IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

特開2023-47344人工三次元組織の製造方法、人工三次元組織の計測方法および人工三次元組織
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047344
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】人工三次元組織の製造方法、人工三次元組織の計測方法および人工三次元組織
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/079 20100101AFI20230329BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C12N5/079
C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151816
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/248,294
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昌治
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和生
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄矢
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 重徳
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB11
4B029CC13
4B029GA03
4B029GB01
4B065AA90X
4B065BC41
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】感覚神経細胞の観察を容易に行える人工三次元組織の製造方法を提供する。
【解決手段】側壁に囲まれた培養空間と、対向する側壁に設けられたアンカー部と、を有する培養槽を準備することと、培養槽で培養を行って、真皮細胞が培養された第1培養体と、感覚神経細胞が密集したスフェロイドが培養された第2培養体とを有するゲル体を得ることと、ゲル体上に配置した表皮細胞を培養することと、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に囲まれた培養空間と、対向する前記側壁に設けられたアンカー部と、を有する培養槽を準備することと、
前記培養槽で培養を行って、真皮細胞が培養された第1培養体と、感覚神経細胞が密集したスフェロイドが培養された第2培養体とを有するゲル体を得ることと、
前記ゲル体上に配置した表皮細胞を培養することと、
を含む、人工三次元組織の製造方法。
【請求項2】
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞を培養し前記第1培養体を含む予ゲル体を得ることと、
前記予ゲル体の第1面に配置した前記スフェロイドを培養して、前記第1面に前記第2培養体を有する前記予ゲル体を得ることと、
前記第2培養体を有する前記予ゲル体における前記第1面と逆側の第2面に配置した前記表皮細胞を培養することと、
を含む、
請求項1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項3】
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞および前記スフェロイドを培養して、前記第1培養体および前記第2培養体を内部に含む前記ゲル体を得ることである、
請求項1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項4】
前記培養槽を準備することは、対向する前記アンカー部の間に対向方向に沿って線状の保持部材を設置することを含む、
請求項3に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項5】
前記培養槽を準備することは、対向する前記アンカー部の間に対向方向に沿って線状部材を設置することを含み、
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞を培養し前記第1培養体を含み、前記線状部材が前記対向方向に貫く予ゲル体を得ることと、
前記予ゲル体から前記線状部材を抜去して、前記予ゲル体を前記対向方向に貫く空洞を形成することと、
前記空洞に配置した前記スフェロイドを培養して前記第2培養体を得ることと、
を含む、
請求項1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項6】
前記スフェロイドとシュワン細胞とを培養して前記第2培養体を得る、
請求項1から5のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項7】
前記感覚神経細胞の数と前記シュワン細胞の数とを、3:1から1:3の割合の範囲で混合して培養する、
請求項6に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項8】
