(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048107
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及び像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20230330BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230330BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230330BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230330BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/14 613
B41M5/00 120
C09D11/30
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122175
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021156593
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】梁川 宜輝
【テーマコード(参考)】
2C057
2H186
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AF93
2C057AG44
2C057AG48
2C057AH20
2C057AN01
2C057AP25
2C057AQ06
2C057BA04
2C057BA14
2H186FA18
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB53
4J039BC10
4J039BC49
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE30
4J039EA14
4J039EA44
4J039FA02
4J039FA03
4J039GA24
4J040EC001
4J040KA16
(57)【要約】
【課題】長期にわたって水系インクを安定に吐出することができ、液体吐出ヘッドの耐久性が向上した液体吐出装置の提供。
【解決手段】色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクと、前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、前記流路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下である液体吐出装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクと、
前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記流路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記HSP距離が、25.8以上28.6以下である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記色材が、リアクティブレッド245、リアクティブオレンジ13、リアクティブブラック39、リアクティブイエロー95、アシッドブラック172、アシッドイエロー79、アシッドイエロー250、アシッドオレンジ94、アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199からなる群より選択される1つ以上を含む請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記有機溶剤が、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-エタンジオールからなる群より選択される1つ以上を含む請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記エポキシ接着剤が、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びビスフェノールF型エポキシ化合物のいずれか1つ以上を含む請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
インクジェット記録装置である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクを流路で流通させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記インクからなる液滴を吐出する吐出工程を含み、
前記流路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下であることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項8】
液体が吐出されていない場合は、ノズル面を保湿可能なキャップ部材によりキャップする請求項7に記載の液体吐出方法。
【請求項9】
前記HSP距離が、25.8以上28.6以下である請求項7に記載の液体吐出方法。
【請求項10】
前記色材が、リアクティブレッド245、リアクティブオレンジ13、リアクティブブラック39、リアクティブイエロー95、アシッドブラック172、アシッドイエロー79、アシッドイエロー250、アシッドオレンジ94、アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199からなる群より選択される1つ以上を含む請求項7に記載の液体吐出方法。
【請求項11】
前記有機溶剤が、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-エタンジオールからなる群より選択される1つ以上を含む請求項7に記載の液体吐出方法。
【請求項12】
請求項1に記載の液体吐出装置を有することを特徴とする像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置に用いられるインクには、一般的に、色材として染料、又は顔料が用いられる。安全性や環境負荷といった観点から水系インクが求められており、水系インクに適用可能な染料や顔料が使用されている。
水系インクを用いた場合、水系インクがインクジェットヘッドの部材同士を接着する接着剤を膨潤させる、乃至は溶解させやすい場合があり、インクジェットヘッドの耐久性が問題になる場合があった。
【0003】
そこで、特定のエポキシ基を有する化合物を含有する接着剤組成物を用いて接着されたインクジェットヘッドを用いることにより、強力な樹脂溶解力を持つ有機溶剤を含む溶剤インクを用いた場合でも、耐久性や吐出性能の良好なインクジェットヘッドを提供することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、吐出する手段を構成する部材を接合する接着剤について、接着剤の膨張劣化させる接液性を改善するための活性エネルギー線硬化型組成物が提案され、接着剤としてエポキシ接着剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期にわたって水系インクを安定に吐出することができ、液体吐出ヘッドの耐久性が向上した液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体吐出装置は、色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクと、
