(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048449
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】基板支持器、基板処理装置及び静電吸着方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230331BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157768
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岡 信介
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB23
5F004BB28
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB16
5F131EB17
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】伝熱ガスの漏れを抑制する。
【解決手段】基板を支持する基板支持器であって、基台と、前記基台の上方に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する静電チャックと、前記基板支持面上の基板を囲むように配置されるエッジリングと、を備え、前記静電チャックは、前記エッジリングを支持するためのリング支持面を有し、前記リング支持面は、内縁側が外縁側よりも低い。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する基板支持器であって、
基台と、
前記基台の上方に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する静電チャックと、
前記基板支持面上の基板を囲むように配置されるエッジリングと、を備え、
前記静電チャックは、前記エッジリングを支持するためのリング支持面を有し、
前記リング支持面は、内縁側が外縁側よりも低い、基板支持器。
【請求項2】
前記リング支持面は、当該リング支持面と前記エッジリングとの間に、伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給口を有する、請求項1に記載の基板支持器。
【請求項3】
前記エッジリングの下面または前記リング支持面の少なくともいずれか一方は、溝を有する、請求項2に記載の基板支持器。
【請求項4】
前記リング支持面は、傾斜面により構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項5】
前記傾斜面の角度は、0.03°~0.06°である、請求項4に記載の基板支持器。
【請求項6】
前記リング支持面は、内縁側から外縁側に向けて高くなる曲面により構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項7】
前記リング支持面は、内縁側と外縁側とで段差を有し、または、内縁側から外縁側に向けて高くなる階段状に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項8】
前記リング支持面は、前記エッジリングを静電吸着するための第1電極及び第2電極をそれぞれ内側及び外側に有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項9】
前記第1電極及び前記第2電極は、両電極間に電位差が生じるように電圧が印加される、請求項8に記載の基板支持器。
【請求項10】
前記基板の温調用流体が流れる流路をさらに備え、
前記第1電極及び前記第2電極に印加する電圧の大きさは、前記流路を流れる温調用流体の温度に基づいて変更される、請求項9に記載の基板支持器。
【請求項11】
前記エッジリングは、SiC、Si、SiO2、W、WC又はセラミックスにより形成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の基板支持器と、
減圧可能に構成され、前記基板支持器を収容する処理チャンバと、を備える、基板処理装置。
【請求項13】
前記基板支持器は、当該基板支持器の下面中央部が、減圧された前記処理チャンバの内部より高い圧力の雰囲気に曝されるように、当該処理チャンバに収容される、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
基板処理装置の基板支持器の静電チャックにエッジリングを静電吸着する方法であって、
前記基板処理装置は、減圧可能に構成され、前記基板支持器を収容する処理チャンバを備え、
前記基板支持器は、
基台と、
前記基台の上方に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する静電チャックと、
前記基板支持面上の基板を囲むように配置される前記エッジリングと、を備え、
前記静電チャックは、前記エッジリングを支持するためのリング支持面を有し、
前記リング支持面は、内縁側が外縁側よりも低く、
前記基板支持器の前記リング支持面に支持された前記エッジリングを静電吸着する工程と、
