(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048049
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置、駆動波形生成装置、ヘッド駆動方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20230330BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230330BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 403
B41J2/14 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157303
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC42
2C056FA13
2C056FA14
2C057AM16
2C057AN05
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】サテライトの抑制と微駆動を両立する液体を吐出する装置、ヘッド駆動装置、ヘッド駆動方法を提供する。
【解決手段】駆動波形Vaは、液体を吐出させる第1駆動パルスP1と、液体を吐出させない第2駆動パルスP2と、液体を吐出させる第3駆動パルスP3とを時系列で連続して含み、第2駆動パルスP2は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔は、それぞれ共振の関係にあり、第2駆動パルスP2の波高値Vp2は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1駆動パルスの波高値Vp1は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスを印加したときの液体の滴速度が極大値になる波高値よりも低い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第3駆動パルスを印加したときの液体の滴速度が極小値となるときの波高値Vpp2の-7.5%~+7.5%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第3駆動パルスを印加したときの液体の滴速度が極小値となるときの波高値Vpp2の-5.0%~+5.0%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記第2駆動パルスは、前記圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記圧力室の膨張状態を保持する保持波形要素と、前記圧力室を膨張状態に保持された状態から収縮させる収縮波形要素と、を含み、
前記保持波形要素の保持時間は、前記液体吐出ヘッドの圧力室の共振周期Tcより短い時間である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記第1駆動パルス、前記第2駆動パルス及び前記第3駆動パルスは、前記駆動波形に含まれる4以上の駆動パルスの内の最終のパルス群である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成装置であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とする駆動波形生成装置。
【請求項9】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動形生成装置であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1駆動パルスの波高値Vp1は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とする駆動波形生成装置。
【請求項10】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成し、前記駆動波形を前記液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させるヘッド駆動方法であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とするヘッド駆動方法。
【請求項11】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成し、前記駆動波形を前記液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させるヘッド駆動方法であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1駆動パルスの波高値Vp1は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧である
ことを特徴とするヘッド駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置、駆動波形生成装置、ヘッド駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドから液体を吐出するとき、主滴の吐出に伴って生じる尾引きによるサテライト滴を抑制することが求められる。
【0003】
従来、液体を吐出させない非吐出パルスと、液体を吐出させる吐出パルスとを時系列で連続して含み、非吐出パルスの波高値をVp1、非吐出パルスと吐出パルスとの時間間隔をTd、固有振動周期をTcとするとき、時間間隔Tdは、Tc-0.2Tc~Tc+0.45Tcの範囲内であり、非吐出パルスの波高値Vp1は、吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内であるようにした駆動波形が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、非吐出パルスを、ヘッドのメニスカスの乾燥を抑制するために液体を吐出しない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用することが困難な場合があることが判明した。この場合、サテライト抑制のための非吐出パルス(非吐出駆動パルス)と、メニスカス乾燥防止のための微駆動波形(微駆動パルス)とを、駆動波形に含む必要が生じるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、サテライト抑制波形と微駆動波形の両立を図れるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体を吐出する装置は、
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1駆動パルスと、前記液体を吐出させない第2駆動パルスと、前記液体を吐出させる第3駆動パルスとを時系列で連続して含み、