前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記流路、及び前記ノズルを構成する部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長期にわたって水系インクを安定に吐出することができ、液体吐出ヘッドの耐久性が向上した液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す液体吐出ヘッドの一例における、ノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の液体吐出装置としての印刷装置の一例の要部平面説明図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す印刷装置の一例の要部側面説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の液体吐出装置を有する記録装置の一例を示す斜視説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の液体吐出装置におけるインクを収容した収容部(メインタンク)の一例を示す斜視説明図である。
【
図7】
図7は、実施例における液体吐出ヘッド3を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(液体吐出装置、及び液体吐出方法)
本発明の液体吐出装置は、色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクと、
前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記流路、及び前記ノズルを構成する部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下である。
本発明の液体吐出方法は、色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクを流路で流通させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記インクからなる液滴を吐出する吐出工程を含み、
前記流路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下である。
【0009】
本発明の液体吐出装置、及び液体吐出方法は、従来技術である特許文献1(特開2006-257350号公報)に記載されたエポキシ接着剤や、特許文献2(特開2019-065257号公報)に記載されたエポキシ接着剤を用いたインクジェットヘッドでは、水系インクを用いた場合のインクジェットヘッドの耐久性は十分ではない場合があるという問題点を発明者らが見出したことに基づくものである。
【0010】
本発明の液体吐出装置、及び液体吐出方法においては、水系のインクと液体吐出ヘッドに用いられるエポキシ接着剤とのHSP距離が24.6以上29.8以下であることにより、インクに含まれる有機溶剤と液体吐出ヘッドに用いられるエポキシ接着剤の親和性が低くなり、接着剤が膨潤及び溶解するといった接着剤の劣化が抑制される。これにより、接着剤により接合している金属部材などの部材の剥がれを抑制できることから、インクの吐出性が長期にわたって安定し、液体吐出ヘッドの耐久性が飛躍的に向上する。
【0011】
[HSP距離]
本発明のHSP距離について説明する。
前記HSP距離は、2種の物質乃至組成物のHSP値の間の距離である。前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離は、前記インクのHSP値と、前記エポキシ接着剤のHSP値との距離である。
前記HSP値は、ハンセンの溶解度パラメーターであり、分子間の分散力によるエネルギーδd(MPa0.5)、分子間の双極子相互作用によるエネルギーδp(MPa0.5)、及び分子間の水素結合によるエネルギーδh(MPa0.5)で構成されており、これら三つのエネルギーのベクトルの和としてHSP値が得られる。
多くの物質の前記HSP値は、ハンセンやその研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII-698~711やWesley L.Archer著、Industrial Solvents Handbookに記載されている。また、前記HSP値は、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP、Charles M.Hansen URL:http://www.hansen-solubility.com/)などのソフトウエアにより算出することが可能である。
【0012】
-インクのHSP値-
前記インクのHSP値は、組成物であるインクに含まれる有機溶剤、及び水の前記ベクトルの合計として得ることができ、具体的には、前記インクに含まれる有機溶剤と水のHSP値を用いて、以下の式(1)~式(4)で求めることができる。
(1)前記インクの分子間の分散力によるエネルギー:
δdインク=δd1φ1+δd2φ2+………δdNφN ・・・式(1)
前記式(1)中、
Nは、自然数を示し、
δd1、δd2、δdNは、各溶剤成分及び水の分子間の分散力によるエネルギーを示し、
φ1、φ2、φNは、各溶剤成分及び水の体積分率を示す。
(2)組成物の分子間の双極子相互作用によるエネルギー:
δpインク=δp1φ1+δp2φ2+………δpNφN ・・・式(2)
前記式(2)中、
Nは、自然数を示し、
δp1、δp2、δpNは、各溶剤成分及び水の分子間の双極子相互作用によるエネルギーを示し、
φ1、φ2、φNは、各溶剤成分及び水の体積分率を示す。
(3)組成物の分子間の水素結合によるエネルギー:
δhインク=δh1φ1+δh2φ2+………δhNφN ・・・式(3)
前記式(3)中、
Nは、自然数を示し、
δh1、δh2、δhNは、各溶剤成分及び水の分子間の水素結合によるエネルギーを示し、
φ1、φ2、φNは、各溶剤成分及び水の体積分率を示す。
(4)インクのHSP値:
インクのHSP値=(δdインク
2+δpインク
2+δhインク
2)1/2 ・・・式(4)
なお、前記インクのHSP値の計算は、前記インク中に3質量%以上含まれる成分により行う。含有量が3質量%より少ない溶剤や色材は、接着剤の劣化に対する影響が小さく、無視することができる。
【0013】
-エポキシ接着剤のHSP値-
前記エポキシ接着剤のHSP値は、組成物であるエポキシ接着剤に含有されるエポキシ化合物、及び硬化剤の前記ベクトルの合計として得ることができ、具体的には、前記エポキシ接着剤に含まれるエポキシ化合物と硬化剤のHSP値を用いて、以下の式(5)~式(8)で求めることができる。
(5)エポキシ接着剤の分子間の分散力によるエネルギー:
