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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045196
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230327BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20230327BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C23C16/44 E ZAB
B01D53/68 100
B01D53/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153462
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小森 栄一
(72)【発明者】
【氏名】岡部 庸之
【テーマコード(参考)】
4D002
4K030
【Fターム(参考)】
4D002AA18
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA70
4D002EA08
4D002GA03
4D002GB04
4K030AA03
4K030EA13
4K030KA41
(57)【要約】
【課題】処理チャンバからの排気ガスに含まれるガスを回収する技術を提供する。
【解決手段】基板の処理を行う処理チャンバと、前記処理チャンバからガスを排気する排気経路に設けられる多孔性配位高分子を含むろ過部と、を備える基板処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理を行う処理チャンバと、
前記処理チャンバからガスを排気する排気経路に設けられる多孔性配位高分子を含むろ過部と、
を備える、
基板処理装置。
【請求項2】
前記ガスは、前記基板に積層する膜を構成する前駆体を含む、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記多孔性配位高分子は、前記前駆体を吸着する、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記排気経路における前記ろ過部の前記処理チャンバの側に排気ポンプを更に備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排気経路における前記ろ過部の前記処理チャンバと反対側に排気ポンプを更に備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記多孔性配位高分子は、交換可能に設けられる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
処理チャンバにおいて原料ガスを用いて基板を処理する工程と、
前記処理チャンバからガスを排気する排気経路に設けられる多孔性配位高分子により、前記原料ガスを吸着する工程と、
を含む、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、未反応の原料ガスやその反応副生成物等を完全に除去することが可能な成膜装置の排気系構造が開示されている。
【0003】
特許文献2には、半導体装置を製造するための基板の処理を行う処理ガスを供給するにあたり、多孔質部材が収容された濃縮タンクと、多孔質部材に吸着された処理ガスを脱離させるように構成された脱離機構と、を備えることが開示されている。特許文献2には、多孔質部材は、キャリアガスと混合された処理ガスを優先的に吸着するように構成された金属有機構造体を含むものであることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、基板が収容されたチャンバに処理ガスを供給するように構成された処理ガス供給部を有する半導体装置を製造するための基板の処理を行う装置が開示されている。特許文献3には、処理ガス供給部は、処理ガスの原料のガス分子を吸着させた金属有機構造体を含む多孔質部材を収容した原料タンクを備える原料カートリッジを有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-214272号公報
【特許文献2】特開2021-075739号公報
