IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図1
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図2
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図3
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図4
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図5
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図6
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図7
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図8
  • 特開-故障検知方法及びプラズマ処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047134
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】故障検知方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230329BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156077
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】山科 イサク
(72)【発明者】
【氏名】笹浪 雄作
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
(72)【発明者】
【氏名】植松 治志
(72)【発明者】
【氏名】祢津 忠人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 均
(72)【発明者】
【氏名】町山 弥
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084BB23
2G084BB25
2G084BB26
2G084BB29
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD04
2G084DD13
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD62
2G084HH08
2G084HH22
2G084HH37
2G084HH43
2G084HH56
5F004AA15
5F004AA16
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BB32
5F004BD01
5F004CA06
5F004CB05
5F004DB03
5F004DB08
5F004DB13
5F004DB26
(57)【要約】
【課題】インピーダンス調整部の故障を検知する。
【解決手段】処理容器内をアンテナ室と処理室に区画し、複数の部分窓を有する金属窓と、誘導結合プラズマを生成するアンテナと、基板を保持する静電チャックと、静電チャックを支持する下部電極を有するプラズマ処理装置にて、複数の部分窓と接地との間にある複数の容量素子を含む複数の部分窓と接地との間のインピーダンス調整部の故障検知方法であって、静電チャックの吸着電極に直流電圧を印加する工程、ソース用高周波電力及び/又はバイアス用高周波電力の供給を開始する工程、ソース用高周波電力及びバイアス用高周波電力を定常供給する工程、基板に処理を行う間複数の容量素子のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定する工程、複数の容量素子の容量素子電圧と予め定められた閾値との比較結果に基づき複数のインピーダンス調整部の故障を判定する工程を含む方法。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、前記処理容器内をアンテナ室と処理室とに区画し、複数の部分窓を有する金属窓と、前記アンテナ室に供給されるソース用高周波電力により誘導結合プラズマを生成する誘導結合アンテナと、前記処理室内にて被処理基板を静電吸着する静電チャックと、該静電チャックを支持し、バイアス電圧用高周波電力が供給される下部電極と、を有するプラズマ処理装置において、
前記複数の部分窓と接地との間に設けられた複数の容量素子を含み、前記複数の部分窓と接地との間のインピーダンスを調整する複数のインピーダンス調整部を有し、
前記複数のインピーダンス調整部の故障を検知する方法であって、
前記静電チャックに直流電圧を印加する工程と、
前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力の少なくともいずれかの供給を開始する工程と、
前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力を定常供給する工程と、
前記被処理基板に処理を行う間、前記複数の容量素子のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定する工程と、
前記複数の容量素子のそれぞれの容量素子電圧と予め定められた閾値との比較結果に基づき、前記複数のインピーダンス調整部の故障を判定する工程と、
を有する故障検知方法。
【請求項2】
前記複数の容量素子のそれぞれは、故障時に短絡状態となり、
前記故障を判定する工程は、前記容量素子電圧が前記閾値を超えなかった容量素子を含むインピーダンス調整部を故障と判定する、
請求項1に記載の故障検知方法。
【請求項3】
前記容量素子電圧を測定する工程は、前記被処理基板に複数の処理ステップから成る処理を行う間、前記複数の容量素子のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定し、
前記故障を判定する工程は、前記複数の処理ステップの一つ若しくは二つ以上の処理ステップにわたり測定した前記容量素子電圧が前記閾値を超えなかった容量素子を含むインピーダンス調整部を故障と判定する、