δd接着剤=δd1Eφ1E+δd2Eφ2E+………δdNEφNE ・・・式(5)
前記式(5)中、
Nは、自然数を示し、
δd1E、δd2E、δdNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の分子間の分散力によるエネルギーを示し、
φ1E、φ2E、φNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の体積分率を示す。
(6)エポキシ接着剤の分子間の双極子相互作用によるエネルギー:
δp接着剤=δp1Eφ1E+δp2Eφ2E+………δpNEφNE ・・・式(6)
前記式(6)中、
Nは、自然数を示し、
δp1E、δp2E、δpNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の分子間の双極子相互作用によるエネルギーを示し、
φ1E、φ2E、φNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の体積分率を示す。
(7)エポキシ接着剤の分子間の水素結合によるエネルギー:
δh接着剤=δh1Eφ1E+δh2Eφ2E+………δhNEφNE ・・・式(7)
前記式(7)中、
Nは、自然数を示し、
δh1E、δh2E、δhNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の分子間の水素結合によるエネルギーを示し、
φ1E、φ2E、φNEは、各エポキシ化合物及び硬化剤の体積分率を示す。
(8)エポキシ接着剤のHSP値:
エポキシ接着剤のHSP値=(δd接着剤
2+δp接着剤
2+δh接着剤
2)1/2 ・・・式(8)
なお、前記エポキシ接着剤のHSP値の計算は、エポキシ接着剤に含まれるエポキシ化合物及び硬化剤成分により行う。エポキシ接着剤に含まれるその他の成分については、接着剤の劣化に対する影響が小さく無視することができる。
【0014】
-インクとエポキシ接着剤とのHSP距離-
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離は、以下の式(9)で求めることができる。
HSP距離=[4(δd接着剤-δdインク)2+(δp接着剤-δpインク)2+(δh接着剤-δhインク)2]1/2 ・・・式(9)
ここで、δd、δp、δhにおける添え字「インク」及び「接着剤」は、それぞれ前記インク及び前記エポキシ接着剤であることを意味する。
【0015】
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離としては、24.6以上29.8以下であり、25.8以上28.6以下が好ましい。前記HSP距離が、24.6以上29.8以下であると、インクに含まれる有機溶剤と液体吐出ヘッドに用いられるエポキシ接着剤の親和性が低くなり、接着剤が膨潤及び溶解するといった接着剤の劣化が抑制され、インクの吐出性が長期にわたって安定し、ヘッドの耐久性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0016】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0017】
<<有機溶剤>>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0018】
これらの中でも、色材として用いられる顔料及び染料の安定性の点から、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-エタンジオール(別名、エチレングリコール)が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0020】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0021】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0022】
前記インクに含まれる有機溶剤及び水は、エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下となるように組み合わせて用いることができるが、インクの保存安定性及び吐出安定性の点から、グリセリン、2-ピロリドン、カプロラクタム、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-エタンジオール、及び水から選択される2以上の組み合わせであることが好ましく、グリセリン、2-ピロリドン、及び水の組み合わせ;プロピレングリコール、1,2-エタンジオール、及び水の組み合わせがより好ましい。
それぞれの組み合わせについて、前記インクにおける含有比率としては、グリセリン:2-ピロリドン:水=3~15:20~35:55~70が好ましく、5~10:25~30:60~65がより好ましい。プロピレングリコール:1,2-エタンジオール:水=18~22:13~17:63~67が好ましく、20:15:65がより好ましい。
【0023】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、インク中における染料の安定性の点で、リアクティブレッド24、リアクティブレッド218、リアクティブレッド245;リアクティブオレンジ13;リアクティブブラック5、リアクティブブラック39;リアクティブイエロー95;リアクティブブルー72、リアクティブブルー49;アシッドブラック172;ダイレクトブルー193、ダイレクトブルー199;アシッドイエロー79、アシッドイエロー250;アシッドオレンジ94;アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199が好ましく、リアクティブレッド245、リアクティブオレンジ13、リアクティブブラック39、リアクティブイエロー95、アシッドブラック172、アシッドイエロー79、アシッドイエロー250、アシッドオレンジ94、アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199がより好ましい。
【0025】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0026】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルタ、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0028】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0030】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0031】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0032】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0033】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0035】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1-CH
