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特開2023-4470キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法
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  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図1
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図2
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図3
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図4
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図5
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図6
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図7
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図8
  • 特開-キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004470
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】キャパシタ用電極及びキャパシタ用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/26 20130101AFI20230110BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230110BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20230110BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20230110BHJP
【FI】
H01G11/26
H01G11/86
H01G11/70
H01G11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106144
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 達也
(72)【発明者】
【氏名】種村 眞幸
(72)【発明者】
【氏名】川崎 晋司
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽祐
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AB02
5E078AB03
5E078BA12
5E078BA27
5E078BA75
5E078BB36
5E078BB39
5E078FA05
5E078FA12
5E078FA24
(57)【要約】
【課題】電荷の蓄積に加えて活物質の化学反応により充電することができ、蓄電容量を増加させてエネルギ密度を向上させるとともに、接着剤を不要としつつ十分な量の活物質を強固に保持することができるキャパシタ用電極及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極であって、導電性金属から成る基板4と、基板4の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜5と、炭素膜5に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子6とを有するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極であって、
導電性金属から成る基板と、
前記基板の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜と、
前記炭素膜に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子と、
を有することを特徴とするキャパシタ用電極。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、前記炭素膜内において3次元的に分散して内包されることを特徴とする請求項1記載のキャパシタ用電極。
【請求項3】
前記炭素膜は、結晶質構造又は非晶質構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のキャパシタ用電極。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、Ru、Ni、Ti、Mn、Nb、W、Mo、Ir、Ta、V、Sn、Li又はFeの金属又はその酸化物から成ることを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載のキャパシタ用電極。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、直径が100nm以下の粒子から成ることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載のキャパシタ用電極。
【請求項6】
前記炭素膜の表面で電気二重層が形成される電気二重層キャパシタ、前記電気二重層に加えて前記ナノ粒子を活物質として化学反応させる疑似キャパシタ、又は電気二重層のみ形成される正極側電極を有するとともに前記電気二重層に加えて前記ナノ粒子を活物質として化学反応させる負極を有するハイブリッドキャパシタに適用されたことを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載のキャパシタ用電極。
【請求項7】