前記培養槽を準備することは、複数の電極がアレイ状に配列され、前記電極で細胞外電位の計測を行う計測器を設置することを含み、
前記ゲル体を得ることと、前記表皮細胞を培養することと、を前記電極上で行う、
請求項1から5のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法。
【請求項9】
複数の電極がアレイ状に配列され、前記電極で細胞外電位の計測を行う計測器を準備することと、
請求項1から5のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法で製造された前記人工三次元組織を前記電極上に載せることと、
を含む、人工三次元組織の計測方法。
【請求項10】
前記電極上に載せた前記人工三次元組織を前記電極に向けて押し付けることを含む、
請求項9に記載の人工三次元組織の計測方法。
【請求項11】
前記人工三次元組織に薬剤を接触させることと、
前記薬剤の接触による刺激に対する前記人工三次元組織の応答を計測して前記薬剤を評価することと、
を含む、
請求項9に記載の人工三次元組織の計測方法。
【請求項12】
真皮細胞を含む真皮組織層と、
表皮細胞を含み前記真皮組織層上に形成された表皮組織層と、
前記真皮組織層に含まれ、神経突起を有する感覚神経細胞が密集したスフェロイドと、
を有する、人工三次元組織。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工三次元組織の製造方法、人工三次元組織の計測方法および人工三次元組織に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚には感覚神経が通っており,様々な感覚を受容している。皮膚感覚については様々な研究がなされてきたが、解明されていない点も多く残されている。そこで、皮膚モデル内部で感覚神経細胞を培養する方法が行われている。
【0003】
例えば非特許文献1には、スポンジコラーゲンを用いた共培養系を用いて皮膚組織と、感覚神経細胞を培養し、創傷治癒モデルを作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Blais, L. Mottier, M. A. Germain, S. Bellenfant, S. Cadau, and F. Berthod, “Sensory neurons accelerate skin reepithelialization via substance P in an innervated tissue-engineered wound healing model,” Tissue Engineering - Part A, vol. 20, no. 15-16, pp. 2180-2188, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示された方法では、感覚神経細胞が皮膚組織内に散在しているため、観察および機能解析を行うことが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、感覚神経細胞の観察を容易に行える人工三次元組織の製造方法、および人工三次元組織を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の別の目的は、感覚神経細胞の機能解析を容易に行える人工三次元組織の計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、側壁に囲まれた培養空間と、対向する前記側壁に設けられたアンカー部と、を有する培養槽を準備することと、前記培養槽で培養を行って、真皮細胞が培養された第1培養体と、感覚神経細胞が密集したスフェロイドが培養された第2培養体とを有するゲル体を得ることと、前記ゲル体上に配置した表皮細胞を培養することと、を含む、人工三次元組織の製造方法である。
【0009】
本発明の第2の態様は、複数の電極がアレイ状に配列され、前記電極で細胞外電位の計測を行う計測器を準備することと、本発明の第1の態様の人工三次元組織の製造方法で製造された前記人工三次元組織を前記電極上に載せることと、を含む、人工三次元組織の計測方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、真皮細胞を含む真皮組織層と、表皮細胞を含み前記真皮組織層上に形成された表皮組織層と、前記真皮組織層に含まれ、前記真皮組織層から前記表皮組織層に向けて伸展する神経突起を有する感覚神経細胞が密集したスフェロイドと、を有する、人工三次元組織である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、感覚神経細胞の観察を容易に行える人工三次元組織の製造方法および人工三次元組織を提供することができる。
【0012】
また、本発明では、感覚神経細胞の機能解析を容易に行える人工三次元組織の計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る人工皮膚組織1を模式的に示した斜視断面図である。
図2】人工皮膚組織製造装置30を構成する培養槽40の概略的な平面図である。
