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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045601
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】チョコレート用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230327BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230327BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20230327BHJP
   A23G 1/38 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A21D13/80
A21D13/31
A23G1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154122
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 明
(72)【発明者】
【氏名】大西 清美
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】金丸 稚子
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 まどか
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB04
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP27
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG04
4B026DG05
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DH05
4B026DP01
4B032DB22
4B032DE06
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK34
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK67
4B032DK70
4B032DP08
4B032DP40
4B032DP66
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】
良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートを製造することができるチョコレート用油脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
下記の(a)から(f)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)Y3を1~15質量%含有する。
(b)C50以上のY3/Y3の質量比が0.35以上である。
(c)X2Uを2~30質量%含有する。
(d)XXU/XUXの質量比が2.00以下である。
(e)XU2+U3を60~95質量%含有する。
(f)P/Stの質量比が1.30~5.00である。
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸、Y:炭素数8~22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の不飽和脂肪酸、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)から(f)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)Y3を1~15質量%含有する。
(b)C50以上のY3/Y3の質量比が0.35以上である。
(c)X2Uを2~30質量%含有する。
(d)XXU/XUXの質量比が2.00以下である。
(e)XU2+U3を60~95質量%含有する。
(f)P/Stの質量比が1.30~5.00である。
上記の(a)から(f)の条件において、X、Y、U、P、St、Y3、C50以上のY3、X2U、XUX、XXU、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
Y:炭素数8~22の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
Y3:Yが3分子結合しているトリグリセリド
C50以上のY3:構成する脂肪酸残基の総炭素数が50以上であるY3
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XUX:1位と3位にX、2位にUが結合しているトリグリセリド
XXU:1位及び2位にX、3位にUが結合しているトリグリセリド、又は2位及び3位にX、1位にUが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
前記チョコレート用油脂組成物が、加熱チョコレート用油脂組成物である請求項1に記載のチョコレート用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のチョコレート用油脂組成物を含有するチョコレート。
【請求項4】
前記チョコレートが、加熱チョコレートである請求項3に記載のチョコレート。
【請求項5】
前記チョコレートが、ソフトチョコレートである請求項3又は請求項4に記載のチョコレート。
【請求項6】
前記チョコレートが、ベーカリー食品用生地と共に加熱される請求項3~請求項5のいずれか1項に記載のチョコレート。
【請求項7】
請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のチョコレートを加熱して得られる加熱済みチョコレート。
【請求項8】
前記加熱済みチョコレートが、ベーカリー食品用生地と共に加熱された請求項7に記載の加熱済みチョコレート。
【請求項9】
請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られるベーカリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用途のソフトチョコレートの製造に適したチョコレート用油脂組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、菓子の中でも一般消費者に広く好まれている商品である。チョコレートには、様々な食感の商品が存在しており、板チョコのような硬いチョコレート以外に、軟らかくてクリーム状のチョコレートが存在する。軟らかくてクリーム状のチョコレートは、通常、ソフトチョコレートと呼ばれている。ソフトチョコレートとしては、特許文献1~4等のソフトチョコレートが提案されている。