電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極の製造方法であって、
導電性金属から成る基板の表面上に炭素材を膜状に形成して炭素膜を形成するとともに、金属又はその酸化物から成るナノ粒子を前記炭素膜に内包することを特徴とするキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項8】
前記炭素膜は、物理成膜法などの乾式法又は表面化工法により形成されることを特徴とする請求項7記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項9】
前記基板にエネルギ粒子を照射することにより、前記基板の表面に円錐状の凹凸を形成させて起毛化を生じさせると同時に、又は起毛化を生じさせた後、炭素及び金属を供給し、起毛化を生じさせた前記基板の表面に対して前記ナノ粒子が内包された前記炭素膜を形成することを特徴とする請求項8記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項10】
前記エネルギ粒子の照射により、前記基板の表面に円錐状の凹凸を形成させる起毛化と、前記ターゲットからナノ粒子を形成するナノ粒子化と、前記基板の表面に対して前記ナノ粒子が内包された前記炭素膜を形成する成膜化とを同時に行わせることを特徴とする請求項9記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの一つである電気二重層キャパシタは、電極の表面に電荷を蓄積して充電可能とされており、化学反応を伴わないため、急速充電やサイクル寿命の長さ、発火の危険性が低いといった特性を有しており、自動車や携帯端末等の用途が期待されている。しかし、このような電気二重層キャパシタは、電池と比較すると、エネルギ密度が低く蓄電容量が小さいことから、従来、疑似キャパシタやハイブリッドキャパシタと称されるものが提案されている。
【0003】
従来の疑似キャパシタとして、例えば特許文献1にて開示されているように、表面に電荷を蓄積可能な炭素ネットワーク上に疑似容量金属酸化物を付着したものが挙げられる。かかる従来の疑似キャパシタによれば、炭素ネットワークの表面に電荷を蓄積して充電可能とされるとともに、その上面に付着された疑似容量金属酸化物を活物質として化学反応させることで充電することができ、蓄電容量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013-502070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、疑似容量金属酸化物(活物質の層)を付着させる面積は、炭素ネットワークの表面積に依存するため、疑似容量金属酸化物の付着面積に限界があるとともに、疑似容量金属酸化物が炭素ネットワークの表面から剥離してしまう可能性があった。また、従来技術においては、炭素ネットワークの表面に対して接着剤を用いて疑似容量金属酸化物を付着する場合、当該接着剤により送電時の電気抵抗が大きくなってしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電荷の蓄積に加えて活物質の化学反応により充電することができ、蓄電容量を増加させてエネルギ密度を向上させるとともに、接着剤を不要としつつ十分な量の活物質を強固に保持することができるキャパシタ用電極及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極であって、導電性金属から成る基板と、前記基板の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜と、前記炭素膜に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のキャパシタ用電極において、前記ナノ粒子は、前記炭素膜内において3次元的に分散して内包されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のキャパシタ用電極において、前記炭素膜は、結晶質構造又は非晶質構造を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載のキャパシタ用電極において、前記ナノ粒子は、Ru、Ni、Ti、Mn、Nb、W、Mo、Ir、Ta、V、Sn、Li又はFeの金属又はその酸化物から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載のキャパシタ用電極において、前記ナノ粒子は、直径が100nm以下の粒子から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載のキャパシタ用電極において、前記炭素膜の表面で電気二重層が形成される電気二重層キャパシタ、前記電気二重層に加えて前記ナノ粒子を活物質として化学反応させる疑似キャパシタ、又は電気二重層のみ形成される正極側電極を有するとともに前記電気二重層に加えて前記ナノ粒子を活物質として化学反応させる負極を有するハイブリッドキャパシタに適用されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能なキャパシタ用電極の製造方法であって、導電性金属から成る基板の表面上に炭素材を膜状に形成して炭素膜を形成するとともに、金属又はその酸化物から成るナノ粒子を前記炭素膜に内包することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のキャパシタ用電極の製造方法において、前記炭素膜は、物理成膜法などの乾式法又は表面化工法により形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のキャパシタ用電極の製造方法において、前記基板にエネルギ粒子を照射することにより、前記基板の表面に円錐状の凹凸を形成させて起毛化を生じさせると同時に、又は起毛化を生じさせた後、炭素及び金属を供給し、起毛化を生じさせた前記基板の表面に対して前記ナノ粒子が内包された前記炭素膜を形成することを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