の駆動力が低下することに由来する。
【0076】
図16の化学反応式(5)における反応では、前記化学反応式(5)(下記に再掲)以外に、例えば、下記(y1)~(y10)の反応が起きていると考えられる。
図23のグラフに、これらの反応における各物質の分圧の理論計算結果について示す。
(5)Ga
2O(g)+2N
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2N
2(g)
(y1)Ga
2O(g)=GaO(g)+Ga(g)
(y2)Ga
2O(g)=2Ga(g)+(1/2)O
2(g)
(y3)Ga
2O(g)+2H
2(g)=2GaH(g)+H
2O(g)
(y4)Ga
2O(g)+3H
2(g)=2GaH
2(g)+H
2O(g)
(y5)Ga
2O(g)+4H
2(g)=2GaH
3(g)+H
2O(g)
(y6)Ga
2O(g)+H
2(g)+N
2O(g)=2GaOH(g)+N
2(g)
(y7)N
2O(g)=NO(g)+(1/2)N
2(g)
(y8)N
2O(g)=N
2(g)+(1/2)O
2(g)
(y9)N
2O(g)+4H
2(g)=2NH
3(g)+H
2O(g)
(y10)H
2(g)+(1/2)O
2(g)=H
2O(g)
前記化学反応式(5)及び前記化学反応式(y1)~(y10)の反応に関与しているガス種は、Ga
2O、GaO、Ga、GaH、GaH
2、GaH
3、GaOH、N
2O、NO、N
2、NH
3、O
2、H
2O、H
2、及びIGの15種類である。これら15のガス種がGa
2O
3基板上に同時に存在するとする。これらのガス種は、前記化学反応式(5)及び前記化学反応式(y1)~(y10)の11個の独立した化学反応式で関連づけられる。成長条件は、成長部温度、全圧、Ga
2O供給分圧(P
o
Ga2O)、N
2O供給分圧(P
o
N2O)、キャリアガス中の水素比率F
oによって決められる。前記11個の化学反応の平衡の式に加え(たとえば、(5)の化学反応式からは下記(5A)の平衡の式が得られる)、束縛条件として、全圧一定の式、Ga
2O
3生成に関する化学量論比(Gaおよび酸素原子数比2対3)を与える式、気相中の窒素、水素、IGの原子数は不変であることを与える2式の合計15種類の式を考える。これらを連立方程式で解くことにより、15種類のガス種の平衡分圧が得られる。
図23に、得られた温度を関数としたGa
2O
3結晶上に存在する各ガス種の平衡分圧を示す。
【数5A】
【0077】
図23のグラフにおいて、横軸は、成長部温度、すなわち各気体の温度であり、これを結晶成長温度に等しいと推定した。縦軸は、各物質(気体)の分圧[atm]である。なお、1.0atmは、1.01325×10
5Paに等しい。
図23のグラフの理論計算は、反応条件を下記条件と仮定して行った。
・成長部温度=結晶成長温度(変数)
・全圧P
tot=1.0atm
・Ga
2O供給分圧P
o
Ga2O=1.0×10
-4atm
・N
2O供給分圧P
o
N2O=1.0×10
-3atm
・供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
N2O)/2P
o
Ga2O)=5.5
・F
o=0 (完全非水素系)
【0078】
図23に示すとおり、前記化学反応式(5)すなわちGa
2O(g)+2N
2O(g)=Ga
2O
3(s)+2N
2(g)の反応により、高温(1500℃)でGa
2O
3(s)結晶を製造可能であることが確認された。
【0079】
図24のグラフに、供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
N2O)/2P
o
Ga2O)を0.55~500.5の範囲で変動させて結晶成長温度(℃)と、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)との相関関係を計算した結果を示す。同図において、横軸は供給VI/III比である。また、縦軸に、ΔP
Ga2O3を示すとともに、各気体の分圧(atm)も併せて示す。なお、同図において、N
2O供給分圧P
o
N2Oは、供給VI/III比を変動させるために、1.0×10
-5atm~1.0×10
-1atmの範囲で変動させた。すなわち、他の気体の分圧は変動させずに固定し、N
2O供給分圧P
o
N2Oのみを変動させることで、供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
N2O)/2P
o
Ga2O)を変動させた。キャリアガス中水素比F
oは1.0×10
-4とした。なお、ΔP
Ga2O3は、各気体の分圧から、下記計算式により計算できる。
ΔP
Ga2O3=(1/2)[2P
o
Ga2O-(P
Ga+P
GaO+2P
Ga2O+P
GaH+P
GaH2+P
GaH3+P
GaOH)]
【0080】
図24のグラフに示すとおり、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータ(ΔP
Ga2O3)は、供給VI/III比の増加に伴い増加することが確認された。また、供給VI/III比=2(P
o
N2O=2×10
-4atm)以上で、ΔP
Ga2O3がほぼ最大となることが確認された。
【0081】
図25のグラフに、Ga
2O供給分圧P
o
Ga2Oを1.0×10
-4atm~1.0×10
-3atmの範囲で変動させて結晶成長温度(℃)とΔP
Ga2O3との相関関係を計算した結果を示す。なお、同図では、N
2O供給分圧P
o
N2Oは、1.0×10
-3atm~1.0×10
-2atmの範囲で変動させた。供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
N2O)/2P
o
Ga2O)は5.5で固定した。なお、キャリアガス中水素比F
oは1.0×10
-4とした。同図に示すとおり、供給VI/III比を5.5で固定した場合、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、Ga
2O供給分圧P
o
Ga2Oの増加に伴い増加することが確認された。
図25では、条件を選択することで、結晶成長温度約1800℃以下ではGa
2O
3結晶のマイナス成長(エッチング)なしで結晶成長が可能であることが確認された。
【0082】
図26のグラフの理論計算は、反応条件を下記条件と仮定して行った。
・成長部温度=結晶成長温度(変数)
・全圧P
tot=1.0atm
・Ga
2O供給分圧P
o
Ga2O=1.0×10
-4atm
・N
2O供給分圧P
o
N2O=1.0×10
-3atm
・供給VI/III比((P
o
Ga2O+P
o
N2O)/2P
o
Ga2O)=5.5
・キャリアガス中水素比F
o=P
o
H2/(P
o
H2+P
o
IG)=0~1.0
【0083】
また、
図26の条件で、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、下記数式で表すことができる。
ΔP
Ga2O3=(1/2)[2P
o
Ga2O-(P
Ga+P
GaO+2P
Ga2O+P
GaH+P
GaH2+P
GaH3+P
GaOH)]
【0084】
図26に示すとおり、この条件では、Ga
2O
3結晶成長の駆動力を示すパラメータであるΔP
Ga2O3は、結晶成長温度及びキャリアガス中水素比F
oの増加に伴い減少した。このことから、水素ガスH
2が存在しない非水素系(F
o=0)において最も高温高速成長が可能であることが確認された。さらに、1000℃以上でGa
2O
33成長するには、F
o=1×10
―3 以下にする必要があることが確認された。
【0085】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0086】
〔1-2.金属酸化物結晶の製造装置〕
図1に、本発明の金属酸化物結晶の製造方法に用いる製造装置の構成の一例を示す。同図において、わかりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なっている。
