(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046600
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】基板載置機構、検査装置、および検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155287
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD23
4M106DH14
4M106DH15
4M106DH44
4M106DH45
4M106DH46
4M106DJ02
(57)【要約】
【課題】基板に形成された複数の電子デバイスを検査する際の電子デバイスの温度制御を短時間でかつ簡易に行うことができる基板載置機構、検査装置、および検査方法を提供する。
【解決手段】基板を載置するステージと、ステージ上の基板の電子デバイスの温度を制御する温度制御部とを備え、ステージは、トッププレートと、複数の加熱ゾーンに分割された加熱部と、複数の温度センサとを有し、温度制御部は、検査中の電子デバイスに対応する1または複数の加熱ゾーンの出力を対応する温度センサの検出値に基づいて制御し、検査中の電子デバイスの温度を制御する第1温度制御器と、検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の加熱ゾーンの出力を対応する温度センサの検出値に基づいて制御し、その電子デバイスの温度を制御する第2温度制御器とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた複数の電子デバイスを順次検査する検査装置において基板を載置する基板載置機構であって、
複数の電子デバイスが設けられた基板を載置するステージと、
前記ステージ上の前記基板における前記電子デバイスの温度を制御する温度制御部と、
を備え、
前記ステージは、
前記基板の載置面を有するトッププレートと、
前記トッププレートを加熱する、複数の加熱ゾーンに分割された加熱部と、
前記トッププレートに設けられた複数の温度センサと、
を有し、
前記温度制御部は、
検査中の電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの温度を制御する第1温度制御器と、
前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスの温度を制御する第2温度制御器と、
を有する、基板載置機構。
【請求項2】
前記温度制御部は、
前記温度センサを選択するセンサ選択部と、
前記加熱ゾーンを選択する加熱選択部と、
前記センサ選択部に温度センサを選択する信号を与え、前記加熱選択部に加熱ゾーンを選択する信号を与え、かつ前記第1温度制御器および前記第2制御器を有する主制御部と、
を有する、請求項1に記載の基板載置機構。
【請求項3】
前記加熱選択部は、前記複数の加熱ゾーンにそれぞれ対応して設けられ、前記第1温度制御器に接続された複数の第1スイッチング素子と、前記複数の加熱ゾーンにそれぞれ対応して設けられ、前記第2温度制御器に接続された複数の第2スイッチング素子とを有する、請求項2に記載の基板載置機構。
【請求項4】
前記第1および第2スイッチング素子は、ソリッドステートリレーである、請求項3に記載の基板載置機構。
【請求項5】
前記加熱選択部は、前記加熱部の直下に配置されている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の基板載置機構。
【請求項6】
前記ステージは、前記トッププレートを冷却する冷却部をさらに有し、前記温度制御部は、前記冷却部を制御する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の基板載置機構。
【請求項7】
前記第1温度制御器および前記第2温度制御器はPID制御器である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板載置機構。
【請求項8】
前記温度制御部は、
前記第2温度制御器で温度制御される電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記第2温度制御器で温度制御される電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスの温度を制御する第3温度制御器をさらに有し、前記第1温度制御器、前記第2温度制御器、および前記第3温度制御器の合計数は前記加熱ゾーンの数よりも少ない、請求項1に記載の基板載置機構。
【請求項9】
前記第1温度制御器および前記第2温度制御器および前記第3温度制御器はPID制御器である、請求項8に記載の基板載置機構。
【請求項10】