請求項2に記載の故障検知方法。
【請求項4】
前記故障を判定する工程は、少なくとも、前記直流電圧の印加開始時点、前記ソース用高周波電力の供給開始時点、前記ソース用高周波電力の定常供給時、前記バイアス電圧用高周波電力の供給開始時点、前記バイアス電圧用高周波電力の定常供給時、及び前記直流電圧の印加停止時点のうちのいずれか一つあるいは二つ以上にて測定した前記容量素子電圧に基づき、前記複数のインピーダンス調整部の故障を判定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の故障検知方法。
【請求項5】
前記故障を判定する工程は、前記複数の部分窓のそれぞれに接続された前記容量素子ごとに前記容量素子電圧と前記閾値とを比較し、前記容量素子ごとの比較結果に基づき、前記容量素子が含まれる前記インピーダンス調整部ごとに故障を判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の故障検知方法。
【請求項6】
前記複数の部分窓のうち、前記容量素子電圧が前記閾値を超えなかった前記容量素子に接続された部分窓を特定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の故障検知方法。
【請求項7】
処理容器と、前記処理容器内をアンテナ室と処理室とに区画し、複数の部分窓を有する金属窓と、前記アンテナ室に供給されるソース用高周波電力により誘導結合プラズマを生成する誘導結合アンテナと、前記処理室内にて被処理基板を静電吸着する静電チャックと、該静電チャックを支持し、バイアス電圧用高周波電力が供給される下部電極と、前記複数の部分窓と接地との間に設けられた複数の容量素子を含み、前記複数の部分窓と接地との間のインピーダンスを調整する複数のインピーダンス調整部と、制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記静電チャックに直流電圧を印加する工程と、
前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力の少なくともいずれかの供給を開始する工程と、
前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力を定常供給する工程と、
前記被処理基板に処理を行う間、前記複数の容量素子のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定する工程と、
前記複数の容量素子のそれぞれの容量素子電圧と予め定められた閾値との比較結果に基づき、前記複数のインピーダンス調整部の故障を判定する工程と、
を制御するプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、故障検知方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、被処理基板を収容してプラズマ処理を施す処理室と、処理室内に誘導電界を形成する高周波アンテナと、を有する誘導結合プラズマ処理装置が開示されている。誘導結合プラズマ処理装置には、高周波アンテナと処理室との間に、処理室を構成する本体容器と絶縁されて形成された非磁性体の金属窓が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-29584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置のインピーダンスを調整する部品の故障を検知することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器内をアンテナ室と処理室とに区画し、複数の部分窓を有する金属窓と、前記アンテナ室に供給されるソース用高周波電力により誘導結合プラズマを生成する誘導結合アンテナと、前記処理室内にて被処理基板を静電吸着する静電チャックと、該静電チャックを支持し、バイアス電圧用高周波電力が供給される下部電極と、を有するプラズマ処理装置において、前記複数の部分窓と接地との間に設けられた複数の容量素子を含み、前記複数の部分窓においてインピーダンスを調整する複数のインピーダンス調整部を有し、前記複数のインピーダンス調整部の故障を検知する方法であって、前記静電チャックに直流電圧を印加する工程と、前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力の少なくともいずれかの供給を開始する工程と、前記ソース用高周波電力及び前記バイアス電圧用高周波電力を定常供給する工程と、前記被処理基板に処理を行う間、前記複数の容量素子のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定する工程と、前記複数の容量素子のそれぞれの容量素子電圧と予め定められた閾値との比較結果に基づき、前記複数のインピーダンス調整部の故障を判定する工程と、を有する故障検知方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ処理装置のインピーダンスを調整する部品の故障を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
図2】実施形態に係るインピーダンス調整回路の一例を示す図。
図3】実施形態に係る複数の部分窓とインピーダンス調整回路の配置例を示す図。
図4】実施形態に係る制御部のハードウェア構成を示す図。
図5】実施形態に係る制御部の機能構成を示す図。
図6】実施形態に係る故障検知方法を示すフローチャート。
図7】実施形態に係る容量素子電圧の測定結果の一例を示す図。
図8】容量素子電圧MAX値と判定結果を記憶したテーブルの一例。
図9】実施形態に係る異常判定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理装置]
実施形態に係るプラズマ処理装置について、図1図3を用いて説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置100の一例を示す断面模式図である。図2は、実施形態に係るインピーダンス調整回路18の一例を示す図である。図3は、実施形態に係る複数の部分窓とインピーダンス調整回路18の配置例を示す図である。
