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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046899
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230329BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230329BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155740
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
(72)【発明者】
【氏名】玉虫 元
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
(72)【発明者】
【氏名】上坂 友佑人
(72)【発明者】
【氏名】松山 昇一郎
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC15
2G084CC16
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH06
2G084HH08
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH25
2G084HH29
2G084HH43
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004CB05
5F004CB17
5F045AA08
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH14
5F045EH20
5F045EM05
5F045GB08
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理装置において高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態を反映する信号から不要な成分を除去する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置では、高周波電源が、プラズマの生成のために高周波電力を供給する。バイアス電源が、イオンの引き込みのためにバイアス周波数を有する電気バイアスエネルギーを基板支持部の電極に供給する。高周波電源は、電気バイアスエネルギーの周期内の複数の位相期間の各々における高周波電力の周波数を調節する。センサが、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出する。フィルタが、複数の位相期間の各々においてセンサによって検出される電気信号から高周波電力と電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内で生成されたプラズマから前記基板支持部上に載置された基板にイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーを前記基板支持部の電極に供給するように構成されたバイアス電源であり、該電気バイアスエネルギーはバイアス周波数を有し、該電気バイアスエネルギーの周期は該バイアス周波数の逆数である時間長を有する、該バイアス電源と、
整合回路を有する整合器と、
前記チャンバ内でガスから前記プラズマを生成するためにその周波数が可変の高周波電力を前記整合器を介して供給するように構成された高周波電源であり、前記電気バイアスエネルギーの前記周期内の複数の位相期間の各々における該高周波電力の周波数を調節するように構成された該高周波電源と、
前記高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出するように構成されたセンサと、
前記複数の位相期間の各々における前記電気信号から前記高周波電力と前記電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去することによりフィルタリングされた信号を生成するように構成されたフィルタと、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記高周波電源は、前記複数の位相期間の各々において、前記フィルタリングされた信号に基づいて前記高周波電源の負荷のインピーダンスを整合状態に近づけるよう、前記高周波電力の前記周波数を調節するように構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電気信号は、前記高周波電力の伝送路上で測定される電圧及び電流を表す信号を含む、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電気信号は、前記高周波電力の負荷からの反射波のパワーを表す信号含む、請求項1~3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記高周波電源は、
高周波信号を発生するように構成された発振器と、
前記高周波信号を増幅して前記高周波電力を発生するように構成された増幅器と、
を含み、
該プラズマ処理装置は、前記高周波信号と前記電気信号とを互いに混合して混合信号を生成するように構成されたミキサを更に含み、
