IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧 ▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧

特開2023-45216チップ保持具、チップ保持装置、および半導体装置の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045216
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】チップ保持具、チップ保持装置、および半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20230327BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20230327BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/60 311T
H01L21/68 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153488
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】李 瑾
(72)【発明者】
【氏名】宮武 正明
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
5F131
【Fターム(参考)】
5F044LL01
5F044PP16
5F047FA08
5F047FA12
5F047FA41
5F047FA67
5F131AA04
5F131BA54
5F131DA03
5F131DB22
5F131DC17
(57)【要約】
【課題】半導体チップに接触することなく、半導体チップを適切に位置決めできるチップ保持具を提供する。
【解決手段】チップ保持具12は、半導体チップ100を非接触で保持する保持面24と、前記保持面24に陰圧を付与して前記半導体チップ100を吸引する吸引経路33と、前記保持面24に超音波振動を付与する超音波発生器14とを備え、前記保持面24の外形サイズは、前記半導体チップ100の外形サイズよりも大きい。前記保持面24には、前記半導体チップ100の外形の少なくとも一部に沿った形状の位置決め溝36が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを非接触で保持する保持面と、前記保持面に陰圧を付与して前記半導体チップを吸引する吸引経路と、前記保持面に超音波振動を付与する振動発生部とを備え、前記保持面の外形サイズは、前記半導体チップの外形サイズよりも大きい、
ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ保持具であって、
前記保持面には、前記半導体チップの外形の少なくとも一部に沿った形状の位置決め溝が形成されている、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項3】
請求項2に記載のチップ保持具であって、
前記振動発生部は、超音波振動を伝達するホーン部を有し、
前記ホーン部の末端に接続された板状の保持部であって、その端面が前記保持面として機能する保持部を、さらに備え、
前記保持部は、
前記ホーン部と軸方向に重複している中央部と、
前記中央部から径方向外側に張り出し、前記中央部より薄肉のフランジ部と、
を有している、
ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項4】
請求項3に記載のチップ保持具であって、
前記位置決め溝の少なくとも一部は、前記フランジ部を厚み方向に貫通している、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のチップ保持具であって、
前記保持面に超音波振動を付与した際、前記位置決め溝より外側部分の振動振幅が、前記位置決め溝より内側部分の振動振幅より大きい、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載のチップ保持具であって、
前記半導体チップは、前記位置決め溝より外側部分の振動振幅を受けて、前記位置決め溝の内側に位置するように、セルフアライメントされる、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項7】
半導体チップを非接触で保持する保持面と、前記保持面に陰圧を付与して前記半導体チップを吸引する吸引経路と、前記保持面に超音波振動を付与する振動発生部と、を備えるチップ保持具であって、
前記吸引経路は、前記保持面に形成され、吸引源と連通する吸引孔を有し、
前記保持面には、前記吸引孔に繋がるとともに面方向に延びる気流形成溝が形成されている、
ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項8】
請求項7に記載のチップ保持具であって、
前記気流形成溝は、前記半導体チップの外形より内側となるエリアにのみ形成されている、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項9】
請求項8に記載のチップ保持具であって、
前記気流形成溝は、前記吸引孔から面方向に伸びる1以上の放射部を有する、
ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項10】
請求項9に記載のチップ保持具であって、
前記気流形成溝は、前記放射部に直接接続する一方で前記吸引孔を通らない1以上の周辺部をさらに有する、
ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項11】
