IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

特開2023-46897上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置
<>
  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図1
  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図2
  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図3
  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図4
  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046897
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155738
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】李 超
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC08
2G084CC12
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD41
2G084FF15
(57)【要約】
【課題】上部電極アセンブリを構成する二つの導電性の部材の間での導通の確実性を高める技術を提供する。
【解決手段】
開示されるプラズマ処理装置の上部電極アセンブリは、導電性を有する第1及び第2の部材を含む。第1の部材は、周縁部を有する。第2の部材は、第1の部材上に設けられている。第3の部材が、第2の部材と共に第1の部材の周縁部を挟持する。第2の部材に導通する固定具が、第3の部材を第2の部材に固定する。導電部材が、第1の部材と第2の部材を互いに導通させる。導電部材は、第1の部分及び第2の部分を含む。第1の部分は、固定具と第3の部材との間で挟持され、固定具を介して第2の部材に導通する。第2の部分は、第3の部材と第1の部材の周縁部との間で挟持される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の上部電極アセンブリであって、
導電性材料から形成されており、下面及び側面を含む周縁部を有する第1の部材と、
導電性材料から形成され、前記第1の部材上に設けられた第2の部材と、
前記下面に沿って設けられた底部と、前記周縁部の外側で前記側面に沿って設けられた側部とを有する第3の部材であり、該第3の部材の該底部と前記第2の部材との間で前記第1の部材の前記周縁部を挟持する、該第3の部材と、
前記第2の部材に導通しており、前記第3の部材を前記第2の部材に固定する固定具と、
前記第1の部材と前記第2の部材を互いに導通させる導電部材と、
を備え、
前記導電部材は、前記固定具と前記第3の部材との間で挟持され前記固定具を介して前記第2の部材に導通する第1の部分と、前記第3の部材と前記周縁部との間で挟持される第2の部分と、を含む、
上部電極アセンブリ。
【請求項2】
前記固定具は、ねじであり、
前記第3の部材は、前記ねじの頭部と前記第2の部材との間で挟持され、
前記導電部材の前記第1の部分は、前記ねじの前記頭部と前記第3の部材との間で挟持される、
請求項1に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項3】
前記導電部材の前記第2の部分は、前記周縁部の前記下面と前記第3の部材の前記底部との間で挟持される、請求項1又は2に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の部材の前記周縁部は、周方向に延びており、
前記第3の部材の前記底部は、開口を提供するように前記周方向に延びており、
前記導電部材の前記第2の部分は、前記周方向に細長い形状を有する、
請求項3に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項5】
前記導電部材の前記第2の部分は、前記周縁部の前記側面と前記第3の部材の前記側部との間で挟持される少なくとも一つの板ばねを含む、請求項1又は2に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第1の部材の前記周縁部は、周方向に延びており、
前記第3の部材の前記側部は、前記周方向に延びており、
前記導電部材の前記第2の部分は、前記少なくとも一つの板ばねとして、櫛歯を形成するように前記周方向に沿って配列された複数の板ばねを含む、
請求項5に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の部材は、前記プラズマ処理装置のチャンバ内の空間を上方から画成する天板であり、
前記第2の部材は、前記第1の部材を支持しており、その内部において冷媒用の流路を提供している、
請求項1~4の何れか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項8】
前記第3の部材は、セラミックから形成されている、請求項1~7の何れか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項9】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
請求項1~8の何れか一項に記載の上部電極アセンブリであり、前記基板支持部の上方に設けられた該上部電極アセンブリと、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ生成部は、高周波電源を含み、
前記高周波電源は、前記上部電極アセンブリ又は前記基板支持部内の高周波電極に電気的に接続されている、
