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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046803
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155597
(22)【出願日】2021-09-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業 Self-Transformatics~人とAIロボットの創造的共進化~、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】原田 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】マルケス マリニョ ムリロ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CS02
3C707CT02
3C707ET08
3C707JS02
3C707KS03
3C707KS16
3C707KS33
3C707KT01
3C707KX10
3C707LV02
3C707MT04
3C707MT08
(57)【要約】
【課題】被処理物に対して所望の処理を正確かつ確実に行うことが可能なロボットシステムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、作業台と、複数のロボットと、移動機構とを有する。移動機構は、複数のロボットの移動をガイドするガイド部を備え、複数のロボットをガイド部によりガイドしつつ、作業台に対して接近および離間させるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
作業台と、複数のロボットと、移動機構とを有し、
前記移動機構は、前記複数のロボットの移動をガイドするガイド部を備え、前記複数のロボットを前記ガイド部によりガイドしつつ、前記作業台に対して接近および離間させるように構成される、ロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットシステムにおいて、
前記ガイド部は、前記作業台を中心として、前記作業台を囲むように配置される、ロボットシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロボットシステムにおいて、
前記ガイド部は、ほぼ円形状に形成され、これによって前記作業台を中心として、前記作業台を囲むように配置される、ロボットシステム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
前記移動機構は、前記ガイド部の一部としてのガイドレールと、各前記ロボットを載置し、前記ガイドレールの長手方向とほぼ直交する方向に移動可能な載置台とを含む、ロボットシステム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
さらに、撮像部を有する、ロボットシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットシステムにおいて、
前記撮像部は、前記作業台を撮像する、ロボットシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のロボットシステムにおいて、
前記撮像部は、前記作業台に配置される、ロボットシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットシステムにおいて、
前記撮像部は、顕微鏡に設けられ、前記顕微鏡を介して拡大された対象を撮像する、ロボットシステム。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
前記複数のロボットは、種類の異なるロボットを含む、ロボットシステム。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
前記複数のロボットは、遠隔操作と自動制御とを切替可能に構成される、ロボットシステム。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
さらに、少なくとも前記作業台、前記複数のロボットおよび前記移動機構を収容する収容空間を備える筐体を有する、ロボットシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のロボットシステムにおいて、
前記筐体は、前記収容空間を気密的に封止可能である、ロボットシステム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のロボットシステムにおいて、
さらに、前記収容空間を換気する換気機構を有する、ロボットシステム。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
前記移動機構は、各前記ロボットが所定の作業を継続している途中でも、各前記ロボットを前記作業台に対して接近および離間させるように構成される、ロボットシステム。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
さらに、制御部を有し、
前記制御部は、前記複数のロボットが互いに干渉しないように、前記複数のロボットを制御するように構成される、ロボットシステム。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
当該ロボットシステムは、生物実験に使用される、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
理化学実験においては、例えば、小動物や植物、あるいはそれらの細胞や組織等の被処理物に対して、切開、切除、注入等の処理が行われる。これらの処理を、より正確かつ精密に行う場合、連続して行う場合、人体にとって有害な環境で行う場合等には、人工知能が搭載されたロボットを使用して行い得るようになることが期待されている。
