(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046220
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】カム駆動装置、転写装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230327BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20230327BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/16 147
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042342
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2021152762
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】古西 貴大
【テーマコード(参考)】
2C056
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB03
2C056EB12
2C056EB14
2C056EB29
2C056EB30
2C056HA47
2H171FA03
2H171FA04
2H171FA15
2H171GA11
2H171JA03
2H171JA20
2H171JA42
2H171KA10
2H171KA24
2H171KA25
2H171KA26
2H171LA04
2H171LA13
2H171LA14
2H171QA04
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2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC05
2H171QC22
2H171SA07
2H171SA12
2H171SA28
2H200FA12
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2H200GA44
2H200GB22
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2H200JA02
2H200JB06
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2H200JC04
2H200JC07
2H200LA03
2H200LA04
2H200LA24
2H200LA27
2H200LA29
2H200LB02
2H200LB13
2H200PA03
2H200PA13
2H200PA14
(57)【要約】
【課題】二次転写ローラと二次転写対向ローラとが二次転写ニップを形成した状態でモータ故障等によりステッピングモータを駆動できなくなると、二次転写ニップが加圧したままとなってしまう。
【解決手段】
対象部材を支持する支持部材と、前記支持部材を動かすカム部材と、前記カム部材を回転駆動するとともに前記カム部材の姿勢を保持する電動機と、前記カム部材に対して、前記対象部材が該対象部材と対向する対向部材から後退する方向のトルクを付与する後退方向トルク付与手段とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を動かすカム部材と、
前記カム部材を回転駆動するとともに前記カム部材の姿勢を保持する電動機と、
前記カム部材に対して、前記対象部材が該対象部材と対向する対向部材から後退する方向のトルクを付与する後退方向トルク付与手段と
を備えることを特徴とするカム駆動装置。
【請求項2】
前記支持部材は回動軸を有し、前記支持部材は前記カム部材の回転に伴い前記回動軸を支点に回動して前記対象部材を前記対向部材に対して進退可能とするとともに、前記カム部材を前記回動軸よりも下方位置に設けることを特徴とする請求項1記載のカム駆動装置。
【請求項3】
前記カム部材の姿勢を保持するために前記電動機が生成する保持トルクT1と、前記後退方向トルク付与手段が生成する後退方向トルクT2と、非通電状態の前記電動機の駆動軸を回すために必要なディテントトルクT3との大小関係が、前記カム部材の回転軸上においてT1>T2>T3を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のカム駆動装置。
【請求項4】
前記後退方向トルク付与手段は、前記カム部材と前記回転軸との間に設けた渦巻ばねであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカム駆動装置。
【請求項5】
前記後退方向トルクは、前記渦巻ばねの巻き取りによって生成するトルクであることを特徴とする請求項4記載のカム駆動装置。
【請求項6】
前記渦巻ばねのばねトルクを、前記電動機の最大トルクと前記カム部材上のディテントトルクとの間に設定することを特徴とする請求項4または5記載のカム駆動装置。
【請求項7】
前記後退方向トルク付与手段は、前記カム部材の重心を回転中心からずらしてなる偏重心カムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカム駆動装置。
【請求項8】
前記カム部材は、前記渦巻ばねの渦巻の外側端部が前記カム部材の回転方向へ向くように、前記外側端部を支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のカム駆動装置。
【請求項9】
前記支持部材は、前記外側端部を差し込むスリットを有し、前記スリットの向きが前記カム部材の回転方向と同じ向きとなるように設けられることを特徴とする請求項8記載のカム駆動装置。
【請求項10】