2CH(OH)CH
2-O-(CH
2CH
2O)
a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCnF
2n+1でnは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-CnF
2n+1でnは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0036】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0037】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0038】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0039】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0040】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを2以上6以下に調整することが可能であれば、特に制限はなく、リン酸一ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、及び第一リン酸カルシウム等のリン酸塩類などが挙げられる。
【0041】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0042】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0043】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0044】
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0045】
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0046】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0047】
<液体吐出ヘッド>
前記液体吐出ヘッド(以下、「インク吐出ヘッド」とも称することがある)は、前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記流路は、液体吐出ヘッド内でインクが充填される空間である液室を有することが好ましい。前記液室としては、形状などに特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。
ノズルプレート(以下、「ノズル板」とも称することがある)は、ノズル(以下、「ノズル孔」とも称することがある)を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。ノズルは、インクからなる液滴を吐出する。ノズル孔とは、インクの液滴が吐出される孔を意味する。
前記流路とは、液室、及びノズルを通過するインクの経路を意味する。
【0048】
前記経路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つが、前記エポキシ接着剤により接合される。
ここで、「エポキシ接着剤により接合される」とは、液室を構成する部材、ノズルプレートを構成する部材、及び流路を構成する複数の部材の少なくとも2つが、エポキシ接着剤で少なくとも1箇所接合されることにより前記液体吐出ヘッドが形成され、かつ前記液体吐出ヘッドが前記インクと接する部位に前記エポキシ接着剤の硬化物を有することを意味する。
また、ノズルプレート及び後述する刺激発生手段、並びにこれらの間に位置する複数の部材(例えば、後述する流路板及び振動板等)の接合部がエポキシ接着剤により接合されており、この接合部がインクに接する場合などが特に好ましい。
【0049】
-ノズルプレート-
ノズルプレートは、ノズル基板と、ノズル基板上に撥インク膜とを有することが好ましい。
【0050】
--ノズル基板--
ノズル基板には、ノズル孔が設けられており、その数、形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ノズル基板は、ノズル孔からインクが吐出されるインク吐出側のノズル面と、インク吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。
撥インク膜は、ノズル基板のインク吐出側のノズル面に形成されている。
【0051】
ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb2O5、NiCr、Si、SiO2、Sn、Ta2O5、Ti、W、ZAO(ZnO+Al2O3)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0052】
--撥インク膜--
撥インク膜は、ノズル基板における複数の凹部を有するインク吐出側のノズル面上に形成されており、その形状、構造、材質、厚みなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
撥インク膜の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクに対する撥水性に優れている点から、シリコーン樹脂、パーフルオロポリエーテル化合物などが挙げられる。
【0054】
-液室-
液室は、ノズルプレートに設けられた複数のノズル孔に個別に対応して配置され、ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、加圧液室、圧力室、吐出室、加圧室などと称することもある。
【0055】
-その他の部材-
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、刺激発生手段などが挙げられる。
【0056】
--刺激発生手段--
刺激発生手段は、活性エネルギー線硬化型インクに印加する刺激を発生する手段である。
刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0057】
-エポキシ接着剤-
前記エポキシ接着剤は、エポキシ化合物、及び硬化剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、エポキシ接着剤とは、エポキシ化合物を主成分として含むエポキシ系接着剤も含む意味である。
【0058】
[硬化物の膨潤性及び溶解性]
エポキシ接着剤を90℃において30分間硬化させた硬化物の質量をM1[g](例えば、3g)とし、硬化物をインク50mLの中に、50℃の恒温槽で100日浸漬させて保管した後の浸漬物の質量をM2[g]としたときに、下記式(10)で表される質量の変化としては、10%未満が好ましく、5%未満がより好ましい。なお、前記質量が増加している場合は、エポキシ接着剤の硬化物が膨潤していることを示し、前記質量が減少している場合は、エポキシ接着剤の硬化物が溶解していることを示す。
質量の変化が、10%未満であると、接着剤により接合している複数の部材の剥がれを抑制できることから、インクの吐出性が長期にわたって安定し、液体吐出ヘッドの耐久性を飛躍的に向上させることができる。