【0003】
従来の理化学実験を支援するロボットは、ラボオートメーションを対象としており、予めプログラムされた処理を、同じ種類の被処理物に対して行うことを目的としている。このため、床面や壁面に固定されたアームロボットが使用されることが一般的である(特許文献1参照)。しかしながら、かかるアームロボットでは、被処理物の種類が異なる場合や、異なる種類の処理を行いたい場合等には、対応することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-030095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、被処理物に対して所望の処理を正確かつ確実に行うことが可能なロボットシステムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、作業台と、複数のロボットと、移動機構とを有する。移動機構は、複数のロボットの移動をガイドするガイド部を備え、複数のロボットをガイド部によりガイドしつつ、作業台に対して接近および離間させるように構成される。
【0007】
本発明の一態様によれば、被処理物に対して所望の処理を正確かつ確実に行うことができるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すロボットシステムの主要部分の構成を示す斜視図である。
図3】大型のアームロボットの構成を示す斜視図である。
図4】小型のアームロボットの構成を示す斜視図である。
図5】移動機構の構成を示す平面図である。
図6】径方向移動機構の構成を示す斜視図である。
図7】周方向移動機構の構成を示す斜視図である。
図8】ロボットシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバーからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」または「手段」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、電圧・電流といった信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
まず、ロボットシステム1の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すロボットシステムの主要部分の構成を示す斜視図である。
図1および図2に示されるように、ロボットシステム1は、作業台2と、複数のロボット3と、移動機構4と、少なくとも作業台2、複数のロボット3および移動機構4を収容する収容空間51を備える筐体5とを有する。
かかるロボットシステム1では、作業台2に被処理物(対象)を載置し、複数のロボット3により被処理物の処理を行うことができる。
【0014】
2.筐体
筐体5は、4つの開口部52と、各開口部52を開閉可能なスライド扉53とを備えている。例えば、筐体5は、光不透過性の材料で構成することにより、被処理物の処理を暗所で行うことができる。また、各スライド扉53により各開口部52を塞いだ状態で、各スライド扉53と密着する封止材(不図示)を設け、収容空間51を気密的に封止可能なように筐体5を構成してもよい。この場合、被処理物としてウィルス、細菌、放射線を放出するサンプル等を取り扱うことができる。また、この場合、人体にとって有害な環境で行う被処理物の処理にロボットシステム1を適用することができる。
【0015】
また、ロボットシステム1は、図1に示されるように、さらに、収容空間51を換気する換気機構6を有する。これにより、収容空間51を気密的に封止した状態で換気すれば、収容空間51内の高いクリーンレベルを維持することができる。このため、被処理物として免疫不全動物を処理(処置)する場合でも、この免疫不全動物の細菌等による感染を好適に防止することができる。また、微細なホコリの存在も回避したい半導体素子の加工等に、ロボットシステム1を適用することができる。一方で、この場合、細菌感染させた動物等のバイオハザード対象物や有毒・有害な物質を被処理物として取り扱うこともできる。
換気機構6は、例えば、ファン、ポンプ等の吸引手段と、HEPAフィルタ等のフィルタ部材とで構成することができる。
【0016】
3.作業台
作業台2は、図2に示されるように、柱状の本体部21と、被処理物を載置する載置部22と、載置部22の上方に配置された顕微鏡23とを備える。顕微鏡23は、撮像部24を備える。すなわち、撮像部は、作業台2に配置される。この場合、撮像部24は、顕微鏡23を介して拡大された被処理物を撮像する。かかるロボットシステム1は、例えば、組織や細胞等の微小な被処理物を処理するのに適する。
撮像部24としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)カメラ等が挙げられる。
【0017】
なお、他の撮像部を筐体5の天井の下面に固定し、作業台2を撮像するように構成してもよい。この場合、例えば、操作者が被処理物の処理に集中した場合でも、他の撮像部で撮像された画像データを使用して、複数のロボット3が互いに干渉するのを防止するように制御することができる。また、この場合、撮像部24を備える顕微鏡23を省略してもよい。
また、作業台2は、筐体5に対して固定されてもよいし、筐体5に対して移動可能となっていてもよい。後者の場合、複数のロボット3と作業台2との相対的な位置関係をより精密に調整することができる。作業第2を筐体5に対して移動可能に構成する場合、本体部21の下部にホイール等の移動機構を設けるようにすればよい。
【0018】
4.ロボット
複数のロボット3として、図2に示されるように、2つの大型のアームロボット31と、2つの小型のアームロボット32とが配置されている。2つのアームロボット31は、同種の機能を有するロボットであり、2つのアームロボット32も、同種の機能を有するロボットである。したがって、本実施形態では、複数のロボット3として、2種類の異なるアームロボットが、2つずつ合計4つ配置されている。