前記カム部材は、前記渦巻ばねの一部と接し、前記渦巻ばねの座屈を防ぐ座屈防止部材を備えることを特徴とする請求項4、5、6、8または9に記載のカム駆動装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカム駆動装置を備えることを特徴とする転写装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカム駆動装置、または請求項11に記載の転写装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム駆動装置、転写装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、偏心カム(61)と、自らに突き当てられている偏心カムの回転姿勢の変化に応じて自らの位置を変化させる玉軸受け(62)と、偏心カムの回転駆動源であるステッピングモータ(63)と、ステッピングモータに供給する電流を出力する電源とを有するカム駆動装置において、停止中のステッピングモータに停動トルクを発生させるために電源から出力させる電流を偏心カムの回転停止姿勢の違いに応じて異ならせるように、電源からの出力電流値を制御する制御部を設け、偏心カムの非同心湾曲部を玉軸受けに突き当てる回転停止姿勢で偏心カムの回転を停止させる態様を採用したことに起因する電力消費量の増大を抑えることを可能にしたカム駆動装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、二次転写ローラ(17)と二次転写対向ローラ(16)とが二次転写ニップを形成した状態でモータ故障等によりステッピングモータを駆動できなくなると、二次転写ニップが加圧したままとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、対象部材を支持する支持部材と、前記支持部材を動かすカム部材と、前記カム部材を回転駆動するとともに前記カム部材の姿勢を保持する電動機と、前記カム部材に対して、前記対象部材が該対象部材と対向する対向部材から後退する方向のトルクを付与する後退方向トルク付与手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、メンテナンス性を向上したカム駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の全体斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係るカム駆動装置に対象ユニットを搭載した場合の様子を示す全体斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係るカム駆動装置におけるアーム部材とカムの動きを説明する側面図。
【
図5】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の後退方向トルク付与手段の説明図。
【
図6】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の設定トルクの説明図。
【
図9】後退方向トルク付与手段の変形例を示す説明図。
【
図10】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の第1適用例の説明図。
【
図11】第1適用例における対象ユニットの全体斜視図。
【
図12】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の第2適用例の説明図。
【
図13】本発明の実施形態に係るカム駆動装置の第3適用例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置の全体斜視図である。
【0010】
カム駆動装置200は、アーム部材201a,201b、カム202a,202bおよびモータ203a,203bを備える。モータ203aは正転および逆転が可能なモータであり、モータ203aを駆動すると、モータ駆動軸の回転はタイミングベルト204aおよびプーリ205aを介してシャフト206aに伝わり、シャフト206aが回転する。モータ203b側も上記と同様の構成であり、モータ203bを駆動すると、モータ駆動軸の回転はタイミングベルト204bおよびプーリ205bを介してシャフト206bに伝わり、シャフト206bが回転する。
【0011】
シャフト206aは、その他端部(プーリ205aを備えた側と反対側の端部)にプーリ207aを備えている。また、シャフト206aと平行に設けた軸208は、その端部にプーリ209aを備え、プーリ209aと、シャフト206aに設けたプーリ207aとにタイミングベルト210aを掛け渡している。シャフト206b側も上記と同様の構成であり、シャフト206bの他端部(プーリ205bを備えた側と反対側の端部)には、プーリ207bを備えている。さらに、軸208はシャフト206bとも平行である。そして、軸208の端部に設けたプーリ(
図1には現れていないがプーリ209aと同様に設けている)と、シャフト206bに設けたプーリ207bとにタイミングベルト210bを掛け渡している。
【0012】
上記の構成により、シャフト206aの回転は、プーリ207a、タイミングベルト210aおよびプーリ209aを経由して軸208に伝わり、また、シャフト206bの回転は、プーリ207b、タイミングベルト210bおよびプーリを経由して軸208に伝わり、軸208が回転する。なお、タイミングベルト210a,210bには、タイミングベルト210a,210bの外側からテンショナ211a,211bが当接し、タイミングベルト210a,210bに適度なテンションを与えている。
【0013】