図3】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図5】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図8】第1実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図9】培養中の感覚神経細胞14を観察した写真図である。
図10】予ゲル体GPに固定後の感覚神経細胞および神経突起を示す組織染色画像を示す図である。
図11】第2実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図12】第2実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図13】第2実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図14】第2実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図15】スフェロイド15のみの第1サンプルを用いて第2実施形態の製造方法で製造された神経突起の断面染色像である。
図16】第1サンプルを用いて第2実施形態の製造方法で製造された人工皮膚組織の切片の染色像である。
図17】スフェロイドの染色像である。
図18】感覚神経細胞とシュワン細胞との混合比を変えたスフェロイドを培養したときの免疫染色像である。
図19】第3実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図20】第3実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図21】第4実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図22】第4実施形態に係る人工皮膚組織1の製造方法を示す断面図である。
図23】本発明の人工皮膚組織1の計測方法を示す断面図である。
図24】アレイチップ61における電極マップ、電極の位置およびアドレスを模式的に示した拡大図である。
図25】各アドレスの電極において計測された時間と電圧との関係を示す図である。
図26】各アドレスの電極において計測された時間と振幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の人工三次元組織の製造方法、人工三次元組織の計測方法および人工三次元組織の実施の形態を、図1から図26を参照して説明する。人工三次元組織は、人工皮膚組織である。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0015】
(人工皮膚組織)
まず、本発明に係る人工皮膚組織について、図1を参照して説明する。
図1は、人工三次元組織である人工皮膚組織1を模式的に示した斜視断面図である。
人工皮膚組織1は、真皮組織層10と表皮組織層20とを含む。人工皮膚組織1は、真皮組織層10と表皮組織層20とが積層された方向(図1における上下方向、以下、積層方向と称する)と直交する平面に沿った所定方向(図1における左右方向)に延びて形成されている。
【0016】
表皮組織層20は、真皮組織層10上に表皮細胞21を播種して培養することにより形成されたものである。表皮細胞21としては、例えば、表皮角化細胞が使用できる。
【0017】
表皮細胞としては、ヒト、マウス、ラット等、哺乳動物由来の細胞が挙げられ、ヒト由来表皮細胞が好ましい。ヒト由来表皮細胞としては、表皮角化細胞、表皮メラノサイトが挙げられ、表皮角化細胞が好ましい。表皮角化細胞としては、正常ヒト表皮角化細胞(Normal Human Epidermal Keratinocytes:NHEK) が挙げられる。表皮メラノサイトとしては、正常ヒト表皮メラノサイト(Normal Human Epidermal Melanocytes:NHEM)が挙げられる。
【0018】
真皮組織層10は、細胞外マトリックス成分11中の真皮細胞12を培養することにより形成されたものであり、真皮細胞12が培養された第1培養体12Aを含む。細胞外マトリックス成分11としては、特に限定されないが、例えば、コラーゲン(I型、II型、III型、V型、XI型など)、マウスEHS腫瘍抽出物(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンなどを含む)より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、ゼラチン、寒天、アガロース、フィブリン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどを例示することができる。真皮細胞12としては、例えば、線維芽細胞を用いることができる。
【0019】
線維芽細胞としては、ヒト、マウス、ラット等、哺乳動物由来の細胞が挙げられ、ヒト由来線維芽細胞が好ましい。ヒト由来線維芽細胞としては、ヒト皮膚線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblasts:NHDF)、ヒト肺線維芽細胞:Human Pulmonary Fibroblasts (HPF)、ヒト心臓線維芽細胞:Human Cardiac Fibroblasts (HCF)、ヒト大動脈外膜線維芽細胞:Human Aortic Adventitial Fibroblasts (HAoAF)、ヒト子宮線維芽細胞:Human Uterine Fibroblasts (HUF)、ヒト絨毛間葉系線維芽細胞:Human Villous Mesenchymal Fibroblasts (HVMF)等が挙げられ、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)が好ましい。