請求項10に記載のチップ保持具であって、
前記周辺部は、前記吸引孔を取り囲み、前記1以上の放射部全てを連結する閉形状である、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項12】
請求項8に記載のチップ保持具であって、
前記気流形成溝の深さは、前記半導体チップの前記保持面からの浮上量より大きく、前記浮上量の50倍未満である、ことを特徴とするチップ保持具。
【請求項13】
半導体チップを非接触で保持するチップ保持装置であって、
前記半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、
前記保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、
前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、
前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、超音波エネルギまたは前記吸引力を制御するコントローラと、
を備える、ことを特徴とするチップ保持装置。
【請求項14】
請求項13に記載のチップ保持装置であって、
前記コントローラは、前記保持面の位置を、動かす場合と、静止させる場合と、で前記保持面に付与する前記超音波エネルギまたは前記吸引力の少なくとも一方の大きさを変更する、ことを特徴とするチップ保持装置。
【請求項15】
請求項14に記載のチップ保持装置であって、
前記コントローラは、前記保持面を、動かす場合には、静止させる場合よりも、前記超音波エネルギまたは前記吸引力の少なくとも一方を大きくする、ことを特徴とするチップ保持装置。
【請求項16】
半導体チップを非接触で保持するチップ保持装置であって、
前記半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、
前記チップ保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、
前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、
前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、記超音波発生部および吸引源の駆動を制御するコントローラと、
前記保持面により非接触で保持された前記半導体チップの表面に処理を施す表面処理装置、または、前記表面を検査する検査装置、の少なくとも一方と、
を備えることを特徴とするチップ保持装置。
【請求項17】
半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、
前記チップ保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、
前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、
前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、前記超音波発生部および吸引源の駆動を制御するコントローラと、
を備え、前記保持面の外形サイズは、前記半導体チップの外形サイズよりも大きい、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記チップ保持具は、チップ供給源から前記半導体チップを受け取った後、前記半導体チップを非接触で保持した状態のまま180度反転したうえで、前記半導体チップをボンディングツールに受け渡す、ピックアップコレットとして機能する、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項19】
請求項17または18に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップを基板に、ダイレクトボンディングする、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、超音波を利用して半導体チップを非接触で保持する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の更なる小型化、高密度化を実現するために、半導体チップを非接触で保持するチップ保持具が求められている。こうした要望に応えるために、一部では、半導体チップを非接触で保持するチップ保持具が提案されている。
【0003】
かかるチップ保持具としては、ベルヌーイチャックを利用したものが知られている。しかし、ベルヌーイチャックの場合、非接触で保持した半導体チップの面方向の移動を規制できない。そこで、ベルヌーイチャックを利用したチップ保持具では、チップの保持面に、当該チップの面方向の移動を規制するガイド部材を設けることが多かった。
【0004】
しかし、ガイド部材を設けた場合、半導体チップの端部が、当該ガイド部材に当たり、半導体チップの欠けを招くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-73654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、一部では、超音波を利用してICチップ等のワークを非接触で保持する技術が提案されている(例えば特許文献1等)。超音波付与で生じる超音波スクイーズ効果によれば、ワークを面方向に保持する力も発生するため、ガイド部材を省略できる。しかし、特許文献1の技術では、面方向の位置決め精度について、さらなる改善の余地があった。
【0007】