軸208は、その一端部(プーリ209aより外側に突出した部位)にカム202aを備え、他端部にカム202bを備える。カム202a,202bは、軸208の外周に嵌合するとともに、例えば軸208の外周に設けた軸方向のキーと、このキーと係合するようにカム202a,202bに設けたキー溝とを嵌め込んで軸208に取り付けている。上記の構成により、軸208が回転すると、軸208と一体になってカム202a,202bが回転する。
【0014】
一方、カム駆動装置200の筐体フレーム212aは、アーム部材201aが軸Xaを支点として回動可能となるようにアーム部材201aを支持している。また、
図1には現れていないがアーム部材201b側にも筐体フレーム212aと同様に筐体フレームが存在し、筐体フレームはアーム部材201bが軸Xbを支点として回動可能となるようにアーム部材201bを支持している。アーム部材201a,201bは、カム202a,202bと対向する位置にカムフォロア(後述する)を備えており、カムフォロアがカム202a,202bのカム面と接する。上記の構成により、カム202a,202bが回転すると、カム面の形状にならってカムフォロアが動き、これに追従してアーム部材201a,201bは軸Xa,Xbを支点として回動する。
【0015】
本実施形態のモータ203a,203bはハイブリッド型ステッピングモータであり、一定パルス駆動してカム202a,202bを所定角度動かす。その後、モータ203a,203bは保持トルクを生成してカム202a,202bを所定角度動いた位置で保持する。また、モータ203a,203bは、通電していない時でもモータ駆動軸にはディテントトルク(非通電状態のモータの駆動軸を回すために必要なトルク)が発生する。なお、本実施形態では、カム202a,202bを駆動するためのモータ203a,203bをそれぞれ設けたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、シャフト206a,206bを1本化するなどして、単一のモータで両側のカム202a,202bを駆動するようにしてもよい。
【0016】
ここで、アーム部材201a,201bは「支持部材」の一例であり、カム202a,202bは「カム部材」の一例であり、モータ203a,203bは「電動機」の一例である。また、軸208は「回転軸」の一例であり、軸Xa,Xbは「回動軸」の一例である。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置に対象ユニットを搭載した場合の様子を示す全体斜視図である。
【0018】
カム駆動装置200は、アーム部材201aとアーム部材201bとの間で、一点鎖線で示すように対象ユニット300を支持できる構成となっている。上記の構成により、カム202a,202bが回転すると、アーム部材201a,201bに設けたカムフォロアがカム面の形状にならって動き、アーム部材201a,201bは軸Xa,Xbを支点として回動する。これにより、対象ユニット300もアーム部材201a,201bと共に軸Xa,Xbを支点として回動する。
【0019】
なお、対象ユニット300の形状は、図示のような箱形状物に限るものではなく、また、対象ユニット300の形状、構成によってアーム部材201a,201bの形状、構成も適宜変更してよい。ここで、対象ユニット300は「対象部材」の一例である。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置におけるアーム部材とカムの動きを説明する側面図である。
【0021】
上述のようにカム駆動装置200の筐体フレーム212aは、アーム部材201aが軸Xaを支点として回動可能となるように、アーム部材201aを支持している。アーム部材201aは、カム202aと対向する位置にカムフォロア213aを備えており、カムフォロア213aがカム202aのカム面と接触している。
【0022】
本実施形態では、
図3の実線で示した位置にカム202aがある場合は、カムフォロア213aが軸208に最も接近するため、その結果、アーム部材201aが最も後退方向に移動した状態を形成する。そして、カム202aが軸208を軸として時計方向に回動して、カム202aが破線の位置に移動した場合は、カム202aがカムフォロア213aを破線の位置まで動かす。その結果、カムフォロア213aを介してアーム部材201aが最も前進方向に移動した状態を形成する。
【0023】
また、カム202aを破線位置から実線位置に戻す場合は、カム202aを反時計方向に回動して行う。なお、
図3はアーム部材201a側の構成に基づき動きを説明したが、アーム部材201b側についても同等の構成となっている。
【0024】
図4は、モータ非通電時の不具合を説明する側面図である。ここでは、カム駆動装置200に搭載する対象ユニット300がローラR1である場合を例として説明する。
【0025】
アーム部材201aとアーム部材201bはローラR1を回転可能に支持している。カム202a,202bが実線位置の場合、アーム部材201a,201bが最も後退した位置にあるため、ローラR1も実線で示すようにローラR2から離間した位置にある。なお、ローラR2は、所定位置に固定したローラである。そして、カム202a,202bを時計方向に回動し、カム202a,202bが破線位置に動いた場合、アーム部材201a,201bが最も前進した位置となり、ローラR1は破線で示すようにローラR2を押圧する。ここで、ローラR1は「対象部材」の一例であり、ローラR2は「対向部材」の一例である。
【0026】
カム駆動装置200は、上述のようにモータ203a,203bはステッピングモータであり、一定パルス駆動してカム202a,202bを所定角度動かした後、カム202a,202bの姿勢を保持する保持トルクを生成する。また、モータ203a,203bは、通電していない時でもモータ203a,203bの駆動軸にはディテントトルク(非通電状態のモータの駆動軸を回すために必要なトルク)が発生する。
【0027】