【0020】
真皮組織層10は、感覚神経細胞14が密集したスフェロイド15と神経突起16とを含む。
感覚神経細胞14としては、特に限定されないが、ヒト、マウスおよびラットの脊髄神経節由来、ヒト、マウスおよびラットの脳(皮質・海馬・中脳/後脳)由来、ヒトiPS細胞由来等を用いることができる。本実施形態では、E15マウス由来である。
【0021】
神経突起16は、真皮組織層10内から表皮組織層20にかけて伸展する。神経突起16は、スフェロイド15が含まれる真皮組織層10から表皮組織層20に向けて伸展する。すなわち、真皮組織層10は、スフェロイド15が培養された第2培養体15Aとして、感覚神経細胞14および神経突起16を含む。
【0022】
(人工皮膚組織製造装置)
次に、上記の人工皮膚組織1を製造する人工皮膚組織製造装置について、図2および図3を参照して説明する。
図2は、人工皮膚組織製造装置30を構成する培養槽40の概略的な平面図である。図3は、人工皮膚組織製造装置30の縦断面図である。
図2および図3に示すように、人工皮膚組織製造装置30は、培養槽40および培養皿50を有する。
【0023】
培養槽40は、平面視矩形の四角筒状に形成されている。培養槽40は、側壁41と、培養空間42と、アンカー部43とを有する。側壁41は、矩形枠状である。培養空間42は、側壁41に囲まれて培養槽40を上下方向に貫通している。アンカー部43は、側壁41の内壁面41aから培養空間42に突出して設けられている。アンカー部43は、矩形枠の各辺を構成する側壁41毎に、側壁41の長さ方向に間隔をあけて複数(図2では3つ)設けられている。対向する側壁41に設けられたアンカー部43は、互いに対向して配置されている。図3に示すように、アンカー部43は、側壁41における高さ方向の中間位置から内壁面41aの法線方向に沿って培養空間42に突出する。内壁面41aの法線方向と平行で培養空間42を挟んでアンカー部43が対向する方向を対向方向と呼ぶ。
【0024】
アンカー部43は、第1部分43Aと第2部分43Bとを有する。第1部分43Aは、基端が内壁面41aに位置し、対向方向に沿って培養空間42に突出する円柱形状である。第2部分43Bは、第1部分43Aの先端に設けられる。第2部分43Bは、第1部分43Aの先端から対向方向に沿って培養空間42に突出する円柱(円盤)形状である。第2部分43Bの外径寸法は、第1部分43Aの外径寸法よりも大きい。第2部分43Bは、内壁面41aと対向する係合面44を有する。培養空間42において、内壁面41aと第1部分43Aの外周面と係合面44とで囲まれた領域は、アンカー空間となる。アンカー空間に位置する培養体(詳細は後述する)は、収縮時に係合面44に係合することによって、対向方向の収縮が抑制される。
【0025】
培養槽40は、一例として、3Dプリンタでアクリル樹脂を印刷し、紫外線照射で硬化させることにより製作される。製作された培養槽40は、化学物質や紫外線に耐性があり、生体適合性も高いパリレン等でコーティングすることが好ましい。
【0026】
培養皿50には、培養槽40が載置される。培養空間42は、側壁41と培養皿50に囲まれて形成される。培養皿50には、保持部51が設けられている。保持部51は、側壁41の外壁面41bを外側から保持する。保持部51が外壁面41bを外側から保持することによって、培養空間42からゾルが漏出することを抑制できる。保持部51は、一例として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を培養槽40の周囲に流し込み所定時間焼き固めることで製作される。
【0027】
(人工皮膚組織1の製造方法)
次に、人工三次元組織の製造方法としての人工皮膚組織1の製造方法について、図3から図8を参照して説明する。
本発明に係る人工皮膚組織(人工三次元組織)1の製造方法は、側壁41に囲まれた培養空間42と、対向する側壁41に設けられたアンカー部43と、を有する培養槽40を準備することと、培養槽40で培養を行って、真皮細胞12が培養された第1培養体12Aと、感覚神経細胞14が密集したスフェロイド15が培養された第2培養体15Aとを有するゲル体Gを得ることと、ゲル体G上に配置した表皮細胞21を培養することと、を含む。
【0028】
以下、人工皮膚組織1の製造方法について詳細に説明する。
[人工皮膚組織1の製造方法の第1実施形態]
まず、人工皮膚組織1の製造方法の第1実施形態について説明する。
(培養槽40の準備)
培養槽40の準備としては、側壁41にアンカー部43が設けられた培養槽40を培養皿50に載置するとともに、保持部51に外壁面41bを保持させることによって、培養槽40を培養皿50に保持させる。
【0029】
(ゲル体Gの取得)
第1実施形態におけるゲル体Gの取得においては、まず、図3に示すように、細胞外マトリックス成分11と真皮細胞12(例えば、正常ヒト真皮線維芽細胞)との混合物を培養槽40の培養空間42に注ぎ込む。混合物は、アンカー部43が浸漬される高さとなる量で注ぎ込まれる。本実施形態では、細胞外マトリックス成分11としてコラーゲンが用いられている。
【0030】
