(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045573
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】導電性部材の形成方法およびチャネルの形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154079
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田村 知大
(72)【発明者】
【氏名】藁科 尚士
【テーマコード(参考)】
5F152
【Fターム(参考)】
5F152AA06
5F152CD13
5F152CE05
5F152CE06
5F152CF17
5F152FF21
5F152NN03
5F152NQ03
(57)【要約】
【課題】制御性良くかつ簡易に結晶粒を大粒径化することができる導電性部材の形成方法およびチャネルの形成方法を提供する。
【解決手段】まず、得ようとする導電性部材を構成する第1元素と、第1元素と共晶反応を生じる第2元素とを含む第1部分と、第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む第2部分とを基板上に形成する。次に、第1部分を液相状態にしてから基板の温度を調整して第1元素の初晶を晶出させる。次に、基板の温度を同じ温度に維持した状態で、第2元素を第1部分から第2部分に拡散させて、第1部分における第1元素の結晶の液相に対する比率を増加させ、第1元素の結晶粒を成長させる。次に、第2元素の第2の部分への拡散が終了した後の第1部分を第1元素の結晶粒を有する導電性部材とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材の形成方法であって、
得ようとする導電性部材を構成する第1元素と、前記第1元素と共晶反応を生じる第2元素とを含む第1部分と、前記第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む第2部分とを基板上に形成することと、
前記第1部分を液相状態にしてから前記基板の温度を調整して前記第1元素の初晶を晶出させることと、
前記基板の温度を同じ温度に維持した状態で、前記第2元素を前記第1部分から前記第2部分に拡散させて、前記第1部分における前記第1元素の結晶の液相に対する比率を増加させ、前記第1元素の結晶粒を成長させることと、
前記第2元素の前記第2の部分への拡散が終了した後の前記第1部分を前記第1元素の結晶粒を有する前記導電性部材とすることと、
を有する導電性部材の形成方法。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1元素を含む導電層と、前記第2元素を含む金属層とを積層して構成される、請求項1に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項3】
前記第1元素は半導体材料である、請求項1または請求項2に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項4】
前記第1元素はシリコンである、請求項3に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項5】
前記第1部分は、前記第1元素よりも融点が低く、前記第1元素に対して全率固溶体を形成する第4元素が添加され、前記導電性部材は前記第1元素に前記第4元素が添加さている、請求項1または請求項2に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項6】
前記第1元素および前記第4元素は半導体材料である、請求項5に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項7】
前記第1元素はシリコンであり、前記第4元素はゲルマニウムである、請求項6に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項8】
前記第2元素はアルミニウムであり、前記第3元素はチタンである、請求項4または請求項7に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項9】
前記第1元素はゲルマニウムである、請求項3に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項10】
前記第1部分と前記第2部分との間に、前記第2元素の障壁となる障壁層を設け、前記障壁層により前記第2元素の前記第2部分への拡散を抑制し制御する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項11】