前記加熱部の加熱源は抵抗ヒータである、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の基板載置機構。
【請求項11】
基板に設けられた複数の電子デバイスを順次検査する検査装置であって、
複数の電子デバイスが設けられた基板を載置するステージを含む基板載置機構と、
前記ステージ上の基板に設けられた前記電子デバイスにプローブを電気的に接触させて当該電子デバイスを検査する検査機構と、
を具備し、
前記基板載置機構は、前記ステージ上の前記基板における前記電子デバイスの温度を制御する温度制御部をさらに備え、
前記ステージは、
前記基板の載置面を有するトッププレートと、
前記トッププレートを加熱する加熱部と、
前記トッププレートに設けられた複数の温度センサと、
を有し、
前記加熱部は、複数の加熱ゾーンに分割され、
前記温度制御部は、
検査中の電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの温度を制御する第1温度制御器と、
前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスの温度を制御する第2温度制御器と、
を有する、検査装置。
【請求項12】
前記温度制御部は、
前記温度センサを選択するセンサ選択部と、
前記加熱ゾーンを選択する加熱選択部と、
前記センサ選択部に温度センサを選択する信号を与え、前記加熱選択部に加熱ゾーンを選択する信号を与え、かつ前記第1温度制御器および前記第2温度制御器を有する主制御部と、
を有する、請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記加熱選択部は、前記複数の加熱ゾーンにそれぞれ対応して設けられ、前記第1温度制御器に接続された複数の第1スイッチング素子と、前記複数の加熱ゾーンにそれぞれ対応して設けられ、前記第2温度制御器に接続された複数の第2スイッチング素子とを有する、請求項12に記載の検査装置。
【請求項14】
前記第1および第2スイッチング素子は、ソリッドステートリレーである、請求項13に記載の検査装置。
【請求項15】
前記加熱選択部は、前記加熱部の直下に配置されている、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項16】
前記ステージは、前記トッププレートを冷却する冷却部をさらに有し、前記温度制御部は、前記冷却部を制御する、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項17】
前記第1温度制御器および前記第2温度制御器はPID制御器である、請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項18】
前記温度制御部は、
前記第2温度制御器で温度制御される電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記第2温度制御器で温度制御される電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスの温度を制御する第3温度制御器をさらに有し、前記第1温度制御器、前記第2温度制御器、および前記第3温度制御器の合計数は前記加熱ゾーンの数よりも少ない、請求項11に記載の検査装置。
【請求項19】
前記第1温度制御器および前記第2温度制御器および前記第3温度制御器はPID制御器である、請求項18に記載の検査装置。
【請求項20】
基板に設けられた複数の電子デバイスを順次検査する検査方法であって、
複数の電子デバイスが設けられた基板をステージ上に載置する工程と、
検査機構により前記複数の電子デバイスを順次検査する工程と、
前記検査する工程の際に前記電子デバイスを温度制御する工程と、
を有し、
前記ステージは、前記基板の載置面を有するトッププレートと、前記トッププレートを加熱する加熱部と、を有し、
前記加熱部は、複数の加熱ゾーンに分割され、
前記温度制御する工程は、検査中の電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を制御して前記検査中の電子デバイスの温度制御を行うとともに、前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を制御して前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される前記電子デバイスの温度を制御する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板載置機構、検査装置、および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、電子デバイスが形成された基板を載置台に載置した状態で、電子デバイスの電気的特性等の検査を行う検査装置が用いられる。特許文献1には、被検査対象の基板が載置される載置台を、基板載置面が径方向に複数の領域に区画され、複数の領域それぞれにヒータが設けられた構成とした検査装置が開示されている。そして、特許文献1の検査装置は、基板載置面における複数の領域のうちの最中心の領域について、設定温度になるようにフィードバック制御を行い、かつ、基板載置面における複数の領域のうちの最中心の領域より外側の領域について、径方向内側に隣接する領域との温度差が予め設定された値になるようにフィードバック制御を行う制御部を有している。