請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容量結合型のプラズマ処理装置がプラズマ処理装置の一種として用いられている。下記の特許文献1は、容量結合型のプラズマ処理装置を開示している。容量結合型のプラズマ処理装置は、上部電極を備える。上部電極は、シャワープレートと上部電極本体を含んでいる。シャワープレートと上部電極本体との間には、金属スパイラルチューブが設けられている。金属スパイラルチューブにより、シャワープレートと上部電極本体との間の導通が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-356509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上部電極アセンブリを構成する二つの導電性の部材の間での導通の確実性を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置の上部電極アセンブリが提供される。上部電極アセンブリは、第1の部材、第2の部材、第3の部材、固定具、及び導電部材を備える。第1の部材及び第2の部材の各々は、導電性材料から形成されている。第1の部材は、下面及び側面を含む周縁部を有する。第2の部材は、第1の部材上に設けられている。第3の部材は、底部及び側部を含む。底部は、第1の部材の周縁部の下面に沿って設けられている。側部は、第1の部材の周縁部の外側で周縁部の側面に沿って設けられている。第3の部材は、該第3の部材の底部と第2の部材との間で第1の部材の周縁部を挟持する。固定具は、第2の部材に導通しており、第3の部材を第2の部材に固定する。導電部材は、第1の部材と第2の部材を互いに導通させる。導電部材は、第1の部分及び第2の部分を含む。第1の部分は、固定具と第3の部材との間で挟持され、固定具を介して第2の部材に導通する。第2の部分は、第3の部材と第1の部材の周縁部との間で挟持される。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、上部電極アセンブリを構成する二つの導電性の部材の間での導通の確実性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図2】一つの例示的実施形態に係る上部電極アセンブリの部分拡大断面図である。
図3図2に示す上部電極アセンブリにおいて用いられ得る導電部材の例を示す図である。
図4】別の例示的実施形態に係る上部電極アセンブリの部分拡大断面図である。
図5図4に示す上部電極アセンブリにおいて用いられ得る導電部材の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置の上部電極アセンブリが提供される。上部電極アセンブリは、第1の部材、第2の部材、第3の部材、固定具、及び導電部材を備える。第1の部材及び第2の部材の各々は、導電性材料から形成されている。第1の部材は、下面及び側面を含む周縁部を有する。第2の部材は、第1の部材上に設けられている。第3の部材は、底部及び側部を含む。底部は、第1の部材の周縁部の下面に沿って設けられている。側部は、第1の部材の周縁部の外側で周縁部の側面に沿って設けられている。第3の部材は、該第3の部材の底部と第2の部材との間で第1の部材の周縁部を挟持する。固定具は、第2の部材に導通しており、第3の部材を第2の部材に固定する。導電部材は、第1の部材と第2の部材を互いに導通させる。導電部材は、第1の部分及び第2の部分を含む。第1の部分は、固定具と第3の部材との間で挟持され、固定具を介して第2の部材に導通する。第2の部分は、第3の部材と第1の部材の周縁部との間で挟持される。
【0010】
上記実施形態では、固定具は第3の部材を第2の部材に固定している。したがって、固定具と第3の部材との位置関係は安定的に維持される。導電部材の第1の部分はかかる固定具と第3の部材との間に挟持されているので、導電部材と固定具との間の導通は安定的に維持される。また、固定具は第2の部材に導通しているので、導電部材と第2の部材との間の導通は安定的に維持される。また、導電部材の第2の部分は、第3の部材と第1の部材の周縁部との間で挟持されているので、導電部材と第1の部材との間の導通が安定的に維持される。故に、上記実施形態によれば、上部電極アセンブリを構成する二つの導電性の部材、即ち第1の部材と第2の部材との間での導通の確実性が高められる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、固定具は、ねじであってもよい。第3の部材は、ねじの頭部と第2の部材との間で挟持されていてもよい。導電部材の第1の部分は、ねじの頭部と第3の部材との間で挟持されていてもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態において、導電部材の第2の部分は、第1の部材の周縁部の下面と第3の部材の底部との間で挟持されていてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1の部材の周縁部は、周方向に延びており、第3の部材の底部は、開口を提供するように周方向に延びている。導電部材の第2の部分は、周方向に細長い形状を有していてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、導電部材の第2の部分は、第1の部材の周縁部の側面と第3の部材の側部との間で挟持される少なくとも一つの板ばねを含んでいてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第1の部材の周縁部は、周方向に延びており、第3の部材の側部は、周方向に延びている。導電部材の第2の部分は、少なくとも一つの板ばねとして、櫛歯を形成するように周方向に沿って配列された複数の板ばねを含んでいてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第1の部材は、プラズマ処理装置のチャンバ内の空間を上方から画成する天板であってもよい。第2の部材は、第1の部材を支持しており、その内部において冷媒用の流路を提供していてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第3の部材は、セラミックから形成されていてもよい。
【0018】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、種々の例示的実施形態のうち何れかの上部電極アセンブリ、及びプラズマ生成部を含む。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。上部電極アセンブリは、基板支持部の上方に設けられている。プラズマ生成部は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、プラズマ生成部は、高周波電源を含んでいてもよい。高周波電源は、上部電極アセンブリ又は基板支持部内の高周波電極に電気的に接続される。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