前記障壁層は窒化チタンである、請求項10に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項12】
前記第1部分を前記導電性部材とした後、前記導電性部材よりも上に存在する部分を除去することをさらに有する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項13】
前記導電性部材よりも上に存在する部分を除去した後、前記導電性部材の上に前記第1元素を含む非晶質導電層を形成し、固相エピタキシャル成長により前記非晶質導電層に前記導電性部材の結晶粒を転写して、前記導電性部材をより厚く形成する、請求項12に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項14】
前記第1部分および前記第2部分との間に、前記第1元素が前記第2部分へ拡散することを抑制する拡散抑制層を設ける、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項15】
前記拡散抑制層は、前記第1元素を含む、請求項14に記載の導電性部材の形成方法。
【請求項16】
半導体装置のチャネルを形成するチャネルの形成方法であって、
得ようとするチャネルを構成する半導体材料である第1元素と、前記第1元素と共晶反応を生じる第2元素とを含む第1部分と、前記第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む第2部分とを基板上に形成することと、
前記第1部分を液相状態にしてから前記基板の温度を調整して前記第1元素の初晶を晶出させることと、
前記基板の温度を同じ温度に維持した状態で、前記第2元素を前記第1部分から前記第2部分に拡散させて、前記第1部分における前記第1元素の結晶の液相に対する比率を増加させ、前記第1元素の結晶粒を成長させることと、
前記第2元素の前記第2の部分への拡散が終了した後の前記第1部分を、前記第1元素の結晶粒を有する前記チャネルとなる導電性部材とすることと、
前記導電性部材よりも上に存在する部分を除去することと、
を有するチャネルの形成方法。
【請求項17】
前記第1元素はシリコンである、請求項16に記載のチャネルの形成方法。
【請求項18】
前記第1部分は、前記第1元素としてのシリコンに第4元素としてゲルマニウムが添加され、前記導電性部材はシリコンゲルマニウムである、請求項16に記載のチャネルの形成方法。
【請求項19】
前記第1部分と前記第2部分との間に、前記第2元素の障壁となる障壁層を設け、前記障壁層により前記第2部分への拡散を抑制し制御する、請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のチャネルの形成方法。
【請求項20】
前記導電性部材よりも上に存在する部分を除去した後、前記導電性部材の上に前記第1元素を含む非晶質導電層を形成し、固相エピタキシャル成長により前記非晶質導電層に前記導電性部材の結晶粒を転写して、前記導電性部材をより厚く形成し、前記チャネルをより厚くする、請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のチャネルの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性部材の形成方法およびチャネルの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば多結晶シリコンをチャネルに用いた半導体装置において、オン電流を担うキャリアは、結晶粒界による散乱を受ける。このような結晶粒界の散乱は、チャネル抵抗を増加させ、電流値を低下させる。このため、チャネルに用いる多結晶シリコンの大粒径化により、キャリアの散乱元である結晶粒界を減らす試みがなされている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、Ni触媒を用いた金属誘起横方向成長法(MILC)により3Dフラッシュメモリにおける多結晶シリコンチャネルを大粒径化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hidenori Miyagawa et al., "Metal-AssistedSolid-Phase Crystallization Process for Vertical Monocrystalline Si Channel in3D Flash Memory", Published in: 2019 IEEE International Electron