【0003】
また、特許文献2には、同様の検査装置において、加熱手段に複数のLEDを用い、複数ゾーンの温度制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-191332号公報
【特許文献2】特開2019-153717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板に形成された複数の電子デバイスを検査する際の電子デバイスの温度制御を短時間でかつ簡易に行うことができる基板載置機構、検査装置、および検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る載置機構は、基板に設けられた複数の電子デバイスを順次検査する検査装置において基板を載置する基板載置機構であって、複数の電子デバイスが設けられた基板を載置するステージと、前記ステージ上の前記基板における前記電子デバイスの温度を制御する温度制御部と、を備え、前記ステージは、前記基板の載置面を有するトッププレートと、前記トッププレートを加熱する加熱部と、前記トッププレートに設けられた複数の温度センサと、を有し、前記加熱部は、複数の加熱ゾーンに分割され、前記温度制御部は、検査中の電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの温度を制御する第1温度制御器と、前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の前記加熱ゾーンの出力を、前記複数の温度センサのうち対応するものの検出値に基づいて制御し、前記検査中の電子デバイスの次またはそれ以降に検査される電子デバイスの温度を制御する第2温度制御器と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板に形成された複数の電子デバイスを検査する際の電子デバイスの温度制御を短時間でかつ簡易に行うことができる基板載置機構、検査装置、および検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る検査装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の検査装置の一部を断面で示す正面図である。
【
図3】検査対象基板であるウエハの構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】一実施形態に係る検査装置に用いられる基板載置機構の一例を示す断面図である。
【
図5】加熱源として用いる抵抗ヒータの構造を示す図である。
【
図6】複数の加熱ゾーンに分割された加熱部と、主制御部の第1温度制御器および第2温度制御器と、加熱選択部の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【
図7】ステージに設けられた複数の温度センサと、複数の加熱ゾーンとの関係の一例を示す図である。
【
図8】複数の電子デバイスの検査をシリアルに行う場合の一例を説明する模式図である。
【
図9】複数の電子デバイスの検査をランダムに行う場合の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態について説明する。
【0010】
<検査装置>
最初に、一実施形態に係る検査装置について説明する。
図1は一実施形態に係る検査装置の概略構成を示す斜視図、
図2は
図1の検査装置の一部を断面で示す正面図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、検査装置1は、基板としてのウエハWに形成された複数の電子デバイスそれぞれの電気的特性の検査を行うものであり、検査部2と、ローダ3と、テスタ4とを備える。
【0012】
検査部2は、内部が空洞の筐体11を有し、筐体11内には検査対象のウエハWを載置するステージ20を有する。ステージ20は、ウエハWを載置する載置面を有し、ウエハWを吸着固定するトッププレート21と、トッププレート21の加熱を行う加熱部24と、トッププレート21の冷却を行う冷却部25と、トッププレート21に設けられた複数の温度センサ26とを有する。ステージ20は、移動機構16により水平方向および鉛直方向に移動自在に構成されている。加熱部24および冷却部25は温度制御部23により制御され、ステージ20と、温度制御部23とで基板載置機構10が構成される。基板載置機構10の詳細は後述する。