図1の製造装置100は、前記本発明の金属酸化物結晶製造装置に該当し、本発明の金属酸化物結晶の製造方法に用いることができる。図示のとおり、本例の製造装置100は、第1の容器101内部に、第2の容器102と基板支持部103とが配置されている。第2の容器102は、同図において、第1の容器101の左側面に固定されている。基板支持部103は、第1の容器101の下面に固定されている。第2の容器102は、下面に金属載置部14を有する。第2の容器102は、同図において、左側面に酸化性ガス導入管105を備え、右側面に金属酸化物ガス導出管106を備える。酸化性ガス導入管105により、第2の容器102内に酸化性ガスを連続的に導入(供給)可能である。酸化性ガス導入管105から導入される酸化性ガスは、本発明の金属酸化物結晶の製造方法の前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属と反応する前記酸化剤に該当する。第1の容器101は、同図において、左側面にガス導入管107aおよび107bを備え、右側面に排気管108を備える。ガス導入管107aおよび107bの少なくとも一方から、第1の容器101内に酸素元素含有ガスを連続的に導入(供給)可能である。さらに、第1の容器101の外部には、第1の加熱機構109aおよび109b並びに第2の加熱機構200aおよび200bが配置されている。ただし、本発明の製造方法に用いる製造装置は、この例に限定されない。例えば、この例では、第1の容器101内部に、第2の容器102が1つだけ配置されているが、第1の容器101内部に、第2の容器102が複数個配置されていてもよい。また、この例では、酸化性ガス導入管105は、一つであるが、酸化性ガス導入管105は、複数であってもよい。なお、
図1の製造装置100は、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)に用いる装置として説明しているが、後述するように、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)にも用いることができる。
【0087】
図1の製造装置100において、第1の容器101は、本発明の金属酸化物結晶製造装置における前記「反応容器」に該当する。第2の容器102及び金属酸化物ガス導出管106は、本発明の金属酸化物結晶製造装置における前記「金属酸化物ガス供給機構」に該当する。後述するように、第2の容器102内で金属酸化物ガスを生成させ、金属酸化物ガス導出管106を介して第1の容器101内に前記金属酸化物ガスを連続的に供給可能である。
【0088】
前記第1の容器の形状は、特に限定されない。前記第1の容器の形状としては、例えば、円柱状、四角柱状、三角柱状、これらを組合せた形状等があげられる。前記第1の容器を形成する材質としては、例えば、石英、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ムライト、タングステン、モリブデン等があげられる。前記第1の容器は、自作してもよいし、市販品を購入してもよい。前記第1の容器の市販品としては、例えば、(株)フェニックス・テクノ製の商品名「石英反応管」等があげられる。
【0089】
前記第2の容器の形状は、特に限定されない。前記第2の容器の形状としては、例えば、前記第1の容器の形状と同様とすることができる。前記第2の容器を形成する材質としては、例えば、石英、タングステン、ステンレス、モリブデン、チタン酸アルミニウム、ムライト、アルミナ等があげられる。前記第2の容器は、自作してもよいし、市販品を購入してもよい。前記第2の容器の市販品としては、例えば、(株)メックテクニカ製の商品名「SUS316BAチューブ」等があげられる。
【0090】
前記第1の加熱機構および前記第2の加熱機構としては、従来公知の加熱機構を用いることができる。前記加熱機構としては、例えば、セラミックヒータ、高周波加熱装置、抵抗加熱器、集光加熱器等があげられる。前記加熱機構は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記第1の加熱機構および前記第2の加熱機構は、それぞれ、独立して制御されることが好ましい。
【0091】
また、
図4に、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)に用いる製造装置の構成の、別の一例を示す。図示のとおり、この製造装置300は、第2の容器102に代えて、第2の容器301を有することと、さらに金属導入管302を有すること以外は、
図1の製造装置100と同じである。第2の容器301は、図示のとおり、左側面の上部に酸化性ガス導入管105を備え、左側面の下部に金属導入管302を備え、右側面に金属酸化物ガス導出管106を備える。酸化性ガス導入管105により、第2の容器301内に酸化性ガスを連続的に導入(供給)可能である。金属導入管302により、第2の容器301内に金属を連続的に導入(供給)可能である。また、第2の容器301は、金属載置部104を有しない代わりに、第2の容器301自体の深さ(上下の幅)が大きく、第2の容器301下部に金属を溜めることができる。なお、
図4の製造装置において、第1の容器101は、本発明の金属酸化物結晶製造装置における「反応容器」に該当する。金属導入管302は、「金属供給機構」ということができる。酸化性ガス導入管105は、「酸化剤供給機構」ということができる。ガス導入管107aおよび107bは、「酸素元素含有ガス供給機構」ということができる。本発明において、前記金属酸化物結晶製造装置は、例えば
図4の装置のように、前記金属供給機構により、前記反応容器内に前記金属を連続的に供給可能であり、前記酸化剤供給機構により、前記反応容器内に前記酸化剤を連続的に供給可能であり、前記酸素元素含有ガス供給機構により、前記反応容器内に前記酸素元素含有ガスを連続的に供給可能であり、前記反応容器内で、前記金属と、前記酸化剤と、前記酸素元素含有ガスとを反応させて、前記金属酸化物結晶を製造する金属酸化物結晶製造装置であってもよい。
【0092】
また、
図6に、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)に用いる製造装置の構成の、さらに別の一例を示す。図示のとおり、この製造装置500は、ガス導入管107aおよび107bに代えて、キャリアガス導入管107cおよび酸素元素含有ガス導入管107dを有する。第2の容器102の右側面は、金属酸化物ガス導出管106を有しない代わりに、前記右側面全体が開口しており、金属酸化物ガスを導出可能である。キャリアガス導入管107cは、第2の容器102の左端から右端にかけての外周を取り囲んでおり、さらに、酸素元素含有ガス導入管107dは、キャリアガス導入管107cの左端から右端にかけての外周を取り囲んでいる。キャリアガス導入管107cからはキャリアガスを導入可能であり、酸素元素含有ガス導入管107dからは酸素元素含有ガスを導入可能である。基板支持部103は、排気管108の出口付近に取付けられ、基板支持部103に取付けられた基板202表面が、第2の容器102の右側面の正面に位置するように配置されている。これら以外は、
図6の製造装置500は、
図1の製造装置100と同様である。
【0093】
また、前記金属酸化物結晶の製造方法に用いる製造装置は、
図1、4および6の構成には限定されない。例えば、加熱機構109a、109b、200aおよび200b、ならびに基板支持部103は、省略することも可能であるが、反応性と操作性の観点から、これらの構成部材があることが好ましい。また、本発明の製造方法に用いる製造装置は、前述の構成部材に加えて、その他の構成部材を備えていてもよい。その他の構成部材としては、例えば、前記第1の加熱機構および前記第2の加熱機構の温度を制御する機構や、各工程で用いるガスの圧力・導入量を調整する機構等があげられる。
【0094】
前記金属酸化物結晶の製造方法(A)に用いる製造装置は、例えば、前述の各構成部材と、必要に応じてその他の構成部材とを従来公知の方法で組み立てることにより製造することができる。
【0095】
[1-3.金属酸化物結晶の製造方法(A)における製造工程および反応条件等]
つぎに、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)における各工程、反応条件、および使用する原料等について説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。なお、以下においては、
図1の製造装置を用いて、または、これに代えて
図4または6の製造装置を用いて前記金属酸化物結晶の製造方法(A)を実施する形態を説明する。なお、
図1、4または6の製造装置は、それ自体が、本発明の金属酸化物結晶を生成させるための「金属酸化物結晶生成機構」であるということもできる。また、後述するとおり、基板支持部103に設置した基板202上で前記金属酸化物結晶が生成するので、基板支持部103が「金属酸化物結晶生成機構」であるということもできる。
【0096】
まず、
図2(または
図5もしくは7)に示すとおり、あらかじめ、基板202を基板支持部103に設置しておく。基板202は特に限定されないが、例えば前述の通りであり、例えばサファイア基板でもよいし、金属酸化物(例えばβ-酸化ガリウム単結晶)により形成された種結晶でもよいし、サファイア等で形成された下地層(基板本体)上に金属酸化物の種結晶が形成されたものでもよい。基板202は、その上に生成する金属酸化物結晶の態様等に応じて、適宜選択することができる。基板202本体またはその上に形成された種結晶の材質としては、前述のとおり、その上に成長させる金属酸化物結晶と同じでも良いし、異なっていても良いが、同じであることが好ましい。