【0010】
実施形態に係るプラズマ処理装置100は、例えばFPD(Flat Panel Display)用ガラス基板上に薄膜トランジスターを形成する際のメタル膜、ITO膜、酸化膜等のエッチングやレジスト膜のアッシング処理に用いられる。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0011】
プラズマ処理装置100は、例えば、内壁面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウム等の導電性材料からなる角筒形状の気密な処理容器1を有する。この処理容器1は、接地線1aにより接地されている。処理容器1は、処理容器1と絶縁されて形成された金属窓2により上部のアンテナ室3と、下部の処理室4とに区画されている。金属窓2は、本例では処理室4の天井壁を構成する。金属窓2は、例えば、非磁性体であって導電性の金属で構成される。本開示の金属の例は、アルミニウム、又はアルミニウムを含む合金である。金属窓2は、処理容器1の側壁に支持されてもよく、また、アンテナ室3の天井部から吊り下げられてもよい。
【0012】
アンテナ室3には、上下方向に貫通するガス供給管20aが設けられている。ガス供給管20a内のガス流路12は、複数の分岐配管に分岐し(不図示)、絶縁物6により複数に分割された金属窓2の部分窓22a、22b、22cに接続されてそれぞれの部分窓にガスを供給する。部分窓22a、22b、22cは、金属窓2の部分窓の一部であり、総称して部分窓22ともいう。
【0013】
それぞれの部分窓22は、内部にガス空間を有していて(不図示)、処理室4に面した面に複数のガス吐出口を有し、複数のガス吐出孔から処理室4内にガスを供給する。ガス供給管20aは、処理容器1の天井からその外側へ貫通し、処理ガス供給部20に接続されている。係る構成により、被処理基板G(以下、基板Gともいう。)をプラズマ処理する際、処理ガス供給部20から供給された処理ガスがガス供給管20aを介して処理室4内へ吐出される。
【0014】
アンテナ室3内には金属窓2の上に、金属窓2に面するように高周波(RF)アンテナ13が配設されている。高周波アンテナ13は絶縁部材からなるスペーサ17により金属窓2から離間している。高周波アンテナ13は、渦巻状のアンテナを構成している。金属窓2は、渦巻状のアンテナの下部で、例えば24枚の部分窓22に分割されている(図3参照)。ただし、部分窓22の枚数は、これに限られず、40枚等、1枚以上の枚数であってもよい。高周波アンテナ13は、アンテナ室3に供給されるソース用高周波電力により誘導結合プラズマを生成する誘導結合アンテナの一例である。
【0015】
プラズマ処理中、第一の高周波電源15からは、誘導電界形成用の、例えば、周波数が13.56MHzのソース用高周波電力(以下、ソースRFパワーともいう。)が整合器14及び給電部材16を介して高周波アンテナ13へ供給される。本例の高周波アンテナ13は、図示しないが、同心状に外側環状アンテナ、中間環状アンテナ、内側環状アンテナで構成されており、それぞれ給電部材16に接続される給電部41、42、43を有する。これら各給電部41、42、43からアンテナ線が周方向に延びて、3環状の高周波アンテナ13が構成される。各アンテナ線の終端には図示しないコンデンサが接続され、各アンテナ線はコンデンサを介して接地される。各給電部41、42、43は、それぞれ1つでもよく、また、2つ以上あってもよい。このようにソースRFパワーが供給された高周波アンテナ13により、金属窓2を媒介して処理室4内に誘導電界が形成され、この誘導電界により処理室4内に供給された処理ガスのプラズマが生成される。従って、高周波アンテナ13にソースRFパワーが供給された後、生成された処理ガスのプラズマにより、基板Gにプラズマ処理が施される。
【0016】
処理室4内の下方には、金属窓2を挟んで高周波アンテナ13に対向するステージSTが設けられている。ステージSTは、下部電極23及び絶縁体枠24を有する。下部電極23は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。基板Gは、下部電極23の上面に配置された静電チャック48に載置されている。静電チャック48の内部には吸着電極49が設けられている。吸着電極49は、給電線46を介して直流電源47に接続されている。直流電源47から吸着電極49に直流電圧を印加することにより、基板Gは静電吸着により静電チャック48に保持される。
【0017】
下部電極23は絶縁体枠24内に収納され、さらに、処理室4の底面に支持される。また、処理室4の側壁4aには、基板Gを搬入出するための搬入出口27aおよびそれを開閉するゲートバルブ27が設けられている。
【0018】
下部電極23は、中空の支柱25内に設けられた給電線25aにより、整合器28を介して第二の高周波電源29に接続される。第二の高周波電源29は、プラズマ処理中に、例えば、周波数が3.2MHzの、バイアス電圧用高周波電力(以下、バイアスRFパワーともいう。)を下部電極23に印加する。バイアスRFパワーにより、処理室4内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的に基板Gに引き込まれる。
【0019】
さらに、下部電極23内には、基板Gの温度を制御するため、セラミックヒータ等の加熱手段や冷媒流路等からなる温度制御機構と、温度センサとが設けられている(いずれも図示せず)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも中空の支柱25を通して処理容器1外に導出される。
【0020】
ステージSTと処理室4の側壁4aとの間には、複数の部材により環状に構成されるバッフル板32がステージSTを囲んで設けられ、バッフル板32の少なくとも一部に設けられた複数の貫通孔から排気空間にガスを通す。処理室4の底部には排気管31が設けられ、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。排気装置30により、処理室4内のガスが排気され、処理室4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33Pa)に制御される。下部電極23にはHeガス流路(図示せず)が設けられ、Heガス流路を介して、下部電極23に載置された基板Gの裏面にHeガスが供給される。