【0013】
検査部2におけるステージ20の上方には、該ステージ20に対向するようにプローブカード12が配置される。プローブカード12は接触子である複数のプローブ12aを有する。また、プローブカード12は、インターフェース13を介してテスタ4へ接続されている。各プローブ12aがウエハWの各電子デバイスの電極に接触する際、各プローブ12aは、テスタ4からインターフェース13を介して電子デバイスへ電力を供給し、または、電子デバイスからの信号をインターフェース13を介してテスタ4へ伝達する。したがって、インターフェース13およびプローブ12aは、電子デバイスに電力(パワー)を供給する供給部材として機能する。
【0014】
ローダ3は、筐体14を有し、筐体14内にウエハWが収容された搬送容器であるFOUP(図示せず)が配置されている。また、ローダ3は搬送装置(図示せず)を有し、搬送装置によりFOUPに収容されているウエハWを取り出して検査部2のステージ20へ搬送する。また、搬送装置により電気的特性の検査が終了したステージ20上のウエハWを搬送し、FOUPへ収容する。
【0015】
また、ローダ3の筐体14内には、検査対象の電子デバイスの温度制御等の各種制御を行う制御部15が設けられている。
【0016】
制御部15は、コンピュータからなり、検査装置1の各構成部を制御する主制御部を有しており、主制御部により検査装置の各構成部の動作を制御する。また、制御部15は、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置を有している。主制御部による各構成部の制御は、記憶装置に内蔵された記憶媒体(ハードディスク、光デスク、半導体メモリ等)に記憶された制御プログラムである処理レシピにより実行される。また、制御部15は温度制御部23を制御する。なお、制御部15の配置位置は筐体14内に限らず、例えば検査部2の筐体11内に設けられてもよい。
【0017】
検査部2の筐体11には、制御部15の一部を構成するユーザインターフェース部18が設けられている。ユーザインターフェース部18は、ユーザ向けに情報を表示したりユーザが指示を入力したりするためのものであり、例えば、タッチパネルやキーボード等の入力部と液晶ディスプレイ等の表示部とからなる。
【0018】
テスタ4は、電子デバイスが搭載されるマザーボードの回路構成の一部を再現するテストボード(図示省略)を有する。テストボードは、検査対象の電子デバイスからの信号に基づいて、該電子デバイスの良否を判断するテスタコンピュータ17に接続される。テスタ4では、上記テストボードを取り替えることにより、複数種のマザーボードの回路構成を再現することができる。
【0019】
なお、プローブカード12、インターフェース13、テスタ4は、検査機構を構成する。
【0020】
電子デバイスの電気的特性の検査の際、テスタコンピュータ17が、電子デバイスと各プローブ12aを介して接続されたテストボードへデータを送信する。そして、テスタコンピュータ17が、送信されたデータが当該テストボードによって正しく処理されたか否かを当該テストボードからの電気信号に基づいて判定する。
【0021】
検査対象基板であるウエハWは、例えば、
図3に示すように、略円板状のシリコン基板にエッチング処理や配線処理を施すことによりその表面に互いに所定の間隔をおいて形成された、複数の電子デバイスDを有している。電子デバイスDの表面には、電極Eが形成されており、該電極Eは当該電子デバイスDの内部の回路素子に電気的に接続されている。電極Eへ電圧を印加することにより、各電子デバイスDの内部の回路素子へ電流を流すことができる。
【0022】
<基板載置機構>
次に、基板載置機構10について詳細に説明する。
図4は基板載置機構10の一例を示す断面図である。基板載置機構10は、上述したように、ステージ20と、温度制御部23とを有する。
【0023】
ステージ20は、上述したように、トッププレート21と、加熱部24と、冷却部25と、複数の温度センサ26とを有する。
図4では、トッププレート21の下に加熱部24が設けられ、加熱部24の下に冷却部25が設けられているが、加熱部24と冷却部25は逆であってもよい。
【0024】
トッププレート21は、例えばウエハWに対応して円板状をなし、Cu、Al、SiC、AlN、カーボンファイバーのような熱伝導率が高い材料で形成されている。トッププレート21が熱伝導率の高い材料で形成されることにより、温調精度および効率を高めることができる。
【0025】