細胞外マトリックス成分11と真皮細胞12との混合物が培養槽40に注ぎ込まれると、混合物を所定条件で培養(インキュベーション)する。培養条件としては、真皮組織層10の密度がヒトの真皮相当となる条件で行う。培養条件は、一例として、37℃の温度下で2日間(48時間)行う。
【0031】
培養によって細胞外マトリックス成分11は収縮する。上述したアンカー空間に位置する細胞外マトリックス成分11は、収縮時に係合面44に係合するため、図4に示すように、積層方向の収縮は拘束されないが、対向方向の収縮は拘束される。これにより、真皮細胞12が培養された細胞体の第1培養体12Aを含む予ゲル体GP(真皮組織層10)を得ることができる。なお、図示は省略しているが、予ゲル体GPは培地に浸漬されている。
【0032】
次に、図5に示すように、予ゲル体GPの上面となっている第1面GaにウェルWを配置するとともに、ウェルWの内部に感覚神経細胞14のスフェロイド15を培地Mとともに播種して配置し培養する。なお、図5から図8においては、培養皿50および保持部51の図示を省略しているが、予ゲル体GPにおける第1面Gaとは逆側の第2面Gbは培地に浸漬されている。
【0033】
予ゲル体GPの第1面Gaにおいてスフェロイド15を培養することにより、図6に示すように、第1面Ga上あるいは一部が予ゲル体GPの内部に位置するスフェロイド15を含む第2培養体15Aが設けられる。
これにより、真皮細胞12が培養された細胞体の第1培養体12Aを有する真皮組織層10と、感覚神経細胞14のスフェロイド15が培養された第2培養体15Aとを含むゲル体Gを得ることができる。
【0034】
次に、表皮組織層20を形成する。まず、培養槽40の上下を反転させて、図7に示すように、第2面Gbを上面とし、第1面Gaを下面とする。続いて、予ゲル体GPの上面となっている第2面GbにウェルWを配置するとともに、ウェルWの内部に表皮細胞21(例えば、正常ヒト表皮角化細胞)を培地Mとともに播種して配置し培養する。これにより、表皮細胞21が分化誘導されて、図8に示すように、表皮組織層20を形成することができる。表皮組織層20を形成する際の培養条件は、一例として、37℃の温度下で9日間行う。
【0035】
以上の製造方法により、第1培養体12Aを含む真皮組織層10のゲル体Gの第1面Gaに第2培養体15Aを有し、第2面Gbに表皮組織層20を有する人工皮膚組織1が得られる。
【0036】
図9は、培養中の感覚神経細胞を観察した写真図である。図9における(a)は明視野観察像であり、(b)は蛍光観察像である。図9における(a)および(b)に示されるように、スフェロイド周囲の細胞の広がりから,人工皮膚組織の表面においても神経突起が伸展していることを観察できた。赤色蛍光タンパク質を導入したスフェロイドを用いて観察したところ、(b)に示されるように、赤い蛍光が確認されたことから観察した組織が感覚神経細胞のスフェロイドであることが確認できた。
【0037】
上記の製造方法において、表皮組織層20を形成する際に培養槽40の上下を反転させるため、スフェロイド15が予ゲル体GPにぶら下がる状態となっていたが、重力の影響でスフェロイド15が予ゲル体GPから剥離することはなかった。
上記の製造方法を用いることによって、培養しながら人工皮膚組織1上での感覚神経細胞14の様子を観察することができることが確認できた。
【0038】
図10は、ゲル体Gに固定後の感覚神経細胞および神経突起を示し、(c)は切片の染色像、(d)は組織染色像を示す図である。
図10に示されるように、予ゲル体GPにスフェロイド15を播種した場合には、神経突起16は主に真皮組織層10の表面で伸展していることが観察された。これは、予ゲル体GPが対向方向に収縮するため、収縮時に真皮細胞12が対向方向に配向するからだと考えられる。
【0039】
[人工皮膚組織1の製造方法の第2実施形態]
続いて、人工皮膚組織1の製造方法の第2実施形態について、図11から図18を参照して説明する。これらの図において、図1から図8に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0040】
(ゲル体Gの取得)
第2実施形態におけるゲル体Gの取得においては、細胞外マトリックス成分11中の真皮細胞12と、感覚神経細胞14のスフェロイド15とを培養して、第1培養体12Aおよび第2培養体15Aを内部に含むゲル体を得る。
【0041】
具体的には、図11に示すように、細胞外マトリックス成分11と、真皮細胞12(例えば、正常ヒト真皮線維芽細胞)と、感覚神経細胞14のスフェロイド15との混合物を培養槽40の培養空間42に注ぎ込む。混合物は、アンカー部43が浸漬される高さとなる量で注ぎ込まれる。
【0042】
本実施形態におけるスフェロイド15は、感覚神経細胞14を凝集させるとともに単独で培養した第1サンプルと、株化したシュワン細胞を混合して培養した第2サンプルとを用いる。細胞外マトリックス成分11と、真皮細胞12と混合されるスフェロイド15は、第1サンプルを用いる場合と、第2サンプルを行う場合とで個別に選択されて培養される。
【0043】
細胞外マトリックス成分11と真皮細胞12とスフェロイド15との混合物が培養槽40に注ぎ込まれると、混合物を所定条件で培養(インキュベーション)する。
【0044】