そこで、本明細書では、半導体チップに接触することなく、半導体チップを適切に位置決めできるチップ保持具、チップ保持装置、および、半導体装置の製造装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示するチップ保持具は、半導体チップを非接触で保持する保持面と、前記保持面に陰圧を付与して前記半導体チップを吸引する吸引経路と、前記保持面に超音波振動を付与する振動発生部とを備え、前記保持面の外形サイズは、前記半導体チップの外形サイズよりも大きい、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記保持面には、前記半導体チップの外形の少なくとも一部に沿った形状の位置決め溝が形成されてもよい。
【0010】
さらに、前記振動発生部は、超音波振動を伝達するホーン部を有し、前記ホーン部の末端に接続された板状の保持部であって、その端面が前記保持面として機能する保持部を、さらに備え、前記保持部は、前記ホーン部と軸方向に重複している中央部と、前記中央部から径方向外側に張り出し、前記中央部より薄肉のフランジ部と、を有してもよい。
【0011】
また、前記位置決め溝の少なくとも一部は、前記フランジ部を厚み方向に貫通していてもよい。
【0012】
また、前記保持面に超音波振動を付与した際、前記位置決め溝より外側部分の振動振幅が、前記位置決め溝より内側部分の振動振幅より大きくてもよい。
【0013】
この場合、前記半導体チップは、前記位置決め溝より外側部分の振動振幅を受けて、前記位置決め溝の内側に位置するように、セルフアライメントされてもよい。
【0014】
本明細書で開示する他のチップ保持具は、半導体チップを非接触で保持する保持面と、前記保持面に陰圧を付与して前記半導体チップを吸引する吸引経路と、前記保持面に超音波振動を付与する振動発生部と、を備えるチップ保持具であって、前記吸引経路は、前記保持面に形成され、吸引源と連通する吸引孔を有し、前記保持面には、前記吸引孔に繋がるとともに面方向に延びる気流形成溝が形成されている、ことを特徴とする。
【0015】
この場合、前記気流形成溝は、前記半導体チップの外形より内側となるエリアにのみ形成されていてもよい。
【0016】
また、前記気流形成溝は、前記吸引孔から面方向に伸びる1以上の放射部を有してもよい。この場合、前記気流形成溝は、前記放射部に直接接続する一方で前記吸引孔を通らない1以上の周辺部をさらに有してもよい。また、前記周辺部は、前記吸引孔を取り囲み、前記1以上の放射部全てを連結する閉形状でもよい。
【0017】
また、前記気流形成溝の深さは、前記半導体チップの前記保持面からの浮上量より大きく、前記浮上量の50倍未満であってもよい。
【0018】
本明細書で開示するチップ保持装置は、半導体チップを非接触で保持するチップ保持装置であって、前記半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、前記保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、超音波エネルギまたは前記吸引力を制御するコントローラと、を備える、ことを特徴とする。
【0019】
この場合、前記コントローラは、前記保持面の位置を、動かす場合と、静止させる場合と、で前記保持面に付与する前記超音波エネルギまたは前記吸引力の少なくとも一方の大きさを変更してもよい。
【0020】
また、前記コントローラは、前記保持面を、動かす場合には、静止させる場合よりも、前記超音波エネルギまたは前記吸引力の少なくとも一方を大きくしてもよい。
【0021】
本明細書で開示する他のチップ保持装置は、半導体チップを非接触で保持するチップ保持装置であって、前記半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、前記チップ保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、前記超音波発生部および吸引源の駆動を制御するコントローラと、前記保持面により非接触で保持された前記半導体チップの表面に処理を施す表面処理装置、または、前記表面を検査する検査装置、の少なくとも一方と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、半導体チップを非接触で保持するチップ保持具と、前記チップ保持具の末端面である保持面に超音波振動を付与する超音波発生部と、前記保持面に形成された吸引孔に陰圧を付与して吸引力を生じさせる吸引経路と、前記保持面から前記半導体チップが離隔した状態で、前記超音波振動により生じる保持力と、前記吸引力と、前記半導体チップに作用する重力と、が釣り合うように、前記超音波発生部および吸引源の駆動を制御するコントローラと、を備え、前記保持面の外形サイズは、前記半導体チップの外形サイズよりも大きい、ことを特徴とする。
【0023】
この場合、前記チップ保持具は、チップ供給源から前記半導体チップを受け取った後、前記半導体チップを非接触で保持した状態のまま180度反転したうえで、前記半導体チップをボンディングツールに受け渡す、ピックアップコレットとして機能してもよい。
【0024】
また、前記半導体装置の製造装置は、前記半導体チップを基板に、ダイレクトボンディングしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本明細書で開示するチップ保持具によれば、半導体チップに接触することなく、当該半導体チップを保持具に対して適切に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】チップ保持装置の構成を示す図である。
図2】保持面の軸方向視図である
図3】位置決め溝の作用を示すイメージ図である。
図4】気流形成溝の作用を示すイメージ図である。
図5A】保持面に形成する溝の一例を示す図である。
図5B】保持面に形成する溝の他の一例を示す図である。
図5C】保持面に形成する溝の他の一例を示す図である。