前記フィルタは、前記混合信号から前記フィルタリングされた信号を生成するように構成されており、その中心周波数が0である通過帯域を有し、該通過帯域の幅は前記バイアス周波数よりも小さい、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記フィルタは、互いに異なる通過帯域を有する複数のフィルタを含み、該複数のフィルタのうち前記複数の位相期間の各々における前記高周波電力の前記周波数をその通過帯域に含むフィルタを前記電気信号に適用するように構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電気バイアスエネルギーは、前記バイアス周波数を有するバイアス高周波電力である、請求項1~6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記電気バイアスエネルギーは、前記バイアス周波数の逆数である時間長を有する時間間隔で周期的に発生される電圧のパルス又は周期的に発生される任意の波形の電圧を含む、請求項1~6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記基板支持部の上方に設けられた上部電極を更に含み、
前記高周波電源は、前記整合器を介して前記基板支持部の電極又は前記上部電極に電気的に接続されている、
請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記電気バイアスエネルギーの伝送路上で該電気バイアスエネルギーの電圧を検出するように構成された電圧センサを更に備え、
前記高周波電源は、前記電圧センサによって検出される電圧に基づいて前記電気バイアスエネルギーの前記周期及び前記複数の位相期間を特定するように構成されている、
請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電源から整合器を介して高周波電力を供給する工程であり、該プラズマ処理装置は、該チャンバ内に設けられた基板支持部を含む、該工程と、
(b)前記プラズマから前記基板支持部上に載置された基板にイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーを前記基板支持部の電極に供給する工程と、
(c)センサを用いて、前記高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出する工程と、
(d)フィルタを用いて、前記電気信号からフィルタリングされた信号を生成する工程と、
を含み、
前記電気バイアスエネルギーはバイアス周波数を有し、該電気バイアスエネルギーの周期は該バイアス周波数の逆数である時間長を有し、
前記高周波電力の周波数は可変であり、
前記(a)において、前記電気バイアスエネルギーの前記周期内の複数の位相期間の各々における該高周波電力の周波数が調節され、
前記(d)において、前記フィルタリングされた信号は、前記複数の位相期間の各々における前記電気信号から前記高周波電力と前記電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去することにより生成される、
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が、基板に対するプラズマ処理において用いられている。プラズマ処理装置では、チャンバ内で生成されたプラズマからイオンを基板に引き込むために、高周波バイアス電力が用いられる。下記の特許文献1は、高周波バイアス電力のパワーレベル及び周波数を変調するプラズマ処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-246091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマの生成において可変周波数を有する高周波電力を発生する高周波電源を用いるプラズマ処理装置において、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態を反映する信号から不要な成分を除去する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、バイアス電源、整合器、高周波電源、センサ、及びフィルタを備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。バイアス電源は、チャンバ内で生成されたプラズマから基板支持部上に載置された基板にイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーを基板支持部の電極に供給するように構成されている。電気バイアスエネルギーは、バイアス周波数を有する。電気バイアスエネルギーの周期は、バイアス周波数の逆数である時間長を有する。整合器は、整合回路を有する。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するためにその周波数が可変の高周波電力を整合器を介して供給するように構成されている。高周波電源は、電気バイアスエネルギーの周期内の複数の位相期間の各々における高周波電力の周波数を調節するように構成されている。センサは、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出するように構成されている。フィルタは、複数の位相期間の各々においてセンサによって検出される電気信号から高周波電力と電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去することによりフィルタリングされた信号を生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマの生成において可変周波数を有する高周波電力を発生する高周波電源を用いるプラズマ処理装置において、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態を反映する信号から不要な成分を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置における高周波電源の構成例を示す図である。
図4】電気バイアスエネルギー及び高周波電力の周波数の一例のタイミングチャートである。
図5】電気信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図6】一つの例示的実施形態に係る処理方法の流れ図である。