このため、ローラR1をローラR2に押圧した状態でモータ203a,203bの故障や装置全体の電源が落ちてモータ203a,203bを駆動できなくなった場合は、ローラR1,R2が押圧したままの状態となってしまう。例えばローラR1,R2が用紙などのシートを搬送する装置である場合、シート詰まり等に対するメンテナンスのためにローラR1,R2を装置から引き出すことが可能な構成にする。しかし、ローラR1,R2が押圧したままの状態では、ローラR1,R2を引き出すことができなかったり、引き出すことができたとしてもローラR1,R2に傷をつけてしまうなどの不具合が生じる。
【0028】
そこで、本実施形態のカム駆動装置200では、カム202a,202bに対してローラR1がローラR2から後退する方向のトルクを付与する手段を設けた。以下、後退方向トルク付与手段の構成を説明する。
【0029】
図5は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置の後退方向トルク付与手段の説明図である。
【0030】
図5は、後退方向トルク付与手段として渦巻ばねを用いる構成を例示している。カム202a,202bは渦巻ばね214a,214bを備える。以下の説明では渦巻ばね214a,214bを総称して「渦巻ばね214」と記載する。渦巻ばね214は、渦巻の中心側端部P1を軸208に固定し、渦巻の外側端部P2をカム202a,202bの側面に固定している。渦巻ばね214は、巻き取り方向に回すと渦巻の外径が小さくなり、繰り出し方向(巻き取り方向と反対の方向)に回すと渦巻の外径が大きくなるように変形する。ここで、渦巻ばね214の巻き方向は、巻き取り方向においてカム202a,202bに対し後退方向のトルクを付与する向きとするのがよい。
【0031】
図5に示した位置にカム202a,202bがある場合は、渦巻ばね214はカム202a,202bに対して後退方向のトルクは付与していない。そして、カム202a,202bが軸208を軸として時計方向に回動して行くと、渦巻ばね214は繰り出し方向に回り、渦巻ばね214は渦巻の外径を大きくしながら変形する。渦巻ばね214は渦巻の外径を大きくした状態では、渦巻ばね214を巻き取ろうとする復元力が発生し、この復元力が後退方向トルクを生成する。
【0032】
なお、図示のようにカム202a,202bが後退方向に最も回動した際は、カム202a,202bの半径が最も小さいカム面にアーム部材201a,201b(カムフォロア213a,213b)が接触することになる。従って、渦巻ばね214は、アーム部材201a,201bと干渉しない大きさの範囲で変形することができ、且つ所望の後退方向トルクを得ることが可能なばねを選定することが好ましい。
【0033】
図6は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置の設定トルクの説明図である。
【0034】
本実施形態において、許容値は、カム駆動装置200においてカム202a,202bの回転駆動および姿勢の保持に用いるモータ203a,203bの最大トルクであり、以下、「保持トルク」とも称する。カム上ディテントトルクは、非通電状態においてモータ203a,203bの駆動軸を回すために必要なトルクであり、以下、「ディテントトルク」とも称する。渦巻ばねトルクは、上述の渦巻ばね214が生成するトルクであり、以下、「後退方向トルク」とも称する。
【0035】
保持トルク、ディテントトルクおよび後退方向トルクは、いずれもカムの回転軸上での換算、つまり、軸208上でカム202a,202bに付与するトルク値として示している。そして、渦巻ばねトルク(後退方向トルク)は、渦巻ばね214の外周端部P2の回転角によって
図6のように推移する。モータ203a,203bが非通電状態となった場合に、カムフォロア213a,213bに対するカム202a,202bの押圧を自動的に解除するようにするためには、後退方向トルクを保持トルクとディテントトルクとの間になるように設定する。
【0036】
具体的には、保持トルクをT1、後退方向トルクをT2、ディテントトルクをT3とした場合、三者の大小関係がT1≧T2>T3を満たすように、より好ましくはT1>T2>T3を満たすように設定する。なお、対象ユニット300の重量、カム202a,202bの形状構成等により、後退方向トルクとして作用する分力が変わる場合もあり、三者の大小関係は対象ユニットの重量、カム形状等に基づき適宜設定してよい。
【0037】
上述のように本実施形態は、ローラR1を支持するアーム部材201a,201bと、アーム部材201a,201bを動かすカム202a,202bと、カム202a,202bを回転駆動するとともにカム202a,202bの姿勢を保持するモータ203a,203bと、カム202a,202bに対して、ローラR1がこのローラR1と対向するローラR2から後退する方向のトルクを付与する渦巻ばね214a,214bとを備える。
【0038】
また上述のように、アーム部材201a,201bは軸Xa、Xbを有し、アーム部材201a,201bはカム202a,202bの回転に伴い軸Xa,Xbを支点に回動してローラR1をローラR2に対して進退可能とするとともに、カム202a,202bを軸Xa,Xbよりも下方位置に設ける。
【0039】
また上述のように、カム202a,202bの姿勢を保持するためにモータ203a,203bが生成する保持トルクT1と、渦巻ばね214a,214bが生成する後退方向トルクT2と、非通電状態のモータ203a,203bの駆動軸を回すために必要なディテントトルクT3との大小関係が、カム202a,202bの回転軸上においてT1>T2>T3を満たす。
【0040】
これにより、モータ203a,203bが非通電状態となった場合は、カム202a,202bが、アーム部材201a,201b(カムフォロア213a,213b)に対する押圧を解除する方向に移動するようになる。そのため、ローラR1とローラR2とが押圧した状態でモータ203a,203bを駆動できなくなった場合でも、ローラR1とローラR2との押圧を解除できるようになる。その結果、メンテナンス性を向上したカム駆動装置を提供することができる。
