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特開2023-44944風味油脂組成物、食品、及び食品の風味付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044944
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】風味油脂組成物、食品、及び食品の風味付与方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20230327BHJP
【FI】
A23L27/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153081
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391036806
【氏名又は名称】和弘食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岸 健汰
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕伴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和子
(72)【発明者】
【氏名】松原 順一
(72)【発明者】
【氏名】長濱 晋也
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB02
4B047LB08
4B047LG05
4B047LG10
4B047LG55
4B047LP01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、魚節の出汁風味を有し、魚節由来の苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられた風味油脂組成物を提供することである。また苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられた風味油脂組成物を用いることで、風味が良好な食品、及び食品の風味付与方法を提供することである。
【解決手段】 魚節の油溶性成分を含有する風味油脂組成物であって、メチルブタナールを0.13~1.70ppm含有する、風味油脂組成物とする。また、風味油脂組成物は、油脂による魚節の抽出物を含むことが好ましく、前記魚節が、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鯵節、鰯節から選ばれる1種又は2種以上を含む魚節であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚節の油溶性成分を含有する風味油脂組成物であって、メチルブタナールを0.13~1.70ppm含有する、風味油脂組成物。
【請求項2】
油脂による魚節の抽出物を含む、請求項1に記載の風味油脂組成物。
【請求項3】
前記抽出物と油脂を含む、請求項2に記載の風味油脂組成物。
【請求項4】
前記魚節が、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鯵節、鰯節から選ばれる1種又は2種以上を含む魚節である、請求項1~3のいずれか1項に記載の風味油脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の風味油脂組成物を含有している、及び/又は、付着している、食品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の風味油脂組成物を、食品に混合する、及び/又は、食品に付着させる、食品の風味付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節類の油溶性成分を含有する風味油脂組成物に関するものであり、風味油脂組成物を用いた食品、及び食品の風味付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚節等の節類は和食風味の基本食材であり、和食調理において、熱水で出汁を抽出してつゆやみそ汁などに利用されることが多い。しかし、これらの出汁抽出物は、水溶液であるため、そのままでは油溶性の食品に配合することができなかった。そこで、これまでに魚節の風味を有する油脂が提案されている。
【0003】
特許文献1には、節類を、塩分を含有するアルコール水溶液で抽出して抽出液を得、この抽出液を食用油脂と接触させて、魚節類の香味成分を食用油脂に付与することで、魚節類香味オイルを得る方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、魚節を熱水で抽出した残渣を乾燥させて、100℃以上140℃未満の温度でオイル抽出した香味油の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-180247号公報
