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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046283
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230327BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141352
(22)【出願日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021153295
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 夏実
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB11
2G084CC05
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF07
2G084FF15
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004CA03
5F004CA05
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、下部電極の上方に配置される上部電極と、ソース電力を上部電極又は下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、電源部とエッジリングとを電気的に接続し、ソース電力及び少なくとも1つのバイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部をエッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、を備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバイパス回路は、周波数に応じて選択される前記少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバイパス回路は、周波数毎に独立して設けられたバイパス回路と、複数の周波数に共通して設けられたバイパス回路との組み合わせを含むように構成される、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのバイパス回路は、前記エッジリングに供給する前記少なくとも1つの電力の大きさを制御するように構成される、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ソース電源は、前記ソース電力としてソースRF電力を供給するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つのバイアスRF電力、又は周波数が異なる少なくとも1つの負極性のパルス電圧を印可するように構成される、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
第1の整合回路及び少なくとも1つの第2の整合回路を含む整合器を更に備え、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つのバイアスRF電力を供給するように構成され、
前記ソース電源は、前記第1の整合回路を介して前記上部電極又は前記下部電極に接続され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記少なくとも1つの第2の整合回路を介して前記下部電極に接続される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記バイパス回路は、前記整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記可変受動素子又は前記可変受動素子と前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第1の経路に配置される、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つの負極性のパルス電圧を印可するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、少なくとも1つの第1のRFフィルタを介して前記下部電極にそれぞれ接続される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのバイアス電源は、第2のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記バイパス回路は、整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記第2のRFフィルタ又は前記第2のRFフィルタと前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第2の経路に配置される、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第2のRFフィルタは、前記少なくとも1つの可変受動素子を含む、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記電源部は、前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加するように構成される直流電源であり、少なくとも1つの第3のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続される直流電源を更に備える、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記バイパス回路は、整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記直流電源又は前記直流電源と前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第3の経路に配置される、請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記第3のRFフィルタは、前記少なくとも1つの可変受動素子を含む、請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記エッジリングを昇降させるように構成される昇降装置を更に備える、請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記ソース電源は、前記ソース電力として負極性の第1のパルス電圧を印可するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として少なくとも1つの負極性の第2のパルス電圧を印可するように構成され、
前記第1のパルス電圧の周波数と前記第2のパルス電圧の周波数は異なる、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのバイアス電源は、
第4のRFフィルタを介して前記下部電極に接続されるとともに、第5のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続され、
前記バイパス回路は、前記第4のRFフィルタ又は前記第4のRFフィルタと前記下部電極との間の経路と、前記第5のRFフィルタ又は前記第5のRFフィルタと前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第4の経路に配置される、請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングを昇降させるように構成される昇降装置と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項19】
前記バイパス回路は、整合回路又は前記整合回路と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第5の経路に接続される、請求項18に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
プラズマ処理装置を用いたエッチング方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備え、
前記エッチング方法は、
(a)基板を前記基板支持面上に載置する工程と、
(b)前記チャンバ内のガスからプラズマを生成する工程と、
(c)生成されたプラズマで前記基板をエッチングする工程と、
(d)前記バイパス回路により、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整する工程と、
を含む、エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマチャンバ内でエッジ領域におけるイオン束の方向性を制御するためのシステムが開示されている。このシステムは、RF信号を生成するように構成されたRF発生器と、RF信号を受信して修正RF信号を生成するためのインピーダンス整合回路と、プラズマチャンバとを含む。プラズマチャンバは、エッジリングと、修正RF信号を受信する結合リングとを含む。結合リングは、修正RF信号を受信する電極と、エッジリングとの間にキャパシタンスを生成してイオン束の方向性を制御する電極とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-228526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様のプラズマ処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、前記下部電極の上方に配置される上部電極と、周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、前記エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子(variable passive component)と、前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるエッチング装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2A】本実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図2B】本実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図3A】エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図3B】エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図4A】シースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図4B】シースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図5】初期チルト角度を調整しない場合のチルト角度が変化する様子を示す説明図である。
図6】初期チルト角度を調整する場合のチルト角度が変化する様子を示す説明図である。
図7】チルト制御ノブによるチルト角度の制御範囲を示す説明図である。
図8A】バイパス回路の配置の一例を示す説明図である。
図8B】バイパス回路の配置の一例を示す説明図である。
図9A】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図9B】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図9C】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図9D】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図9E】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図9F】バイパス回路の配置の構成例を示す説明図である。
図10】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図11】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図12】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図13】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図14】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図15】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図16】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図17】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図18】バイパス回路とチルト制御ノブの構成の一例を示す説明図である。
図19】バイパス回路とチルト制御ノブの構成の一例を示す説明図である。
図20】バイパス回路とチルト制御ノブの構成の一例を示す説明図である。
図21A】バイパス回路とチルト制御ノブの構成の一例を示す説明図である。
図21B】バイパス回路とチルト制御ノブの構成の一例を示す説明図である。
図22】他の実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図23A】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図23B】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図23C】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図23D】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図23E】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図23F】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24A】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24B】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24C】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24D】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24E】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24F】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図24G】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図25A】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図25B】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図25C】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図26A】接続部とRFフィルタの構成の一例を模式的に示す説明図である。
図26B】接続部とRFフィルタの構成の一例を模式的に示す説明図である。
図26C】接続部とRFフィルタの構成の一例を模式的に示す説明図である。
