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特開2023-460高分子化合物の製造方法、化合物、パラジウム錯体、及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000460
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】高分子化合物の製造方法、化合物、パラジウム錯体、及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101293
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 航平
(72)【発明者】
【氏名】神川 卓
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA14
4J032CB04
4J032CB05
4J032CB12
4J032CD02
4J032CE03
4J032CE22
4J032CF06
4J032CG06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重合後に残存するモノマーの量を低減した高分子化合物の製造方法を提供する。また、該製造方法に用いる配位子化合物、パラジウム錯体、及び該配位子化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物を提供する。
【解決手段】式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体存在下、ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程を含む高分子化合物の製造方法、該製造方法に用いる配位子化合物、パラジウム錯体、並びに該配位子化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物。

[式中、Ar1A及びAr1Bは、独立に、置換/非置換のアリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、独立に、置換/非置換のアリール基又は1価の複素環基を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体存在下、ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程を含む、高分子化合物の製造方法。
[式中、Ar1A及びAr1Bは、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記式(0)で表される化合物が、式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の製造方法。
[式中、Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、前記と同じ意味を表す。
環Ar及び環Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、式(2)又は式(3)で表される化合物である、請求項2に記載の製造方法。
[式中、Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、前記と同じ意味を表す。
R2A、R2B、R2C、R2D、R2E、R2F、R2G、R2H、R3A、R3B、R3C、R3D、R3E、R3F、R3G、R3H、R3I、R3J、R3K及びR3Lは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。R2AとR2B、R2BとR2C、R2CとR2D、R2DとR2E、R2EとR2F、R2FとR2G、R2GとR2H、R3AとR3B、R3BとR3C、R3CとR3D、R3DとR3E、R3EとR3F、R3FとR3G、R3GとR3H、R3HとR3I、R3IとR3J、R3JとR3K、及び、R3KとR3Lは、それぞれ結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、式(3-1)で表される化合物である、請求項2に記載の製造方法。
[式中、R3A、R3B、R3C、R3D、R3E、R3F、R3G、R3H、R3I、R3J、R3K及びR3Lは、前記と同じ意味を表す。
R3M、R3N、R3O、R3P、R3Q、R3R、R3S、R3T、R3U、R3V、R3W、R3X、R3Y、R3Z、R3AA、R3AB、R3AC、R3AD、R3AE及びR3AFは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項5】
前記R3M、前記R3Q、前記R3R、前記R3V、前記R3W、前記R3AA、前記R3AB及び前記R3AFのうち、少なくとも1つが、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物が、式(B-1)又は式(B-2)で表される化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
[式中、
ArB0は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
B1及びaB2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArB1及びArB3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArB2及びArB4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArB2及びArB4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
B1、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RB2及びRB3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
B1、ZB2、ZB3及びZB4は、それぞれ独立に、-B(ORC2)2(式中、RC2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC2は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合する酸素原子とともに環構造を形成していてもよい。)で表される基、又は、-BF3Q'(式中、Q'は、Li、Na、K、Rb又はCsを表す。)で表される基を表す。]
【請求項7】
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程が、
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物と、
ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1(式中、RC1は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する芳香族化合物と、
を反応させる工程である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族化合物が、ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1(式中、RC1は前記と同じ意味を表す。)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも2種を含む芳香族化合物である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記芳香族化合物が、式(C-1)又は式(C-2)で表される化合物である、請求項7又は8に記載の製造方法。
[式中、
ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
1及びa2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
C1、ZC2、ZC3及びZC4は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は-O-S(=O)C1で表される基を表す。]
【請求項10】
式(4)で表される化合物。
[式中、R4A、R4B、R4C、R4D、R4E、R4F、R4G、R4H、R4I、R4J、R4K、R4L、R4M、R4N、R4O、R4P、R4Q、R4R、R4S、R4T、R4U、R4V、R4W、R4X、R4Y、R4Z、R4AA、R4AB、R4AC、R4AD、R4AE及びR4AFは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。但し、R4M、R4Q、R4R、R4V、R4W、R4AA、R4AB及びR4AFのうち、少なくとも1つは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【請求項11】
請求項10に記載の化合物を配位子として含むパラジウム錯体。
【請求項12】
請求項10に記載の化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子化合物の製造方法、化合物、パラジウム錯体、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物を製造する方法として、例えば、ホスフィン配位子及びパラジウム錯体を用いた鈴木重合反応(鈴木カップリング反応を利用した重合反応)による製造方法が知られている。この反応で使用されるホスフィン配位子としては、例えば、単座ホスフィン配位子(特許文献1及び特許文献2)、並びに、アルキレン基又はフェロセンジイル基で2つのリン原子が連結された二座ホスフィン配位子(非特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-45110号公報
【特許文献2】特開2008-95065号公報
【非特許文献1】Macromolecules 2009, 42, 5471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の高分子化合物の製造方法は、重合後に残存するモノマーの量を十分に低減することができなかった。
そこで、本発明は、重合後に残存するモノマーの量を低減した高分子化合物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該製造方法に用いる配位子化合物、該配位子化合物を含むパラジウム錯体、並びにパラジウム錯体前駆体と該配位子化合物とを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]
式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体存在下、ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程を含む、高分子化合物の製造方法。
[式中、Ar1A及びAr1Bは、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
[2]
前記式(0)で表される化合物が、式(1)で表される化合物である、[1]に記載の製造方法。
[式中、Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、前記と同じ意味を表す。