図6A】保持面に形成する溝の他の一例を示す図である。
図6B】保持面に形成する溝の他の一例を示す図である。
図6C】保持面に形成する溝の他の一例を示す図である。
図7】他のチップ保持装置の構成を示す図である。
図8A】プラズマ処理を施す処理装置を示す図である。
図8B】清掃処理を施す処理装置を示す図である。
図9A】半導体チップのエッジを検査する検査装置を示す図である。
図9B】半導体チップの外観を検査する検査装置を示す図である。
図10】チップ保持装置を有する製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照してチップ保持装置10の構成について説明する。図1は、チップ保持装置10の構成を示す図である。このチップ保持装置10は、半導体チップ100を非接触で保持し、搬送する装置であり、例えば、半導体装置の製造装置や検査装置等に組み込まれる。
【0028】
チップ保持装置10は、図1に示すように、チップ保持具12と、超音波発生器14と、真空源20と、コントローラ22と、を備えている。チップ保持具12は、半導体チップ100を非接触で保持する。チップ保持具12は、略板状の保持部23と、当該保持部23から軸方向に延びるホーン部26と、を有している。保持部23の端面は、半導体チップ100を保持する保持面24として機能する。この保持面24には、気流形成溝34と位置決め溝36とが形成されているが、これら二種類の溝34,36については、後述する。また、チップ保持具12は、後述する真空源20に連通し、保持面24に陰圧を付与して半導体チップ100を吸引する吸引経路33も有している。保持面24の中央には、この吸引経路33の末端である吸引孔32が形成されている。
【0029】
なお、チップ保持具12の位置および姿勢は、適宜、変更できる。したがって、図1において、保持面24は、上方を向いているが、チップ保持具12の利用の状況によっては、チップ保持具12は、保持面24が鉛直方向と平行となる姿勢や、下方を向く姿勢等を取る。そして、チップ保持具12は、姿勢を変更した場合でも、半導体チップ100を非接触で保持し続けることができる。
【0030】
保持面24の裏側(すなわち半導体チップ100と反対側)からは、ホーン部26が軸方向に延びている。ホーン部26は、超音波発生器14で生成された超音波振動を、保持面24に伝達する部位である。このホーン部26の内部には、吸引孔32と真空源20とを連結する吸引経路33が形成されている。また、ホーン部26の基端は、超音波振動子16と機械的に連結されている。
【0031】
超音波発生器14は、超音波振動を発生させるもので、例えば、超音波振動子16と、交流電源18と、を有している。超音波振動子16は、電圧信号である駆動信号を受けて、縦振動を発生させる振動発生源である。この超音波振動子16は、例えば、交流電圧を受けて振動するチタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)を有しており、PZTを金属のブロックで挟み、ネジ(ボルト)で締め付け圧力をかけたボルト締めランジュバン型振動子(通称BLT又はBL振動子)である。交流電源18は、この超音波振動子16に、所定の共振周波数に相当する周波数の交番電圧を印加する。
【0032】
超音波発生器14を駆動することで、保持面24は、軸方向に超音波振動する。そして、保持面24が超音波振動することで、保持面24と、当該保持面24に近接対向する平面(例えば半導体チップ100の端面)との間に、超音波スクイーズ効果が生じ、これにより、半導体チップ100が、保持面24から離間した状態のまま、保持面24に保持される。
【0033】
真空源20は、陰圧を発生させるもので、例えば、エアポンプ等を有している。真空源20は、吸引経路33と連通しており、当該真空源20が駆動することで、吸引孔32に陰圧が作用し、半導体チップ100を保持面24に引き付ける吸引力が発生する。
【0034】
コントローラ22は、上述した超音波発生器14および真空源20の駆動を制御する。このコントローラ22は、物理的には、プロセッサ22aとメモリ22bとを有したコンピュータである。「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ22aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、メモリ22bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。また、プロセッサ22aおよびメモリ22bは、いずれも、単一である必要はなく、コントローラ22は、複数のプロセッサ22aや、複数のメモリ22bを有してもよい。
【0035】
このコントローラ22は、保持面24が半導体チップ100を非接触で保持できるように、超音波発生器14および真空源20の駆動を制御する。すなわち、上述した通り、超音波振動子16に交番電圧を印加すると、保持面24が超音波振動する。この超音波振動が生じた状態で、半導体チップ100を保持面24に近接させると、当該保持面24と半導体チップ100との間に、超音波スクイーズ効果が発生する。超音波スクイーズ効果は、微小隙間を介して対向する二つの平板の一方を振動させると、隙間内の粘性の影響により、当該隙間内に、外部よりも高い圧力が発生する効果である。この超音波スクイーズ効果が生じると、半導体チップ100と保持面24との間に両者の接触を阻害する空気膜Sfが形成されるとともに、半導体チップ100を保持面24で保持する保持力が発生する。
【0036】