図7】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置において採用され得る別の例のフィルタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、バイアス電源、整合器、高周波電源、センサ、及びフィルタを備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。バイアス電源は、チャンバ内で生成されたプラズマから基板支持部上に載置された基板にイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーを基板支持部の電極に供給するように構成されている。電気バイアスエネルギーは、バイアス周波数を有する。電気バイアスエネルギーの周期は、バイアス周波数の逆数である時間長を有する。整合器は、整合回路を有する。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するためにその周波数が可変の高周波電力を整合器を介して供給するように構成されている。高周波電源は、電気バイアスエネルギーの周期内の複数の位相期間の各々における高周波電力の周波数を調節するように構成されている。センサは、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出するように構成されている。フィルタは、複数の位相期間の各々においてセンサによって検出される電気信号から高周波電力と電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去することによりフィルタリングされた信号を生成するように構成されている。
【0010】
上記実施形態では、高周波電力の周波数が、電気バイアスエネルギーの周期内の複数の位相期間において調節される。複数の位相期間の各々において、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号からは、高周波電力の周波数に応じて相互変調歪み成分が除去される。したがって、プラズマの生成において可変周波数を有する高周波電力を発生する高周波電源を用いるプラズマ処理装置において、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態を反映する電気信号から不要な成分を除去することが可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、高周波電源は、複数の位相期間の各々において、フィルタリングされた信号に基づいて高周波電源の負荷のインピーダンスを整合状態に近づけるよう、高周波電力の周波数を調節するように構成されていてもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態において、センサによって検出される電気信号は、高周波電力の負荷からの反射波のパワーを表す信号を含んでいてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、センサによって検出される電気信号は、高周波電力の伝送路上で測定される電圧及び電流表す信号を含んでいてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、高周波電源は、発振器及び増幅器を含んでいてもよい。発振器は、高周波信号を発生するように構成されている。増幅器は、高周波信号を増幅して高周波電力を発生するように構成されている。プラズマ処理装置は、ミキサを更に含んでいてもよい。ミキサは、高周波信号と電気信号とを互いに混合して混合信号を生成するように構成されている。フィルタは、混合信号からフィルタリングされた信号を生成するように構成されており、その中心周波数が0である通過帯域を有する。フィルタの通過帯域の幅は、バイアス周波数よりも小さい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、フィルタは、互いに異なる通過帯域を有する複数のフィルタを含んでいてもよい。複数のフィルタのうち複数の位相期間の各々における高周波電力の周波数をその通過帯域に含むフィルタが電気信号に適用されてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、電気バイアスエネルギーは、バイアス周波数を有するバイアス高周波電力であってもよい。或いは、電気バイアスエネルギーは、バイアス周波数の逆数である時間長を有する時間間隔で周期的に発生される電圧のパルス又は周期的に発生される任意の波形の電圧を含んでいてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、基板支持部の上方に設けられた上部電極を更に含んでいてもよい。高周波電源は、整合器を介して基板支持部の電極又は上部電極に電気的に接続されていてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、電気バイアスエネルギーの伝送路上で電気バイアスエネルギーの電圧を検出するように構成された電圧センサを更に備えていてもよい。高周波電源は、電圧センサによって検出される電圧に基づいて電気バイアスエネルギーの周期及び複数の位相期間を特定するように構成されていてもよい。
【0019】