環Ar及び環Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
[3]
前記式(1)で表される化合物が、式(2)又は式(3)で表される化合物である、[2]に記載の製造方法。
[式中、Ar1C、Ar1D、Ar1E及びAr1Fは、前記と同じ意味を表す。
R2A、R2B、R2C、R2D、R2E、R2F、R2G、R2H、R3A、R3B、R3C、R3D、R3E、R3F、R3G、R3H、R3I、R3J、R3K及びR3Lは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。R2AとR2B、R2BとR2C、R2CとR2D、R2DとR2E、R2EとR2F、R2FとR2G、R2GとR2H、R3AとR3B、R3BとR3C、R3CとR3D、R3DとR3E、R3EとR3F、R3FとR3G、R3GとR3H、R3HとR3I、R3IとR3J、R3JとR3K、及び、R3KとR3Lは、それぞれ結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
[4]
前記式(1)で表される化合物が、式(3-1)で表される化合物である、[2]に記載の製造方法。
[式中、R3A、R3B、R3C、R3D、R3E、R3F、R3G、R3H、R3I、R3J、R3K及びR3Lは、前記と同じ意味を表す。
R3M、R3N、R3O、R3P、R3Q、R3R、R3S、R3T、R3U、R3V、R3W、R3X、R3Y、R3Z、R3AA、R3AB、R3AC、R3AD、R3AE及びR3AFは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
[5]
前記R3M、前記R3Q、前記R3R、前記R3V、前記R3W、前記R3AA、前記R3AB及び前記R3AFのうち、少なくとも1つが、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい、[4]に記載の製造方法。
[6]
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物が、式(B-1)又は式(B-2)で表される化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[式中、
ArB0は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
B1及びaB2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArB1及びArB3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArB2及びArB4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArB2及びArB4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
B1、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RB2及びRB3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
B1、ZB2、ZB3及びZB4は、それぞれ独立に、-B(ORC2)2(式中、RC2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC2は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合する酸素原子とともに環構造を形成していてもよい。)で表される基、又は、-BF3Q'(式中、Q'は、Li、Na、K、Rb又はCsを表す。)で表される基を表す。]
[7]
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程が、
前記ホウ酸残基を有する芳香族化合物と、
ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1(式中、RC1は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する芳香族化合物と、
を反応させる工程である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
前記芳香族化合物が、ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1(式中、RC1は前記と同じ意味を表す。)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも2種を含む芳香族化合物である、[7]に記載の製造方法。
[9]
前記芳香族化合物が、式(C-1)又は式(C-2)で表される化合物である、[7]又は[8]に記載の製造方法。
[式中、
ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
1及びa2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
C1、ZC2、ZC3及びZC4は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は-O-S(=O)C1で表される基を表す。]
[10]
式(4)で表される化合物。
[式中、R4A、R4B、R4C、R4D、R4E、R4F、R4G、R4H、R4I、R4J、R4K、R4L、R4M、R4N、R4O、R4P、R4Q、R4R、R4S、R4T、R4U、R4V、R4W、R4X、R4Y、R4Z、R4AA、R4AB、R4AC、R4AD、R4AE及びR4AFは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。但し、R4M、R4Q、R4R、R4V、R4W、R4AA、R4AB及びR4AFのうち、少なくとも1つは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[11]
[10]に記載の化合物を配位子として含むパラジウム錯体。
[12]
[10]に記載の化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む、組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物を配位子として含むパラジウム錯体を用いて鈴木重合反応させることにより、反応後に残存するモノマーの量が低減された高分子化合物を製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、反応後に残存するモノマーの量が低減されるとともに、重量平均分子量が比較的低い(例えば、7.0×104以下、さらに4.0×104以下)高分子化合物を製造することができる。さらに、本発明によれば、上記の鈴木重合反応に用いることのできる化合物(即ち、配位子化合物)、パラジウム錯体、並びに、該配位子化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0008】
<共通する用語の説明>
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i-Prはイソプロピル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
金属錯体を表す式中、中心金属との結合を表す実線は、イオン結合、共有結合又は配位結合を意味する。
【0009】
「高分子化合物(以下、「ポリマー」ともいう。)」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2×103~2×108である重合体を意味する。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物の末端基は、好ましくは安定な基である。高分子化合物の末端基としては、好ましくは主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素-炭素結合を介して高分子化合物の主鎖と結合するアリール基又は1価の複素環基が挙げられる。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物を意味する。
【0010】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0011】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。アルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-プロピルヘプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ヘキシルデシル基、ドデシル基、並びに、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-ヘキシルフェニル)プロピル基、及び、6-エチルオキシヘキシル基)が挙げられる。
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0012】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0013】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0014】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール及びジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、並びに、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール及びベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
【0015】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0016】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0017】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
アミノ基及び置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0018】
「アルケニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルケニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
アルケニル基及びシクロアルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0019】
「アルキニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルキニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
アルキニル基及びシクロアルキニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0020】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。アリーレン基は、好ましくは、式(A-1)~式(A-20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