ここで、超音波スクイーズ効果により生じる保持力(以下「超音波保持力」と呼ぶ)は、保持面24に垂直な方向および平行な方向(すなわち面方向)の双方に生じる。すなわち、超音波スクイーズ効果が生じた場合、半導体チップ100には、保持面24から離れる、もしくは、保持面24から浮上させる方向の力が作用する。また、超音波スクイーズ効果が生じた場合、半導体チップ100は、振動面内に留まろうとする。そのため、外力を受けて、半導体チップ100が面方向に一時的に位置ずれしたとしても、半導体チップ100は、その全体が振動面内に位置するように、面方向に移動し、保持面24と正対した状態に戻ろうとする。
【0037】
なお、超音波スクイーズ効果により生成される空気膜(以下「超音波スクイーズ膜Sf」と呼ぶ)の厚み、すなわち、半導体チップ100の保持面24からの浮上量Dfは、超音波エネルギが大きい(すなわち超音波振動の振幅が大きい)ほど、大きくなる。また、超音波保持力も、超音波エネルギが大きいほど大きくなる。
【0038】
本例では、こうした超音波保持力をアシストするために、さらに、保持面24に陰圧による吸引力も発生させている。コントローラ22は、半導体チップ100が保持面24から浮上した状態で、この吸引力と、超音波保持力と、半導体チップ100に作用する重力と、が釣り合うように、真空源20、超音波発生器14の駆動を制御する。
【0039】
ところで、上述した通り、超音波スクイーズ効果が生じると、半導体チップ100は、振動面内に位置しようとする。そのため、保持面24を、半導体チップ100とほぼ同じ形状にすれば、超音波スクイーズ効果により、半導体チップ100は、その全体が振動面内(すなわち保持面24の外形より内側のエリア内)に位置するように、面方向に自動的に移動する。すなわち、半導体チップ100の面方向のセルフアライメントが可能となる。
【0040】
ただし、こうした超音波スクイーズ効果による面方向の保持力は、それほど大きいものではない。そのため、半導体チップ100に作用する重力や慣性力の大きさによっては、半導体チップ100の面方向位置決めを十分な精度で行えない場合もある。そこで、本例では、半導体チップ100の面方向の位置決め精度をより向上するために、保持面24を半導体チップ100よりも大きくするとともに、当該保持面24に、いくつかの溝34,36を形成している。以下、これについて詳説する。
【0041】
図2は、保持面24の軸方向視図である。図2において、斜めハッチング部分は、保持部23を貫通していない凹部を示しており、クロスハッチング部分は、保持部23を貫通した孔部を示している。図2に示すように、保持面24には、吸引孔32と、気流形成溝34と、位置決め溝36と、が形成されている。位置決め溝36は、半導体チップ100の外形とほぼ同じ形状である。本例の場合、半導体チップ100は、1辺が約L1の正方形であるため、位置決め溝36の内周縁の形状も、1辺が約L1の正方形としている。なお、上述した通り、保持面24は、ホーン部26と重複する中央部28と、中央部28より径方向外側に広がるフランジ部30と、に大別されるが、位置決め溝36は、このフランジ部30に位置している。位置決め溝36の少なくとも一部は、フランジ部30の肉厚より十分に浅い凹部36aであり、位置決め溝36の残りは、フランジ部30を厚み方向に貫通した孔部36bである。図2の例では、位置決め溝36のうち、矩形の直線部分は、フランジ部30を厚み方向に貫通しており、矩形のコーナ部は、フランジ部30を貫通しない凹部となっている。
【0042】
こうした位置決め溝36の作用について図3を参照して説明する。図3は、位置決め溝36の作用を示すイメージ図である。なお、図3では、気流形成溝34の図示は省略している。位置決め溝36を形成した場合、形成しない場合に比べて、半導体チップ100の面方向の位置決め精度が向上する。かかる作用が得られる原理は、位置決め溝36を境界として、超音波振動の振幅が急変するためと推測される。
【0043】
すなわち、超音波発生器14を駆動した場合、保持面24には、超音波振動が生じる。この超音波振動の振幅は、位置決め溝36が無い場合には、保持面24の外周縁に近づくにつれて、徐々に大きくなると考えられる。超音波保持力は、超音波振動の振幅に応じて変化するため、位置決め溝36が無い場合であっても、半導体チップ100が保持面24の中心から面方向にズレた場合には、半導体チップ100に作用する超音波保持力が、左右でアンバランスとなる。半導体チップ100は、この力のアンバランスを解消するべく、面方向に移動するため、半導体チップ100の面方向の位置ズレが自動的に修正、すなわち、セルフアライメントされる。ただし、位置決め溝36が無い場合、半導体チップ100の位置ズレに起因して生じる超音波保持力のアンバランスは、微小であるため、セルフアライメントの力は小さい。
【0044】
一方、位置決め溝36を形成した場合、当該位置決め溝36の形成箇所において、保持面24の強度が局所的に低下する。かかる保持面24に超音波振動を付与すると、位置決め溝36より外側部分は、当該位置決め溝36を支点として揺動しやすくなる。結果として、位置決め溝36より内側部分に比べて外側部分のほうが、急激に振動振幅が大きくなり、超音波保持力が位置決め溝36を境界として急変する。
【0045】
そのため、図3に示すように、半導体チップ100の面方向一端が、位置決め溝36を越えて面方向外側に位置すると、超音波保持力の左右のバランスが大幅に崩れる。半導体チップ100には、こうしたアンバランスを解消するために、比較的、大きな力が作用し、半導体チップ100が位置決め溝36の内側へと移動する。そして、これにより、位置決め溝36が無い場合に比べて、位置決め溝36がある場合には、半導体チップ100のセルフアライメントの精度を向上できる。
【0046】