各アームロボット31,32は、移動機構4の載置板44に載置され、例えば、ボルト等により固定されている。
【0019】
図3は、大型のアームロボットの構成を示す斜視図である。図4は、小型のアームロボットの構成を示す斜視図である。
図3に示されるように、アームロボット31は、載置板44側から順に、基部311、肩部312、上腕部313、第1前腕部314、第2前腕部315、手首部316および指部317を有し、これらが互いに関節部を介して連結されている。各関節部には、関節部を回転させるアクチュエータおよび力覚センサ等が設けられている。
【0020】
基部311は、載置板44に固定されている。
肩部312は、鉛直方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
上腕部313および第1前腕部314は、それぞれ水平方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
第2前腕部315は、第1前腕部314の長手方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
【0021】
また、手首部316は、水平方向に沿った回転軸を中心として回転可能、かつ、第2前腕部315の長手方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
手首部316の先端部には、指部317が開閉可能に設けられている。指部317は、閉状態でツールTを把持することができる。
各部312~316が互いに協調して回転することで、アームロボット31は、他のアームロボットとの干渉を回避しつつ、被処理物の処理を行うことができる。
【0022】
図4に示されるように、アームロボット32は、載置板44側から順に、基部321、肩部322、上腕部323、第1前腕部324、第2前腕部325、手首部326および指部327を有し、これらが互いに関節部を介して連結されている。各関節部には、関節部を回転させるアクチュエータおよび力覚センサ等が設けられている。
【0023】
基部321は、載置板44に固定されている。
肩部322は、鉛直方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
上腕部323、第1前腕部324および第2前腕部325は、それぞれ水平方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
【0024】
また、手首部326は、第2前腕部325の長手方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。
手首部326の先端部には、指部327が開閉可能に設けられている。指部327は、閉状態でツールTを把持することができる。
各部322~326が互いに協調して回転することで、アームロボット32は、他のアームロボットとの干渉を回避しつつ、被処理物の処理を行うことができる。
【0025】
各アームロボット31,32の各関節部に設けられたアクチュエータは、減速機を備えるサーボモータ等により構成されている。そして、サーボモータの回転角度は、エンコーダからの電気信号として、後述する制御部7に入力される。また、各関節部に設けられた力覚センサからの電気信号も制御部7に入力され、各アームロボット31,32の関節部の駆動制御にフィードバックされる。
なお、各アームロボット31,32は、方向が異なる回転軸を有する3つ以上の関節部を有していればよく、その数は、特に限定されない。
【0026】
ここで、ツールTとしては、例えば、メス、焼灼具、ピンセット、ニードル、ピペット、吸気ノズル、送気ノズル、吸液ノズル、送液ノズル、開創器、クリップ、はさみ、縫合針、ホチキス、チューブ、内視鏡、ドリル、綿棒等が挙げられる。なお、使用するツールTは、被処理物に対する処理の内容に応じて、適宜選択される。
【0027】
5.移動機構
図5は、移動機構の構成を示す平面図である。図6は、径方向移動機構の構成を示す斜視図である。図7は、周方向移動機構の構成を示す斜視図である。
移動機構4は、4つのアームロボット31,32を、それぞれ作業台2に対して接近および離間させるように構成される。この移動機構4は、図5に示されるように、周方向移動機構41と、径方向移動機構42とを有する。
【0028】
周方向移動機構41は、ほぼ円形状に形成された周方向ガイド部と、周方向駆動部とを備える。ここで、ほぼ円形状とは、真円形状の他、若干変形した円形(例えば、楕円形等)を含む概念である。
図5図7に示されるように、周方向ガイド部は、円環状の第1ガイドレール412aと、第1ガイドレール412aにガイドされる第1スライダ412bと、第1ガイドレール412aの内側に配置された円環状の第2ガイドレール413aと、第2ガイドレール413aにガイドされる第2スライダ413bとを有する。したがって、第2ガイドレール413aの径は、第1ガイドレール412aの径より小さい。
【0029】
周方向駆動部は、周方向ガイド部を囲むように形成された円環状のレールギア(外歯車)411aと、レールギア411aに歯合するギア411bと、ギア411bを回転駆動するモータM1とを有する。
第1スライダ412bおよび第2スライダ413b上には、載置板43が固定され、この載置板43上に、モータM1が固定されている。
したがって、モータM1の駆動により、ギア411bが回転することにより、載置板43は、レールギア411aに沿って周方向に移動する。このとき、載置板43に固定された第1スライダ412bおよび第2スライダ413bも、それぞれ第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413aにガイドされつつ移動する。
【0030】
また、載置板43上には、径方向移動機構42が載置、固定されている。
径方向移動機構42は、ほぼ直線状に形成された径方向ガイド部と、径方向駆動部とを備える。ここで、ほぼ直線状とは、全体形状が径方向に沿っている状態を言い、その途中で若干湾曲していてもよい状態を含む概念である。