【0003】
ソフトチョコレートは、ベーカリー食品と組み合わせて使用されることが多い。そして、ソフトチョコレートがベーカリー食品と組み合わせて使用される場合、ソフトチョコレートは、加熱前のベーカリー食品用生地に包餡され、加熱前のベーカリー食品用生地と共に加熱されることが多い。そのため、ソフトチョコレートには、加熱前のベーカリー食品用生地に包餡しやすく、作業性が良いことが求められる。また、ソフトチョコレートが加熱前のベーカリー食品用生地と共に加熱される場合、加熱の影響により、加熱後のソフトチョコレートは、軟らかくなりすぎて、場合によっては、ベーカリー食品からチョコレートが溶出することがあった。そのため、ソフトチョコレートには、耐熱性が良いことが必要であった。さらに、ソフトチョコレートがベーカリー食品と組み合わされた場合、保管期間中に、ソフトチョコレートの油脂分がベーカリー食品に移行することや、ベーカリー食品の水分がソフトチョコレートに移行すること等によって、経時的にソフトチョコレートは、軟らかさが失われ、ボソボソした状態になることがあった。そのため、ソフトチョコレートには、保存安定性が良いことが必要であった。
【0004】
そして、ソフトチョコレートの物性は、配合される油脂に大きく影響される。そのため、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートを提供することのできるチョコレート用油脂組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-4657号公報
【特許文献2】特開2003-313582号公報
【特許文献3】特開2006-115724号公報
【特許文献4】特開2008-228641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートを製造することができるチョコレート用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のトリグリセリド及び特定の脂肪酸を特定組成に調整することで、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートを製造することができるチョコレート用油脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の(a)から(f)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物である。
(a)Y3を1~15質量%含有する。
(b)C50以上のY3/Y3の質量比が0.35以上である。
(c)X2Uを2~30質量%含有する。
(d)XXU/XUXの質量比が2.00以下である。
(e)XU2+U3を60~95質量%含有する。
(f)P/Stの質量比が1.30~5.00である。
上記の(a)から(f)の条件において、X、Y、U、P、St、Y3、C50以上のY3、X2U、XUX、XXU、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
Y:炭素数8~22の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
Y3:Yが3分子結合しているトリグリセリド
C50以上のY3:構成する脂肪酸残基の総炭素数が50以上であるY3
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XUX:1位と3位にX、2位にUが結合しているトリグリセリド
XXU:1位及び2位にX、3位にUが結合しているトリグリセリド、又は2位及び3位にX、1位にUが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
本発明の第2の発明は、前記チョコレート用油脂組成物が、加熱チョコレート用油脂組成物である第1の発明に記載のチョコレート用油脂組成物である。
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のチョコレート用油脂組成物を含有するチョコレートである。
本発明の第4の発明は、前記チョコレートが、加熱チョコレートである第3の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第5の発明は、前記チョコレートが、ソフトチョコレートである第3の発明又は第4の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第6の発明は、前記チョコレートが、ベーカリー食品用生地と共に加熱される第3の発明~第5の発明のいずれか1つの発明に記載のチョコレートである。
本発明の第7の発明は、第3の発明~第6の発明のいずれか1つの発明に記載のチョコレートを加熱して得られる加熱済みチョコレートである。
本発明の第8の発明は、前記加熱済みチョコレートがベーカリー食品用生地と共に加熱された第7の発明に記載の加熱済みチョコレートである。
本発明の第9の発明は、第3の発明~第6の発明のいずれか1つの発明に記載のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られるベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートを製造することができるチョコレート用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、下記の(a)から(f)の条件を満たす油脂組成物である。
(a)Y3を1~15質量%含有する。
(b)C50以上のY3/Y3の質量比が0.35以上である。
(c)X2Uを2~30質量%含有する。
(d)XXU/XUXの質量比が2.00以下である。
(e)XU2+U3を60~95質量%含有する。
(f)P/Stの質量比が1.30~5.00である。
【0011】
本発明でチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明でチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートのいずれであってもよい。
【0012】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、Y3を1~15質量%含有し、好ましくは2~12質量%含有し、より好ましくは2.5~10質量%含有し、さらに好ましくは3~8質量%含有する(条件(a))。
なお、本発明でY3は、Yが3分子結合しているトリグリセリド(YYY)である。また、本発明でトリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。また、本発明でYは、炭素数8~22の飽和脂肪酸である。
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、C50以上のY3/Y3の質量比が0.35以上であり、好ましくは0.50~0.95であり、より好ましくは0.65~0.92であり、さらに好ましくは0.70~0.90である(条件(b))。