【特許文献3】特開2021-077676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、処理チャンバからの排気ガスに含まれるガスを回収する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、基板の処理を行う処理チャンバと、前記処理チャンバからガスを排気する排気経路に設けられる多孔性配位高分子を含むろ過部と、を備える基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、処理チャンバからの排気ガスに含まれるガスを回収する技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る基板処理装置の一例の概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る基板処理装置の一例に用いられる多孔性配位高分子について説明する図である。
図3図3は、第1実施形態に係る基板処理装置の一例に用いられる多孔性配位高分子について説明する図である。
図4図4は、第2実施形態に係る基板処理装置の一例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。なお、理解を容易にするため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0011】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0012】
≪第1実施形態≫
<基板処理装置1>
第1実施形態に係る基板処理装置の一例である基板処理装置1及び基板処理装置1を用いた基板処理方法について説明する。図1は、第1実施形態に係る基板処理装置の一例である基板処理装置1の概略構成図である。
【0013】
基板処理装置1は、基板に金属又は金属化合物等の薄膜を成膜する成膜装置である。基板処理装置1は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、薄膜を成膜する。基板処理装置1は、処理チャンバ10内に置かれた基板に対して原料ガスと反応ガスを供給して、原料ガスが反応ガスと反応して基板上に薄膜を形成する。なお、基板処理装置1は、成膜装置に限らず、基板を処理する装置、例えば、エッチング装置等であってもよい。
【0014】
基板処理装置1は、処理チャンバ10と、原料ガス供給部20と、反応ガス供給部30と、パージガス供給部40と、ガス排気部50と、制御部80と、を備える。各要素について説明する。
【0015】
[処理チャンバ10]
処理チャンバ10は、内部で基板に薄膜を成膜する。処理チャンバ10は、内部に、基板を載置する基板支持部を備える。基板は、基板支持部に載置された状態で処理される。処理チャンバ10は、例えば、バッチ式の成膜装置に用いる場合は、基板支持部として、基板を多段に載置するウエハボードを備えてもよい。また、処理チャンバ10は、例えば、枚葉式の成膜装置に用いる場合は、基板支持部として、基板を上部に載置する載置台を備えてもよい。さらに、例えば、セミバッチ式の成膜装置に用いる場合は、基板支持部として、回転台を備える載置台を備えてもよい。
【0016】
処理チャンバ10には、原料ガス供給部20、反応ガス供給部30及びパージガス供給部40が接続される。原料ガス供給部20から原料ガスが処理チャンバ10に供給される。また、反応ガス供給部30から反応ガスが処理チャンバ10に供給される。さらに、パージガス供給部40からパージガスが処理チャンバ10に供給される。
【0017】
また、処理チャンバ10には、ガス排気部50が接続される。ガス排気部50は、処理チャンバ10の内部のガスを排気する。ガス排気部50は、処理チャンバ10の内部のガスを排気して、処理チャンバ10の内部を、例えば、真空状態にする。また、ガス排気部50は、基板処理後に処理チャンバ10の内部のガスを排気して、処理チャンバ10の内部に残った原料ガスと処理によって生成された反応生成ガスを排気する。
【0018】
[原料ガス供給部20]
原料ガス供給部20は、薄膜を形成するための原料ガスを処理チャンバ10に供給する。原料ガス供給部20から供給される原料ガスは、基板に成膜する膜によって定まる。原料ガスは、例えば、三塩化アルミニウム(AlCl)、四塩化チタン(TiCl)、五塩化タングステン(WCl)等のガスである。原料ガスは、基板に積層する膜を構成する前駆体を含む。
【0019】
原料ガス供給部20は、原料ガス供給源21と、原料ガス給断バルブ22と、流量調整部23と、ろ過部25と、を備える。なお、原料ガス供給源21から処理チャンバ10までの経路を供給経路Lsという。
【0020】
(原料ガス供給源21)
原料ガス供給源21は、処理チャンバ10に原料ガスを供給する。原料ガス供給源21は、例えば、原料ガスの原料として固体の材料、例えば、固体のハロゲン化金属である三塩化アルミニウム(AlCl)、を用いる場合、は、固体の材料を気化させる加熱装置を備えてもよい。また、例えば、原料ガスの原料を溶媒に溶解させている場合は、直接液体注入(DLI:Direct Liquid Injection)法等により、原料ガスを気化させる気化装置を備えてもよい。さらに、原料ガス供給源21は、原料ガスがガス単体として貯蔵可能である場合は、原料ガスを貯蔵するタンク等の貯蔵装置を備えてもよい。