前記第2駆動パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの間隔、前記第2駆動パルスと前記第3駆動パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第2駆動パルスの波高値Vp2は、前記第1駆動パルスを印加後、前記第2駆動パルスを印加し、更に前記第3駆動パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧である
構成とした。
【0008】
本発明によれば、サテライト抑制波形と微駆動波形の両立を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
【
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【
図3】ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【
図4】同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図5】同印刷装置のヘッド駆動制御装置に係る部分のブロック説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における駆動波形の説明に供する説明図である。
【
図7】同じく第1駆動パルス、第2駆動パルスの波高値と滴速度との関係の一例を示す説明図である。
【
図8】比較例の第2駆動パルスの波高値と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図9】第1実施形態の第1駆動パルスと第2駆動パルスとの間隔と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図10】同じく第2駆動パルスの波高値と滴速度との関係の一例を示す説明図である。
【
図11】同じく第2駆動パルスの波高値と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図12】同じく第2駆動パルスの波高値と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図13】同じく第2駆動パルスの波高値と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図14】同じく第2駆動パルスの波高値と第3駆動パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
【
図15】同じくサテライトレスとなる第2駆動出パルスの波高値の最大値、最小値と、その電圧比率の関係の一例を示す説明図である。
【
図16】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図17】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図18】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図19】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図20】本発明2第3実施形態におけるサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図21】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【
図22】同じくサテライトレスとなる間隔Td2及び第2駆動パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は同印刷装置の概略説明図、
図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0011】
印刷装置1は、液体を吐出する装置であり、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
吐出ユニット33は、例えば、
図2に示すように、複数のノズル104を配列したノズル列を複数列有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)100をベース部材331に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドである。
【0021】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0023】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0024】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から反転機構部60を介して搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
次に、ヘッド100の一例について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、
図4は同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0026】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板101と、個別流路部材である流路板102と、壁面部材としての振動板部材103とを積層接合している。そして、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧電アクチュエータ111と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材120とを備えている。
【0027】
ノズル板101は、液体を吐出する複数のノズル104を配列した複数のノズル列を有している。
【0028】
流路板102は、複数のノズル104に通じる複数の圧力室106と、各圧力室106にそれぞれ通じる流体抵抗部を兼ねる個別供給流路107と、2以上の個別供給流路107に通じる液導入部となる中間供給流路108を形成している。
【0029】
振動板部材103は、流路板102の圧力室106の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)130を有する。ここでは、振動板部材103は2層構造(限定されない)とし、流路板102側から薄肉部を形成する第1層103Aと、厚肉部を形成する第2層103Bで構成されている。
【0030】
そして、薄肉部である第1層103Aで圧力室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。振動領域130内には、第2層103Bで圧電アクチュエータ111と接合する厚肉部である凸部130aを形成している。
【0031】
そして、振動板部材103の圧力室106とは反対側に、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生素子)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