DevicesMeeting (IEDM) <URL:https://doi.org/10.1109/IEDM19573.2019.8993556>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、制御性良くかつ簡易に結晶粒を大粒径化することができる導電性部材の形成方法およびチャネルの形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る導電性部材の形成方法は、導電性部材の形成方法であって、得ようとする導電性部材を構成する第1元素と、前記第1元素と共晶反応を生じる第2元素とを含む第1部分と、前記第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む第2部分とを基板上に形成することと、前記第1部分を液相状態にしてから前記基板の温度を調整して前記第1元素の初晶を晶出させることと、前記基板の温度を同じ温度に維持した状態で、前記第2元素を前記第1部分から前記第2部分に拡散させて、前記第1部分における前記第1元素の結晶の液相に対する比率を増加させ、前記第1元素の結晶粒を成長させることと、前記第2元素の前記第2の部分への拡散が終了した後の前記第1部分を前記第1元素の結晶粒を有する前記導電性部材とすることと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、制御性良くかつ簡易に結晶粒を大粒径化することができる導電性部材の形成方法およびチャネルの形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1の構造体の第1部分を液相とした状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の構造体において第1部分から第2元素を外方拡散させることにより得られた第1元素の巨大な結晶粒を有する導電性部材を示す断面図である。
【
図4】第1元素がSiで第2元素がAlの場合において、Siの結晶成長のメカニズムを説明するためのSi-Alの二元状態図である。
【
図5】Si-Al系において液相温度からの冷却過程でSiを結晶成長させる場合を説明するためのSi-Alの二元状態図である。
【
図6】
図3の構造体から導電性部材よりも上の部分を除去した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の導電性部材の上に非晶質導電層を形成し、固相エピタキシャル成長させて、全体をより厚い導電性層とする際の工程を説明するための図である。
【
図8】第2の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。
【
図9】
図8の構造体の第1部分を液相とした状態を示す断面図である。
【
図10】
図8の構造体において第1部分から第2元素を外方拡散させることにより得られた第1元素と第4元素を含む巨大な結晶粒を有する導電性部材を示す断面図である。
【
図11】第3の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
<経緯および概要>
多結晶シリコンのような多結晶導電体を、半導体装置のチャネルのようにキャリアの移動度を高くする必要がある用途に使用する場合、キャリアの散乱源である結晶粒界を減らすべく、結晶粒径を大きくすることは従来から検討されている。結晶粒径を大きくする技術としては、固相の非晶質状態から結晶の元となる析出核の晶出を制限してその数を減らし、徐冷することで先に晶出した析出核(初晶)のみを成長させる技術が周知である。
【0011】
このような方法を半導体製造プロセスに用いる場合、基板(ウエハ)面内での精緻な温度コントロールが必要であるが、基板面内を等しい冷却速度で均一に徐冷制御することは事実上不可能である。また、核形成を液相から行う場合、融点を下げるべく2成分もしくは多元からなる系を用いると、冷却過程で固液2相となり、さらに固液界面での潜熱の排熱が生じる場合では、結晶はデンドライト(樹枝状結晶)成長してしまう場合があり、他成分がデンドライト間に残留する。このため組成が均一で平坦な結晶が得難い。
【0012】