なお、本発明でC50以上のY3/Y3の質量比は、Y3含有量(質量%)に対するC50以上のY3含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でC50以上のY3は、構成する脂肪酸残基の総炭素数が50以上であるY3のことである。
【0014】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、X2Uを2~30質量%含有し、好ましくは3~25質量%含有し、より好ましくは4~20質量%含有し、さらに好ましくは5~18質量%含有し、最も好ましくは6~18質量%含有する(条件(c))。
なお、本発明でX2Uは、Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド(XXU+XUX+UXX)である。また、本発明でXは、炭素数16~18の飽和脂肪酸である。また、本発明でUは、炭素数18の不飽和脂肪酸である。
【0015】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、XXU/XUXの質量比が2.00以下であり、好ましくは0.30~1.80であり、より好ましくは0.40~1.70であり、さらに好ましくは0.50~1.50であり、最も好ましくは0.50~1.30である(条件(d))。
なお、本発明でXXU/XUXの質量比は、XUX含有量(質量%)に対するXXU含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でXUXは、1位と3位にX、2位にUが結合しているトリグリセリドである。また、本発明でXXUは、1位及び2位にX、3位にUが結合しているトリグリセリド(XXU)又は2位及び3位にX、1位にUが結合しているトリグリセリド(UXX)である。
【0016】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、XU2+U3を60~95質量%含有し、好ましくは65~93質量%含有し、より好ましくは70~90質量%含有し、さらに好ましくは75~88質量%含有する(条件(e))。
なお、本発明でXU2+U3は、XU2含有量とU3含有量の合計含有量のことである。また、本発明でXU2は、Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド(XUU+UXU+UUX)である。また、本発明でU3は、Uが3分子結合しているトリグリセリド(UUU)である。
【0017】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、P/Stの質量比が1.30~5.00であり、好ましくは1.50~4.50であり、より好ましくは1.75~4.00であり、さらに好ましくは1.90~3.70であり、最も好ましくは2.00~3.70である(条件(f))。
なお、本発明でP/Stの質量比は、構成脂肪酸中のSt含有量(質量%)に対するP含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でPは、パルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)のことである。また、本発明でStは、ステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)のことである。
【0018】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物が条件(a)~(f)の範囲を満たすと、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有するソフトチョコレートが得られる。なお、本発明で良好な作業性を有するとは、チョコレートがベーカリー食品用生地に包餡しやすいことである。また、本発明で良好な耐熱性を有するとは、チョコレートをベーカリー食品用生地と共に加熱した場合に、チョコレートの性状の変化が小さいことである。また、本発明で良好な保存安定性を有するとは、チョコレートがベーカリー食品と組み合わされた場合に、経時的にチョコレートの性状の変化が小さいことである。
【0019】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、C50以上Y3を好ましくは15質量%以下含有し、より好ましくは1~12質量%含有し、さらに好ましくは2~10質量%含有し、最も好ましくは3~8質量%含有する。
【0020】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、XUXを好ましくは20質量%以下含有し、より好ましくは1~15質量%含有し、さらに好ましくは3~13質量%含有し、最も好ましくは5~10質量%含有する。
【0021】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、XXUを好ましくは20質量%以下含有し、より好ましくは1~15質量%含有し、さらに好ましくは2~12質量%含有し、最も好ましくは2~10質量%含有する。
【0022】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、X2Oを好ましくは22質量%以下含有し、より好ましくは1~20質量%含有し、さらに好ましくは2~17質量%含有し、最も好ましくは3~12質量%含有する。
【0023】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、X2O/X2Uの質量比が好ましくは0.75以下であり、より好ましくは0.30~0.72であり、さらに好ましくは0.35~0.70であり、最も好ましくは0.40~0.65である
なお、本発明でX2O/X2Uの質量比は、X2U含有量(質量%)に対するX2O含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でX2OはXが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリド(XXO+XOX+OXX)である。また、本発明でOは、オレイン酸(炭素数18の1価の不飽和脂肪酸)である。
【0024】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、XU2を好ましくは23~45質量%含有し、より好ましくは25~42質量%含有し、さらに好ましくは28~40質量%含有し、最も好ましくは30~38質量%含有する。
【0025】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、PO2を好ましくは8質量%未満含有し、より好ましくは5質量%未満含有し、さらに好ましくは4質量%未満含有し、最も好ましくは3質量%未満含有する。
なお、本発明でPO2は、Pが1分子、Oが2分子結合しているトリグリセリド(POO+OPO+OOP)である。