【0097】
つぎに、
図2(または
図7)に示すとおり、金属110を、金属載置部104に配置する。または、
図4の製造装置を用いる場合は、
図5に示すとおり、金属402を、金属導入管302から第2の容器301内部に導入し、金属110として第2の容器301内部の下部に溜めておく。金属導入管302からは、金属402を、第2の容器301内部に連続的に導入可能である。例えば、反応により金属402が消費されて減少した分だけ金属導入管302から導入して補充できる。なお、前記金属は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。例えば、前記金属として、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、およびインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも一つを用いても良い。この場合、製造される金属酸化物結晶の組成は、例えば、Al
sGa
tIn
{1-(s+t)}O
1.5(ただし、0≦s≦1、0≦t≦1、s+t≦1)で表される。また、金属110には、例えば、ドーパント材等を共存させて反応させても良い。前記ドーパントとしては、特に限定されないが、シリコン等が挙げられる。
【0098】
また、2種類以上のIII族元素金属を用いて製造される三元系以上の金属酸化物結晶としては、例えば、GaxIn1-xO1.5(0<x<1)の結晶があげられる。なお、三元系以上の窒化物結晶を生成するには、少なくとも二種類の異なるIII族元素酸化物の還元物ガスを生成させることが好ましい。この場合、前記第2の容器を2個以上備えた製造装置を用いることが好ましい。
【0099】
金属としてIII族元素金属を用いる場合、III族元素金属は、融点が比較的低いため、加熱により液体になりやすく、液体にすれば、反応容器内部(
図5では、第2の容器301内部)に連続的に供給することが容易である。前記III族元素金属の中で、ガリウム(Ga)が特に好ましい。ガリウムから製造される窒化ガリウム(GaN)は、半導体装置の材質としてきわめて有用であるとともに、ガリウムは、融点が約30℃と低く、室温でも液体になるため、反応容器内への連続供給が特に行いやすいためである。なお、前記III族元素金属としてガリウムのみを用いた場合、製造される金属酸化物結晶は、酸化ガリウム(III)(Ga
2O
3)となる。
【0100】
つぎに、金属110を、第1の加熱機構109aおよび109bを用いて加熱し、基板202を第1の加熱機構200aおよび200bを用いて加熱する。この状態で、酸化性ガス導入管105より、酸化性ガス201a(または401a)を導入し、ガス導入管107aおよび107bより、ガス203aおよび203bを導入する。ガス203aおよび203bは、酸素元素含有ガスを含む。また、ガス203aおよび203bは、さらに、キャリアガスを含んでいてもよい。例えば、ガス203aおよび203bの両方が、それぞれ酸素元素含有ガスとキャリアガスとの混合ガスであってもよいし、ガス203aおよび203bの一方が酸素元素含有ガスで他方がキャリアガスであってもよい。
図6(
図7)の装置を用いる場合は、ガス導入管107aおよび107bに代えて酸素元素含有ガス導入管107dから酸素元素含有ガス203fを導入するとともに、キャリアガス導入管107cからキャリアガス203eを導入し、酸素元素含有ガス導入管107dの外側からも同様にキャリアガス203gを導入する。なお、キャリアガス203eおよび203gは、例えば、窒素ガス(N
2)であり、詳しくは後述する。酸化性ガス201a(または401a)は、本発明の金属酸化物結晶の製造方法における「酸化剤」に該当し、特に限定されないが、例えば前述のとおり、H
2Oガス、O
2ガス、CO
2ガス、およびCOガスからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、H
2Oガスであることが特に好ましい。第2の容器102(または301)内に導入(供給)された酸化性ガス201a(または401a)は、金属110表面に接触する(酸化性ガス201bまたは401b)。これにより、金属110と酸化性ガス201b(または401b)とを反応させて金属酸化物ガス111aを生成させる(金属酸化物ガス生成工程)。なお、前記酸化性ガスの流量は、例えば、0.0001~50Pa・m
3/sの範囲であり、好ましくは、0.001~10Pa・m
3/sの範囲であり、より好ましくは、0.005~1Pa・m
3/sの範囲である。
【0101】
本発明の製造方法では、前記金属酸化物ガス生成工程において、金属酸化物ガスの生成を促進する観点から、前記金属を、加熱状態で前記酸化性ガスと反応させることが好ましい。この場合、前記金属の温度は、特に制限されないが、650~1500℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、900~1300℃の範囲であり、さらに好ましくは、1000~1200℃の範囲である。
【0102】
前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属がガリウムであり、前記酸化性ガスがH2Oガスであり、前記金属酸化物ガスがGa2Oであることが特に好ましい。この場合の反応式は、例えば、下記式(I)で表すことができるが、これには限定されない。
2Ga+H2O → Ga2O+H2 (I)
【0103】
本発明の金属酸化物結晶の製造方法では、前記酸化性ガスの分圧を制御する観点から、前記金属酸化物ガス生成工程を、前記酸化性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で実施しても良い。前記混合ガス全量に対する前記酸化性ガスの割合と、前記不活性ガスの割合は、特に制限されないが、前記混合ガス全量に対し、前記酸化性ガスの割合は、0.001体積%以上100体積%未満であり、前記不活性ガスの割合は、0体積%を超え99.999体積%以下であることが好ましく、より好ましくは、前記酸化性ガスの割合は、0.01体積%以上80体積%以下であり、前記不活性ガスの割合は、20体積%以上99.99体積%以下であり、さらに好ましくは、前記酸化性ガスの割合は、0.1体積%以上60体積%以下であり、前記不活性ガスの割合は、40体積%以上99.9体積%以下である。本発明の製造方法では、前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、クリプトンガス等があげられる。これらの中でも、窒素ガスが特に好ましい。前記混合ガス雰囲気を作り出す方法としては、例えば、前記第2の容器に、酸化性ガス導入管とは別に、不活性ガス導入管(図示せず)を設けて、不活性ガスを導入する方法や、前記水素ガスと前記不活性ガスとを、所定の割合で混合したガスを予め作製し、前記酸化性ガス導入管から導入する方法等があげられる。前記不活性ガス導入管を設けて、不活性ガスを導入する場合、前記不活性ガスの流量は、前記酸化性ガスの流量等により、適宜設定することができる。前記不活性ガスの流量は、例えば、0.1~150Pa・m3/sの範囲であり、好ましくは、0.2~30Pa・m3/sの範囲であり、より好ましくは、0.3~10Pa・m3/sの範囲である。
【0104】
生成した金属酸化物ガス111aは、金属酸化物ガス導出管106を通じて、第2の容器102(または301)外部に導出される(金属酸化物ガス111b)。なお、金属酸化物ガス111bは、
図5ではGa
2Oと図示しているが、これに限定されない。金属酸化物ガス111bを、金属酸化物ガス導出管106を通じて、第2の容器102(または301)の外部に導出するために、第1のキャリアガスを導入してもよい。前記第1のキャリアガスは、例えば、前記不活性ガスと同様のものを用いることができる。前記第1のキャリアガスの流量(分圧)は、前記不活性ガスの流量(分圧)と同様とすることができる。また、前記不活性ガスを導入する場合は、前記不活性ガスを第1のキャリアガスとして用いてもよい。
【0105】
金属酸化物ガス111a(111b)の生成は、例えば、加圧条件下で実施しても良いが、例えば、減圧条件下で実施しても良く、加圧および減圧をしない条件下で実施しても良い。前記加圧条件下における圧力は、特に制限されないが、1.0×105~1.50×107Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.05×105~5.00×106Paの範囲であり、さらに好ましくは、1.10×105~9.90×105Paの範囲である。加圧方法としては、例えば、前記酸化性ガス、前記第1のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。また、前記減圧条件は、特に制限されないが、1×101~1×105Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1×102~9×104Paの範囲であり、さらに好ましくは、5×103~7×104Paの範囲である。