その後、前記処理チャンバを減圧し、前記基台及び前記静電チャックを変形させ、前記リング支持面の内縁側を前記エッジリングの下面に近づける工程と、を含む、静電吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板支持器、基板処理装置及び静電吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には基板処理装置が開示されている。基板処理装置は、基板が載置される静電チャックと、基板が載置される領域を囲んで静電チャック上に設けられたフォーカスリングとで挟まれる空間に熱媒体を供給する供給部と、を備える。さらに、基板処理装置は、静電チャック内部の、フォーカスリングに対応する領域に設けられ、静電チャックにフォーカスリングを吸着するための電圧が印加される複数の電極を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、伝熱ガスの漏れを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を支持する基板支持器であって、基台と、前記基台の上方に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する静電チャックと、前記基板支持面上の基板を囲むように配置されるエッジリングと、を備え、前記静電チャックは、前記エッジリングを支持するためのリング支持面を有し、前記リング支持面は、内縁側が外縁側よりも低い。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、伝熱ガスの漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】チャンバ内が大気圧のときの、従来の基板支持器の状態を示す図である。
【
図2】チャンバ内が排気されているときの、従来の基板支持部の状態を示す図である。
【
図3】プラズマ処理システムの構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】プラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図5】プラズマ処理チャンバ内の基板支持器の状態を示す断面図であり、基板支持器の周囲全体が大気圧のときの状態を示している。
【
図7】プラズマ処理チャンバが減圧されたときの基板支持器の要部を示す図である。
【
図8】エッジリングの静電吸着方法の一例を説明するためのフローチャートである
【
図9】エッジリングを載置する工程時の静電チャックの状態を示す図である。
【
図13】リング支持面及びエッジリングの他の例を示す図である。
【
図14】エッジリングの静電吸着用の電極へ電圧を印加する形態の一例を説明するための図である。
【
図15】エッジリングの静電吸着用の電極へ電圧を印加する形態の一例を説明するための図である。
【
図16】エッジリングの他の例を示す断面図である。
【
図17】カバーリングをさらに備える基板支持器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板にプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによって基板を処理する。
【0009】
プラズマ処理は、基板処理装置で行われる。基板処理装置は、一般的に、基板支持器と、チャンバとを備える。基板支持器は、基台と、当該基台の上方に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する静電チャックと、を備える。チャンバは、減圧可能に構成され、基板支持器を収容する。また、静電チャック上には、基板に対するプラズマ処理の均一性を向上させるため、基板支持面に支持された基板を囲むようにエッジリングが配置される。エッジリングは、基板支持面を囲むように形成された静電チャックのリング支持面に支持され、静電吸着される。
【0010】
さらに、基板支持器は、温調用流体が流れる流路が内部に形成され、且つ、静電チャックのリング支持面とエッジリングとの間に、He(ヘリウム)ガス等の伝熱ガスが供給されるように構成されている。この構成により、エッジリングの温度がプラズマ処理中のプラズマからの入熱によって昇温しても調節することが可能となっている。
【0011】
ところで、
図1に示すように、基板支持器500の静電チャック501のリング支持面501a及びエッジリング502の下面はそれぞれ、例えば、略水平な平坦面により構成される。しかし、静電チャック501のリング支持面501aは、チャンバ503内が大気圧の場合に略水平な平坦面であっても、
図2に示すように、プラズマ処理中等、チャンバ503内が減圧されている場合には、略水平な平坦面から変形する。その理由は以下の通りである。
【0012】
すなわち、基板支持器500は、その周縁部の下面が静電チャック501に固定されている。そして、チャンバ503の構造等の関係上、チャンバ503内が減圧され、基板支持器500の上部(例えば基台504の上面及び静電チャック501)の周囲が減圧雰囲気となっても、基板支持器500の下面中央部の周囲は依然、大気圧雰囲気のままとなる。そのため、チャンバ503内が減圧されたときに、基台504及び静電チャック501が、これらの中央部が上方に突出するように変形し、リング支持面501aも略水平な平坦面から変形する。
【0013】
上述のように変形した場合、エッジリング502は、静電吸着されていても、リング支持面501aと同じようには変形せず、その結果、リング支持面501aとエッジリング502の下面との間に、5μm~20μmの高さの隙間が生じてしまう。そうすると、上記隙間からHe(ヘリウム)ガス等の伝熱ガスが漏れてしまう。