図27A】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図27B】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図27C】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図27D】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図28A】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図28B】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図28C】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図28D】接続部と昇降装置の構成の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)にエッチング等のプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによってウェハを処理する。
【0009】
プラズマ処理は、プラズマ処理装置で行われる。プラズマ処理装置は、一般的に、チャンバ、ステージ、高周波(Radio Frequency:RF)電源を備える。一例では、高周波電源は、第1の高周波電源、及び第2の高周波電源を備える。第1の高周波電源は、チャンバ内のガスのプラズマを生成するために、第1の高周波電力を供給する。第2の高周波電源は、ウェハにイオンを引き込むために、バイアス用の第2の高周波電力を下部電極に供給する。ステージは、チャンバ内に設けられている。ステージは、下部電極及び静電チャックを有する。一例では、静電チャック上には、当該静電チャック上に載置されたウェハを囲むようにエッジリングが配置される。エッジリングは、ウェハに対するプラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。
【0010】
エッジリングは、プラズマ処理が実施される時間の経過に伴い、消耗し、エッジリングの厚みが減少する。エッジリングの厚みが減少すると、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方においてシースの形状が変化する。このようにシースの形状が変化すると、ウェハのエッジ領域におけるイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。その結果、ウェハのエッジ領域に形成される凹部が、ウェハの厚み方向に対して傾斜する。
【0011】
ウェハのエッジ領域においてウェハの厚み方向に延びる凹部を形成するため、すなわち凹部のウェハWの厚み方向に対する傾きであるチルト角度を制御するためには、ウェハのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きを調整する必要がある。そこで、エッジ領域へのイオンの入射方向(イオン束の方向性)を制御するために、例えば特許文献1では上述したように、結合リングの電極とエッジリングとの間にキャパシタンスを生成することが提案されている。
【0012】
ここで、複数の周波数の高周波電力のそれぞれに対してチルト角度を制御する場合において、周波数毎にプラズマ処理前の初期のチルト角度(以下、「初期チルト角度」という。)が異なる場合がある。初期チルト角度は、例えばエッチング装置1の立ち上げ時又はメンテナンス後にエッチング装置1を稼働する際のチルト角度であって、一度初期チルト角度を調整した後は、再度調整する必要はない。そして、このように初期チルト角度がばらつくと、例えば特許文献1に開示されたように上記キャパシタンスを生成して入射角度を調整しても、周波数毎のチルト角度を揃えて制御することが困難な場合がある。
【0013】
本開示にかかる技術は、エッチングにおいて基板のエッジ領域での初期チルト角度を調整して、当該エッジ領域でのチルト角度を適切に制御する。
【0014】
以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置としてのエッチング装置及びエッチング方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<エッチング装置>
先ず、本実施形態にかかるエッチング装置について説明する。図1は、エッチング装置1の構成の概略を示す縦断面図である。図2A及び図2Bはそれぞれ、エッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。エッチング装置1は、容量結合型のエッチング装置である。エッチング装置1では、基板としてのウェハWに対してエッチングを行う。
【0016】
図1に示すようにエッチング装置1は、略円筒形状のチャンバ10を有している。チャンバ10は、その内部においてプラズマが生成される処理空間Sを画成する。チャンバ10は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ10はグランド電位に接続されている。
【0017】
チャンバ10の内部には、ウェハWを載置する基板支持体としてのステージ11が収容されている。ステージ11は、下部電極12、静電チャック13、及びエッジリング14を有している。なお、下部電極12の下面側には、例えばアルミニウムから構成される電極プレート(図示せず)が設けられていてもよい。
【0018】
下部電極12は、導電性の材料、例えばアルミニウム等の金属で構成されており、略円板形状を有している。
【0019】
なお、ステージ11は、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWのうち少なくとも1つを所望の温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調媒体が流れる。
【0020】
一例では、下部電極12の内部に、流路15aが形成されている。流路15aには、チャンバ10の外部に設けられたチラーユニット(図示せず)から入口配管15bを介して温調媒体が供給される。流路15aに供給された温調媒体は、出口流路15cを介してチラーユニットに戻るようになっている。流路15aの中に温調媒体、例えば冷却水等の冷媒を循環させることにより、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWを所望の温度に冷却することができる。
【0021】
静電チャック13は、下部電極12上に設けられている。一例では、静電チャック13は、ウェハWとエッジリング14の両方を静電力により吸着保持可能に構成された部材である。静電チャック13は、周縁部の上面に比べて中央部の上面が高く形成されている。静電チャック13の中央部の上面は、ウェハWを支持するための基板支持面としてのウェハ支持面となり、一例では、静電チャック13の周縁部の上面は、エッジリング14を支持するためのエッジリング支持面となる。なお、下部電極12は、静電チャック13の内部に設けられてもよい。
【0022】
一例では、静電チャック13の内部において中央部には、ウェハWを吸着保持するための第1の電極16aが設けられている。静電チャック13の内部において周縁部には、エッジリング14を吸着保持するための第2の電極16bが設けられている。静電チャック13は、絶縁材料からなる絶縁材の間に電極16a、16bを挟んだ構成を有する。
【0023】
第1の電極16aには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、静電チャック13の中央部の上面にウェハWが吸着保持される。同様に、第2の電極16bには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。一例では、これにより生じる静電力により、静電チャック13の周縁部の上面にエッジリング14が吸着保持される。
【0024】
なお、本実施形態において、第1の電極16aが設けられる静電チャック13の中央部と、第2の電極16bが設けられる周縁部とは一体となっているが、これら中央部と周縁部とは別体であってもよい。また、第1の電極16a及び第2の電極16bは、いずれも単極であってもよく、双極であってもよい。
【0025】
また、本実施形態においてエッジリング14は、第2の電極16bに直流電圧を印加することで静電チャック13に静電吸着されるが、エッジリング14の保持方法はこれに限定されない。例えば、吸着シートを用いてエッジリング14を吸着保持してもよいし、エッジリング14をクランプして保持してもよい。或いは、エッジリング14の自重によりエッジリング14が保持されてもよい。
【0026】
エッジリング14は、静電チャック13の中央部の上面に載置されたウェハWを囲むように配置される、環状部材である。エッジリング14は、エッチングの均一性を向上させるために設けられる。このため、エッジリング14は、エッチングに応じて適宜選択される材料から構成されており、導電性を有し、例えばSiやSiCから構成され得る。
【0027】
以上のように構成されたステージ11は、チャンバ10の底部に設けられた略円筒形状の支持部材17に締結される。支持部材17は、例えばセラミックや石英等の絶縁体により構成される。
【0028】
ステージ11の上方には、ステージ11と対向するように、シャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は、処理空間Sに面して配置される電極板21、及び電極板21の上方に設けられる電極支持体22を有している。電極板21は、下部電極12と一対の上部電極として機能する。後述するように第1の高周波電源50が下部電極12に電気的に結合されている場合には、シャワーヘッド20は、グランド電位に接続される。なお、シャワーヘッド20は、絶縁性遮蔽部材23を介して、チャンバ10の上部(天井面)に支持されている。
【0029】
電極板21には、後述のガス拡散室22aから送られる処理ガスを処理空間Sに供給するための複数のガス噴出口21aが形成されている。電極板21は、例えば、発生するジュール熱の少ない低い電気抵抗率を有する導電体又は半導体から構成される。
【0030】
電極支持体22は、電極板21を着脱自在に支持する。電極支持体22は、例えばアルミニウム等の導電性材料の表面に耐プラズマ性を有する膜が形成された構成を有している。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムなどのセラミック製の膜であり得る。電極支持体22の内部には、ガス拡散室22aが形成されている。ガス拡散室22aからは、ガス噴出口21aに連通する複数のガス流通孔22bが形成されている。また、ガス拡散室22aには、後述するガス供給管33に接続されるガス導入孔22cが形成されている。
【0031】
また、電極支持体22には、ガス拡散室22aに処理ガスを供給するガス供給源群30が、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、及びガス導入孔22cを介して接続されている。
【0032】
ガス供給源群30は、エッチングに必要な複数種のガス供給源を有している。流量制御機器群31は複数の流量制御器を含み、バルブ群32は複数のバルブを含んでいる。流量制御機器群31の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。エッチング装置1においては、ガス供給源群30から選択された一以上のガス供給源からの処理ガスが、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、及びガス導入孔22cを介してガス拡散室22aに供給される。そして、ガス拡散室22aに供給された処理ガスは、ガス流通孔22b及びガス噴出口21aを介して、処理空間S内にシャワー状に分散されて供給される。
【0033】
チャンバ10の底部であって、チャンバ10の内壁と支持部材17との間には、バッフルプレート40が設けられている。バッフルプレート40は、例えばアルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成される。バッフルプレート40には、複数の貫通孔が形成されている。処理空間Sは当該バッフルプレート40を介して排気口41に連通されている。排気口41には例えば真空ポンプ等の排気装置42が接続され、当該排気装置42により処理空間S内を減圧可能に構成されている。
【0034】
また、チャンバ10の側壁にはウェハWの搬入出口43が形成され、当該搬入出口43はゲートバルブ44により開閉可能となっている。
【0035】
図1図2A及び図2Bに示すように、エッチング装置1は、ソース電源としての第1の高周波電源50、バイアス電源としての第2の高周波電源51、バイアス電源としての第3の高周波電源52、及び整合器53を更に有している。第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び第3の高周波電源52はそれぞれ、第1の整合回路54、第2の整合回路55、及び第3の整合回路56を介して下部電極12に結合されている。なお、本実施形態では第1の整合回路54、第2の整合回路55、及び第3の整合回路56は1つの整合器53の内部に設けられていたが、これらの配置は限定されない。例えば別々の整合器の内部に設けられていてもよいし、整合器の外部に設けられていてもよい。また、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び第3の高周波電源52は、本開示における電源部を構成する。
【0036】
第1の高周波電源50は、プラズマ発生用のソースRF電力(ソース電力)である第1の高周波電力HFを発生して、当該第1の高周波電力HFを下部電極12に供給する。第1の高周波電力HFは、27MHz~100MHzの範囲内の第1の周波数であってよく、一例においては40MHzである。第1の高周波電源50は、整合器53の第1の整合回路54を介して、下部電極12に結合されている。第1の整合回路54は、第1の高周波電源50の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源50は、下部電極12に電気的に結合されていなくてもよく、第1の整合回路54を介して上部電極であるシャワーヘッド20に結合されていてもよい。また、第1の高周波電源50に代えて、高周波電力以外のパルス電圧を下部電極12に印加するように構成されたパルス電源を用いてもよい。このパルス電源は、後述する第2の高周波電源51、第3の高周波電源52に代えて用いられるパルス電源と同様である。
【0037】
第2の高周波電源51は、ウェハWにイオンを引き込むためのバイアスRF電力(バイアス電力)である第2の高周波電力LF1を発生して、当該第2の高周波電力LF1を下部電極12に供給する。第2の高周波電力LF1は、100kHz~15MHzの範囲内の第2の周波数であってよく、一例においては400kHzである。第2の高周波電源51は、整合器53の第2の整合回路55を介して、下部電極12に結合されている。第2の整合回路55は、第2の高周波電源51の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0038】
第3の高周波電源52は、ウェハWにイオンを引き込むためのバイアスRF電力(バイアス電力)である第3の高周波電力LF2を発生して、当該第3の高周波電力LF2を下部電極12に供給する。第3の高周波電力LF2は、100kHz~15MHzの範囲内の第3の周波数であってよく、第2の周波数とは異なり、一例においては13MHzである。第3の高周波電源52は、整合器53の第3の整合回路56を介して、下部電極12に結合されている。第3の整合回路56は、第3の高周波電源52の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0039】
なお、第2の高周波電源51、第3の高周波電源52に代えて、高周波電力以外のパルス電圧を下部電極12に印加するように構成されたパルス電源を用いてもよい。ここで、パルス電圧とは、電圧の大きさが周期的に変化するパルス状の電圧である。パルス電源は、直流電源であってよい。パルス電源は、電源自体がパルス電圧を生成するように構成されてもよく、直流電源と、この直流電源よりも下流側に電圧をパルス化するデバイス(パルス生成部)を備えるように構成されてもよい。一例では、パルス電圧は、ウェハWに負の電位が生じるように下部電極12に印加される。パルス電圧は、矩形波であってもよく、三角波あってもよく、インパルスであってもよく、又はその他の波形を有していてもよい。パルス電圧の周波数(パルス周波数)は、100kHz~2MHzの範囲内の周波数であってよい。なお、上記高周波電力LF1、LF2又はパルス電圧は、静電チャック13の内部に設けられたバイアス電極に供給又は印加されてもよい。
【0040】