【特許文献2】特開2018-174725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、魚節から得られた風味油脂組成物は、魚節の出汁風味を有するだけでなく、苦みや魚の生臭さの風味が強調されており、食品によっては、風味の相性が合わないことが多かった。また、特許文献1や2の方法では、原料のロット等により、抽出効率にばらつきが生じ、結果的に風味がばらつく問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、魚節の出汁風味を有し、魚節由来の苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられた風味油脂組成物を提供することを目的とする。また苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられた風味油脂組成物を用いることで、風味が良好な食品、及び食品の風味付与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、風味油脂組成物中のメチルブタナール量をコントロールすることで、苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられ、出汁風味を有する風味油脂組成物が得られることを見出し、以下の本発明を完成させた。
[1] 魚節の油溶性成分を含有する風味油脂組成物であって、メチルブタナールを0.13~1.70ppm含有する、風味油脂組成物。
[2] 油脂による魚節の抽出物を含む、[1]の風味油脂組成物。
[3] 前記抽出物と油脂を含む、[2]の風味油脂組成物。
[4] 前記魚節が、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鯵節、鰯節から選ばれる1種又は2種以上を含む魚節である、[1]~[3]のいずれかの風味油脂組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかの風味油脂組成物を含有している、及び/又は、付着している、食品。
[6] [1]~[4]のいずれかの風味油脂組成物を、食品に混合する、及び/又は、食品に付着させる、食品の風味付与方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、苦み及び/又は魚の生臭さの風味を抑えた出汁風味が得られる風味油脂組成物を提供することができる。また、風味油脂組成物を用いることで風味良好な食品を得ることができる。なお、風味油脂組成物の苦み及び/又は魚の生臭さの風味を抑える効果は、風味油脂組成物以外の食材の苦み、魚の生臭さ風味を抑える効果も有することが期待できる。さらに、メチルブタナールの含有量をコントロールした本発明により、風味油脂組成物のロットによる風味のばらつきを減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の風味油脂組成物、食品、食品の製造方法、食品の風味付与方法について、詳説する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、適宜「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0011】
<風味油脂組成物>
(魚節の油溶性成分/抽出物)
本発明の風味油脂組成物は、魚節の油溶性成分を含有する風味油脂組成物であって、メチルブタナールを0.13~1.70ppm含有する。
【0012】
魚節は、身卸しした魚を煮熟し乾燥させた食品である。例えば、カツオを原料とし、魚体から頭、鰭、腹皮と呼ばれる腹部の脂肪の多い部分を切り落とし、三枚以上におろし、「節」と呼ばれる舟形に整形してから加工された物は、鰹節と言われている。その他、ソウダガツオを原料に宗田節、サバやゴマサバを原料に鯖節、シビを原料に鮪節、アジを原料に鯵節、カタクチイワシ、マイワシなどを原料に鰯節が製造されている。本発明では、これらの魚節から選ばれる1種又は2種以上の魚節の油溶性成分を含有することができる。好ましくは、鰹節及び/又は鯖節の油溶性成分を含有する。
【0013】
魚節の油溶性成分は、油脂により抽出したものを用いることができる。なお、魚節は、予め細かくしたものが、抽出効率の点で好ましく、また、水抽出した残渣を用いることができる。例えば、魚節を削り節、あるいは粉砕し、80~150℃の油脂で抽出を行い、油脂中に油溶性成分を溶解させた抽出物として得ることができる。抽出に用いる油脂は、食用油脂として一般的に用いられる油脂を使用することができる。食用油脂としては、動植物油脂や動植物油脂を分別、水素添加、エステル交換などの加工を行った油脂を用いることができる。動植物油脂としては、大豆油、菜種油、米油、ひまわり油、コーン油、紅花油、綿実油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、オリーブ油などが挙げられる。動植物油脂を加工した油脂としては、パームオレイン等のパーム油の分別油等が挙げられる。これらの油脂は、精製油、及び/又は、未精製油を用いることができるが、風味への影響が少ないことから、精製油であることが好ましい。精製油は、脱色、脱臭工程を経たものが好ましい。なお、抽出に用いる油脂は、これらの油脂を単独で、あるいは2種以上ブレンドして用いることができる。
【0014】
本発明の風味油脂組成物中に存在するメチルブタナールは、魚節の油溶性成分に含まれる成分であり、2-メチルブタナールと3-メチルブタナールが存在し、本発明においては、2-メチルブタナールと3-メチルブタナールの合計濃度をメチルブタナールの合計濃度とする。メチルブタナールは、容易に分析・同定ができ、魚節の油溶性風味の強さと相関がみられる成分である。そのため、メチルブタナールが増加するに伴い、組成物の魚節の油溶性風味が強くなる。また、メチルブタナールが1.70ppm以下の低濃度の領域では、苦みや魚の生臭さの風味が抑えられる。したがって、本発明の風味油脂組成物は、メチルブタナールを0.13~1.70ppm含有する。本発明の風味油脂組成物は、メチルブタナールを0.2~1.6ppm含有することが好ましく、0.50~1.50ppm含有することがより好ましく、0.60~1.40ppm含有することがさらに好ましい。なお、メチルブタナールは魚節の油溶性成分として含有することが好ましいが、魚節の油溶性成分以外に、メチルブタナールを別途添加してもよい。その場合、風味油脂組成物中のメチルブタナールにおいて、魚節の油溶性成分由来のメチルブタナールが30質量%以上であれば、魚節の油溶性由来成分との相乗効果もあり、好ましい。風味油脂組成物中のメチルブタナールにおいて、魚節の油溶性成分由来のメチルブタナールが40~100質量%がより好ましい。また、魚節の油溶性成分以外のメチルブタナールは、後述する香料中の成分として添加してもよい。