【0014】
本開示にかかる技術は、伝熱ガスの漏れを抑制する。以下、本実施形態にかかる基板支持器、基板処理装置及び静電吸着方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<プラズマ処理システム>
先ず、一実施形態にかかるプラズマ処理システムについて、
図3を用いて説明する。
図3は、プラズマ処理システムの構成を模式的に示す説明図である。
【0016】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、基板処理装置の一例としてのプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持器11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0017】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0018】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0019】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について、
図4を用いて説明する。
図4は、プラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。本実施形態のプラズマ処理装置1では基板(ウェハ)Wにプラズマ処理を行うが、プラズマ処理対象の基板Wはウェハに限定されるものではない。
【0020】
容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持器11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持器11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持器11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0021】
基板支持器11は、本体部111及びエッジリング112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、エッジリング112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、エッジリング112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。
【0022】
一実施形態において、本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は、導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック114は、基台113の上に配置される。静電チャック114の上面は、基板支持面111aを有する。一実施形態において、静電チャック114の上面は、リング支持面111bも有する。
【0023】
エッジリング112は、基板支持面111a上の基板Wを囲むように配置される。
【0024】
また、基板支持器11は、静電チャック114、エッジリング112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路113a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路113aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路113aは、基台113に形成される。
【0025】
さらに、基板支持器11は、エッジリング112の下面とリング支持面111bとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給路115を含む。また、基板支持器11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給路を含んでもよい。各伝熱ガス供給路には、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスが供給される。
【0026】
上述の伝熱ガス供給部は、少なくとも1つのガスソース及び少なくとも1つの流量制御器を含んでもよい。一実施形態において、伝熱ガス供給部は、少なくとも1つの伝熱ガスを、それぞれに対応のガスソースからそれぞれに対応の流量制御器を介して各伝熱ガス供給路に供給するように構成される。各流量制御器は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、伝熱ガス供給部は、少なくとも1つの伝熱ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0027】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0028】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0029】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持器11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持器11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