[式中、R及びRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表す。複数存在するR及びRaは、各々、同一でも異なっていてもよく、Ra同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0025】
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは、3~20であり、より好ましくは、4~15である。
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール及びトリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基、並びに、該基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。2価の複素環基は、好ましくは、式(AA-1)~式(AA-34)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
[式中、R及びRaは、前記と同じ意味を表す。]
【0033】
「シリル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。シリル基は、置換基を有していてもよい。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、n-ペンチルジメチルシリル基、n-ヘキシルジメチルシリル基、n-ヘプチルジメチルシリル基、n-オクチルジメチルシリル基、2-エチルヘキシルジメチルシリル基、n-ノニルジメチルシリル基、n-デシルジメチルシリル基、3,7-ジメチルオクチルジメチルシリル基、n-ドデシルジメチルシリル基、フェニルアルキルシリル基、アルコキシフェニルアルキルシリル基、アルキルフェニルアルキルシリル基、ナフチルアルキルシリル基、フェニルアリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリキシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0034】
「架橋基」とは、加熱、紫外線照射、近紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基であり、好ましくは、式(XL-1)~式(XL-19)で表される架橋基である。
【0035】
【0036】
「置換基」としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、水酸基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基及びシリル基が挙げられる。置換基は架橋基又は電子求引性基であってもよい。なお、置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよいが、環を形成しないことが好ましい。
【0037】
「電子求引性基」としては、例えば、フッ素原子を置換基として有するアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基及びアルコキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基又はアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子であり、更に好ましくは、塩素原子又はフッ素原子であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
フッ素原子を置換基として有するアルキル基としては、好ましくは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロオクチル基が挙げられる。
電子求引性基におけるハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
「アシル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~10である。アシル基は、置換基を有していてもよい。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基及びイソブチリル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基及びナフトイル基等の芳香族アシル基;並びに、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
「アルコキシカルボニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~10である。アルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0038】
「ホウ酸残基」とは、ホウ素原子を有し、ホウ素原子で炭素原子と結合する基である。ホウ酸残基としては、例えば、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、トリフルオロボレート基、トリヒドロキシボレート基、トリオールボレート基、ボラン基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0039】
「パラジウム錯体前駆体」とは、パラジウム単体及びパラジウム化合物(例えば、パラジウム錯体及びパラジウム塩が挙げられ、以下、特記しない限り、同様である。)のうち、新たな配位子と反応させることによって、その配位子を含有する新たなパラジウム錯体を合成する用途に用いられる、パラジウム単体又はパラジウム化合物を意味する。パラジウム錯体前駆体としては、例えば、式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体を合成する用途に用いられる、式(0)で表される化合物を配位子として含まないパラジウム化合物及びパラジウム単体が挙げられる。
【0040】
<式(0)で表される化合物>
式(0)で表される化合物は、例えば、ホウ酸残基を有する芳香族化合物を反応させる工程を含む、高分子化合物の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」ともいう)において、好適に用いることができる。本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物は、例えば、後述のパラジウム錯体の配位子として好適に用いることができる。また、本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物は、例えば、式(0)で表される化合物と後述のパラジウム錯体前駆体とを含む組成物として、好適に用いることができる。
本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物は、3種以下を用いることが好ましく、1種又は2種を用いることがより好ましく、1種のみを用いることが更に好ましい。
【0041】
Ar1A及びAr1Bは、好ましくは、置換基を有していてもよいアリーレン基である。
Ar1A及びAr1Bにおけるアリーレン基としては、好ましくは、5員環又は6員環を含む芳香族炭化水素環から、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた基であり、より好ましくは、6員環を含む芳香族炭化水素環から、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた基であり、更に好ましくは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基又はフェナントレンジイル基であり、特に好ましくは、フェニレン基又はナフタレンジイル基であり、とりわけ好ましくは、ナフタレンジイル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Ar1A及びAr1Bにおける2価の複素環基としては、好ましくは、5員環又は6員環を含む複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基であり、より好ましくは、ピリジン、ジアザベンゼン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、ベンゾジオキサン又はベンゾジオキソールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Ar1A及びAr1Bとしては、例えば、後述の式(1-A)~式(1-Q)で表される基が挙げられ、好ましくは、後述の式(1-A)~式(1-O)で表される基であり、より好ましくは、後述の式(1-A)~式(1-C)で表される基である。
Ar1A及びAr1Bは、好ましくは同一である。
Ar1A及びAr1Bが有していてもよい置換基としては、好ましくは、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、水酸基又はシリル基であり、より好ましくは、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、更に好ましくは、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、特に好ましくは、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
Ar1A及びAr1Bが有していてもよい置換基におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、後述のAr1C~Ar1Fにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
Ar1A及びAr1Bとしては、例えば、ベンゼン-1,2-ジイル基、3-メチルベンゼン-1,2-ジイル基、3-メトキシベンゼン-1,2-ジイル基、3-トリフルオロメチルベンゼン-1,2-ジイル基、3-シアノベンゼン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基、3-メチルナフタレン-1,2-ジイル基、6-シアノナフタレン-1,2-ジイル基、6-トリフルオロメチルナフタレン-1,2-ジイル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0042】
Ar1C~Ar1Fは、好ましくは、置換基を有していてもよいアリール基である。
Ar1C~Ar1Fにおけるアリール基としては、好ましくは、5員環又は6員環(好ましくは6員環)を含む芳香族炭化水素環から、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた基であり、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基又はフェナントレニル基であり、更に好ましくは、フェニル基又はナフチル基であり、特に好ましくは、フェニル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
