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特開2023-45202フィルムクリーニング装置及びフィルムクリーニングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045202
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】フィルムクリーニング装置及びフィルムクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/00 20060101AFI20230327BHJP
   B65H 20/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B08B5/00 A
B65H20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153471
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
【テーマコード(参考)】
3B116
3F103
【Fターム(参考)】
3B116AA08
3B116AB13
3B116BB22
3B116BB62
3B116BB72
3B116BB83
3B116BB88
3F103AA03
3F103EA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送されるフィルムが接触しにくい、フィルムクリーニング装置を提供する。
【解決手段】搬送されるフィルムをクリーニングするためのフィルムクリーニング装置100であって、前記フィルムに対向させるフィルム対向部101を有し、気体排出室110a、110bと、前記気体排出室内110a、110bに設けられる超音波発生器112a、112bと、前記フィルム対向部101に設けられ、圧気装置1020に接続されて気体を前記フィルムに向かって噴出させる多孔質部材と、吸気室120と、を含み、前記気体排出室110a、110bは、前記フィルム対向部101に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる噴気口111a、111bを含み、前記吸気室120は、前記フィルム対向部101に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる吸気口121を含む、フィルムクリーニング装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるフィルムをクリーニングするためのフィルムクリーニング装置であって、
前記フィルムクリーニング装置は、前記フィルムに対向させるフィルム対向部を有し、
前記フィルムクリーニング装置は、気体排出室と、前記気体排出室内に設けられる超音波発生器と、前記フィルム対向部に設けられ、圧気装置に接続されて気体を前記フィルムに向かって噴出させる多孔質部材と、吸気室と、を含み、
前記気体排出室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる噴気口を含み、
前記吸気室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる吸気口を含む、
フィルムクリーニング装置。
【請求項2】
前記多孔質部材が、前記フィルム対向部の、前記フィルムの搬送方向と直交する方向における中間部に設けられ、前記多孔質部材の長手方向が、前記噴気口の長手方向と平行でありかつ前記吸気口の長手方向と平行である、請求項1に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項3】
前記多孔質部材を少なくとも2本含み、少なくとも2本の前記多孔質部材の長手方向が、前記噴気口の長手方向と平行でありかつ前記吸気口の長手方向と平行であり、少なくとも2本のうちの2本の前記多孔質部材の間に、前記噴気口及び前記吸気口が設けられている、請求項1又は2に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項4】
前記多孔質部材を複数含み、複数の前記多孔質部材のそれぞれが、前記噴気口と前記吸気口との間に、互いに離間して前記吸気口の長手方向に沿って一列に設けられ、複数の前記多孔質部材のそれぞれの長手方向が、前記吸気口の長手方向と平行でありかつ前記噴気口の長手方向と平行である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項5】
前記フィルムの搬送方向と直交する方向における、多孔質部材の総長さLpが、前記吸気口の長さLsの50%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項6】
前記気体排出室が、2本の前記噴気口を備え、前記吸気室が、1本の前記吸気口を備え、2本の前記噴気口の間に、1本の前記吸気口が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項7】
前記気体排出室が、1本の前記噴気口を備え、前記吸気室が、2本の前記吸気口を備え、2本の前記吸気口の間に、1本の前記噴気口が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置と、フィルムを支持し搬送するフィルム支持搬送装置とを含む、フィルムクリーニングシステム。
【請求項9】
前記フィルム支持搬送装置が、有孔材で形成されたフィルム支持面を有するフィルム支持部材と、前記フィルム支持部材に接続される圧気装置とを含む、請求項8に記載のフィルムクリーニングシステム。
【請求項10】
前記フィルム支持部材の前記フィルム支持面が、多孔質材料で形成されている、請求項9に記載のフィルムクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムクリーニング装置及びフィルムクリーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムなどのフィルムを製造する工程において、フィルムに付着した異物を除去するためのフィルムクリーニング装置を用いる場合がある。フィルムクリーニング装置としては、フィルムに回転するブラシを接触させて、異物を除去する接触式のフィルムクリーニング装置(特許文献1参照)が知られている。
また、パネル体に付着した異物を除去するため、パネル体に気体を吹き付けて、異物を除去する非接触式のクリーニング装置(特許文献2参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1-167383号公報
【特許文献2】実開平5-080573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触式のフィルムクリーニング装置では、フィルム表面にブラシなどの異物除去手段を接触させる際に、フィルム表面に傷が生じたり、異物除去手段に付着した異物がフィルム表面に再付着したりするなどの不都合が生じることがある。特に、フィルム上に機能層を塗布法により設けた場合には、これらの不都合により、機能層の質が低下する場合がある。そのため、フィルムクリーニング装置としては、非接触式が好ましい。