【0021】
(原料ガス給断バルブ22)
原料ガス給断バルブ22は、原料ガス供給源21から処理チャンバ10への原料ガスの供給及び停止を行う。原料ガス給断バルブ22は、制御部80に接続する。そして、制御部80は、原料ガス給断バルブ22の開閉を制御する。
【0022】
(流量調整部23)
流量調整部23は、原料ガス供給源21から処理チャンバ10に供給される原料ガスの流量を制御する。流量調整部23は、例えば、マスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)である。
【0023】
(ろ過部25)
ろ過部25は、原料ガスに含まれる不純物を除去する。ろ過部25は、供給経路Lsに設けられる。ろ過部25において、不純物を吸着する工程を行う。
【0024】
ろ過部25は、内部に、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)を含むフィルタ251を備える。多孔性配位高分子は、金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)とも呼ばれる。多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子(有機化合物)との配位結合によって構成される金属錯体を含み、この金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する。多孔性配位高分子については、後で詳細を説明する。
【0025】
ろ過部25のフィルタ251に含まれる多孔性配位高分子は、原料ガス供給源21から供給された原料ガスに含まれる不純物を選択的に吸着する。ろ過部25のフィルタ251に含まれる多孔性配位高分子は、原料ガス供給源21から供給された原料ガスに含まれる不純物を選択的に吸着することにより、処理チャンバ10に流入する原料ガスの純度が高くなる。処理チャンバ10に流入する原料ガスの純度が高くなることにより、基板に形成される薄膜の品質を向上できる。
【0026】
原料ガス供給源21から供給された原料ガスの不純物は、例えば、成膜に寄与しない物質全般である。より具体的には、原料ガス供給源21から供給された原料ガスの不純物としては、例えば、炭素、鉄又はクロム等の金属、その他特定の粒子等が考えられる。例えば、DLI法を用いる場合に、溶媒に含まれる炭素が不純物として含まれる場合がある。多孔性配位高分子を含むフィルタ251により、炭素、鉄又はクロム等の金属、その他特定の粒子等の不純物を選択的に除去することにより、処理チャンバ10に供給する原料ガスの純度を高めることができる。
【0027】
[反応ガス供給部30]
反応ガス供給部30は、反応ガスを処理チャンバ10に供給する。反応ガスは、原料ガスと反応して、膜を形成するガスである。例えば、三塩化アルミニウム(AlCl)との反応により窒化アルミニウム(AlN)からなる膜を生成する場合は、反応ガスとしてアンモニア(NH)ガスが用いられる。また、例えば、四塩化チタン(TiCl)との反応により窒化チタン(TiN)からなる膜を生成する場合も、反応ガスとしてアンモニア(NH)ガスが用いられる。
【0028】
反応ガス供給部30は、反応ガス供給源31と、反応ガス給断バルブ32と、流量調整部33と、を備える。
【0029】
(反応ガス供給源31)
反応ガス供給源31は、処理チャンバ10に反応ガスを供給する。反応ガス供給源31は、例えば、反応ガスを貯蔵するタンク等の貯蔵装置を備える。
【0030】
(反応ガス給断バルブ32)
反応ガス給断バルブ32は、反応ガス供給源31から処理チャンバ10への反応ガスの供給及び停止を行う。反応ガス給断バルブ32は、制御部80に接続する。そして、制御部80は、反応ガス給断バルブ32の開閉を制御する。
【0031】
(流量調整部33)
流量調整部33は、反応ガス供給源31から処理チャンバ10に供給される反応ガスの流量を制御する。流量調整部33は、例えば、マスフローコントローラである。
【0032】
[パージガス供給部40]
パージガス供給部40は、パージガスを処理チャンバ10に供給する。パージガスは、処理チャンバ10の内部の原料ガス又は反応ガスを外部に排出する際に供給される。パージガスは、例えば、窒素ガスである。
【0033】
パージガス供給部40は、パージガス供給源41と、パージガス給断バルブ42と、流量調整部43と、を備える。
【0034】
(パージガス供給源41)
パージガス供給源41は、処理チャンバ10にパージガスを供給する。パージガス供給源41は、例えば、パージガスを貯蔵するタンク等の貯蔵装置を備える。
【0035】
(パージガス給断バルブ42)