【0032】
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成している。そして、圧電素子112は、1つおきに、振動板部材103の振動領域130に形成した厚肉部である凸部130aに接合している。
【0033】
この圧電素子112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材115が接続されている。
【0034】
共通流路部材120は共通供給流路110を形成している。共通供給流路110は、振動板部材103に設けたフィルタ部を兼ねる開口部109を介して液導入部となる中間供給流路108に連通し、中間供給流路108を介して個別供給流路107に通じている。
【0035】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子112に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて圧力室106の容積が膨張することで、圧力室106内に液体が流入する。
【0036】
その後、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向に変形させて圧力室106の容積を収縮させることにより、圧力室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0037】
次に、ヘッドを駆動するヘッド駆動制御装置に係る部分について
図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0038】
ヘッド100に対して駆動波形を与えるヘッド駆動制御装置400は、ヘッド制御部401と、本発明に係る駆動波形生成装置としての駆動波形生成手段を構成する駆動波形生成部402及び波形データ格納部403と、ヘッドドライバ410と、吐出タイミングを生成するための吐出タイミング生成部404を備えている。
【0039】
ヘッド制御部401は、吐出タイミングパルスstbを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成部402へ出力する。また、ヘッド制御部401は、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成部402へ出力する。
【0040】
駆動波形生成部402は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形Vcomを生成する。
【0041】
ヘッド制御部401は、画像データを受け取り、この画像データをもとに、ヘッド100の各ノズル104から吐出させる液体の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。
【0042】
そして、ヘッド制御部401は、画像データSDと、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、ヘッドドライバ410に転送する。
【0043】
ヘッドドライバ410は、シフトレジスタ411、ラッチ回路412、階調デコーダ413、レベルシフタ414、及びアナログスイッチアレイ415を備える。
【0044】
シフトレジスタ411は、ヘッド制御部401から転送される画像データSD及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路412は、シフトレジスタ411の各レジスト値を、ヘッド制御部401から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0045】
階調デコーダ413は、ラッチ回路412でラッチした値(画像データSD)とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ414は、階調デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASが動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0046】
アナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASは、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチASは、ヘッド100が備えるノズル104毎に設けられ、各ノズル104に対応する圧電素子112の個別電極に接続されている。また、アナログスイッチASには、駆動波形生成部402からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
【0047】
したがって、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチASのオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動パルスの中から各ノズル104に対応する圧電素子112に印加される駆動パルスが選択される。その結果、ノズル104から吐出される滴の大きさが制御される。
【0048】
吐出タイミング生成部404は、ドラム31の回転量を検出するロータリエンコーダ405の検出結果から、シート材Pが所定量移動される毎に吐出タイミングパルスstbを生成して出力する。ロータリエンコーダ405は、ドラム31と共に回転するエンコーダホイールと、エンコーダホイールのスリットを読取るエンコーダセンサで構成される。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形について
図6を参照して説明する。
図6は同説明に供する説明図である。
【0050】
本実施形態の駆動波形Vaは、複数の駆動パルスとして、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3を時系列で連続して含む。
【0051】
第1駆動パルスP1は、圧力室106の液体を加圧して液体を吐出させる第1吐出パルスである。第1駆動パルスP1は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a1と、膨張波形要素a1で膨張された状態を保持する保持波形要素b1と、保持波形要素b1で保持されている状態から圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c1とで構成される。
【0052】
第1駆動パルスP1の膨張波形要素a1は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V1まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b1は電位V1を保持する波形であり、収縮波形要素c1は電位V1から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この第1駆動パルスP1の波高値はVp1とする。