エッチング装置1は、直流(DC:Direct Current)電源60、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63(本開示における第3のRFフィルタに相当。)を更に有している。直流電源60は、当該直流電源60側から切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、及び第1のRFフィルタ62を介して、エッジリング14に電気的に接続されている。直流電源60は、グランド電位に接続されている。
【0041】
直流電源60は、エッジリング14に印加される負極性の直流電圧を発生する電源である。また、直流電源60は、可変直流電源であり、直流電圧の高低を調整可能である。
【0042】
切替ユニット61は、エッジリング14に対する直流電源60からの直流電圧の印加を停止可能に構成されている。なお、切替ユニット61の回路構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0043】
第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63はそれぞれ、高周波電力を減衰するフィルタである。第1のRFフィルタ62は、例えば第1の高周波電源50からの40MHzの第1の高周波電力HFを減衰する。第2のRFフィルタ63は、例えば第2の高周波電源51からの400kHzの第2の高周波電力LF1又は第3の高周波電源52からの13MHzの第3の高周波電力LF2を減衰する。
【0044】
一例においては、第2のRFフィルタ63は、インピーダンスが可変に構成されている。すなわち、第2のRFフィルタ63は少なくとも1つの可変受動素子を含み、インピーダンスが可変になっている。可変受動素子は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。可変受動素子の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。更に、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、この第2のRFフィルタ63を含む回路構成及び上記第1のRFフィルタ62を含む回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0045】
エッチング装置1は、バイパス回路70を更に有している。一例において、バイパス回路70は、整合器53と下部電極12との間の経路57と、第2のRFフィルタ63とエッジリング14との間の経路64とに接続される。なお、バイパス回路70の配置は、本例に限定されない。また、本例では、バイパス回路70の数は1つであるが、複数であってもよい。バイパス回路70の配置のバリエーションや、バイパス回路70の組み合わせのバリエーションについては後述する。
【0046】
バイパス回路70は、特定周波数の高周波電力をバイパスさせて、エッジリング14への電力供給量を増加させる。具体的にバイパス回路70は、チルト角度の制御対象となる複数の周波数の第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2からなる群のうち、初期チルト角度の調整対象の周波数の高周波電力を選択的に通過させる。また、バイパス回路70は、高周波電力の通過量(高周波電力の大きさ)、すなわち、エッジリング14への電力供給量を調整する。
【0047】
このようにバイパス回路70は、周波数選択機能と電力通過量決定機能を有するが、その回路構成は当業者が任意に設計することができる。一例において、バイパス回路70は、周波数選択機能を達成するため、特定周波数の高周波電力の通過を遮断する回路、例えばコイル(インダクタ)を有していてもよい。また、バイパス回路70は、電力通過量決定機能を達成するため、高周波電力の通過量を決定する素子、例えばコンデンサ(キャパシタ)を有していてもよい。
【0048】
エッチング装置1は、エッジリング14を昇降させる昇降装置80を更に有している。昇降装置80は、エッジリング14を支持して昇降する昇降ピン81、及び昇降ピン81を昇降させる駆動源82を有している。
【0049】
昇降ピン81は、エッジリング14の下面から鉛直方向に延伸し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。昇降ピン81とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。昇降ピン81は、少なくとも表面が絶縁体からなる。
【0050】
駆動源82は、チャンバ10の外部に設けられている。駆動源82は、例えばモータを内蔵し、昇降ピン81を昇降させる。すなわち昇降装置80によって、エッジリング14は、図2Aに示すように静電チャック13に載置された状態と、図2Bに示すように静電チャック13から離間した状態との間で、昇降自在に構成されている。
【0051】
また、エッチング装置1は、エッジリング14の自己バイアス電圧(又は、下部電極12もしくはウェハWの自己バイアス電圧)を測定する測定器(図示せず)を更に有していてもよい。なお、測定器の構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0052】
以上のエッチング装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、エッチング装置1におけるエッチングを制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0053】
<エッチング方法>
次に、以上のように構成されたエッチング装置1を用いて行われるエッチングについて説明する。
【0054】
先ず、チャンバ10の内部にウェハWを搬入し、静電チャック13上にウェハWを載置する。その後、静電チャック13の第1の電極16aに直流電圧を印加することにより、ウェハWはクーロン力によって静電チャック13に静電吸着され、保持される。また、ウェハWの搬入後、排気装置42によってチャンバ10の内部を所望の真空度まで減圧する。
【0055】
次に、ガス供給源群30からシャワーヘッド20を介して処理空間Sに処理ガスを供給する。また、第1の高周波電源50によりプラズマ生成用の第1の高周波電力HFを下部電極12に供給し、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2の高周波電源51及び第3の高周波電源52により、イオン引き込み用の第2の高周波電力LF1、第3の高周波電力LF2を供給してもよい。そして、生成されたプラズマの作用によって、ウェハWにエッチングが施される。
【0056】
エッチングを終了する際には、先ず、第1の高周波電源50からの第1の高周波電力HFの供給及びガス供給源群30による処理ガスの供給を停止する。また、エッチング中に高周波電力LF1、LF2を供給していた場合には、当該高周波電力LF1、LF2の供給も停止する。次いで、ウェハWの裏面への伝熱ガスの供給を停止し、静電チャック13によるウェハWの吸着保持を停止する。
【0057】
その後、チャンバ10からウェハWを搬出して、ウェハWに対する一連のエッチングが終了する。
【0058】
なお、エッチングにおいては、第1の高周波電源50からの第1の高周波電力HFを使用せず、第2の高周波電源51からの第2の高周波電力LF1又は第3の高周波電源52からの第3の高周波電力LF2のみを用いて、プラズマを生成する場合もある。
【0059】
<チルト角度の説明>
チルト角度は、ウェハWのエッジ領域において、エッチングにより形成される凹部のウェハWの厚み方向に対する傾き(角度)である。チルト角度は、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の鉛直方向に対する傾き(イオンの入射角度)とほぼ同様の角度となる。なお、以下の説明では、ウェハWの厚み方向(鉛直方向)に対して径方向内側(中心側)の方向をインナー側といい、ウェハWの厚み方向に対して径方向外側の方向をアウター側という。
【0060】
図3A及び図3Bは、エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。図3Aにおいて実線で示されるエッジリング14は、その消耗がない状態のエッジリング14を示している。点線で示されるエッジリング14は、その消耗が生じて厚みが減少したエッジリング14を示している。また、図3Aにおいて実線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗していない状態にあるときの、シースSHの形状を表している。点線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、シースSHの形状を表している。更に、図3Aにおいて矢印は、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、イオンの入射方向を示している。
【0061】
図3Aに示すように一例においては、エッジリング14が消耗していない状態にある場合、シースSHの形状は、ウェハW及びエッジリング14の上方においてフラットに保たれている。したがって、ウェハWの全面に略垂直な方向(鉛直方向)にイオンが入射する。したがって、チルト角度は0(ゼロ)度となる。
【0062】
一方、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少すると、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、当該シースSHの形状が下方凸形状に変化する。その結果、ウェハWのエッジ領域に対するイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。以下の説明では、イオンの入射方向が鉛直方向対して径方向内側(中心側)に傾斜した場合に、エッチングにより形成される凹部がインナー側に傾斜する現象を、インナーチルト(Inner Tilt)という。図3Bでは、イオンの入射方向は、インナー側に角度θ1だけ傾斜しており、凹部もインナー側にθ1だけ傾斜している。なお、インナーチルトが発生する原因は、上述したエッジリング14の消耗に限定されない。例えば、エッジリング14に発生するバイアス電圧がウェハW側の電圧に比べて低い場合には、初期状態でインナーチルトとなる。また例えば、エッジリング14の初期状態において意図的にインナーチルトとなるように調整し、後述する昇降装置80の駆動量の調整によりチルト角度を補正する場合もある。
【0063】
なお、図4A及び図4Bに示すように、ウェハWの中央領域に対し、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが大きくなり、当該シースSHの形状が上方凸形状になる場合もあり得る。例えば、エッジリング14に発生するバイアス電圧が高い場合、シースSHの形状が上方凸形状になり得る。図4Aにおいて矢印は、イオンの入射方向を示している。以下の説明では、イオンの入射方向が鉛直方向に対して径方向外側に傾斜した場合に、エッチングにより形成される凹部がアウター側に傾斜する現象を、アウターチルト(Outer Tilt)という。図4Bでは、イオンの入射方向は、アウター側に角度θ2だけ傾斜しており、凹部もアウター側にθ2だけ傾斜している。
【0064】
以上のように、図4A及び図4Bに示した場合を除き、エッチングを実施してエッジリング14が消耗すると、図3A及び図3Bに示したように、ウェハWのエッジ領域におけるチルト角度はインナー側に傾斜する。このため、一例においては、チルト角度をアウター側に制御して補正する。チルト角度の制御は、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整、直流電源60からの直流電圧の調整、昇降装置80の駆動量の調整のいずれか又はその組み合わせにより行う。以下の説明においては、チルト角度を制御するための、これら第2のRFフィルタ63のインピーダンス、直流電源60からの直流電圧、昇降装置80の駆動量を総称して「チルト制御ノブ」という場合がある。なお、チルト制御ノブによる具体的なチルト角度の制御方法は後述する。
【0065】
<初期チルト角度の調整方法>
以上のように、チルト制御ノブによりチルト角度をアウター側に制御する場合、エッチング前の初期状態における初期チルト角度は、0(ゼロ)度又は初期状態で若干のインナーチルトとなる角度に設定される。なお、初期状態は、例えばエッチング装置1の立ち上げ時又はメンテナンス後にエッチング装置1を稼働する時であって、ウェハWに対してエッチングを行う前である。
【0066】
従来、初期チルト角度の調整は、例えばエッジリング14の厚みを調整することで行われた。或いは、初期チルト角度の調整は、例えば静電チャック13の材質や厚みを変更整することで行われた。すなわち、装置構成(ハード)を変更することで、初期チルト角度を調整していた。
【0067】
ここで、複数、例えば3つの周波数の第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のそれぞれに対してチルト角度を制御する場合、エッジリング14に供給する電力で発生するシースの厚みは周波数毎に異なる。そうすると、図5に示すように、第1~第3の周波数毎に初期チルト角度が異なる。以下、第1の周波数に対する初期チルト角度を第1の初期チルト角度といい、第2の周波数に対する初期チルト角度を第2の初期チルト角度といい、第3の周波数に対する初期チルト角度を第3の初期チルト角度という。なお、図5の縦軸は、チルト角度を示し、チルト角度Δ0(ゼロ)度よりプラス側(上側)がアウター側であって、マイナス側(下側)がインナー側である。縦軸の90度(かっこ書き)は、ウェハWの厚み方向であることを示し、Δ0(ゼロ)度は厚み方向から傾斜していないことを示している。図5の横軸は、チルト制御ノブの調整量を示す。図5において、●、▲、■の記号はそれぞれ、第1~第3の初期チルト角度を示す。図5において、第1~第3の初期チルト角度から延伸する直線はそれぞれ、チルト制御ノブを調整することでチルト角度が変化する状態を模式的に示す。
【0068】
このように周波数毎に第1~第3の初期チルト角度が異なる場合において、従来のように装置構成を変更するだけでは、一の周波数の初期チルト角度を調整しても、他の周波数の初期チルト角度を調整することはできない。すなわち、すべての第1~第3の初期チルト角度を適切に調整することができない。また、周波数毎に第1~第3の初期チルト角度が異なる場合に、チルト制御ノブを用いてチルト角度を制御しても、チルト角度を例えば0(ゼロ)度に適切に制御できない場合がある。
【0069】
そこで、本実施形態のエッチング装置1では、バイパス回路70を用いて、周波数毎に初期チルト角度を調整する。すなわち、バイパス回路70は、特定周波数の高周波電力をバイパスさせて、エッジリング14への電力供給量を増加させ、これによりウェハWのエッジ領域における初期チルト角度を調整する。具体的にバイパス回路70は、チルト角度の制御対象となる複数の周波数の高周波電力のうち、初期チルト角度の調整対象の周波数の高周波電力を選択的に通過させる。また、バイパス回路70は、高周波電力の通過量、すなわち、エッジリング14への電力供給量を調整する。
【0070】
例えば図5に示した例では、第1~第3の初期チルト角度がそれぞれ異なり、第2の初期チルト角度と第3の初期チルト角度が調整対象である。かかる場合、バイパス回路70により、第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のうち、第2の高周波電力LF1と第3の高周波電力LF2をそれぞれエッジリング14に通過させる。この際、第2の高周波電力LF1の通過量と第3の高周波電力LF2の通過量はそれぞれ、初期チルト角度の調整幅に応じた通過量に設定される。そうすると、エッジリング14に供給される第2の高周波電力LF1と第3の高周波電力LF2の供給量が増加し、図6に示すように第2のチルト角度と第3の初期チルト角度がアウター側に調整される。そして、第1~第3の初期チルト角度を略同じに調整することができる。
【0071】
以上のように本実施形態では、エッチング装置1の製造時やエッチング装置1の調整時等の初期状態において、バイパス回路70を用いて第1~第3の初期チルト角度を独立して調整できるので、これら第1~第3の初期チルト角度を略同じに調整することができる。その結果、その後にエッチングを実施する際、チルト制御ノブを調整することで、第1~第3の周波数毎にチルト角度を例えば0(ゼロ)度に適切に制御することができる。
【0072】
なお、初期状態において第1~第3の初期チルト角度を調整すると、その後のエッチングでは、基本的には第1~第3の初期チルト角度を変更しない。
【0073】