0030】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持器11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持器11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持器11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持器11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0031】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持器11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持器11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック114内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0032】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0033】
<基板支持器>
次に、上述した基板支持器11の構成に関し、
図4を参照し、
図5及び
図6を用いて、さらに説明する。
図5は、プラズマ処理チャンバ10内の基板支持器11の状態を示す断面図であり、基板支持器11の周囲全体が大気圧のときの状態を示している。
図6は、
図5の部分拡大断面図である。ただし、
図6においてウェハWの図示は省略している。
【0034】
図4に示すように、基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10内に収容される。具体的には、基板支持器11は、当該基板支持器11の下面が、減圧されたプラズマ処理チャンバ10の内部より高い圧力の雰囲気に曝されるように、プラズマ処理チャンバ10に収容される。より具体的には、基板支持器11は、その下面で、プラズマ処理チャンバ10の底部に設けられた開口10fを塞ぐように、プラズマ処理チャンバ10内に収容される。例えば、プラズマ処理チャンバ10の底部上に、開口10fの外周を囲うように設けられた円筒状の脚部15を介して、基板支持器11の周縁部の下面を固定することにより、基板支持器11の下面で開口10fを塞ぐことができる。なお、脚部15は絶縁体により形成される。一実施形態において、プラズマ処理チャンバ10の底部と脚部15との間には、
図5に示すようにシール部材としてのOリング16が設けられている。
【0035】
前述のように、基板支持器11は、本体部111及びエッジリング112を含み、一実施形態において、本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。
【0036】
また、一実施形態において、基台113はAl等の導電性材料で形成されている。基台113と静電チャック114は、例えば接着等により一体化されている。
【0037】
静電チャック114は、基板支持面111aを備えた中央部200と、リング支持面111bを備えた外周部201とが一体になって構成されている。静電チャック114の中央部200と外周部201は別体であってもよい。中央部200は外周部201から突起するように設けられ、中央部200の基板支持面111aは外周部201のリング支持面111bより高い。
【0038】
リング支持面111bに支持されるエッジリング112は、基板支持面111a上の基板Wを囲むように配置される部材である。エッジリング112は、環状に形成され、より具体的には、平面視円環状に形成されている。一実施形態において、エッジリング112の下面は、断面視における高さが内縁側から外縁側にかけて一定であり基板支持面111aに支持されたときに略水平となる、平坦面により構成される。エッジリング112の材料には例えばSiC、Si、SiO2、W、WC又はセラミックスが用いられる。
【0039】
静電チャック114の中央部200は、例えば基板Wの直径よりも小径に形成されており、基板Wが基板支持面111aに載置されたときに、基板Wの周縁部が静電チャック114の中央部200から張り出すようになっている。
一実施形態において、エッジリング112は、
図6に示すように、その上部に段差が形成されており、外周部の上面が内周部の上面より高く形成されている。エッジリング112の内周部は、静電チャック114の中央部200から張り出した基板Wの周縁部の下側にもぐり込むように形成されていてもよい。つまり、エッジリング112は、その内径が、基板Wの外径よりも小さく形成されていてもよい。
【0040】
さらに、静電チャック114の中央部200には、基板Wを静電吸着するための電極210が設けられている。静電チャック114の外周部201には、エッジリング112を静電吸着するための電極211が設けられている。一実施形態において、電極211は、一対の電極211a、211bを含む双極型である。例えば、第1電極211a及び第2電極211bは、平面視円環状に形成され、互いに同心に配置され、第1電極211aは内側に位置し、第2電極211bは外側に位置する。第1電極211a及び第2電極211bはそれぞれ周方向に沿って分割されていてもよい。
【0041】
電極210には、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、基板支持面111aに基板Wが吸着保持される。