【0106】
金属酸化物ガス導出管106を通って第2の容器102(または301)の外側に導出された金属酸化物ガス(例えばGa2Oガス)111bは、第1の容器101内に導入された酸素元素含有ガス203cと反応して、基板202上に、金属酸化物(例えばGa2O3)結晶204が生成される(金属酸化物結晶生成工程)。この場合の反応式は、前記金属酸化物ガスがGa2Oガスであり、前記酸素元素含有ガスが水蒸気(H2O)である場合は、例えば、下記式(II)で表すことができるが、これには限定されない。なお、反応後の余分なガスは、排気ガス203dとして、排気管108から排出することができる。
Ga2O+2H2O→Ga2O3+2H2 (II)
【0107】
本発明の製造方法において、前記酸素元素含有ガスは、特に限定されないが、例えば前述のとおりである。
【0108】
前記金属酸化物結晶生成工程において、前記基板の温度(すなわち、結晶成長温度)は、特に制限されないが、結晶生成速度を確保し、結晶性を良くする観点から、700~1500℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1000~1400℃の範囲であり、さらに好ましくは、1100~1350℃の範囲である。また、前述のとおり、前記金属酸化物結晶の製造方法が、結晶成長初期工程と、結晶成長後期工程とを含み、前記結晶成長後期工程における結晶成長温度が、前記結晶成長初期工程における結晶成長温度よりも高いことが好ましい。この場合において、前記結晶成長初期工程における結晶成長温度は、例えば700~1400℃、より好ましくは900~1300℃、さらに好ましくは1000~1200℃である。また、前記結晶成長後記工程における結晶成長温度は、例えば1000~1500℃、より好ましくは1100~1400℃、さらに好ましくは1200~1350℃である。また、前記結晶成長初期工程における結晶成長温度が、基板製造工程における結晶成長温度以上であることが、より好ましい。
【0109】
前記金属酸化物結晶生成工程は、加圧条件下で実施しても良いが、減圧条件下で実施しても良いし、加圧および減圧をしない条件下で実施しても良い。前記加圧条件は、特に制限されないが、1.01×105~1.50×107Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.05×105~5.00×106Paの範囲であり、さらに好ましくは、1.10×105~9.90×105Paの範囲である。また、前記減圧条件は、特に制限されないが、1×101~1×105Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1×102~9×104Paの範囲であり、さらに好ましくは、5×103~7×104Paの範囲である。
【0110】
前記金属酸化物結晶生成工程において、前記金属酸化物ガス(例えばGa
2Oガス、
図24および7において符号111b)の供給量は、例えば、5×10
-5~5×10
1mol/時間の範囲であり、好ましくは、1×10
-4~5mol/時間の範囲であり、より好ましくは、2×10
-4~5×10
-1mol/時間の範囲である。前記金属酸化物ガスの供給量は、例えば、前記金属酸化物ガスの生成における前記第1のキャリアガスの流量の調整等により、調整することができる。
【0111】
前記酸素元素含有ガスの流量は、前記基板の温度等の条件により、適宜設定することができる。前記酸素元素含有ガスの流量は、例えば、0.1~150Pa・m3/sの範囲であり、好ましくは、0.3~60Pa・m3/sの範囲であり、より好ましくは、0.5~30Pa・m3/sの範囲である。
【0112】
前記導入した酸素元素含有ガスを、結晶生成領域(
図1~7において、第1の容器101内部の、基板支持部103近傍)に移送するために、第2のキャリアガスを導入してもよい。前記第2のキャリアガスは、例えば、
図6および7のように、前記酸素元素含有ガス導入管とは別に、キャリアガス導入管(
図6および7では、107c)を設けて導入してもよいし、前記酸素元素含有ガスと混合して、前記酸素元素含有ガス導入管から導入してもよい。前記第2のキャリアガス(
図7では、キャリアガス203eおよび203g)としては、例えば、前記第1のキャリアガスと同様のものを用いることができる。また、前記キャリアガス導入管の配置位置は、特に限定されないが、例えば、
図6および7のキャリアガス導入管107cのように、第2の容器102の出口(III族元素含有ガスの導出口)の外周から前記第2のキャリアガスを導出するようにしてもよい。このようにすることで、例えば、第2の容器102の出口(III族元素含有ガスの導出口)に、生成したIII族元素窒化物(例えばGaN)が析出し、第2の容器102の出口が詰まることを抑制または防止できる。
【0113】
前記キャリアガス導入管を設けて、第2のキャリアガスを導入する場合、前記第2のキャリアガスの流量は、前記酸素元素含有ガスの流量等により、適宜設定することができる。前記第2キャリアガスの流量は、例えば、0.1~150Pa・m3/sの範囲であり、好ましくは、0.8~60Pa・m3/sの範囲であり、より好ましくは、1.5~30Pa・m3/sの範囲である。
【0114】
前記酸素元素含有ガス(A)と前記第2のキャリアガス(B)との混合比A:B(体積比)は、特に制限されないが、好ましくは、2~80:98~20の範囲であり、より好ましくは、5~60:95~40の範囲であり、さらに好ましくは、10~40:90~60の範囲である。前記混合比A:B(体積比)は、例えば、予め所定の混合比で作製する方法や、前記酸素元素含有ガスの流量(分圧)と前記第2のキャリアガスの流量(分圧)とを調整する方法で設定することができる。
【0115】
前記金属酸化物結晶(例えばGa2O3結晶)生成工程は、加圧条件下で実施することが好ましい。前記加圧条件は、前述のとおりである。加圧方法としては、例えば、前記窒素含有ガス、前記第2のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。
【0116】
前記金属酸化物結晶生成工程は、ドーパントを含むガスの雰囲気下で実施してもよい。このようにすれば、ドーパント含有のGaN結晶を生成することができる。前記ドーパントとしては、例えば、Si、S、Se、Te、Ge、Fe、Mg、Zn等があげられる。前記ドーパントは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ドーパントを含むガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリエチルシラン(SiH(C2H5)3)、テトラエチルシラン(Si(C2H5)4)、H2S、H2Se、H2Te、GeH4、Ge2O、SiO、MgO、ZnO等があげられる。前記ドーパントを含むガスは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0117】
前記ドーパントを含むガスは、例えば、前記酸素元素含有ガス導入管とは別に、ドーパントを含むガスの導入管(図示せず)を設けて導入してもよいし、前記酸素元素含有ガスと混合して、前記酸素元素含有ガス導入管から導入してもよい。前記ドーパントを含むガスは、前記第2のキャリアガスを導入する場合においては、前記第2のキャリアガスと混合して導入してもよい。
【0118】
前記ドーパントを含むガス中のドーパントの濃度は、特に制限されないが、例えば、0.001~100000ppmの範囲であり、好ましくは、0.01~1000ppmの範囲であり、より好ましくは、0.1~10ppmの範囲である。
【0119】
また、前記金属酸化物結晶(例えばGa2O3結晶)の生成速度は、特に制限されない。前記速度は、例えば、前述のとおり、0.001μm/時間以上、0.01μm/時間以上、0.1μm/時間以上、0.5μm/時間以上、又は1μm/時間以上であってもよく、例えば、10000μm/時間以下、1000μm/時間以下、500μm/時間以下、100μm/時間以下、又は50μm/時間以下であってもよく、例えば、0.001~10000μm/時間、0.01~1000μm/時間、0.1~500μm/時間、1~500μm/時間、又は1~100μm/時間であってもよい。
【0120】
以上のようにして前記金属酸化物結晶の製造方法(A)を行うことができるが、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)は、これに限定されない。例えば、前述のとおり、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)において、反応系中に、さらに、還元性ガスを共存させて反応を行うことが好ましい。また、前述のとおり、前記酸化性ガスおよび前記酸素元素含有ガスの少なくとも一方に前記還元性ガスを混合して行うことがより好ましい。すなわち、