また、本実施形態によれば、初期状態において、チルト制御ノブとは別のバイパス回路70を用いて第1~第3の初期チルト角度を調整するので、その後のエッチングにおいて、チルト制御ノブによるチルト角度の制御範囲を広げることができる。
【0074】
図7は、チルト角度の制御範囲を広げる効果を示すための説明図であり、(a)は比較例におけるチルト角度の制御範囲を示し、(b)は本実施形態の実施例におけるチルト角度の制御範囲を示す。すなわち、図7(a)は図5に示すチルト角度に対応し、図7(b)は図6に示すチルト角度に対応している。また、図7において、点線は、チルト制御ノブによるチルト角度の制御範囲を示す。一方、両端部が丸印の実線は、最終的なチルト角度が許容範囲内となるチルト角度の制御範囲であり、換言すれば、実際に使用可能なチルト角度の制御範囲である。
【0075】
図7(a)に示すように比較例においては、第1~第3の初期チルト角度を個別に調整しておらず、当該第1~第3の初期チルト角度は異なる。かかる場合、第2の初期チルト角度はインナー側にシフトしているため、チルト制御ノブによるチルト角度の制御範囲(点線)に対して、実際に使用可能なチルト角度の制御範囲(実線)は狭くなる。また、第3の初期チルト角度は第2のチルト角度より更にインナー側にシフトしているため、実際に使用可能なチルト角度の制御範囲(実線)は更に狭くなる。このように、第1~第3の初期チルト角度が適切に調整されていないため、チルト角度の制御範囲が狭くなり、チルト制御ノブによるチルト角度の制御効果が小さくなる。
【0076】
これに対して、図7(b)に示すように実施例においては、バイパス回路70を用いて第1~第3の初期チルト角度が略同じに調整される。すなわち、初期チルト角度の調整はバイパス回路70のみを用いて行い、その後のチルト角度の制御はチルト制御ノブのみを用いて行うことができる。かかる場合、第2の初期チルト角度をアウター側にシフトさせて所望の角度に調整するので、実際に使用可能なチルト角度の制御範囲(実線)を広げることができる。また、第3の初期チルト角度は第2のチルト角度より更にアウター側にシフトさせて所望の角度に調整するので、実際に使用可能なチルト角度の制御範囲(実線)を更に広げることができる。このように実施例では、チルト制御ノブによるチルト角度の制御範囲を最大限に活かして、チルト角度の制御範囲を広げることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、3つの周波数の第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のうち、すべての第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2に対するチルト角度を制御対象としたが、制御対象の数はこれに限定されない。例えば2つの周波数の高周波電力に対するチルト角度を制御対象としても、本開示の技術は適用できる。換言すれば、2周波以上の高周波電力に対するチルト角度を制御対象とする場合に、本開示の技術は有用である。
【0078】
また、1つの周波数の高周波電力に対するチルト角度を制御対象とする場合にも、本開示の技術は適用できる。従来、上述したように装置構成を変更することで初期チルト角度を調整していたが、本実施形態では、バイパス回路70を用いて初期チルト角度を調整するので、当該初期チルト角度の調整が容易になる。
【0079】
<バイパス回路のバリエーション>
次に、バイパス回路の配置や組み合わせのバリエーションについて説明する。
【0080】
[バイパス回路の配置]
上記実施形態では図2Aに示したように、バイパス回路70は、整合器53と下部電極12との間の経路57と、第2のRFフィルタ63とエッジリング14との間の経路64とに接続されたが、バイパス回路70の配置はこれに限定されない。バイパス回路70は、整合器53と同じ位置又は整合器53と下部電極12との間の経路57に接続される。このようにバイパス回路70を配置するのは、バイパス回路70より下流側を整合範囲に含めるためである。また、バイパス回路70は、RFフィルタ62、63に又はRFフィルタ62、63とエッジリング14との間の経路64に接続される。
【0081】
例えば図8Aに示すように、バイパス回路70は第2のRFフィルタ63の内部に設けられていてもよい。また、例えば図8Bに示すように、バイパス回路70は第1のRFフィルタ62の内部に設けられていてもよい。また、図示はしないが、バイパス回路70は整合器53の内部に設けられていてもよい。更に、図示はしないが、バイパス回路70は整合器53と第2のRFフィルタ63とに接続されてもよいし、整合器53と直流電源60とに接続されてもよい。このようにバイパス回路70は、配置依存がない。
【0082】
[バイパス回路の組み合わせ]
上記実施形態では図2Aに示したように、バイパス回路70は、複数の周波数の第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2に対して共通に設けられたが、バイパス回路70の組み合わせはこれに限定されない。例えば、バイパス回路70は、3つの周波数の第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2毎に独立して設けられていてもよい。また例えば、バイパス回路70は、チルト角度の制御対象となる第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のすべてに設けられる必要はない。例えば、一部の周波数の高周波電力に対してはバイパス回路70を用いて初期チルト角度を調整し、一部の周波数の高周波電力に対しては従来のように装置構成を変更して初期チルト角度を調整してもよい。或いは、2周波以上の高周波電力に対して、バイパス回路70は1つであってもよい。これらの周波数が近ければ、バイパス回路70は複数設けなくてもよい。これらのバイパス回路70の組み合わせは任意である。
【0083】
例えば図9Aに示すように、第1の高周波電力HFを通過させるバイパス回路70a、第2の高周波電力LF1を通過させるバイパス回路70b、及び第3の高周波電力LF2を通過させるバイパス回路70cが設けられていてもよい。これは、第1~第3の初期チルト角度をすべて調整する場合である。また、図9Bに示すように、第1の高周波電力HFを通過させるバイパス回路70aと第2の高周波電力LF1を通過させるバイパス回路70bのみが設けられていてもよい。これは、第1の初期チルト角度と第2の初期チルト角度を調整する場合である。或いは、図9Cに示すように、第2の高周波電力LF1を通過させるバイパス回路70bと第3の高周波電力LF2を通過させるバイパス回路70cのみが設けられていてもよい。これは、第2の初期チルト角度と第3の初期チルト角度を調整する場合である。
【0084】
例えば図9Dに示すように第1の高周波電力HFと第2の高周波電力LF1を通過させるバイパス回路70d、及び第3の高周波電力LF2を通過させるバイパス回路70cが設けられていてもよい。バイパス回路70dは、第1の初期チルト角度と第2の初期チルト角度を調整する。また、図9Eに示すように第1の高周波電力HFと第2の高周波電力LF1を通過させるバイパス回路70dのみが設けられていてもよい。或いは、第3の高周波電力LF2を通過させるバイパス回路70cのみが設けられていてもよい。
【0085】
<チルト角度制御方法>
次に、上述したエッチングにおいて、チルト制御ノブを用いてチルト角度を制御する方法について説明する。チルト制御ノブは、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整、直流電源60からの直流電圧の調整、昇降装置80の駆動量のいずれか又はその組み合わせであり、すなわち下記(1)~(7)である。そして、チルト角度の制御は、チルト制御ノブを用いてイオンの入射角度を制御することにより行う。
(1)インピーダンスの調整
(2)直流電圧の調整
(3)駆動量の調整
(4)インピーダンスと直流電圧の調整
(5)インピーダンスと駆動量の調整
(6)直流電圧と駆動量の調整
(7)インピーダンス、直流電圧及び駆動量の調整
【0086】
(1)インピーダンスの調整
第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整する場合について説明する。図10は、第2のRFフィルタ63のインピーダンスとチルト角度の補正角度(以下、「チルト補正角度」という。)の関係を示す説明図である。図10の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2のRFフィルタ63のインピーダンスを示している。図10に示すように、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを大きくすると、チルト補正角度は大きくなる。なお、図10に示す例では、インピーダンスを大きくすることにより、チルト補正角度を大きくしているが、第2のRFフィルタ63の構成によっては、インピーダンスを大きくすることにより、チルト補正角度を小さくすることも可能である。インピーダンスとチルト補正角度の関係性は、第2のRFフィルタ63の設計に依存するため、限定されるものではない。
【0087】
制御部100は、例えば予め定められた関数又はテーブルを用いてエッチングのプロセス条件(例えば処理時間)から推定されるエッジリング14の消耗量(エッジリング14の厚みの初期値からの減少量)から、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを設定する。すなわち、制御部100は、エッジリング14の消耗量を上記関数に入力するか、エッジリング14の消耗量を用いて上記テーブルを参照することにより、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを決定する。そして制御部100は、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを変更することで、エッジリング14に発生する電圧を変更する。
【0088】
なお、エッジリング14の消耗量は、ウェハWのエッチング時間、ウェハWの処理枚数、測定器によって測定されたエッジリング14の厚み、測定器によって測定されたエッジリング14の質量の変化、測定器によって測定されたエッジリング14の周辺の電気的特性(例えばエッジリング14の周辺の任意の点の電圧、電流値)の変化、又は測定器によって測定されたエッジリング14の電気的特性(例えばエッジリング14の抵抗値)の変化等に基づいて、推定されてもよい。また、エッジリング14の消耗量とは関係なく、ウェハWのエッチング時間やウェハWの処理枚数に応じて、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整してもよい。更に、高周波電力によって重みづけしたウェハWのエッチング時間やウェハWの処理枚数に応じて、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整してもよい。
【0089】
以上のように第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整して、チルト角度を制御する具体的な方法について説明する。先ず、エッジリング14を静電チャック13上に設置する。この際、例えば、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シース形状がフラットになり、チルト角度が0(ゼロ)度になっている。
【0090】
次に、ウェハWに対してエッチングを行う。エッチングが実施される時間の経過に伴い、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少する。そうすると、図3Aに示したように、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、チルト角度がインナー側に変化する。
【0091】
そこで、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整する。具体的には、エッジリング14の消耗量に応じて、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整する。そうすると、図10に示したようにチルト補正角度が大きくなり、インナー側に傾斜したチルト角度をアウター側に変化させることができる。すなわち、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。そして、上述したように制御部100で設定されたインピーダンスに第2のRFフィルタ63を調整すると、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、当該チルト角度を0(ゼロ)度に補正することができる。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な凹部が形成される。
【0092】
(2)直流電圧の調整
直流電源60からの直流電圧を調整する場合について説明する。図11は、直流電源60からの直流電圧とチルト補正角度の関係を示す説明図である。図11の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は直流電源60からの直流電圧を示している。図11に示すように、直流電源60からの直流電圧を大きくすると、チルト補正角度は大きくなる。
【0093】
直流電源60では、エッジリング14に印加する直流電圧が、自己バイアス電圧Vdcの絶対値と設定値ΔVの和をその絶対値として有する負極性の電圧、すなわち、-(|Vdc|+ΔV)に設定される。自己バイアス電圧Vdcは、ウェハWの自己バイアス電圧であり、一方又は双方の高周波電力が供給されており、且つ、直流電源60からの直流電圧が下部電極12に印加されていないときの下部電極12の自己バイアス電圧である。設定値ΔVは、制御部100によって与えられる。
【0094】
制御部100は、上述した第2のRFフィルタ63のインピーダンスの設定と同様に、エッジリング14の消耗量から、直流電源60からの直流電圧を設定する。すなわち、設定値ΔVを決定する。
【0095】
制御部100は、設定値ΔVの決定において、エッジリング14の初期の厚みと、例えばレーザ測定器やカメラなどの測定器を用いて実測されたエッジリング14の厚みとの差を、エッジリング14の消耗量として用いてもよい。また、例えば質量計などの測定器によって測定されたエッジリング14の質量の変化から、エッジリング14の消耗量を推定してもよい。或いは、制御部100は、設定値ΔVの決定のために、予め定められた別の関数又はテーブルを用いて、特定のパラメータから、エッジリング14の消耗量を推定してもよい。この特定のパラメータは、自己バイアス電圧Vdc、第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のいずれかの波高値Vpp、負荷インピーダンス、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気的特性等のうちのいずれかであり得る。エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気特性は、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の任意の箇所の電圧、電流値、エッジリング14を含む抵抗値等のうちいずれかであり得る。別の関数又はテーブルは、特定のパラメータとエッジリング14の消耗量の関係を定めるように予め定められている。エッジリング14の消耗量を推定するために、実際のエッチングの実行前又はエッチング装置1のメンテナンス時に、消耗量を推定するための測定条件、すなわち、第1の高周波電力HF、第2の高周波電力LF1、第3の高周波電力LF2、処理空間S内の圧力、及び、処理空間Sに供給される処理ガスの流量等の設定の下で、エッチング装置1が動作される。そして、上記特定のパラメータが取得され、この当該特定のパラメータを上記別の関数に入力することにより、或いは、当該特定のパラメータを用いて上記テーブルを参照することにより、エッジリング14の消耗量が特定される。
【0096】
エッチング装置1では、エッチング中、すなわち、第1~第3の高周波電力HF、LF1、LF2のうちいずれか又は複数の高周波電力が供給される期間において、直流電源60からエッジリング14に直流電圧が印加される。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な凹部が形成される。
【0097】