次に、気流形成溝34について説明する。図2に示すように、保持面24の中心には、吸引孔32が形成されており、この吸引孔32は、真空源20に連通している。気流形成溝34は、この真空源20と繋がった溝である。この気流形成溝34の形状は、吸引孔32に繋がるのであれば、特に限定されない。本例において、気流形成溝34は、吸引孔32から放射状または十文字状に延びる4つの放射部34aと、当該放射部34aに直接接続する一方で吸引孔32を通らない周辺部34bと、で構成されている。図2に示すように、周辺部34bは、1以上の放射部34a全てを連結するように、吸引孔32を取り囲む閉形状、より具体的には、略矩形状である。こうした気流形成溝34は、図2に示すように、位置決め溝36よりも内側、換言すれば、半導体チップ100の外形より内側となるエリアにのみ形成されている。
【0047】
こうした気流形成溝34の作用について図4を参照して説明する。図4は、気流形成溝34の作用を示すイメージ図である。なお、図4では、位置決め溝36の図示は省略している。気流形成溝34を形成した場合、形成しない場合に比べて、半導体チップ100の面方向の位置決め精度が向上する。かかる作用が得られる原理は、気流形成溝34を形成することで、半導体チップ100と保持面24との間を流れる面方向の気流が増速し、安定するためと推測される。
【0048】
すなわち、超音波スクイーズ効果により、半導体チップ100を浮上させたまま、真空源20による吸引力を発生させた場合、浮上隙間には、面方向かつ中心向きの気流が発生する。ここで、気流形成溝34が無い場合、中心に向かう面方向の気流は、流体粘性の影響を受けて、速度が低く、不安定になりやすい。また、吸引力は、吸引孔32近傍にのみ、局所的に作用する。この場合、半導体チップ100は、面方向の位置ずれが生じていたとしても、面方向に移動しにくく、位置ずれを自己修正することが難しい。
【0049】
一方、図4に示すように、気流形成溝34を形成した場合、当該気流形成溝34付近においては、半導体チップ100と保持面24との隙間の厚みが大きくなり、気流全体に作用する流体粘性の影響が低下する。その結果、面方向の気流の速度が増加し、面方向の気流が安定する。特に、半導体チップ100の外周近傍(図4における領域A付近)における気流を、気流形成溝34が無い場合に比べて大幅に安定できる。こうした面方向の安定した気流は、半導体チップ100の中心が、吸引孔32(ひいては保持面24の中心)に近づくような力を半導体チップ100に付与する。そして、これにより、半導体チップ100が保持面24に対して自動的に位置決めされる。また、気流形成溝34を形成することで、吸引孔32付近で生じる吸引力のピークを低減でき、吸引力を面方向に分散できる。これにより、半導体チップ100が、面方向に移動しやすくなり、面方向の位置ずれを自己修正しやすくなる。
【0050】
なお、こうした気流形成溝34の深さは、特に限定されない。しかし、気流形成溝34が過度に浅いと、浮上隙間における面方向の気流の流速が、流体粘性の影響により小さくなる。そこで、気流形成溝34の深さは、半導体チップ100の保持面24からの浮上量Df以上としてもよい。また、気流形成溝34が過度に深いと、保持面24の振動モードや振動振幅に影響を与える。そこで、気流形成溝34は、保持面24の振動モードおよび振動振幅に影響を与えない大きさとする。例えば、気流形成溝34は、浮上量Dfの100倍未満、または、50倍未満、または、10倍未満としてもよい。
【0051】
以上の説明で明らかな通り、本例によれば、半導体チップ100の自動的な位置決め、いわゆる、セルフアライメントにおける位置精度をより向上できる。なお、これまでの説明は、一例であり、保持面24の外形サイズが、半導体チップ100の外形サイズよりも大きい、あるいは、保持面24に吸引孔32に繋がった気流形成溝34が形成されているのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。
【0052】
したがって、保持面24の外形サイズを、半導体チップ100の外形サイズよりも大きくするのであれば、当該保持面24に、溝を一切形成しなくてもよい。また、保持面24に気流形成溝34を形成するのであれば、保持面24の外形サイズは、半導体チップ100の外形サイズと同じ、または、より小さくてもよい。
【0053】
また、位置決め溝36および気流形成溝34の形状および組み合わせは、適宜、変更されてもよい。例えば、図5Aに示すように、保持面24に位置決め溝36のみを形成し、気流形成溝34を形成しなくてもよい。また、位置決め溝36のうちフランジ部30を貫通する孔部(クロスハッチング部分)の位置や範囲も適宜、変更してもよい。例えば、図5Aに示すように、位置決め溝36は、孔部を有さなくてもよい。また、位置決め溝36の形状は、始端または終端が存在しない閉じた曲線である必要はなく、図5Cに示すように、1以上の開いた曲線形状であってもよい。この場合、位置決め溝36の全体が、フランジ部30を厚み方向に貫通する孔部(クロスハッチング部分)であってもよい。
【0054】
また、図5Bに示すように、保持面24に、気流形成溝34のみを形成し、位置決め溝36を形成しなくてもよい。また、気流形成溝34は、吸引孔32に繋がっているのであれば、その形状も適宜、変更されてもよい。例えば、気流形成溝34を構成する放射部34aの個数は、限定されず、4本より少なくてもよいし、4本より多くてもよい。したがって、例えば、気流形成溝34は、図5Bに示すように、二本の放射部34aを有し、全体として、デジタル数字の「8」のような形状でもよい。また、気流形成溝34のうち、周辺部34bは、矩形に限らず、図5Cに示すような円形でもよい。また、放射部34aは、図6Aに示すように、周辺部34bを越えて、外側まで延びてもよい。さらに、図6Bに示すように、気流形成溝34は、吸引孔32から面方向に延びる放射部34aのみを有し、周辺部34bが無い形状でもよい。さらに、周辺部34bは、1以上の放射部34a全てを連結する閉形状である必要はなく、端部を有する線分でもよい。したがって、例えば、気流形成溝34は、「H」のような形状でもよい。さらには、気流形成溝34は、図6Cに示すように、位置決め溝36と平行な直線状の放射部34aと、放射部34aの端部から両側方向に直線状に延びる周辺部34bとを有する「T」のような形状であってもよい。