【0026】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、U3を好ましくは30~60質量%含有し、より好ましくは33~57質量%含有し、さらに好ましくは35~55質量%含有し、最も好ましくは37~53質量%含有する。
【0027】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてYを好ましくは15~45質量%含有し、より好ましくは17~40質量%含有し、さらに好ましくは18~35質量%含有し、最も好ましくは20~33質量%含有する。
【0028】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてXを好ましくは5~35質量%含有し、より好ましくは8~34質量%含有し、さらに好ましくは10~33質量%含有し、最も好ましくは12~30質量%含有する。
【0029】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてZを好ましくは10質量%以下含有し、より好ましくは0.5~8質量%含有し、さらに好ましくは1~6質量%含有し、最も好ましくは1.5~5質量%含有する。
なお、本発明でZは、炭素数20~22の飽和脂肪酸である。
【0030】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてMを好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。
なお、本発明でMは、炭素数14以下の飽和脂肪酸である。
【0031】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、Uを好ましくは60~85質量%含有し、より好ましくは63~83質量%含有し、さらに好ましくは65~82質量%含有し、最も好ましくは68~80質量%含有する。
【0032】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは2質量%以下含有する。
なお、本発明でトランス脂肪酸は、TFAと記載することもある。
【0033】
本実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、油脂の固体脂含量(以下、SFCとする)が好ましくは10℃で30%以下、20℃で15%以下、35℃で10%以下であり、より好ましくは10℃で2~25%、20℃で13%以下、35℃で8%以下であり、さらに好ましくは10℃で3~20%、20℃で1~12%、35℃で1~6%であり、最も好ましくは10℃で4~19%、20℃で2~10%、35℃で1~5%である。
【0034】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、油脂以外の成分を添加することもできる。油脂以外の成分の具体例としては、例えば、乳化剤、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)、ルチン等の酸化防止剤、香料等が挙げられる。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、油脂以外の成分を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。
【0035】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、トリグリセリドの組成、構成脂肪酸の組成等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂を使用して製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される食用油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ココアバター、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられる。前記食用油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0036】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造には、好ましくは下記油脂A、下記油脂B、下記油脂Cを使用する。
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくは下記油脂Aを0~45質量%、下記油脂Bを50質量%以上、下記油脂Cを0.5~15質量%含有し、より好ましくは下記油脂Aを3~35質量%、下記油脂Bを60~95質量%、下記油脂Cを1~12質量%含有し、さらに好ましくは下記油脂Aを5~30質量%、下記油脂Bを65~93質量%、下記油脂Cを2~8質量%含有し、最も好ましくは下記油脂Aを8~25質量%、下記油脂Bを75~90質量%、下記油脂Cを2~6質量%含有する。
【0037】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、下記の条件(A)から(F)を満たす油脂である。
(A)X3を3~15質量%含有する。
(B)X2Uを50~70質量%含有する。
(C)XXU/XUXの質量比が1.0~1.9である。
(D)XU2を15~35質量%含有する。
(E)U3を10質量%以下含有する。
(F)P/Stの質量比が8.0~15.0である。
【0038】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X3を3~15質量%含有し、好ましくは4~13質量%含有し、より好ましくは5~10質量%含有し、さらに好ましくは7~10質量%含有する(条件(A))。
なお、本発明でX3は、Xが3分子結合しているトリグリセリド(XXX)である。
【0039】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X2Uを50~70質量%含有し、好ましくは53~65質量%含有し、より好ましくは55~63質量%含有し、さらに好ましくは55~60質量%含有する(条件(B))。
【0040】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XXU/XUXの質量比が1.0~1.9であり、好ましく1.2~1.8であり、より好ましくは1.3~1.6であり、さらに好ましくは1.3~1.5である(条件(C))。
【0041】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XU2を15~35質量%含有し、好ましくは17~33質量%含有し、より好ましくは20~30質量%含有し、さらに好ましくは23~28質量%含有する(条件(D))。