培養によって細胞外マトリックス成分11は収縮する。上述したアンカー空間に位置する細胞外マトリックス成分11は、収縮時にアンカー部43に係合するため、図12に示すように、積層方向の収縮は拘束されないが、対向方向の収縮は拘束される。これにより、真皮細胞12が培養された細胞体の第1培養体12Aと、感覚神経細胞14のスフェロイド15が培養された第2培養体15Aを含むゲル体G(真皮組織層10)を得ることができる。なお、図示は省略しているが、ゲル体Gの下面は培地に浸漬されている。
【0045】
次に、図13に示すように、ゲル体Gの上面となっている第1面GaにウェルWを配置するとともに、ウェルWの内部に表皮細胞21(例えば、正常ヒト表皮角化細胞)を培地Mとともに播種して配置し培養する。これにより、表皮細胞21が分化誘導されて、図14に示すように、表皮組織層20を形成することができる。表皮組織層20を形成する際の培養条件は、一例として、37℃の温度下で9日間行う。
【0046】
以上の製造方法により、第1培養体12Aおよび第2培養体15Aを含む真皮組織層10のゲル体Gの第1面Gaに表皮組織層20を有する人工皮膚組織1が得られる。
【0047】
図15は、スフェロイド15のみの第1サンプルを用いて第2実施形態の製造方法で製造された人工皮膚組織の断面染色像である。図15において、像(e’)は、像(e)の拡大図である。図16は、第1サンプルを用いて第2実施形態の製造方法で製造された人工皮膚組織の切片の染色像である。
図15および図16に示されるように、真皮組織層10のゲル体Gの内部にスフェロイド15を配置した場合は、真皮組織層10の厚さの半分程度まで神経突起の伸展が観察された。
【0048】
図17は、スフェロイドの染色像であり、(f)はスフェロイドのみで培養した第1サンプルの染色像、(g)はスフェロイドと、株化したシュワン細胞を混合して培養した第2サンプルの染色像である。
図17に示されるように、株化したシュワン細胞をスフェロイドに組み込んだ場合の方が、神経突起の伸展が大きいことが確認できた。
従って、株化したシュワン細胞が組み込まれたスフェロイドの第2サンプルを用いて、第2実施形態の製造方法で人工皮膚組織を製造することによって、神経細胞が真皮組織層から表皮組織層に達するまで伸展すると考えられる。
【0049】
図18は、感覚神経細胞とシュワン細胞との混合比を変えたスフェロイドを培養したときの免疫染色像である。感覚神経細胞とシュワン細胞との混合比としては、[感覚神経細胞の数:シュワン細胞の数]が3:1から1:3の範囲であることが好ましく、1:1から1:3の範囲であることがより好ましい。
図18には、感覚神経細胞のみを用いた染色像、感覚神経細胞数とシュワン細胞数を1:1(10000個:10000個)としたときの染色像、感覚神経細胞数とシュワン細胞数を1:2(6700個:13300個)としたときの染色像、感覚神経細胞数とシュワン細胞数を1:3(5000個:15000個)としたときの染色像および感覚神経細胞数とシュワン細胞数を1:4(2500個:17500個)としたときの染色像が示されている。
図18に示されるように、感覚神経細胞数とシュワン細胞数を1:1から1:3の範囲で混合して培養することによって神経突起の伸展が大きく、株化したシュワン細胞を組み込む効果が高いことを確認できた。
【0050】
[人工皮膚組織1の製造方法の第3実施形態]
続いて、人工皮膚組織1の製造方法の第3実施形態について、図19から図20を参照して説明する。これらの図において、図11から図18に示す第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0051】
図19に示すように、本実施形態の製造方法では、対向するアンカー部43の間に対向方向に沿って線状の保持部材45を設置することが培養槽40の準備に含まれる。
保持部材45の素材としては、人工皮膚組織1の培養に悪影響を与えなければ、特に限定されないが、細胞外マトリックス成分11中での培養時にスフェロイド15が付着しやすい素材であることが好ましい。
【0052】
上記第2実施形態の製造方法において、細胞外マトリックス成分11と真皮細胞12とスフェロイド15との混合物を培養する際に、スフェロイド15は自重により沈降する。そのため、人工皮膚組織1においてスフェロイド15と表皮組織層20との距離が長くなり、スフェロイド15から伸展した神経突起が表皮組織層20に達しづらくなると考えられる。
【0053】
本実施形態では、アンカー部43の間に対向方向に沿って線状の保持部材45を設置しているため、混合物を培養する際に沈降するスフェロイド15の少なくとも一部は、保持部材45に付着して保持される。保持されスフェロイド15は、図20に示すように、真皮組織層10における高さ方向の中央近傍に位置するため、スフェロイド15から伸展した神経突起は、表皮組織層20および真皮組織層10の下面の双方に達しやすくなる。
【0054】
[人工皮膚組織1の製造方法の第4実施形態]
続いて、人工皮膚組織1の製造方法の第4実施形態について、図21から図22を参照して説明する。これらの図において、図3から図8に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0055】
本実施形態の製造方法では、スフェロイド15の最大径よりも大きく、アンカー部43における第1部分43Aの外径よりも小さい直径を有する線状部材46を用いる。線状部材46は、アンカー部43と同軸でアンカー部43および側壁41を貫通し、且つ、抜き差し可能に設ける。