【0041】
次に、
図7および
図8を用いて、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態の説明図であり、
図7(a)はカムが初期位置の状態、
図7(b)はカムが初期位置から回転した状態を示す。
図8は、第2の実施形態に対する比較例の説明図であり、
図8(a)はカムが初期位置の状態、
図8(b)はカムが初期位置から回転した状態を示す。
【0042】
図8に示した比較例の場合、渦巻ばね214(214a,214b)の渦巻の外側端部P2は、円弧状に曲げ加工が施されている。渦巻ばね214は、この外側端部P2をネジなどでカム202(202a,202b)の側面に固定することで、カム202に取り付けられる。
【0043】
上記の構成において、渦巻ばね214の外側端部P2の向きは、カム202の回転方向と必ずしも同じにはならない。例えば、カム202は軸208を支点に時計方向(
図8の破線矢印で示した方向)へ回転するのに対し、渦巻ばね214の外側端部P2は、
図8(b)の一点鎖線矢印で示す方向へ向いており、両者の向きは一致しない。
【0044】
このように、カム202の回転方向と渦巻ばね214のばね材の向きとが不一致(もしくは変動可能)な状態でカム202を回転させて、ばね力を発生させると、ばね材全域に均等に力がかからない。その結果、
図8(b)に示すように渦巻ばね214が座屈変形してしまう場合がある。渦巻ばね214が座屈変形すると、渦巻ばね214の一部に変形量が集中してしまうことで、狙いのばね力を発生させることができなくなる。また、座屈変形によって渦巻ばね214が塑性変形に至った場合には、渦巻ばね214が使用不可能な状態となってしまう。
【0045】
そこで、第2の実施形態は、渦巻ばね214の外側端部P2の向く方向が、常にカム202の回転方向に向くように構成されている。
【0046】
具体的には、
図7に示すように、渦巻ばね214の外側端部P2は、渦巻形状のまま単純切断した形状とし、外側端部P2は、カム202の側面に固定した支持ピン216a(216b)に差し込むことで支持される。支持ピン216a(216b)は、渦巻ばね214の外側端部P2を差し込むスリットSa(Sb)を有し、支持ピン216a(216b)は、カム202の側面に圧入などで固定されている。
【0047】
また、スリットSa(Sb)の向きは、カム202の回転中心(軸208)に対して接線方向となるようにして設ける。つまり、カム202の回転方向(
図7(b)の破線矢印で示した方向)と同じ向きとなるように設ける。これにより、渦巻ばね214の外側端部P2の向きは、常にカム202の回転方向に向くように規制されるので、カム202の回転に伴う渦巻ばね214の座屈変形の発生を低減できる。ここで、支持ピン216a(216b)は、「支持部材」の一例である。
【0048】
なお、支持ピン216a(216b)は、一般に用いられる割りピンを使用してもよい。割りピンの場合、渦巻ばね214のばね材の板厚と、割りピンのスリット幅との間に生じるガタの影響で、外側端部P2の向きは変動幅を持つようになる。また、割りピンのスリットの向きをカム202の回転方向に正確に合わせるには高い加工精度が求められ、実際に割りピンを使いこなすことは容易ではない。
【0049】
上記のような割りピンの使用等を可能にするため、渦巻ばね214の取り付け部(カム202の側面)に、さらに座屈防止ピン217a(217b)を設けてもよい。座屈防止ピン217a(217b)は、渦巻ばね214の一部と接するように配置される。座屈防止ピン217a(217b)を設けることによって、渦巻ばね214の外側端部P2の向きを、支持ピン216a(216b)と座屈防止ピン217a(217b)の2点で規制することが可能になる。支持ピン216a(216b)と座屈防止ピン217a(217b)との2点の距離を十分に離すことで、部品精度による向きのずれを抑制することができる。
【0050】
なお、座屈防止ピン217a(217b)の配置は、渦巻ばね214の曲率半径外側に配置するのがよい。渦巻ばね214は、予め一定の曲率で渦巻形状になっており、座屈方向は必ず半径方向外側に膨らむように変形するためである。ここで、座屈防止ピン217a(217b)は、「座屈防止部材」の一例である。
【0051】
図9は、後退方向トルク付与手段の変形例を示す説明図である。カム部材以外は上述の構成と同等であるため、同一符号を付しその説明は省略する。
【0052】
本変形例に示したカム215a,215b(以下、総称して「カム215」と記載する。)は、カム215の側面に凹部を設けることにより、厚肉部T1と薄肉部T2を備える。これにより、カム215の重心を回転中心からずらして、カムフォロア213a,213bとの当接状態の位相姿勢において後退方向にトルクがかかるようにする。
【0053】
本変形例の場合は、カム215の形状のみで後退方向トルクを付与することができ、カム215が特定の位相になったときのみ後退方向のトルクが発生する。なお、本変形例では、カム215の側面に凹部を設けて薄肉部T2を形成したが、凹部を設けることが難しい場合は、カム215の側面におもり部材を取り付けることにより厚肉部T1を形成して偏重心カムを得るようにしてもよい。
【0054】
上述のように本実施形態において、後退方向トルク付与手段は、重心を回転中心からずらしてなる偏重心カム215である。
【0055】
本変形例においても、モータ203a,203bが非通電状態となった場合は、カム215a,215bが、アーム部材201a,201b(カムフォロア213a,213b)に対する押圧を解除する方向に移動するようになる。そのため、ローラR1とローラR2とが押圧した状態でモータ203a,203bを駆動できなくなった場合でも、ローラR1とローラR2との押圧を解除できるようになる。その結果、メンテナンス性を向上したカム駆動装置を提供することができる。