しかし、フィルムクリーニング装置と共に使用されるフィルム支持搬送装置の種類によっては、搬送されるフィルムがフィルムクリーニング装置に接触しやすい場合があった。
特に、フィルム支持搬送装置が、フィルムを支持するフィルム支持面とフィルムとの間に間隙を設けて搬送する装置である場合に、フィルムがフィルムクリーニング装置に接触しやすい場合があった。その理由は、フィルムが薄膜軽量であり、搬送張力が低い場合に、フィルム支持搬送装置からフィルムが浮き上がるなどして、フィルムが所望の搬送位置を保持できないため等である。
【0005】
したがって、搬送されるフィルムが接触しにくい、フィルムクリーニング装置;フィルムクリーニング装置を含み、搬送されるフィルムが前記フィルムクリーニング装置に接触しにくいフィルムクリーニングシステム;が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、フィルムクリーニング装置のフィルム対向部に、所定の多孔質部材を設けることにより前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
[1] 搬送されるフィルムをクリーニングするためのフィルムクリーニング装置であって、
前記フィルムクリーニング装置は、前記フィルムに対向させるフィルム対向部を有し、
前記フィルムクリーニング装置は、気体排出室と、前記気体排出室内に設けられる超音波発生器と、前記フィルム対向部に設けられ、圧気装置に接続されて気体を前記フィルムに向かって噴出させる多孔質部材と、吸気室と、を含み、
前記気体排出室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる噴気口を含み、
前記吸気室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる吸気口を含む、
フィルムクリーニング装置。
[2] 前記多孔質部材が、前記フィルム対向部の、前記フィルムの搬送方向と直交する方向における中間部に設けられ、前記多孔質部材の長手方向が、前記噴気口の長手方向と平行でありかつ前記吸気口の長手方向と平行である、[1]に記載のフィルムクリーニング装置。
[3] 前記多孔質部材を少なくとも2本含み、少なくとも2本の前記多孔質部材の長手方向が、前記噴気口の長手方向と平行でありかつ前記吸気口の長手方向と平行であり、少なくとも2本のうちの2本の前記多孔質部材の間に、前記噴気口及び前記吸気口が設けられている、[1]又は[2]に記載のフィルムクリーニング装置。
[4] 前記多孔質部材を複数含み、複数の前記多孔質部材のそれぞれが、前記噴気口と前記吸気口との間に、互いに離間して前記吸気口の長手方向に沿って一列に設けられ、複数の前記多孔質部材のそれぞれの長手方向が、前記吸気口の長手方向と平行でありかつ前記噴気口の長手方向と平行である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
[5] 前記フィルムの搬送方向と直交する方向における、多孔質部材の総長さLpが、前記吸気口の長さLsの50%以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
[6] 前記気体排出室が、2本の前記噴気口を備え、前記吸気室が、1本の前記吸気口を備え、2本の前記噴気口の間に、1本の前記吸気口が設けられている、[1]~[5]のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
[7] 前記気体排出室が、1本の前記噴気口を備え、前記吸気室が、2本の前記吸気口を備え、2本の前記吸気口の間に、1本の前記噴気口が設けられている、[1]~[5]のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載のフィルムクリーニング装置と、フィルムを支持し搬送するフィルム支持搬送装置とを含む、フィルムクリーニングシステム。
[9] 前記フィルム支持搬送装置が、有孔材で形成されたフィルム支持面を有するフィルム支持部材と、前記フィルム支持部材に接続される圧気装置とを含む、[8]に記載のフィルムクリーニングシステム。
[10] 前記フィルム支持部材の前記フィルム支持面が、多孔質材料で形成されている、[9]に記載のフィルムクリーニングシステム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送されるフィルムが接触しにくい、フィルムクリーニング装置;フィルムクリーニング装置を含み、搬送されるフィルムが前記フィルムクリーニング装置に接触しにくいフィルムクリーニングシステム;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
図3図3は、第2実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
図5図5は、第3実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
図7図7は、第4実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図8図8は、第4実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。また、図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0013】
[1.フィルムクリーニングシステムの概要]
本開示に係るフィルムクリーニングシステムは、フィルムクリーニング装置と、フィルムを支持し搬送するフィルム支持搬送装置とを含む。
【0014】
[2.フィルムクリーニング装置の概要]
本開示に係るフィルムクリーニング装置は、搬送されるフィルムをクリーニングするための装置である。
フィルムクリーニング装置は、フィルムに対向させるフィルム対向部を有する。
フィルムクリーニング装置は、気体排出室と、前記気体排出室内に設けられる超音波発生器と、前記フィルム対向部に設けられ、圧気装置に接続されて気体を前記フィルムに向かって噴出させる多孔質部材と、吸気室と、を含む。
前記気体排出室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる噴気口を含む。
前記吸気室は、前記フィルム対向部に開口し前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延びる吸気口を含む。
【0015】
本開示のフィルムクリーニング装置は、圧気装置に接続されて気体を前記フィルムに向かって噴出させる多孔質部材がフィルム対向部に設けられているので、搬送されるフィルムが、フィルムを支持して搬送するフィルム支持部材に向かって気体により押圧される。これにより、搬送されるフィルムが、吸気口に吸引されてフィルム対向部に接触することを抑制する。