【0021】
プラズマ処理装置100の各構成部は、コンピュータからなる制御部50に接続されて制御される構成となっている。制御部50の制御下で、プラズマ処理装置100での所望の処理が行われる。
【0022】
[インピーダンス調整回路]
金属窓2には、アンテナ室3側にインピーダンス調整回路18a、18b、18cが接続されている。インピーダンス調整回路18a、18b、18cと部分窓22a、22b、22cとを結ぶ接続部には電位検出器C1、C2、C3が設けられている。これにより、電位検出器C1、C2、C3・・・は各インピーダンス調整回路18の付近に一対一に配置されている。電位検出器C1、C2、C3・・・を総称して電位検出器VCともいう。
【0023】
インピーダンス調整回路18a、18b、18cは、金属窓2の複数の部分窓と接地との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整部の一例であり、総称してインピーダンス調整回路18ともいう。
【0024】
インピーダンス調整回路18について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、金属窓2が有する複数の部分窓のうちの1つの部分窓22の断面と、部分窓22に接続されたインピーダンス調整回路18とを示す。
【0025】
図3に一例を示すように、金属窓2は24の部分窓22に分割されている。これらの部分窓22は、金属窓2を分割した一部であり、絶縁物6を介して互いに隣接して配置され、金属窓2を構成する。各部分窓は、例えば、アンテナ室3の天井部からそれぞれ不図示の支持部材によって吊り下げて固定するようにしてもよい。本例では、下部電極23に対向する処理室4の壁面である天井部、即ち金属窓2の全体の形状を矩形とし、この矩形の中心の内周エリア、環状の中間エリア、環状の外周エリアに分ける。内周エリアは、矩形状の内周エリアを概ね対角線で分割した4つの部分窓22を有する。内周エリアの4つの部分窓22は、短辺を底辺とし互いに対向する2つの三角形と、長辺を底辺とし互いに対抗する2つの台形とで構成される。また、中間エリアは、環状の中間エリアを辺ごとに、更に各辺を2等分するように径方向に分割した合計8つの部分窓22を有する。また、外周エリアは、環状の外周エリアを辺ごとに、更に各辺を3等分するように径方向に分割した合計12の部分窓22を有する。尚、本実施形態においては、図示しないが、内側環状アンテナが内周エリアに対応し、中間環状アンテナが中間エリアに対応し、外側環状アンテナが外周エリアに対応するように配置される。
【0026】
各部分窓22は、絶縁物6を介して配置されているため、処理容器1から絶縁され、かつ、部分窓22同士も互いに絶縁される。絶縁物6の材料例は、例えば、セラミックやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0027】
図2及び図3の例では、インピーダンス調整回路18が1つの部分窓22a、22b、22c・・・に対して1つずつ設けられている。つまり、本例では、24のインピーダンス調整回路18が24の部分窓22に対して一対一に接続されている。ただし、これに限られず、インピーダンス調整回路18は複数の部分窓22に対して一つ設けられてもよい。つまり、複数の部分窓22は、1つ又は複数のエリアに区画され、1つ又は複数のエリアごとにインピーダンス調整回路に接続され得る。例えば、24の部分窓22は、内周エリア、中間エリア及び外周エリアの3つのエリアにインピーダンス調整回路を1つずつ接続してよい。
【0028】
図2に示すように、インピーダンス調整回路18は、容量素子60を含み、部分窓22における接地との間のインピーダンスを調整する。インピーダンス調整回路18は、容量素子60及び抵抗素子61を有するR+C並列回路である。本例では、部分窓22毎に1つの容量素子60と、容量素子60と並列に1つの抵抗素子61とが接続される。容量素子60は、一端において部分窓22と接続され、他端において接地に接続される。抵抗素子61は、容量素子60と並列に一端において部分窓22と接続され、他端において接地に接続される。
【0029】
容量素子60は、可変容量素子でもよく、固定容量素子でもよい。ただし、容量素子60を可変容量素子とすることで、バイアスRFパワーを下部電極23に印加したときにアノード電極として機能する金属窓2と接地との間のインピーダンス(以下、アノードインピーダンスともいう。)を可変に調整でき、より精度よくインピーダンス調整を行うことができる。
【0030】
複数のエリア毎にインピーダンス調整回路18を設ける場合には、容量素子60及び抵抗素子61は、エリア毎に複数の部分窓22と接続されてもよい。なお、図2に示す容量成分C0は、容量素子60による容量成分C以外の浮遊容量を示し、主に、金属窓と、直接若しくは間接的に接地に接続された他の導電性部材との間の空間によりもたらされる容量成分の合算となる。
【0031】
金属窓2に形成した流路に絶縁性の温調媒体を通流させ、これにより、金属窓2の温度を調整している。絶縁性の温調媒体が流れるときに摩擦帯電が生じ、電荷が金属窓2に蓄積され、金属窓2がチャージアップする。プラズマ中の電子の一部が金属窓2に蓄積され、金属窓2がチャージアップすることもある。金属窓2が帯電すると、プラズマが不安定になり、基板Gの処理に影響を与えるため、金属窓2に制御できない電荷を蓄積させないことが重要である。よって、インピーダンス調整回路18は、容量素子60と並列に抵抗素子61を金属窓2に接続する。これにより、金属窓2に蓄積する電荷は抵抗素子61を通して接地に放出されるため、金属窓2の、制御できない電荷によるチャージアップをなくし、プラズマの安定性を確保することができる。
【0032】