加熱部24は加熱源31が内蔵された板状体であり、加熱源31によりトッププレート21を加熱するようになっている。加熱部24は、複数(3以上)の加熱ゾーン32に分割され、加熱源31も各加熱ゾーン32に対応して分割されており、複数の加熱ゾーン32がそれぞれ独立して加熱可能に構成されている。複数の加熱ゾーン32は、複数の温度センサ26のそれぞれに対応して設けられている。
【0026】
加熱源31としては、例えば、
図5に示すように、特定パターンに形成された抵抗ヒータを用いることができる。抵抗ヒータとしては、ポリマー上に銅箔をスクリーン印刷し、それを特定形状にエッチングしたものを用いることができる。
【0027】
冷却部25は内部に冷却媒体流路35が形成された板状体であり、冷却媒体流路35に冷却媒体供給源36から冷却水等の冷却媒体が循環供給されるように構成されている。
【0028】
複数の温度センサ26は、トッププレート21の内部に設けられており、トッププレート21に形成された穴に嵌め込まれている。温度センサ26としては、例えばRTD(測温抵抗体)センサを用いることができる。温度センサ26として、熱電対やダイオード、トランジスタ等を使ったPNジャンクション等の他のものを用いてもよい。複数の温度センサ26は、位置決めユニットに装着された状態で、一括して測定位置に配置するようにしてもよい。位置決めユニットはフレキシブル基板により構成することができる。
【0029】
加熱制御部23は、トッププレート21に載置されたウエハWの電子デバイスDの温度を制御するものであり、主制御部41と、センサ選択部42と、加熱選択部43とを有する。
【0030】
主制御部41は、制御部15からの指令に基づいて、センサ選択部42にセンサ選択信号を与え、加熱選択部43に、選択された温度センサ26に対応する加熱ゾーン32を選択する信号を与える。また、主制御部41は、第1温度制御器45aおよび第2温度制御器45bを有しており、これらは温度センサ26からの信号に基づいて電源50から加熱部24の加熱ゾーン32に出力される電圧を制御する。第1温度制御器45aおよび第2温度制御器45bは、特に限定されないが、PID制御器を好適に用いることができる。また、主制御部41は、冷却部25に供給する冷却媒体の供給量や温度等を制御するようになっている。
【0031】
センサ選択部42は、センサ選択信号に基づいて複数の温度センサ26のうち検査中の電子デバイスD(第1の電子デバイス)に最も近いもの、およびその次またはそれ以降に検査する電子デバイスD(第2の電子デバイス)に最も近いものを選択し、これら選択された2つの温度センサ26から、それぞれ第1温度制御器45aおよび第2温度制御器45bに検出信号を送る。
【0032】
加熱選択部43は、第1温度制御器45aおよび第2温度制御器45bから出力された制御電圧を印加する加熱ゾーン32を選択する。この選択は、上述したように主制御部41からの選択信号に基づいて行われる。加熱選択部43により選択された1または複数の加熱ゾーン32の加熱源31に第1温度制御器45aから制御された電圧が印加され、検査中の第1の電子デバイスの温度が所望の温度に制御される。また、加熱選択部43により選択された1または複数の加熱ゾーン32の加熱源31に第2温度制御器45bから制御された電圧が印加され、その次またはそれ以降に検査される第2の電子デバイスの温度が所望の温度に制御される。
【0033】
対象となる電子デバイスDが2つの加熱ゾーン32の境界に位置しているような場合は、複数の加熱ゾーン32の加熱源31に電圧を印加することが好ましく、このとき電子デバイスDの位置に応じて複数の加熱ゾーン32のパワー(電圧)を配分することが好ましい。また、その次またはそれ以降に測定される電子デバイスDが同じ加熱ゾーンに対応する場合は、第2温度制御器45bにより、さらに次の電子デバイスDに対応する加熱ゾーン32の温度制御をしてもよい。
【0034】
図6は、複数の加熱ゾーンに分割された加熱部24と、主制御部41の第1温度制御器45aおよび第2温度制御器45bと、加熱選択部43の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。本例では、加熱部24は、加熱源31を有する複数の加熱ゾーン32
1~、32
2、32
3、・・・・、32
fを有する。加熱選択部43は、複数の加熱ゾーン32
1~32
fにそれぞれ接続される複数の第1ソリッドステートリレー(SD)46
11~46
1fと、同様に複数の加熱ゾーン32
1~32
fにそれぞれ接続される複数の第2ソリッドステートリレー(SD)46
21~46
2fとを有する。第1温度制御器45aは、第1ソリッドステートリレー(SD)46
11~46
1fに接続されており、第2温度制御器45bは、第2ソリッドステートリレー(SD)46
21~46
2fに接続されている。そして、第1ソリッドステートリレー(SD)46
11~46
1fの1または複数をオンにすることにより、加熱ゾーン32