硬化物の質量変化(%)=|(M1-M2)/M1|×100 ・・・ 式(10)
【0059】
未硬化のエポキシ接着剤中のエポキシ基の含有量としては、0.4mol/100g以上が好ましく、0.5mol/100g以上がより好ましい。含有量が、0.4mol/100g以上であると、硬化したエポキシ接着剤(硬化物)が、アクリルアミド化合物等の、硬化物の弾性率及びマルテンス硬度の減少を起こしやすい成分を30質量%以上含む活性エネルギー線硬化型インクと接しても、硬化物の弾性率及びマルテンス硬度の減少を防止することができる。
なお、エポキシ接着剤中のエポキシ基の含有量は、エポキシ接着剤中に含有する各エポキシ化合物のエポキシ当量をQ1、Q2、・・・、Qx(g/mol)、及び各エポキシ化合物のエポキシ接着剤中の質量百分率をW1、W2、・・・、Wx(%)としたときに、下記式(2)により算出することができる。なお、エポキシ化合物のエポキシ当量の測定方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、日本工業規格(JIS)K7236に規格化されている滴定法などが挙げられる。
エポキシ接着剤中のエポキシ基の含有量(mol/100g)=Σi(Wi/Qi)・・・ 式(11)
ただし、前式(11)中、Σは総和を表し、iは整数を表す。
【0060】
-エポキシ化合物-
前記エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物、ポリスルフィド変性エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物(例えば、CTBN:末端にカルボキシル基を持つブタジエン-アクリロニトリル共重合液状ゴム、ATBN:末端にアミノ基を持つブタジエン-アクリロニトリル共重合液状ゴム等による変性)、ポリアルキレングリコール型エポキシ化合物、エーテルエラストマー添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、液状ウレタン樹脂添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、ダイマー酸変性エポキシ化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化性、及び接着性の点から、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。
また、エポキシ化合物の反応性希釈剤として、n-ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキシド等の低粘度のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0061】
前記エポキシ化合物の含有量としては、エポキシ接着剤の全量に対して、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。含有量が、60質量%以上であると、エポキシ接着剤の硬化性を向上できる。
【0062】
-硬化剤-
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のエポキシ硬化剤を選択することができ、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環族アミン、複素環式アミン、ジシアンジアミド、ヒドラジド、アミンアダクト等のアミン系化合物、酸無水物、フェノール化合物、チオール化合物、イミダゾール化合物などが挙げられる。
【0063】
前記硬化剤の含有量としては、エポキシ接着剤全の量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。前記含有量が、1質量%以上30質量%以下であると、エポキシ接着剤の硬化性を向上できる。
【0064】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、例えば、3級アミン化合物やイミダゾール化合物等の硬化促進剤;シリカ等のフィラー;シランカップリング剤等の添加剤などが挙げられる。
【0065】
前記エポキシ接着剤の硬化条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知の硬化度、硬化時間等を選択することができる。
硬化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温25℃)以上200℃以下が好ましく、40℃以上180℃以下がより好ましい。
硬化時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上48時間以下が好ましく、1時間以上24時間以下がより好ましい。
また、接着強度を高めるため、被接着体との接触部に圧力を加えながら硬化させることが好ましい。
【0066】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の液体吐出装置に係る液体吐出ヘッドの一例について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視説明図、
図2は、
図1に示す液体吐出ヘッドの一例を示す、ノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
なお、以下でいう液体は、インクと同一の意味である。
【0067】
液体吐出ヘッド100は、循環型液体吐出ヘッドであり、ノズル板1と、個別流路部材である流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。各部材の接合には本発明のエポキシ接着剤を用いることができる。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20と、カバー29を備えている。
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0068】
そして、流路板2は、複数のノズル4に各々ノズル連通路5を介して通じる複数の圧力室6と、複数の圧力室6に各々通じる複数の流体抵抗部を兼ねる個別供給流路7と、2以上の個別供給流路7に通じる1又は複数の液導入部となる中間供給流路8などを形成している。
【0069】
個別供給流路7は、前記実施形態と同様に、個別供給流路7は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部7A及び第2流路部7Bと、第1流路部7Aと第2流路部7Bとの間に配置され、第1流路部7A及び第2流路部7Bよりも流体抵抗が低い第3流路部7Cとを含む。
【0070】
なお、流路板2は、複数枚の板状部材2A~2Eを積層して構成しているが、これに限るものではない。流路板2の接合には本発明のエポキシ接着剤を用いることができる。
【0071】
また、流路板2は、複数の圧力室6にノズル連通路5を介して各々通じる流路板2の面方向に沿う複数の個別回収流路57と、2以上の個別回収流路57に通じる1又は複数の液導出部となる中間回収流路58を形成している。
【0072】