電位検出器VC(C1、C2、C3・・・)のそれぞれは、インピーダンス調整回路18a、18b、18c・・・の付近に設置され、容量素子60にかかる電位(以下、容量素子電圧ともいう。)を検出する。図1の例では、電位検出器C1、C2、C3は、インピーダンス調整回路18a、18b、18cの付近に設置されている。電位検出器C1、C2、C3は、基板Gの処理の間、インピーダンス調整回路18a、18b、18cの容量素子60のそれぞれにおいて生じる電荷の移動により発生する電位差を容量素子電圧として測定する。
【0033】
係る構成により、バイアス電圧用の高周波電力を下部電極23に供給し、下部電極23をカソード電極、金属窓2を下部電極23に対向する対向電極であるアノード電極とし、インピーダンス調整回路18は、アノードインピーダンスを調整する。これにより、金属窓2において容量素子60の容量によりプラズマとの間に所望の電位差を発生させて、プラズマのスパッタによって金属窓2に付着した副生成物の堆積物を除去するクリーニングが可能になる。また、バイアス電圧用の高周波電力を下部電極23に供給した際、処理容器1内の他の各パーツもアノードとして機能しうるが、金属窓2をより積極的にアノードとして機能させカソード電極即ち下部電極23とのカップリングを強化する。これにより、プラズマのスパッタによる処理容器1内の他のパーツの消耗を抑えることができる。
【0034】
金属窓2における電位差が大きすぎると金属窓2に付着した副生成物の除去のみならず、金属窓2が消耗し、電位差が小さすぎると金属窓2に付着した副生成物の除去が不十分になる。よって、金属窓2に付着した副生成物を除去しつつ、クリーニング時に金属窓2及び処理容器1内のその他のパーツの過度の消耗を抑制できる範囲に容量素子60の容量を調整することが重要である。これにより、パーティクルを抑制しつつ、各パーツの寿命を伸ばし、メンテナンス周期を長くすることができる。
【0035】
[制御部の構成]
次に、後述するインピーダンス調整回路18の故障検知方法を制御する制御部50のハードウェア構成及び機能構成について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、実施形態に係る制御部50のハードウェア構成を示す図である。図5は、実施形態に係る制御部50の機能構成を示す図である。
【0036】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、I/Oポート104、操作パネル105、HDD106(Hard Disk Drive)を有する。各部はバスBによって接続されている。
【0037】
CPU101は、RAM103に読み込まれた各種のプログラムや、エッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の基板Gの処理手順を規定したレシピに基づき、プラズマ処理装置100の各種の動作及び各種の処理を制御する。基板Gの処理(基板処理)には、基板Gに対するプラズマ処理だけでなく、プラズマ処理を実施する前の吸着電極49に直流電圧を印加する静電吸着処理なども含まれる。プログラムには、故障検知方法を実行するプログラムが含まれる。CPU101は、RAM103に読み込まれたこれらのプログラムに基づき、故障検知方法を実行する。
【0038】
ROM102は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU101のプログラムやレシピ等を記憶する記憶媒体である。RAM103は、CPU101のワークエリア等として機能する。
【0039】
I/Oポート104は、容量素子電圧、温度、圧力、ガス流量等を検出する各種センサの値をプラズマ処理装置100に取り付けられた各種センサから取得し、CPU101に送信する。また、I/Oポート104は、CPU101が出力する制御信号をプラズマ処理装置100の各部へ出力する。また、I/Oポート104には、操作者(ユーザ)がプラズマ処理装置100を操作する操作パネル105が接続されている。
【0040】
HDD106には、補助記憶装置であり、プロセスレシピやプログラム等が格納されてもよい。また、HDD106には、各種センサが計測した測定値のログ情報が格納されてもよい。
【0041】
図5に示す制御部50の機能構成について説明する。制御部50は、有線により電位検出器VC、すなわち、24の電位検出器C1~C24に接続されている。制御部50は、取得部51、A/D変換部52、異常検知判定部53、異常特定部54、表示部55、プロセス実行部56、及び記憶部57を有する。電位検出器VCは、基板Gに処理を行う間、容量素子電圧を測定する。電位検出器VCは、基板Gに複数の処理ステップから成る処理を行う間、複数の容量素子60のそれぞれにかかる容量素子電圧を測定してもよい。電位検出器VCは、基板Gに処理を行う複数の処理ステップの一つ若しくは二つ以上の処理ステップにわたり容量素子電圧を測定してもよい。
【0042】
記憶部57は、基板Gに処理を行うための処理手順が設定されたレシピを記憶している。記憶部57は、後述する故障検知方法において使用するテーブル57a(図8参照)を記憶している。
【0043】
プロセス実行部56は、レシピに基づき基板Gに処理を行う。処理には、静電吸着処理やプラズマ処理などが含まれる。プロセス実行部56は、基板Gを処理する間、静電チャック48の吸着電極49に直流電圧を印加し、基板Gを静電チャック48に吸着する静電吸着処理を行い、ソースRFパワー及びバイアスRFパワーを供給し、基板Gにプラズマ処理を行う。
【0044】
取得部51は、基板Gを処理する間、測定した容量素子電圧を電位検出器VCから取得する。例えば、取得部51は、測定した容量素子電圧と、対応する容量素子60を含むインピーダンス調整回路18の番号(No.)とを取得する。取得部51は、測定した容量素子電圧と、対応する容量素子60を含むインピーダンス調整回路18の番号(No.)と、容量素子電圧を測定したときの処理ステップの処理ステップ番号(No.)と、を取得してもよい。
【0045】
A/D変換部52は、取得部51が取得した容量素子電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換する。異常検知判定部53は、デジタル変換した複数の容量素子60のそれぞれの容量素子電圧と予め定められた閾値との比較結果に基づき、複数のインピーダンス調整回路18のそれぞれの故障を判定する。
【0046】