【0055】
ところで、上述した通り、本例のチップ保持具12は、移動および回転可能であり、その姿勢や位置を変更可能である。コントローラ22は、こうしたチップ保持具12の動きおよび姿勢の変化に応じて、保持面24に付加する超音波エネルギおよび吸引力を変更する。
【0056】
すなわち、保持面24の動きに応じて、半導体チップ100に作用する慣性力の向きや大きさが変化する。コントローラ22は、こうした慣性力の向きおよび大きさの変化が生じても、半導体チップ100を非接触で保持できるように、超音波エネルギおよび吸引力を調整する。具体的には、コントローラ22は、保持面24が動く際には、静止している場合に比べて、超音波エネルギまたは吸引力の少なくとも一方を大きくする。
【0057】
例えば、保持面24が、その面方向(例えば図1における矢印A1方向)に移動する場合を考える。この場合、半導体チップ100には、面方向かつ移動方向と逆向きの慣性力が作用する。この慣性力に抗して、半導体チップ100の保持状態を維持するために、コントローラ22は、半導体チップ100の面方向の保持力が増加するように、超音波エネルギおよび吸引力を調整する。具体的には、コントローラ22は、超音波エネルギを一定としつつ、面方向の保持力が増加するように、吸引力を増加させてもよい。また、別の形態として、コントローラ22は、吸引力を一定としつつ、面方向の保持力が増加するように、超音波エネルギを増加させてもよい。
【0058】
また、チップ保持具12が、その軸方向であって、半導体チップ100に近づく方向(例えば図1における矢印A2方向)に移動する場合を考える。この場合、慣性力により半導体チップ100が保持面24に近づき、半導体チップ100と保持面24との超音波スクイーズ膜Sfの厚みが減少するおそれがある。そこで、この場合には、超音波スクイーズ膜Sfの厚み減少を防止できるように、超音波エネルギを増加させてもよい。
【0059】
また、チップ保持具12が、その軸方向であって、半導体チップ100から離れる方向(例えば図1における矢印A3方向)に移動する場合を考える。この場合、慣性力により半導体チップ100が保持面24から離れ、保持面24による半導体チップ100の保持力が低下するおそれがある。そこで、この場合には、保持力の低下を防止するために、吸引力を増加、あるいは、超音波エネルギを増加させてもよい。
【0060】
また、チップ保持具12の姿勢に応じて、半導体チップ100に、重力が与える影響が変化する。例えば、チップ保持具12が上向きの場合、半導体チップ100に作用する重力は、半導体チップ100を保持面24に近づける力として作用する。一方、チップ保持具12が下向きの場合、半導体チップ100に作用する重力は、半導体チップ100を保持面24から離す力として作用する。そこで、コントローラ22は、チップ保持具12が下向きの場合には、上向きの場合に比べて、保持面24による保持力が増加するように、超音波エネルギおよび吸引力の少なくとも一方を増加させてもよい。
【0061】
また、チップ保持具12が横向きの場合、半導体チップ100に作用する重力は、半導体チップ100を面方向に移動させる力、すなわち、半導体チップ100の面方向位置ズレを生じさせる力として作用する。そこで、コントローラ22は、チップ保持具12が横向きの場合には、上向きまたは下向きの場合に比べて、保持面24による面方向の保持力が増加するように、超音波エネルギを増加させてもよい。
【0062】
次に、他のチップ保持装置10について、図7を参照して説明する。図7は、他のチップ保持装置10の構成を示す図である。このチップ保持装置10は、図1のチップ保持装置10に加え、さらに、処理装置50および検査装置52を有している。処理装置50は、チップ保持具12に非接触で保持された半導体チップ100の表面に、所定の処理、例えば、プラズマ処理や清掃処理を施す装置である。図8A図8Bに、こうした処理装置50の一例を示す。図8Aは、プラズマ処理を施す処理装置50で、プラズマ照射ヘッド50aを有している。図8Aに示すように、プラズマ照射ヘッド50aは、半導体チップ100のうち、保持面24と反対側の面に対してプラズマを照射し、当該反対側の面にプラズマ処理を施すことができる。また、図8Bは、半導体チップ100の表面に清掃処理を施す処理装置で、異物を除去するエアブロー50bと、吹き飛ばされた異物を回収する吸引ダクト50cと、を有する。かかる処理装置50によれば、半導体チップ100の表面に付着した異物を除去できる。
【0063】
そして、図8A図8Bから明らかな通り、本例によれば、こうした表面処理(プラズマ処理や清掃処理等)を、半導体チップ100が浮上した状態で行える。その結果、半導体チップ100の劣化や汚染を効果的に防止できる。
【0064】
検査装置52は、チップ保持具12に非接触で保持された半導体チップ100を検査する装置である。図9A図9Bに、こうした検査装置52の一例を示す。図9Aは、半導体チップ100のエッジを検査する検査装置52であり、レーザ変位計52aを有している。レーザ変位計52aは、対象物にレーザを照射し、その反射光に基づいて、対象物までの距離や対象物の有無を検知する。かかるレーザ変位計52aを、半導体チップ100の面方向に走査することで、半導体チップ100のエッジの位置を検知できる。
【0065】
また、図9Bは、半導体チップ100の外観を検査する検査装置52であり、検査用カメラ52bを有している。検査用カメラ52bは、半導体チップ100のうち、保持面24と反対側の面を撮像する。コントローラ22は、得られた画像に基づいて、半導体チップ100の品質等を判断する。
【0066】