【0056】
以下、
図10乃至
図13は、本発明の実施形態に係るカム駆動装置の適用例を示すものである。
【0057】
図10は、第1適用例を示す概略構成図であり、画像形成装置としての電子写真方式のプリンタに適用した実施形態に基づいて説明する。
【0058】
プリンタ500は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナー像を作像するための作像ユニット100Y,100M,100C,100Kを並列に配置したタンデム部1を備える。作像ユニット100Y~100Kは、感光体モジュール、帯電モジュール、現像モジュールおよび清掃モジュールを共通のユニット枠体で支持しており、これらモジュールを一体的にプリンタ本体に対して脱着可能にしている。感光体モジュール20Y,20M,20C,20Kはドラム状の感光体21Y,21M,21C,21Kを備える。帯電モジュール30Y,30M,30C,30Kは帯電装置を備える。現像モジュール40Y,40M,40C,40Kはトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置を備える。清掃モジュール50Y,50M,50C,50Kは、感光体21Y,21M,21C,21Kを清掃する清掃装置を備える。
【0059】
また、タンデム部1の上方には露光ユニット9を備え、さらに露光ユニット9の上方には現像用トナーを収容したトナーボトル150Y,150M,150C,150Kを保持するボトル装着部10を備えている。トナーボトル150Y~150Kは、ボトル装着部10に対して着脱可能であり、ボトルが空になった場合などにはボトル装着部10から取り外して、新たなトナーボトルと交換する。
【0060】
また、タンデム部1の下方には中間転写ベルト15を有する転写ユニット2を備える。中間転写ベルト15は、フッ化ビニルデン、エチレン-四フッ化エチレン共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート等を単層または複数層に構成した無端ベルトからなり、複数のローラに掛け渡した状態で図中時計方向に移動する。
【0061】
転写ユニット2の下方には二次転写装置4を備える。二次転写装置4は、無端ベルトからなる二次転写ベルト17aと、二次転写ベルト17aを二次転写対向ローラ16に向けて押圧する二次転写ローラ17bとを備える。二次転写ベルト17aは、中間転写ベルト15の二次転写対向ローラ16に対する掛け回し箇所に、ベルトおもて面から当接して二次転写ニップを形成する。二次転写ローラ17bには二次転写バイアスを印加し、二次転写対向ローラ16は電気的に接地することにより、二次転写ニップ内に二次転写電界を形成する。
【0062】
二次転写装置4の図中左側方には、記録シート上に転写したトナー像を定着する定着ユニット7を備える。定着ユニット7は、内部に発熱体を備えた加熱ローラを有する。また、二次転写装置4と定着ユニット7との間には、トナー像転写後の記録シートを定着ユニット7に向けて搬送する搬送ベルト6を備える。また、プリンタ500の下部には記録シートを二次転写装置4へ送り出す給紙ユニット3を備える。さらに、定着ユニット7の図中左側方には、定着ユニット7を通過した記録シートを機外または両面ユニット5に向けて搬送する排紙ユニット8を備える。
【0063】
中間転写ベルト15のループ内側には、Y,M,C,K用の4つの一次転写ローラを備えており、これら一次転写ローラと感光体21Y~21Kとの間に中間転写ベルト15が介在している。これにより、中間転写ベルト15のおもて面と感光体21Y~21Kとが当接し、一次転写ニップを形成する。一次転写ニップにおいては、一次転写ローラに一次転写バイアスを印加することにより、一次転写電界を形成する。
【0064】
プリンタ500は、外部のパーソナルコンピュータ等から画像データを受信すると、プリントジョブを開始して中間転写ベルト15などの駆動を開始する。そして、タンデム部1では回転駆動する感光体21Y~21Kの表面を、帯電モジュール30Y~30Kの帯電装置が所定の帯電電位に一様に帯電する。帯電した感光体21Y~21Kの表面には、画像データに基づいて露光ユニット9が発するレーザ光を用いた光走査によって、Y,M,C,K用の静電潜像を形成する。静電潜像は、現像モジュール40Y~40Kにてトナー像として現像後、中間転写ベルト15上に重なり合うように順に一次転写し、4色重ね合わせトナー像になる。トナー像転写後の感光体21Y~21Kの表面に残留した転写残トナーは、清掃モジュール50Y~50Kの清掃装置が感光体21Y~21Kの表面から除去する。
【0065】
トナー像の作像と並行して、給紙ユニット3は記録シートをレジストローラ対14に突き当たるまで搬送し、記録シートがレジストローラ対14に突き当たったならば搬送を一旦停止する。そして、中間転写ベルト15上のトナー像が二次転写ニップに到達するタイミングに合わせてレジストローラ対14が回転を再開する。レジストローラ対14の回転再開に伴い搬送を再開した記録シートには、二次転写ニップにて中間転写ベルト15上のトナー像と同期してトナー像が二次転写する。
【0066】
トナー像転写後の記録シートは、搬送ベルト6によって定着ユニット7内に移動し、定着ユニット7は記録シート上のトナー像に対して熱と圧力とを加えることでトナー像を記録シートに定着する。その後、記録シートは排紙ユニット8に移動し、排紙ユニット8の切換爪の動作により、記録シートの進路を機外(装置左側)の排紙トレイまたは下方の両面ユニット5のいずれかに切り替える。両面ユニット5は、記録シートの上下を反転して記録シートを二次転写ニップに再送するものである。再送した記録シートは、二次転写ニップにてその裏面にもトナー像の二次転写を行った後、排紙ユニット8が排紙トレイ上に排出する。