【0042】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、U3を10質量%以下含有し、好ましくは8質量%以下含有し、より好ましくは1~6質量%含有し、さらに好ましくは1~5質量%含有する(条件(E))。
【0043】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、P/Stの質量比が8.0~15.0であり、好ましくは9.0~14.0であり、より好ましくは10.0~13.0であり、さらに好ましくは10.5~12.0である(条件(F))。
【0044】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XUXを好ましくは10~35質量%含有し、より好ましくは12~33質量%含有し、さらに好ましくは15~30質量%含有し、最も好ましくは20~25質量%含有する。
【0045】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XXUを好ましくは25~45質量%含有し、より好ましくは28~43質量%含有し、さらに好ましくは30~40質量%含有し、最も好ましくは32~37質量%含有する。
【0046】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X2Oを好ましくは40~60質量%含有し、より好ましくは43~58質量%含有し、さらに好ましくは45~55質量%含有し、最も好ましくは46~50質量%含有する。
【0047】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X2O/X2Uの質量比が好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.70~0.93であり、さらに好ましくは0.75~0.87であり、最も好ましくは0.80~0.85である。
【0048】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてXを好ましくは45~65質量%含有し、より好ましくは48~63質量%含有し、さらに好ましくは50~60質量%含有し、最も好ましくは53~58質量%含有する。
【0049】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてZを好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは2質量%以下含有し、最も好ましくは1質量%以下含有する。
【0050】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてMを好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは4質量%以下含有し、さらに好ましくは3質量%以下含有し、最も好ましくは2質量%以下含有する。
【0051】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、Uを好ましくは35~55質量%含有し、より好ましくは38~53質量%含有し、さらに好ましくは40~50質量%含有し、最も好ましくは40~45質量%含有する。
【0052】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは2質量%以下含有し、最も好ましくは1質量%以下含有する。
【0053】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、下記のランダムエステル交換油Dを分別して低融点部を得ることで製造することができる。また、発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、下記のランダムエステル交換油Dと下記の油脂Eとの混合油を分別して低融点部を得ることで製造することができる。
【0054】
前記油脂Aの製造に使用されるランダムエステル交換油Dは、ランダムエステル交換することにより得られ、好ましくはX3含有量が25~35質量%、X2U含有量が40~50質量%、XU2含有量が15~25質量%、U3含有量が5質量%以下、XXU/XUXの質量比が1.60~2.00、X2O/X2Uの質量比が0.80~0.90、P/Stの質量比が11.0~14.0であり、より好ましくはX3含有量が30~33質量%、X2U含有量が40~45質量%、XU2含有量が18~23質量%、U3含有量が1~4質量%、XXU/XUXの質量比が1.70~1.95、X2O/X2Uの質量比が0.82~0.87、P/Stの質量比が11.5~13.5である。また、前記油脂Aの製造に使用されるランダムエステル交換油Dは、好ましくは構成脂肪酸としてXを60~70質量%、Uを28~38質量%含有し、より好ましくは構成脂肪酸としてXを62~67質量%、Uを30~35質量%含有する。
【0055】
前記油脂Aの製造に使用されるランダムエステル交換油Dは、好ましくはパーム中融点部とパームステアリンとの混合油をランダムエステル交換して得られる油脂である。前記パーム中融点部は、沃素価が好ましくは40~50である。前記パームステアリンは、沃素価が好ましくは8~20である。前記パーム中融点部とパームステアリンとの混合油の配合比(パーム中融点部:パームステアリン)は、好ましくは質量比70:30~60:40であり、より好ましくは質量比68:32~63:37である。
【0056】
前記ランダムエステル交換油Dを製造するためのランダムエステル交換反応は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。前記ランダムエステル交換油Dを製造するためのランダムエステル交換反応は、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法を用いてもよい。
【0057】
前記油脂Aの製造に使用される油脂Eは、好ましくはX3含有量が1~8質量%、X2U含有量が62~72質量%、XU2含有量が17~27質量%、U3含有量が5質量%以下、XXU/XUXの質量比が0.20以下、X2O/X2Uの質量比が0.80~0.90、P/Stの質量比が8.00~11.00であり、より好ましくはX3含有量が1~5質量%、X2U含有量が65~70質量%、XU2含有量が20~25質量%、U3含有量が1~5質量%、XXU/XUXの質量比が0.10~0.15、X2O/X2Uの質量比が0.82~0.87、P/Stの質量比が8.80~9.80であ。また、前記油脂Aの製造に使用される油脂Eは、好ましくは構成脂肪酸としてXを48~58質量%、Uを40~50質量%含有し、より好ましくは構成脂肪酸としてXを50~55質量%、Uを43~48質量%含有する。
【0058】
前記油脂Aの製造に使用される油脂Eは、好ましくは沃素価40~50のパーム中融点部である。
【0059】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aが前記ランダムエステル交換油Dと前記油脂Eとの混合油を分別して得られる低融点部である場合、前記ランダムエステル交換油Dと前記油脂Eとの混合油の配合比(ランダムエステル交換油D:油脂E)は、好ましくは質量比85:15~97:3であり、より好ましくは質量比92:8~97:3である。