まず、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0022】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30、及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及び上部電極アセンブリ13を含む。一実施形態において、上部電極アセンブリ13は、シャワーヘッドとして構成されており、ガス導入部を構成していてもよい。ガス導入部は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。上部電極アセンブリ13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、上部電極アセンブリ13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a、及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも一つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも一つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。上部電極アセンブリ13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0023】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0024】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも一つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも一つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも一つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも一つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも一つの下部電極を含む。
【0025】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも一つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0026】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも一つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、上部電極アセンブリ13は、ガス供給部20からの少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。上部電極アセンブリ13は、少なくとも一つのガス供給口13a、少なくとも一つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、上部電極アセンブリ13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0028】
ガス供給部20は、少なくとも一つのガスソース21及び少なくとも一つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも一つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介して上部電極アセンブリ13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも一つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0029】
電源30は、少なくとも一つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31(即ち、高周波電源)を含む。RF電源31は、少なくとも一つのRF信号(RF電力)を少なくとも一つの下部電極及び/又は上部電極アセンブリ13、即ち高周波電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも一つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも一つの下部電極、即ちバイアス電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0030】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも一つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも一つの下部電極及び/又は上部電極アセンブリ13に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも一つの下部電極及び/又は上部電極アセンブリ13に供給される。
【0031】
第2のRF生成部31bは、少なくとも一つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも一つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも一つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも一つがパルス化されてもよい。
【0032】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも一つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも一つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極アセンブリ13に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極アセンブリ13に印加される。