より詳細には、エッチング中、測定器(図示せず)によって自己バイアス電圧Vdcが測定される。また、直流電源60からエッジリング14に直流電圧が印加される。エッジリング14に印加される直流電圧の値は、上述したように-(|Vdc|+ΔV)である。|Vdc|は、直前に測定器によって取得された自己バイアス電圧Vdcの測定値の絶対値であり、ΔVは制御部100によって決定された設定値である。このようにエッチング中に測定された自己バイアス電圧Vdcからエッジリング14に印加される直流電圧が決定される。そうすると、自己バイアス電圧Vdcに変化が生じても、直流電源60によって発生される直流電圧が補正され、チルト角度が適切に補正される。
【0098】
エッチング装置1では、エッジリング14が消耗すると、制御部100で設定された直流電圧を直流電源60からエッジリング14に印加する。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。そうすると、図11のように、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にすることができる。
【0099】
(3)駆動量の調整
昇降装置80の駆動量を調整する場合について説明する。図12は、昇降装置80の駆動量とチルト補正角度の関係を示す説明図である。図12の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は昇降装置80の駆動量を示している。図12に示すように、昇降装置80の駆動量を大きくすると、チルト補正角度は大きくなる。
【0100】
制御部100は、上述した第2のRFフィルタ63のインピーダンスの設定と同様に、エッジリング14の消耗量から、昇降装置80の駆動量を設定する。そして例えば、エッジリング14の消耗量に応じて、昇降装置80の駆動量の大きくして、エッジリング14を上昇させる。
【0101】
エッチング装置1では、エッジリング14が消耗すると、制御部100で設定された駆動量に基づいてエッジリング14を上昇させる。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。そうすると、図12のように、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にすることができる。
【0102】
(4)インピーダンスと直流電圧の調整
第2のRFフィルタ63のインピーダンスと直流電源60からの直流電圧を組み合わせて調整する場合について説明する。図13は、第2のRFフィルタ63のインピーダンス、直流電源60からの直流電圧、及びチルト補正角度の関係を示す説明図である。図13の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2のRFフィルタ63のインピーダンスを示している。
【0103】
図13に示すように、先ず、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、直流電源60からの直流電圧を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。かかる場合、インピーダンスの調整と直流電圧の調整の回数を少なくすることができ、チルト角度制御の運用を単純化することができる。
【0104】
ここで、インピーダンスの調整によるチルト角度補正の分解能と、直流電圧の調整によるチルト角度補正の分解能は、それぞれ第2のRFフィルタ63と直流電源60の性能等に依存する。チルト角度補正の分解能とは、インピーダンス又は直流電圧の1回の調整におけるチルト角度の補正量である。そして、例えば第2のRFフィルタ63の分解能が直流電源60の分解能より高い場合、本実施形態では第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整してチルト角度を補正している分、全体としてのチルト角度補正の分解能を向上させることができる。
【0105】
以上のように第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整と直流電源60からの直流電圧の調整を行うことで、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、チルト角度を適切に制御することができ、すなわち、イオンの入射方向を適切に調整することができるので、エッチングを均一に行うことができる。
【0106】
なお、図13に示した例においては、インピーダンスの調整と直流電圧の調整をそれぞれ1回行って、チルト補正角度を目標角度θ3に調整したが、これらインピーダンスの調整と直流電圧の調整の回数はこれに限定されない。例えば図14に示すように、インピーダンスの調整と直流電圧の調整をそれぞれ複数回行ってもよい。かかる場合でも、本実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0107】
また、図13及び図14に示した例においては、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整を行った後、直流電源60からの直流電圧の調整を行ったが、この順序は反対でもよい。かかる場合、先ず、直流電源60からの直流電圧を調整し、チルト角度を補正する。この際、直流電圧の絶対値を高くし過ぎると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じる。したがって、エッジリング14に印加できる直流電圧には制限がある。そこで次に、直流電圧が予め定められた値、例えば上限値に達すると、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。かかる場合でも、本実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0108】
また、以上の実施形態では、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整と直流電源60からの直流電圧の調整を個別に行ったが、インピーダンスの調整と直流電圧の調整を同時に行ってもよい。
【0109】
(5)インピーダンスと駆動量の調整
第2のRFフィルタ63のインピーダンスと昇降装置80の駆動量を組み合わせて調整する場合について説明する。図15は、第2のRFフィルタ63のインピーダンス、昇降装置80の駆動量、及びチルト補正角度の関係を示す説明図である。図15の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2のRFフィルタ63のインピーダンスを示している。
【0110】
図15に示すように、先ず、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、昇降装置80の駆動量を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。
【0111】
なお、インピーダンスの調整と駆動量の調整をそれぞれ複数回行ってもよい。また、駆動量を調整してチルト角度を補正した後、インピーダンスを調整してチルト補正角度を目標角度θ3に調整してもよい。或いは、インピーダンスの調整と駆動量の調整を同時に行ってもよい。
【0112】
(6)直流電圧と駆動量の調整
直流電源60からの直流電圧と第2のRFフィルタ63のインピーダンスを組み合わせて調整する場合について説明する。図16は、直流電源60からの直流電圧、昇降装置80の駆動量、及びチルト補正角度の関係を示す説明図である。図16の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は直流電源60からの直流電圧を示している。
【0113】
図16に示すように、先ず、直流電源60からの直流電圧を調整し、チルト角度を補正する。次に、直流電圧が予め定められた値、例えば上限値に達すると、昇降装置80の駆動量を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。
【0114】
なお、直流電圧の調整と駆動量の調整をそれぞれ複数回行ってもよい。また、駆動量を調整してチルト角度を補正した後、直流電圧を調整してチルト補正角度を目標角度θ3に調整してもよい。或いは、直流電圧の調整と駆動量の調整を同時に行ってもよい。
【0115】
(7)インピーダンス、直流電圧及び駆動量の調整
第2のRFフィルタ63のインピーダンス、直流電源60からの直流電圧、及び昇降装置80の駆動量を組み合わせて調整する場合について説明する。図17は、第2のRFフィルタ63のインピーダンス、直流電源60からの直流電圧、昇降装置80の駆動量、及びチルト補正角度の関係を示す説明図である。図17の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2のRFフィルタ63のインピーダンスを示している。
【0116】
図17に示すように、先ず、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、直流電源60からの直流電圧を調整し、チルト角度を補正する。更に、直流電圧の絶対値が予め定められた値、例えば上限値に達すると、昇降装置80の駆動量を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。
【0117】
なお、チルト角度を制御するにあたり、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整、直流電源60からの直流電圧、昇降装置80の駆動量の調整の組み合わせは任意に設計することができる。また、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整、直流電源60からの直流電圧、昇降装置80の駆動量の調整はそれぞれ個別に行ったが、これら調整を同時に行ってもよい。
【0118】
また、直流電源60は、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63を介して、エッジリング14に接続されていたが、エッジリング14に直流電圧を印加する電源系はこれに限定されない。例えば、直流電源60は、切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、第1のRFフィルタ62、及び下部電極12を介して、エッジリング14に電気的に接続されていてもよい。かかる場合、下部電極12とエッジリング14は直接電気的に結合し、エッジリング14の自己バイアス電圧は下部電極12の自己バイアス電圧と同じになる。
【0119】
ここで、下部電極12とエッジリング14が直接電気的に結合している場合、例えばハード構造で決定されるエッジリング14下の容量等により、エッジリング14上のシース厚みを調整できず、直流電圧を印加していないにも関わらずアウターチルトの状態が起こり得る。この点、本開示では、直流電源60からの直流電圧と、第2のRFフィルタ63のインピーダンスと、昇降装置80の駆動量とを調整して、チルト角度を制御することができるので、当該チルト角度をインナー側に変化させることで、チルト角度を0(ゼロ)度に調整することができる。
【0120】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、エッジリング14の消耗量に応じて、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整、直流電源60からの直流電圧の調整、昇降装置80の駆動量の調整を行ったが、インピーダンス、直流電圧、駆動量の調整タイミングはこれに限定されない。例えばウェハWの処理時間に応じて、駆動量、インピーダンス、直流電圧の調整を行ってもよい。或いは、例えばウェハWの処理時間と、例えば高周波電力等の予め定められたパラメータとを組み合わせて、駆動量、インピーダンス、直流電圧の調整タイミングを判断してもよい。
【0121】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを可変にしたが、第1のRFフィルタ62のインピーダンスを可変にしてもよいし、RFフィルタ62、63の両方のインピーダンスを可変にしてもよい。また、以上の実施形態では、直流電源60に対して2つのRFフィルタ62、63を設けたが、RFフィルタの数はこれに限定されず、例えば1つであってもよい。また、以上の実施形態では、第2のRFフィルタ63の一部の素子を可変素子とすることでインピーダンスを可変としたが、インピーダンスを可変とする構成はこれに限定されない。例えば、インピーダンス可変又は固定のRFフィルタに、当該RFフィルタのインピーダンスを可能なデバイスを接続してもよい。すなわち、インピーダンスが可変のRFフィルタは、RFフィルタと、このRFフィルタと接続し、このRFフィルタのインピーダンスを変更可能なデバイスとによって構成されてもよい。
【0122】
<バイパス回路とチルト制御ノブの構成>
以上のように、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいてチルト制御ノブを用いてチルト角度を制御する。次に、これら初期チルト角度の調整とチルト角度の制御を行うための構成について説明する。当該構成としては、下記(1)~(8)が挙げられる。
(1)バイパス回路70及び第2のRFフィルタ63
(2)バイパス回路70及び直流電源60
(3)バイパス回路70及び昇降装置80
(4)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、及び直流電源60
(5)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、及び昇降装置80
(6)バイパス回路70、直流電源60、及び昇降装置80
(7)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、直流電源60、及び昇降装置80
(8)バイパス回路70及び直流パルス電源
【0123】
(1)バイパス回路70及び第2のRFフィルタ63
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。また、本構成の一例は、図18に示すように、図2Aに示した構成において直流電源60、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63が省略された構成であってもよい。かかる場合、第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63に代えて、第1の可変受動素子62aと第2の可変受動素子63aがそれぞれ設けられる。第1の可変受動素子62aと第2の可変受動素子63aは、エッジリング14側からこの順で配置されている。第2の可変受動素子63aは、グランド電位に接続されている。すなわち、第2の可変受動素子63aは、第1の高周波電源50と第2の高周波電源51、第3の高周波電源52のそれぞれに接続されていない。更に、本構成の一例は、図2及び図18に示した構成において、昇降装置80が省略された構成であってもよい。
【0124】
一例においては、第1の可変受動素子62aと第2の可変受動素子63aの少なくとも一方は、インピーダンスが可変に構成されている。第1の可変受動素子62aと第2の可変受動素子63aは、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。第1の可変受動素子62aと第2の可変受動素子63aの数や位置も、当業者が適宜設計することができる。更に、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、これら第1の可変受動素子62aを含む回路構成と第2の可変受動素子63aを含む回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0125】
なお、本実施形態ではバイパス回路70は、整合器53と下部電極12との間の経路57と、第2の可変受動素子63aとエッジリング14との間の経路64とに接続されたが、バイパス回路70の配置はこれに限定されない。例えば図示はしないが、バイパス回路70は整合器53と第2の可変受動素子63aとに接続されてもよい。
【0126】
(2)バイパス回路70及び直流電源60
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて直流電源60からの直流電圧を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。また、本構成の一例は、図2Aに示した構成において昇降装置80が省略された構成であってもよい。
【0127】
(3)バイパス回路70及び昇降装置80