図24または7において、酸素元素含有ガス203a、203b(または203f)、および酸化性ガス201a(または401a)の少なくとも一つに前記還元性ガスを混合しても良い。本発明の製造方法において、前記酸化性ガスに前記還元性ガスを混合することがさらに好ましい。これにより、例えば、前記金属酸化物ガス生成工程において、前記金属と前記酸化性ガスとの反応における副生成物の生成を抑制し、反応効率(前記金属酸化物ガスの生成効率)をさらに高めることができる。具体例としては、例えば、ガリウム(前記金属)とH
2Oガス(前記酸化性ガス)との反応において、H
2OガスにH
2ガス(前記還元性ガス)を混合することにより、副生成物であるGa
2O
3の生成を抑制し、Ga
2Oガス(前記金属酸化物ガス)の生成効率をさらに高めることができる。
【0121】
また、前記金属酸化物結晶の製造方法(A)において、反応系中に前記還元性ガスを共存させることにより、例えば、より大きいサイズの金属酸化物結晶を製造することができる。例えば、種結晶上に金属酸化物結晶を成長させ、さらに、金属酸化物結晶をスライスすることで、金属酸化物結晶から形成された板状の半導体ウェハを製造する。しかし、金属酸化物結晶は、成長するにつれて、先細りの錘状になりやすく、錘状結晶の先端の方では、形が小さい半導体ウェハしか得られない。しかし、本発明の製造方法において、反応系中に前記還元性ガスを共存させると、理由は不明であるが、錘状でなく柱状の(すなわち、先細りでない)結晶が得られやすくなる場合がある。このような柱状の金属酸化物結晶であれば、錘状結晶と異なり、スライスした場合、ほとんどの部分で、経の大きい半導体ウェハ(金属酸化物結晶)を得ることができるのである。
【0122】
前記金属酸化物結晶の製造方法(A)では、前記還元性ガスとしては、例えば、水素ガス;一酸化炭素ガス;メタンガス、エタンガス等の炭化水素系ガス;硫化水素ガス;二酸化硫黄ガス等があげられ、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。これらの中でも、水素ガスが特に好ましい。前記水素ガスは、純度の高いものが好ましい。前記水素ガスの純度は、特に好ましくは、99.9999%以上である。
【0123】
前記金属酸化物ガス生成工程を、前記還元性ガス共存下で行う場合において、反応温度は、特に限定されないが、副生成物生成抑制の観点から、好ましくは900℃以上、より好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1100℃以上である。前記反応温度の上限値は、特に限定されないが、例えば1500℃以下である。
【0124】
前記金属酸化物結晶の製造方法(A)において、前記還元性ガスを用いる場合、前記還元性ガスの使用量は、特に限定されないが、前記酸化性ガスおよび前記還元性ガスの体積の合計に対し、例えば1~99体積%、好ましくは3~80体積%、より好ましくは5~70体積%である。前記還元性ガスの流量は、前記酸化性ガスの流量等により、適宜設定することができる。前記還元性ガスの流量は、例えば、0.01~100Pa・m3/sの範囲であり、好ましくは、0.05~50Pa・m3/sの範囲であり、より好ましくは、0.1~10Pa・m3/sの範囲である。また、金属酸化物ガス111a(111b)の生成は、前述のとおり、加圧条件下で実施することが好ましく、圧力は、例えば前述のとおりである。加圧方法としては、例えば、前記酸化性ガスおよび前記還元性ガスにより加圧しても良い。
【0125】
本発明の前記金属酸化物結晶の製造方法(A)は、気相成長法であるが、原料としてハロゲン化物を用いずに行うことも可能である。ハロゲン化物を用いなければ、従来の(例えば特開昭52-23600号公報等に記載のハロゲン化気相成長法)と異なり、ハロゲンを含む副生成物を生成させずに金属酸化物結晶を製造できる。これにより、例えば、ハロゲンを含む副生成物による環境汚染、装置の腐食等を防止できる。
【0126】
[1-4.金属酸化物結晶の製造方法(B)における製造工程および反応条件等]
つぎに、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)における製造工程および反応条件等について、例を挙げて説明する。
【0127】
前記金属酸化物結晶の製造方法(B)は、例えば、
図1または6に示した製造装置100を用いて行うことができる。具体的には、金属載置部104を、金属酸化物固体原料載置部104として用いる。酸化性ガス導入管105を、還元性ガス導入管105として用いる。
【0128】
以下、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)について、
図1または6に示す製造装置を用いて、金属酸化物固体原料を、Ga
2O
3とし、還元物ガスを、Ga
2Oガスとし、還元性ガスを、水素ガスとし、酸素元素含有ガスを、H
2Oガスとし、生成される金属酸化物結晶を、Ga
2O
3結晶とした場合を例にとり、
図2を参照して詳細に説明する。ただし、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)は、下記の例に限定されない。前述のとおり、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)は、金属酸化物ガス生成工程および金属酸化物結晶生成工程を有する。
【0129】
まず、Ga2O3を前記金属酸化物固体原料載置部104に配置し、基板202を前記基板支持部103に設置する。つぎに、前記Ga2O3を前記第1の加熱機構109aおよび109bを用いて加熱し、前記基板202を前記第1の加熱機構200aおよび200bを用いて加熱する。この状態で、前記還元性ガス導入管105より、水素ガス201aを導入し、前記ガス導入管107aおよび107bより、H2Oガス203aおよび203bを導入する。導入された水素ガス201bは、前記Ga2O3と反応して、Ga2Oガスを生成させる(下記式(III))。生成されたGa2Oガス111aは、前記還元物ガス導出管106を通って、前記第2の容器102の外側に、Ga2Oガス111bとして導出される。導出されたGa2Oガス111bは、導入されたH2Oガス203cと反応して、基板202上に、Ga2O3結晶204が生成される(下記式(IV))。
Ga2O3+2H2→Ga2O+2H2O(III)
Ga2O+2H2O→Ga2O3+2H2(IV)
【0130】
前記式(III)および(IV)からわかるように、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)において、生成される副生成物は、水と水素だけである。すなわち、固体状の副生成物が発生することがない。前記水および水素は、気体または液体の状態で、例えば、前記排気管108から排出することができる。この結果、例えば、Ga2O3結晶を、長時間にわたって生成することが可能であり、大型で厚膜のGa2O3結晶を得ることができる。また、例えば、副生成物を除去するためのフィルタ等を導入する必要もないため、コストの面においても優れている。ただし、前記金属酸化物結晶の製造方法(B)は、上記の記載により限定されるものではない。
【0131】
前記金属酸化物固体原料として用いる前記Ga2O3は、粉末状もしくは顆粒状であることが好ましい。前記Ga2O3が粉末状もしくは顆粒状であれば、その表面積を大きくすることができるため、Ga2Oガスの生成を促進することができる。
【0132】
なお、三元系以上の金属酸化物結晶を生成するには、少なくとも二種類の異なる金属酸化物ガスを生成させることが好ましい。この場合、前記第2の容器を2個以上備えた製造装置を用いることが好ましい。
【0133】
前記水素ガスは、純度の高いものが好ましい。前記水素ガスの純度は、好ましくは、99.9999%以上である。前記水素ガスの流量(分圧)は、前記Ga2O3の温度等の条件により、適宜設定することができる。前記水素ガスの分圧は、例えば、0.2~2000kPaの範囲であり、好ましくは、0.5~1000kPaの範囲であり、より好ましくは、1.5~500kPaの範囲である。
【0134】
前述のとおり、水素ガスの分圧を制御する観点から、前記Ga2Oガスの生成を、水素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で実施することが好ましい。前記混合ガス雰囲気を作り出す方法としては、例えば、前記第2の容器に、還元性ガス導入管とは別に、不活性ガス導入管(図示せず)を設けて、不活性ガスを導入する方法や、前記水素ガスと前記不活性ガスとを、所定の割合で混合したガスを予め作製し、前記還元性ガス導入管から導入する方法等があげられる。前記不活性ガス導入管を設けて、不活性ガスを導入する場合、前記不活性ガスの流量(分圧)は、前記水素ガスの流量等により、適宜設定することができる。前記不活性ガスの分圧は、例えば、0.2~2000kPaの範囲であり、好ましくは、2.0~1000kPaの範囲であり、より好ましくは、5.0~500kPaの範囲である。