【0015】
なお、メチルブタナールは、ダイナミックヘッドスペース-ガスクロマトグラフィー質量スペクトル分析法(DHS-GC-MS)を用いて分析することができる。
【0016】
(油脂)
本発明の風味油脂組成物は、メチルブタナールを含有する魚節の抽出物を、油脂で希釈し、風味油脂組成物中のメチルブタナールの含有量が0.13~1.70ppmとすることが、容易に風味油脂組成物の風味をコントロールすることができ、好ましい。希釈する油脂は、食用油脂として一般的に用いられる油脂を使用することができ、一つの種類の油脂を単独で、あるいは複数の種類の油脂をブレンドして用いることができる。食用油脂としては、動植物油脂や動植物油脂を分別、水素添加、エステル交換などの加工を行った油脂を用いることができる。動植物油脂としては、大豆油、菜種油、米油、ひまわり油、コーン油、紅花油、綿実油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、オリーブ油、乳脂、バターオイル、豚脂、牛脂などが挙げられる。動植物油脂を加工した油脂としては、パームオレイン等のパーム油の分別油等が挙げられる。これらの油脂の風味油脂組成物中の含有量は、好ましくは0~90質量%であり、より好ましくは0~40質量%である。
【0017】
また、これらの油脂は、精製油、及び/又は、未精製油を用いることができるが、風味への影響が少ないことから、精製油であることが好ましい。油脂の90質量%以上が精製油であることがより好ましく、全て精製油であることが最も好ましい。精製油は、脱色、脱臭工程を経たものが好ましい。
【0018】
本発明において、風味油脂組成物は、20℃で流動性があることで、使用時のハンドリングが容易になる。そのため、抽出物に用いる油脂、希釈に用いる油脂は、20℃で流動性がある油脂が好ましく、20℃で液状であることがより好ましい。
【0019】
(魚節の油溶性成分以外の香味成分)
本発明の風味油脂組成物は、魚節の油溶性成分以外の香味成分を含有することができる。魚節の油溶性成分以外の香味成分としては、香料を用いることができる。また、前述の油脂において、風味を有する油脂が挙げられる。これらの成分は、風味油脂組成物中に、0~10質量%含有することが好ましく、0~3質量%含有することがより好ましく、0~1質量%含有することがさらに好ましい。
【0020】
香料としては、天然香料や合成香料を挙げることができる。香料の風味としては、例えば、魚介類、ハーブやスパイスなどの香辛料、ガーリック、ねぎ、オニオンなどの野菜類、バター、クリームなどの乳脂類、オレンジやレモンなどの柑橘類等の風味を有するものを挙げることができる。これらの風味は、未加工の風味の他、ロースト(焙煎)したもの、燻製したもの、あるいはフライして得られた風味のものも含まれる。なお、本発明においては、これら香料に由来する風味が付与された食用油脂(フレーバーオイル)も前記香料に含まれる。風味を付与された油脂としては、好ましくは、ガーリックオイル、ネギオイル、ジンジャーオイル、柑橘系オイル、中華風味油、ラー油等が挙げられる。
【0021】
風味を有する油脂としては、好ましくは、焙煎菜種油、焙煎ごま油等の焙煎油、バターオイル、オリーブオイル等が挙げられる。
【0022】
(その他の成分)
本発明の油脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の成分以外の成分を加えることができる。例えば、一般的な食品に用いられる食品添加物などである。食品添加物としては、例えば、風味調整剤、酸化防止剤、乳化剤、シリコーンオイル、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられる。
【0023】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。
【0024】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。乳化剤の添加量は、風味へ影響しない点から乳化剤全体として油脂組成物中の2質量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.01~1質量%である。
【0025】
シリコーンオイルとしては、食品用途で市販されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で800~5000mm2/sのものが挙げられる。シリコーンオイルの動粘度は、特に800~2000mm2/s、さらに900~1100mm2/sであることが好ましい。ここで、「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含んでいてもよい。
【0026】
<食品>
本発明の食品は、前述の風味油脂組成物を含有、及び/又は付着されたものである。前述の風味油脂組成物は、魚節の出汁風味を有し、苦み及び/又は魚の生臭さの風味が抑えられているため、それを用いた食品も良好な風味を有している。
本発明の風味油脂組成物の食品中の含有量は、特に限定するものではないが、食品の原材料中の含有量は、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
