(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046638
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/14 20060101AFI20230329BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20230329BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C23C16/14
C23C16/04
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155339
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】板谷 剛司
(72)【発明者】
【氏名】津田 栄之輔
(72)【発明者】
【氏名】石坂 忠大
(72)【発明者】
【氏名】武田 聡
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA12
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA01
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA05
4K030EA04
4K030FA01
4K030GA02
4K030GA12
4K030JA01
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
4M104BB04
4M104DD43
4M104DD44
4M104DD45
4M104DD46
(57)【要約】
【課題】基板の端部若しくは裏面にルテニウム膜が形成されることを抑制し、又は、基板の端部若しくは裏面がルテニウムで汚染されることを抑制する基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】ルテニウム含有ガスを供給して基板にルテニウム膜を成膜する方法であって、前記基板の端部及び裏面に吸着阻害ガスを供給して、前記ルテニウム含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害層を形成する工程と、前記基板をチャンバに搬送する工程と、前記チャンバに前記ルテニウム含有ガスを供給して、前記基板に前記ルテニウム膜を成膜する工程と、を有する、基板処理方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム含有ガスを供給して基板にルテニウム膜を成膜する方法であって、
前記基板の端部及び裏面に吸着阻害ガスを供給して、前記ルテニウム含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害層を形成する工程と、
前記基板をチャンバに搬送する工程と、
前記チャンバに前記ルテニウム含有ガスを供給して、前記基板に前記ルテニウム膜を成膜する工程と、を有する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記吸着阻害層を除去する工程を更に有する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記ルテニウム膜を成膜する工程は、
前記基板の端部及び裏面に前記ルテニウム含有ガスの分解を抑制する分解抑制ガスを供給する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記分解抑制ガスは、COガスである、
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記吸着阻害ガスは、ハロゲンを含むガスである、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記吸着阻害ガスは、Clを含むガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記吸着阻害ガスは、Cl2ガスである、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記ルテニウム含有ガスは、Ru3(CO)12ガスである、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
ルテニウム含有ガスを供給して基板にルテニウム膜を成膜する基板処理システムであって、
前記基板の端部及び裏面に吸着阻害ガスを供給して、前記ルテニウム含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害層を形成する第1のチャンバと、
前記基板の表面に前記ルテニウム含有ガスを供給して、前記ルテニウム膜を成膜する第2のチャンバと、
前記基板を搬送する搬送装置と、を備える、
基板処理システム。
【請求項10】
前記吸着阻害層を除去する第3のチャンバを更に備える、