パージガス給断バルブ42は、パージガス供給源41から処理チャンバ10へのパージガスの供給及び停止を行う。パージガス給断バルブ42は、制御部80に接続する。そして、制御部80は、パージガス給断バルブ42の開閉を制御する。
【0036】
(流量調整部43)
流量調整部43は、パージガス供給源41から処理チャンバ10に供給されるパージガスの流量を制御する。流量調整部43は、例えば、マスフローコントローラである。
【0037】
[ガス排気部50]
ガス排気部50は、処理チャンバ10の内部のガスを外部に排出する。ガス排気部50は、排出バルブ51と、圧力調整部52と、排気ポンプ53と、排ガス処理部54と、ろ過部55と、を備える。なお、処理チャンバ10から排ガス処理部54までの経路を排気経路Leという。
【0038】
(排出バルブ51)
排出バルブ51は、処理チャンバ10から排気ポンプ53への排気ガスの排気及び停止を行う。排出バルブ51は、制御部80に接続する。そして、制御部80は、排出バルブ51の開閉を制御する。
【0039】
(圧力調整部52)
圧力調整部52は、処理チャンバ10の内部の圧力を調整する。圧力調整部52は、例えば、全自動圧力コントローラ(APC:Auto Pressure Controller)である。圧力調整部52により、処理チャンバ10の内部の圧力は、所望の圧力に調整される。
【0040】
(排気ポンプ53)
排気ポンプ53は、処理チャンバ10の内部のガスを排気する。排気ポンプ53が排気するガス(排気ガス)には、原料ガス、反応ガス及びパージガスが含まれる。また、排気ポンプ53が排気するガス(排気ガス)には、原料ガスと反応ガスとが反応して生成した反応副生成物も含まれる。
【0041】
排気ポンプ53は、例えば、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせ等の真空ポンプである。
【0042】
(排ガス処理部54)
排ガス処理部54は、排気ポンプ53から排気された排気ガスを吸着、水洗及び薬液中和処理等を行って、外部、例えば、大気、に放出する。
【0043】
(ろ過部55)
ろ過部55は、排気ガスに含まれる原料ガスを回収する。ろ過部55は、排気経路Leに設けられる。ろ過部55は、内部に、多孔性配位高分子を含むフィルタ551を備える。ろ過部55において、原料ガスを吸着する工程を行う。
【0044】
ろ過部55のフィルタ551に含まれる多孔性配位高分子は、原料ガスを選択的に吸着する。ろ過部55のフィルタ551に含まれる多孔性配位高分子は、原料ガスを選択的に吸着することにより、原料ガスを回収する。すなわち、多孔性配位高分子で形成されたフィルタ551を用いることにより、選択的に原料ガスに含まれる前駆体を吸着して回収できる。
【0045】
フィルタ551は、交換可能に設けられる。原料ガスを吸着したフィルタ551を取り外して、新しいフィルタ551を取り付ける。取り外したフィルタ551から吸着された原料ガスを抽出することにより、排気ガスに含まれる原料ガスを再利用できる。
【0046】
薄膜を成膜するCVDプロセス又はALDプロセスにおいて、原料ガスに含まれる前駆体、例えば、三塩化アルミニウム、について、基板上に成膜される割合は数パーセントに満たない。したがって、原料ガスに含まれる前駆体の利用効率は非常に低くなっている。すなわち、前駆体のほとんどは、処理チャンバ10から排出される。従来は、排出された前駆体は廃棄していた。
【0047】
フィルタ551によって、排気ガスに含まれる前駆体を回収すると共に、回収した前駆体を、加熱等を行うことにより、多孔性配位高分子から脱離することができる。したがって、多孔性配位高分子で形成されたフィルタ551で吸着した前駆体を再度取り出して再利用できる。再利用することにより、従来は廃棄していた前駆体を有効利用できる。
【0048】
なお、上記の説明では、原料ガス、特に、原料ガスに含まれる前駆体の回収について説明したが、回収するガスは原料ガスに限らない。例えば、排気ガスに含まれるガスにおいて、再利用したいガス、例えば、反応ガス、パージガス等、を選択的に吸着する多孔性配位高分子を用いて、再利用したいガスを吸着して回収するようにしてもよい。さらに、ガスに限らず、反応副生成物等の固体を吸着するようにしてもよい。
【0049】
[制御部80]
制御部80は、演算部と、記憶部と、を備えたコンピュータにより構成される。制御部80は、基板処理装置1の各部を制御する。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はこれらの組み合わせを含む。
【0050】