【0016】
本開示のフィルムクリーニング装置は、気体排出室を一つのみ有していてもよく、複数(例えば、2つ、3つ)有していてもよい。フィルムクリーニング装置は、吸気室を一つのみ有していてもよく、複数(例えば、2つ、3つ)有していてもよい。
気体排出室及び吸気室の配置は、任意であり、以下に述べる第1実施形態~第2実施形態における配置に限定されない。例えば、気体排出室及び吸気室は、フィルムの搬送方向において、下記の順に配置されていてよい。
(1)気体排出室、吸気室、及び気体排出室
(2)吸気室、気体排出室、及び吸気室
(3)気体排出室、及び吸気室
(4)吸気室、及び気体排出室
(5)気体排出室、気体排出室、及び吸気室
(6)吸気室、気体排出室、及び気体排出室
(7)吸気室、吸気室、及び気体排出室
(8)気体排出室、吸気室、及び吸気室
【0017】
[3.第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るフィルムクリーニングシステムを、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
【0018】
フィルムクリーニングシステム1500は、フィルムクリーニング装置100とフィルム支持搬送装置1000とを備える。
フィルムクリーニング装置100は、搬送される長尺のフィルム10の表面10Uをクリーニングする装置である。
【0019】
フィルムクリーニング装置100は、フィルム10に対向させるフィルム対向部101を有する。フィルムクリーニング装置100は、図1に示すように、その内部が気体排出室110a,110bと、吸気室120とに区画されている。気体排出室110a,110b及び吸気室120は、フィルム10の搬送方向において、気体排出室110a、吸気室120、及び気体排出室110bの順となるように、配置されている。
【0020】
気体排出室110aの、フィルム対向部101の側には、フィルム対向部101に開口する噴気口111aが設けられている。気体排出室110bの、フィルム対向部101の側にも、フィルム対向部101に開口する噴気口111bが設けられている。
図2に示すように、噴気口111a,111bは、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、噴気口111a,111bは、それぞれ一本の連続するスリット形状を有している。
【0021】
気体排出室110aの内部であって、噴気口111aの近傍には、超音波発生器112aが設けられている。また、気体排出室110bの内部であって、噴気口111bの近傍には、超音波発生器112bが設けられている。超音波発生器112a,112bはそれぞれ、噴気口111a,111bの近傍で超音波を発生することにより、噴気口111a,111bから噴出される気体に超音波振動を与える。噴気口111a,111bから噴出される、超音波振動を付与された気体は、フィルム10に吹き付けられて、効果的にフィルム10の表面10Uに付着した異物をフィルム10から取り除きうる。
【0022】
吸気室120の、フィルム対向部101の側には、フィルム対向部101に開口する吸気口121が設けられている。吸気口121は、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、一本の連続するスリット形状を有している。
【0023】
気体排出室110a,110bには、図示されない圧気装置が、直接又はバルブなどの流量調節手段を介して接続される。吸気室120には、図示されない吸気装置が、直接又はバルブなどの流量調節手段を介して接続される。
これにより、噴気口111a,111bから、気体が噴出して、異物が付着したフィルム10に吹き付けられ、異物を含んだ気体が、吸気口121から吸い込まれて異物がフィルム10から取り除かれる。
【0024】
フィルム対向部101には、図示されない圧気装置に接続されて気体をフィルム10に向かって噴出させる多孔質部材130a,130bが設けられている。
多孔質部材130a,130bは、多孔質材料から形成された部材である。多孔質部材130a,130bを形成するための多孔質材料としては、ポーラスカーボン、ポーラスアルミナ、ポーラスセラミック、多孔質を有する金属焼結材等が挙げられる。多孔質部材130a,130bは、多孔質材料で形成されているので、圧気装置を接続して気体を圧送すると、多孔質部材130a,130bの表面の孔から多孔質部材130a,130bの外部へ気体が噴出する。多孔質部材130a,130bは、フィルム対向部101に設けられ、フィルム10と対向するように配置されている。したがって、多孔質部材130a,130bの表面の孔から噴出された気体は、フィルム10に向かって吹き付けられる。
【0025】
多孔質部材130a,130bが多孔質材料で形成されていることにより、以下の利点を有する。
スリットノズルのような開口の大きい部材に気体を圧送して、フィルム10とフィルム対向部との接触を抑制しようとすると、大量の気体が必要となる。また、吸気口への気体の流れを阻むため、吸気口からの異物の回収が不良となる場合がある。
多孔質材料で形成された多孔質部材130a,130bから噴出する気体は、脈動が少なく流速が小さいので、吸気口からの異物の回収を阻害せず、かつ安定的にフィルム10がフィルム対向部101に接触することを抑制しうる。また、多孔質部材130a,130bへ圧送する気体の量が少なくてすむ。
【0026】
多孔質部材の平均孔径は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは3.0μm以下である。孔径が大きすぎる場合、一部の孔がふさがれて、他の孔から気体の漏れが生じることがあるが、孔径を上限値以下とすると、多孔質材料内の圧力損失が大きいので、一部の孔がふさがれたとしても、気体の漏れを防止することができる。
【0027】
図2に示すように、多孔質部材130a,130bは、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、多孔質部材130a,130bの長手方向はそれぞれ、噴気口111a,111bのそれぞれの長手方向と平行であり、また吸気口121の長手方向と平行である。また、多孔質部材130a,130bは、フィルム対向部101の、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における中間部101Mに設けられている。ここで、中間部101Mは、フィルム対向部101の、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における端部101E,101Eの間にあって、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における中央101Cを含む部分である。