【0033】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも一つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも一つの下部電極及び/又は上部電極アセンブリ13に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも一つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、上部電極アセンブリ13に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0034】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0035】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0036】
以下、図2を参照しつつ、一つの例示的実施形態に係る上部電極アセンブリについて説明する。図2は、一つの例示的実施形態に係る上部電極アセンブリの部分拡大断面図である。図2に示す上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理装置1の上部電極アセンブリとして用いられ得る。
【0037】
図2に示すように、上部電極アセンブリ13は、第1の部材51、第2の部材52、第3の部材54、少なくとも一つの固定具56、及び少なくとも一つの導電部材58を含んでいる。以下では、複数の固定具56及び複数の導電部材58を含む上部電極アセンブリ13について説明するが、上部電極アセンブリ13は、単一の固定具56及び単一の導電部材58を含んでいてもよい。
【0038】
第1の部材51は、導電性材料から形成されている。第1の部材51は、シリコン又は炭化ケイ素のようなシリコン含有材料から形成され得る。一実施形態において、第1の部材51は、プラズマ処理装置1のチャンバ10内の空間(プラズマ処理空間10s)を上方から画成する天板であってもよい。この実施形態において、第1の部材51は、略円盤形状を有する。
【0039】
第1の部材51は、周縁部51pを有している。周縁部51pは、周方向に延びている。周縁部51pは、下面51b及び側面51sを含んでいる。側面51sは、チャンバ10の中心軸線の周りで周方向に延在している。チャンバ10の中心軸線は、鉛直方向に延びている。なお、以下の説明において、「周方向」は、チャンバ10の中心軸線の周りの回転方向を示しており、「径方向」は、チャンバ10の中心軸線に直交する任意の方向を示している。
【0040】
一実施形態において、第1の部材51は、複数のガス孔51cを提供していてもよい。複数のガス孔51cは、第1の部材51の周縁部51pの内側の領域で、第1の部材51をその板厚方向に貫通している。
【0041】
第2の部材52は、第1の部材51上に設けられている。第2の部材52は、導電性材料から形成されている。第2の部材52は、例えばアルミニウムのような金属から形成されている。
【0042】
一実施形態において、第2の部材52は、第1の部材51を支持する支持体であってもよい。第2の部材52は、その内部において冷媒用の流路52fを提供していてもよい。流路52fは、チラーユニットから供給される冷媒を受ける。チラーユニットは、チャンバ10の外部に設けられている。冷媒は、流路52fを流れて、チラーユニットに戻される。
【0043】
一実施形態において、第2の部材52は、上述したガス拡散室13bをその内部に提供していてもよい。また、第2の部材52は、複数のガス孔52cを更に提供していてもよい。複数のガス孔52cは、ガス拡散室13bから下方に延びて、複数のガス孔51cにそれぞれ接続している。複数のガス孔52cはそれぞれ、対応のガス孔51cと共に複数のガス導入口13cを構成する。
【0044】
第1の部材51及び第2の部材52の径方向外側には、環状部材61及び62が設けられている。環状部材61及び62は、アルミニウムのような金属から形成されている。環状部材62は、環状部材61上に設けられている。環状部材61及び62は、チャンバ10の側壁10a上の領域まで延びており、電気的に接地されている。
【0045】
環状部材62と第2の部材52との間には、絶縁部材63が介在している。絶縁部材63は、酸化アルミニウム又は石英のような絶縁性材料から形成されている。環状部材61の下方には、グランド部材64が設けられている。グランド部材64は、導電性材料から形成されている。グランド部材64は、シリコン又は炭化ケイ素のようなシリコン含有材料から形成され得る。グランド部材64は、略環形状を有しており、環状部材61の下面の下方の領域から第1の部材51の周縁部51pの下方の領域にわたって延びている。
【0046】
第3の部材54は、略環形状を有している。第3の部材54は、第1の部材51の周縁部51pに沿って周方向に延びている。第3の部材54は、第1の部材51の周縁部51pの内側の領域の下面を露出させるように開口を提供している。第3の部材54は、酸化アルミニウムのようなセラミックから形成され得る。
【0047】
第3の部材54は、底部54b及び側部54sを含んでいる。底部54bは、略環形状を有しており、開口を提供するように周方向に延びている。底部54bは、第1の部材51の周縁部51pの下面51bに沿って延びている。側部54sは、底部54bの上で周方向に延びている。側部54sは、略環形状を有しており、第1の部材51の周縁部51pの外側で周縁部51pの側面51sに沿って延びている。第3の部材54は、底部54bと第2の部材52との間で第1の部材51の周縁部51pを挟持している。
【0048】
第3の部材54と環状部材61との間、且つ、第3の部材54とグランド部材64との間には、絶縁部材66が設けられている。絶縁部材66は、略環形状を有しており、酸化アルミニウム又は石英のような絶縁性材料から形成されている。上述した絶縁部材63は、絶縁部材66上に設けられている。絶縁部材66と絶縁部材63との間の間隙は、Oリング67によって封止されている。
【0049】
複数の固定具56の各々は、金属のような導電性材料から形成されており、第2の部材52に導通している。複数の固定具56は、第3の部材54を第2の部材52に固定している。
【0050】
一実施形態においては、複数の固定具56の各々は、ねじである。この実施形態において、第3の部材54は、周方向に沿って配列された複数の貫通孔54hを提供している。複数の固定具56はそれぞれ、複数の貫通孔54hの中に配置されている。複数の固定具56の各々であるねじは、その頭部から上方に延びている。
【0051】