請求項9に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板に成膜処理を施す基板処理装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、絶縁膜を含む凹部を有する基板に塩素含有ガスを供給して前記凹部の上部に下部よりも高密度で塩素を吸着させる工程と、前記塩素が吸着した前記凹部にRu含有前駆体を供給して前記凹部にルテニウム膜を成膜する工程と、を有する、ルテニウム膜の形成方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ウエハの表面に膜を成長させる成膜装置であって、チャンバと、チャンバ内に設置されており、ウエハが載置される載置部を備えるサセプタと、載置部に載置されるウエハを加熱するヒータと、加熱されることによって反応して固体を生成する原料ガスをチャンバ内に導入する原料ガス導入手段と、サセプタ内に形成されており、下流端が載置部の周囲のサセプタ外周部に開口している阻害ガス流路と、原料ガスの反応を阻害する阻害ガスを阻害ガス流路に供給する阻害ガス供給手段、を有していることを特徴とする成膜装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、加熱炉本体と、該加熱炉本体内に配設されている加熱手段と、該加熱炉本体内に収容されており、内部に被処理体を載置したウェハボートを収容する反応容器と、該反応容器内に原料ガスを供給するノズルと、該反応容器内の排ガスを排出するための排気ポートを少なくとも備えたバッチ式熱処理装置において、該反応容器中に成膜反応を阻害するガスを供給するための複数の孔を形成した反応阻害ガス供給ノズルを配設したことを特徴とするバッチ式熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-014613号公報
【特許文献2】特開2010-153483号公報
【特許文献3】特開2002-373861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、基板の表面にルテニウム膜を成膜する成膜装置において、基板の側面や基板の裏面に成膜ガスが流入して、基板の端部若しくは裏面にルテニウム膜が形成されるおそれ、及び、基板の端部若しくは裏面がルテニウムで汚染されるおそれがある。
【0008】
一の側面では、本開示は、基板の端部若しくは裏面にルテニウム膜が形成されることを抑制し、又は、基板の端部若しくは裏面がルテニウムで汚染されることを抑制する基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、ルテニウム含有ガスを供給して基板にルテニウム膜を成膜する方法であって、前記基板の端部及び裏面に吸着阻害ガスを供給して、前記ルテニウム含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害層を形成する工程と、前記基板をチャンバに搬送する工程と、前記チャンバに前記ルテニウム含有ガスを供給して、前記基板に前記ルテニウム膜を成膜する工程と、を有する、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一の側面によれば、基板の端部若しくは裏面にルテニウム膜が形成されることを抑制し、又は、基板の端部若しくは裏面がルテニウムで汚染されることを抑制する基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ルテニウム膜を成膜する基板処理装置の断面図の一例。
【
図3】吸着阻害層を形成する基板処理装置の断面図の一例。
【
図4】吸着阻害層を除去する基板処理装置の断面図の一例。
【
図5】基板処理システムにおける成膜処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
<基板処理装置>
本実施形態の基板処理システム200について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板処理システム200の構成図の一例である。
【0014】
基板処理システム200は、基板処理装置211~213と、真空搬送室220と、ロードロック室230と、大気搬送室240と、制御部250と、を備える。
【0015】
基板処理装置211~213は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にて半導体ウエハ等の基板W(
図2~4参照)に所定の処理を施す。基板処理装置211~213は、真空搬送室220に隣接して配置される。基板処理装置211~213と真空搬送室220とは、ゲートバルブ(図示せず)の開閉により連通する。なお、本実施形態の基板処理システム200において、基板処理装置211は、基板Wの裏面(後述するルテニウム膜を成膜する面とは反対の面)にルテニウムの吸着を阻害する吸着阻害層を形成する装置である。また、基板処理装置212は、基板Wの表面にルテニウム膜を成膜する装置である。また、基板処理装置213は、基板Wの裏面に形成された吸着阻害層を除去する装置である。なお、基板処理装置211~213については、
図2から
図4を用いて後述する。
【0016】
真空搬送室220は、ゲートバルブ(図示せず)を介して複数の室(基板処理装置211~213、ロードロック室230)と連結され、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、真空搬送室220の内部には、基板Wを搬送する搬送機構(図示せず)が設けられている。搬送機構は、ゲートバルブの開閉に応じて、真空搬送室220を介して、一の室(基板処理装置211~213、ロードロック室230)から他の室(基板処理装置211~213、ロードロック室230)に基板Wを搬送する。
【0017】