多孔質部材130a,130bが、フィルム対向部101の中間部101Mに設けられていることにより、後述するフィルム支持搬送装置1000が、フィルム支持部材1010とフィルム10とを離隔状態としてフィルム10を搬送する装置である場合に、効果的にフィルム10がフィルムクリーニング装置100のフィルム対向部101に接触することを抑制しうる。
フィルム支持部材1010とフィルム10とに間隙を有する状態(離隔状態)としてフィルム10を搬送すると、フィルム10の幅方向中央部付近は、フィルム10とフィルム支持部材1010のフィルム支持面1011との距離が、フィルム10の端部付近における距離よりも大きくなることがある。すなわち、フィルム10は、幅方向中央部がフィルム対向部101に向かって膨らんだ形状となってフィルム支持部材1010から離れることがある。多孔質部材130a,130bを、中間部101Mに設けることによって、フィルム10の幅方向中央部に向かって多孔質部材130a,130bから気体を噴出させ、フィルム10の特に幅方向中央部をフィルム支持面1011の方向へ押し戻すようにする。これにより、フィルム10がフィルム対向部101に接触することを効果的に抑制しうる。
【0028】
フィルム10の搬送方向Dと直交する方向において同一の列にある多孔質部材の総長さLp、すなわち、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における、多孔質部材130aの長さL130a及び多孔質部材130bの長さL130bはそれぞれ、吸気口121の長さLsの50%以上である。別の実施形態においては長さL130a、L130bはそれぞれ、長さLsの、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であり、100%以下である。
これにより、多孔質部材130a,130bは、フィルム10の幅全体にわたって、フィルム10をフィルム支持面1011の方向へ押し戻しうるので、フィルム10がフィルム対向部101に接触することを効果的に抑制しうる。
【0029】
本実施形態では、2本の多孔質部材130a,130bの間に、噴気口111a,111b及び吸気口121が設けられており、フィルム対向部101から見て、フィルム10の搬送方向Dにおいて、多孔質部材130a、噴気口111a、吸気口121、噴気口111b、多孔質部材130bの順となるように配置されている。このような配置により、多孔質部材130a,130bから噴出される気体の流れが、噴気口111a,111bから噴出される気体によってフィルム10の表面10Uから吹き飛ばされた異物がフィルムクリーニング装置100外部に飛散することを、妨げる。その結果、異物が吸気口121に吸引され回収される割合を高くしうる。
【0030】
フィルム支持搬送装置1000は、フィルム10を支持し搬送する装置である。フィルム支持搬送装置1000は、有孔材で形成されたフィルム支持面1011を有するフィルム支持部材1010と、フィルム支持部材1010に接続される圧気装置1020とを備える。
【0031】
フィルム支持面1011を形成する材料としては、パンチングメタル、多孔質材料などの、フィルム支持面1011に開口する材料が挙げられる。パンチングメタルとしては、円状の穴を有するもの、正方形状の穴を有するもの、長方形状の穴を有するもの、六角形状の穴を有するものなど、任意の形状を有する穴のあけられた金属板状体を用いうる。多孔質材料の例としては、多孔質部材130a,130bを形成する材料として例示した材料が挙げられる。
【0032】
フィルム支持面1011が、多孔質材料で形成されていることにより、以下の利点を有する。
多孔質材料から噴出される気体は、スリットノズルなどから噴出される気体よりも脈動が低減され流速が小さいので、フィルム支持面1011とフィルム10との間に、一定厚みの気体層を容易に形成しうる。そのため、フィルム支持面1011とフィルム11とが接触することを効果的に抑制しうる。
【0033】
フィルム支持面1011は、フィルムクリーニング装置100のフィルム対向部101と、搬送されるフィルム10を挟んで対向している。フィルム支持面1011は、曲面であり、フィルム10の搬送方向の断面形状が円弧状である。
円弧状である断面形状の半径Rは、搬送されるフィルム10の方向転換を容易にする観点から、好ましくは20mm以上であり、搬送されるフィルム10とフィルム支持面1011との間隙を大きくすることができ、搬送されるフィルム10とフィルム支持面1011との接触を抑制する観点から、好ましくは200mm以下である。フィルム支持面1011を、曲面とし、フィルム10の搬送方向における断面形状を円弧状とすることにより、搬送されるフィルム10は、断面形状が円弧状の曲面を有する形状となる。フィルム10を断面形状が円弧状の曲面に保つことで、フィルム支持面1011の上におけるフィルム10は、幅方向の断面二次モーメントを上げることができ、その結果搬送されるフィルム10は歪みが抑制され搬送後におけるフィルム10の平面性を向上させることが容易となる。
【0034】
圧気装置1020は、気体を圧送する装置であり、具体例としては、ポンプ、ファン、ブロワー、コンプレッサーが挙げられる。圧気装置1020は、フィルム支持部材1010に直接又はバルブなどの流量調節手段を介して間接的に接続されて、フィルム支持部材1010に気体を圧送する。これにより、フィルム支持部材1010のフィルム支持面1011から気体が吹き出されて、フィルム10がフィルム支持面1011から離れる。そして、フィルム支持部材1010のフィルム支持面1011により、気体の層を介してフィルム10が支持される。
【0035】
フィルム支持搬送装置1000が、有孔材で形成されたフィルム支持面1011を有するフィルム支持部材1010を含むことにより、フィルム10とフィルム支持部材1010とを離隔状態で搬送しうる。フィルム支持搬送装置1000の代わりとして、搬送ローラをフィルム支持搬送装置として用いる場合、フィルム10に張力を加える張力付与手段が必要となる場合があり、また、搬送ローラにフィルム10を密着させる密着手段(サクションローラなど)が必要となる場合がある。フィルム10とフィルム支持部材1010とを離隔状態で搬送しうることにより、張力付与手段及び密着手段を設ける必要がなくなり、これら手段によるフィルム10の欠陥発生を防ぐことができる。
【0036】
フィルム10を離隔状態で搬送する場合、フィルム10がフィルムクリーニング装置100の吸気口121に吸引されることにより、フィルム10のフィルム支持面1011からの離隔量が変動する可能性がある。しかし、フィルムクリーニング装置100が、多孔質部材130a,130bを備えることにより、離隔量が変動しても、フィルム10がフィルムクリーニング装置100のフィルム対向部101に接触することを抑制しうる。
【0037】