【0056】
予ゲル体GP(真皮組織層10)の取得は、細胞外マトリックス成分11と真皮細胞12との混合物を培養槽40に注ぎ込み、培養することにより行われる。これにより、線状部材46が対向方向に貫く予ゲル体GPが得られる。
予ゲル体GPが得られた後には、線状部材46を抜去して、図22に示すように、予ゲル体GPを対向方向に貫く空洞46Aを形成する。空洞46Aは、真皮組織層10における高さ方向の中央近傍に位置する。
【0057】
次に、予ゲル体GPの空洞46Aにスフェロイド15を培地とともに播種して配置し培養する。空洞46Aにスフェロイド15を培地とともに配置した後には、栓体43Cを埋め込んでスフェロイド15および培地の漏出を防ぐ。そして、スフェロイド15を培養することによって、スフェロイド15を含む第2培養体15Aが設けられる。
【0058】
本実施形態では、真皮組織層10における高さ方向の中央近傍に位置する空洞46Aにおいて、スフェロイド15を培養するため、上記第3実施形態と同様に、真皮組織層10における高さ方向の中央近傍に位置する。
従って、本実施形態の製造方法を用いることによって、スフェロイド15から伸展した神経突起は、表皮組織層20および真皮組織層10の下面の双方に達しやすくなる。
【0059】
[人工皮膚組織1の計測方法]
人工皮膚組織1の計測方法においては、上述した製造方法で得られた人工皮膚組織1の細胞外電位の計測を行う。図23は、人工皮膚組織1の計測方法を示す断面図である。細胞外電位の計測は、図23に示すように、計測器60を用いて行われる。計測器60は、上面に複数の微小電極がアレイ状に配列されたアレイチップ61を有する。アレイチップ61における微小電極で計測された電位は、図示しない制御部に出力される。
【0060】
人工皮膚組織1の計測方法は、上記計測器60を準備することと、上述した製造方法で製造された人工皮膚組織1をアレイチップ61(微小電極)上に載せることと、を含む。人工皮膚組織1の計測方法は、アレイチップ61上に載せ人工皮膚組織1をアレイチップ61に向けて押し付けることをさらに含む。人工皮膚組織1をアレイチップ61に向けて押し付けることは、人工皮膚組織1の上側に載せたホルダ62を下側に駆動することで行われる。ホルダ62を下側に駆動することによって、アレイチップ61と人工皮膚組織1におけるスフェロイド15との密着性が高まり、細胞外電位の計測精度を高めることができる。
【0061】
図24は、アレイチップ61における電極マップ、電極の位置およびアドレスを模式的に示した拡大図である。図24においては、アドレス8434-8436、8654-8656の電極で電位が計測された状態が示されている。
【0062】
図25は、各アドレスの電極において計測された時間と電圧との関係を示す図である。
図26は、各アドレスの電極において計測された時間と振幅との関係を示す図である。
図25に示されるように、スパイク様シグナルが電極に供給されていることを確認できた。上記の結果から、特定の電極周辺で同期的なスパイク用波形が計測されたことから、感覚神経の活動を計測できたと考えられ、人工皮膚組織1における感覚神経細胞の機能が計測できたことが示唆される。
従って、本実施形態の人工皮膚組織1の計測方法を用いることによって、感覚神経細胞の機能解析を容易に行うことができる。
【0063】
(薬剤の評価)
本発明は、さらにその他の態様として、薬剤の人工皮膚組織1に対する刺激性を評価することができる。薬剤の評価は、例えば、薬剤を人工皮膚組織1と接触させること、及び、薬剤の接触による刺激に対する応答を、上記の計測方法を用いて計測することにより行うことができる。
本発明における薬剤とは、医薬品等の薬物、化粧品や医薬部外品等を含む。本発明の評価方法によれば、例えば、従来の方法と比較して実際の人工皮膚組織1に近い環境で薬剤の評価を行うことができる。また、本発明の評価方法は、例えば、新薬の創出(スクリーニング)等における各種分子量の薬物の動態評価、化粧品や医薬部外品等の開発における評価において極めて有用である。薬剤は、評価対象となる物質のことをいい、例えば、無機化合物及び有機化合物等が挙げられる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0065】
例えば、人工皮膚組織1の計測方法においては、上述した製造方法で製造された人工皮膚組織1をアレイチップ61上に載せる手順を例示したが、この構成に限定されない。例えば、上述した製造方法において、培養槽40を準備することは、計測器60を準備することと、当該培養槽40をアレイチップ61(微小電極)上に設置することと、を含んでもよい。この場合、培養槽40で培養を行って、真皮細胞12が培養された第1培養体12Aと、感覚神経細胞14が密集したスフェロイド15が培養された第2培養体15Aとを有するゲル体Gを得ることと、ゲル体G上に配置した表皮細胞21を培養することをアレイチップ61(微小電極)上で行ってもよい。
この製造方法を用いることで、人工皮膚組織1をアレイチップ61上に載せる手順を行うことなく、人工皮膚組織1の製造過程において感覚神経細胞の機能解析を容易に行うことが可能になる。
【0066】
また、上記実施形態で示した保持部材45は、人工皮膚組織1の培養に悪影響を与えな線状の部材を例示したが、この構成に限定されない。例えば、ゲル材またはポリマーで作製したスフェロイド15付きあるいはスフェロイド15入りのファイバーを用いる構成であってもよい。