ロードロック室230は、真空搬送室220と大気搬送室240との間に設けられている。ロードロック室230は、基板Wを載置する載置部(図示せず)を有する。ロードロック室230は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。ロードロック室230と真空雰囲気の真空搬送室220とは、ゲートバルブ(図示せず)の開閉により連通する。ロードロック室230と大気雰囲気の大気搬送室240とは、ドアバルブ(図示せず)の開閉により連通する。
【0018】
大気搬送室240は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室240の壁面には、ロードポート(図示せず)が設けられている。ロードポートは、基板Wが収容されたキャリア(図示せず)又は空のキャリアが取り付けられる。キャリアとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。また、大気搬送室240の内部には、基板Wを搬送する搬送機構(図示せず)が設けられている。搬送機構は、ドアバルブの開閉に応じて、大気搬送室240を介して、ロードロック室230とロードポートに取り付けられたキャリアとの間で基板Wを搬送する。
【0019】
制御部250は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、基板処理システム200の動作を制御する。
【0020】
このように、本実施形態の基板処理システム200は、真空雰囲気を保ったまま、基板処理装置211で基板Wの裏面に吸着阻害層を形成し、基板処理装置212で基板Wの表面にルテニウム膜を成膜し、基板処理装置213で基板Wの吸着阻害層を除去することができる。
【0021】
<基板処理装置212>
次に、基板処理装置212の構造の一例について
図2を用いて説明する。
図2は、ルテニウム膜を成膜する基板処理装置212の断面図の一例である。
図2に示す基板処理装置212は、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置であって、例えば、基板Wの表面にルテニウム膜を成膜する装置である。基板処理装置213は、減圧状態の真空雰囲気の処理容器内で、例えば、ドデカカルボニル三ルテニウムRu
3(CO)
12等のルテニウム含有ガス等の成膜ガスを供給し、半導体ウェハ等の基板Wにルテニウムの成膜処理等の所定の処理を行う。
【0022】
本体容器101は、上側に開口を有する有底の容器である。支持部材102は、ガス吐出機構103を支持する。また、支持部材102が本体容器101の上側の開口を塞ぐことにより、本体容器101は密閉され、処理室101cを形成する。ガス供給部104は、支持部材102を貫通する供給管102aを介して、ガス吐出機構103に成膜ガスを供給する。ここで、成膜ガスは、ルテニウム含有ガス及びキャリアガスを含む。ルテニウム含有ガス(原料ガス)は、基板Wにルテニウムを成膜するためのプリカーサであり、例えば、Ru3(CO)12ガスである。キャリアガスは、Ru3(CO)12ガスを搬送するガスであり、例えば、COガスである。また、COガスは、成膜ガスにおけるRu3(CO)12の分圧を下げ、Ru3(CO)12の分解を抑制する分解抑制ガスである。ガス供給部104から供給された成膜ガスは、ガス吐出機構103から処理室101c内へ供給される。
【0023】
ステージ105は、例えば、窒化アルミニウムや石英などを材料として、扁平な円板状に形成され、基板Wを載置する部材である。ステージ105の内部には、基板Wを加熱するためのヒータ106が埋設されている。ヒータ106は、例えば、シート状の抵抗発熱体より構成されていて、不図示の電源部から電力が供給されて発熱し、ステージ105の載置面を加熱することにより、成膜に適した所定のプロセス温度まで基板Wを昇温する。例えば、ヒータ106は、ステージ105上に載置された基板Wを、例えば、100℃~300℃に加熱する。
【0024】
また、ステージ105は、ステージ105の下面中心部から下方に向けて伸び、本体容器101の底部を貫通する一端が昇降板109を介して昇降機構110に支持された支持部105aを有する。
【0025】
また、ステージ105の下部には、温調部材として、温調ジャケット108が設けられている。温調ジャケット108は、ステージ105と同程度のサイズの板部108aが上部に形成され、支持部105aよりも径の大きい軸部108bが下部に形成されている。また、温調ジャケット108は、中央の上下方向に板部108aおよび軸部108bを貫通する穴部108cが形成されている。
【0026】
温調ジャケット108は、穴部108cに支持部105aを収容しており、穴部108cで支持部105aを覆うと共にステージ105の裏面全面を覆うように配置されている。穴部108cは、支持部105aの径より大きいため、支持部105aと温調ジャケット108との間に隙間部(図示せず)が形成される。この隙間部(図示せず)は、例えば、1~5mm程度であればよい。
【0027】
温調ジャケット108は、板部108aの内部に冷媒流路108dが形成され、軸部108bの内部に2本の冷媒配管115a,115bが設けられている。冷媒流路108dは、一方の端部が一方の冷媒配管115aに接続され、他方の端部が他方の冷媒配管115bに接続されている。冷媒配管115a,115bは、冷媒ユニット115に接続されている。
【0028】
冷媒ユニット115は、例えばチラーユニットである。冷媒ユニット115は、冷媒の温度が制御可能とされており、所定の温度の冷媒を冷媒配管115aに供給する。冷媒流路108dには、冷媒ユニット115から冷媒配管115aを介して冷媒が供給される。冷媒流路108dに供給された冷媒は、冷媒配管115bを介して冷媒ユニット115に戻る。温調ジャケット108は、冷媒流路108dの中に冷媒、例えば、冷却水等を循環させることによって、温度調整が可能とされている。