フィルム支持部材1010から吹き出される気体の流量を、フィルム支持部材1010の幅方向にわたって一定としてもよく、フィルム支持部材1010の幅方向において、分布を有するようにしてもよい。例えば、フィルム支持部材1010の、長手方向における中央部から吹き出される気体の流量と、長手方向における端部から吹き出される気体の流量とを、異なるように調整してもよい。フィルム支持部材1010から吹き出される気体の流量の調整は、例えば、(1)フィルム支持部材1010を中央部と端部とに区画して、中央部に供給される気体の流量と端部に供給される気体の流量とを調整する方法、(2)フィルム支持部材1010のフィルム支持面1011を、多孔質材料で形成し、多孔質材料の平均孔径を、中央部と端部とで異なるようにする方法、などが挙げられる。例えば、フィルム支持部材1010の中央部から吹き出される気体の流量を、フィルム支持部材1010の端部から吹き出される気体の流量よりも小さくするように気体の流量が調整される。
【0038】
離隔状態で搬送されたフィルム10は、噴気口111a,111bから噴出される、超音波振動を付与された気体を吹き付けられて振動する。この際の振動は、フィルム支持面1011に接触しながら搬送されるフィルム10の振動よりも大きい。よって、フィルム支持搬送装置1000が、有孔材で形成されたフィルム支持面1011を有するフィルム支持部材1010を含むことにより、効果的にフィルム10から異物を振るい落としうる。
【0039】
フィルム支持搬送装置として、種々のフィルム支持搬送装置を用いうる。
フィルム支持搬送装置としては、フィルム10に非接触の状態で搬送する装置を用いうる。
別の実施形態では、フィルム支持搬送装置1000の代わりとして、気体を噴出させるスリットノズルを備えるフィルム支持装置を用いうる。
また別の実施形態では、フィルム支持搬送装置1000の代わりとして、磁力又は電磁力によりフィルム10とフィルム支持面とを離隔状態で搬送する装置を用いうる。
また別の実施形態では、フィルム支持搬送装置1000の代わりとして、フィルム支持面に超音波振動を与えてフィルム10とフィルム支持面とを離隔状態で搬送する装置(超音波浮上装置)を用いうる。
【0040】
フィルム支持搬送装置としては、フィルム10に接触状態で搬送する装置も用いうる。
別の実施形態では、フィルム支持搬送装置1000の代わりとして、搬送ローラを用いうる。搬送ローラの表面を形成する材料の例としては、ゴム、及びステンレス鋼などの金属が挙げられる。搬送ローラを用いてフィルム10を搬送する場合には、フィルム支持搬送装置1000と比較して、フィルム10がフィルムクリーニング装置100のフィルム対向部101に接触することは低減される傾向にある。しかし、フィルム支持搬送装置1000の代わりとして搬送ローラを用いた場合にも、フィルムクリーニング装置100が多孔質部材130a,130bを備えることにより、フィルム10がフィルムクリーニング装置100のフィルム対向部101に接触することを抑制しうる。さらに、多孔質部材130a,130bから噴出する気体の流れが、フィルム10を搬送ローラに押し付けるので、フィルム10を搬送する際の搬送ローラのグリップ力が高まり、安定的にフィルム10を搬送しうる。
【0041】
フィルムクリーニングシステム1500は、フィルムの中でも、長尺の樹脂フィルムをクリーニングするために好適である。
樹脂フィルムの例としては、熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂は、重合体を含む。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、アラミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れるという観点から、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0042】
フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。例えば樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムに機能層が設けられている複層フィルムでありうる。機能層の例としては、重合性を有する液晶性化合物、重合開始剤、架橋剤、モノマー、酸化防止剤、界面活性剤などの機能性材料を含む層が挙げられる。
【0043】
[4.第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係るフィルムクリーニングシステムを、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、第2実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図4は、第2実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
【0044】
フィルムクリーニングシステム2500は、フィルムクリーニング装置200とフィルム支持搬送装置1000とを備える。フィルム支持搬送装置1000は、第1実施形態のフィルム支持搬送装置1000と同様であるので、これについての説明を省略する。後述するフィルムクリーニングシステム3500,4500の説明においても、フィルム支持搬送装置1000の説明を省略する。
【0045】
フィルムクリーニング装置200は、第1実施形態に係るフィルムクリーニング装置100の多孔質部材130a,130bの代わりに、複数の多孔質部材230a、複数の多孔質部材230b、複数の多孔質部材230c、及び複数の多孔質部材230dがフィルム対向部201に設けられた装置である。多孔質部材230a,230b,230c,230dはそれぞれ、多孔質部材130a,130bと同様に、多孔質材料から形成された部材であり、多孔質部材130a,130bを形成する多孔質材料と同様の材料で形成しうる。
【0046】
本実施形態では吸気口121からフィルム対向部201とフィルム10との間の気体が吸引される。そのため、吸気口121と対向するフィルム10の位置において、フィルム10はフィルム対向部201に接触しやすい。
吸気口121に沿って、複数の多孔質部材230b及び複数の多孔質部材230cを配置することにより、フィルム10がフィルム対向部201に接触することを効果的に抑制しうる。
【0047】
図4にしめすように、複数の多孔質部材230a、複数の多孔質部材230b、複数の多孔質部材230c、及び複数の多孔質部材230dはそれぞれ、長手方向が吸気口121の長手方向と平行でありかつ噴気口111a,111bの長手方向と平行である。複数の多孔質部材230bは、互いに離間して吸気口121の長手方向に沿って、噴気口111aと吸気口121との間に一列に、設けられている。複数の多孔質部材230cは、互いに離間して吸気口121の長手方向に沿って、吸気口121と噴気口111bとの間に一列に、設けられている。
【0048】
複数の多孔質部材230aは、互いに離間して噴気口111aの長手方向に沿って一列に設けられている。複数の多孔質部材230dは、互いに離間して、噴気口111bの長手方向に沿って一列に設けられている。
【0049】