この構成を採ることにより、培養中に沈降して保持部材45に付着したスフェロイド15に加えて、保持部材45に設けられたスフェロイド15から伸展した神経突起が表皮組織層20および真皮組織層10の下面の双方に達しやすくなる。
【0067】
なお、以上の実施形態において説明された発明を整理して、付記として開示する。
(付記1)
側壁に囲まれた培養空間と、対向する前記側壁に設けられたアンカー部と、を有する培養槽を準備することと、前記培養槽で培養を行って、真皮細胞が培養された第1培養体と、感覚神経細胞が密集したスフェロイドが培養された第2培養体とを有するゲル体を得ることと、前記ゲル体上に配置した表皮細胞を培養することと、を含む、人工三次元組織の製造方法。
【0068】
(付記2)
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞を培養し前記第1培養体を含む予ゲル体を得ることと、
前記予ゲル体の第1面に配置した前記スフェロイドを培養して、前記第1面に前記第2培養体を有する前記予ゲル体を得ることと、
前記第2培養体を有する前記予ゲル体における前記第1面と逆側の第2面に配置した前記表皮細胞を培養することと、
を含む、
付記1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0069】
(付記3)
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞および前記スフェロイドを培養して、前記第1培養体および前記第2培養体を内部に含む前記ゲル体を得ることである、
付記1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0070】
(付記4)
前記培養槽を準備することは、対向する前記アンカー部の間に対向方向に沿って線状の保持部材を設置することを含む、
付記3に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0071】
(付記5)
前記培養槽を準備することは、対向する前記アンカー部の間に対向方向に沿って線状部材を設置することを含み、
前記第1培養体および前記第2培養体を有する前記ゲル体を得ることは、
細胞外マトリックス成分中の前記真皮細胞を培養し前記第1培養体を含み、前記線状部材が前記対向方向に貫く予ゲル体を得ることと、
前記予ゲル体から前記線状部材を抜去して、前記予ゲル体を前記対向方向に貫く空洞を形成することと、
前記空洞に配置した前記スフェロイドを培養して前記第2培養体を得ることと、
を含む、
付記1に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0072】
(付記6)
前記スフェロイドとシュワン細胞とを培養して前記第2培養体を得る、
付記1から付記5のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0073】
(付記7)
前記感覚神経細胞数と前記シュワン細胞数とを、3:1から1:3の割合の範囲で混合して培養する、
付記6に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0074】
(付記8)
前記培養槽を準備することは、複数の電極がアレイ状に配列され、前記電極で細胞外電位の計測を行う計測器を設置することを含み、
前記ゲル体を得ることと、前記表皮細胞を培養することと、を前記電極上で行う、
付記1から付記7のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法。
【0075】
(付記9)
複数の電極がアレイ状に配列され、前記電極で細胞外電位の計測を行う計測器を準備することと、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の人工三次元組織の製造方法で製造された前記人工三次元組織を前記電極上に載せることと、
を含む、人工三次元組織の計測方法。
【0076】
(付記10)
前記電極上に載せた前記人工三次元組織を前記電極に向けて押し付けることを含む、
付記9に記載の人工三次元組織の計測方法。
【0077】
(付記11)
前記人工三次元組織に薬剤を接触させることと、
前記薬剤の接触による刺激に対する前記人工三次元組織の応答を計測して前記薬剤を評価することと、
を含む、
付記9または付記10に記載の人工三次元組織の計測方法。
【0078】
(付記12)
真皮細胞を含む真皮組織層と、
表皮細胞を含み前記真皮組織層上に形成された表皮組織層と、
前記真皮組織層に含まれ、神経突起を有する感覚神経細胞が密集したスフェロイドと、
を有する、人工三次元組織。
【符号の説明】
【0079】
1…人工皮膚組織(人工三次元組織)、 10…真皮組織層、 11…細胞外マトリックス成分、 12…真皮細胞、 12A…第1培養体、 14…感覚神経細胞、 15…スフェロイド、 15A…第2培養体、 16…神経突起、 20…表皮組織層、 21…表皮細胞、 40…培養槽、 41…側壁、 42…培養空間、 43…アンカー部、 45…保持部材、 46…線状部材、 60…計測器、 G…ゲル体、 Ga…第1面、 Gb…第2面、 GP…予ゲル体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26