【0029】
ステージ105と温調ジャケット108との間には、断熱部材として、断熱リング107が配置されている。断熱リング107は、例えば、SUS316、A5052、Ti(チタン)、セラミックなどによって、円盤状に形成されている。
【0030】
断熱リング107は、ステージ105との間に、温調ジャケット108の穴部108cから縁部まで連通する隙間が全ての周方向に形成されている。例えば、断熱リング107は、ステージ105と対向する上面に複数の突起部が設けられている。
【0031】
断熱リング107には、周方向に間隔を空けて同心円状に複数の突起部が複数、例えば2列形成されている。なお、突起部は、同心円状に少なくとも1列形成されていればよい。
【0032】
温調ジャケット108の軸部108bは、本体容器101の底部を貫通する。温調ジャケット108の下端部は、本体容器101の下方に配置された昇降板109を介して、昇降機構110に支持される。本体容器101の底部と昇降板109との間には、ベローズ111が設けられており、昇降板109の上下動によっても本体容器101内の気密性は保たれる。
【0033】
昇降機構110が昇降板109を昇降させることにより、ステージ105は、基板Wの処理が行われる処理位置(
図2参照)と、搬入出口101aを介して外部の搬送機構(図示せず)との間で基板Wの受け渡しが行われる受け渡し位置(図示せず)と、の間を昇降することができる。
【0034】
昇降ピン112は、外部の搬送機構(図示せず)との間で基板Wの受け渡しを行う際、基板Wの下面から支持して、ステージ105の載置面から基板Wを持ち上げる。昇降ピン112は、軸部と、軸部よりも拡径した頭部と、を有している。ステージ105及び温調ジャケット108の板部108aは、昇降ピン112の軸部が挿通する貫通穴が形成されている。また、ステージ105の載置面側に昇降ピン112の頭部を収納する溝部が形成されている。昇降ピン112の下方には、当接部材113が配置されている。
【0035】
ステージ105を基板Wの処理位置(
図2参照)まで移動させた状態において、昇降ピン112の頭部は溝部内に収納され、基板Wはステージ105の載置面に載置される。また、昇降ピン112の頭部が溝部に係止され、昇降ピン112の軸部はステージ105及び温調ジャケット108の板部108aを貫通して、昇降ピン112の軸部の下端は温調ジャケット108の板部108aから突き出ている。一方、ステージ105を基板Wの受け渡し位置(図示せず)まで移動させた状態において、昇降ピン112の下端が当接部材113と当接して、昇降ピン112の頭部がステージ105の載置面から突出する。これにより、昇降ピン112の頭部が基板Wの下面から支持して、ステージ105の載置面から基板Wを持ち上げる。
【0036】
環状部材114は、ステージ105の上方に配置されている。ステージ105を基板Wの処理位置(
図2参照)まで移動させた状態において、環状部材114は、基板Wの上面外周部と接触し、環状部材114の自重により基板Wをステージ105の載置面に押し付ける。一方、ステージ105を基板Wの受け渡し位置(図示せず)まで移動させた状態において、環状部材114は、搬入出口101aよりも上方で図示しない係止部によって係止されており、搬送機構(図示せず)による基板Wの受け渡しを阻害しないようになっている。
【0037】
伝熱ガス供給部116は、配管116aを介して、ステージ105に載置された基板Wの裏面とステージ105の載置面との間に、例えばHeガス等の伝熱ガスを供給する。
【0038】
パージガス供給部117は、配管117a、ステージ105の支持部105aと温調ジャケット108の穴部108cの間に形成された隙間部(図示せず)、ステージ105と断熱リング107の間に形成され径方向外側に向かって延びる流路(図示せず)、ステージ105の外周部に形成された上下方向の流路(図示せず)を介して、基板Wの側面及び裏面にパージガスを供給する。また、基板Wの側面に供給されたパージガスは、環状部材114の下面とステージ105の上面との間に供給される。これにより、環状部材114の下面とステージ105の上面との間の空間に成膜ガス(ルテニウム含有ガス)が流入することを抑制して、環状部材114の下面やステージ105の外周部の上面に成膜されることを防止する。ここで、パージガス供給部117は、パージガスとして、Ru3(CO)12の分解を抑制するガスを供給する。分解を抑制するガスは、例えばCOガスである。
【0039】
本体容器101の側壁には、基板Wを搬入出するための搬入出口101aと、搬入出口101aを開閉するゲートバルブ118と、が設けられている。
【0040】
本体容器101の下方の側壁には、排気管101bを介して、真空ポンプ等を含む排気部119が接続される。排気部119により本体容器101内が排気され、処理室101c内が所定の真空雰囲気(例えば、1.33Pa)に設定、維持される。
【0041】
制御部250は、ガス供給部104、ヒータ106、昇降機構110、冷媒ユニット115、伝熱ガス供給部116、パージガス供給部117、ゲートバルブ118、排気部119等を制御することにより、基板処理装置212の動作を制御する。
【0042】
基板処理装置212の動作の一例について説明する。なお、開始時において、処理室101c内は、排気部119により真空雰囲気となっている。また、ステージ105は受け渡し位置に移動している。