図6に示されるように、径方向ガイド部は、対向配置された一対の直線状のガイドレール422aと、各ガイドレール422aにガイドされるスライダ422bとを有する。各スライダ422bの対向面には、歯(不図示)が形成されている。
2つのスライダ422b上には、載置板(載置台)44が固定されている。
【0031】
径方向駆動部は、一対のガイドレール422a同士の間に配置され、各スライダ422bの歯と歯合するポールネジ421と、ポールネジ421を回転駆動するモータM2とを有する。
モータM2の駆動により、ポールネジ421が回転することにより、各スライダ422bが径方向に沿って移動する。このとき、各スライダ422bに固定された載置板44も径方向に沿って移動する。すなわち、載置板44は、第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413aの長手方向(周方向)とほぼ直交する方向(径方向)に移動可能である。
【0032】
そして、円環状の第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413aの中心部付近には、作業台2が配置されている。換言すれば、ガイド部の一部としての第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413aは、作業台2を中心として、この作業台2を囲むように配置されている。
そして、移動機構4の載置板44のそれぞれにアームロボット31,32が載置、固定されている。
【0033】
以上のような構成により、移動機構4は、4つのアームロボット31,32の移動をガイドする第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413a(ガイド部)を備え、4つのアームロボット31,32を第1ガイドレール412aおよび第2ガイドレール413aによりガイドしつつ、その中心部に配置された作業台2に対して接近および離間させるように構成される。
【0034】
かかる構成によれば、作業台2の周方向の任意の箇所から、作業台2に載置された被処理物に対して、アームロボット31,32が把持するツールTにより処理を行うことができる。また、移動機構4によるアームロボット31,32の移動は、ガイド部のガイドによりなされるため、アームロボット31,32と作業台2(被処理物)との位置関係を正確に調整し易い。特に、複数のアームロボット31,32により、1つの被処理物を同時に処理することができるため、被処理物に対する複雑な処理が可能である。
【0035】
6.電気的構成
次に、ロボットシステム1の電気的構成について説明する。図8は、ロボットシステムのブロック図である。
ロボットシステム1は、さらに、制御部7を有する。制御部7は、ロボットシステム1の動作を制御するように構成される。制御部7は、例えば、筐体5内の収容空間51より下方に空間に配置される。
図8に示されるように、制御部7には、撮像部24、アームロボット31、アームロボット32、周方向移動機構41、径方向移動機構42および換気機構6のそれぞれが電気的に接続されている。
【0036】
また、制御部7には、有線または無線により、操作部8が接続されている。本実施形態では、制御部7は、筐体5から離間した位置に配置されている。かかる構成により、複数のロボット3は、遠隔操作と自動制御とを切替可能に構成される。したがって、細菌感染させた動物等のバイオハザード対象物や有毒・有害な物質を被処理物として取り扱う場合には、人体に対する安全性が高い。
操作部8は、例えば、モニタ等の表示装置と、キーボード、マウス等の操作装置とで構成することができる他、例えば、操作者が入力した動作を縮小してロボット3に実現させ得るコントローラ等で構成することができる。
【0037】
制御部7は、演算装置71と、記憶装置72とを内蔵する。
演算装置71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等で構成される。演算装置71は、記憶装置72に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、ロボットシステム1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶装置72に記憶されているソフトウェアによる情報処理が演算装置71によって具体的に実現される。
なお、演算装置71は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の演算装置71を設けるようにしてもよい。また、それらの組合せであってもよい。特に、移動機構4によるロボット3の移動に関する演算装置71と別異に、ロボット3の動作制御のための演算装置71が備えられるとよい。
【0038】
記憶装置72は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、演算装置71によって実行されるロボットシステム1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施することができる。
また、記憶装置72は、演算装置71によって実行されるロボットシステム1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0039】
5.結言
以上のように、本実施形態によれば、ロボットシステム1において、制御部7は、複数のロボット3が互いに干渉しないように、複数のロボット3を制御するように構成することができる。これにより、複数のロボット3を使用しつつも、1つの被処理物に対する処理を円滑かつ正確に行うことができる。
また、移動機構4は、制御部7の制御により、各ロボット3が所定の作業を継続している途中でも、各ロボット3を作業台2に対して接近および離間させるように構成することができる。これにより、各ロボット3と作業台2との位置関係をより精密に制御することができる。例えば、小動物や生体組織等の処理中に姿勢や形状が変化する被処理物であっても、各ロボット3が把持するツールTの先端位置を被処理物の目的とする位置に対応させて移動させることができる。