複数の容量素子60のそれぞれは、故障時にショート(短絡)状態となる。このとき、バイアスRFパワーが供給される下部電極23の対向電極となる部分窓22は、ショートした容量素子60によって下部電極から見て実質的にグランド電位になる。よって、静電チャック48に直流電圧を印加したり、ソースRFパワーとバイアスRFパワーの少なくともいずれかの供給を開始したりしたときに部分窓22の電位に変動が生じることはなく、容量素子60の両端にも実質的に電位差が生じることはない。それゆえ、測定した容量素子電圧が閾値を下回る場合に、対応する容量素子60にショート(故障)していると判定できる。
【0047】
異常検知判定部53は、少なくとも、直流電圧の印加開始時点、ソースRFパワーの供給開始時点、ソースRFパワーの定常供給時、バイアスRFパワーの供給開始時点、バイアスRFパワーの定常供給時、及び直流電圧の印加停止時点のうちのいずれか一つあるいは二つ以上のタイミングに測定した容量素子電圧に基づき、複数のインピーダンス調整回路18のそれぞれについて故障を判定してもよい。
【0048】
例えば、異常検知判定部53は、複数の部分窓22のそれぞれに接続された容量素子60ごとに容量素子電圧と閾値とを比較し、容量素子60ごとの比較結果に基づき、各容量素子60が含まれるインピーダンス調整回路18ごとに故障を判定してもよい。
【0049】
異常検知判定部53は、複数の処理ステップの一つ若しくは二つ以上の処理ステップにわたり測定した容量素子電圧が前記閾値超えなかった場合、対応する容量素子を含むインピーダンス調整回路18を故障と判定してもよい。
【0050】
異常特定部54は、複数の部分窓22のうち、容量素子電圧が閾値を超えなかった容量素子60が含まれるインピーダンス調整回路18又は当該インピーダンス調整回路18に接続された部分窓22を特定してもよい。これにより、インピーダンス調整回路18の故障を検知するだけでなく、故障した部分を特定することができる。
【0051】
表示部55は、基板Gの処理が終了したときにオペレータが監視する画面にアラームを出し、基板Gの処理中に異常が発生したことをオペレータに通知する。オペレータが監視していない無人のシステムの場合、テーブル57aの故障しているインピーダンス調整回路18の判定フラグを異常に書き替えて記憶部57に記憶してもよい。
【0052】
インピーダンス調整回路18の故障、及び故障と判定されたインピーダンス調整回路18又は部分窓22を特定する情報を制御部50からホストコンピュータ59へ通知してもよい。
【0053】
取得部51は、I/Oポート104により実現可能である。A/D変換部52、異常検知判定部53、異常特定部54、プロセス実行部56は、CPU101又はCP101に組み込まれたA/D変換回路により実現可能である。表示部55は、操作パネル105により実現可能である。記憶部57は、ROM102、RAM103、HDD106により実現可能である。
【0054】
[故障検知方法]
次に、実施形態に係る故障検知方法について、図6図8を参照しながら説明する。図6は、実施形態に係る故障検知方法を示すフローチャートである。図7は、実施形態に係る容量素子電圧の測定結果の一例を示す図である。図8は、図6の故障検知方法において使用する、容量素子電圧(MAX値)と判定結果とを記憶したテーブル57aの一例である。
【0055】
図6の故障検知方法は、制御部50の前記各部によって実行される。故障検知方法は、プロセス実行部56が基板Gの処理を開始するときに並行して開始される。レシピに従い基板Gの処理が開始されると、ステップS1において、プロセス実行部56は基板Gを処理容器1内の下部電極23に載置し、準備する。基板Gの処理が開始されると、電位検出器VC(電位検出器C1、C2、C3・・・)のそれぞれは、インピーダンス調整回路18(インピーダンス調整回路18a、18b、18c・・・)のそれぞれの付近の容量素子電圧を測定する。
【0056】
次にステップS3において、プロセス実行部56は静電チャック48の吸着電極49に直流電圧を印加する。これにより、基板Gは、静電吸着により静電チャック48に保持される。
【0057】
次にステップS5において、プロセス実行部56はソースRFパワー及びバイアスRFパワーの少なくともいずれかの供給を開始する。ソースRFパワー及びバイアスRFパワーの供給は、基板Gを処理する内容によって、同時に開始してもよく、いずれかを先に開始してもよい。次にステップS7において、プロセス実行部56は、アンテナ室3に供給されるソースRFパワーにより処理ガス供給部20から供給されたガスをプラズマ化し、誘導結合プラズマを生成し、基板Gのプラズマ処理を行う。
【0058】
次にステップS9において、取得部51は、電位検出器VCが測定した電位検出値である容量素子電圧を取得する。取得部51は、24の電位検出器VCが測定した24の容量素子電圧を取得する。なお、ステップS9は、図6においては図示の都合上ステップS7と同時又はその直後から実行されるように描かれているが、実際には、少なくともステップS3と同時に、あるいはそれ以前から、容量素子電圧の取得を開始している。取得部51は、インピーダンス調整回路18の付近にそれぞれに設けられた電位検出器VCの容量素子電圧、すなわち、24の容量素子電圧を定期的又は不定期に取得し続ける。
【0059】
次にステップS11において、A/D変換部52は、取得部51が取得した容量素子電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0060】
次にステップS13において、異常検知判定部53は、デジタル変換後の容量素子電圧が容量素子電圧MAX値よりも大きいかを判定する。容量素子電圧MAX値(以下、単にMAX値ともいう。)の初期値は、電位検出器VCのそれぞれに対して0に設定されている。異常検知判定部53は、容量素子電圧がMAX値以下であると判定した場合、ステップS15をスキップしてステップ17に進む。異常検知判定部53は、容量素子電圧がMAX値よりも大きいと判定した場合、MAX値を、容量素子電圧の値に更新する。これにより、記憶部57には、容量素子電圧MAX値として、基板処理中に電位検出器VCにより測定された容量素子電圧の最大値が記憶される(図8参照)。
【0061】