【0053】
第2駆動パルスP2は、液体が吐出されず、メニスカスを振動させる程度に圧力室106の液体を加圧する微駆動波形として使用可能な非吐出パルスである。第2駆動パルスP2は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a2と、膨張波形要素a2で膨張された状態を保持する保持波形要素b2と、保持波形要素b2で保持されている状態から圧力室106を収縮させてメニスカスを振動させる収縮波形要素c2とで構成される。
【0054】
第2駆動パルスP2の膨張波形要素a2は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V2(V2<V1)まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b2は電位V2を保持する波形であり、収縮波形要素c2は電位V2から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この第2駆動パルスP2の波高値はVp2とする。
【0055】
第3駆動パルスP3は、圧力室106の液体を加圧して液体を吐出させる第2吐出パルスである。第3駆動パルスP3は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a3と、膨張波形要素a3で膨張された状態を保持する保持波形要素b3と、保持波形要素b3で保持されている状態から圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c3とで構成される。
【0056】
第3駆動パルスP3の膨張波形要素a3は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V3(V3>V1)まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b3は電位V3を保持する波形であり、収縮波形要素c3は電位V3から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この第3駆動パルスP3の波高値はVp3とする。
【0057】
第1駆動パルスP1の収縮波形要素c1の終了時点から第2駆動パルスP2の膨張波形要素a2の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d1とし、パルス間保持波形要素d1の時間(第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との時間間隔)をTd1とする。
【0058】
第2駆動パルスP2の収縮波形要素c2の終了時点から第3駆動パルスP3の膨張波形要素a3の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d2とし、パルス間保持波形要素d2の時間(第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との時間間隔)をTd2とする。
【0059】
ここで、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔(時間Td1)は、共振の関係にある。ここでの共振の関係とは、第1駆動パルスP1によって圧力室106の液体を加圧したときの残留振動によって第2駆動パルスP2によって圧力室106の液体を加圧するときの圧力が増幅される関係である。
【0060】
同様に、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔(時間Td2)は、共振の関係にある。ここでの共振の関係とは、第2駆動パルスP2によって圧力室106の液体を加圧したときの残留振動によって第3駆動パルスP3によって圧力室106の液体を加圧するときの圧力が増幅される関係である。
【0061】
本実施形態では、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との時間間隔Td2は、液体吐出ヘッド100の圧力室106の共振周期(固有振動周期)をTcとするとき、Tc-(1/4)Tc~Tc+(1/4)Tcの範囲内としている。
【0062】
また、第2吐出パルスP2の波高値Vp2は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp2の-10%ないし+10%の範囲内としている。
【0063】
これにより、第3駆動パルスP3で吐出する滴のサテライトを抑制することができる。
【0064】
以下、本実施形態の作用効果について
図7以降を参照して具体的に説明する。
【0065】
先ず、
図7は、第3駆動パルスP3の波高値Vp3を固定値とし、第1駆動パルスP1の波高値Vp1、あるいは、第2駆動パルスP2の波高値Vp2を変化させたときの滴速度Vjの変化の一例を示している。なお、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3は共振タイミングの関係にある。
【0066】
この
図7の結果から、波高値Vp1、Vp2の値によって大きく3つの範囲S1、S2、S3に分けることができる。
【0067】
つまり、第1駆動パルスP1の波高値Vp1、あるいは、第2駆動パルスP2の波高値Vp2が、範囲S1内であるときには、波高値Vp1が大きくなるにつれて滴速度Vjが速くなる。
【0068】
第1駆動パルスP1の波高値Vp1、あるいは、第2駆動パルスP2の波高値Vp2が、範囲S2内であるときには、範囲S1と範囲S2の境界を極大値とし、滴速度Vjが低下している。
【0069】
第1駆動パルスP1の波高値Vp1、あるいは、第2駆動パルスP2の波高値Vp2が、範囲S3内であるときには、範囲S2と範囲S3の境界を極小値(このときの波高値Vp1、Vp2をピーク波高値Vpp1、Vpp2とする。)とし、滴速度Vjが増加している。
【0070】
このときに、第1駆動パルスP1の波高値Vp1と第2駆動パルスP2の波高値Vp2が、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp1,あるいは、波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧であるときに、サテライト滴速度が大幅に上昇し、条件によっては、サテライトがなくなる。
【0071】
言い換えれば、
図7から分かるように、本実施形態において、第2駆動パルスP2に代えて、第1駆動パルスの波高値Vp1を、第1駆動パルスを印加後、第2駆動パルスを印加し、更に第3駆動パルスを印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧とすることでも、条件によっては、サテライトがなくなる。
【0072】
つまり、上記のように、サテライト滴速度が大幅に上昇し、条件によっては、サテライトがなくなるのは、第3駆動パルスP3による吐出が、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2による吐出エネルギーを受けることにあると考えられる。したがって、滴速度Vjが極小値になる波高値の-10%~+10%の範囲内の吐出エネルギーを与えるのは第2駆動パルスP2、第1駆動パルスP1のいずれでもよい。