そこで、一態様では、結晶成長を等温プロセスにおいて実施する。すなわち、得ようとする導電性部材を構成する第1元素と、その第1元素と共晶反応を生じる第2元素とを含む第1部分と、第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含み、第1部分から第2元素が拡散可能な第2部分とを基板上に形成する。そして、第1部分を液相状態にしてから基板温度を調整して第1元素の初晶を晶出させ、その温度を維持した状態で、第2元素を第1部分から第2部分に拡散させて、第1部分における第1元素の結晶の液相に対する比率を増加させ、第1元素の結晶粒を成長させる。そして、第2元素の第2の部分への拡散が終了した後の第1部分を、大粒径の結晶粒を有する導電性部材とする。このため、徐冷速度を基板面内で制御する必要がなく、精緻な温度制御が不要となり、基板面内で温度の不均一があっても制御性良く結晶粒を大粒径化することができる。また、特殊な方法を用いる必要なく簡易に結晶粒を大粒径化した導電性部材を形成することができる。
【0013】
<具体的な実施形態>
以下、具体的な実施形態について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。
図1に示すように、最初に、基板上にSiO
2等からなる絶縁膜10を介して、得ようとする導電性部材を構成する第1元素からなる導電層1を形成し、その上に第1元素と共晶反応を生じる第2元素からなる金属層2を形成する。導電層1と金属層2とで第1元素と第2元素とを含む第1部分11が形成される。そして、金属層2の上に、障壁層4を介して、第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む金属間化合物形成層3を形成する。金属間化合物形成層3は、第1部分11から第2元素が拡散可能な第2部分12として構成される。
【0015】
障壁層4は、第2元素の障壁となる層であり、第2元素の第2部分12(金属間化合物形成層3)への拡散を抑制し制御する機能を有する。なお、
図1の例では、金属間化合物形成層3の上に上層に対する元素の拡散を抑制する機能を有する障壁層4aが形成されている。障壁層4aは、障壁層4と同じ材料で構成することができる。
【0016】
導電層1、金属層2、金属間化合物形成層3、障壁層4,4aは、CVD、ALD、PVDなどの薄膜形成技術により形成される。
【0017】
導電層1を構成する第1元素は、形成しようとする導電性部材となるものであり、例えば、半導体材料であるシリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)等を用いることができる。金属層2は、上述したように、第1元素と共晶反応を生じる第2元素で構成される。すなわち、第2元素は、第1元素に対して以下の(1)式を満たす。
E12-(E11+E22/2)>0 ・・・(1)
ここで、E12は第1元素と第2元素間の結合エネルギー、E11は第1元素間の結合エネルギー、E22は第2元素間の結合エネルギーである。(1)式では、第1元素と第2元素間の結合エネルギーのほうが、第1元素間および第2元素間の結合エネルギーの平均値よりも高く、第1元素と第2元素は反発的である。第1元素に対して第2元素の固溶限は1mol%未満であることが好ましい。
【0018】
導電層1と金属層2の各々の膜厚は、これらが溶融し第1元素と第2元素とが液相状態から液相線温度に達したときに、初晶として第1元素が晶出する組成となるように調整する。
【0019】
また、金属間化合物形成層3は、上述したように、第2元素と金属間化合物を形成する第3元素を含む。すなわち、第3元素は、第2元素に対して以下の(2)式を満たすものとする。
E23-(E22+E33/2)<0 ・・・(2)
ここで、E23は第2元素と第3元素間の結合エネルギー、E22は第2元素間の結合エネルギー、E33は第3元素間の結合エネルギーである。つまり、第2元素と第3元素間の結合エネルギーのほうが、第2元素間および第3元素間の結合エネルギーの平均値よりも高く、第2元素と第3元素は互いに引き合う傾向がある。
【0020】
第1元素がSiの場合、第2元素としては、例えばアルミニウム(Al)を用いることができる。また、第2元素がAlの場合、金属間化合物形成層3を構成する第3元素として、例えばチタン(Ti)を用いることができ、障壁層4,4aを構成する材料として、例えば窒化チタン(TiN)を挙げることができる。
【0021】
第1元素がGeの場合、第2元素としては、例えばスズ(Sn)を挙げることができる。また、第2元素がSnの場合、第3元素は、例えばTiを挙げることができ、障壁層4,4aを構成する材料としては、例えばTiNを挙げることができる。
【0022】
本実施形態では、第1元素と第2元素とが液相となる温度とし、
図2に示すように、導電層1と金属層2とを溶融させて第1部分11を液相状態としてから、プロセス温度(基板温度)を調整して第1元素の初晶を晶出させ、その温度を維持した状態で第2元素を外方拡散させて初晶を成長させる。すなわち、上記(1)式および(2)式を満たすことにより、第1部分11と、第2部分12となる金属間化合物形成層3との間には、第2元素の化学ポテンシャル勾配が形成され、等温プロセスにより、障壁層4を介して第2元素の第2部分12への外方拡散が進む。第2元素の外方拡散により第1元素の濃度が増加し、第1元素が過飽和になった時点で液相中に第1元素が初晶として析出し、成長し始める。そして、さらに第2元素の外方拡散が進むと、第1部分11における第1元素の結晶の液相に対する比率が増加し、結晶成長が進行する。