フィルム10の搬送方向Dと直交する方向、すなわち吸気口121の長手方向と平行な方向において、同一の列にある、複数の多孔質部材230aの総長さLp(230a)は、吸気口121の長さLsの50%以上である。同様に、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向において同一の列にある、複数の多孔質部材230bの総長さLp(230b)、複数の多孔質部材230cの総長さLp(230c)、及び複数の多孔質部材230dの総長さLp(230d)もそれぞれ、吸気口121の長さLsの50%以上である。複数の多孔質部材230aの総長さLp(230a)、複数の多孔質部材230bの総長さLp(230b)、複数の多孔質部材230cの総長さLp(230c)、及び複数の多孔質部材230dの総長さLp(230d)はそれぞれ、吸気口121の長さLsの、好ましくは80%以下であり、それぞれより好ましくは65%以下である。
【0050】
複数の多孔質部材230bが互いに離間して設けられていることにより、噴気口111aから吸気口121への気流を、多孔質部材230bから噴出する気体が妨げる程度が小さくなり、吸気口121から異物を効率的に取り込むことができる。同様に、複数の多孔質部材230cが互いに離間して設けられていることにより、噴気口111bから吸気口121への気流を、多孔質部材230cから噴出する気体が妨げる程度が小さくなり、吸気口121から異物を効率的に取り込むことができる。
【0051】
複数の多孔質部材230bと複数の多孔質部材230cとは、吸気口121の短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。フィルム対向部201から見て、複数の多孔質部材230bと複数の多孔質部材230cとは、吸気口121の長手方向を軸とした線対称の位置関係ではなく、吸気口121の長手方向における中心の点を中心点とした点対称の位置関係を有するように、配置されている。前記のとおり、複数の多孔質部材230bが互いに離間して設けられ、複数の多孔質部材230cが互いに離間して設けられていることにより、吸気口121から異物を効率的に取り込むことができる。一方、多孔質部材230b、230cが設けられていない、離間した多孔質部材の間の部分は、多孔質部材が設けられた部分と比較して、対向するフィルム10がフィルム対向部101に接触しやすい。複数の多孔質部材230bと複数の多孔質部材230cとが、吸気口121の両側に交互に振り分けられるように配置されていることにより、フィルム10がフィルム対向部201に接触することを、フィルム10の幅方向の全体にわたって効果的に抑制しうる。
【0052】
複数の多孔質部材230aと複数の多孔質部材230dとは、噴気口111aの短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。また、複数の多孔質部材230aと複数の多孔質部材230bとは、噴気口111aの短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。さらに、複数の多孔質部材230cと複数の多孔質部材230dとは、噴気口111bの短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。
【0053】
したがって、フィルム10の搬送方向Dにおいて、複数の多孔質部材230a,230b,230c,230d、吸気口121、及び噴気口111a,111bは以下の(1)又は(2)の順で配置される。
(1)多孔質部材230a、噴気口111a、吸気口121、多孔質部材230c、及び噴気口111b
(2)噴気口111a、多孔質部材230b、吸気口121、噴気口111b、及び多孔質部材230d
【0054】
複数の多孔質部材230a,230b,230c,230dを以上のように噴気口111a,111b又は吸気口121の短手方向両側に交互に振り分けて配置することで、以下の利点を有する。
噴気口111aから噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、次いで、多孔質部材230bから噴出される気体の流れに阻まれずに、吸気口121により吸引される。噴気口111aから噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、吸気口121から離れる方向へ流れるが、多孔質部材230aから噴出される気体の流れに阻まれる。そのため、気体に含まれる異物が吸気口121に吸引され回収される割合をより高くしうる。
噴気口111bから噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、次いで、多孔質部材230cに阻まれずに、吸気口121により吸引される。噴気口111bから噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、吸気口121から離れる方向へ流れるが、多孔質部材230dから噴出される気体の流れに阻まれる。そのため、気体に含まれる異物が吸気口121に吸引され回収される割合をより高くしうる。
【0055】
[5.第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係るフィルムクリーニングシステムを、図5及び図6を用いて説明する。
図5は、第3実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図6は、第3実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
【0056】
第1実施形態に係るフィルムクリーニング装置100及び第2実施形態に係るフィルムクリーニング装置200は、フィルム10の搬送方向において、第一の気体排出室、吸気室、及び第二の気体排出室の順となるように設けられていたが、第3実施形態に係るフィルムクリーニング装置300は、フィルム10の搬送方向において、第一の吸気室、気体排出室、及び第二の吸気室の順となるように設けられている。後述する第4実施形態に係るフィルムクリーニング装置400も同様である。
【0057】
フィルムクリーニングシステム3500は、フィルムクリーニング装置300と、フィルム支持搬送装置1000とを備える。フィルムクリーニング装置300は、フィルム10に対向させるフィルム対向部301を有する。フィルムクリーニング装置300は、図5に示すように、その内部が気体排出室310と、吸気室320a,320bとに区画されている。気体排出室310及び吸気室320a,320bは、フィルム10の搬送方向において、吸気室320a、気体排出室310、及び吸気室320bの順となるように、配置されている。
【0058】
吸気室320aの、フィルム対向部301の側には、フィルム対向部301に開口する吸気口321aが設けられている。吸気口320bの、フィルム対向部301の側にも、フィルム対向部301に開口する吸気口321bが設けられている。図6に示すように、吸気口321a,321bは、それぞれフィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、それぞれ一本の連続するスリット形状を有している。