【0073】
ここで、第1駆動パルスP1を使用しないで、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3で構成したパルス群におけるサテライトの抑制と不都合について
図8を参照して説明する。
図8は第2駆動パルスP2の波高値Vp2に対し、滴速度Vjが一定になるように第3駆動パルスP3の波高値Vp3を調整したときの第3駆動パルスP3の波高値Vp3及びサテライト滴の滴速度の関係の一例を示している。
【0074】
サテライト滴速度Vjsは、第2駆動パルスP2の波高値Vp2を大きくするに従って僅かに速くなる。しかしながら、第3駆動パルスP3の波高値Vp3が極大値をとる付近(範囲S2とS3の境界付近)に対応する第2駆動パルスP2の波高値Vp2の周辺で、サテライト滴速度Vjsが0になる(サテライトレス)領域S0がある。
【0075】
なお、以上のサテライトレス領域が得られる説明は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcと同じ(Td=Tc)にした場合である。
【0076】
ところで、サテライトレス領域が見られる波高値Vp2の条件は、範囲S2と範囲S3の境界付近の電圧値とする必要がある。つまり、第2駆動パルスP2によりメニスカス振動が大きくなりすぎて、メニスカスが溢れ気味になっている範囲S2と、それを超えて第2駆動パルスP2自身で滴が吐出し始めている範囲S3との境界付近の電圧を印加する必要がある。
【0077】
しかしながら、メニスカス振動が大きすぎる条件では、第2駆動パルスP2を、メニスカスを振動させて乾燥を防ぐために通常使用される微駆動波形として使用することができなくなる。このような波高値の第2駆動パルスP2では、メニスカスを暴れさせて次の吐出滴に影響を与え、吐出不良をもたらしたり、第2駆動パルスP2(微駆動波形)自身で滴が吐出したりして、微駆動としての役割を果たせなくなってしまうからである。
【0078】
そのため、サテライトレスとメニスカス乾燥を防ぐための微駆動を両立させるためには、サテライトレスとなる専用の非吐出パルスが必要になる。つまり、波高値の高い(駆動電圧の高い)非吐出パルスと、微駆動波形としての駆動電圧の低い非吐出パルスの両方を駆動波形の中に設定する必要がある。その結果、駆動波形長が長くなり、駆動周波数を上げられないという不都合が生じる。
【0079】
次に、本実施形態における第1駆動パルスP1と第2駆動パルP2の間隔Td1に対する第3駆動パルスP3の波高値Vp3とサテライト滴速度Vjsの関係の一例について
図9を参照して説明する。
【0080】
この例では、第1駆動パルスP1は滴速度が約5m/sとなるように波高値Vp1を設定した遅めの滴を吐出する吐出パルスとし、第2駆動パルスP2はメニスカスを振動させる微駆動波形として用いることができる低い波高値Vp2の非吐出パルスとする。そして、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は共振のタイミングとしている。なお、波高値Vp2は上述した範囲S1内の電圧に相当する電圧である。
【0081】
そして、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔Td1をパラメータとして、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2及び第3駆動パルスP3によるマージ滴の滴速度が7m/sとなるように、第3駆動パルスP3の波高値Vp3を調整した。
【0082】
このときの間隔Td1に対する波高値Vp3及びサテライト滴速度Vjsを
図9に表している。
【0083】
図9より、第3駆動パルスP3の波高値Vp3は、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2による残留振動に応じて、周期的に変化していることが分かる。ただし、最初の共振タイミング、すなわち、波高値Vp3が小さくなるべき間隔Td1のタイミングでは、波高値Vp3の電圧が少し大きくなっている様子が見える。
【0084】
サテライト滴速度Vjsも、間隔Td1に応じて周期的に変化する様子が見られるが、最初の共振タイミング、すなわち、波高値Vp3の電圧が少し大きくなっているときにサテライトがなくなる領域S0が得られた。
【0085】
前述したよう、第1駆動パルスP1を使用しない場合には、非吐出パルスである第2駆動パルスP2によって吐出するか否かの限界の電圧まで電圧を強めたときに、サテライトがなくなる、若しくは、サテライト滴速度が大幅に速くなる領域が得られる。
【0086】
これに対し、本実施形態では、第1駆動パルスP1を第2駆動パルスP2の前に配置する。したがって、第2駆動パルスP2によって加圧するとき、第2駆動パルスP2によるメニスカス振動は第1駆動パルスP1の残留振動の影響を受けることになる。
【0087】
これにより、第2駆動パルスP2の波高値Vp2が、サテライトがなくならない、あるいは、サテライト滴速度が大幅に速くならない低い電圧であっても、第2駆動パルスP2によるメニスカス振動は液体を吐出するか否かの限界の振動まで増幅される。この結果、サテライトがなくなる、若しくは、サテライト滴速度が大幅に速くなる領域が得られる。
【0088】
このように、第2駆動パルスP2の波高値Vp2を液体が吐出されない低い電圧にできることによって、第2駆動パルスP2を、液体が吐出されることなくメニスカスを振動させることができる微駆動波形として使用することができる。
【0089】
つまり、メニスカスを振動させる微駆動パルスの前に吐出用の駆動パルスを配置することで、駆動パルスの残留振動によって微駆動パルスによる振動を増幅させ、微駆動パルスをサテライト抑制のためのパルスと同等の波形強さ(波高値)とすることができる。
【0090】
これにより、大滴や中滴のような複数滴でもサテライトレス、若しくは、サテライト滴速度を大幅に速くするとともに、サテライトレスのための専用の非吐出パルスを設ける必要がなくなり、駆動波形長を短くすることができ、高周波駆動させることが可能となる。
【0091】
次に、第2駆動パルスの波高値について
図10を参照して説明する。
図10は第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3の2パルスのとき、第3駆動パルスP3の波高値Vp3を固定とし、第2駆動パルスP2の波高値Vp2を変化させたときの滴速度Vjの変化の一例を示す説明図である。
【0092】
この場合も、滴速度Vjの変化は、波高値Vp2の値によって大きく3つの範囲S1、S2、S3に分けることができる。
【0093】
このとき、範囲S3の波高値Vp2は、第2駆動パルスP2によって滴が吐出しようとしており、非吐出パルスではなくなってくる電圧である。そのため、第2駆動パルスP2を微駆動波形として使用することができない。
【0094】