【0043】
制御部250は、ゲートバルブ118を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、昇降ピン112の上に基板Wが載置される。搬送機構(図示せず)が搬入出口101aから出ると、制御部250は、ゲートバルブ118を閉じる。
【0044】
制御部250は、昇降機構110を制御してステージ105を処理位置に移動させる。この際、ステージ105が上昇することにより、昇降ピン112の上に載置された基板Wがステージ105の載置面に載置される。また、環状部材114が基板Wの上面外周部と接触し、環状部材114の自重により基板Wをステージ105の載置面に押し付ける。これにより、処理室101cには、ステージ105より上側の上部空間101dと、ステージ105より下側の下部空間101eと、が形成される。
【0045】
処理位置において、制御部250は、ヒータ106を動作させるとともに、ガス供給部104を制御して、成膜ガスをガス吐出機構103から処理室101cの上部空間101d内へ供給させる。これにより、基板Wに成膜等の所定の処理が行われる。処理後のガスは、上部空間101dから環状部材114の上面側の流路を通過し、下部空間101eへと流れて、排気管101bを介して排気部119により排気される。
【0046】
この際、制御部250は、伝熱ガス供給部116を制御して、ステージ105に載置された基板Wの裏面とステージ105の載置面との間に伝熱ガスを供給する。また、制御部250は、パージガス供給部117を制御して、環状部材114の下面とステージ105の上面との間にパージガスを供給する。パージガスは、環状部材114の下面側の流路を通過し、下部空間101eへと流れて、排気管101bを介して排気部119により排気される。
【0047】
所定の処理が終了すると、制御部250は、昇降機構110を制御してステージ105を受け取り位置に移動させる。この際、ステージ105が下降することにより、環状部材114が図示しない係止部によって係止される。また、昇降ピン112の下端が当接部材113と当接することにより、昇降ピン112の頭部がステージ105の載置面から突出し、ステージ105の載置面から基板Wを持ち上げる。
【0048】
制御部250は、ゲートバルブ118を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、昇降ピン112の上に載置された基板Wが搬出される。搬送機構(図示せず)が搬入出口101aから出ると、制御部250は、ゲートバルブ118を閉じる。
【0049】
このように、
図2に示す基板処理装置212によれば、基板Wの表面にルテニウム膜を成膜することができる。例えば、基板Wの表面にトレンチ等の凹部が形成されており、基板処理装置212は、凹部にルテニウムを埋め込むことができる。
【0050】
<基板処理装置211>
次に、基板処理装置211の構造の一例について
図3を用いて説明する。
図3は、吸着阻害層を形成する基板処理装置211の断面図の一例である。
図3に示す基板処理装置211は、基板Wの裏面に吸着阻害ガスを供給し、基板Wの裏面に吸着阻害ガスを吸着させることで、基板Wの裏面に吸着阻害層を形成する装置である。また、基板処理装置211は、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害ガスを吸着させ、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害層を形成してもよい。
【0051】
基板処理装置211は、基板処理装置212(
図2参照)と比較して、ガス供給部104、伝熱ガス供給部116及びパージガス供給部117にかえて、パージガス供給部204と、吸着阻害ガス供給部216,217と、を有する。その他の構成は、基板処理装置212と同様であり、重複する説明を省略する。
【0052】
吸着阻害ガス供給部216は、配管116aを介して、ステージ105に載置された基板Wの裏面とステージ105の載置面との間に、吸着阻害ガスを供給する。吸着阻害ガス供給部217は、配管117a、ステージ105の支持部105aと温調ジャケット108の穴部108cの間に形成された隙間部(図示せず)、ステージ105と断熱リング107の間に形成され径方向外側に向かって延びる流路(図示せず)、ステージ105の外周部に形成された上下方向の流路(図示せず)を介して、基板Wの側面及び裏面に吸着阻害ガスを供給する。ここで、吸着阻害ガスは、例えばCl2ガスである。また、吸着阻害ガスは、Cl2ガスを例に説明するが、これに限られるものではない。吸着阻害ガスは、ハロゲンを含むガスであってもよい。また、Clを含むガスであってもよい。
【0053】
パージガス供給部204は、支持部材102を貫通する供給管102aを介して、ガス吐出機構103にパージガスを供給する。ここで、パージガスは、例えばN2ガスである。ガス供給部104から供給されたパージガスは、ガス吐出機構103から処理室101cの上部空間101dへ供給される。これにより、上部空間101dに吸着阻害ガスが流入することを防止して、基板Wの表面に吸着阻害層が形成されることを防止する。
【0054】
基板処理装置211の動作の一例について説明する。なお、開始時において、処理室101c内は、排気部119により真空雰囲気となっている。また、ステージ105は受け渡し位置に移動している。
【0055】