【0067】
なお、二次転写ニップを経由した後の中間転写ベルト15の表面は、中間転写ベルト清掃ユニット90がその表面上に残留している転写残トナーを除去する。以上のような構成のプリンタ500では、例えば二次転写対向ローラ16に対する二次転写ベルト17aの接離機構においてカム駆動装置200を適用することができる。
【0068】
図11は、第1適用例における対象ユニットの全体斜視図である。第1適用例は、
図2に示した対象ユニット300として、二次転写装置4を適用した例を示している。
【0069】
カム駆動装置200は、アーム部材201aとアーム部材201bとの間で対象ユニットの一例としての二次転写装置4を支持している。二次転写装置4の上面には
図10に示した二次転写ベルト17aの一部が露出し、二次転写ベルト17aの下(裏面側)には、二次転写ベルト17aを二次転写対向ローラ16側へ押圧する二次転写ローラ17bを備えている。上記の構成により、カム202a,202b(カム202bは
図2参照)が回転すると、カムフォロアを介してアーム部材201a,201bは軸Xa,Xbを支点として回動する。これにより、二次転写装置4もアーム部材201a,201bと共に軸Xa,Xbを支点として回動する。そして、プリンタ500において二次転写ニップを形成した状態でカム駆動装置200が非通電状態となった場合は、二次転写ニップを解除する方向に後退方向トルクがカム202a,202bに作用する。
【0070】
ここで、例えばオフィス向けのプリンタの場合は、プリンタ本体のカバーが開いた際にモータとの電気的接続を遮断するインターロック機構を搭載しているものもある。インターロック機構を搭載したプリンタであれば、プリンタ本体のカバーを開くことでモータの保持電流が切れる。そのため、保持トルクT1、後退方向トルクT2、ディテントトルクT3をT1>T2>T3の関係に設定しておくことで確実に二次転写ニップを解除することができる。
【0071】
また、適用例では二次転写装置4を載せたカム駆動装置200はプリンタ500に対して矢印A方向に引き出し可能に設けている。従って、画像形成中に非通電状態になり、二次転写装置4に記録シートが残っている場合などは、二次転写ニップを解除状態にした後、カム駆動装置200および二次転写装置4を引き出すことで、記録シートの除去が可能になる。
【0072】
図12は、第2適用例を示す概略構成図である。第2適用例は、
図10に示したプリンタ500のレジストローラ対14を適用した例を示している。
【0073】
カム駆動装置200には、レジストローラ対14を構成する一方のローラ14bを搭載している。アーム部材201aとアーム部材201bはローラ14bを回転可能に支持している。カム202a,202bが実線位置にある場合は、アーム部材201a,201bが最も後退した位置にあるため、ローラ14bも実線で示したようにローラ14aから離間した位置にある。なお、ローラ14aは、プリンタ500本体側の所定位置に固定したローラである。カム202a,202bを時計方向に回動し、カム202a,202bが破線位置に移動した場合は、アーム部材201a,201bが最も前進した位置となり、ローラ14bは破線で示したようにローラ14aを押圧する。
【0074】
本例でもレジストローラ対14がニップ形成した状態でカム駆動装置200が非通電状態となった場合は、ニップを解除する方向に後退方向トルクがカム202a,202bに作用し、第1適用例と同様の効果を得ることができる。なお、本例においてもローラ14bを載せたカム駆動装置200をプリンタ500本体に対して引き出し可能に設け、メンテナンス作業等でのアクセス性を高めるようにしてもよい。
【0075】
図13は、第3適用例を示す概略構成図であり、画像形成装置としてのインクジェット方式のプリンタに適用した実施形態に基づいて説明する。
【0076】
プリンタ400は、インクジェット方式のヘッド401を備える。ヘッド401には発熱素子方式、ピエゾ素子方式、MEMS素子方式、静電素子方式などいずれも適用可能である。給紙カセット402は記録シートSを格納し、給紙ローラ403が記録シートSを1枚ずつピックアップして給紙カセット402から記録シートSを送り出す。続いて、一対のシート厚さ検出ローラ404a,404bは、記録シートSの1枚の厚さを取得する。
【0077】
記録シートSはLFローラ405およびピンチローラ406が形成する搬送ニップによってヘッド401の直下に移動する。LFローラ405の同軸上にはエンコーダを備えており、LFローラ405の回転量を記録シートSの送り距離換算で検知できる。プラテン407は、記録シートSを下から支持する。第1排紙ローラ408は、第1コロ409とともにヘッド401の下を通過してきた記録シートSを挟持して搬送する。定着器410は、ヘッド401が吐出したインクを載せた記録シートSを加熱する送風ファン411を有し、所定温度の温風を記録シートSに吹き付けて記録シートS上のインクを乾かす。
【0078】
また、定着器410は温度センサ(サーミスタ)を備えており、温風温度を検出する。定着器410の下流側に設けた第2排紙ローラ412は、第2コロ413とともに定着器410を通過してきた記録シートSを挟持して搬送する。定着器410に対向して設けた排紙プラテン414は、プラテン407と同様、記録シートSを下から支持する。このようにして、ヘッド401が吐出したインクを定着器410で乾かすことができる。
【0079】
上記構成のプリンタ400においては、例えば、LFローラ405とピンチローラ406とを接離可能に構成する場合に、LFローラ405またはピンチローラ406を上述のカム駆動装置200に搭載して実装してもよい。または、第1排紙ローラ408と第1コロ409とを接離可能に構成する場合に、第1排紙ローラ408または第1コロ409をカム駆動装置200に搭載して実装してもよい。または、第2排紙ローラ412と第2コロ413とを接離可能に構成する場合に、第2排紙ローラ412または第2コロ413をカム駆動装置200に搭載して実装してもよい。