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて昇降装置80の駆動量を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。また、本構成の一例は、図19に示すように、図2Aに示した構成において直流電源60、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63が省略された構成であってもよい。かかる場合、バイパス回路70は、エッジリング14に接続される経路64に接続される。
【0128】
(4)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、及び直流電源60
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて第2のRFフィルタ63のインピーダンス及び直流電源60からの直流電圧を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。また、本構成の一例は、図2Aに示した構成において昇降装置80が省略された構成であってもよい。
【0129】
(5)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、及び昇降装置80
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて第2のRFフィルタ63のインピーダンス及び昇降装置80の駆動量を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。また、本構成の一例は、図18に示した構成であってもよい。
【0130】
(6)バイパス回路70、直流電源60、及び昇降装置80
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて直流電源60からの直流電圧及び昇降装置80の駆動量を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。
【0131】
(7)バイパス回路70、第2のRFフィルタ63、直流電源60、及び昇降装置80
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて第2のRFフィルタ63のインピーダンス、直流電源60からの直流電圧、及び昇降装置80の駆動量を調整してチルト角度を制御する。本構成の一例は、図2Aに示した構成であってもよい。
【0132】
(8)バイパス回路70及び直流パルス電源
本構成では、初期状態においてバイパス回路70により初期チルト角度を調整した後、エッチングにおいて、エッジリング14にパルス状の負極性の電圧を印加してチルト角度を制御する。
【0133】
本構成の一例は、図20に示すように、図2Aに示した構成において、直流電源60に代えてパルス電源65を配置した構成であってもよい。パルス電源65は、電源自体がパルス電圧を印加するように構成されてもよく、直流電源と、この直流電源より下流側に電圧をパルス化するデバイス(パルス生成部)とを備えるように構成されてもよい。この場合、バイパス回路70は、整合器53と下部電極12との間の経路57と、エッジリング14とパルス電源65との間の経路66とに接続されてもよい。或いは、図示はしないが、バイパス回路70は整合器53と後述する第3のRFフィルタ67とに接続されてもよい。また図示はしないが、エッジリング14とパルス電源65が接続されてない場合、バイパス回路70は、エッジリング14に直接接続されていてもよい。なお、かかる場合、昇降装置80は省略されてもよい。
【0134】
パルス電源65は、エッジリング14にパルス状の負極性の直流電圧を印加する電源である。パルス電源65は、エッジリング14とパルス電源65との間の経路66において、エッジリング14に結合されている。経路66には、パルス電源65を保護するための第3のRFフィルタ67(本開示における第2のRFフィルタに相当。)が設けられている。第3のRFフィルタ67は、整合器53に設けられている。また、パルス電源65は、下部電極12とパルス電源65との間の経路68において、下部電極12に結合されている。経路68には、パルス電源65を保護するための第4のRFフィルタ69(本開示における第1のRFフィルタに相当。)が設けられている。第4のRFフィルタ69は、整合器53に設けられている。なお、第3のRFフィルタ67と第4のRFフィルタ69に代えて、整合回路を設けてもよいし、或いはこれら第3のRFフィルタ67、第4のRFフィルタ69、及び整合回路をともに設けてもよい。
【0135】
一例においては、第3のRFフィルタ67は、インピーダンスが可変に構成されている。すなわち、第3のRFフィルタ67は少なくとも1つの可変受動素子を含み、インピーダンスが可変になっている。可変受動素子は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。可変受動素子の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。更に、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、この第3のRFフィルタ67を含む回路構成及び上記第4のRFフィルタ69を含む回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0136】
かかる場合、パルス電源65からのパルス状の電圧を調整して、チルト角度を制御する。例えば、パルス電源65からのパルス状の電圧を大きくすると、チルト補正角度を大きくすることができる。このパルス電源65からのパルス状の直流電圧によるチルト角度の制御は、上述した直流電源60からの直流電圧によるチルト角度の制御と同様である。
【0137】
なお、パルス電源65が直流電源とパルス生成部とで構成され、プラズマ生成用途の電源として機能する場合、第1の整合回路54を省略してもよい。この場合、パルス電源65が、単独でプラズマを生成する電源として機能してもよい。
【0138】
また本構成の一例は、図21Aに示すように、図2Aに示した構成において、第1のパルス電源90と第2のパルス電源91を配置した構成であってもよい。第1のパルス電源90と第2のパルス電源91はそれぞれ、電源自体がパルス電圧を印加するように構成されてもよく、直流電源と、この直流電源より下流側に電圧をパルス化するデバイス(パルス生成部)とを備えるように構成されてもよい。
【0139】
第1のパルス電源90は、第1の高周波電源50に代えて設けられ、プラズマ発生用のソース電力として、パルス状の負極性の第1の直流電圧(以下、「第1のパルス電圧」という。)を下部電極12に印可する。第1のパルス電圧は、27MHz~100MHzの範囲内の第1の周波数であってよく、一例においては40MHzである。第1のパルス電源90は、経路92を介して、下部電極12に結合されている。経路92には、第1のパルス電源90を保護するための第5のRFフィルタ93が設けられている。なお、第1の高周波電源50は、下部電極12に電気的に結合されていなくてもよく、上部電極であるシャワーヘッド20に結合されていてもよい。
【0140】
第2のパルス電源91は、第2の高周波電源51及び第3の高周波電源52に代えて設けられ、ウェハWにイオンを引き込むためのバイアス電力として、パルス状の負極性の第2の直流電圧(以下、「第2のパルス電圧」という。)を下部電極12に印可する。第2のパルス電圧は、100kHz~15MHzの範囲内の第2の周波数であってよく、一例においては400kHzである。第2のパルス電源91は、経路92を介して、下部電極12に結合されている。経路92には、第2のパルス電源91を保護するための第6のRFフィルタ94(本開示における第4のRFフィルタに相当。)が設けられている。
【0141】
また第2のパルス電源91は、直流電源60に代えて設けられ、負極性の直流電圧をエッジリング14に印可する。第2のパルス電源91は、経路95を介して、エッジリング14に結合されている。経路95には、可変受動素子96と、第2のパルス電源91を保護するための第7のRFフィルタ97(本開示における第5のRFフィルタに相当。)が設けられている。可変受動素子96と第7のRFフィルタ97は、エッジリング14側からこの順で配置されている。
【0142】
一例においては、可変受動素子96は、インピーダンスが可変に構成されている。可変受動素子96は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。可変受動素子96の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。更に、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、可変受動素子96を含む回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0143】
バイパス回路70は、第1のパルス電源90及び第2のパルス電源91と下部電極12との間の経路92と、第2のパルス電源91とエッジリング14との間の経路95との間に接続されてもよい。
【0144】
かかる場合、第2のパルス電源91からのパルス状の電圧を調整して、チルト角度を制御する。例えば、第2のパルス電源91からのパルス状の電圧を大きくすると、チルト補正角度を大きくすることができる。この第2のパルス電源91からのパルス状の直流電圧によるチルト角度の制御は、上述した直流電源60からの直流電圧によるチルト角度の制御と同様である。
【0145】
なお、図21Bに示すように、第2のパルス電源91はエッジリング14に接続されてなくてもよい。かかる場合、バイパス回路70は、エッジリング14に接続される経路95に接続される。
【0146】
<他の実施形態>
ここで上述したように、第2の高周波電源51から供給される第2の高周波電力(バイアスRF電力)LF1の周波数は400kHz~13.56MHzであるが、5MHz以下がより好ましい。エッチングを行う際、ウェハWに対して高アスペクト比のエッチングを行う場合、エッチング後のパターンの垂直形状を実現するためには、高いイオンエネルギーが必要となる。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、第2の高周波電力LF1の周波数を5MHz以下にすることで、高周波電界の変化に対するイオンの追従性が上がり、イオンエネルギーの制御性が向上することが分かった。
【0147】
一方、第2の高周波電力LF1の周波数を5MHz以下の低周波とすると、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを可変とした効果が低下する場合がある。すなわち、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整によるチルト角度の制御性が低下する場合がある。例えば図2A及び図2Bにおいて、エッジリング14と第2のRFフィルタ63との電気的な接続が非接触又は容量結合である場合、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整しても、チルト角度を適切に制御できない。そこで本実施形態では、エッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続する。
【0148】
エッジリング14と第2のRFフィルタ63は、接続部を介して電気的に直接接続される。エッジリング14と接続部は接触し、当該接続部を直流電流が導通する。以下、接続部の構造(以下、「接触構造」という場合がある。)の一例について説明する。
【0149】
図22に示すように接続部200は、導体構造201と導体部材202を有している。導体構造201は、導体部材202を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を接続する。具体的に導体構造201は、その一端が第2のRFフィルタ63に接続され、他端が下部電極12の上面にて露出し、導体部材202に接触する。
【0150】
導体部材202は、例えば静電チャック13の側方において下部電極12とエッジリング14の間に形成された空間に設けられる。導体部材202は、導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導体部材202は、例えば金属等の導体からなる。導体部材202の構成は特に限定されないが、図23A図23Fのそれぞれに一例を示す。なお、図23A図23Cは、導体部材202として、弾性体を用いた例である。
【0151】
図23Aに示すように導体部材202には、鉛直方向に付勢された板バネが用いられてもよい。図23Bに示すように導体部材202には、らせん状に巻かれつつ水平方向に延伸するコイルスプリングが用いられてもよい。図23Cに示すように導体部材202には、らせん状に巻かれつつ鉛直方向に延伸するバネが用いられてもよい。そして、これら導体部材202は弾性体であり、鉛直方向に弾性力が作用する。この弾性力によって、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに所望の接触圧力で密着し、導体構造201とエッジリング14が電気的に接続される。
【0152】
図23Dに示すように導体部材202には、昇降機構(図示せず)によって昇降するピンが用いられてもよい。かかる場合、導体部材202が上昇することによって、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着する。そして、導体部材202の昇降時に作用する圧力を調整することで、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに、所望の接触圧力で密着する。
【0153】
図23Eに示すように導体部材202には、導体構造201とエッジリング14を接続するワイヤが用いられてもよい。ワイヤは、その一端が導体構造201に接合され、他端がエッジリング14の下面に接合される。このワイヤの接合は、導体構造201又はエッジリング14の下面とオーミック接触となればよく、一例として、ワイヤは溶接又は圧着される。そして、このように導体部材202にワイヤを用いた場合、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに接触し、導体構造201とエッジリング14が電気的に接続される。
【0154】
以上、図23A図23Eに示したいずれの導体部材202を用いた場合でも、図22に示したように接続部200を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続することができる。したがって、第2の高周波電力LF1の周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0155】
また、昇降装置80の駆動量を調整してチルト角度を制御する場合には、接続部200を設けた分、調整する駆動量を小さく抑えることができる。その結果、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じるのを抑制することができる。更に、上述したように、昇降装置80の駆動量と第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整することで、チルト角度の調整範囲を大きくして、チルト角度を所望の値に制御することができる。
【0156】
なお、以上の実施形態では、導体部材202として、図23Aに示した板バネ、図23Bに示したコイルスプリング、図23Cに示したバネ、図23Dに示したピン、図23Eに示したワイヤを例示したが、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0157】
なお、以上の実施形態の接続部200において、図23Fに示すように導体部材202と接続部200の導体部材202とエッジリング14との間には、導体膜203が設けられていてもよい。導体膜203には、例えば金属膜が用いられる。導体膜203は、エッジリング14の下面において少なくとも導体部材202が接触する部分に設けられる。導体膜203はエッジリング14の下面全面に設けられてもよいし、或いは複数の導体膜203が全体で環状に近い形状に設けられていてもよい。いずれの場合も、導体膜203によって、導体部材202の接触による抵抗を抑制することができ、エッジリング14と第2のRFフィルタ63を適切に接続することができる。
【0158】
以上の実施形態の接続部200は、昇降装置80によってエッジリング14を上昇させた際、導体部材202がプラズマから保護される構成を有するのが好ましい。図24A図24Gはそれぞれ、導体部材202のプラズマ対策の一例を示す。