同様に、電極211には、直流電源からの直流電圧が印加される。具体的には、第1電極211aと第2電極211bとの間に電位差が生じるように、直流電源からの直流電圧が電極211に印加される。これにより生じる静電力により、リング支持面111bにエッジリング112が吸着保持される。
【0042】
また、前述のように、基板支持器11は、エッジリング112の下面とリング支持面111bとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給路115を含む。一実施形態において、静電チャック114の外周部201が備えるリング支持面111bには、伝熱ガス供給口220が形成されている。伝熱ガス供給路115に供給された伝熱ガスは、伝熱ガス供給口220から、エッジリング112の下面とリング支持面111bとの間に供給される。伝熱ガス供給口220は、伝熱ガス供給部(図示せず)に接続されている。伝熱ガス供給部は、例えば、伝熱ガスのガスソース21と、供給量を調整する流量制御器を含む。流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ等の流量制御器やバルブを含む。
【0043】
また、一実施形態において、伝熱ガス供給口220は吸着口を兼ねる。吸着口としての伝熱ガス供給口220を介して、リング支持面111bとエッジリング112との間を排気することにより、エッジリング112をリング支持面111bに真空吸着することができる。なお、吸着口としての伝熱ガス供給口220は、排気システム(図示せず)に接続されている。排気システムは、例えば、排気量調整弁及び真空ポンプを含む。吸着口と、伝熱ガス供給口220とを別に設けてもよい。
【0044】
さらに、静電チャック114のリング支持面111bは、内縁側が外縁側よりも低く形成されている。具体的には、静電チャック114のリング支持面111bは、プラズマ処理チャンバ10内が減圧されていない状態すなわち無負荷の状態において内縁側が外縁側よりも低くなるように、形成されている。例えば、静電チャック114のリング支持面111bは、内縁側が外縁側よりも低い傾斜面により構成される。静電チャック114の径方向の幅は例えば15mm、静電チャック114の内周側端と外周側端との高低差は例えば8μmである。リング支持面111bを構成する傾斜面の水平面に対する(無負荷の状態での)角度は、例えば0.03°~0.06°である。
【0045】
なお、上述のようなリング支持面111bに支持されるエッジリング112の内径は例えば以下のように設定される。すなわち、エッジリング112の内径は、当該エッジリング112の内周面(以下、リング内周面)と静電チャック114の中央部200の外周面との間に隙間が生じるように、設定される。より具体的には、
図6において点線で示すようにエッジリング112を静電吸着する際に、リング内周面が静電チャック114の中央部200の外周面に接触しないよう、エッジリング112の内径は設定される。
【0046】
続いて、リング支持面111bが上述のように形成されていることの作用について説明する。
図7は、プラズマ処理チャンバ10が減圧されたときの基板支持器11の要部を示す図であり、流路113aや、伝熱ガス供給路115、電極210、211等の図示を省略している。
【0047】
プラズマ処理チャンバ10内が減圧されると、基板支持器11の上部(例えば基台113の上面及び静電チャック114等)の周囲が減圧雰囲気となる。しかし、プラズマ処理チャンバ10内が減圧されても、基板支持器11の下面(具体的には基台113の下面)の中央部の周囲は、減圧開始前の圧力のまま維持され、すなわち、大気圧のまま維持される。そのため、基台113及び静電チャック114が、これらの中央部が上方に突出するように変形する。このように変形した場合、
図1及び
図2を用いて説明したように、本実施形態と異なり、リング支持面111bが無負荷の状態で略水平な平坦面であると、リング支持面111bとエッジリング112の下面との間の隙間から伝熱ガスがプラズマ処理空間10sに漏れてしまう。
【0048】
それに対し、本実施形態では、リング支持面111bが無負荷の状態において内縁側が外縁側よりも低くなるように形成されている。そのため、
図7に示すように、基台113及び静電チャック114が、これらの中央部が上方に突出するように変形し、これに伴い、静電チャック114の外周部201も変形したときに、リング支持面111bが略水平に近づく。したがって、リング支持面111bが無負荷の状態において略水平な平坦面である場合に比べて、プラズマ処理チャンバ10内が減圧されている時のリング支持面111bとエッジリング112の下面との間の隙間を小さくすることができる。よって、上記隙間から伝熱ガスが漏れるのを抑制することができる。
【0049】
また、上記隙間が小さければ、エッジリング112をリング支持面111bに静電吸着させるときに、エッジリング112を変形させ、当該エッジリング112の下面とリング支持面111bとを、略全面に亘って密接させることができる。したがって、上記隙間から伝熱ガスが漏れるのをさらに抑制することができる。
【0050】
続いて、エッジリング112の静電吸着方法を、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、エッジリング112の静電吸着方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図9は、エッジリングを載置する工程時の静電チャック114の状態を示す図である。