【0059】
気体排出室310の、フィルム対向部301の側には、フィルム対向部301に開口する噴気口311が設けられている。噴気口311は、それぞれフィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、一本の連続するスリット形状を有している。
気体排出室310の内部であって、噴気口311の近傍には、超音波発生器312a,312bが設けられている。超音波発生器312a,312bは、超音波発生器112a,112bと同様の機能を有する。
【0060】
気体排出室310には、図示されない圧気装置が、直接又はバルブなどの流量調節手段を介して接続される。吸気室320a,320bには、図示されない吸気装置が、直接又はバルブなどの流量調節手段を介して接続される。
これにより、噴気口311から気体が噴出して、異物が付着したフィルム10に吹き付けられ、異物を含んだ気体が、吸気口321a,321bから吸い込まれて異物がフィルム10から取り除かれる。
【0061】
フィルム対向部301には、図示されない圧気装置に接続されて気体をフィルム10に向かって噴出させる多孔質部材330a,330bが設けられている。
多孔質部材330a,330bは、多孔質部材130a,130bと同様に、多孔質材料から形成された部材であり、多孔質部材130a,130bを形成する多孔質材料と同様の材料で形成しうる。
【0062】
図6に示すように、多孔質部材330a,330bは、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向に延びており、多孔質部材330a,330bの長手方向はそれぞれ、噴気口311の長手方向と平行であり、また吸気口321a,321bの長手方向と平行である。また、多孔質部材330a,330bは、フィルム対向部301の、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における中間部301Mに設けられている。ここで、中間部301Mは、フィルム対向部301の、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における端部301E,301Eの間にあって、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における中央301Cを含む部分である。
【0063】
多孔質部材330a,330bを、中間部301Mに設けることによって、フィルム10の幅方向中央部に向かって多孔質部材330a,330bから気体を噴出させ、フィルム10の特に幅方向中央部をフィルム支持面1011の方向へ押し戻すようにする。これにより、フィルム10がフィルム対向部301に接触することを効果的に抑制しうる。
【0064】
フィルム10の搬送方向Dと直交する方向において同一の列にある多孔質部材の総長さLp、すなわち、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向における、多孔質部材330aの長さL330a及び多孔質部材330bの長さL330bはそれぞれ、吸気口321a,321bの長さLsの50%以上である。ここで、吸気口321aの長さと吸気口321bの長さとは等しくなるように形成されている。別の実施形態においては長さL330a、L330bはそれぞれ、長さLsの、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であり、100%以下である。
これにより、多孔質部材330a,330bは、フィルム10の幅全体にわたって、フィルム10をフィルム支持面1011の方向へ押し戻しうるので、フィルム10がフィルム対向部301に接触することを効果的に抑制しうる。
【0065】
本実施形態では、2本の多孔質部材330a,330bの間に、噴気口311及び吸気口321a,321bが設けられており、フィルム対向部301から見て、フィルム10の搬送方向Dにおいて、多孔質部材330a、吸気口321a、噴気口311、吸気口321b、多孔質部材330bの順となるように配置されている。このような配置により、多孔質部材330a,330bから噴出される気体の流れが、噴気口311から噴出される気体によってフィルム10の表面10Uから吹き飛ばされ多孔質部材330a,330b付近まで運ばれた異物を、吸気口321a,321bへ押し戻し、異物がフィルムクリーニング装置300外部に飛散することを妨げる。その結果、異物が吸気口321a,321bに吸引され回収される割合を高くしうる。
【0066】
[6.第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係るフィルムクリーニングシステムを、図7及び図8を用いて説明する。
図7は、第4実施形態に係るフィルムクリーニングシステムの、フィルム搬送方向に平行な方向の断面を、模式的に示す断面図である。
図8は、第4実施形態に係るフィルムクリーニング装置を、フィルム対向部側から見た模式的な下面図である。
【0067】
フィルムクリーニングシステム4500は、フィルムクリーニング装置400とフィルム支持搬送装置1000とを備える。
【0068】
フィルムクリーニング装置400は、第3実施形態に係るフィルムクリーニング装置300の多孔質部材330a,330bの代わりに、複数の多孔質部材430a、複数の多孔質部材430b、複数の多孔質部材430c、及び複数の多孔質部材430dがフィルム対向部401に設けられた装置である。多孔質部材430a,430b,430c,430dはそれぞれ、多孔質部材130a,130bと同様に、多孔質材料から形成された部材であり、多孔質部材130a,130bを形成する多孔質材料と同様の材料で形成しうる。
【0069】
本実施形態では吸気口321a,321bからフィルム対向部401とフィルム10との間の気体が吸引される。そのため、吸気口321a,321bと対向するフィルム10の位置において、フィルム10はフィルム対向部401に接触しやすい。
吸気口321aに沿って、複数の多孔質部材430bを配置し、吸気口321bに沿って、複数の多孔質部材430cを配置することにより、フィルム10がフィルム対向部401に接触することを効果的に抑制しうる。
【0070】
図8に示すように、複数の多孔質部材430a、複数の多孔質部材430b、複数の多孔質部材430c、及び複数の多孔質部材430dはそれぞれ、長手方向が吸気口321a,321bの長手方向と平行でありかつ噴気口311の長手方向と平行である。複数の多孔質部材430bは、互いに離間して吸気口321aの長手方向に沿って、吸気口321aと噴気口311との間に一列に、設けられている。複数の多孔質部材430cは、互いに離間して吸気口321bの長手方向に沿って、噴気口311と吸気口321bとの間に一列に、設けられている。
【0071】
複数の多孔質部材430aは、互いに離間して吸気口321aの長手方向に沿って一列に設けられている。複数の多孔質部材430dは、互いに離間して、吸気口321bの長手方向に沿って一列に設けられている。