【0159】
図24Aに示すようにエッジリング14の下面に、当該下面から下方に突起する突起部14a、14bを設けてもよい。図示の例においては、突起部14aは導体部材202の径方向内側に設けられ、突起部14bは導体部材202の径方向外側に設けられる。すなわち、導体部材202は、突起部14a、14bで形成される凹部に設けられる。かかる場合、突起部14a、14bによって、プラズマが導体部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0160】
なお、図24Aの例においては、エッジリング14の下面に突起部14a、14bを設けたが、プラズマの回り込みを抑制する形状はこれに限定されず、エッチング装置1に応じて決定すればよい。また、エッジリング14が昇降装置80によって適切に昇降できるように、エッジリング14の形状を決定すればよい。
【0161】
図24Bに示すように下部電極12の上面において導体部材202の内側に、絶縁部材210を設けてもよい。絶縁部材210は、下部電極12とは別体として設けられ、例えば円環状を有している。かかる場合、絶縁部材210によって、プラズマが導体部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0162】
図24Cに示すように、図24Aに示したエッジリング14の突起部14aと、図24Bに示した絶縁部材210とを両方設けてもよい。かかる場合、突起部14aと絶縁部材210によって、プラズマの回り込みを更に抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0163】
図24Dに示すように、図24Aに示したエッジリング14の突起部14a、14bと、図24Bに示した絶縁部材210とを両方設けてもよい。導体部材202は、突起部14bと接触する。また。絶縁部材210は、突起部14a、14bの間に設けられる。かかる場合、突起部14a、14bと絶縁部材210によってラビリンス構造が形成され、プラズマの回り込みを更に抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0164】
図24Eに示すようにエッジリング14を、上部エッジリング140と下部エッジリング141に分割してもよい。上部エッジリング140は、昇降装置80によって昇降自在に構成されている。下部エッジリング141は昇降しない。導体部材202は、上部エッジリング140の下面と下部エッジリング141の上面に接触して設けられている。導体構造201は、下部エッジリング141に接続されている。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、導体部材202、下部エッジリング141、及び導体構造201を介して、電気的に直接接続される。
【0165】
上部エッジリング140の下面において最外周部には、当該下面から下方に突起する突起部140aが設けられている。下部エッジリング141の上面において最内周部には、当該上面から上方に突起する突起部141aが設けられている。かかる場合、突起部140a、141aによって、プラズマが導体部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0166】
図24Fは、図24Eの変形例である。図24Eに示す例において、導体構造201は下部エッジリング141に接続されていたが、図24Fに示す例では、導体構造201の一端は下部電極12の上面にて露出し、導体部材220に接触する。導体部材220は、静電チャック13の径方向外側に下部エッジリング141の下面と下部電極12の上面との間に形成された空間に設けられている。すなわち、導体部材220は、下部エッジリング141の下面と導体構造201に接触する。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、導体部材202、下部エッジリング141、導体部材220、及び導体構造201を介して、電気的に直接接続される。そして、本例においても、突起部140a、141aによって、プラズマが導体部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0167】
図24Gは、図24Eの変形例である。図24Eに示す例において、導体部材202は下部エッジリング141の上面に設けられていたが、図24Gに示す例では、導体部材202は下部電極12の上面に設けられている。導体部材202は、上部エッジリング140の下面と導体構造201に接触する。導体構造201は、その一端が静電チャック13の上面にて露出し、導体部材202に接触する。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、導体部材202、及び導体構造201を介して、電気的に直接接続される。そして、本例においても、突起部140a、141aによって、プラズマが導体部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導体部材202を保護することができる。
【0168】
なお、以上の実施形態において、図24A図24Gに示した構成を組み合わせて用いてもよい。また、接続部200において、導体部材202の表面のエッジリング14と接触する部分以外に、耐プラズマコーティングを施してもよい。かかる場合、導体部材202をプラズマから保護することができる。
【0169】
次に、導体部材202の平面視における配置について説明する。図25A図25Cはそれぞれ、導体部材202の平面配置の一例を示す。図25A及び図25Bに示すように、接続部200は導体部材202を複数備え、複数の導体部材202はエッジリング14と同心円上に等間隔に設けられていてもよい。図25Aの例において導体部材202は8箇所に設けられ、図25Bにおいて導体部材202は24箇所に設けられている。また、図25Cに示すように導体部材202は、エッジリング14と同心円上に環状に設けられていてもよい。
【0170】
エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にする観点(プロセス均一化の観点)からは、図25Cに示したようにエッジリング14に対して導体部材202を環状に設け、エッジリング14に対する接触を円周上で均一に行うのが好ましい。また、同じくプロセス均一化の観点から、図25A及び図25Bに示すように複数の導体部材202を設ける場合でも、これら複数の導体部材202をエッジリング14の周方向に等間隔に配置し、エッジリング14に対する接触点を点対称に設けるのが好ましい。更に言えば、図25Aの例に比べて図25Bの例のように導体部材202の数を多くして、図25Cに示したように環状に近づける方が良い。なお、導体部材202の数は特に限定されないが、対称性を確保するためには、3個以上が好ましく、例えば3個~36個としてよい。
【0171】
但し、装置構成上、他の部材との干渉を回避するため、導体部材202を環状にしたり、導体部材202の数を多くするのは難しい場合がある。したがって、導体部材202の平面配置は、プロセス均一化の条件や装置構成上の制約条件などを鑑みて、適宜設定してよい。
【0172】
次に、接続部200と、第1のRFフィルタ62及び第2のRFフィルタ63との関係について説明する。図26A図26Cはそれぞれ、接続部200、第1のRFフィルタ62及び第2のRFフィルタ63の構成の一例を模式的に示す。
【0173】
図26Aに示すように、例えば8個の導体部材202に対して第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63がそれぞれ1個設けられている場合、接続部200は中継部材230を更に有していてもよい。なお、図26Aでは、図25Aに示した接続部200において中継部材230を設けた場合について図示するが、図25B又は図25Cのいずれに示した接続部200においても中継部材230を設けることができる。また、中継部材230は複数設けられていてもよい。
【0174】
中継部材230は、導体部材202と第2のRFフィルタ63の間の導体構造201において、エッジリング14と同心円上に環状に設けられている。中継部材230は、導体部材202と導体構造201aで接続されている。すなわち、中継部材230から8本の導体構造201aが平面視において放射状に延伸し、8個の導体部材202のそれぞれに接続される。また中継部材230は、第1のRFフィルタ62を介して第2のRFフィルタ63と導体構造201bで接続されている。
【0175】
かかる場合、例えば第2のRFフィルタ63がエッジリング14の中心に配置されていない場合であっても、中継部材230における電気的特性(任意の電圧、電流値)を円周上で均一に行うことができ、更に8個の導体部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができる。その結果、エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にすることができる。
【0176】
図26Bに示すように、例えば8個の導体部材202に対して、第1のRFフィルタ62が複数、例えば8個設けられ、第2のRFフィルタ63が1個設けられていてもよい。このように導体部材202の数に対して、第1のRFフィルタ62の個数は適宜設定することができる。なお、図26Bの例においても、中継部材230が設けられていてもよい。
【0177】
図26Cに示すように、例えば8個の導体部材202に対して、第1のRFフィルタ62が複数、例えば8個設けられ、第2のRFフィルタ63が複数、例えば8個設けられていてもよい。このように導体部材202の数に対して、インピーダンスが可変の第2のRFフィルタ63の個数は適宜設定することができる。図26Cの例においても、中継部材230が設けられていてもよい。
【0178】
なお、インピーダンスが可変の第2のRFフィルタ63を複数設けることで、複数の導体部材202に対して個別に独立して電気的特性を制御することが可能となる。その結果、複数の導体部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができ、プロセスの均一性を向上させることができる。
【0179】
次に、エッジリング14に対する接触構造として、上記図22図23A図23Fに示した例以外の例について説明する。図27A図27D図28A図28Dはそれぞれ、接続部の構成の他の例を示す。
【0180】
図27A図27Dはそれぞれ、昇降装置80の昇降ピン300が絶縁体からなり、当該昇降ピン300の内部に接続部310が設けられた例である。
【0181】
図27Aに示すように、昇降装置80は、上記実施形態の昇降ピン81に代えて、昇降ピン300を有していてもよい。昇降ピン300は、エッジリング14の下面から鉛直方向に延伸し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。昇降ピン300とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。昇降ピン300は、絶縁体からなる。また、昇降ピン300は、チャンバ10の外部に設けられた駆動源82によって昇降自在に構成されている。
【0182】
昇降ピン300の内部には、接続部310が設けられている。接続部310は、エッジリング14と昇降ピン300を直接接続し、エッジリング14と第2のRFフィルタ63を接続する。具体的に接続部310は、その一端が第2のRFフィルタ63に接続され、他端が昇降ピン300の上面にて露出し、エッジリング14の下面に接触する。
【0183】
図27B及び図27Cに示すように、昇降ピン300の内部に設けられた接続部310は、導体構造311と導体部材312を有していてもよい。導体構造311は、導体部材312を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を接続する。具体的に導体構造311は、その一端が第2のRFフィルタ63に接続され、他端が昇降ピン300の内部の上部空間にて露出し、導体部材312に接触する。
【0184】
導体部材312は、昇降ピン300の内部の上部空間に設けられる。導体部材312は、導体構造311とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導体部材312は、例えば金属等の導体からなる。導体部材312の構成は特に限定されないが、例えば図27Bに示すように鉛直方向に付勢された弾性を有する板バネが用いられてもよいし、図27Cに示すように導体構造311とエッジリング14を接続するワイヤが用いられてもよい。或いは、導体部材312には、図23Bに示したコイルスプリング、図23Cに示したバネ、図23Dに示したピン等が用いられてもよい。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、導体部材312と導体構造311を介して、電気的に直接接続される。
【0185】
図27Dに示すように、昇降ピン300は上下面が開口した中空の円筒形状を有し、当該昇降ピン300の内部に設けられる接続部310は、導体構造(第1の導体構造)311と導体部材312に加えて、他の導体構造(第2の導体構造)313を有していてもよい。導体構造313は、昇降ピン300の内側面に設けられる。導体構造313は、例えば金属膜であってもよいし、金属製の円筒であってもよい。
【0186】
導体構造311は、導体構造313の下端に接続される。導体部材312は、導体構造313の上端に接続される。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、導体部材312、導体構造313、及び導体構造311を介して、電気的に直接接続される。
【0187】
以上、図27A図27Dに示したいずれの接続部310を用いた場合でも、接続部310を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続することができる。したがって、第2の高周波電力LF1の周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0188】
なお、以上の実施形態の接続部310は、絶縁体からなる昇降ピン300の内部に設けられているため、プラズマから保護される構成を有さなくてもよい。
【0189】
図28A図28Dはそれぞれ、昇降装置80の昇降ピン400が導電体からなり、当該昇降ピン400自体が接続部を構成する例である。
【0190】
図28Aに示すように、昇降装置80は、上記実施形態の昇降ピン81、300に代えて、昇降ピン400を有していてもよい。昇降ピン400は、エッジリング14の下面から鉛直方向に延伸し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。昇降ピン400とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。昇降ピン400は、導電体からなる。また、昇降ピン400は、チャンバ10の外部に設けられた駆動源82によって昇降自在に構成されている。
【0191】
昇降ピン400の下端には、導体構造410が接続されている。導体構造410は、第2のRFフィルタ63に接続される。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、昇降ピン400と導体構造410を介して、電気的に直接接続される。
【0192】
上記昇降ピン400は、昇降装置80によってエッジリング14を上昇させた際、プラズマから保護される構成を有するのが好ましい。図28B図28Cはそれぞれ、昇降ピン400のプラズマ対策の一例を示す。
【0193】
図28Bに示すように、下部電極12の上面において昇降ピン400の内側に、図24Bに示した絶縁部材210を設けてもよい。かかる場合、絶縁部材210によって、プラズマが昇降ピン400側に回り込むのを抑制することができ、昇降ピン400を保護することができる。なお、プラズマの回り込みを抑制する構成はこれに限定されず、図24A図24C図24Gのいずれかの構成を適用してもよい。
【0194】
図28Cに示すように、昇降ピン400の外側面に、耐プラズマ性を有する絶縁部材401を設けてもよい。絶縁部材401は、例えば絶縁体の膜であってもよいし、絶縁体製の円筒であってもよい。かかる場合、絶縁部材401によって、プラズマから昇降ピン400を保護することができる。なお、図28Bの構成において、図28Cに示した絶縁部材401を更に設けてもよい。
【0195】