個別回収流路57は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部57A及び第2流路部57Bと、第1流路部57Aと第2流路部57Bとの間に配置され、第1流路部57A及び第2流路部57Bよりも流体抵抗が低い第3流路部57Cとを含む。個別回収流路57は、第2流路部57Bよりも循環方向において下流側となる流路部57Dは第3流路部57Cと同じ流路幅にしている。
【0073】
共通流路部材20は、複数の圧力室6に通じる共通供給流路10と共通回収流路50とを形成している。なお、本実施形態においては、共通供給流路10は、ノズル配列方向において共通回収流路50と並ぶ流路部分10Aと、共通回収流路50と並ばない流路部分10Bとで構成している。
【0074】
共通供給流路10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して液導入部となる中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して個別供給流路7に通じている。共通回収流路50は、振動板部材3に設けた開口部59を介して液導出部となる中間回収流路58に連通し、中間回収流路58を介して個別回収流路57に通じている。
【0075】
また、共通供給流路10は供給ポート71に通じ、共通回収流路50は回収ポート72に通じている。
【0076】
振動板部材3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)30を有する。ここでは、振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3Aと、厚肉部を形成する第2層3Bで構成されている。振動板部材3の接合には本発明のエポキシ接着剤を用いることができる。
【0077】
そして、薄肉部である第1層3Aで圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。振動領域30内には、第2層3Bで圧電アクチュエータ11と接合する厚肉部である凸部30aを形成している。
【0078】
そして、振動板部材3の圧力室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0079】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12を所定の間隔で櫛歯状に形成している。そして、圧電素子12は、振動板部材3の振動領域30に形成した厚肉部である凸部30aに接合している。
【0080】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0081】
この液体吐出ヘッド100において、圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0082】
また、ノズル4から吐出されない液体はノズル4を通過して個別回収流路57から共通回収流路50に回収され、共通回収流路50から外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。また、ノズル4から液体吐出を行っていないときも、共通供給流路10から圧力室6を経て共通回収流路50に液体が循環し、外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。
【0083】
本実施形態において、簡単な構成で、液体吐出に伴う圧力変動を減衰して、共通供給流路10、共通回収流路50に対する伝搬を抑制することができる。
【0084】
次に、本発明に係る液体吐出装置としての印刷装置の一例について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は同装置の要部平面説明図、
図4は同装置の要部側面説明図である。
【0085】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0086】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0087】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0088】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0089】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0090】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0091】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0092】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。液体が吐出されていない場合は、ノズル面をキャップ部材421によりキャッピングすることで、ノズル部における本発明のインクの乾燥を抑制することができ、長期間の吐出安定を実現することが可能となる。キャップ部材は、保湿可能なキャップ部材であることが好ましく、保護用流体を用いて所望の湿度に保つ機能を有するキャップ部材であることがより好ましい。保護用流体はヘッドからパージされてもよいし、キャップの一部からパージされてもよい。
【0093】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0094】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0095】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0096】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶剤等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0097】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0098】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0099】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0100】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0101】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0102】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0103】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0104】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0105】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0106】