Ar1C~Ar1Fにおける1価の複素環基としては、好ましくは、5員環又は6員環(好ましくは6員環)を含む複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた基であり、より好ましくは、ピリジン、ジアザベンゼン、アザナフタレン又はジアザナフタレンから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた基であり、更に好ましくは、ピリジン又はジアザベンゼンから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた基、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
Ar1C~Ar1Fのうち、少なくとも2つが同一であることが好ましく、Ar1C~Ar1Fのすべてが同一であることがより好ましい。
Ar1C~Ar1Fが有していてもよい置換基としては、好ましくは、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、水酸基又はシリル基であり、より好ましくは、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、更に好ましくは、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であり、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であり、とりわけ好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
Ar1C~Ar1Fが有していてもよい置換基におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、Ar1C~Ar1Fにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
Ar1C~Ar1Fのうちの少なくとも1つは、置換基を有することが好ましく、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、水酸基又はシリル基を有することがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基を有することが更に好ましく、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を有することが特に好ましく、アルコキシ基を有することがとりわけ好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
Ar1C~Ar1Fとしては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、置換基で置換された基が挙げられる。
【0043】
<式(1)で表される化合物>
式(0)で表される化合物は、好ましくは、式(1)で表される化合物である。
【0044】
環Ar及び環Arにおける芳香族炭化水素環は、好ましくは、5員環若しくは6員環を含む芳香族炭化水素環であり、より好ましくは、6員環を含む芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環であり、特に好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、とりわけ好ましくは、ナフタレン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar及び環Arにおける複素環は、好ましくは、5員環又は6員環を含む複素環であり、より好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、ベンゾジオキサン環又はベンゾジオキソール環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar及び環Arは、5員環若しくは6員環を含む芳香族炭化水素環、又は、5員環若しくは6員環を含む複素環であることが好ましく、5員環又は6員環を含む芳香族炭化水素環であることがより好ましく、6員環を含む芳香族炭化水素環であることが更に好ましく、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar及び環Arは、好ましくは同一である。
環Ar及び環Arは、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、キノリン環、1,3-ベンゾジオキソール環又は1,4-ベンゾジオキサン環であり、より好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、更に好ましくは、ナフタレン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar及び環Arが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、Ar1A及びAr1Bが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0045】
環Ar及び環Arとしては、例えば、式(1-A)~式(1-Q)で表される基が挙げられ、好ましくは、後述の式(1-A)~式(1-O)で表される基であり、より好ましくは式(1-A)~式(1-C)で表される基である。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
[式中、Rd及びReは、それぞれ独立に、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、水酸基又はシリル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRdは、各々、同一でも異なっていてもよく、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。複数存在するReは、各々、同一でも異なっていてもよく、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0050】
d及びReは、好ましくは、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、水酸基又はシリル基であり、より好ましくは、水素原子、電子求引性基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、特に好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
d及びReにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、Ar1C~Ar1Fにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0051】
<式(2)又は式(3)で表される化合物>
式(1)で表される化合物は、好ましくは、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物であり、より好ましくは、式(3)で表される化合物である。
【0052】
R2A~R2H及びR3A~R3Lは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基又は1価の複素環基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であることがより好ましく、水素原子又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
R2A~R2H及びR3A~R3Lにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、Ar1C~Ar1Fにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0053】
R2A~R2Hは一部又は全部が異なっていてもよく、全部が同一であってもよい。 R2AとR2B、R2BとR2C、R2CとR2D、R2DとR2E、R2EとR2F、R2FとR2G、及び、R2GとR2Hは、それぞれ結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成しないことが好ましい。
R3A~R3Lは一部又は全部が異なっていてもよく、全部が同一であってもよい。
R3AとR3B、R3BとR3C、R3CとR3D、R3DとR3E、R3EとR3F、R3FとR3G、R3GとR3H、R3HとR3I、R3IとR3J、R3JとR3K、及び、R3KとR3Lは、それぞれ結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成しないことが好ましい。
【0054】
<式(3-1)で表される化合物>
式(3)で表される化合物は、より好ましくは式(3-1)で表される化合物である。
【0055】
R3M~R3Z及びR3AA~R3AFは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることがより好ましく、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。 R3M~R3Z及びR3AA~R3AFにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、Ar1C~Ar1Fにおけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
R3M、R3Q、R3R、R3V、R3W、R3AA、R3AB及びR3AFのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは、少なくとも4つ)が、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
R3M、R3R、R3W及びR3ABのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、R3M、R3R、R3W及びR3ABのすべてが、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、R3M、R3R、R3W及びR3ABのすべてが、アルコキシ基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0056】
<式(4)で表される化合物>
式(3-1)で表される化合物は、好ましくは、式(4)で表される化合物である。
【0057】
R4A~R4Lは一部又は全部が異なっていてもよく、全部が同一であってもよい。
R4M~R4Z及びR4AA~R4AFは一部又は全部が異なっていてもよく、全部が同一であってもよい。
【0058】
R4A~R4Lの例及び好ましい範囲は、R3A~R3Lの例及び好ましい範囲と同じである。
R4M~R4Z及びR4AA~R4AFの例及び好ましい範囲は、R3M~R3Z及びR3AA~R3AFの例及び好ましい範囲と同じである。
R4M、R4Q、R4R、R4V、R4W、R4AA、R4AB及びR4AFのうち、少なくとも2つ(好ましくは、少なくとも4つ)が、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。 R4M、R4R、R4W及びR4ABのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、R4M、R4R、R4W及びR4ABのすべてが、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることがより好ましく、R4M、R4R、R4W及びR4ABのすべてが、アルコキシ基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0059】