【0040】
このようなことから、当該ロボットシステム1は、理化学実験、特に、動物、植物、それらの組織または細胞を取り扱う各種生物実験に好適に使用される。
なお、生物実験にロボットシステム1を使用する場合、顕微鏡23の下端面と載置部22との離間距離は、通常、5~10cm程度に設定される。かかる極めて狹い空間における被処理物の処理においても、ロボットシステム1によれば、その処理を正確かつ確実に行うことができる。
【0041】
なお、周方向ガイド部は、ほぼ円形状に限らず、ほぼ矩形状(例えば、正方形状、長方形状、菱形形状等)、異形状(例えば、星形形状、扇形形状等)に形成されてもよい。
また、必要に応じて、径方向ガイド部は、省略することができる。
また、径方向駆動部は、レールギア411aとギア411bとの組み合わせに代えて、ホイール等で構成することもできる。
【0042】
また、ガイド部は、作業台2を挟んで配置される一対の直線状のガイドレールと、各ガイドレールにガイドされるスライダとで構成されてもよく、作業台2と近接して配置された1本の直線状または曲線状のガイドレールと、このガイドレールにガイドされるスライダとで構成されてもよい。
【0043】
また、ロボット3の設置数も4つに限定されず、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
また、複数のロボット3は、被処理物に対する処理の内容に応じて、全ての種類が異なってもよく、全ての種類が同一であってもよい。
さらに、複数のロボット3のうちの1つを人が遠隔操作し、残りを自動制御するように構成することができる。
【0044】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記ロボットシステムにおいて、前記ガイド部は、前記作業台を中心として、前記作業台を囲むように配置される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記ガイド部は、ほぼ円形状に形成され、これによって前記作業台を中心として、前記作業台を囲むように配置される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記移動機構は、前記ガイド部の一部としてのガイドレールと、各前記ロボットを載置し、前記ガイドレールの長手方向とほぼ直交する方向に移動可能な載置台とを含む、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、さらに、撮像部を有する、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記撮像部は、前記作業台を撮像する、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記撮像部は、前記作業台に配置される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記撮像部は、顕微鏡に設けられ、前記顕微鏡を介して拡大された対象を撮像する、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記複数のロボットは、種類の異なるロボットを含む、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記複数のロボットは、遠隔操作と自動制御とを切替可能に構成される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、さらに、少なくとも前記作業台、前記複数のロボットおよび前記移動機構を収容する収容空間を備える筐体を有する、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記筐体は、前記収容空間を気密的に封止可能である、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、さらに、前記収容空間を換気する換気機構を有する、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、前記移動機構は、各前記ロボットが所定の作業を継続している途中でも、各前記ロボットを前記作業台に対して接近および離間させるように構成される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、さらに、制御部を有し、前記制御部は、前記複数のロボットが互いに干渉しないように、前記複数のロボットを制御するように構成される、ロボットシステム。
前記ロボットシステムにおいて、当該ロボットシステムは、生物実験に使用される、ロボットシステム。
もちろん、この限りではない。
【0045】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 :ロボットシステム
2 :作業台
21 :本体部
22 :載置部
23 :顕微鏡
24 :撮像部
3 :ロボット
31 :アームロボット
311 :基部
312 :肩部
313 :上腕部
314 :第1前腕部
315 :第2前腕部
316 :手首部
317 :指部
32 :アームロボット
321 :基部
322 :肩部
323 :上腕部
324 :第1前腕部
325 :第2前腕部
326 :手首部
327 :指部
4 :移動機構
41 :周方向移動機構
411a :レールギア
411b :ギア
412a :第1ガイドレール
412b :第1スライダ
413a :第2ガイドレール
413b :第2スライダ
42 :径方向移動機構
421 :ポールネジ
422a :ガイドレール
422b :スライダ
43 :載置板
44 :載置板
5 :筐体
51 :収容空間
52 :開口部
53 :スライド扉
6 :換気機構
7 :制御部
71 :演算装置
72 :記憶装置
8 :操作部
M1 :モータ
M2 :モータ
T :ツール
図1
図2
図3
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図7
図8