別の例示的実施形態において、信号処理方法が提供される。信号処理方法は、(a)プラズマ処理装置のチャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電源から整合器を介して高周波電力を供給する工程(a)を含む。プラズマ処理装置は、チャンバ内に設けられた基板支持部を含む。信号処理方法は、プラズマから基板支持部上に載置された基板にイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーを基板支持部の電極に供給する工程(b)を更に含む。信号処理方法は、センサを用いて、高周波電源の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号を検出する工程(c)を更に含む。信号処理方法は、フィルタを用いて、電気信号からフィルタリングされた信号を生成する工程(d)を更に含む。電気バイアスエネルギーはバイアス周波数を有し、電気バイアスエネルギーの周期はバイアス周波数の逆数である時間長を有する。高周波電力の周波数は可変である。工程(a)において、電気バイアスエネルギーの周期内の複数の位相期間の各々における高周波電力の周波数が調節される。工程(d)において、フィルタリングされた信号は、複数の位相期間の各々における電気信号から高周波電力と電気バイアスエネルギーとの相互変調歪み成分を除去することにより生成される。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1及び図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【0022】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11、及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも一つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも一つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0023】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも一つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0026】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台111e及び静電チャック111cを含む。基台111eは、導電性部材を含む。基台111eの導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック111cは、基台111eの上に配置される。静電チャック111cの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも一つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック111c、リングアセンブリ112、及び基板Wのうち少なくとも一つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0027】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも一つのガス供給口13a、少なくとも一つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0028】
ガス供給部20は、一つ以上のガスソース21及び少なくとも一つ以上の流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、一つ以上の処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、一つ以上の処理ガスの流量を変調又はパルス化する一つ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0029】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
プラズマ処理装置1は、高周波電源31及びバイアス電源32を更に備えている。以下、図2と共に、図3及び図4を参照する。図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置における高周波電源の構成例を示す図である。図4は、電気バイアスエネルギー及び高周波電力の周波数の一例のタイミングチャートである。
【0031】
高周波電源31は、チャンバ10内でガスからプラズマを生成するために、高周波電力RF(即ち、ソース高周波電力)を整合器31mを介して高周波電極に供給するように構成されている。高周波電力RFの周波数、即ちソース周波数fRFは、可変である。高周波電力RFは、例えば、13MHz以上、150MHz以下のソース周波数fRFを有する。
【0032】
高周波電源31は、整合器31mを介して高周波電極に電気的に接続されている。一実施形態において、高周波電極は、基板支持部11の電極であってもよい。高周波電極は、基台111eであってもよい。整合器31mは、整合回路を含んでいる。整合器31mの整合回路は、可変インピーダンスを有する。整合器31mの整合回路は、制御部2又は後述する制御部36によって制御される。整合器31mの整合回路のインピーダンスは、高周波電源31の負荷側のインピーダンスを高周波電源31の出力インピーダンスに整合させるように調整される。なお、高周波電極は、基台111eとは別の、基板支持部11内に設けられた電極であってもよい。或いは、高周波電極は、上部電極であってもよい。
【0033】
バイアス電源32は、チャンバ10内で生成されたプラズマから基板支持部11上に載置された基板Wにイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーBEを基板支持部11のバイアス電極に供給するように構成されている。バイアス電極は、基台111eであってもよい。バイアス電極は、基台111eとは別の、基板支持部11の中に設けられた電極であってもよい。電気バイアスエネルギーBEは、バイアス周波数fを有する。電気バイアスエネルギーの周期CY(即ち、バイアス周期)は、バイアス周波数fの逆数である時間長を有する。バイアス周波数fは、例えば100kHz以上、13.56MHz以下の周波数である。
【0034】