次にステップS17において、異常検知判定部53は、処理ステップを終了したかを判定する。異常検知判定部53は、処理ステップを終了していないと判定した場合、ステップS9に戻り、ステップS9~S15の処理を繰り返す。これにより、MAX値には、処理ステップ毎に基板処理中に電位検出器VCにより測定された容量素子電圧の中でその時点で最も大きい値が記憶される。
【0062】
異常検知判定部53は、処理ステップを終了したと判定した場合、ステップS19に進み、基板Gの処理を終了したかを判定する。異常検知判定部53は、基板Gの処理を終了していないと判定した場合、ステップS9に戻り、次の処理ステップについてステップS9~S15の処理を繰り返す。これにより、次の処理ステップにおいて基板処理中に電位検出器VCにより測定された容量素子電圧の最大値が次の処理ステップの容量素子電圧MAX値に記憶される。
【0063】
異常検知判定部53は、基板Gの処理を終了したと判定した場合、ステップS21に進み、図9に示す異常判定処理を実行し、本処理を終了する。
【0064】
例えば、図7に示す例では、基板Gの処理が処理ステップ1、2から構成されている。処理ステップ1においてプラズマ処理を含む処理が施され、処理ステップ2において基板Gなどの除電を行う除電処理を含む処理が施される。図7の横軸は0秒で基板処理を開始してからの時間を示し、縦軸(左)はソースRFパワー及びバイアスRFパワーの各RFパワー(W)及び直流電圧(V)を示す。図7の縦軸(右)は横軸に示す時間毎に測定された容量素子電圧(V)を示す。
【0065】
処理ステップ1において、基板処理の開始時(0秒)、線dに示すように静電チャック48に直流電圧が供給された時点で線eに示す容量素子電圧が変動している。これは、容量素子60がショートしておらず正常であるため、電位検出器VCが直流電圧の印加時点の直流電圧の変動によって容量素子60にチャージされる電荷の移動を検出し、容量素子電圧として測定した値である。
【0066】
時刻tには、線aに示すソースRFパワーの供給が開始され、ソースRFパワーは時刻tまで供給されている。また、時刻tには、線bに示すバイアスRFパワーの供給が開始され、バイアスRFパワーも時刻tまで供給されている。電位検出器VCは、ソースRFパワーの供給時点及びバイアスRFパワーの供給時点及びその間の時刻t~時刻tにこれらの各RFパワーの変動を検出し、線eに示す容量素子電圧を測定している。
【0067】
時刻t~時刻tは、線aに示すソースRFパワーの定常供給時及び線bに示すバイアスRFパワーの定常供給時である。電位検出器VCは、時刻t~時刻tに線eに示す容量素子電圧を測定している。
【0068】
電位検出器VCは、処理ステップ番号(No.)と、インピーダンス調整回路番号(No.)と、測定した容量素子電圧とを含む情報を出力し、取得部51はこれらの情報を取得する。図8に示すように、記憶部57には、処理ステップ番号(No.)に対応して、24のインピーダンス調整回路18のそれぞれを識別するインピーダンス調整回路番号(No.)と、図6の処理により得られた容量素子電圧MAX値が記憶される。
【0069】
図7の処理ステップ1では、容量素子電圧MAX値には基板処理の開始直後の線eが示す容量素子電圧(約80V)が容量素子電圧MAX値に記憶される。
【0070】
処理ステップ2において測定された容量素子電圧についても、図6の処理を実行することにより容量素子電圧MAX値が記憶部57に記憶される。処理ステップ2では、静電チャック48に供給する直流電圧の印加停止時点t、ソースRFパワーの供給開始時点t、ソースRFパワーの定常供給時に、電位検出器VCは、線eに示す容量素子電圧を測定している。
【0071】
図7の処理ステップ2では、容量素子電圧MAX値には直流電圧の印加停止時点tの線eが示す容量素子電圧が容量素子電圧MAX値に記憶される。電位検出器VCが測定した容量素子電圧がマイナス値を持つ場合もある。よって、図6の処理に使用する容量素子電圧は、容量素子電圧の絶対値を意味する。つまり、図7の処理ステップ2では、供給停止時点tの容量素子電圧の絶対値(約40V)が容量素子電圧MAX値に記憶される。
【0072】
なお、処理ステップ1、2に分けて容量素子電圧MAX値を算出しなくてもよい。基板処理終了時にインピーダンス調整回路18のそれぞれに一つずつの容量素子電圧MAX値が算出され、記憶部57に記憶されてもよい。
【0073】
このように、電位検出器VCは、静電チャック48に供給される直流電圧と、ソースRFパワーと、バイアスRFパワーとの供給に対する過渡現象に対して容量素子60にチャージされる電荷の移動により発生する電位差を容量素子電圧として出力する。
【0074】
よって、容量素子電圧MAX値が予め定められた閾値よりも大きい場合、容量素子60はショートしておらず、正常であると判定できる。一方、容量素子電圧MAX値が予め定められた閾値を下回る場合、容量素子60はショートしており、異常であると判定できる。例えば、図7には閾値を図示していないが、ノイズなどを考慮し、閾値は0ボルトよりも大きく数ボルト以下の値であってもよい。線fは、処理ステップ1及び処理ステップ2において容量素子電圧が0である。この場合、測定した電位検出器VCに対応する(電位検出器VCの付近の)インピーダンス調整回路18の容量素子60はショートしており、異常であると判定する。
【0075】
以下に説明する異常判定方法では、前記過渡現象に対して容量素子電圧の変化の有無によって容量素子60(インピーダンス調整回路18)の正常又は異常を判定する。なお、異常判定方法は、図6に示すように基板処理後に実行することが好ましいが、各処理ステップの終了ごとに実行してもよい。
【0076】
[異常判定方法]
図9は、実施形態に係る異常判定方法を示すフローチャートである。図9の異常判定方法は、図6のステップS21により呼び出されたときに開始される。すなわち、基板Gの処理を終了したと判定した場合、図9の異常判定方法の実行が開始される。
【0077】
ステップS23において異常検知判定部53は、すべてのインピーダンス調整回路18の判定を完了したかを判定する。ステップS23が初めて実行されたとき「No」と判定されるため、ステップS25に進み、異常検知判定部53は、未判定のインピーダンス調整回路18の容量素子電圧MAX値が予め定められた閾値以上であるかを判定する。ここでいう容量素子電圧MAX値は、容量素子電圧MAX値の絶対値である。