【0051】
まず、例えば、
図8に示すように、エッジリング112が、作業者により、静電チャック114のリング支持面111b上に、基板支持面111aに対して位置決めされて載置される(ステップS1)。エッジリング112の基板支持面111aに対する位置決めは、
図8に示すように、位置決め用治具Jを用いて行われる。一実施形態において、位置決め用治具Jは、静電チャック114の中央部200の外周面とエッジリング112の内周面との間に差し込まれて用いられる。このような位置決め用治具Jを用いることにより、例えば、静電チャック114の中央部200の外周面とエッジリング112の内周面との間の距離を、静電チャック114の周方向に沿って一定にすることができる。
【0052】
次いで、リング支持面111bに支持されたエッジリング112が真空吸着される(ステップS2)。具体的には、吸着口としての伝熱ガス供給口220を介して、リング支持面111bとエッジリング112の下面との間が排気され、エッジリング112がリング支持面111bに真空吸着される。
【0053】
その後、位置決め用治具Jが、作業者により静電チャック114から除去される(ステップS3)。
【0054】
続いて、プラズマ処理チャンバ10の減圧開始と同時に、リング支持面111bに支持されたエッジリング112が静電吸着される(ステップS4)。具体的には、プラズマ処理チャンバ10の減圧開始と同時に、電極211に直流電圧が印加され、これにより生じる静電力により、エッジリング112がリング支持面111bに静電吸着される。
以上により一連のエッジリング112の静電吸着処理が完了する。
【0055】
エッジリング112の吸着後、所望のタイミング(例えばプラズマ処理開始時等)で、リング支持面111bとエッジリング112との間に伝熱ガスが供給される。
【0056】
以上のように本実施形態では、基板支持器11のリング支持面111bが、無負荷の状態において内縁側が外側よりも低くなるように形成されている。そのため、本実施形態によれば、プラズマ処理チャンバ10を減圧した時における、エッジリング112の下面とリング支持面111bとの間の隙間を小さくすることできるため、上記隙間から伝熱ガスが漏れるのを抑制することができる。その結果、伝熱ガスの漏れによるトラブルも抑制することができる。
【0057】
なお、プラズマ処理チャンバ10を減圧した時における、エッジリング112の下面とリング支持面111bとの間の隙間を小さくする方法であって、本実施形態とは異なる方法として、以下の基板支持器の変形を抑制する方法が考えられる。すなわち、静電チャック114の厚さや材質を変更して剛性を高め、基板支持器11の変形を抑制し、上記隙間を小さくする方法である。また、基板支持器11の下面中央部をプラズマ処理チャンバ10に締結し、プラズマ処理チャンバ10を減圧した時における、基板支持器11の変形を抑制し、上記隙間を小さくする方法も考えられる。しかし、基板支持器11の構造は、基板吸着領域の特性(吸着特性、抜熱特性等)を重視して設計される。そのため、基板支持器11の変形を抑制するために基板支持器11の構造に制約を設けることは、設計自由度を下げるため好ましくない。それに対し、本実施形態では、リング支持面111bの形状を従来のものから僅かに変更するだけで上記隙間を小さくすることができるため、設計の自由度の低下は生じない。
【0058】
本実施形態では、リング支持面111bは、傾斜面により構成されていた。ただし、リング支持面111bの形状は、これに限定されず、無負荷の状態において内縁側が外縁側よりも低く形成されていればよく、具体的には、無負荷の状態において内縁端と外縁端とを接続する面の水平に対する角度が0.03°~0.06°となるように形成されていればよい。
【0059】
例えば、
図10のリング支持面300のように、無負荷の状態において内縁側から外縁側に向けて高くなる階段状に形成されていてもよい。
また、
図11のリング支持面310のように、内縁側と外縁側とで段差を有し且つ無負荷の状態において内縁側が高くなるように形成されていてもよい。
さらに、
図12のリング支持面320のように、無負荷の状態において内縁側から外縁側に向けて高くなる曲面により形成されていてもよい。
リング支持面300、310、320であっても、無負荷の状態において略水平な平坦面により構成されるリング支持面111bに比べて、プラズマ処理チャンバ10を減圧した時における、エッジリング112の下面と間の隙間を小さくすることできる。そして、当該隙間から伝熱ガスが漏れるのを抑制することができる。
【0060】
さらにまた、リング支持面330には、
図13に示すように、伝熱ガス供給口220に連通する溝331が形成されていてもよい。溝331は、例えば、静電チャック114の周方向に沿って延びるように形成されている。一実施形態において、溝331は、平面視で、静電チャック114と同心の円環状に形成される。
また、エッジリング340の下面には、伝熱ガス供給口220に対応する位置に、上側に凹む溝341が形成されていてもよい。一実施形態において、溝341の形成位置は、プラズマ処理チャンバ10が減圧され静電チャック114が変形したときに伝熱ガス供給口220に対向する位置である。溝341は、例えば、エッジリング340の周方向に沿って延びるように形成されている。一実施形態において、溝341は、平面視で、エッジリング340と同心の円環状に形成される。
【0061】