制御部250は、ゲートバルブ118を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、昇降ピン112の上に基板Wが載置される。搬送機構(図示せず)が搬入出口101aから出ると、制御部250は、ゲートバルブ118を閉じる。
【0056】
制御部250は、昇降機構110を制御してステージ105を処理位置に移動させる。この際、ステージ105が上昇することにより、昇降ピン112の上に載置された基板Wがステージ105の載置面に載置される。また、環状部材114が基板Wの上面外周部と接触し、環状部材114の自重により基板Wをステージ105の載置面に押し付ける。これにより、処理室101cには、ステージ105より上側の上部空間101dと、ステージ105より下側の下部空間101eと、が形成される。
【0057】
処理位置において、制御部250は、ヒータ106を動作させ、ステージ105上に載置された基板Wの温度を制御する。なお、基板Wの温度は、例えば20℃~250℃であってよい。また、制御部250は、吸着阻害ガス供給部216を制御して、ステージ105に載置された基板Wの裏面とステージ105の載置面との間に吸着阻害ガスを供給する。また、制御部250は、吸着阻害ガス供給部217を制御して、環状部材114の下面とステージ105の上面との間に吸着阻害ガスを供給する。これにより、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害ガスが吸着され、吸着阻害層が形成される。余剰の吸着阻害ガスは、環状部材114の下面側の流路を通過し、下部空間101eへと流れて、排気管101bを介して排気部119により排気される。
【0058】
また、制御部250は、パージガス供給部204を制御して、パージガスをガス吐出機構103から処理室101cの上部空間101d内へ供給させる。上部空間101dに供給されたパージガスは、上部空間101dに吸着阻害ガスが流入することを防止する。即ち、基板Wの表面に吸着阻害層が形成されることを防止する。パージガスは、上部空間101dから環状部材114の上面側の流路を通過し、下部空間101eへと流れて、排気管101bを介して排気部119により排気される。
【0059】
所定の処理が終了すると、制御部250は、昇降機構110を制御してステージ105を受け取り位置に移動させる。この際、ステージ105が下降することにより、環状部材114が図示しない係止部によって係止される。また、昇降ピン112の下端が当接部材113と当接することにより、昇降ピン112の頭部がステージ105の載置面から突出し、ステージ105の載置面から基板Wを持ち上げる。
【0060】
制御部250は、ゲートバルブ118を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、昇降ピン112の上に載置された基板Wが搬出される。搬送機構(図示せず)が搬入出口101aから出ると、制御部250は、ゲートバルブ118を閉じる。
【0061】
このように、
図3に示す基板処理装置211によれば、基板Wの裏面及び側面にルテニウムの吸着を阻害する吸着阻害層を形成することができる。
【0062】
<基板処理装置213>
次に、基板処理装置213の構造の一例について
図4を用いて説明する。
図4は、吸着阻害層を除去する基板処理装置213の断面図の一例である。
図4に示す基板処理装置213は、減圧状態の真空雰囲気の処理容器内でプラズマを生成して、基板Wの裏面及び側面に形成された吸着阻害層を除去する。
【0063】
図4に示されるように、基板処理装置213は、処理容器1と、載置台2と、シャワーヘッド3と、排気部4と、ガス供給機構5と、RF電力供給部7と、RF電力供給部8と、を有している。
【0064】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1は、基板Wを収容する。処理容器1の側壁には基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成され、搬入出口11はゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、絶縁体部材16を介して処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と絶縁体部材16との間はシールリング15で気密に封止されている。区画部材17は、載置台2(およびカバー部材22)が後述する処理位置へと上昇した際、処理容器1の内部を上下に区画する。
【0065】
載置台2は、処理容器1内で基板Wを水平に支持する。載置台2は、基板Wに対応した大きさの円板状に形成されており、支持部材23に支持されている。載置台2は、AlN等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で形成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することで、基板Wが所定の温度に制御される。載置台2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0066】
載置台2の底面には、載置台2を支持する支持部材23が設けられている。支持部材23は、載置台2の底面の中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。昇降機構24により載置台2が支持部材23を介して、
図1で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられており、処理容器1の底面と鍔部25の間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