【0135】
前記混合ガスに対する前記水素ガスの割合および前記不活性ガスの割合は、前述のとおりである。前記混合ガスに対する前記水素ガスの割合および前記不活性ガスの割合は、例えば、予め所定の割合で、前記混合ガスを作製する方法や、前記水素ガスの流量(分圧)と前記不活性ガスの流量(分圧)とを調整する方法で設定することができる。
【0136】
前記Ga2Oガスを、前記還元物ガス導出管を通じて、前記第2の容器の外部に導出するために、第1のキャリアガスを導入してもよい。前記第1のキャリアガスは、例えば、前記不活性ガスと同様のものを用いることができる。前記第1のキャリアガスの流量(分圧)は、前記不活性ガスの流量(分圧)と同様とすることができる。また、前記不活性ガスを導入する場合は、前記不活性ガスを第1のキャリアガスとして用いてもよい。
【0137】
前記Ga2Oガスの生成は、加圧条件下で実施することが好ましい。前記加圧条件は、特に制限されないが、1.01×105~1.50×107Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.05×105~5.00×106Paの範囲であり、さらに好ましくは、1.10×105~9.90×105Paの範囲である。加圧方法としては、例えば、前記水素ガス、前記第1のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。
【0138】
前述のように、少なくとも二種類の異なるIII族元素酸化物の還元物ガスを生成させた場合、基板上には、例えば、三元系以上の窒化物結晶が生成される。前記三元系以上の窒化物結晶としては、例えば、GaxIn1-xO1.5(0<x<1)の結晶があげられる。
【0139】
前記Ga2Oガスの供給量は、例えば、5×10-5~1×10-1mol/時間の範囲であり、好ましくは、1×10-4~1×10-2mol/時間の範囲であり、より好ましくは、2×10-4~5×10-4mol/時間の範囲である。前記Ga2Oガスの供給量は、例えば、前記Ga2Oガスの生成における前記第1のキャリアガスの流量(分圧)の調整等により、調整することができる。
【0140】
前記H2Oガスの流量(分圧)は、前記基板の温度等の条件により、適宜設定することができる。前記H2Oガスの分圧は、例えば、0.2~3000kPaの範囲であり、好ましくは、0.5~2000kPaの範囲であり、より好ましくは、1.5~1000kPaの範囲である。
【0141】
前記導入したH2Oガスを、結晶生成領域に移送するために、第2のキャリアガスを導入してもよい。前記第2のキャリアガスは、例えば、前記窒素含有ガス導入管とは別に、キャリアガス導入管(図示せず)を設けて導入してもよいし、前記H2Oガスと混合して、前記窒素含有ガス導入管から導入してもよい。前記第2のキャリアガスとしては、例えば、前記第1のキャリアガスと同様のものを用いることができる。
【0142】
前記キャリアガス導入管を設けて、第2のキャリアガスを導入する場合、前記第2のキャリアガスの流量(分圧)は、前記窒素含有ガスの流量(分圧)等により、適宜設定することができる。前記第2キャリアガスの分圧は、例えば、0.2~3000kPaの範囲であり、好ましくは、0.5~2000kPaの範囲であり、より好ましくは、1.5~1000kPaの範囲である。
【0143】
前記H2Oガス(A)と前記第2のキャリアガス(B)との混合比A:B(体積比)は、特に制限されないが、好ましくは、3~80:97~20の範囲であり、より好ましくは、8~60:92~40の範囲であり、さらに好ましくは、10~40:90~60の範囲である。前記混合比A:B(体積比)は、例えば、予め所定の混合比で作製する方法や、前記H2Oガスの流量(分圧)と前記第2のキャリアガスの流量(分圧)とを調整する方法で設定することができる。
【0144】
前記Ga2O3結晶の生成は、加圧条件下で実施することが好ましい。前記加圧条件は、前述のとおりである。加圧方法としては、例えば、前記H2Oガス、前記第2のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。
【0145】
前記Ga2O3結晶の生成は、ドーパントを含むガスの雰囲気下で実施してもよい。このようにすれば、ドーパント含有のGa2O3結晶を生成することができる。前記ドーパントとしては、例えば、Si、S、Se、Te、Ge、Fe、Mg、Zn等があげられる。前記ドーパントは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ドーパントを含むガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリエチルシラン(SiH(C2H5)3)、テトラエチルシラン(Si(C2H5)4)、H2S、H2Se、H2Te、GeH4、Ge2O、SiO、MgO、ZnO等があげられる。前記ドーパントを含むガスは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0146】
前記ドーパントを含むガスは、例えば、前記窒素含有ガス導入管とは別に、ドーパントを含むガスの導入管(図示せず)を設けて導入してもよいし、前記H2Oガスと混合して、前記窒素含有ガス導入管から導入してもよい。前記ドーパントを含むガスは、前記第2のキャリアガスを導入する場合においては、前記第2のキャリアガスと混合して導入してもよい。
【0147】
前記ドーパントを含むガス中のドーパントの濃度は、特に制限されないが、例えば、0.001~100000ppmの範囲であり、好ましくは、0.01~1000ppmの範囲であり、より好ましくは、0.1~10ppmの範囲である。
【0148】
前記Ga2O3結晶の生成速度は、特に制限されない。前記速度は、例えば、前述のとおり、0.001μm/時間以上、0.01μm/時間以上、0.1μm/時間以上、0.5μm/時間以上、又は1μm/時間以上であってもよく、例えば、10000μm/時間以下、1000μm/時間以下、500μm/時間以下、100μm/時間以下、又は50μm/時間以下であってもよく、例えば、0.001~10000μm/時間、0.01~1000μm/時間、0.1~500μm/時間、1~500μm/時間、又は1~100μm/時間であってもよい。
【0149】
本発明の製造方法は、Ga2O3以外の金属酸化物を用いる場合も、Ga2O3を用いてGa2O3結晶を生成する場合と同様にして、金属酸化物結晶を生成することができる。
【0150】
前記Ga2O3以外の金属酸化物としては、例えば、III族元素酸化物があげられ、III族元素が、Inである場合には、例えば、In2O3があげられ、III族元素が、Alである場合には、例えば、Al2O3があげられ、III族元素が、Bである場合には、例えば、B2O3があげられ、III族元素が、Tlである場合には、例えば、Tl2O3があげられる。前記Ga2O3以外の金属酸化物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0151】
[1-5.金属酸化物結晶の製造方法(A)または(B)により製造される金属酸化物結晶等]
前記金属酸化物結晶の製造方法により製造される金属酸化物結晶のサイズは、特に限定されないが、例えば、長径が15cm(約6インチ)以上であることが好ましく、20cm(約8インチ)以上であることがより好ましく、25cm(約10インチ)以上であることが特に好ましい。また、前記金属酸化物結晶の高さも特に限定されないが、例えば、1cm以上であっても良く、好ましくは5cm以上、より好ましくは10cm以上である。ただし、本発明の製造方法は、このような大サイズの金属酸化物結晶の製造に限定されず、例えば、従来と同サイズの金属酸化物結晶をさらに高品質に製造するために用いることも可能である。また、例えば、前記金属酸化物結晶の高さ(厚み)は、前述のとおり、特に限定されない。
【0152】
前記金属酸化物結晶において、転位密度は、特に限定されないが、好ましくは1.0×107cm-2以下、より好ましくは1.0×104cm-2以下、さらに好ましくは1.0×103cm-2以下、さらに好ましくは1.0×102cm-2以下である。前記転位密度は、理想的には0であるが、通常、0であることはあり得ないので、例えば、0を超える値であり、測定機器の測定限界値以下であることが特に好ましい。なお、前記転位密度の値は、例えば、結晶全体の平均値であっても良いが、結晶中の最大値が前記値以下であれば、より好ましい。また、本発明の金属酸化物結晶において、XRCによる半値幅の、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅は、それぞれ、例えば300秒以下、好ましくは100秒以下、より好ましくは30秒以下であり、理想的には0である。