「液体吐出装置」又は「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0107】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置などのその他の装置も含むことができる。
【0108】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)などの像形成装置がある。
前記像形成装置は、上記した液体吐出装置を有し、更に必要に応じて前記その他の装置を有する。
【0109】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0110】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0111】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0112】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的
に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0113】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0114】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図5乃至
図6を参照して説明する。
図5は同装置の斜視説明図である。
図6はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0115】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0116】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0117】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【実施例0118】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0119】
<インクの製造例>
ブラック、ブルー、レッド、イエロー、及びオレンジのインクについて、各々下記処方の組成物を撹拌溶解し、それぞれ所望のpHになるようにリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)にて調整して得られた溶液を、孔径0.22μmのテフロン(登録商標)フィルターにてろ過し、各インクを製造した。
各インクのHSP値は、HSP値計算用ソフトウエアであるHansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP、Charles M.Hansen URL:http://www.hansen-solubility.com/)を用い、各インクに用いられている各有機溶剤のHSP値、及びイオン交換水のHSP値にそれぞれの質量比を掛け合わせたものを合計することにより算出した。
【0120】
<<インク1の製造例>>
表1、及び下記処方の組成物を撹拌溶解し、pH2.0になるようにリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)にて調整して得られた溶液を、孔径0.22μmのテフロン(登録商標)フィルターにてろ過し、ブラックインクであるインク1を製造し、HSP値を測定した。
インク1のHSP値は、表2に記載の通り、δD 16.4、δP 14.6、δH 31.6であった。
【0121】
-処方-
(ブラックインク)pH2.0
リアクティブブラック39 7質量部
グリセリン 5質量部
2-ピロリドン 30質量部
イオン交換水 65質量部
【0122】
<<インク2~17の製造例>>
インク1において、処方を表1-1~1-2に記載の通り変更したこと以外は、インク1の製造例と同様にして、インク2~17を製造し、HSP値を測定した。インク2~17のHSP値を、表2に示した。
【0123】
<<液体吐出ヘッド1の製造例>>
液体吐出ヘッド1としてのインクジェット記録ヘッドには、積層PZTを液室、及び流路の加圧に使用したノズル径27μm、600dpiのノズルを有する液体吐出ヘッドを使用した。ヘッド部材を構成する接着剤として、以下のビスフェノールA型エポキシ接着剤を用いた。
ビスフェノールA型エポキシ接着剤のHSP値は、δD 18.4、δP 7.5、δH 7.0であった。
エポキシ接着剤のHSP値は、HSP値計算用ソフトウエアであるHansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP、Charles M.Hansen URL:http://www.hansen-solubility.com/)を用い、エポキシ接着剤に用いられている主剤のHSP値、及び硬化剤のHSP値にそれぞれの質量比を掛け合わせたものを合計することにより算出した。
【0124】
-ビスフェノールA型エポキシ接着剤の処方-
主剤:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製)170質量部
硬化剤:ジエチレントリアミン(東京化成工業株式会社製)21質量部
硬化条件:90℃、30分間
【0125】
<<液体吐出ヘッド2の製造例>>
液体吐出ヘッド1において、エポキシ接着剤をビスフェノールA型エポキシ接着剤からビスフェノールF型エポキシ接着剤に変更したこと以外は、液体吐出ヘッド1の製造例と同様にして、液体吐出ヘッド2を製造した。
ビスフェノールF型エポキシ接着剤のHSP値は、δD 18.8、δP 8.3、δH 8.3であった。
【0126】
<<液体吐出ヘッド3の製造例>>
液体吐出ヘッド3としてのインクジェット記録ヘッドには、
図7で示される構成とし、ヘッド部材にノズルプレート21を構成する部材を接着する際、以下のビスフェノールA型エポキシ接着剤を用いた。ビスフェノールA型エポキシ接着剤のHSP値は、δD 18.4、δP 7.5、δH 7.0であった。
【0127】
-ビスフェノールF型エポキシ接着剤の処方-
主剤:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(シグマアルドリッチ社製)156質量部
硬化剤:ジエチレントリアミン(東京化成工業株式会社製)21質量部
硬化条件:90℃、30分間
【0128】
(実施例1)
表2に示す通り、インク1と液体吐出ヘッド1の組み合わせを用い、インク1を収容した収容部と、液体吐出ヘッド1とを備える実施例1の液体吐出装置を製造した。
【0129】
(実施例2~12)
実施例1において、インクと液体吐出ヘッドの組み合わせを表3に示す通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~12の液体吐出装置を製造した。
【0130】
<評価>
作製したインク1~17、及び実施例1~12の液体吐出装置について、以下のように評価した。
【0131】
<<インクの保存安定性>>
インク1~17を50℃の恒温槽で40日間保管し、保管後のインクの状態を目視にて確認した。インク14及びインク15は、凝集物が発生し、インクの保存安定性が不十分であったが、インク1~13及び16~17については、凝集物は見られず、良好なインクの保存安定性を有していることが確認できた。結果を表2に示した。