のキャパシタ用電極の製造方法において、前記エネルギ粒子の照射により、前記基板の表面に円錐状の凹凸を形成させる起毛化と、前記ターゲットからナノ粒子を形成するナノ粒子化と、前記基板の表面に対して前記ナノ粒子が内包された前記炭素膜を形成する成膜化とを同時に行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜と、炭素膜に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子とを有するので、炭素膜の表面に対する電荷の蓄積に加えて活物質としてのナノ粒子の化学反応により充電することができ、蓄電容量を増加させてエネルギ密度を向上させるとともに、接着剤を不要としつつ多量の活物質としてのナノ粒子を強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るキャパシタ用電極が適用されるキャパシタを示す模式図
図2】同キャパシタ用電極(負極)を示す拡大図
図3】同キャパシタ用電極(正極)を示す拡大図
図4】同キャパシタ用電極に対するサイクリックボルタンメトリー法による測定結果を示すグラフ
図5】同キャパシタ用電極の表面を示す顕微鏡写真
図6】同キャパシタ用電極の表面の所定部位を示す顕微鏡写真
図7図6のX部を拡大させた顕微鏡写真
図8】同キャパシタ用電極を製造するための製造装置を示す模式図
図9】同キャパシタ用電極をハイブリッドキャパシタに適用した状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るキャパシタ用電極は、電圧印可に伴って表面に電荷が蓄積されて充電可能な電極から成り、図1に示すように、キャパシタ1の正極側電極2及び負極側電極3に適用されるものである。かかるキャパシタ1は、正極側電極2及び負極側電極3と、電解液Qを収容したケースCと、ケースC内を正極側と負極側とで区分けするセパレータSと、正極側電極2及び負極側電極3と接続される電源Eとを有して構成されている。
【0020】
正極側電極2は、図1、2に示すように、導電性金属(本実施形態においてはAu(金))から成る基板4と、炭素膜5と、ナノ粒子6とを有し、電源Eに電気的に接続されている。かかる正極側電極2は、電源Eにより電圧が印可されると、電解液Q中のイオンが炭素膜5の表面にプラスの電荷が吸着して電気二重層が形成されることにより充電(蓄電)されるようになっている。
【0021】
負極側電極3は、図1、3に示すように、導電性金属(本実施形態においてはAu(金))から成る基板4と、炭素膜5と、ナノ粒子6とを有し、電源Eに電気的に接続されている。かかる負極側電極3は、電源Eにより電圧が印可されると、電解液Q中のイオンが炭素膜5の表面にマイナスの電荷が吸着して電気二重層が形成されることにより充電(蓄電)されるようになっている。
【0022】
炭素膜5は、基板4の表面に形成された炭素材(C)の被膜から成り、本実施形態においては、分子欠陥及び不規則性の構造を有する同素体の全てを含むアモルファスカーボンから成る。なお、炭素膜5は、アモルファスカーボンに代えて、結晶質構造を有する炭素材であってもよく或いは分子欠陥又は不規則性の何れか一方の構造とされる非晶質構造を有する炭素材であってもよい。
【0023】
ナノ粒子6は、炭素膜5に内包(内在)された金属又はその酸化物から成るもので、図2、3に示すように、炭素膜5内において3次元的に分散して内包されている。このナノ粒子6は、直径が100nm以下の粒子から成り、例えばRu、Ni、Ti、Mn、Nb、W、Mo、Ir、Ta、V、Sn、Li又はFeの金属又はその酸化物から成るものが好ましい。
【0024】
また、本実施形態に係るナノ粒子5は、活物質として機能するもので、化学反応(電解質Q中のイオンと活物質との間の電子授受反応及び活物質内拡散反応)することにより蓄電可能とされている。すなわち、本実施形態に係るキャパシタ用電極(正極側電極2及び負極側電極3)によれば、炭素膜5によって、電気二重層の形成なる静電的な反応が行われ、且つ、炭素膜5内のナノ粒子5によって、化学反応(活物質と電解質Q中のイオンの電子授受反応及び活物質内拡散反応)が行われるので、蓄電容量を増大させることができる。
【0025】
次に、本実施形態に係るキャパシタ用電極の製造方法について説明する。
先ず、図8に示すように、載置台D上に金(Au)から成る基板4を載置するとともに、その隣接位置にターゲットTを取り付ける。かかるターゲットTは、炭素材(C)から成る炭素材プレートTaの所定位置にナノ粒子6の材質から成る材料プレートTbが形成されたもので、本実施形態においては材料プレートTbがニッケル(Ni)から成るものとされている。
【0026】
そして、載置台Dの表面に対して45度の角度からエネルギ粒子P(例えばアルゴンイオン)を照射する。イオン照射ではスパッタリングと称される表面構成元素の叩き出し現象が生じ、基板4の表面及びターゲットTがスパッタリングされる。かかるスパッタリングにおいては、炭素材プレートTa及び材料プレートTbを含むターゲットTの所定範囲と基板4の表面とに対してエネルギ粒子Pが45度の入射角度で照射されるので、基板4の表面を凹凸加工すると同時に、炭素材プレートTaから炭素の粒子及び材料プレートTbからナノ粒子6をそれぞれ基板4上に積層させ、基板4の表面にナノ粒子6を内包した炭素膜5を形成することができる。なお、本発明は、図8で示す装置にて製造されるもの限定されず、スパッタリング中に、又はスパッタリング後に、例えば真空蒸着源、アークプラズマ成膜源などの成膜装置から炭及び金属(酸化物)を同時に供給するものであってもよい。
【0027】
走査型電子顕微鏡でスパッタリング後の基板4の表面を観察すると、図5に示すように、円錐状の凹凸が密に形成されており、各円錐は長さはおおよそ5μm以下であった。また、特定の円錐について観察すると、図6の符号Xの部位について、図7に示すように、炭素膜5を構成する炭素材(C)、基板4を構成する金(Au)及びナノ粒子6を構成する直径約2nmのニッケル(Ni)の存在が原子間距離を測定することにより確かめられた。なお、ナノ粒子6は、直径が100nm以下(1~10nm程度が好ましい)の粒子であれば、他の金属又はその酸化物の粒子であってもよい。