【0060】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aを得るための分別は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。前記低融点部を得るための分別は、好ましくはドライ分別(自然分別)である。ドライ分別は、油脂を槽内で攪拌しながら冷却することで油脂の結晶を析出させた後、圧搾及び/又はろ過することで、高融点部(硬質部又は結晶画分とも言う。)と低融点部(軟質部又は液状画分とも言う。)に分けられる。
【0061】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、20℃で液状の油脂である(以下、20℃で液状の油脂は、液状油とする。)。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、液状油であれば特に制限されることなく使用することができる。液状油は、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油等や、これらの油脂の加工油脂(エステル交換油、分別油、硬化油(水素添加油)等)等を使用することができる。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、好ましくは大豆油、菜種油であり、より好ましくは大豆油である。
【0062】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、構成脂肪酸として、X+Zを90質量%以上含有し、好ましくは93質量%以上含有し、より好ましくは95質量%以上含有する。
なお、本発明でX+Zは、X含有量とZ含有量の合計含有量のことである。
【0063】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、構成脂肪酸として、St+Zを好ましくは88質量%以上含有し、より好ましくは90質量%以上含有し、さらに好ましくは92質量%以上含有する。
なお、本発明でSt+Zは、St含有量とZ含有量の合計含有量のことである。
【0064】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、構成脂肪酸として、Zを好ましくは45~65質量%含有し、より好ましくは48~63質量%含有し、さらに好ましくは50~60質量%含有し、最も好ましくは52~58質量%含有する。
【0065】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、好ましくは植物油の極度硬化油であり、より好ましくはパーム系油脂の極度硬化油(パーム油の極度硬化油等)、U含有量が80質量%以上の油脂の極度硬化油(菜種油の極度硬化油、大豆油の極度硬化油等)又はハイエルシン酸菜種油の極度硬化油であり、さらに好ましくはハイエルシン酸菜種油の極度硬化油である。
【0066】
油脂のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)準拠)、銀イオンカラム-HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105-107(1995)準拠)及びガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86準拠)で測定することができる。
油脂の脂肪酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)で測定することができる。
油脂のSFCは社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定することができる。
油脂の沃素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-2013 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
【0067】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくはソフトチョコレート用油脂組成物である。また、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくは加熱チョコレート用油脂組成物であり、より好ましくは加熱ソフトチョコレート用油脂組成物である。
なお、本発明で加熱チョコレートは、加熱して使用される加熱用のチョコレートのことである。また、本発明で加熱ソフトチョコレートとは、加熱して使用される加熱用のソフトチョコレートのことである。また、本発明でソフトチョコレートとは、25℃での性状がカスタードクリームのようなクリーム状で可塑性があり、食感が軟らかいチョコレートのことである。
【0068】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくはノンテンパリング型チョコレートの製造に使用される。
なお、本発明でノンテンパリング型チョコレートとは、テンパリング又はシーディングを行わずに製造されるチョコレートのことである。また、本発明でシーディングとは、テンパリングを行うかわりに、ココアバター又はカカオ代用脂(CBE)の安定型結晶を添加する方法である。
【0069】
本発明の実施の形態のチョコレートは、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を含有する。本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を好ましくは50~100質量%含有し、より好ましくは70~100質量%含有し、さらに好ましくは85~100質量%含有し、最も好ましくは93~98質量%含有する。
なお、本発明でチョコレートに含まれる油脂は、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明でチョコレートに含まれる油脂は、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0070】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはノンテンパリング型チョコレートである。
また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはソフトチョコレートである。
【0071】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂を好ましくは20~65質量%含有し、より好ましくは23~55質量%含有し、さらに好ましくは25~50質量%含有し、最も好ましくは30~40質量%含有する。