複数の多孔質部材430a又は複数の多孔質部材430dを、互いに離間するように設けることにより以下の利点を有する。
複数の多孔質部材430a又は複数の多孔質部材430dから噴出する気体により、フィルム10をフィルム支持面1011へ向かって幅方向全体にわたって略均等に押し戻すことができるので、フィルム10がフィルム対向部401に接触することをフィルム10の幅方向全体にわたって効果的に抑制しうる。さらに、多孔質部材一本のみを、吸気口321a又は吸気口321bの長手方向にわたって連続的に設ける場合と比較して、使用する圧縮空気量を減らすことができる。
【0072】
フィルム10の搬送方向Dと直交する方向、すなわち吸気口321a,321bの長手方向と平行な方向において、同一の列にある、複数の多孔質部材430aの総長さLp(430a)は、吸気口321a,321bの長さLsの50%以上である。同様に、フィルム10の搬送方向Dと直交する方向において同一の列にある、複数の多孔質部材430bの総長さLp(430b)、複数の多孔質部材430cの総長さLp(430c)、及び複数の多孔質部材430dの総長さLp(430d)もそれぞれ、吸気口321a,321bの長さLsの50%以上である。複数の多孔質部材430aの総長さLp(430a)、複数の多孔質部材430bの総長さLp(430b)、複数の多孔質部材430cの総長さLp(430c)、及び複数の多孔質部材430dの総長さLp(430d)はそれぞれ、吸気口321a,321bの長さLsの、好ましくは80%以下であり、それぞれより好ましくは65%以下である。
【0073】
複数の多孔質部材430bが互いに離間して設けられていることにより、噴気口311から吸気口321aへの気流を、多孔質部材430bから噴出する気体が妨げる程度が小さくなり、吸気口321aから異物を効率的に取り込むことができる。同様に、複数の多孔質部材430cが互いに離間して設けられていることにより、噴気口311から吸気口321bへの気流を、多孔質部材430cから噴出する気体が妨げる程度が小さくなり、吸気口321bから異物を効率的に取り込むことができる。
【0074】
複数の多孔質部材430bと複数の多孔質部材430cとは、噴気口311の短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。フィルム対向部401から見て、複数の多孔質部材430bと複数の多孔質部材430cとは、噴気口311の長手方向を軸とした線対称の位置関係ではなく、噴気口311の長手方向における中心の点を中心点とした点対称の位置関係を有するように、配置されている。前記のとおり、複数の多孔質部材430bが互いに離間して設けられ、複数の多孔質部材430cが互いに離間して設けられていることにより、吸気口321a,321bから異物を効率的に取り込むことができる。一方、多孔質部材430b、430cが設けられていない、離間した多孔質部材の間の部分は、多孔質部材が設けられた部分と比較して、対向するフィルム10がフィルム対向部401に接触しやすい。複数の多孔質部材430bと複数の多孔質部材430cとが、噴気口311の両側に交互に振り分けられるように配置されていることにより、フィルム10がフィルム対向部401に接触することを、フィルム10の幅方向の全体にわたって効果的に抑制しうる。
【0075】
複数の多孔質部材430aと複数の多孔質部材430dとは、噴気口311の短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。また、複数の多孔質部材430aと複数の多孔質部材430bとは、吸気口321aの短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。さらに、複数の多孔質部材430cと複数の多孔質部材430dとは、吸気口321bの短手方向両側に交互に振り分けられるように配置されている。
【0076】
したがって、フィルム10の搬送方向Dにおいて、複数の多孔質部材430a,430b,430c,430d、吸気口321a,321b、及び噴気口311は、以下の(1)又は(2)の順で配置される。
(1)多孔質部材430a、吸気口321a、噴気口311、多孔質部材430c、及び吸気口321b
(2)吸気口321a、多孔質部材430b、噴気口311、吸気口321b、及び多孔質部材430d
【0077】
複数の多孔質部材430a,430b,430c,430dを以上のように噴気口311又は吸気口321a,321bの短手方向両側に交互に振り分けて配置することで、以下の利点を有する。
噴気口311から噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、次いで多孔質部材430bから噴出される気体の流れに阻まれずに、吸気口321aに吸引される。噴気口311から噴出される気体の一部は、フィルム10に吹き付けられ、次いで多孔質部材430cから噴出される気体の流れに阻まれずに、吸気口321bに吸引される。そのため、異物が吸気口321a,321bに吸引され回収される割合をより高くしうる。
【0078】
[7.第4実施形態の変形例]
第4実施形態では、多孔質部材430a,430dは、それぞれ吸気口321a,321bに沿って複数本設けられているが、変形例では、複数の多孔質部材430aの代わりに、第3実施形態の多孔質部材330aを設けてもよく、複数の多孔質部材430dの代わりに、第3実施形態の多孔質部材330bを設けてもよい。
これにより、多孔質部材330a,330bから噴出される気体の流れが、330a,330b付近まで運ばれた異物を吸気口321a,321bへ押し戻し、異物がフィルムクリーニング装置の外部に飛散することを妨げる。その結果、異物が吸気口321a,321bに吸引され回収される割合を高くしうる。
【符号の説明】
【0079】
10 フィルム
10U 表面
100 フィルムクリーニング装置
101 フィルム対向部
101M 中間部
101E 端部
101C 中央
110a,110b 気体排出室
111a,111b 噴気口
112a,112b 超音波発生器
120 吸気室
121 吸気口
130a,130b 多孔質部材
200 フィルムクリーニング装置
201 フィルム対向部
230a,230b,230c,230d 多孔質部材
300 フィルムクリーニング装置
301 フィルム対向部
301M 中間部
301E 端部
301C 中央
310 気体排出室
311 噴気口
312a,312b 超音波発生器
320a,320b 吸気室
321a,321b 吸気口
330a,330b 多孔質部材
400 フィルムクリーニング装置
401 フィルム対向部
430a,430b,430c,430d 多孔質部材
1000 フィルム支持搬送装置
1010 フィルム支持部材
1011 フィルム支持面
1020 圧気装置
1500,2500,3500,4500 フィルムクリーニングシステム
図1
図2
図3
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図6
図7
図8