そして、図9A図9Bから明らかな通り、本例によれば、こうした半導体チップ100の検査(エッジ検査や外観検査)を、半導体チップ100が浮上した状態で行える。その結果、半導体チップ100の劣化や汚染を効果的に防止できる。なお、超音波スクイーズ効果を利用して半導体チップ100を浮上させた場合、半導体チップ100は、軸方向に微小振動する。この半導体チップ100の微小振動の振幅は、真空源20による吸引実行中よりも、当該吸引を解除したほうが低下する。そこで、こうした微小振動が検査精度に与える影響を低減するために、検査の実行期間中は、真空源20の駆動を停止し、吸引力を無くしてもよい。また、別の形態として、微小振動が検査精度に与える影響を低減するために、検査装置52による検査値のサンプリングタイミングを、半導体チップ100の振動周期に同期させてもよい。
【0067】
また、これまで説明したチップ保持装置10は、例えば、半導体装置の製造装置に組み込まれてもよい。図10は、チップ保持装置10を有する製造装置60の一例を示す図である。図10の製造装置60は、1以上の半導体チップ100を基板110にボンディングすることで半導体装置を製造する装置である。
【0068】
この製造装置60は、チップ供給源61と、ピックアップ部62と、ボンディング部64と、を有している。チップ供給源61には、ダイシングテープ66に貼り付けられた半導体チップ100が用意されている。ピックアップ部62は、ダイシングテープ66に貼り付けられた半導体チップ100を下側から突き上げる突き上げピン70と、突き上げられた半導体チップ100をピックアップするピックアップコレット68と、を有している。本例では、上述したチップ保持装置10を、このピックアップコレット68として用いている。
【0069】
半導体チップ100は、基板110に接合される面、すなわち、接合面(図10における太線部分)が上を向いた姿勢でダイシングテープ66に貼り付けられている。ピックアップコレット68のチップ保持具12は、この接合面を保持面24で非接触で保持する。換言すれば、接合面は、保持面24と接触しないため、異物付着が防止され、また、接触時の衝撃による欠け等も効果的に防止される。
【0070】
ピックアップコレット68は、ダイシングテープ66から半導体チップ100を受けとれば、規定の回転軸72を中心として、180度回転する。これにより、保持面24は、下向きの状態から上向きの状態に変化する。この回転移動の際も、半導体チップ100を適切に保持できるように、コントローラ22は、回転移動時には、静止時よりも、超音波エネルギまたは吸引力の少なくとも一方を増加させる。
【0071】
ボンディング部64は、基板110が載置されるボンディングステージ76と、半導体チップ100を保持して搬送するボンディングツール74と、を有している。ボンディングツール74は、その末端面において、半導体チップ100を吸引保持し、半導体チップ100を搬送する。このボンディングツール74は、図10に示すように、上向き姿勢のピックアップコレット68から半導体チップ100を受け取り、半導体チップ100の接合面と反対側の面を吸引保持する。また、ボンディングツール74は、半導体チップ100を基板110に押し当て、半導体チップ100を基板110にボンディングする。一つの基板110に必要な個数の半導体チップ100をボンディングすることで、半導体装置120が製造される。
【0072】
ここで、このボンディングの形態は、特に限定されないが、本例では、半導体チップ100を基板110にダイレクトボンディングする。ダイレクトボンディングは、接着剤を利用することなく、半導体チップ100を直接、基板110に接合するボンディング形態である。例えば、ダイレクトボンディングでは、半導体チップ100の接合面に形成されたチップ側電極を、基板110に形成された基板側電極に接合する。このとき、電極は、熱を用いて溶着されてもよいし、常温で接合されてもよい。
【0073】
ところで、こうしたダイレクトボンディングでは、接合面の異物や欠けの影響を受けやすく、異物や欠けが僅かでも存在すると接合欠陥が生じやすい。本例のピックアップコレット68は、非接触で半導体チップ100を保持しており、半導体チップ100の接合面は、基板110に接合されるまで、他部材に接触しない。そのため、本例によれば、接合面への異物の付着や欠けの発生を効果的に防止できる。そして、これにより、ダイレクトボンディングにおける接合欠陥を効果的に防止できる。
【0074】
なお、ここで説明した構成は、一例であり、製造装置60が、半導体チップ100を非接触で保持するチップ保持装置10を有するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、製造装置60は、NCF等の接着剤を用いて半導体チップ100を基板110に接合してもよい。また、ピックアップコレット68だけでなく、ボンディングツール74にも、チップ保持装置10を利用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 チップ保持装置、12 チップ保持具、14 超音波発生器、16 超音波振動子、18 交流電源、20 真空源、22 コントローラ、23 保持部、24 保持面、26 ホーン部、28 中央部、30 フランジ部、32 吸引孔、33 吸引経路、34 気流形成溝、36 位置決め溝、50 処理装置、50a プラズマ照射ヘッド、50b エアブロー、50c 吸引ダクト、52 検査装置、52a レーザ変位計、52b 検査用カメラ、60 製造装置、61 チップ供給源、62 ピックアップ部、64 ボンディング部、66 ダイシングテープ、68 ピックアップコレット、70 突き上げピン、72 回転軸、74 ボンディングツール、76 ボンディングステージ、100 半導体チップ、110 基板、120 半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10