【0067】
処理容器1の底面の近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の基板支持ピン27が設けられている。基板支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。基板支持ピン27は、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。基板支持ピン27を昇降させることにより、搬送機構(図示せず)と載置台2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0068】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、載置台2に対向するように設けられており、載置台2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、処理容器1の天壁14に固定された本体部31と、本体部31の下に接続されたシャワープレート32とを有している。本体部31とシャワープレート32との間にはガス拡散空間33が形成されており、ガス拡散空間33には処理容器1の天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成されている。環状突起部34の内側の平坦面には、ガス吐出孔35が形成されている。載置台2が処理位置に存在した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間39が形成される。
【0069】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構42とを有する。処理に際しては、処理容器1内のガスがスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気配管41を通って排気機構42により排気される。
【0070】
ガス供給機構5は、ガス供給ライン56を介して、ガス導入孔36から処理容器1内にガスを供給する。ガス供給機構5は、アルゴン(Ar)ガスを供給可能に構成されている。
【0071】
また、基板処理装置213は、容量結合プラズマ装置であって、載置台2が下部電極となり、シャワーヘッド3が上部電極となる。
【0072】
載置台2には、下部電極29が設けられている。下部電極29は、RF電力供給部7によってバイアス用の高周波電力が供給される。RF電力供給部7は、給電ライン71、整合器72及び高周波電源73を有する。給電ライン71は、整合器72を介して、下部電極29(載置台2)と高周波電源73とを接続する。整合器72は、高周波電源73の出力リアクタンスと負荷(下部電極)のリアクタンスを整合させるための回路を有する。高周波電源73は、例えば13.56MHzの高周波電力を供給する。
【0073】
上部電極となるシャワーヘッド3は、RF電力供給部8によって、プラズマ生成用のプラズマ源となる高周波電力が供給される。RF電力供給部8は、給電ライン81、整合器82及び高周波電源83を有する。給電ライン81は、整合器82を介して、上部電極(シャワーヘッド3)と高周波電源83とを接続する。整合器82は、高周波電源83の出力リアクタンスと負荷(下部電極)のリアクタンスを整合させるための回路を有する。高周波電源83は、例えば60.0MHzの高周波電力を供給する。
【0074】
基板処理装置213の動作の一例について説明する。なお、開始時において、処理容器1内は、排気機構42により真空雰囲気となっている。また、載置台2は受け渡し位置に移動している。
【0075】
制御部250は、ゲートバルブ12を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、基板支持ピン27の上に基板Wが載置される。この際、搬送機構は、基板Wの裏面側(吸着阻害層が形成されている面)を上にして基板Wを載置する。搬送機構(図示せず)が搬入出口11から出ると、制御部250は、ゲートバルブ12を閉じる。
【0076】
制御部250は、昇降機構28を制御して基板Wを載置台2に載置する。また、制御部250は、昇降機構24を制御して載置台2を処理位置に移動させる。これにより、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成される。
【0077】
処理位置において、制御部250は、ヒータ21を動作させ、載置台2上に載置された基板Wの温度を制御する。なお、基板Wの温度は、例えば20℃~250℃であってよい。また、制御部250は、ガス供給機構5を制御して、シャワープレート32のガス吐出孔35から処理空間38にアルゴンガスを供給する。また、制御部250は、RF電力供給部7及びRF電力供給部8を制御して、処理空間38にアルゴンプラズマを生成する。これにより、基板Wの裏面及び側面に形成された吸着阻害層を除去する。また、処理空間38のガスは、環状隙間39、スリット13a、排気口13b、排気配管41を介して、排気機構42により排気される。
【0078】
所定の処理が終了すると、制御部250は、昇降機構24を制御して載置台2を受け取り位置に移動させる。また、制御部250は、昇降機構28を制御して基板Wを基板支持ピン27で支持する。
【0079】
制御部250は、ゲートバルブ12を開ける。ここで、外部の搬送機構(図示せず)により、基板支持ピン27の上に載置された基板Wが搬出される。搬送機構(図示せず)が搬入出口11から出ると、制御部250は、ゲートバルブ12を閉じる。