式(0)で表される化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
(式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体)
式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体は、例えば、式(0)で表される化合物と、後述のパラジウム錯体前駆体とを反応させることによって、式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体を合成することができる。
【0068】
(式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物)
本実施形態の製造方法において、例えば、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを混合することにより、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物を調製することができる。当該組成物は、式(0)で表される化合物の固体(特に粉体)とパラジウム錯体前駆体の固体(特に粉体)との混合物であってもよい。
【0069】
本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とは、それぞれ、別々に用いてもよく、式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体を合成してから用いてもよく、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物を調製してから用いてもよい。
【0070】
本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体は、好ましくは、0価又は2価のパラジウム錯体であり、より好ましくは、2価のパラジウム錯体である。
本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物におけるパラジウム錯体前駆体は、好ましくは、0価又は2価のパラジウム錯体前駆体であり、より好ましくは、2価のパラジウム錯体前駆体である。
本実施形態の製造方法において、2価のパラジウム錯体及び2価のパラジウム錯体前駆体におけるパラジウムは、通常、対アニオン及び/又は置換基を有する。2価のパラジウム錯体及び2価のパラジウム錯体前駆体におけるパラジウムが有する対アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CF3SO3 )、メタンスルホナートイオン(CH3SO3 )、テトラフルオロボレートイオン(BF4 )、酢酸イオン及びアセチルアセトナートイオンが挙げられ、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホナートイオン又は酢酸イオンであり、より好ましくは、塩化物イオン又はメタンスルホナートイオンである。2価のパラジウム錯体及び2価のパラジウム錯体前駆体におけるパラジウムが有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアリール基などが挙げられ、これらの基は更に置換基を有していてもよい。2価のパラジウム錯体及び2価のパラジウム錯体前駆体におけるパラジウムが有する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基、クロチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、4-ビフェニル基、2-フルオロ-4-ビフェニル基、2’-フルオロ-2-ビフェニル基、2’-アミノ-2-ビフェニル基、2’-(メチルアミノ-κN)-2-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び4-トリフルオロメチルフェニル基が挙げられる。
【0071】
<パラジウム錯体>
本実施形態の製造方法において用いられるパラジウム錯体は、式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体(以下、「本実施形態のパラジウム錯体」と簡略して表記することもある。)である。このパラジウム錯体は、鈴木カップリング反応を用いた重合反応の触媒として用いられる。
本実施形態の製造方法において、本実施形態のパラジウム錯体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本実施形態の製造方法において、本実施形態のパラジウム錯体は、3種以下を用いることが好ましく、1種又は2種を用いることがより好ましく、1種のみを用いることが更に好ましい。
【0072】
パラジウム錯体前駆体は、式(0)で表される化合物を配位子として含まないパラジウム化合物が好ましい。パラジウム錯体前駆体は、0価又は2価のパラジウム化合物であることが好ましい。パラジウム錯体前駆体としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロへキシルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)(Pd(BnCN)2Cl2)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(Pd(MeCN)Cl)、トランス-ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス(2’-(2-(アミノ-κN)エチル)フェニル-κC)ジパラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス(2’-(アミノ-κN)(1,1’-ビフェニル)-2-イル-κC)ジパラジウム(II)、ビス(μ-メタンスルホナート-κO:κO)(2’-(アミノ-κN)(1,1’-ビフェニル)-2-イル-κC)ジパラジウム(II)、ビス(μ-メタンスルホナート-κO:κO)(2’-(メチルアミノ-κN)(1,1’-ビフェニル)-2-イル-κC)ジパラジウム(II)、トランス-ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)臭化物、パラジウム(II)塩化物、パラジウム(II)シアン化物、パラジウム(II)ヨウ化物及びテトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレートが挙げられ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)(Pd(BnCN)2Cl2)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(Pd(MeCN)Cl)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(μ-メタンスルホナート-κO:κO)(2’-(メチルアミノ-κN)(1,1’-ビフェニル)-2-イル-κC)ジパラジウム(II)、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、パラジウム(II)臭化物、パラジウム(II)塩化物、パラジウム(II)シアン化物、パラジウム(II)ヨウ化物又はテトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレートが好ましく、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(Pd(MeCN)Cl)、ビス(μ-メタンスルホナート-κO:κO)(2’-(メチルアミノ-κN)(1,1’-ビフェニル)-2-イル-κC)ジパラジウム(II)、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)臭化物、パラジウム(II)塩化物又はパラジウム(II)ヨウ化物がより好ましい。
【0073】
本実施形態のパラジウム錯体は、例えば、パラジウム錯体前駆体と式(0)で表される化合物とを反応させて調製することができる。本実施形態の製造方法において、このように事前に調製された本実施形態のパラジウム錯体を用いることができ、事前に調製された本実施形態のパラジウム錯体は単離してから用いてもよいし、単離せずにそのまま用いてもよい。
また、本実施形態の製造方法において、反応系中で生成させた、本実施形態のパラジウム錯体を用いることもできる。本実施形態の製造方法において、パラジウム錯体前駆体及び式(0)で表される化合物を別々に反応系中に混合して、該反応系中で本実施形態のパラジウム錯体を生成させて、それを用いてもよい。また、本実施形態の製造方法において、パラジウム錯体前駆体と式(0)で表される化合物とを含む組成物を反応系中に混合して、該反応系中で本実施形態のパラジウム錯体を生成させて、それを用いてもよい。
本明細書において「式(0)で表される化合物を配位子として含むパラジウム錯体の存在下」とは、上記のように、事前に調製されたパラジウム錯体の存在下、及び、反応系内で調製されたパラジウム錯体の存在下のいずれも包含する意味に用いられる。
【0074】
本実施形態の製造方法において、式(0)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを用いる場合(両者を含む組成物を用いる場合を包含する)、パラジウム錯体前駆体の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のモル数の合計に対して、通常、0.000001モル%~100モル%であり、好ましくは、0.00001モル%~10モル%であり、より好ましくは、0.0001~1モル%であり、更に好ましくは、0.001モル%~0.1モル%である。式(0)で表される化合物の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のモル数の合計に対して、通常、0.000001モル%~100モル%であり、好ましくは、0.00001モル%~10モル%であり、より好ましくは、0.0001モル%~1モル%であり、更に好ましくは、0.001モル%~0.1モル%である。
パラジウム錯体前駆体の使用量と式(0)で表される化合物の使用量との比は、特に限定されない。パラジウム錯体前駆体の使用量と式(0)で表される化合物の使用量とのモル比は、通常、1:0.01~1:100であり、好ましくは、1:0.1~1:10であり、より好ましくは、1:1~1:4であり、更に好ましくは、1:1~1:2であり、特に好ましくは、1:1である。
【0075】
本実施形態の製造方法において、本実施形態のパラジウム錯体を用いる場合、本実施形態のパラジウム錯体の使用量は、反応が進行する量であれば、特に限定されない。本実施形態のパラジウム錯体の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のモル数の合計に対して、通常、0.000001モル%~100モル%であり、好ましくは、0.00001モル%~10モル%であり、より好ましくは、0.0001モル%~1モル%であり、更に好ましくは、0.001モル%~0.1モル%である。
【0076】
<塩基>
本実施形態の製造方法において、塩基を用いることが好ましい。本実施形態の製造方法において、塩基は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0077】