1~32
fのうち第1温度制御器45aからの制御電圧が印加されるものが選択される。また、第2ソリッドステートリレー(SD)46
21~46
2fの1または複数をオンにすることにより、加熱ゾーン32
1~32
fのうち第2温度制御器45bからの制御電圧が印加されるものが選択される。
【0035】
加熱選択部43がこのように複数のソリッドステートリレーで構成されている場合、加熱選択部43を加熱部24の直下に配置することにより、ソリッドステートリレーから加熱ゾーン32の加熱源31までの配線を最小にすることができる。
【0036】
なお、ソリッドステートリレーはスイッチング素子の一例であり、スイッチング素子としては、ソリッドステートリレーに限らず、例えばスイッチングトランジスタ等であってもよい。
【0037】
図7は、ステージに設けられた複数の温度センサと、複数の加熱ゾーンとの関係の一例を示す図である。本例では、加熱部24が16個の加熱ゾーン32
1~32
16を有する。加熱ゾーン32
1~32
12が外周側で加熱ゾーン32
13~32
16が中心側である。トッププレート21には、これらの加熱ゾーン32
1~32
16に対応して16個の温度センサ26
1~26
16が設けられている。
【0038】
例えば、
図7中、電子デバイスD
1が検査中で、電子デバイスD
2が次に検査するものである場合、以下のように制御される。すなわち、電子デバイスD
1に対応する加熱ゾーン32
13が温度センサ26
13の検出値に基づいて第1温度制御器45aにより温度制御され、電子デバイスD
2に対応する加熱ゾーン32
4の検出値に基づいて第2温度制御器45bにより制御される。
【0039】
<検査装置による検査処理>
次に、検査装置1を用いたウエハWに対する検査処理の一例について説明する。
まず、ローダ3のFOUPから搬送装置によりウエハWを取り出してステージ20に搬送し、載置する。次いで、ステージ20を所定の位置に移動する。
【0040】
この状態で、ステージ20の上方に設けられているプローブ12aと、ウエハWの検査対象の電子デバイスDの電極Eとを接触させることにより検査が開始される。検査する際には電子デバイスDを動作環境での動作保証のため、検査中の電子デバイスDを温度制御する。検査は、複数の電子デバイスDに対し連続して行われる。
【0041】
このときの温度制御は、冷却部25を流れる冷却媒体の流量等を調整してステージ20のベース温度を調整した上で、加熱部24による加熱を制御することにより行われる。加熱部24による検査中の電子デバイスDの温度制御は、複数配置された温度センサ26の中で、検査中の電子デバイスDに最も近い温度センサ26の信号を用いて行われる。そして、検査中の電子デバイスDに対応する1または複数の加熱ゾーン32の加熱源31に第1温度制御器45aから制御された電圧が印加されることにより、検査中の電子デバイスを温度制御する。
【0042】
近時、半導体デバイスは高速化、高集積化が要求されており、それにともない検査の際の温度制御も高い精度が要求されている。この要求に対して、本実施形態では、複数の温度センサ26を配置し、検査する電子デバイスに最も近い温度センサ26の信号を用いて温度制御する。
【0043】
その次以降の電子デバイスに対しても最も近い温度センサ26の信号を用いて温度制御することにより高精度の温度制御を行うことができる。この場合、加熱部24の温度制御は1ゾーンであっても高精度の温度制御を実現することができる。
【0044】
しかし、電子デバイスDが高発熱デバイスである場合、温度制御に発熱が影響し、ヒータ印加電圧を減少させるため、加熱部24の温度制御が1ゾーンの場合、次のデバイス温度の低下が生じ、リカバリーの待ち時間によりスループットが低下することがある。
【0045】
この点について以下に説明する。
複数の電子デバイスDの高温での検査を
図8に示すようにシリアルに行う場合、次に検査する電子デバイスDは従前に検査した電子デバイスDの熱の影響により温度が上昇している。このため、次の電子デバイスDの温度制御の際の昇温量はわずかであり、加熱部24の温度制御が1ゾーンでも温度制御のための待ち時間はほとんど生じない。しかし、ランダムに検査する場合は、
図9に示すように、検査中の電子デバイスD
1と、次に検査する電子デバイスD
2とが離れている場合もある。このような場合、電子デバイスD
2は電子デバイスD
1の発熱の影響をほとんど受けないため、加熱部24の温度制御が1ゾーンでは、電子デバイスD
2の温度を制御する際の温度上昇幅が大きくなって、温度制御の時間が長くなってしまう。このため、検査のスループットが低下してしまう。
【0046】