【0080】
さらに、カム駆動装置200は、ローラ対に限らず、ヘッド401の上下移動にも適用可能である。ヘッド401の上下移動に適用する場合は、ヘッド401をカム駆動装置200のアーム部材201a,201bに固定することで上下方向への移動が可能になる。これによりヘッド401とプラテン407との間隔を広げることが可能になり、ヘッド401の下に残存する記録シートSの取り出し等が行いやすくなる。
【0081】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0082】
第1の態様は、対象部材(例えば
図2の対象ユニット300、
図4のローラR1等)を支持する支持部材(例えばアーム部材201a,201b)と、前記支持部材を動かすカム部材(例えばカム202a,202b)と、前記カム部材を回転駆動するとともに前記カム部材の姿勢を保持する電動機(例えばモータ203a,203b)と、前記カム部材に対して、前記対象部材が該対象部材と対向する対向部材(例えば
図4のローラR2等)から後退する方向のトルクを付与する後退方向トルク付与手段(例えば渦巻ばね214a,214b)とを備えることを特徴とするものである。
【0083】
第2の態様は、第1の態様において、前記支持部材(例えばアーム部材201a,201b)は回動軸(例えば軸Xa,Xb)を有し、前記支持部材は前記カム部材(例えばカム202a,202b)の回転に伴い前記回動軸を支点に回動して前記対象部材(例えば
図2の対象ユニット300、
図4のローラR1等)を前記対向部材(例えば
図4のローラR2等)に対して進退可能とするとともに、前記カム部材を前記回動軸よりも下方位置に設けることを特徴とするものである。
【0084】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記カム部材(例えばカム202a,202b)の姿勢を保持するために前記電動機(例えばモータ203a,203b)が生成する保持トルクT1と、前記後退方向トルク付与手段(例えば渦巻ばね214a,214b)が生成する後退方向トルクT2と、非通電状態の前記電動機の駆動軸を回すために必要なディテントトルクT3との大小関係が、前記カム部材の回転軸(例えば軸208)上においてT1>T2>T3を満たすことを特徴とするものである。
【0085】
第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記後退方向トルク付与手段(例えば渦巻ばね214a,214b)は、前記カム部材(例えばカム202a,202b)と前記回転軸(例えば軸208)との間に設けた渦巻ばねであることを特徴とするものである。
【0086】
第5の態様は、第4の態様において、前記後退方向トルクは、前記渦巻ばねの巻き取りによって生成するトルクであることを特徴とするものである。
【0087】
第6の態様は、第5の態様において、前記渦巻ばねのばねトルクを、前記電動機(例えばモータ203a,203b)の最大トルクと前記カム部材(例えばカム202a,202b)上のディテントトルクとの間に設定することを特徴とするものである。
【0088】
第7の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記後退方向トルク付与手段は、前記カム部材の重心を回転中心からずらしてなる偏重心カム(例えばカム215a,215b)であることを特徴とするものである。
【0089】
第1の態様乃至第7の態様によれば、電動機が非通電状態となった場合は、カム部材が、支持部材に対する押圧を解除する方向に移動するようになる。そのため、対象部材と対向部材とが押圧した状態で電動機を駆動できなくなった場合でも、対象部材と対向部材との押圧を解除できるようになる。その結果、メンテナンス性を向上したカム駆動装置を提供することができる。
【0090】
第8の態様は、第4の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記カム部材(例えばカム202a,202b)は、前記渦巻ばね(例えば渦巻ばね214a,214b)の渦巻の外側端部(例えば外側端部P2)が前記カム部材の回転方向(例えば
図7(b)の破線矢印で示した方向)へ向くように、前記外側端部を支持する支持部材(例えば支持ピン216a,216b)を備えることを特徴とするものである。
【0091】
第9の態様は、第8の態様において、前記支持部材(例えば支持ピン216a,216b)は、前記外側端部(例えば外側端部P2)を差し込むスリット(例えばスリットSa,Sb)を有し、前記スリットの向きが前記カム部材(例えばカム202a,202b)の回転方向(例えば
図7(b)の破線矢印で示した方向)と同じ向きとなるように設けられることを特徴とするものである。
【0092】
第8の態様および第9の態様によれば、渦巻ばねの外側端部の向く方向が常にカム部材の回転方向に向くように支持されるため、ばねの変形が一部に集中しにくくなり、ばねの座屈や塑性変形を防ぐことができる。
【0093】
第10の態様は、第4、第5、第6、第8または第9の態様において、前記カム部材(例えばカム202a,202b)は、前記渦巻ばね(例えば渦巻ばね214a,214b)の一部と接し、前記渦巻ばねの座屈を防ぐ座屈防止部材(例えば座屈防止ピン217a,217b)を備えることを特徴とするものである。
【0094】
第10の態様によれば、部品精度による渦巻ばねの向きのずれを、より抑制することができる。
【符号の説明】
【0095】
200 カム駆動装置
201a,201b アーム部材
202a,202b カム
203a,203b モータ
214a,214b 渦巻ばね
300 対象ユニット