一実施形態において、電気バイアスエネルギーBEは、バイアス周波数fを有する高周波電力、即ちバイアス高周波電力LFであってもよい。バイアス高周波電力LFは、周期CYにおいて正弦波状の波形を有する。電気バイアスエネルギーBEがバイアス高周波電力LFである場合には、バイアス電源32は、整合器32mを介してバイアス電極に接続される。整合器32mは、整合回路を含んでいる。整合器32mの整合回路は、可変インピーダンスを有する。整合器32mの整合回路は、制御部2又は制御部36によって制御される。整合器32mの整合回路のインピーダンスは、バイアス電源32の負荷側のインピーダンスをバイアス電源32の出力インピーダンスに整合させるように調整される。
【0035】
別の実施形態において、電気バイアスエネルギーBEは、バイアス周波数fの逆数である時間長を有する時間間隔(即ち、周期CY)で周期的に発生される電圧のパルスPV又は任意の波形の電圧であってもよい。電気バイアスエネルギーBEとして用いられる電圧のパルスPVは、負の電圧のパルス又は負の直流電圧のパルスであってもよい。電圧のパルスPVは、三角波、矩形波といった任意の波形を有していてもよい。電気バイアスエネルギーBEとして電圧のパルスPVが用いられる場合には、整合器32mの代わりに、高周波電力RFを遮断するフィルタが、バイアス電源32とバイアス電極との間で接続されていてもよい。
【0036】
一実施形態において、高周波電源31は、発振器31g、増幅器31a、フィルタ33、ミキサ34、フィルタ35、及び制御部36を含んでいてもよい。なお、フィルタ33、ミキサ34、フィルタ35、及び制御部36は、高周波電源31から分離された要素であってもよい。
【0037】
発振器31gは、高周波信号を発生するように構成されている。高周波信号は、制御部36によって指定されるソース周波数fRFを有する。増幅器31aは、発振器31gによって生成された高周波信号を増幅して、高周波電力RFを生成する。増幅器31aの増幅率は、制御部36によって制御される。
【0038】
制御部36は、プロセッサから構成されている。制御部36は、制御部2と通信可能に接続されている。ソース周波数fRF及び増幅器31aの増幅率は、初期的には記憶部2a2に記憶されたレシピデータに応じて制御部2から制御部36に指定され得る。制御部36は、高周波電源31とバイアス電源32との間の同期のために、同期信号をバイアス電源32に送信し得る。
【0039】
プラズマ処理装置1では、図4に示すように、電気バイアスエネルギーBEの周期CYは、複数の位相期間SP、即ちN個の位相期間SP~SPに分割される。位相期間SP~SPそれぞれの時間長は予め定められている。位相期間SP~SPそれぞれの時間長は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0040】
プラズマ処理装置1では、高周波電力RFが供給され、電気バイアスエネルギーBEが供給されている期間において、周期CYの中の複数の位相期間SPの各々におけるソース周波数fRFが調節される。即ち、周期CY内のn番目の位相期間SPにおけるソース周波数fRFnが調整される。ここで、「n」は、1~Nの整数である。複数の位相期間SPの各々におけるソース周波数fRF、即ちソース周波数fRFnは、制御部36から指定される。なお、図4に示す例では、位相期間SP、SP、SPそれぞれのソース周波数fRF3、fRF5、RFNは、f、f、fである。発振器31gは、複数の位相期間SPの各々において、制御部36から指定されたソース周波数fRFを有する高周波信号を発生する。
【0041】
高周波電源31において、周期CY及び複数の位相期間SPは、制御部36によって特定され得る。一実施形態においては、制御部36は、方向性結合器32dにおいて取得される電気バイアスエネルギーBEの進行波のパワーから周期CYを特定し、周期CYを分割することにより複数の位相期間SPを特定してもよい。方向性結合器32dは、バイアス電源32と整合器32mとの間に接続され得る。
【0042】
或いは、制御部36は、電圧センサ32vによって検出される電圧に基づいて、周期CYを特定し、周期CYを分割することにより複数の位相期間SPを特定してもよい。電圧センサ32vは、電気バイアスエネルギーBEの伝送路上で電気バイアスエネルギーBEの電圧を検出するように構成されている。電圧センサ32vは、整合器32mとバイアス電極との間の伝送路上で電気バイアスエネルギーBEの電圧を検出してもよい。
【0043】
プラズマ処理装置1では、複数の位相期間SPの各々において高周波電力RFの伝送路上でセンサによって一つ以上の電気信号が取得される。そして、複数の位相期間SPの各々において、取得された一つ以上の電気信号に基づいて、インピーダンス整合が行われる。一つ以上の電気信号は、高周波電源31の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する。
【0044】
一つ以上の電気信号は、高周波電力の負荷からの反射波のパワーPrを表す信号を含んでいてもよい。一つ以上の電気信号は、高周波電力の負荷からの進行波のパワーPfを表す信号を更に含んでいてもよい。反射波のパワーPrを表す信号及び進行波のパワーPfを表す信号は、方向性結合器31dによって取得される。方向性結合器31dは、高周波電源31と整合器31mとの間で接続されている。方向性結合器31dは、増幅器31aの一部であってもよい。或いは、方向性結合器31dは、整合器31mの一部であってもよい。
【0045】
一つ以上の電気信号は、高周波電力RFの伝送路上で測定される高周波電力RFの電圧VRFを表す信号及び電流IRFを表す信号を含んでいてもよい。電圧VRFを表す信号及び電流IRFを表す信号はセンサ31eによって測定される。センサ31eは、整合器31mの一部であってもよい。
【0046】
一つ以上の電気信号の各々は、高調波成分を含む。高調波成分の周波数は、fRF±k×fRFである。kは、自然数であり、1,2,3,・・・である。また、一つ以上の電気信号の各々は、高周波電力RFと電気バイアスエネルギーBEとの相互変調歪み成分を含む。図5は、電気信号の周波数スペクトルの例を示す図である。図5に示すように、相互変調歪み成分の周波数は、fRF±m×fである。mは、自然数であり、1,2,3,・・・である。
【0047】