また、範囲S2の波高値Vp2は、第2駆動パルスP2によりメニスカスが盛り上がり、単純振動ではなく、盛り上がり気味になっている電圧である。そのため、メニスカスのコントロールができなくなって、駆動を続けていると不吐出に繋がることが分かっている。
【0095】
そのため、第2駆動パルスP2を微駆動波形(微駆動パルス)として使用する場合、範囲S1の波高値Vp2の電圧とすることが好ましい。つまり、第2駆動パルスP2を微駆動波形(微駆動パルス)として使用する場合の波高値Vp2は、滴速度の極大値よりも滴速度が遅くなる電圧とすることが好ましい。
【0096】
次に、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2とサテライトの抑制との関係について
図11ないし
図14を参照して説明する。
【0097】
ここでは、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcと異ならせて、第3駆動パルスP3の波高値Vp3を滴速度が一定になるように調整し、第2駆動パルスP2の変化に対するサテライト滴の変化を評価した。
【0098】
まず、
図11は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcに対して、(2/5)Tc短くした(Td2=Tc-(2/5)Tc)場合を示している。
【0099】
この条件では、サテライトレスとなる第2駆動パルスP2の波高値Vp2の条件は見られない。
【0100】
次に、
図12は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcに対して、(1/4)Tc分短くした(Td2=Tc-(1/4)Tc)場合を示している。
【0101】
この条件では、Td2=Tcの場合よりも第2駆動パルスP2の波高値Vp2の範囲は狭いが、サテライトレスとなる領域S0が確認された。
【0102】
次に、
図13は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcに対して、(1/3)Tc分長くした(Td2=Tc+(1/3)Tc)場合を示している。
【0103】
この条件では、Td2=Tcの場合よりも第2駆動パルスP2の波高値Vp2の範囲は狭いが、サテライトレスとなる領域S0が確認された。
【0104】
次に、
図14は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tcに対して、(1/2)Tc分長くした(Td2=Tc+1/2Tc)場合を示している。
【0105】
この条件では、サテライトレスとなる第2駆動パルスP2の波高値Vp2の条件は見られない。また、間隔Td2を(Tc+(1/2)Tc)より長くしても、サテライトレスとなる条件は確認できなかった。
【0106】
次に、以上の結果に基づき、サテライトレスとできる第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2と共振周期Tcとの関係、第2駆動パルスP2の波高値Vp2について
図15ないし
図19を参照して説明する。
【0107】
図14は、サテライトレス領域S0が生じる第2駆動パルスP2の波高値Vp2の最大値、最小値と、その電圧比率の関係を示している。
【0108】
図15の横軸は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ間隔Td2よりも(0.1×Tc)分だけ長い間隔Td2(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0109】
図16は、サテライトレスとなる第2駆動パルスP2の波高値Vp2の最大値、最小値、第3駆動パルスP3の波高値Vp3がピークを取るとき(第3駆動パルスP3で吐出される液体の滴速度が極小値となるとき)の波高値Vp2(これを「ピーク波高値Vpp2」という。)の値をまとめたものを示している。
【0110】
図16の横軸は、
図15と同じく、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ間隔Td2よりも(0.1×Tc)分だけ長い間隔Td2(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0111】
図17ないし
図19は、第2駆動パルスP2の波高値Vp2の最大値(最大Vp2)と最小値(最小Vp2)の電圧範囲をピーク波高値Vpp2からの電圧差の比率で表したものである。
【0112】
図17ないし
図19の横軸は、
図16と同じく、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ間隔Td2よりも(0.1×Tc)分だけ長い間隔Td2(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0113】
これらより、共振周期Tcを中心とし、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2がずれると、サテライトレスとできる第2駆動パルスP2の波高値Vp2の電圧範囲が狭くなっていることが分かる。
【0114】
サテライトレスとできる第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2としては、ここでは、共振周期Tcを中心に、±1/3Tc(Tc-(1/3)Tc~Tc+(1/3)Tcの範囲内)である。
【0115】
また、第2駆動パルスP2は、第3駆動パルスP3で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるとき、つまり、第2駆動パルスP3の波高値Vp3がピークを取るときの波高値Vp2であるピーク波高値Vpp2の「-10%~+10%」の範囲内であることが分かる。
【0116】
ここで、電圧マージンΔ10%(±5%:-5%~+5%)以上を確保するためには、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は(Tc-(1/4)Tc~Tc+(1/4)Tc)の範囲内とすることが好ましい。
【0117】
また、電圧マージンΔ15%(±7.5%:-7.5%~+7.5%)以上を確保するためには、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は(Tc-(1/6)Tc~Tc+(1/6)Tc)の範囲内とすることが好ましい。
【0118】
また、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2を共振周期Tc(Td2=Tc)とすることで、電圧マージンΔ20%(±10.0%:-10.0%~+10.0%)以上を確保することができる。
【0119】
次に、本発明の第2実施形態について
図20ないし
図22を参照して説明する。
図20ないし
図22は同実施形態におけるサテライトレスとできる第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2と共振周期Tcとの関係、第2駆動パルスP2の波高値Vp2の説明に供する説明図である。