【0072】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはチョコレートに含まれる油脂がココアバターを含有する。本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂がココアバターを好ましくは0~15質量%含有し、より好ましくは0~10質量%含有し、さらに好ましくは0~5質量%含有し、最も好ましくは2~5質量%含有する。
なお、本発明でココアバターは、カカオマス、ココアパウダー等の含油原料由来のココアバターも含む。
【0073】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で、糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖、乳糖である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、糖質を好ましくは25~65質量%含有し、より好ましくは30~63質量%含有し、さらに好ましくは40~60質量%含有し、最も好ましくは45~58質量%含有する。
【0074】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはカカオ成分を含有する。カカオ成分の具体例は、カカオマス、ココアパウダー等である。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用されるカカオ成分は、好ましくはカカオマス、ココアパウダーであり、より好ましくはココアパウダーである。
本発明の実施の形態のチョコレートは、カカオ成分を好ましくは0~30質量%含有し、より好ましくは0~25質量%含有し、さらに好ましくは0~20質量%含有し、最も好ましくは10~15質量%含有する。
【0075】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。粉乳の具体例は、脱脂粉乳、全脂粉乳等である。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される粉乳は、好ましくは脱脂粉乳、全脂粉乳であり、より好ましくは脱脂粉乳である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、粉乳を好ましくは20質量%以下含有し、より好ましくは15質量%以下含有し、さらに好ましくは10質量%以下含有し、最も好ましくは8質量%以下含有する。
【0076】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂、糖質、カカオ成分、粉乳以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0077】
本発明の実施の形態のチョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。
本発明の実施の形態のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。さらに、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはテンパリング及びシーディングを行わずに製造される。
【0078】
本発明の実施の形態のチョコレートは、良好な作業性、耐熱性及び保存安定性を有する。そのため、本発明の実施の形態のチョコレートは、加熱チョコレートに適している。
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは加熱チョコレートであり、より好ましくは加熱ソフトチョコレートである。
また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはベーカリー食品用生地と共に加熱される。
なお、本発明でベーカリー食品用生地は、穀粉、油脂組成物、砂糖、乳製品、卵、食塩、水等の原料を捏ね上げることで得られる焼成等の加熱前の生地のことである。
【0079】
本発明の実施の形態の加熱済みチョコレートは、本発明の実施の形態のチョコレートを加熱して得られる加熱後のチョコレートである。本発明の実施の形態の加熱済みチョコレートは、チョコレート自体を加熱することで得られる。
また、本発明の実施の形態の加熱済みチョコレートは、チョコレートをベーカリー食品用生地と共に加熱することでも得られる。本発明の実施の形態の加熱済みチョコレートは、好ましくはベーカリー食品用生地と共に加熱されたチョコレートである。
本発明の実施の形態のチョコレートを加熱する手段としては、焼成、蒸す、揚げる(フライ)、マイクロ波(電子レンジ)等が挙げられる。本発明の実施の形態のチョコレートを加熱する手段は、好ましくは焼成である。
【0080】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られる。なお、本発明でベーカリー食品は、ベーカリー食品用生地を、加熱することで得られるベーカリー食品のことである。
本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせる手段としては、包む(包餡)、巻く、混合、接着、被覆、挟む、注入、埋没、トッピング等が挙げられる。
本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを加熱する手段としては、焼成、蒸す、揚げる(フライ)、マイクロ波(電子レンジ)等が挙げられる。本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを加熱する手段は、好ましくは焼成である。
【0081】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、例えば、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン等の焼き菓子、バターケーキ類(パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等)、スポンジケーキ類(ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等)、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の洋生菓子、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン等のパンである。本発明の実施の形態のベーカリー食品は、好ましくはクッキーである。
【0082】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて加熱すること以外、従来公知のベーカリー食品の製造方法で製造することができる。
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態のチョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、好ましくは140~210℃、3~45分間加熱し、より好ましくは150~200℃、5~30分間加熱し、さらに好ましくは160~190℃、5~15分間加熱することで製造する。