プラズマ処理装置1では、複数の位相期間SPの各々において取得された一つ以上の電気信号から一つ以上の信号SFIが生成される。このために、フィルタ33、ミキサ34、及びフィルタ35が用いられる。
【0048】
フィルタ33は、一つ以上の電気信号の各々から高調波成分を除去する。フィルタ33により、一つ以上の電気信号から一つ以上の信号SPFが生成される。一つ以上の信号SPFの各々は、ミキサ34に入力される。なお、一つ以上の電気信号の各々が、ミキサ34に入力されてもよい。この場合には、プラズマ処理装置1は、フィルタ33を含んでいなくてもよい。
【0049】
ミキサ34は、一つ以上の信号SPFの各々又は一つ以上の電気信号の各々と発振器31gによって生成された高周波信号とを混合する。ミキサ34により、一つ以上の信号SPF又は一つ以上の電気信号から、一つ以上の混合信号SMIXが生成される。一つ以上の混合信号SMIXの各々は、対応の信号SPF又は対応の電気信号の周波数を、fRFだけ負の方向にシフトさせた中間周波数信号である。混合信号SMIXにおいてソース周波数fRFに対応する中間周波数は、0である。
【0050】
フィルタ35は、一つ以上の混合信号SMIXの各々から相互歪み変調成分を除去する。混合信号SMIXにおいて、相互変調歪み成分の周波数は、0±m×fである。mは、自然数であり、1,2,3,4,5,・・・である。フィルタ35により、一つ以上の混合信号SMIXから一つ以上のフィルタリングされた信号、即ち一つ以上の信号SFIが生成される。フィルタ35の通過帯域の中心周波数は0である。フィルタ35の通過帯域は、中心周波数-Wf/2と中心周波数+Wf/2との間の帯域である。Wfは、フィルタ35の通過帯域の幅である。Wf/2は、fよりも小さい。Wfは、fよりも小さくてもよい。
【0051】
プラズマ処理装置1では、複数の位相期間SPの各々、即ち位相期間SPにおいて取得された一つ以上の信号SFInに基づいて、インピーダンス整合が行われる。ここで、SFInは、位相期間SPにおける一つ以上の信号SFIを表しており、nは、1~Nの整数の整数である。インピーダンス整合は、各周期の位相期間SPにおいて、一つ以上の信号SFInに基づいてリアルタイムに実行されてもよい。或いは、ある周期CY内で取得された一つ以上の信号SFInに基づくインピーダンス整合は、後の周期CYの位相期間SPにおいて行われてもよい。インピーダンス整合においては、制御部36によりプラズマ処理装置1の各部が制御される。
【0052】
一実施形態では、高周波電源は、一つ以上の信号SFInに基づいて高周波電源31の負荷のインピーダンスを整合状態に近づけるよう、ソース周波数fRFnを調節する。ソース周波数fRFnは、制御部36によって発振器31gに指定される。
【0053】
一実施形態では、位相期間SPにおける電気信号として反射波のパワーPrを表す信号が用いられる。この実施形態では、位相期間SPにおける反射波のパワーPrを表す信号から信号SFInが取得される。そして、制御部36により、信号SFInから位相期間SPにおける反射波のパワーPrが求められる。例えば、フィルタ35の通過帯域における信号SFInの信号強度の積分値が、位相期間SPにおける反射波のパワーPrとして求められる。そして、求められた反射波のパワーPrを低減させるように設定されたソース周波数fRFnが、制御部36によって発振器31gに指定される。
【0054】
別の実施形態では、位相期間SPにおける電気信号として反射波のパワーPrを表す信号及び進行波のパワーPfを表す信号が用いられる。この実施形態では、位相期間SPにおける反射波のパワーPrを表す信号、進行波のパワーPfを表す信号から二つの信号SFInが取得される。二つの信号SFInのうち第1の信号S1FInは、反射波のパワーPrを表す電気信号から生成され、二つの信号SFInのうち第2の信号S2FInは、進行波のパワーPfを表す電気信号から生成される。そして、制御部36により、二つの信号SFInから位相期間SPにおける反射波のパワーPr及び進行波のパワーPfが求められる。例えば、フィルタ35の通過帯域における第1の信号S1FInの信号強度の積分値が、位相期間SPにおける反射波のパワーPrとして求められる。また、フィルタ35の通過帯域における第2の信号S2FInの信号強度の積分値が、位相期間SPにおける進行波のパワーPfとして求められる。そして、求められた進行波のパワーPfに対する反射波のパワーPrの比の値を低減させるように設定されたソース周波数fRFnが、制御部36によって発振器31gに指定される。
【0055】
更に別の実施形態では、位相期間SPにおける電気信号として電圧VRFを表す信号及び電流IRFを表す信号が用いられる。この実施形態では、位相期間SPにおける電圧VRFを表す信号、電流IRFを表す信号から二つの信号SFInが取得される。二つの信号SFInのうち第1の信号S1FInは、電圧VRFを表す電気信号から生成され、二つの信号SFInのうち第2の信号S2FInは、電流IRFを表す電気信号から生成される。そして、制御部36により、二つの信号SFInから位相期間SPにおける電圧VRF、電流IRFがそれぞれ求められる。例えば、フィルタ35の通過帯域における第1の信号S1FInの信号強度の積分値が、位相期間SPにおける電圧VRFとして求められる。また、フィルタ35の通過帯域における第2の信号S2FInの信号強度の積分値が、位相期間SPにおける電流IRFとして求められる。そして、求められた電圧VRF及び電流IRFから、制御部36によって位相期間SPにおける高周波電源31の負荷のインピーダンスが求められる。そして、求められた高周波電源31の負荷のインピーダンスを整合ポイントに近づけるように設定されたソース周波数fRFnが、制御部36によって発振器31gに指定される。
【0056】
なお、各実施形態においては、高周波電源31の負荷のインピーダンスを整合状態に近づけるよう、整合器31mの整合回路のインピーダンスが調節されてもよい。
【0057】