【0153】
なお、本発明の金属酸化物結晶の製造方法は、例えば、製造した金属酸化物結晶をさらに成長させる結晶再成長工程をさらに含んでいても良い。前記結晶再成長工程は、具体的には、例えば、製造した金属酸化物結晶をカットして任意の面(例えば、c面、m面、a面、またはその他の非極性面)を露出させ、その面を結晶成長面として前記金属酸化物結晶をさらに成長させても良い。これにより、前記任意の面を大面積で有し、かつ厚みが大きい金属酸化物結晶を製造することも可能である。
【0154】
[2.金属酸化物結晶および半導体装置]
本発明の金属酸化物結晶は、前記本発明の製造方法により製造される金属酸化物結晶、または前記金属酸化物結晶をさらに成長させて製造される金属酸化物結晶である。本発明の金属酸化物結晶は、例えば、大サイズで、かつ、欠陥が少なく高品質である。品質は、特に限定されないが、例えば、転位密度が、前記の数値範囲であることが好ましい。サイズについても特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。また、本発明の金属酸化物結晶の用途も特に限定されないが、例えば、半導体としての性質を有することにより、半導体装置に使用可能である。本発明において、前記金属酸化物結晶は、特に限定されないが、AlxGayIn1-x-yO1.5(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される金属酸化物結晶であり、Ga2O3が特に好ましい。前記金属は、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つであり、Gaであることが特に好ましい。
【0155】
本発明によれば、例えば、従来技術では不可能であった6インチ径以上の金属酸化物(例えばGa2O3)結晶を提供することができる。これにより、例えば、Si(シリコン)の大口径化が基準となっているパワーデバイス、高周波デバイス等の半導体装置において、Siに代えて金属酸化物を用いることで、さらなる高性能化も可能である。これにより本発明が半導体業界に与えるインパクトは、きわめて大きい。本発明の金属酸化物結晶は、これらに限定されず、例えば、太陽電池等の任意の半導体装置に用いることもできるし、また、半導体装置以外の任意の用途に用いても良い。
【0156】
なお、本発明の半導体装置は、特に限定されず、半導体を用いて動作する物品であれば、何でも良い。半導体を用いて動作する物品としては、例えば、半導体素子、および、前記半導体素子を用いた電気機器等が挙げられる。前記半導体素子としては、ダイオード、トランジスタなどの高周波デバイスやパワーデバイス、および発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの発光デバイスが挙げられる。また、前記半導体素子を用いた電気機器としては、前記高周波デバイスを搭載した携帯電話用基地局、前記パワーデバイスを搭載した太陽電池の制御機器や電気を用いて駆動する車両の電源制御機器、前記発光デバイスを搭載したディスプレイや照明機器、光ディスク装置等が挙げられる。例えば、青色光を発するレーザダイオード(LD)は、高密度光ディスク、ディスプレイ等に応用され、青色光を発する発光ダイオード(LED)は、ディスプレイ、照明等に応用される。また、紫外線LDは、バイオテクノロジ等への応用が期待され、紫外線LEDは、水銀ランプの代替の紫外線源として期待される。また、本発明のIII-V族化合物をインバータ用パワー半導体として用いたインバータは、例えば、太陽電池等の発電に用いることもできる。さらに、前述のとおり、本発明の金属酸化物結晶は、これらに限定されず、他の任意の半導体装置、またはその他の広範な技術分野に適用可能である。
【実施例0157】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によってなんら限定ないし制限されない。
【0158】
[実施例1]
図6の構成の装置500を用いて、
図7に示すようにIII族元素窒化物結晶を製造した。まず、金属載置部104に、金属ガリウム(Ga)110を12g載置するとともに、基板支持部103にサファイア基板(株式会社信光社製、厚さ0.43mm、12mm×25mm)202を取り付けた。つぎに、装置全体を昇温しながら、N
2ガスを流した。具体的には、
図7に示すように、酸化性ガス導入管105からN
2ガス201aを300sccm、キャリアガス導入管107cからN
2ガス203eを1800sccm、酸素元素含有ガス導入管107dからN
2ガス203fを1200sccm、及び酸素元素含有ガス導入管107dの外側からN
2ガス203gを1200sccmを流した。ノズル部(酸化性ガス導入管105、キャリアガス導入管107c、酸素元素含有ガス導入管107d、及び酸素元素含有ガス導入管107dの外側)、原料部(第2の容器102及び金属載置部104)、及び結晶育成部(基板支持部103及びサファイア基板202)を含む装置500全体の温度を1100℃まで昇温させた後に、下記表1の条件でガスを流し続けることにより、サファイア基板上にGa
2O
3結晶を生成させ、1時間かけて育成し、Ga
2O
3結晶を製造した。なお、下記表1において、「Line1」「Line2」「Line3」「Line4」は、内側からこの順序でガスを通したことを表す。すなわち、「Line1」は、酸化性ガス導入管105から導入したガス201aを表し、「Line2」は、キャリアガス導入管107cから導入したガス203eを表し、「Line3」は、酸素元素含有ガス導入管107dから導入したガス203fを表し、「Line4」は、酸素元素含有ガス導入管107dの外側から導入したガス203gを表す。本実施例では、金属ガリウム110(金属)と、ガス201a(Line1)に含まれるH
2Oガス(酸化剤)とを反応させてGa
2Oガス(金属酸化物ガス)を生成させ(金属酸化物ガス生成工程)、さらに、そのGa
2Oガス(金属酸化物ガス)と、ガス203f(Line3)に含まれるH
2Oガス(酸素元素含有ガス)とをサファイア基板上で反応させてGa
2O
3結晶を生成させ(金属酸化物結晶生成工程)、目的とするGa
2O
3結晶を製造した。
【0159】
【0160】
図27に、本実施例で製造したGa
2O
3結晶のSEM(走査型顕微鏡)写真を示す。このSEM写真は、走査型顕微鏡として、キーエンス社製VHX-D510(商品名)を用いて撮像した。
図27のSEM写真に示すとおり、本実施例では、サファイア基板上に、方位(配向方向)の揃ったGa
2O
3結晶が成長したことが確認できた。
【0161】
また、
図28に、本実施例で製造したGa
2O
3結晶のノマルスキー観察像(写真)を示す。このノマルスキー観察像は、
図27と同様に、走査型顕微鏡として、キーエンス社製VHX-7000(商品名)を用いて撮像した。上側中央の写真内の(a)(b)(c)(d)(e)の部分の拡大写真を、上側左から反時計回りに示す。
図28のノマルスキー観察像に示すとおり、サファイア基板上に、広範囲において方位(配向方向)の揃ったGa
2O
3結晶が成長したことが確認できた。
【0162】
また、
図29に、
図28のノマルスキー観察像の、Ga
2O
3結晶成長厚み2μm成長エリア周辺の写真を示す。
図29に示すとおり、Ga
2O
3結晶厚みが2μm以上という比較的厚く結晶成長した領域においても、方位(配向方向)の揃ったGa
2O
3結晶が成長したことが確認できた。
【0163】
また、
図30に、
図28のノマルスキー観察像の押さえ治具周辺の写真を示す。抑え治具付近ではGa
2O
3結晶成長厚みが比較的薄いため、成長したGa
2O
3結晶の形状を明瞭にとらえることが可能である。
図30の写真に示すとおり、押さえ治具周辺では、平面視で三角形のGa
2O
3結晶がサファイア基板上に成長したことが確認できた。
【0164】
また、
図31のグラフに、本実施例で製造したGa
2O
3結晶のXRD(X線回折)スペクトルを示す。同図において、横軸は2θ(°)であり、縦軸はピークの相対強度である。なお、同図のXRDスペクトルは、Rigaku社製Smartlab(商品名)を用いて測定した。図示のとおり、β相Ga
2O
3結晶における20-1面、40-2面、及び60-3面における回折が得られたことに加え、サファイア基板(Al
2O
3結晶)のピークも確認された。
【0165】
[実施例2]
サファイア基板202に代えてGa2O3結晶基板(厚さ0.43mm、1.0cm×2.5cm)202を用いたこと以外は実施例1と同様にして、前記Ga2O3結晶基板上に、エピタキシャル成長(ホモエピタキシー)によりGa2O3結晶(Ga2O3エピタキシャル結晶)を製造した。このようにして、前記Ga2O3結晶基板上に前記Ga2O3エピタキシャル結晶が積層された積層体(金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板)を製造した。