以上、図28A図28Cに示したいずれの場合でも、昇降ピン400を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続することができる。したがって、第2の高周波電力LF1の周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0196】
なお、図28A図28Cでは昇降ピン400自体が接続部を構成していたが、図28Dに示すように昇降ピン400の内部に、更に接続部420を設けてもよい。接続部420は、導体構造421と導体部材422を有していてもよい。導体構造421は、導体部材422を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を接続する。具体的に導体構造421は、その一端が第2のRFフィルタ63に接続され、他端が昇降ピン400の内部の上部空間にて露出し、導体部材422に接触する。なお、上記導体構造410は、導体構造421に含まれる。
【0197】
導体部材422は、昇降ピン400の内部の上部空間に設けられる。導体部材422は、導体構造421とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導体部材422は、例えば金属等の導体からなる。導体部材312の構成は特に限定されないが、例えば図23Aに示した鉛直方向に付勢された板バネが用いられてもよい。或いは、図23Bに示したコイルスプリング、図23Cに示したバネ、図23Dに示したピン、図23Eに示したワイヤ等が用いられてもよい。かかる場合、上部エッジリング140と第2のRFフィルタ63は、昇降ピン400に加えて、導体部材312と導体構造311を介して、電気的に直接接続される。また、昇降ピン400と導体部材312の接触による抵抗を抑制することができるので、エッジリング14と第2のRFフィルタ63を更に適切に接続することができる。
【0198】
<他の実施形態>
以上の実施形態のエッチング装置1は容量結合型のエッチング装置であったが、本開示が適用されるエッチング装置はこれに限定されない。例えばエッチング装置は、誘導結合型のエッチング装置であってもよい。
【0199】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0200】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0201】
(付記A1)
基板にエッチングを行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングに接続され、インピーダンスを変更可能なRFフィルタと、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記RFフィルタ又は前記RFフィルタと前記エッジリングとの間の経路とに接続されるバイパス回路と、
を備える、エッチング装置。
【0202】
(付記A2)
前記RFフィルタを介して前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源を更に備え、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記直流電源又は前記直流電源と前記エッジリングとの間の経路とに接続される、付記A1に記載のエッチング装置。
【0203】
(付記A3)
基板にエッチングを行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記直流電源又は前記直流電源と前記エッジリングとの経路とに接続されるバイパス回路と、
を備える、エッチング装置。
【0204】
(付記A4)
前記エッジリングを昇降させる昇降装置を更に備える、付記A1~A3のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【0205】
(付記A5)
基板にエッチングを行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングを昇降させる昇降装置と、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記エッジリングに接続されるバイパス回路と、
を備える、エッチング装置。
【0206】
(付記A6)
前記バイパス回路は、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記静電チャック上に載置される基板のエッジ領域における初期チルト角度を調整する、付記A1~A5のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【0207】
(付記A7)
前記高周波電源から複数の周波数の高周波電力が供給され、
前記複数の周波数の高周波電力のうち、2周波以上の高周波電力に対して、前記静電チャック上に載置される基板のエッジ領域におけるチルト角度を制御する、付記A1~A6のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【0208】
(付記A8)
前記バイパス回路は複数設けられる、付記A7に記載のエッチング装置。
【0209】
(付記A9)
エッチング装置を用いて基板にエッチングを行う方法であって、
前記エッチング装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングに接続され、インピーダンスを変更可能なRFフィルタと、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記RFフィルタ又は前記RFフィルタと前記エッジリングとの間の経路とに接続されるバイパス回路と、
を備え、
前記方法は、前記バイパス回路により、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記静電チャック上に載置される基板のエッジ領域におけるエッチング前の初期チルト角度を調整する工程を含む、エッチング方法。
【0210】
(付記A10)
エッチング装置を用いて基板にエッチングを行う方法であって、
前記エッチング装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記直流電源又は前記直流電源と前記エッジリングとの間の経路とに接続されるバイパス回路と、
を備え、
前記方法は、前記バイパス回路により、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記静電チャック上に載置される基板のエッジ領域におけるエッチング前の初期チルト角度を調整する工程を含む、エッチング方法。
【0211】
(付記A11)
エッチング装置を用いて基板にエッチングを行う方法であって、
前記エッチング装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられた基板支持体であり、電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置される導電性のエッジリングとを有する前記基板支持体と、
前記電極に高周波電力を供給するための高周波電源と、
前記高周波電源に接続される少なくとも1つの整合回路と、
前記エッジリングを昇降させる昇降装置と、
前記整合回路又は前記整合回路と前記電極との間の経路と、前記エッジリングに接続されるバイパス回路と、
を備え、
前記方法は、前記バイパス回路により、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記静電チャック上に載置される基板のエッジ領域におけるエッチング前の初期チルト角度を調整する工程を含む、エッチング方法。
【0212】
(付記B1)
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備える、プラズマ処理装置。
【0213】
(付記B2)
前記少なくとも1つのバイパス回路は、周波数に応じて選択される前記少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される、付記B1に記載のプラズマ処理装置。
【0214】
(付記B3)
前記少なくとも1つのバイパス回路は、周波数毎に独立して設けられたバイパス回路と、複数の周波数に共通して設けられたバイパス回路との組み合わせを含むように構成される、付記B2に記載のプラズマ処理装置。
【0215】
(付記B4)
前記少なくとも1つのバイパス回路は、前記エッジリングに供給する前記少なくとも1つの電力の大きさを制御するように構成される、付記B1~B3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0216】
(付記B5)
前記ソース電源は、前記ソース電力としてソースRF電力を供給するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つのバイアスRF電力、又は周波数が異なる少なくとも1つの負極性のパルス電圧を印可するように構成される、付記B1~B4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0217】
(付記B6)
第1の整合回路及び少なくとも1つの第2の整合回路を含む整合器を更に備え、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つのバイアスRF電力を供給するように構成され、
前記ソース電源は、前記第1の整合回路を介して前記上部電極又は前記下部電極に接続され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記少なくとも1つの第2の整合回路を介して前記下部電極に接続される、付記B5に記載のプラズマ処理装置。
【0218】
(付記B7)
前記バイパス回路は、前記整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記可変受動素子又は前記可変受動素子と前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第1の経路に配置される、付記B6に記載のプラズマ処理装置。
【0219】
(付記B8)
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として、周波数が異なる少なくとも1つの負極性のパルス電圧を印可するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、少なくとも1つの第1のRFフィルタを介して前記下部電極にそれぞれ接続される、付記B5に記載のプラズマ処理装置。
【0220】
(付記B9)
前記少なくとも1つのバイアス電源は、第2のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続される、付記B8に記載のプラズマ処理装置。
【0221】
(付記B10)
前記バイパス回路は、整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記第2のRFフィルタ又は前記第2のRFフィルタと前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第2の経路に配置される、付記B9に記載のプラズマ処理装置。
【0222】
(付記B11)
前記第2のRFフィルタは、前記少なくとも1つの可変受動素子を含む、付記B10に記載のプラズマ処理装置。
【0223】
(付記B12)
前記電源部は、前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加するように構成される直流電源であり、少なくとも1つの第3のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続される直流電源を更に備える、付記B1~B4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0224】
(付記B13)
前記バイパス回路は、整合器又は前記整合器と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記直流電源又は前記直流電源と前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第3の経路に配置される、付記B12に記載のプラズマ処理装置。
【0225】
(付記B14)
前記第3のRFフィルタは、前記少なくとも1つの可変受動素子を含む、付記B13に記載のプラズマ処理装置。
【0226】
(付記B15)
前記エッジリングを昇降させるように構成される昇降装置を更に備える、付記B12~B14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0227】
(付記B16)
前記ソース電源は、前記ソース電力として負極性の第1のパルス電圧を印可するように構成され、
前記少なくとも1つのバイアス電源は、前記バイアス電力として少なくとも1つの負極性の第2のパルス電圧を印可するように構成され、
前記第1のパルス電圧の周波数と前記第2のパルス電圧の周波数は異なる、付記B1~B4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0228】
(付記B17)
前記少なくとも1つのバイアス電源は、
第4のRFフィルタを介して前記下部電極に接続されるとともに、第5のRFフィルタを介して前記エッジリングに接続され、
前記バイパス回路は、前記第4のRFフィルタ又は前記第4のRFフィルタと前記下部電極との間の経路と、前記5のRFフィルタ又は前記第5のRFフィルタと前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第4の経路に配置される、付記B16に記載のプラズマ処理装置。
【0229】
(付記B18)
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングを昇降させるように構成される昇降装置と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備える、プラズマ処理装置。
【0230】
(付記B19)
前記バイパス回路は、整合回路又は前記整合回路と前記上部電極若しくは前記下部電極との間の経路と、前記エッジリングとの間の経路と、を接続する第5の経路に接続される、付記B18に記載のプラズマ処理装置。
【0231】
(付記B20)
プラズマ処理装置を用いたエッチング方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、基板を支持するための基板支持面と、前記基板支持面に支持された前記基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含む基板支持体と、
前記下部電極の上方に配置される上部電極と、
周波数の異なる2つ以上の電力を供給する電源部であり、前記電源部は、前記チャンバ内のガスからプラズマを生成するためのソース電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソース電源と、1つ又は周波数が異なる2つ以上のバイアス電力を前記下部電極に供給するように構成される少なくとも1つのバイアス電源と、を含む電源部と、
前記エッジリングに電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記電源部と前記エッジリングとを電気的に接続し、前記ソース電力及び少なくとも1つの前記バイアス電力からなる群から選択される少なくとも1つの電力の一部を前記エッジリングに供給するように構成される少なくとも1つのバイパス回路と、
を備え、
前記エッチング方法は、
(a)基板を前記基板支持面上に載置する工程と、
(b)前記チャンバ内のガスからプラズマを生成する工程と、
(c)生成されたプラズマで前記基板をエッチングする工程と、
(d)前記バイパス回路により、前記エッジリングへの電力供給量を制御して、前記基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整する工程と、
を含む、エッチング方法。
【符号の説明】
【0232】
1 エッチング装置
10 チャンバ
11 ステージ
12 下部電極
13 静電チャック
14 エッジリング
21 電極板
50 第1の高周波電源
51 第2の高周波電源
52 第3の高周波電源
62 第1のRFフィルタ
63 第2のRFフィルタ
70 バイパス回路
W ウェハ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図24G
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図27C
図27D
図28A
図28B
図28C
図28D