記憶部は、ウエハWの成膜処理に必要な動作を実行するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムを記憶する。プログラムには、例えば処理チャンバ10に対して原料ガスと反応ガスとが交互に供給されるように、原料ガス給断バルブ22、反応ガス給断バルブ32、パージガス給断バルブ42及び排出バルブ51の開閉動作を制御するように構成されたステップ群が含まれる。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納され、記憶媒体からコンピュータにインストールされる。
【0051】
制御部80の処理を説明して、基板を処理する工程について説明する。先ず膜の形成前の準備として、処理チャンバ10に基板を搬入し、制御部80は、処理チャンバ10内の圧力調節、基板の温度調節を行う。そして、制御部80は、排出バルブ51を開けて、排気ポンプ53により排気して、成膜時の圧力に調整する。そして、制御部80は、原料ガス給断バルブ22を開き、他のバルブを閉じて、流量調整部23による流量調節を行いながら原料ガスを処理チャンバ10に供給する。処理チャンバ10の内部では、基板の表面に原料ガスが吸着される。
【0052】
次に、制御部80は、パージガス給断バルブ42と排出バルブ51とを開き、他のバルブを閉じて、パージガスを処理チャンバ10に供給し、処理チャンバ10内の原料ガスをパージガスにより置換する。
【0053】
次に、制御部80は、反応ガス給断バルブ32を開き、他のバルブを閉じて、反応ガスを処理チャンバ10に供給する。処理チャンバ10の内部では、ウエハ表面に吸着された原料ガスと反応ガスとが反応して、薄膜、例えば、1分子層が形成される。そして、パージガス給断バルブ42と排出バルブ51とを開き、他のバルブを閉じて、パージガスを処理チャンバ10に供給し、処理チャンバ10内の反応ガスをパージガスにより置換する。
【0054】
原料ガス、パージガス、反応ガス、パージガスの順に、原料ガスと反応ガスとを交互に処理チャンバ10に供給するように、制御部80は、原料ガス給断バルブ22、反応ガス給断バルブ32、パージガス給断バルブ42及び排出バルブ51を制御する。そして、原料ガスと反応ガスとの供給を繰り返すことにより、所望の厚さの膜を形成する。
【0055】
<ろ過部25及びろ過部55に用いられる多孔性配位高分子>
ろ過部25のフィルタ251及びろ過部55のフィルタ551に含まれる多孔性配位高分子について説明する。図2及び図3は、第1実施形態に係る基板処理装置1の一例に用いられる多孔性配位高分子500について説明する図である。
【0056】
多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子との配位結合により形成される。多孔性配位高分子は、金属イオンが架橋性の有機配位子により連結され、その内部に空間を有する結晶性の高分子構造を備える。金属錯体の複数が集積して形成される多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子とが規則的に結合する。金属イオンと有機配位子とが規則的に結合するため、例えば、図2及び図3に模式的に示すように、多孔性配位高分子500は、ナノメートルサイズの細孔500sが規則的に立体的に配列した構造を有する。
【0057】
ナノメートルサイズの細孔500sが規則的に立体的に配列した構造を有する多孔性配位高分子500に対して、矢印Aに示すように、吸着対象の分子Mは、1つの細孔500sに、入り込むように吸着される(図3)。吸着対象の分子Mは、細孔500sの内部にも吸着される。また、吸着された分子Mは、矢印Dに示すように、細孔500sから離脱する。
【0058】
多孔性配位高分子を製造する手法の一つである溶液法は、常温、常圧下で金属イオンと有機配位子の溶液を混合することにより多孔性配位高分子を形成するものである。金属錯体の集積は、溶液中で自己集合的に進行する。多孔性配位高分子は、製造が比較的容易であり、金属イオンと有機配位子とを選択し、合成条件を調整することにより、細孔500sの大きさや形状を制御できるので、設計の自由度も高い。多孔性配位高分子500に吸着される分子Mに応じて、多孔性配位高分子500の細孔500sは設計される。
【0059】
フィルタ251又はフィルタ551に含まれる多孔性配位高分子は、例えば、ペレット状、粉末状、ペレットよりも小さい粒状に形成される。
【0060】
[フィルタ251に用いられる多孔性配位高分子]
フィルタ251において、例えば、原料ガスに含まれる炭素を不純物として、二酸化炭素を除去する場合は、二酸化炭素を選択的に吸着する多孔性配位高分子をフィルタ251に用いることが望ましい。
【0061】
二酸化炭素を選択的に吸着する多孔性配位高分子として、例えば、次の(a)~(b)に記載の多孔性配位高分子群から選択されたものを挙げることができる。
(a)マグネシウムイオンと2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を配位子としたとの配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