【0023】
ここで重要な点としては、第2元素の外方拡散が第1元素の結晶成長プロセスの律速過程となる点である。したがって、障壁層4の材質(第2元素の拡散速度、密度)、膜厚やプロセス温度(一定)により第2元素の外方拡散による結晶成長を制御することにより結晶粒径を設計することができ、最終的に、
図3に示すように、第1部分11が、第1元素の巨大な結晶粒21を有する導電性部材31となる。第1元素がSiやGeのような半導体材料であれば、導電性部材31は半導体装置のチャネルとして適用することができる。金属間化合物形成層3は、第2元素が取り込まれて金属化合物が形成され、金属間化合物層32に変化する。
【0024】
具体例として、第1元素がSiで第2元素がAlの場合について説明する。
図4の二元状態図に示すように、20mole%Si-80mole%Alの組成(C
1)では、初晶が晶出する温度は700℃であり、600~700℃の間の温度t1の場合、組成C
1における液相/固相のmole比は、図中のl
1、S
1を用いて、固相:液相=l
1C
1:S
1C
1と表すことができる。
【0025】
もし、温度t1において、さらに第2元素の外方拡散が進み、凝固過程でSiの組成が非常にゆっくりとC1からC2に変化すると、液相/固相のmole比は、固相:液相=l1C2:S1C2となり、結晶の液相に対する比率はl1C1からl1C2に増加する。これにより結晶成長が進行し、最終的に、導電性部材31として、巨大な結晶粒を有する多結晶シリコンが形成される。
【0026】
液相温度からの冷却過程でSiを結晶成長させる場合は、結晶の析出数は「組成」と「温度」によって決まり、結晶成長は「冷却速度」で決まる。例えば、Si-Al系の場合、
図5の二元状態図に示すように、20mole%Si-80mole%Alの組成(C
1)では、700℃で初晶が晶出した後、所望の冷却速度で冷却することにより結晶成長させる。したがって、上述したように、基板面内での精緻な温度コントロールが必要であり、また、冷却過程で固液2相となるため、組成が均一で平坦な結晶が得難い。
【0027】
これに対して、本実施形態では、冷却が不要なので精緻な温度制御が不要であり、第2元素の外方拡散を制御することにより第1元素の結晶成長を制御することができるので、制御性良くかつ簡易に結晶粒を大粒径化することができる。
【0028】
以上のようにプロセス温度において、第2元素と第3元素との反応により導電性部材31が形成されるプロセスが完了したら、温度を300℃以下に下げ、
図6に示すように、導電性部材31の上にある障壁層4,4aおよび金属間化合物層32を除去し、導電性部材31を残存させる。第1元素が半導体材料である場合には、残存した導電性部材31をそのままチャネルとして用いることができる。このときの導電性部材31の膜厚は例えば4~5nm程度である。
【0029】
また、
図7に示すように、巨大結晶粒を有する導電性部材31をテンプレートとして用い、その上に第1元素を含む非晶質導電層33を形成し、固相エピタキシャル成長させて、全体をより厚い導電性部材34としてもよい。すなわち、非晶質導電層33を固相エピタキシャル成長させることにより、テンプレートの導電性部材31の巨大結晶が転写された結晶となり、全体がより厚い導電性部材34となる。第1元素1が半導体材料である場合には、このような手法により、より厚いチャネルを得ることができる。
【0030】
第1元素がSiの場合、非晶質導電層33は例えばn+ドープa-Siであり、この場合は、導電性部材34はn-Siとなる。非晶質導電層33の膜厚は、例えば3~10nm程度であり、この場合、4~5nmの導電性部材31に対して、固相エピタキシャル成長後の厚い導電性部材34の膜厚は7~15nm程度となる。固相エピタキシャル成長の温度は、Siの場合600℃以上が好ましい。また、上方に存在するサイトからの核生成を抑える観点からは800℃未満が好ましい。
【0031】
本実施形態において、第1部分11の膜厚は、得ようとする導電性部材31の厚さに応じて設定される。また、金属間化合物形成層3の厚さについては、第1部分11から金属間化合物形成層3に拡散すべき第2元素の量に応じて適宜設定される。また、障壁層4の厚さは、第1部分11からの第2元素の拡散を抑制して適度な拡散速度に制御可能な厚さに設定される。
【0032】