【0120】
図20ないし
図22は、第2駆動パルスP2の波高値Vp2の最大値(最大Vp2)と最小値(最小Vp2)の電圧範囲をピーク波高値Vpp2からの電圧差の比率で表したものである。
【0121】
図20ないし
図22の横軸は、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ間隔Td2よりも(0.1×Tc)分だけ長い時間間隔Td2(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0122】
本実施形態では、サテライトレスとできる第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2としては、Tc-0.2Tc~Tc+0.45Tc、言い換えれば、Tc-(1/5)Tc~Tc+(9/20)Tcの範囲内である。
【0123】
また、第2駆動パルスP2は、第3駆動パルスP3で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるとき、つまり、第3駆動パルスP3の波高値Vp3がピークを取るときの波高値Vp2であるピーク波高値Vpp2の「-5%~+10%」の範囲内であることが分かる。
【0124】
ここで、電圧マージン±5%(-5%~+5%)以上を確保するためには、
図21から第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、Tc-0.1Tc~Tc+0.25Tc、言い換えれば、Tc-(1/10)Tc~Tc+(1/4)Tcの範囲内とすることが好ましい。
【0125】
また、電圧マージン±7.5%(-7.5%~+7.5%)以上を確保するためには、
図22から第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、Tc-0.07Tc~Tc+0.2Tcの範囲内、言い換えれば、Tc-(1/14)Tc~Tc+(1/5)Tcの範囲内とすることが好ましい。
【0126】
以上のように、各実施形態における駆動波形生成装置は、液体を吐出させる第1駆動パルスP1と、液体を吐出させない第2駆動パルスP2と、液体を吐出させる第3駆動パルスP3とを時系列で連続して含み、第2駆動パルスP2は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔Td1、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第2駆動パルスP2の波高値Vp2は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧としている駆動波形Vaを生成する。
【0127】
また、各実施形態における駆動波形生成装置において、液体を吐出させる第1駆動パルスP1と、液体を吐出させない第2駆動パルスP2と、液体を吐出させる第3駆動パルスP3とを時系列で連続して含み、第2駆動パルスP2は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔Td1、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第1駆動パルスP1の波高値Vp1は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧とすることができる。
【0128】
また、各実施形態におけるヘッド駆動方法は、液体を吐出させる第1駆動パルスP1と、液体を吐出させない第2駆動パルスP2と、液体を吐出させる第3駆動パルスP3とを時系列で連続して含み、第2駆動パルスP2は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔Td1、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第2駆動パルスP2の波高値Vp2は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧とした駆動波形Vaを生成し、駆動波形Vaを液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させる。
【0129】
また、各実施形態におけるヘッド駆動方法において、液体を吐出させる第1駆動パルスP1と、液体を吐出させない第2駆動パルスP2と、液体を吐出させる第3駆動パルスP3とを時系列で連続して含み、第2駆動パルスP2は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2との間隔Td1、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第1駆動パルスP1の波高値Vp1は、第1駆動パルスP1を印加後、第2駆動パルスP2を印加し、更に第3駆動パルスP3を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧とした駆動波形Vaを生成し、駆動波形Vaを液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させることができる。
【0130】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0131】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0132】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0133】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0134】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0135】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0136】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0137】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0138】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0139】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0140】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0141】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
40 乾燥部
50 搬出部
21 塗布部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
106 圧力室
112 圧電素子
400 ヘッド駆動制御部
401 ヘッド制御部
402 駆動波形生成部
403 波形データ格納部
410 ヘッドドライバ