【0132】
-評価基準-
A:凝集物は見られず、良好なインクの保存安定性を有する
B:凝集物が発生し、インクの保存安定性が不十分である
【0133】
<<吐出安定性>>
実施例1~12の液体吐出装置について、以下のように、吐出安定性の評価を行った。
吐出安定性の評価は、液体吐出ヘッド内部の収容部に各インクを充填した状態で、50℃の恒温槽にて100日間保管し、その後、液体吐出ヘッドを取り出してインクを吐出させ、吐出されるインクの状態を確認し、以下の3ランクの評価基準にて評価した。
なお、恒温槽で保管している間、ノズル部のインクが乾燥しないよう、ノズル面が空気に触れないように専用治具でカバーをした。また、液体吐出ヘッドに充填しているインクは、2週間に1度の頻度で入れ替えた。
【0134】
-評価基準-
A:吐出の乱れがなく、ノズル詰まりもない
B:吐出が若干乱れるが、ノズル詰まりはない
C:吐出が大きく乱れ、ノズルも詰まる
【0135】
<<硬化物の膨潤性及び溶解性>>
実施例1~12の液体吐出装置について、以下のように、硬化物の膨潤性及び溶解性の評価を行った。
90℃において30分間硬化させた接着剤の硬化物の質量をM1[g](3g程度)とし、硬化物を各インク50mLの中に、50℃の恒温槽で100日浸漬させて保管した。その後、硬化物を取り出し、高純水でインクを流した後、室温で24時間乾燥させた後の硬化物の質量M2を測定した。硬化物の質量変化を下記式(10)により算出し、以下の評価基準にて評価した。
なお、実施例1~12のいずれの場合も、質量M2は増加し、硬化物が膨潤していた。
硬化物の質量変化(%)=|(M1-M2)/M1|×100 ・・・ 式(10)
【0136】
-評価基準-
A:硬化物の質量変化が、5%未満である
B:硬化物の質量変化が、5%以上10%未満である
C:硬化物の質量変化が、10%以上である
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
その結果、本発明の実施例1~12において、50℃で長期間保存した液体吐出ヘッドにおいても、接着剤の膨潤が低く抑えられており、安定した吐出性を満足していることがわかった。一方、HSP距離を満たさない比較例1~2及び5~6では、接着剤の硬化物の膨潤が生じ、長期にわたる安定した吐出性が得られないことがわかった。また、インクがpH2~6を外れる比較例3~4では、インクの保存安定性が不十分であった。
【0142】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクと、
前記インクを流通させる流路、及び前記流路と連通するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記経路、前記液室、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下であることを特徴とする液体吐出装置である。
<2> 前記HSP距離が、25.8以上28.6以下である前記<1>に記載の液体吐出装置である。
<3> 前記色材が、リアクティブレッド245、リアクティブオレンジ13、リアクティブブラック39、リアクティブイエロー95、アシッドブラック172、アシッドイエロー79、アシッドイエロー250、アシッドオレンジ94、アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199からなる群より選択される1つ以上を含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<4> 前記有機溶剤が、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-エタンジオールからなる群より選択される1つ以上を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<5> 前記エポキシ接着剤が、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びビスフェノールF型エポキシ化合物のいずれか1つ以上を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<6> インクジェット記録装置である前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<7> 色材、水、及び有機溶剤を含有し、pHが2以上6以下であるインクを流路で流通させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記インクからなる液滴を吐出する吐出工程を含み、
前記流路、及び前記ノズルを構成する複数の部材であって、かつ前記インクと接する部材の少なくとも2つがエポキシ接着剤により接合され、
前記インクと前記エポキシ接着剤とのHSP距離が、24.6以上29.8以下であることを特徴とする液体吐出方法である。
<8> 液体が吐出されていない場合は、ノズル面を保湿可能なキャップ部材によりキャップする前記<7>に記載の液体吐出方法である。
<9> 前記HSP距離が、25.8以上28.6以下である前記<7>から<8>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<10> 前記色材が、リアクティブレッド245、リアクティブオレンジ13、リアクティブブラック39、リアクティブイエロー95、アシッドブラック172、アシッドイエロー79、アシッドイエロー250、アシッドオレンジ94、アシッドレッド52、アシッドレッド249、及びダイレクトブルー199からなる群より選択される1つ以上を含む前記<7>から<9>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<11> 前記有機溶剤が、グリセリン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-エタンジオールからなる群より選択される1つ以上を含む前記<7>から<10>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<12> 前記エポキシ接着剤が、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びビスフェノールF型エポキシ化合物のいずれか1つ以上を含む前記<7>から<11>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<13> インクジェット記録装置を用いる前記<7>から<12>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<14> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体吐出装置を有することを特徴とする像形成装置である。
【0143】
前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体吐出装置、及び前記<7>から<12>のいずれかに記載の液体吐出方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。