本実施形態の製造方法において、塩基は、有機塩基であってもよく、無機塩基であってもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられ、リン酸三カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム又は水酸化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【0078】
本実施形態の製造方法において、塩基の使用量は、反応が進行する量であれば、特に限定されない。塩基の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のモル数の合計に対して、通常、0.001モル当量~10000モル当量であり、好ましくは、0.1モル当量~1000モル当量であり、より好ましくは、1モル当量~100モル当量であり、更に好ましくは、2モル当量~50モル当量であり、特に好ましくは、4モル当量~20モル当量である。
【0079】
<相間移動触媒>
本実施形態の製造方法において、相関移動触媒を用いることが好ましい。本実施形態の製造方法において、相関移動触媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
本実施形態の製造方法において、相間移動触媒は、特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びクラウンエーテルが挙げられる。相間移動触媒としては、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムブロマイド及び18-クラウン-6-エーテルが挙げられる。
【0081】
本実施形態の製造方法において、相関移動触媒の使用量は、反応が進行する量であれば、特に限定されない。相関移動触媒の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のモル数の合計に対して、通常、0.001モル当量~10000モル当量であり、好ましくは、0.01モル当量~1000モル当量であり、より好ましくは、0.1モル当量~100モル当量である。
【0082】
<溶媒>
本実施形態の製造方法において、溶媒を用いることが好ましい。本実施形態の製造方法において、溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本実施形態の製造方法において、溶媒としては、有機溶媒であってもよく、水であってもよい。本実施形態の製造方法において、溶媒は、有機溶媒及び水の両方を用いることが好ましい。
【0083】
本実施形態の製造方法において、溶媒として、有機溶媒を用いる場合、有機溶媒は特に限定されず、親水性の有機溶媒であっても、疎水性の有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、o-ジクロロベンゼン及びクロロホルムが挙げられる。
【0084】
本実施形態の製造方法において、溶媒の使用量は、反応が進行する量であれば、特に限定されない。溶媒の使用量は、ホウ酸残基を有する芳香族化合物の合計量を100質量部とした場合、通常、1質量部~1000000質量部であり、好ましくは、10質量部~100000質量部であり、より好ましくは、100質量部~10000質量部である。
【0085】
本実施形態の製造方法において、溶媒として、有機溶媒及び水の両方を用いる場合、有機溶媒と水との比率は、反応が進行する比率であれば、特に限定されない。本実施形態の製造方法において、溶媒として、有機溶媒及び水の両方を用いる場合、有機溶媒の使用量と水の使用量との体積比は、通常、1:100~100:1であり、好ましくは、1:10~10:1であり、より好ましくは、1:3~3:1であり、更に好ましくは、1:2~2:1である。
【0086】
本実施形態の製造方法において、反応温度は、反応が進行する温度であれば、特に限定されない。反応温度としては、例えば、-100℃~300℃であり、-20℃~200℃であることが好ましく、0℃~150℃であることがより好ましく、20℃~100℃であることが更に好ましい。
【0087】
本実施形態の製造方法において、反応時間は、通常、0.1時間~1000時間であり、0.2時間~100時間であることが好ましく、0.5時間~50時間であることがより好ましく、1時間~24時間であることが更に好ましい。
【0088】
<ホウ酸残基を有する芳香族化合物>
本実施形態の製造方法において、ホウ酸残基を有する芳香族化合物が有するホウ酸残基の個数は、通常、1個~10個であり、好ましくは、2個~5個であり、より好ましくは、2個又は3個であり、更に好ましくは2個である。
ホウ酸残基を有する芳香族化合物が、ホウ酸残基を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、ホウ酸残基を有する芳香族化合物は、2種類以上用いてもよいし、1種類のみ用いてもよい。
【0089】
ホウ酸残基を有する芳香族化合物は、式(B-1)で表される化合物又は式(B-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0090】
B1~ZB4はすべて同一であっても一部又は全部が異なっていてもよく、好ましくは、すべて同一である。
【0091】
B1~ZB4としては、例えば、式(BE-1)~式(BE-13)で表される基が挙げられる。
【0092】
【0093】
式(BE-11)~式(BE-13)中、Mは金属原子を表し、リチウム原子、ナトリウム原子又はカリウム原子であることが好ましい。
【0094】
前記ZB1~ZB4としては式(BE-1)~式(BE-3)、式(BE-5)、式(BE-6)、式(BE-9)、式(BE-12)又は式(BE-13)で表される基であることが好ましく、式(BE-1)~式(BE-3)、式(BE-5)又は式(BE-6)で表される基であることがより好ましい。
【0095】
<ハロゲン類反応性基を有する芳香族化合物>
本実施形態の製造方法には、ホウ酸残基を有する芳香族化合物のほか、ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1(式中、RC1は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性基(以下、「ハロゲン類反応性基」と記載することがある)を含む芳香族化合物を用いることが好ましい。そのうち、前記ハロゲン類反応性基からなる群より選ばれる少なくとも2種を含む芳香族化合物であることが好ましい。
ここで、「ハロゲン類反応性基からなる群より選ばれる少なくとも2種」とは、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)から選択される少なくとも2種である場合、-O-S(=O)C1から選択される少なくとも2種である場合、並びに、ハロゲン原子及び-O-S(=O)C1のそれぞれから少なくとも1種ずつ選択され合わせて少なくとも2種である場合、のいずれをも包含する意味に用いられる。
【0096】
ハロゲン類反応性基を有する芳香族化合物は、2種類以上用いてもよいし、1種類のみ用いてもよい。
【0097】
前記ハロゲン類反応性基を2つ以上有する芳香族化合物は、式(C-1)又は式(C-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
前記ZC1~ZC4は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがより好ましい。
【0099】
前記ZC1~ZC4は、すべて同一であっても一部又は全部が異なっていてもよく、好ましくはすべて同一である。
【0100】
<式(B-2)又は式(C-2)で表される化合物>
1及びaB1は、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。
【0101】
2及びaB2は、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。
【0102】
B1、RB2、RB3、RX1、RX2及びRX3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0103】
ArB1、ArB3、ArX1及びArX3で表されるアリーレン基は、より好ましくは式(A-1)又は式(A-9)で表される基であり、更に好ましくは式(A-1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0104】
ArB1、ArB3、ArX1及びArX3で表される2価の複素環基は、より好ましくは式(AA-1)、式(AA-2)又は式(AA-7)~式(AA-26)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0105】
ArB1、ArB3、ArX1及びArX3は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0106】
ArB2、ArB4、ArX2及びArX4で表されるアリーレン基は、より好ましくは式(A-1)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-9)~式(A-11)又は式(A-19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0107】
ArB2、ArB4、ArX2及びArX4で表される2価の複素環基のより好ましい範囲は、ArB1、ArB3、ArX1及びArX3で表される2価の複素環基のより好ましい範囲と同じである。
【0108】
ArB2、ArB4、ArX2及びArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲は、それぞれ、ArB1、ArB3、ArX1及びArX3で表されるアリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲と同じである。
【0109】
ArB2、ArB4、ArX2及びArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0110】
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0111】
XXは、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0112】
ArB2、ArB4、ArX2及びArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0113】
ArB1~ArB4、RB1~RB3、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0114】
式(B-2)又は式(C-2)で表される化合物としては、好ましくは式(X-1)~(X-7)で表される化合物であり、より好ましくは式(X-3)~(X-7)で表される化合物であり、更に好ましくは式(X-3)~(X-6)で表される化合物である。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
[式中、RX4及びRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。ZBCはZB1~ZB4又はZC1~ZC4を表す。]
【0119】
式(B-2)又は式(C-2)で表される化合物としては、例えば、式(X1-1)~(X1-30)で表される化合物が挙げられ、好ましくは式(X1-6)~(X1-14)で表される化合物である。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
<式(B-1)又は式(C-1)で表される化合物>