【0078】
ステップS25において、異常検知判定部53は、容量素子電圧MAX値が予め定められた閾値以上であると判定した場合、ステップS27に進み、そのインピーダンス調整回路18は正常であると判定する。記憶部57は、テーブル57aの判定フラグのうち、該当インピーダンス調整回路18に対応した判定フラグに、正常を示す「0」を記憶し、ステップS23に戻る。
【0079】
ステップS25において、異常検知判定部53は、容量素子電圧MAX値が予め定められた閾値を下回ると判定した場合、ステップS29に進み、そのインピーダンス調整回路18は異常であると判定する。記憶部57は、テーブル57aの判定フラグのうち、該当インピーダンス調整回路18に対応した判定フラグに、異常を示す「1」を記憶し、ステップS23に戻る。
【0080】
ステップS23において異常検知判定部53は、すべてのインピーダンス調整回路18に対応する容量素子電圧MAX値の判定を完了したと判定するまで、ステップS25~S29の処理を繰り返す。ステップS23において異常検知判定部53は、すべてのインピーダンス調整回路18の判定を完了したと判定した場合、ステップS31に進み、インピーダンス調整回路18毎に全処理ステップの判定フラグを抽出する。
【0081】
次にステップS33において、異常検知判定部53は、インピーダンス調整回路18毎に全処理ステップの判定フラグの値がすべて1であるかを判定する。異常検知判定部53は、記憶部57のテーブル57aを参照して、インピーダンス調整回路18毎に全判定フラグが1であるかを判定してよい。異常検知判定部53は、全判定フラグが1であると判定した場合、ステップS37に進み、当該インピーダンス調整回路18は異常であると判定し、異常を発見した部分を特定する。異常を発見した部分としては、判定フラグが「1」のインピーダンス調整回路18の番号を特定してもよいし、判定フラグが「1」のインピーダンス調整回路18が付けられた部分窓22を特定してもよい。これらの情報ととともに処理ステップ番号を特定してもよい。
【0082】
次にステップS39において、異常検知判定部53は異常を通知し、本処理を終了する。異常を通知の一例としては、異常検知判定部53はインピーダンス調整回路18の異常及び異常を発見した部分窓22の情報をホストコンピュータ59に通知する。異常を通知の他の例としては、表示部55は、オペレータが監視する画面にアラームを出し、オペレータに通知する。オペレータが監視していない無人のシステムの場合、異常検知判定部53はテーブル57aをホストコンピュータ59又は他の機器に送信し、故障を通知してもよい。
【0083】
ステップS33において、異常検知判定部53は、インピーダンス調整回路18毎に全処理ステップの判定フラグの少なくとも一つが0であると判定した場合、ステップS35に進み、当該インピーダンス調整回路18は正常であると判定し、本処理を終了する。
【0084】
以上に説明した異常判定方法では、全処理ステップで判定フラグが異常を示したときのみ該当インピーダンス調整回路18を異常と判定したが、これに限らない。複数の処理ステップの一つ若しくは二つ以上の処理ステップにわたり測定した容量素子電圧が閾値を超えなかった容量素子を含むインピーダンス調整部18を故障と判定してよい。例えば、複数の処理ステップから構成される基板処理において、一つの処理ステップで判定フラグが異常を示したとき、該当インピーダンス調整回路18を異常と判定してもよい。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の故障検知方法及びプラズマ処理装置によれば、プラズマ処理装置100のインピーダンス調整回路18の故障を検知することができる。また、故障したインピーダンス調整回路18又は故障したインピーダンス調整回路18が設けられた部分窓22を特定できる。
【0086】
例えば、直流電圧の印加開始、ソースRFパワーの供給開始、バイアスRFパワーの供給開始の3つの過渡現象、及びソースRFパワーの定常供給、バイアスRFパワーの定常供給の2つのRF定常供給、直流電圧の印加停止、のうちの一つに応じて容量素子60に発生する電位差を電位検出器VCで検出し、容量素子電圧を測定すると正常及び異常の判定において誤判定が生じる可能性がある。しかしながら、以上に説明した故障検知方法では、図7の処理ステップ1の例では、静電チャックに供給する直流電圧の印加開始、ソースRFパワーの供給開始、バイアスRFパワーの供給開始の3つの過渡現象、及びソースRFパワーの定常供給、バイアスRFパワーの定常供給の2つのRF定常供給に応じて容量素子60に発生する電位差を電位検出器VCで検出し、容量素子電圧を測定する。図7の処理ステップ2の例では、静電チャックに供給する直流電圧の印加停止、ソースRFパワーの供給開始の2つの過渡現象に応じて容量素子60に発生する電位差を電位検出器VCで検出し、容量素子電圧を測定する。よって、本実施形態の故障検知方法及び異常判定方法によれば、直流電圧及び複数のRFパワーの少なくともいずれかの2以上の過渡現象を電位検出器VCで検出し、容量素子電圧を測定する。これにより、インピーダンス調整回路18の故障を精度良く検知することができる。
【0087】
今回開示された実施形態に係る故障検知方法及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0088】
本開示のプラズマ処理装置100にてプラズマ処理される対象は、例えば、G6の1.5m×1.85mの被処理基板Gおよび他の寸法の矩形の被処理基板Gが挙げられるが、これに限定されず、円盤形状のウエハ等の種々の部材を対象とし得る。
【符号の説明】
【0089】
1 処理容器
2 金属窓
3 アンテナ室
4 処理室
6 絶縁物
13 高周波アンテナ
15 第一の高周波電源
16 給電部材
18 インピーダンス調整回路
20 処理ガス供給部
22 部分窓
23 下部電極
29 第二の高周波電源
30 排気装置
32 バッフル板
60 容量素子
61 抵抗素子
G 被処理基板
C1、C2、C3 電位検出器
ST ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9