リング支持面330への溝331の形成、または、エッジリング340の下面への溝341の形成の少なくともいずれか一方を行うことで、伝熱ガスを周方向に拡散することができる。そのため、伝熱ガスの漏れをさらに抑制することができる。また、エッジリング112の温度制御を向上させることができ、エッジリング112の温度分布の均一性を改善することができる。
【0062】
電極211に印加する電圧は、例えば一定であるが、以下に説明するように、流路113aを流れる温調用流体の温度に基づいて変更されるようにしてもよい。上記温調用流体の温度に基づく電極211に印加する電圧の変更は制御部2により行われる。
【0063】
エッジリング112の下面がリング支持面111bに支持された状態において水平である場合、プラズマ処理チャンバ10が減圧され基台113及び静電チャック114が変形したときのリング支持面111bも水平となることが好ましい。したがって、一実施形態においては、プラズマ処理チャンバ10が減圧され基台113及び静電チャック114が変形したときにリング支持面111bが水平となるよう設計される。
【0064】
一方で、静電チャック114と基台113とでは、形成材料が異なること等から、熱膨張率が異なり、基台113の方が熱膨張率が大きい。
そのため、流路113aを流れる温調用流体が高温の場合、基台113が熱膨張した状態になるため、静電チャック114が基台113により外側に引っ張られる。その結果、
図14に示すように、プラズマ処理チャンバ10が減圧され基台113及び静電チャック114が変形したときに、リング支持面111bが、設計通りに水平とならず、外縁側に向けて下がるように傾くことがある。このように傾くと、エッジリング112の下面とリング支持面111bの外縁側との間に、隙間が生じてしまう。したがって、流路113aを流れる温調用流体が高温の場合は、上述の隙間を小さくするために、エッジリング112の外縁側が電極211によってより強く静電吸着されるよう、外側の第2電極211bに印加する電圧の大きさを、内側の第1電極211aに比べて大きくしてもよい。
【0065】
また、流路113aを流れる温調用流体が低温の場合、基台113が熱収縮した状態になるため、静電チャック114が基台113により内側に引っ張られる。その結果、
図15に示すように、プラズマ処理チャンバ10が減圧され基台113及び静電チャック114が変形したときに、リング支持面111bが、設計通りに水平とならず、内縁側に向けて下がるように傾くことがある。このように傾くと、エッジリング112の下面とリング支持面111bの内縁側との間に、隙間が生じてしまう。したがって、流路113aを流れる温調用流体が低温の場合は、上述の隙間を小さくするために、エッジリング112の内縁側が電極211によってより強く静電吸着されるよう、内側の第1電極211aに印加する電圧の大きさを、外側の第2電極211bに比べて大きくしてもよい。
【0066】
以上では、エッジリング112の下面が、断面視における高さが内縁側から外縁側にかけて一定であり、リング支持面111bに支持された状態において水平であった。しかし、
図16に示すように、エッジリング350の下面は、断面視において内縁側が外縁側より高くなっていてもよい。このような形状とすれば、
図14に示したように、プラズマ処理チャンバ10が減圧されたときにリング支持面111bが外縁側に向けて下がるように傾いた場合でも、エッジリング350の下面とリング支持面111bとを、略全面に亘って密接させることができる。
【0067】
図17に示すように、基板支持器360は、カバーリング361と、他のリング支持面362とを備えていてもよい。カバーリング361は、エッジリング112の外側面を覆うように配置される部材であり、リング支持面362は、リング支持面111bの外側を囲むように形成されており、カバーリング361を支持するためのものである。基板支持器360が、カバーリング361の下面とリング支持面362との間に伝熱ガスを供給する構成をさらに備える場合は、リング支持面362を、リング支持面111bと同様に、内縁側が外縁側よりも低くなるよう形成してもよい。これにより、カバーリング361の下面とリング支持面362との間の隙間から伝熱ガスが漏れるのを抑制することができる。
【0068】
一実施形態において、リング支持面362は、静電チャック114及び基台113の外周を囲う環状絶縁部材363に備えられる。
【0069】
また、
図18に示すように、静電チャック370の基板支持面371が、プラズマ処理チャンバ10が減圧されていない状態において、断面視で下方に凹む凹状に形成されていてもよい。これにより、プラズマ処理チャンバ10が減圧され、静電チャック370が、その中央部が上方に突出するように変形したときに、基板支持面371が略水平に近付く。そのため、静電チャック370の基板支持面371が、プラズマ処理チャンバ10が減圧されていない状態において水平となるように形成されている場合に比べて、基板Wの下面と基板支持面371との間の隙間が、小さくなる。したがって、基板Wの下面と基板支持面371との間に供給された伝熱ガスが上記隙間から漏れるのを抑制することができる。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11、360 基板支持器
111a 中央領域(基板支持面)
111b 環状領域(リング支持面)
112、340、350 エッジリング
113 基台
114、370 静電チャック
300、310、320、330、362 リング支持面
371 基板支持面
W 基板