第1元素がSi、第2元素がAlの場合、第3元素がTi、障壁層4,4aがTiNの場合、第1部分11の膜厚は10~50nmの範囲、例えば15nmとすることができる。また、金属間化合物形成層3の厚さは20~100nmの範囲、例えば20nmとすることができる。また、障壁層4の厚さは3~15nmの範囲、例えば3nm、障壁層4aの厚さは5~50nmの範囲、例えば5nmとすることができる。
なお、
図1~3、6,7には、便宜上、各層に上記具体例の元素記号を付している。
【0033】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、導電性部材として、第1元素に、第1元素よりも融点が低くかつ第1元素と全率固溶体を形成する第4元素を添加したものを用いる。すなわち、第4元素は、第1元素に対して以下の(3)式を満たす。
E14-(E11+E44/2)=0 ・・・(3)
E14は第1元素と第4元素間の結合エネルギー、E11は第1元素間の結合エネルギー、E44は第4元素間の結合エネルギーである。(3)式は、第1元素と第4元素間に相互作用が存在しないことを意味する。
【0034】
図8は、第2の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。本実施形態では、
図1の構造体の導電層1の代わりに、得ようとする導電性部材を構成する第1元素に第4元素を添加した導電層41を用いる。導電層41の上に金属層2が形成され。導電層41と金属層2とで第1元素と第4元素と第2元素とを含む第1部分11´が形成される。第2部分12である金属間化合物形成層3および障壁層4,4aは第1の実施形態の
図1に示す構造体と同様である。
【0035】
導電層41を構成する第1元素および第4元素としては、例えば半導体材料であるSiおよびGeを用いることができる。
【0036】
本実施形態では、第1元素と第4元素と第2元素とが液相となる温度とし、
図9に示すように、導電層41と金属層2とを溶融させて第1部分11´を液相状態としてから、プロセス温度(基板温度)を調整して第1元素と第4元素を含む初晶を晶出させ、その温度を維持した状態で第2元素を外方拡散させて初晶を成長させる。そして、第1の実施形態と同様、等温プロセスで結晶粒を成長させ、結晶粒が所望のサイズに成長し、プロセスが終了した時点で余分な部分を除去する。これにより、最終的に、
図10に示すように、第1元素と第4元素を含む巨大な結晶粒51を有する導電性部材61が形成される。第1元素および第4元素がSiおよびGeである場合には、導電性部材61はシリコンゲルマニウム(SiGe)である。
【0037】
本実施形態では、第1元素に、第1元素よりも融点が低い第4元素が添加された導電性部材61を用いることで、融点を低下させることが可能であり、プロセス温度の低温化が可能となる。このようなプロセス温度の低温化の利点は、低温化により第2元素の外方拡散が抑制され、第1元素の結晶化プロセスをよりゆっくり進行させることができ、結晶粒をより巨大化できる点である。
なお、
図8~10には、便宜上、各層に上記具体例の元素記号を付している。
【0038】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図11は、第3の実施形態に係る導電性部材の形成方法に用いる構造体の一例を示す断面図である。本実施形態では、第1の実施形態の構造体において、第1部分11と第2部分12である金属間化合物形成層3との間に、より具体的には、障壁層4と金属間化合物形成層3との間に、第1元素が外方拡散することを抑制する拡散抑制層5を形成する。導電層1と金属層2とを溶融させて第1部分11を液相状態とし、その後、プロセス温度(基板温度)に設定して第2元素を第2部分12へ外方拡散させる際に、第1元素も外方拡散する可能性がある。拡散抑制層5はこのような第1元素の外方拡散を抑制する機能を有する。拡散抑制層5としては、第1元素を含むものを用いることができる。例えば、第1元素がSiの場合、拡散抑制層5としてSi膜を用いることができる。
【0039】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0040】
例えば、上記実施形態において、第1元素および第4元素として半導体材料を用い、導電性部材を半導体装置のチャネルとした例を示したが、第1元素および第4元素は半導体材料に限らず他の導電性材料を用いることができ、また、導電性部材は半導体装置のチャネルに限るものではない。
【符号の説明】
【0041】
1,41;導電層
2;金属層
3;金属間化合物形成層
4,4a;障壁層
5;拡散抑制層
11,11´;第1部分
12;第2部分
21,51;結晶粒
31,34,61;導電性部材
33;非晶質導電層