【0083】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、チョコレートが良好な耐熱性及び保存安定性を有する。
【実施例0084】
次に実施例により本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0085】
〔分析方法〕
油脂のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)準拠)、銀イオンカラム-HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105-107(1995)準拠)及びガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86準拠)で測定した。
油脂の脂肪酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)で測定した。
油脂のSFCは社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定した。
油脂の沃素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-2013 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
【0086】
〔ランダムエステル交換油D1の製造〕
パーム中融点部(沃素価:45)65質量部とパームステアリン(沃素価:11)35質量部を混合した。得られた混合油を、ランダムエステル交換することにより、ランダムエステル交換油D1(X3含有量:31.2質量%、X2U含有量:43.1質量%、XU2含有量:19.7質量%、U3含有量:2.6質量%、XXU/XUX質量比:1.88、X2O/X2U質量比:0.842、P/St質量比:12.2、X含有量:64.7質量%、U含有量:33.7質量%)を得た。
エステル交換は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。
【0087】
〔油脂A1の製造〕
95質量部のランダムエステル交換油D1と5質量部のパーム中融点部(沃素価45、X3含有量:2.3質量%、X2U含有量:67.8質量%、XU2含有量:22.8質量%、U3含有量:3.0質量%、XXU/XUX質量比:0.124、X2O/X2U質量比:0.849、P/St質量比:9.37、X含有量:53.0質量%、U含有量:45.2質量%)を混合した。得られた混合油をドライ分別し、高融点部を除去することで低融点部を得た。該低融点部に脱臭処理を行ったものを油脂A1(X3含有量:8.6質量%、X2U含有量:57.8質量%、XXU/XUX質量比:1.449、XU2含有量:26.0質量%、U3含有量:3.4質量%、XUX含有量:23.6質量%、XXU含有量:34.2質量%、X2O含有量:48.3質量%、X2O/X2U質量比:0.836、X含有量:55.2質量%、Z含有量:0.4質量%、M含有量:1.1質量%、U含有量:43.2質量%、TFA含有量:0.1質量%)とした。
【0088】
〔その他の原料油脂〕
大豆油(性状:20℃で液状)を油脂B1とした。
ハイエルシン酸菜種油の極度硬化油(X+Z合計含有量:98.8質量%、St+Z合計含有量:95.0質量%、Z含有量:55.2質量%)を油脂C1とした。
【0089】
〔油脂組成物の製造〕
表1~4に示す配合で融解させた油脂を混合することで、油脂組成物を製造した。
得られた油脂組成物の脂肪酸含有量、トリグリセリド含有量を前述の分析方法に従って測定した。測定結果を表1~4に示した。なお、配合、含有量の単位は質量%である(質量比の単位はなし)。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
〔チョコレートの製造〕
実施例1~9の油脂組成物、比較例1~3の油脂組成物を使用して表5に示された配合1のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、テンパリング及びシーディングを行わずに製造した(配合及び含有量の単位は質量%である。)。また、実施例3の油脂組成物を使用して表5に示された配合2及び配合3のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した(配合及び含有量の単位は質量%である。)で、テンパリング及びシーディングを行わずに製造した。比較例1の油脂組成物を使用して製造した配合1のチョコレート及び比較例3の油脂組成物を使用して製造した配合1のチョコレート以外のチョコレートは、25℃での性状がカスタードクリームのようなクリーム状で可塑性があり、食感が軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
【0095】
【表5】
【0096】
〔チョコレートの評価〕
-40℃で冷凍した各チョコレート5gをクッキー生地(クッキー生地は、マーガリン216g、グラニュー糖180g、全卵90g、薄力粉450g、ベーキングパウダー4.5g、食塩0.6gの配合で、シュガーバッター法により調製した。)10gで包餡し、オーブン(上火180℃、下火170℃)で8分間焼成することで、クッキー(チョコレート入りクッキー)を製造した。チョコレートをクッキー生地に包餡した時の作業性、焼成後のクッキー中のチョコレートの耐熱性を下記評価基準により評価した。また、焼成後のクッキーを25℃で3か月間保存し、クッキー中のチョコレートの保存安定性を下記評価基準により評価した。各評価は、◎又は○の場合、良好であると判断した。評価結果を表6~8に示した。
【0097】
<作業性の評価基準>
◎:最も適した硬さでとても包餡しやすい
○:適した硬さで包餡しやすい
△:軟らかくやや包餡しにくい
×:硬すぎて又は軟らかすぎて包餡しにくい
【0098】
<耐熱性の評価基準>
◎:焼成後のクッキーは非常に厚みがあり、広がりが殆ど無い
○:焼成後のクッキーは良好な厚みがあり、広がりが抑えられている
△:焼成後のクッキーは厚みがなく、薄く広がっている
×:焼成後のクッキーは平らに広がり、チョコレートの溶出あり
【0099】
<保存安定性の評価基準>
◎:良好な軟らかさを維持している
○:僅かに硬いが軟らかさを維持している
△:明らかに硬くなっている
×:硬く、ボソボソとしている
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
表6~8から分かるように、実施例の油脂組成物を使用して製造したチョコレートは、良好な作業性、耐熱性、保存安定性を有していた。
一方、表7、8から分かるように、比較例1、2の油脂組成物を使用して製造したチョコレートは、作業性が悪かった。また、比較例3の油脂組成物を使用して製造したチョコレートは、作業性及び保存安定性が悪かった。