(b)亜鉛クラスタイオン(Zn0)と4,4',4"-(ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリス(ベンゼン-4,1-ジイル))トリベンゾエートとの配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
【0062】
[フィルタ551に用いられる多孔性配位高分子の例]
フィルタ551において、例えば、排気ガス中の原料ガスとして、三塩化アルミニウム(AlCl)を回収する場合は、三塩化アルミニウム(AlCl)を選択的に吸着する多孔性配位高分子をフィルタ551に用いることが望ましい。
【0063】
三塩化アルミニウム(AlCl)を選択的に吸着する多孔性配位高分子として、例えば、次の(c)~(f)に記載の多孔性配位高分子群から選択されたものを挙げることができる。
(c)銅イオンと1,3,5-ベンゼントリカルボン酸との配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
(d)鉄イオンと1,3,5-ベンゼントリカルボン酸との配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
(e)クロムイオンとテレフタル酸との配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
(f)ランタンイオンと1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼンとの配位結合によって構成される金属錯体を含み、前記金属錯体の複数が集積して形成された細孔構造を有する多孔性配位高分子。
【0064】
<作用・効果>
第1実施形態に係る基板処理装置1によれば、ろ過部55により処理チャンバ10からの排気ガスに含まれる原料ガスを回収できる。そして、ろ過部55により回収した原料ガスを再利用できる。
【0065】
薄膜を成膜するCVDプロセス又はALDプロセスにおいて、原料ガスに含まれる前駆体、例えば、三塩化アルミニウム、について、基板上に成膜される割合は数パーセントに満たない。したがって、原料ガスに含まれる前駆体の利用効率は非常に低くなっている。すなわち、前駆体のほとんどは、処理チャンバ10から排出される。従来は、排出された前駆体は廃棄していた。
【0066】
第1実施形態に係る基板処理装置1は、多孔性配位高分子で形成されたフィルタ551を用いることにより、排気ガスから、原料ガスに含まれる前駆体を選択的に吸着して回収できる。また、多孔性配位高分子により吸着した分子は、例えば、加熱等を行うことにより、多孔性配位高分子から脱離することができる。したがって、第1実施形態に係る基板処理装置1によれば、多孔性配位高分子で形成されたフィルタ551で吸着した前駆体を再度取り出して再利用できる。再利用することにより、従来は廃棄していた前駆体を有効利用できる。
【0067】
≪第2実施形態≫
<基板処理装置2>
第2実施形態に係る基板処理装置2は、ろ過部55に対する排気ポンプ53の位置が第1実施形態に係る基板処理装置1と異なる。第1実施形態に係る基板処理装置1のガス排気部50は、排気ポンプ53を、ろ過部55の処理チャンバ10の側に備える。一方、第2実施形態に係る基板処理装置2のガス排気部150は、排気ポンプ53を、ろ過部55の処理チャンバ10に対して反対側に備える。
【0068】
<作用・効果>
第2実施形態に係る基板処理装置2によれば、第1実施形態に係る基板処理装置1の作用・効果に加えて、排気ポンプ53の前でフィルタ551により前駆体を捕捉することにより、排気ポンプ53の前駆体による汚染を防止できる。排気ポンプ53の汚染を防止することにより、排気ポンプ53の稼働時間を長くできる。また、排気ポンプ53の汚染を防止することにより、基板処理装置2のメンテナンスの回数を減らすことができる。
【0069】
今回開示された本実施形態は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1、2 基板処理装置
10 処理チャンバ
20 原料ガス供給部
21 原料ガス供給源
22 原料ガス給断バルブ
23 流量調整部
25 ろ過部
251 フィルタ
30 反応ガス供給部
31 反応ガス供給源
32 反応ガス給断バルブ
33 流量調整部
40 パージガス供給部
41 パージガス供給源
42 パージガス給断バルブ
43 流量調整部
50、150 ガス排気部
51 排出バルブ
52 圧力調整部
53 排気ポンプ
54 排ガス処理部
55 ろ過部
551 フィルタ
80 制御部
500 多孔性配位高分子
500s 細孔
Ls 供給経路
Le 排気経路
図1
図2
図3
図4