【0166】
図32のグラフに、実施例1のGa
2O
3結晶(ヘテロエピタキシー成長により製造)と、本実施例のGa
2O
3結晶(ホモエピタキシー成長により製造)とのXRDスペクトルを、併せて示す。同図において、横軸は2θ(°)であり、縦軸はピークの相対強度である。なお、同図のXRDスペクトルは、Rigaku社製Smartlab(商品名)を用いて測定した。同図において、本実施例で用いたGa
2O
3結晶基板は、(20-1)配向を有すると推測される。本実施例では、結晶製造後に(20-1)(40-2)(60-3)(80-4)に帰属する回折を確認したことから、Ga
2O
3結晶が製造できたことが確認された。また、サファイア基板を用いた実施例1(ヘテロエピタキシー)でも、本実施例(ホモエピタキシー)と一致した回折(20-1)(60-3)が認められたことから、Ga
2O
3結晶が製造できたことが確認された。また、実施例1のGa
2O
3結晶における(40-2)(80-4)付近は、本実施例(ホモエピタキシー)の回折角とズレがあったことから、別の回折が検出されたと推測される。この別の回折は、多結晶の回折である可能性がある。
【0167】
図33に、本実施例で製造した金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板(Ga
2O
3結晶基板上にGa
2O
3エピタキシャル結晶が積層された積層体)のXRDスペクトルを示す。
図33では、結晶の評価のため、
図33に示したホモエピタキシーで得られたGa
2O
3結晶におけるXRDで検出された各回折角度でのロッキングカーブ測定(2θ―ωスキャン)を実施した。
図34に示すとおり、本実施例では、ロッキングカーブ半値幅は(20-1)(40-2)(60-3)回折で20秒台と種結晶(前記Ga
2O
3結晶基板)の品質を引継ぎ、非常に配向性の高いGa
2O
3結晶を製造できたことが分かった。ただし、
図34の(80-4)回折については、強度が弱いため、半値幅から正確に結晶品質を評価することは困難である。
【0168】
[実施例3]
サファイア基板202に代えてGa2O3結晶基板(厚さ0.43mm、直径2.54cm)202を用いたことと、昇温後の結晶育成条件(ガス流量)を下記表2のとおり変更したこと以外は実施例1と同様にしてGa2O3結晶を製造した。
【0169】
【0170】
図34に、本実施例で製造したGa
2O
3結晶のSEM像(写真)を示す。
図34左上の図は全体SEM像であり、右上の図は表面SEM像(500倍)であり、下側の図は断面SEM像(2000倍)である。
図34の全体SEM像、表面SEM像及び断面SEMに示すとおり、本実施例では、平坦なGa
2O
3種結晶の上に凹凸を有するGa
2O
3結晶が成長したことが確認できた。また、本実施例で製造したGa
2O
3結晶の成長膜厚は、18~24μm程度であった。
【0171】
また、
図35のグラフに、本実施例で製造した金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板(Ga
2O
3結晶基板上にGa
2O
3エピタキシャル結晶が積層された積層体)のXRDスペクトルを示す。同図左側のグラフにおいて、横軸は2θ/ωであり、縦軸はピーク強度(相対値)である。右側のグラフにおいて、横軸はωであり、縦軸はピーク強度(相対値)である。
図35左側のグラフの2θ-ωスキャンより、020面回折を確認することができた。このことから、本実施例で製造したGa
2O
3結晶は、種結晶である(010)面酸化ガリウムと同じ方位でホモエピタキシャル成長できていたことが確認された。また、
図35右側のグラフは、2θを020面の回折角度に固定してωスキャンすることで得られたプロファイルであり、結晶の品質を示している。このグラフに示すとおり、本実施例で製造したGa
2O
3結晶は、一部ピークのスプリットは見られるが、半値幅は99秒程度であり、高い配向性を示していることが確認された。
【0172】
[実施例4]
サファイア基板202に代えてGaN結晶基板(SINO NITRIDE社製、厚さ0.43mm、12mm×25mm)を用いたことと、昇温後の結晶育成条件(ガス流量)を下記表3のとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして、前記Ga2O3結晶基板上に、エピタキシャル成長(ホモエピタキシー)によりGa2O3結晶(Ga2O3エピタキシャル結晶)を製造した。このようにして、前記Ga2O3結晶基板上に前記Ga2O3エピタキシャル結晶が積層された積層体(金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板)を製造した。
【0173】
【0174】
図36に、本実施例で製造したGa
2O
3結晶のSEM像(写真)を示す。
図36左側の図は全体SEM像であり、右側の図は表面SEM像(5000倍)である。
図36右側の図の拡大SEM像から、本実施例では、同じ面方位で配向したGa
2O
3結晶が得られていたことが確認された。
【0175】
図37に、本実施例で製造した金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板(GaN結晶基板上にGa
2O
3エピタキシャル結晶が積層された積層体)のXRDスペクトルを示す。同図左側のグラフにおいて、横軸は2θ/θであり、縦軸はピーク強度(相対値)である。図示のとおり、種結晶であるGaN結晶の回折に加え、-201、-402、-603回折ピークが確認されたことから、本実施例では、-201面配向のβ酸化ガリウム結晶が得られていたことが確認された。
【0176】
[実施例5]
昇温後の結晶育成条件(ガス流量)を下記表4のとおり変更したこと以外は実施例1と同様にしてGa2O3結晶を製造した。本実施例では、VI属元素源となるガスを、水から窒素(N2):酸素(O2)モル比が4:1(空気の比率)の混合ガスに変更した。すなわち、この混合ガスは、ドライエア(乾燥した空気)に相当する。
【0177】
【0178】
図38に、1時間結晶成長させた後のサファイア基板表面のSEM写真を示す。図示のとおり、サファイア基板上に堆積物が確認されたことから、この堆積物をSEM-EDSで元素分析した。
【0179】
図39に、
図38の堆積物のSEM-EDSマッピング像(写真)を示す。
図39左上は、FE-SEM像(写真)である。
図39右上は、O-K像(写真)である。
図39左下は、Al-K像(写真)である。
図39右下は、Ga-L像(写真)である。図示のとおり、堆積物の部分でガリウム及び酸素が検出されたことから、この堆積物は酸化ガリウムであり、本実施例における酸化ガリウムの生成が確認できた。また、堆積物以外の領域でアルミを検出したが、これは、基板であるサファイア由来と推定される。
【0180】
図40のグラフに、前述のSEM-EDSによる元素分析(EDS線分析)結果を示す。同グラフにおいて、横軸は、上の写真に示すライン上の距離[μm]であり、縦軸はピーク強度(相対値)である。同グラフにおいて、一番上のスペクトルは、Al-Kのスペクトルである。真ん中のスペクトルは、O-Kのスペクトルである。一番下のスペクトルは、Ga-Lのスペクトルである。
図40に示すとおり、堆積物の部分でガリウムの強度が上昇していたことから、この堆積物は酸化ガリウムであり、本実施例における酸化ガリウムの生成が確認できた。
【0181】
図41に、
図38のサファイア基板上における、
図39~40とは別の他の領域(表面に薄く堆積物が見られた領域)のSEM-EDSマッピング像(写真)を示す。
図41左上は、FE-SEM像(写真)である。
図41右上は、Al-K像(写真)である。
図41左下は、Ga-L像(写真)である。
図41右下は、O-K像(写真)である。図示のとおり、表面に薄く堆積物が見られた領域でもガリウムが検出されたことから、この堆積物は酸化ガリウムであり、酸化ガリウムの生成が確認できた。
以上のように、本発明によれば、ハロゲン元素を含まない原料を使用可能で、かつ、高速での結晶成長が可能である金属酸化物結晶の製造方法、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板の製造方法、半導体装置の製造方法、金属酸化物結晶、金属酸化物エピタキシャル結晶積層基板、半導体装置、及び金属酸化物結晶製造装置を提供することができる。本発明の金属酸化物結晶は、例えば、発光ダイオード、レーザダイオード等の光デバイス;整流器、バイポーラトランジスタ等の電子デバイス;温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視-紫外光検出器等の半導体センサ等に用いることができる。ただし、本発明は、前述の用途には限定されず、広い分野に適用可能である。