【0027】
<食品の風味付与方法>
本発明の食品の風味付与方法は、前述の風味油脂組成物を、食品に混合する、及び/又は食品に付着させる方法である。混合方法としては、風味油脂組成物以外の食品原料の一部、あるいは全部と混合して用いることができる。また、付着方法としては、食品の加熱料理時に、炒め油・離型油として用いる、あるいは食品にかける、スプレーするなどの方法を用いることができる。
【実施例0028】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
[メチルブタナール含有量]
抽出物N-C、N-S、W-S、M、油脂1~8、香料中のメチルブタナール(2-メチルブタナール、及び3-メチルブタナール)の定量方法は、以下の条件に従って、ダイナミックヘッドスペース-ガスクロマトグラフィー質量スペクトル分析法(DHS-GC-MS)で測定した。
なお、定量値については、2-メチルブタナール、3-メチルブタナールともに定量イオン質量 m/z=58における外部標準(東京化成工業社製 商品名「2-Methylbutyraldehyde」および「3-Isovaleraldehyde」)を用いて、定量値を算出した。

(サンプリング方法)
容器(スクリューネックバイアル、10mL、GERSTEL社製)内で、検体1.0gを70℃に加温(5分保持)し、窒素下でパージした。揮発した成分をTenaxTA(TDU TenaxTAガラスチューブ、GERSTEL社製)にトラップした。トラップした成分を240℃、ヘリウム下にて、加熱脱着してCIS(Cooled Injection System、GERSTEL社製)内のTenaxTA(TDU TenaxTAガラスチューブ、GERSTEL社製)にトラップした。CIS内を250℃まで加熱し、揮発した成分をGC/MSへ導入した。
(GC-MS装置/条件)
装置:GC Agilent 7890B / MS 5977B / GERSTEL ODP TDU CIS
カラム:Agilent DB-WAX(長さ60m×内径0.25mm×膜厚0.25μm)
オーブン:40℃(10分保持)→8℃/分で昇温→240℃(5分保持)
分析時間:40分
イオン化法:EI法(70eV)
イオン源:230℃
四重極:150℃
測定モード:SCAN
ODP/MSスプリット比:1:1
【0030】
[抽出物N-C、N-S、W-S、M]
(抽出物N-C)
精製キャノーラ油72gに粉砕した鰹節16gを入れ、室温から110℃まで加熱撹拌した。110℃で30分加熱撹拌した後に、140℃に昇温し、140℃で15分間加熱撹拌した。その後、ろ過し、抽出物N-C(メチルブタナール含有量1.180質量ppm)とした。
(抽出物N-S)
精製大豆油72gに粉砕した鰹節16gを入れ、室温から110℃まで加熱撹拌した。110℃で30分加熱撹拌した後に、140℃に昇温し、140℃で15分間加熱撹拌した。その後、ろ過し、抽出物N-S(メチルブタナール含有量1.608質量ppm)とした。
(抽出物W-S)
精製大豆油175kgに、さば厚削り9.1kg、かつお厚削り9.1kg、鰹節粗砕品2.8kg、さば粗砕品2.8kg、煮干粗砕品2.8kg、食塩0.35kg、酸化防止剤0.105kgを添加し、室温から120℃まで加熱した。120℃達温後、放冷し、ろ過した抽出物W-S(メチルブタナール含有量1.995質量ppm)を得た。
(抽出物M)
市販のカツオブシオイル(メチルブタナール含有量7.35質量ppm)
【0031】
[油脂1、油脂2~7(風味油脂組成物)]
表1の配合で、油脂1~7を調合した。各試料のメチルブタナール含有量を表1に示した。
【0032】
【表1】
※香料:メチルブタナール72.92ppm
【0033】
[風味評価]
(卵焼き)
「無添 天然素材だけの和風だしパックです。」(カドヤ株式会社製:原材料 鰹、宗田鰹、鯖、鰯)を4倍容量の熱湯に入れ、時々撹拌しながら10分間放置する。パックに含む水分を絞り、濃厚だしを作った。
食塩を水に溶かし、濃厚だし、ザルで濾した全卵を加え、よく混ぜながら、油脂を加えた。混合液をバットに入れ、スチームコンベクションで加熱し(設定温度140度、スチーム、加熱時間14分)、卵焼きを得た。原材料の配合量、使用した油脂を、表2に示した。
パネラー5名で、下記の評点で卵焼きの風味評価を行った。なお、「出汁風味」「嫌な風味」において、試料2の卵焼きを1点とし、試料6の卵焼きを5点として、5人の合議で評価した。結果を表2に示した。
【0034】
(出汁風味)
5:出汁風味を強く感じ、良好である
4:出汁風味をやや強く感じ、良好である
3:出汁風味を感じ、良好である
2:出汁風味をやや弱く感じるが、許容範囲である
1:出汁風味を弱く感じ、物足りない風味である
【0035】
(嫌な風味)
5:苦みと魚の生臭さを強く感じ、許容範囲外である
4:苦みと魚の生臭さを感じ、さらに、苦み、又は魚の生臭さのいずれかを強く感じ、許容範囲外である
3:苦みと魚の生臭さを感じるが、許容範囲である
2:苦み、又は魚の生臭さを感じるが、良好である
1:苦み、もしくは魚の生臭をほとんど感じず、良好である
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示す通り、メチルブタナールを0.14ppm以上含有する試料(風味油脂組成物)は出汁風味の強度が許容範囲、もしくは良好である。一方、メチルブタナールを約2ppm含有する試料6の卵焼きは、嫌な風味が許容範囲外である。なお、風味油脂組成物を含まない油脂1の参考例1は、メチルブタナールを含む油脂2~4、7、8よりも嫌な風味の強度が強いことから、メチルブタナールを一定量含む油脂は、油脂以外の食材から生じる嫌な風味を抑制できることが確認できる。