ArB0又はArY1で表されるアリーレン基は、より好ましくは式(A-1)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-9)~式(A-11)、式(A-13)又は式(A-19)で表される基であり、更に好ましくは式(A-1)、式(A-7)、式(A-9)又は式(A-19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0131】
ArB0又はArY1で表される2価の複素環基は、より好ましくは式(AA-4)、式(AA-10)、式(AA-13)、式(AA-15)、式(AA-18)又は式(AA-20)で表される基であり、更に好ましくは式(AA-4)、式(AA-10)、式(AA-18)又は式(AA-20)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0132】
ArB0又はArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲は、それぞれ、前述のArB0又はArY1で表されるアリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲と同様である。
【0133】
ArB0又はArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、式(B-2)のArB2及びArB4又は式(C-2)のArX2及びArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基と同様のものが挙げられる。
【0134】
ArB0又はArY1で表される基が有してもよい置換基は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0135】
式(B-1)又は式(C-1)で表される化合物としては、例えば、式(Y-1)-(Y-10)で表される化合物が挙げられる。
【0136】
[式中、RY1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。ZBCは前記と同じ意味を表す。]
【0137】
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0138】
[式中、
Y1及びZBCは前記と同じ意味を表す。
Y1は、-C(RY2)2-、-C(RY2)=C(RY2)-又はC(RY2)2-C(RY2)2-で表される基を表す。RY2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY2は、同一でも異なっていてもよく、RY2同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0139】
Y2は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0140】
Y1において、-C(RY2)2-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基もしくはシクロアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、又は、一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基もしくは1価の複素環基であり、より好ましくは一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2)2-で表される基としては、好ましくは式(Y-A1)~(Y-A5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0141】
【0142】
Y1において、-C(RY2)=C(RY2)-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は、一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0143】
Y1において、-C(RY2)2-C(RY2)2-で表される基中の4個のRY2は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又はシクロアルキル基である。複数あるRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2)2-C(RY2)2-で表される基は、好ましくは式(Y-B1)~(Y-B5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0144】
[式中、RY2は前記と同じ意味を表す。]
【0145】
[式中、RY1、XY1及びZBCは前記と同じ意味を表す。]
【0146】
【0147】
[式中、
Y1及びZBCは前記と同じ意味を表す。
Y3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0148】
Y3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0149】
[式中、
Y1及びZBCは前記と同じ意味を表す。
Y4は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0150】
Y4は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0151】
式(B-1)又は式(C-1)で表される化合物としては、例えば、式(Y-101)-(Y-171)で表されるアリーレン基からなる化合物、式(Y-201)-(Y-211)で表される2価の複素環基からなる化合物、式(Y-301)-(Y-306)で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基からなる化合物が挙げられる。式(Y-101)-(Y-171)、式(Y-201)-(Y-211)及び式(Y-301)-(Y-306)において、ZBCは前記と同じ意味を表す。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
本実施形態の製造方法において、ホウ酸残基を有する芳香族化合物に含まれるホウ酸残基のモル数と、ハロゲン類反応性基を有する芳香族化合物に含まれるハロゲン類反応性基のモル数との比率は特に限定されない。本実施形態の製造方法において、ホウ酸残基を有する芳香族化合物に含まれるホウ酸残基のモル数を100モルとした場合、ハロゲン類反応性基を有する芳香族化合物に含まれるハロゲン類反応性基のモル数は、例えば、50~200モルであり、好ましくは、70~150モルであり、より好ましくは、80~120モルであり、更に好ましくは、90~110モルであり、特に好ましくは、95~105モルである。
【0173】
本実施形態の製造方法において、重合反応後、必要に応じて、得られた高分子化合物のホウ酸残基末端又はハロゲン類反応性基末端を封止してもよい。ホウ酸残基末端及び/又はハロゲン類反応性基末端の封止方法としては、例えば、ホウ酸残基を有する一官能基性化合物又はハロゲン類反応性基を有する一官能基性化合物、例えばフェニルボロン酸又はブロモベンゼンを加えた後、加熱撹拌を行えばよい。
【0174】
本実施形態の製造方法において、得られた高分子化合物の取り出し方法については、高分子化合物を良溶媒で適当な濃度に希釈し、必要に応じて洗浄及び精製等の操作を行った後、貧溶媒中に高分子化合物溶液を滴下する事により高分子化合物を析出させ、濾別して取り出すことができる。取り出した高分子化合物の構造及び重量平均分子量等は、ゲル浸透クロマトグラフィー及びNMR等の通常の分析手法によって分析することができる。
【0175】
<本発明の効果が発揮される理由>
本発明の効果が発揮される理由は必ずしも明らかではないが、次のような作用機序が想定される。
例えば、従来のパラジウム錯体を用いた高分子化合物の製造方法において、使用される配位子は、単座ホスフィン配位子、並びに、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等の一部の二座ホスフィン配位子であり、これらの配位子を用いた場合、特に未反応の芳香族モノマーが残存してしまう。
本発明者らは、この原因をring-walking(パラジウムなどの遷移金属が芳香環のπ電子と相互作用した状態で芳香環上を移動する現象)と考えた。
具体的には、従来の配位子を含むパラジウム錯体を用いた場合には、パラジウム触媒反応における還元的脱離後に、パラジウムからポリマー鎖が解離しにくいので、ring-walkingが起こりやすくなる。これに対し、本実施態様のパラジウム錯体を用いた場合には、パラジウムからポリマー鎖が解離しやすくなるので、ring-walkingが起こりにくくなり、結果として、逐次重合性が高くなり、反応後の残存モノマー量が十分に低減されると考えられる。
【0176】
<その他>
本実施形態の製造方法で製造された高分子化合物は、インクジェット印刷等により作製された塗布型発光素子(例えば、有機ELディスプレイ等)の材料(例えば、正孔輸送材料及び発光材料)として好適に用いることができる。
【実施例0177】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0178】
得られた化合物のNMRは、5mg~10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルム(CDCl3)に溶解させ、NMR装置(Bruker社製、DPX300)を用いて測定した。
【0179】
得られた高分子化合物の分析は、下記の方法でゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と記すことがある)により行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。また、残存モノマー量は、GPCチャートを用いて面積百分率法によって算出した。
残存モノマー量(%)=[(モノマーの面積)/(モノマー及びポリマーの合計面積)]×100
【0180】
<GPCの分析条件>
GPC測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:PLgel 10μm MIXED-B(アジレント・テクノロジー社製)
カラム温度:40 ℃
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1.5 mL/分
検出:UV検出(波長228 nm)
【0181】
<芳香族モノマーの合成>化合物1及び3~12の合成
化合物1は、特開2011-174061号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物3、化合物5、化合物10及び化合物12は、特開2012-144722号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物4は、国際公開第2012/008550号に記載の方法に従って合成した。
化合物6は、特開2010-189630号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物7及び化合物11は、国際公開第2002/045184号に記載の方法に従って合成した。
化合物8は、特開2008-106241号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物9は、特開2010-215886号公報に記載の方法に従って合成した。
【0182】