【0080】
このように、
図4に示す基板処理装置213によれば、基板Wの裏面及び側面に形成された吸着阻害層を除去することができる。
【0081】
<ルテニウム成膜処理の一例>
次に、基板処理システム200におけるルテニウム膜の成膜処理の一例について
図5を用いて説明する。
図5は、一実施形態に係る基板処理システム200における成膜処理の一例を示すフローチャートである。
【0082】
ステップS101において、基板Wを準備する。具体的には、基板Wを収容したキャリアをロードポートに取り付ける。
【0083】
ステップS102において、制御部250は、大気搬送室240の搬送機構、ロードロック室230、真空搬送室220の搬送機構を制御して、基板Wをキャリアから基板処理装置211に搬送する。
【0084】
ステップS103において、制御部250は、基板処理装置211(
図3参照)を制御して、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害層を形成する。即ち、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害ガスを供給し、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害ガスを吸着させ、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害層を形成する。
【0085】
ステップS104において、制御部250は、真空搬送室220の搬送機構を制御して、基板Wを基板処理装置211から基板処理装置212に搬送する。
【0086】
ステップS105において、制御部250は、基板処理装置212(
図2参照)を制御して、基板Wの表面(上面)にルテニウム膜を成膜する。即ち、基板Wの表面(上面)に成膜ガスを供給し、基板Wの表面(上面)にルテニウム含有ガス(Ru
3(CO)
12)が吸着し、吸着したルテニウム含有ガスが分解することにより、ルテニウム膜が成膜される。
【0087】
また、基板Wと環状部材114との隙間から、成膜ガス(ルテニウム含有ガス)が環状部材114の下面側の空間に侵入したとしても、基板Wの裏面及び側面に吸着阻害層が形成されていることにより、基板Wの裏面及び側面にルテニウム膜が成膜されることを防止することができる。また、基板Wの裏面及び側面がルテニウムで汚染されることを抑制することができる。
【0088】
また、パージガス供給部117から供給されるパージガスの流れによって、環状部材114の下面側の空間に侵入した成膜ガス(ルテニウム含有ガス)を押し出すことができる。
【0089】
また、パージガスとしてCOガスを用いることにより、Ru3(CO)12の分圧を下げ、Ru3(CO)12の分解を抑制し、ルテニウム膜の成膜を更に防止することができる。また、基板Wの端部及び裏面がルテニウムで汚染されることを抑制することができる。
【0090】
ステップS106において、制御部250は、真空搬送室220の搬送機構を制御して、基板Wを基板処理装置212から基板処理装置213に搬送する。ここで、真空搬送室220の搬送機構は、基板Wの裏面(吸着阻害層が形成されている面)を上にして、基板処理装置213に搬送する。
【0091】
ステップS107において、制御部250は、基板処理装置213(
図4参照)を制御して、基板Wの裏面及び側面から吸着阻害層を除去する。即ち、Arプラズマによって、基板Wの裏面及び側面に形成された吸着阻害層を除去する。
【0092】
ステップS108において、制御部250は、真空搬送室220の搬送機構、ロードロック室230、大気搬送室240の搬送機構を制御して、基板Wを基板処理装置213からキャリアに搬送して、基板Wをキャリア収容する。ここで、真空搬送室220の搬送機構は、基板Wの表面(ルテニウム膜が成膜されている面)を上にして搬送する。
【0093】
このように、
図5に示す基板処理システム200におけるルテニウム膜の成膜処理によれば、基板Wの表面にルテニウム膜を成膜することができる。また、基板Wの端部及び裏面がルテニウムで汚染されることを抑制することができる。
【0094】
〔評価試験〕
ここで、本開示に関連して行われた評価試験について説明する。
図6は、ルテニウムの成膜を説明するグラフの一例である。横軸は、ルテニウム膜の成膜時間(単位:秒)を示す。即ち、成膜ガスとしてのRu
3(CO)
12ガスを処理室101c内に供給する時間を示す。縦軸は、基板Wに成膜されたルテニウム膜の膜厚(単位:Å)を示す。また、表面がSiOxにより形成される基板Wに対してルテニウム膜を成膜した際の結果を白抜き丸印で示す。また、表面がSiOxにより形成される基板Wに対してCl
2ガスにさらして吸着阻害層を形成した後に、ルテニウム膜を成膜した際の結果を黒塗り丸印で示す。
【0095】
図6に示すように、基板WにCl
2ガスを供給して、基板Wに吸着阻害層を形成することにより、ルテニウム膜の吸着を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0096】
W 基板
101 本体容器(チャンバ)
105 ステージ
104 ガス供給部
116 伝熱ガス供給部
117 パージガス供給部
204 パージガス供給部
216,217 吸着阻害ガス供給部
200 基板処理システム
211 基板処理装置(第1のチャンバ)
212 基板処理装置(第2のチャンバ)
213 基板処理装置(第3のチャンバ)
220 真空搬送室