複数の貫通孔54hの各々は、大径部と、当該大径部の上に設けられた小径部を含んでいる。第3の部材54は、複数の貫通孔54hの各々の大径部と小径部との間で延びる面54aを提供している。面54aは、下方に向いている。複数の固定具56の各々であるねじの頭部と面54aとの間には、平座金71及び73が設けられていてもよい。
【0052】
複数の固定具56は、それらの上端から下方に延びる雌ねじを提供している。複数の固定具56それぞれの雌ねじには、複数のねじ80の雄ねじが螺合される。複数のねじ80は、金属のような導電性材料から形成されている。
【0053】
第2の部材52の周縁部には、周方向に沿って配列された複数の穴52hが形成されている。複数のねじ80の頭部はそれぞれ、複数の穴52hの中に収容されている。複数の穴52hは、下方に向けて開口している。複数の穴52hの中には、Cリングのような複数の固定具81がそれぞれ設けられている。複数の固定具81は、第2の部材52に固定されている。複数のねじ80の各々は、その頭部から下方に、対応の固定具81の内孔を通って延びている。複数のねじ80の各々の頭部と対応の固定具81との間には、コイルばね82、平座金83、及び平座金85が設けられていてもよい。
【0054】
複数の固定具56の各々と複数のねじ80の各々が互いに螺合されると、第3の部材54は、複数の固定具56の各々であるねじの頭部と第2の部材52との間で挟持されて、第2の部材52に固定される。また、複数の固定具56の各々は、複数のねじ80を介して第2の部材52に導通する。
【0055】
複数の導電部材58は、第1の部材51と第2の部材52を互いに導通させる。図3は、図2に示す上部電極アセンブリにおいて用いられ得る導電部材の例を示す図である。以下、図2と共に図3を参照する。
【0056】
複数の導電部材58の各々は、金属製であり、導電性を有している。複数の導電部材58の各々は、例えば板金加工により形成され得る。複数の導電部材58の各々は、第1の部分581及び第2の部分582を含んでいる。複数の導電部材58の各々は、第1の部分581と第2の部分582とを互いに接続する第3の部分583を更に含んでいる。第3の部分583は、第1の部分581と第2の部分582との間で、第3の部材54に沿って延在している。
【0057】
第1の部分581は、対応の固定具56と第3の部材54との間で挟持されて、対応の固定具56を介して第2の部材52に導通する。一実施形態において、第1の部分581は、対応の固定具56であるねじの頭部と第3の部材54の面54aとの間で挟持される。第1の部分581は、平座金71及び73、対応の固定具56、対応のねじ80、コイルばね82、平座金83及び85、並びに固定具81を介して第2の部材52に導通し得る。
【0058】
第2の部分582は、第3の部材54と第1の部材51の周縁部51pとの間で挟持されて、第1の部材51に導通する。図2に示す実施形態では、第2の部分582は、第1の部材51の周縁部51pの下面51bと第3の部材54の底部54bとの間で挟持される。
【0059】
一実施形態において、第2の部分582は、図3に示すように、周方向に細長い形状を有していてもよい。即ち、第2の部分582の周方向における長さは、径方向に平行な方向における第2の部分582の長さよりも、長い。
【0060】
上部電極アセンブリ13において、複数の固定具56は第3の部材54を第2の部材52に固定している。したがって、複数の固定具56と第3の部材54との位置関係は安定的に維持される。複数の導電部材58の第1の部分581はかかる固定具56と第3の部材54との間に挟持されているので、複数の導電部材58と複数の固定具56との間の導通は安定的に維持される。また、複数の固定具56は第2の部材52に導通しているので、複数の導電部材58と第2の部材52との間の導通は安定的に維持される。また、複数の導電部材58の各々の第2の部分582は、第3の部材54と第1の部材51の周縁部との間で挟持されているので、複数の導電部材58と第1の部材51との間の導通が安定的に維持される。故に、上部電極アセンブリ13を構成する二つの導電性の部材、即ち第1の部材51と第2の部材52との間での導通の確実性が高められる。
【0061】
図4を参照して、別の例示的実施形態に係る上部電極アセンブリについて説明する。図4は、別の例示的実施形態に係る上部電極アセンブリの部分拡大断面図である。以下の説明では、図4と共に図5を参照する。図5は、図4に示す上部電極アセンブリにおいて用いられ得る導電部材の例を示す図である。
【0062】
図4に示す上部電極アセンブリ13Bは、プラズマ処理装置1の上部電極アセンブリ13として用いられ得る。以下、上部電極アセンブリ13Bと図2に示す上部電極アセンブリ13との相違点の観点から、上部電極アセンブリ13Bについて説明する。
【0063】
上部電極アセンブリ13Bは、複数の導電部材58の代わりに、複数の導電部材58Bを含んでいる。複数の導電部材58Bの各々は、金属製であり、導電性を有している。複数の導電部材58Bの各々は、例えば板金加工により形成され得る。
【0064】
複数の導電部材58Bの各々は、第1の部分581B及び第2の部分582Bを含んでいる。第1の部分581Bは、複数の導電部材58の第1の部分581と同様に、対応の固定具56と第3の部材54との間で挟持されて、対応の固定具56を介して第2の部材52に導通する。
【0065】
第3の部分583Bは、第1の部分581Bと第2の部分582Bとを互いに接続している。第3の部分583Bは、第1の部分581Bと第2の部分582Bとの間で、第3の部材54に沿って延在している。
【0066】
第2の部分582Bは、少なくとも一つの板ばねを含んでいる。少なくとも一つの板ばねは、第1の部材51の周縁部51pの側面51sと第3の部材54の側部54sとの間で挟持される。一実施形態において、第2の部分582Bは、複数の板ばねを含んでいてもよい。複数の板ばねは、櫛歯を形成するように周方向に沿って配列されており、第1の部材51の周縁部51pの側面51sと第3の部材54の側部54sとの間で挟持される。
【0067】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0068】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0069】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、11…基板支持部、13…上部電極アセンブリ、51…第1の部材、51p…周縁部、52…第2の部材、54…第3の部材、56…固定具、58…導電部材、581…第1の部分、582…第2の部分。
図1
図2
図3
図4
図5