【0028】
したがって、スパッタリングによって、起毛化された基板4の表面にナノ粒子6としてのニッケル(Ni)を内包した炭素材(C)が成膜されていることがわかる。このように、本実施形態においては、スパッタリングにより、基板4の表面に円錐状の凹凸を形成させる起毛化と、ターゲットTからナノ粒子6を形成するナノ粒子化と、基板4の表面に対してナノ粒子6が内包された炭素膜5を形成する成膜化とを同時に行わせることができる。
【0029】
このようにして製造されたキャパシタ用電極を正極側電極2及び負極側電極3(図1参照)としてキャパシタ1に適用し、サイクリックボルタンメトリー法により電圧及び電流を測定して特性評価すると、図4で示すような結果が得られた。なお、同図においては、ナノ粒子6(ニッケル)が炭素膜5に内包されていないものも比較例として測定し、その特性をグラフbとして表示するとともに、ナノ粒子6が炭素膜5に内包された実施例の特性をグラフa及び静電容量(電気二重層容量)をグラフcとした。
【0030】
かかるグラフから分かるように、実施例及び比較例の両方において、電気二重層キャパシタとしての特性領域があり、特に実施例においては、電気二重層キャパシタとしての蓄電容量が比較例より向上している。これは、100nm(本実施形態においては1~2nm)以下のナノ粒子6による表面積効果によるものと考えられる。
【0031】
また、実施例について、kV(本実施形態の如くニッケルをナノ粒子6としたものは、約0.35V)以降においては化学反応(ファラデー反応)による典型的なピーク(図4において符号Wで示す化学的電気容量の部位)が見られ、化学反応(電解質Qと活物質との間の電子授受反応及び活物質内拡散反応)による蓄電が行われることが分かる。したがって、本実施形態に係るキャパシタ用電極によれば、電源Eにて特定値kV以下の電圧を印可することにより、炭素膜5の表面で電気二重層が形成される電気二重層キャパシタに適用することができるとともに、電源Eにて特定値kV以上の電圧を印可することにより、電気二重層に加えてナノ粒子6を活物質として化学反応させる疑似キャパシタに適用することができる。
【0032】
さらに、図9に示すように、正極側電極2に代えて、例えば活性炭から成る正極側電極8とすることにより、ハイブリッドキャパシタ1’に適用することができる。このハイブリッドキャパシタ1’は、電気二重層のみ形成される正極側電極9を有するとともに電気二重層に加えてナノ粒子6を活物質として化学反応させる負極側電極3を有するものである。なお、正極側電極8は、集電電極7を介して電源Eに接続されている。
【0033】
しかるに、本実施形態においては、炭素及びナノ粒子の材料を有するターゲットTにエネルギ粒子Pを照射してスパッタリングすることにより、基板4の表面に対してナノ粒子6が内包された炭素膜5を形成しているが、物理成膜法などの乾式法又は表面化工法により炭素膜5を形成するものであれば、いずれの製造方法であってもよい。すなわち、本実施形態に係るキャパシタ用電極の製造方法は、導電性金属から成る基板4の表面上に炭素材を膜状に形成して炭素膜5を形成するとともに、金属又はその酸化物から成るナノ粒子6を炭素膜5に内包するものであれば、いずれの方法であってもよい。
【0034】
本実施形態によれば、基板4の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜5と、炭素膜5に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子6とを有するので、炭素膜5の表面に対する電荷(表面電荷)の蓄積に加えて活物質としてのナノ粒子6の化学反応により充電することができ、蓄電容量を増加させてエネルギ密度を向上させるとともに、接着剤を不要としつつ十分な量の活物質としてのナノ粒子6を強固に保持することができる。
【0035】
特に、本実施形態に係るナノ粒子6は、炭素膜5内において3次元的に分散して内包されるので、より多量のナノ粒子6を炭素膜5内に分散して保持させることができ、蓄電容量をより一層増加させることができる。また、アモルファス構造を有する炭素材から成る炭素膜5を用いることにより、ナノ粒子6を活物質として化学反応をより十分活良好に行わせることができる。
【0036】
さらに、スパッタリングにより、基板4の表面に円錐状の凹凸を形成させる起毛化と、ターゲットTからナノ粒子6を形成するナノ粒子化と、基板4の表面に対してナノ粒子6が内包された炭素膜5を形成する成膜化とを同時に行わせることができるので、製造コストを低減させることができ、安価なキャパシタ用電極を提供することができる。またさらに、ナノ粒子6は、直径が100nm以下の粒子から成るものとされるので、炭素膜5内に確実に埋没状態とすることができ、良好に内包させることができる。
【0037】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば基板4を他の材質の導電性金属としてもよく、ナノ粒子6は、化学的エネルギを蓄積可能な他の金属又はその酸化物から成る粒子としてもよい。また、照射されるエネルギ粒子Pは、アルゴンイオン等のイオンに限らず、電子線、レーザ又は中性粒子等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
導電性金属から成る基板と、基板の表面に形成された炭素材の被膜から成る炭素膜と、炭素膜に内包された金属又はその酸化物から成るナノ粒子とを有するキャパシタ用電極及びその製造方法であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 キャパシタ
1’ ハイブリッドキャパシタ
2 正極側電極
3 負極側電極
4 基板
5 炭素膜
6 ナノ粒子
7 正極側集電電極
8 負極側集電電極
9 正極側電極
E 電源
S セパレータ
D 載置台
T ターゲット
Ta 炭素材プレート
Tb 材料プレート
Q 電解液
C ケース
P エネルギ粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9