<市販パラジウム錯体>
ジクロロ(2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)1,1’-ビナフチル)パラジウム(II)はSigma-Aldrich製の試薬を購入し、ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物及びジクロロ(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)は東京化成製の試薬を購入し、使用した。
【0183】
<合成例1>
ガラス製反応容器に2,2’-ジブロモ-1,1’-ビナフチル(0.50 g)を加え、反応容器内部を窒素置換した。反応容器内に脱水したテトラヒドロフラン(10 mL)を加え、-78℃に冷却した。得られた溶液に1.6M n-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.7 mL)をゆっくり滴下し、2時間撹拌した。ビス(2-メトキシフェニル)クロロホスフィン(0.85 g)を脱水したトルエン(5 mL)に懸濁させ、反応液にゆっくり滴下し、30分間撹拌した。反応液を室温(25℃を意味し、本明細書において、同様である)まで昇温して1時間撹拌した後、60℃に昇温して3時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水(10 mL)を加えて反応を停止させ、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した。得られた混合物を分液ロートに移し、有機相を水で洗浄し、有機相を三角フラスコに移した。有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をヘプタン及び酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体の2,2’-ビス(ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(0.12 g)を得た。
【0184】
2,2’-ビス[ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチルの分析
【0185】
1H-NMR(δppm、CDCl3溶媒):8.0-7.7(m, 12H)、7.5-6.7(m, 10H)、6.6(m, 4H)、6.4(m, 2H)、3.4(s, 6H)、3.3(s, 6H)
31P-NMR(δppm、CDCl3溶媒): -36.6(br s)
APPI-HRMS:Calcd for C48H41O4P2[M+H]+:743.2474、found:743.2352
【0186】
<合成例2>
ガラス製反応容器に2,2’-ビス(ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(98 mg)及びジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(34 mg)を加え、反応容器内部を窒素置換した。反応容器内に脱水したトルエン(3 mL)を加え、室温で13時間撹拌した。生成した固体をろ過により取り出したのち、トルエン(6 mL)で3回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体のジクロロ(2,2’-ビス(ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル)パラジウム(II)(88 mg)を得た。
【0187】
ジクロロ(2,2’-ビス(ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル)パラジウム(II)(以下、「錯体1」と記すことがある)の分析
【0188】
1H-NMR(δppm、CDCl3溶媒):8.4-8.3(m, 2H)、7.6-7.5(m, 10H)、7.2-7.1(m, 2H)、7.0-6.9(m, 2H)、6.9-6.8(m, 6H)、6.6(m, 2H)、6.4(m, 2H)、5.8(m, 2H)4.4(s, 6H)、3.2(s, 6H)
31P-NMR(δppm、CDCl3溶媒): 19.5(s)
【0189】
<実施例1>
ガラス製反応容器にトルエン(45 mL)、化合物1(1.44 g)、化合物2(0.57 g)、化合物3(1.32 g)、化合物4(0.40 g)、化合物5(0.35 g)、及び、錯体1(1.5 mg)を加えた。反応容器内に室温の窒素ガスを通気して脱気し、その後、90℃のオイルバスで加熱した。加熱された反応容器に水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%水溶液(30 mL)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド(0.10 g)を加え、90℃で1時間還流した。反応液を30分間隔でサンプリングし、ゲル浸透クロマトグラフィーにより下記分析条件で測定した重量平均分子量が一定になった段階で反応容器を室温まで冷却した。重量平均分子量は12×103、残存モノマー量は6%であった。得られた反応液をメタノール(400 mL)中に注ぎ、生成した固体をろ過により取り出したのち、メタノールで3回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色粉末状のポリマー(2.8 g)を得た。
【0190】
<実施例2>
実施例1における錯体1をジクロロ(2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)1,1’-ビナフチル)パラジウム(II)(1.3 mg)(以下、「PdCl2(binap)」と記すことがある)に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。重量平均分子量は32×103、残存モノマー量は2%であった。黄色粉末状のポリマー(2.7 g)を得た。
【0191】
<実施例3>
ガラス製反応容器にトルエン(45 mL)、化合物6(1.41g)、化合物7(1.15 g)、化合物8(0.17 g)、化合物9(0.14 g)、及び、錯体1(1.5 mg)を加えた。反応容器内に室温の窒素ガスを通気して脱気し、その後90℃のオイルバスで加熱した。加熱された反応容器に水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%水溶液(30 mL)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド(0.10 g)を加え、90℃で1時間還流した。反応液を30分間隔でサンプリングし、実施例1と同様にゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が一定になった段階で反応容器を室温まで冷却した。重量平均分子量は17×103、残存モノマー量は1%であった。得られた反応液をメタノール(400 mL)中に注ぎ、生成した固体をろ過により取り出したのち、メタノールで3回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、乳白色粉末状のポリマー(1.6 g)を得た。
【0192】
<実施例4>
実施例3における錯体1をPdCl2(binap)(1.3 mg)に変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。重量平均分子量は21×103、残存モノマー量は1%であった。乳白色粉末状のポリマー(1.7 g)を得た。
【0193】
<実施例5>
ガラス製反応容器にトルエン(45 mL)、化合物10(2.18g)、化合物3(1.30 g)、化合物11(0.34 g)、化合物5(0.14 g)、化合物12(0.37 g)、及び、錯体1(1.5 mg)を加えた。反応容器内に室温の窒素ガスを通気して脱気し、その後90℃のオイルバスで加熱した。加熱された反応容器に水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%水溶液(30 mL)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド(0.10 g)を加え、90℃で1時間還流した。反応液を30分間隔でサンプリングし、実施例1と同様にゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が一定になった段階で反応容器を室温まで冷却した。重量平均分子量は30×103、残存モノマー量は1%であった。得られた反応液をメタノール(400 mL)中に注ぎ、生成した固体をろ過により取り出したのち、メタノールで3回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄緑色粉末状のポリマー(3.1 g)を得た。
【0194】
<実施例6>
実施例5における錯体1をPdCl2(binap)(1.3 mg)に変更した以外は、実施例5と同様に実験を行った。重量平均分子量は29×103、残存モノマー量は1%であった。黄緑色粉末状のポリマー(3.1 g)を得た。
【0195】
<比較例1>
実施例1における化合物1の量を0.98 gに変更し、錯体1をジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)(1.2 mg)(以下、「PdCl2(P(o-tol)3)2」と記すことがある)に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。重量平均分子量は12×103、残存モノマー量は12%であった。黄色粉末状のポリマー(2.5 g)を得た。
【0196】
<比較例2>
比較例1におけるPdCl2(P(o-tol)3)2(1.2 mg)をジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(1.3 mg)(以下、「PdCl2(dppf)・CH2Cl2」と記すことがある)に変更した以外は、比較例1と同様に実験を行った。重量平均分子量は12×103、残存モノマー量は12%であった。黄色粉末状のポリマー(2.5 g)を得た。
【0197】
<比較例3>
比較例1におけるPdCl2(P(o-tol)3)2(1.2 mg)をジクロロ(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)(0.9 mg)(以下、「PdCl2(dppe)」と記すことがある)に変更した以外は、比較例1と同様に実験を行った。重量平均分子量は13×103、残存モノマー量は12%であった。黄色粉末状のポリマー(2.5 g)を得た。
【0198】
【表1】
【0199】
以上の結果より、本実施形態の製造方法を用いることで、高分子化合物を製造する際に、モノマーの残存量を大きく低減することが可能であることが示された。また、式(4)で表される化合物、式(4)で表される化合物を配位子として有するパラジウム錯体、及び、式(4)で表される化合物とパラジウム錯体前駆体とを含む組成物を用いて鈴木重合することにより、モノマーの残存量を低減しつつ、重量平均分子量の比較的小さい高分子化合物を製造できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明の製造方法によれば、反応後に残存するモノマーの量が低減された高分子化合物を製造することができる。また、重量平均分子量が比較的小さい高分子化合物を製造することもできる。当該高分子化合物は、塗布型発光素子用の材料として有用である。