プラズマ処理装置1では、ソース周波数fRFが、電気バイアスエネルギーBEの周期CY内の複数の位相期間SPの各々において調節される。複数の位相期間の各々において、高周波電源31の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する電気信号からは、ソース周波数fRFに応じて相互変調歪み成分が除去される。したがって、プラズマの生成において可変周波数を有する高周波電力RFを発生する高周波電源31を用いるプラズマ処理装置1において、高周波電源31の負荷のインピーダンスの整合状態を反映する電気信号から不要な成分を除去することが可能となる。また、プラズマ処理装置1では、電気信号から不要な成分が除去されることにより得られる信号に基づいてインピーダンス整合が行われる。したがって、複数の位相期間の各々において、高周波電力RFからの反射波のパワーを効果的に抑制することが可能となる。
【0058】
以下、図6を参照して、一つの例示的実施形態に係る処理方法について説明する。図6は、図6は、一つの例示的実施形態に係る処理方法の流れ図である。図6に示す処理方法(以下、「方法MT」という)は、プラズマ処理装置1に適用され得る。方法MTを行うために、プラズマ処理装置1の各部は制御部2によって制御される。方法MTは、処理されるべき基板Wが基板支持部11上に載置された状態で行われる。
【0059】
方法MTは、工程STaを含む。工程STaでは、チャンバ10内でガスからプラズマを生成するために高周波電源31から整合器31mを介して高周波電力が供給される。工程STaの期間においては、チャンバ10内にガスを供給するようにガス供給部20が制御される。工程STaの期間においては、チャンバ10内の圧力を指定された圧力に設定するように排気システム40が制御される。また、工程STaにおいては、高周波電力RFを供給するよう、高周波電源31が制御される。
【0060】
方法MTは、工程STbを更に含む。工程STbでは、プラズマから基板支持部11上に載置された基板Wにイオンを引き込むために、電気バイアスエネルギーBEが基板支持部11のバイアス電極に供給される。工程STbにおいては、電気バイアスエネルギーBEを供給するよう、バイアス電源32が制御される。
【0061】
方法MTは、工程STcを更に含む。工程STcでは、センサ(例えば、方向性結合器31d及び/又はセンサ31e)を用いて、高周波電源31の負荷のインピーダンスの整合状態からのずれを反映する一つ以上の電気信号が検出される。一つ以上の電気信号については、プラズマ処理装置1に関する上述の説明を参照されたい。
【0062】
方法MTは、工程STdを更に含む。工程STdでは、複数の位相期間SPの各々、即ち位相期間SPにおける一つ以上の電気信号からフィルタリングされた信号、即ち一つ以上の信号SFInが生成される。一つ以上の信号SFInの生成には、上述したようにフィルタ35が用いられる。
【0063】
工程STaにおいては、位相期間SPにおける高周波電力RFの周波数、即ちソース周波数fRFnが調節される。工程STdにおいては、一つ以上の信号SFInは、上述したように、位相期間SPにおける一つ以上の電気信号から高周波電力RFと電気バイアスエネルギーBEとの相互変調歪み成分を除去することにより生成される。
【0064】
方法MTは、工程STeを更に含む。工程STeでは、一つ以上の信号SFInに基づいて位相期間SPにおけるインピーダンス整合が行われる。インピーダンス整合の詳細については、プラズマ処理装置1に関する上述の説明を参照されたい。
【0065】
以下、図7を参照する。図7は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置において採用され得る別の例のフィルタの構成を示す図である。プラズマ処理装置1においては、図7に示すフィルタ35Bが、フィルタ35に代えて用いられてもよい。フィルタ35Bは、互いに異なる通過帯域を有する複数(J個)のフィルタ35f~35fを含む。複数のフィルタ35f~35fの中心周波数はそれぞれ、高周波電源31に設定可能な複数のソース周波数である。複数のフィルタ35f~35fの各々の通過帯域は、中心周波数-Wf/2と中心周波数+Wf/2との間の帯域である。Wfは、フィルタ35の通過帯域の幅である。Wf/2は、fよりも小さい。
【0066】
フィルタ35Bは、セレクタ35sを更に含む。セレクタ35sは、複数のフィルタ35f~35fのうち、位相期間SPにおけるソース周波数fRFnをその中心周波数として有するフィルタを選択し、選択したフィルタに一つ以上の混合信号SMIXを入力する。これにより、位相期間SPにおいて、選択されたフィルタから一つ以上の信号SFInが出力される。
【0067】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0068】
別の実施形態においては、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、ECRプラズマ処理装置、ヘリコン波励起プラズマ処理装置、又は表面波プラズマ処理装置であってもよい。何れのプラズマ処理装置においても、高周波電力RFは、プラズマの生成のために用いられる。
【0069】
また、プラズマ処理装置1では、一つのセットのフィルタ33、ミキサ34、及びフィルタ35(又はフィルタ35B)を備えている。別の実施形態において、プラズマ処理装置は、複数個のセットのフィルタ33、ミキサ34、及びフィルタ35を備えていてもよい。なお、セットの個数は、センサによって取得される電気信号の個数と同数である。
【0070】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0071】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、11…基板支持部、31…高周波電源、31m…整合器、32…バイアス電源、31d…方向性結合器、31e…センサ、35…フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7