そこで、本実施形態では、加熱部24を複数の加熱ゾーン32に分割し、検査中の電子デバイスDに対応する1または複数の加熱ゾーン32の出力を第1温度制御器45aで制御し、その次またはそれ以降に検査される電子デバイスDに対応する1または複数の加熱ゾーン32の出力を第2の制御器45bで制御する。より具体的には、第1温度制御器45aは、検査中の電子デバイスDに対応する(最も近い)温度センサ26の検出値に基づいて、対応する1または複数の加熱ゾーン32の加熱源31の出力を制御し、検査中の電子デバイスDの温度を制御する。第2温度制御器45bは、その次またはそれ以降に検査される電子デバイスDに対応する(最も近い)温度センサの検出値に基づいて、対応する1または複数の加熱ゾーン32の加熱源31の出力を制御し、その次またはそれ以降に検査される電子デバイスDの温度を制御する。
【0047】
例えば、上述の
図7に示すように、検査中の電子デバイスD
1に対応する加熱ゾーン32
13が温度センサ26
13の検出値に基づいて第1温度制御器45aにより温度制御され、次に検査される電子デバイスD
2に対応する加熱ゾーン32
4の検出値に基づいて第2温度制御器45bにより制御される。また、その次またはそれ以降に測定する電子デバイスDが同じ加熱ゾーンに対応する場合は、さらに次の電子デバイスDに対応する加熱ゾーン32の温度制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。これにより、次またはそれ以降に検査する電子デバイスが検査中の電子デバイスと離れていても、短時間で温度制御することができる。
【0048】
一方、加熱部を複数の加熱ゾーンに分割することは特許文献1、2にも記載されている。しかし、特許文献1、2では、複数の加熱ゾーンの温度をそれぞれに対応する温度制御器により制御しており、制御系が複雑となりコストも高くなる。
【0049】
これに対して、本実施形態では、検査中の電子デバイスの温度制御と、その次またはそれ以降の電子デバイスの温度制御を行えばよいので、加熱ゾーンごとに温度制御器を設ける必要がない。すなわち、本実施形態では、検査中の電子デバイスDの温度制御を行う第1温度制御器45aと、その次またはそれ以降に検査される第2の電子デバイスの温度制御を行う第2温度制御器45bを用い、加熱選択部43でこれらにより制御される加熱ゾーン32を選択する。このため、特許文献1、2の技術よりも制御系を簡易にすることができ、コストの上昇を抑えることができる。
【0050】
また、特許文献2は、加熱部として複数のLEDを有するユニットを複数配置したものを用い、これら複数のユニットを温度制御することにより、熱抵抗および熱容量を最小にして高速高精度での温度制御を実現するものであり、高価な高パワー密度の電子デバイスの検査に適している。これに対して、本実施形態では加熱部24の加熱源31として抵抗ヒータを用いた例を示しており、抵抗ヒータを用いて上述のような温度制御を行う構成を採ることにより、より安価な中程度のパワー密度の電子デバイスに対して、ランダムな検査に対する温度制御を短時間でかつ簡易に低コストで行うことができる。
【0051】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態では、検査中の電子デバイスに対応する1または複数の加熱ゾーンを制御する第1温度制御器と、その次またはそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の加熱ゾーンの温度を制御する第2温度制御器とを用いた例を示した。しかし、これに限らず、さらにそれ以降に検査される電子デバイスに対応する1または複数の加熱ゾーンの温度を制御する第3温度制御器を設けてもよい。これにより、より検査中の電子デバイスの次以降のより多くの電子デバイスの温度制御を行うことができ、制御時間をより短縮できるとともに温度制御の精度を高めることができる。第3温度制御器としてもPID制御器を好適に用いることができる。第3温度制御器は複数であってもよい。ただし、第1温度制御器、第2温度制御器、第3温度制御器の合計数は加熱ゾーンの数よりも少ないことが必要である。
【0053】
また、上記実施形態では、加熱部の加熱源として抵抗ヒータを用いた例を示したが、これに限らずLED等の他の加熱源であってもよい。さらに、基板はウエハに限らず、複数の電子デバイスが形成されているものであればよい。
【符号の説明】
【0054】
1;検査装置
2;検査部
3;ローダ
4;テスタ
10;基板載置機構
12;プローブカード
12a;プローブ
13;インターフェース
15;制御部
16;移動機構
20;ステージ
21;トッププレート
23;温度制御部
24;加熱部
25;冷却部
26;温度センサ
31;加熱源
32;加熱ゾーン
41;主制御部
42;センサ選択部
43;加熱選択部
45a;第1温度制御器
45b;第2温度制御器
50;電源
4611~461f、4621~462f;ソリッドステートリレー(スイッチング素子)
D、D1,D2;電子デバイス
W;ウエハ(基板)