IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光学積層フィルム及び製造方法 図1
  • 特開-光学積層フィルム及び製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048618
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】光学積層フィルム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20230331BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230331BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230331BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230331BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B29C48/08
B29C48/21
C08J5/18 CES
C08J5/18 CEZ
B32B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158040
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 直紀
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F071AA21
4F071AA69
4F071AA86
4F071AB26
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE05
4F071AF30Y
4F071AF34
4F071AF45
4F071AF57
4F071AH16
4F071AH19
4F071BB06
4F071BC01
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK02C
4F100CA05A
4F100CA05B
4F100CA05C
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100CA07C
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH20C
4F100JA04B
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JA05C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JJ03
4F100JJ03A
4F100JJ03C
4F100JL09
4F100JN06
4F100YY00B
4F207AA12
4F207AB06
4F207AG01
4F207AG03
4F207AH73
4F207AR12
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KK64
4F207KL84
4F207KM15
(57)【要約】
【課題】耐光性のばらつきが抑制された光学積層フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第一外側層、中間層及び第二外側層をこの順に備える光学積層フィルムであって、前記中間層が、ガラス転移温度Tg1(℃)を有する脂環式構造含有重合体[1]を含む樹脂、融点Mp1(℃)を有する紫外線吸収剤[1]、及び融点Mp2(℃)を有するヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層であり、A層全体に占める、前記脂環式構造含有重合体[1]の割合、前記紫外線吸収剤[1]の割合及び前記ヒンダードアミン系光安定剤[1]の割合がそれぞれ所定の範囲内であり、前記Tg1、前記Mp1及び前記Mp2が、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層フィルム。
|(Mp1-Mp2)|≦100(℃) (1)
{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1>0(℃) (2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一外側層、中間層及び第二外側層をこの順に備える光学積層フィルムであって、
前記中間層が、ガラス転移温度Tg1(℃)を有し、脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂[1]、融点Mp1(℃)を有する紫外線吸収剤[1]、及び融点Mp2(℃)を有するヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層であり、
前記A層全体に占める前記熱可塑性樹脂[1]の割合が70重量%以上99.8重量%以下であり、前記紫外線吸収剤[1]の割合が0.1重量%以上20重量%以下であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤[1]の割合が0.1重量%以上10重量%以下であり、
前記Tg1、前記Mp1及び前記Mp2が下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層フィルム。
|(Mp1-Mp2)|≦100(℃) (1)
{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1>0(℃) (2)
【請求項2】
前記第一外側層及び前記第二外側層は、それぞれ独立して前記熱可塑性樹脂[1]、及び粒子を含むB層であり、
前記B層全体に占める前記熱可塑性樹脂[1]の割合が90重量%以上98.8重量%以下であり、前記粒子の割合が1重量%以上10重量%以下であり、
前記熱可塑性樹脂[1]の前記ガラス転移温度Tg1(℃)が120℃以上である、請求項1に記載の光学積層フィルム。
【請求項3】
前記B層が、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]を含み、
前記B層全体に占める前記紫外線吸収剤[2]の割合が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤[2]の割合が0.1重量%以上5重量%以下であり、
前記紫外線吸収剤[2]及び前記ヒンダードアミン系光安定剤[2]は、それぞれ独立して5%熱重量減少温度が250℃以上である、請求項2に記載の光学積層フィルム。
【請求項4】
前記光学積層フィルムの総厚みが10μm以上100μm以下であり、前記B層の厚みが0.5μm以上10μm以下である、請求項2または3に記載の光学積層フィルム。
【請求項5】
前記光学積層フィルムのヘイズ(HZ)が2%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造方法であって、
前記第一外側層、前記中間層及び前記第二外側層を溶融共押出成形により製造することを含む、光学積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂フィルムに耐光性(紫外線耐性)を付与するために、樹脂フィルムに対し、紫外線吸収剤や光安定剤を添加する技術が用いられている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-33517号公報
【特許文献2】特開2017-116759号公報
【特許文献3】特開2017-23038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線吸収剤及び光安定剤といった添加剤を含む樹脂フィルムは、面内での耐光性にばらつきが生じる場合がある。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みて草案されたもので、耐光性のばらつきが抑制された光学積層フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の目的を解決するべく検討した。その結果、脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系光安定剤を含む樹脂フィルムにおいて、紫外線吸収剤の融点Mp1及びヒンダードアミン系光吸収剤の融点Mp2の融点差の絶対値を所定の値以下とし、前記融点Mp1及び融点Mp2の平均値が熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg1よりも大きくなるように、各成分を選択することにより、樹脂フィルムの面内での耐光性のばらつきを抑制しうることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下のものを含む。
【0007】
〔1〕 第一外側層、中間層及び第二外側層をこの順に備える光学積層フィルムであって、前記中間層が、ガラス転移温度Tg1(℃)を有し、脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂[1]、融点Mp1(℃)を有する紫外線吸収剤[1]、及び融点Mp2(℃)を有するヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層であり、前記A層全体に占める前記熱可塑性樹脂[1]の割合が70重量%以上99.8重量%以下であり、前記紫外線吸収剤[1]の割合が0.1重量%以上20重量%以下であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤[1]の割合が0.1重量%以上10重量%以下であり、前記Tg1、前記Mp1及び前記Mp2が下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層フィルム。
|(Mp1-Mp2)|≦100(℃) (1)
{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1>0(℃) (2)
〔2〕 前記第一外側層及び前記第二外側層は、それぞれ独立して前記熱可塑性樹脂[1]、及び粒子を含むB層であり、前記B層全体に占める前記熱可塑性樹脂[1]の割合が90重量%以上98.8重量%以下であり、前記粒子の割合が1重量%以上10重量%以下であり、前記熱可塑性樹脂[1]の前記ガラス転移温度Tg1(℃)が120℃以上である、〔1〕に記載の光学積層フィルム。
〔3〕 前記B層が、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]を含み、前記B層全体に占める前記紫外線吸収剤[2]の割合が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤[2]の割合が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記紫外線吸収剤[2]及び前記ヒンダードアミン系光安定剤[2]は、それぞれ独立して5%熱重量減少温度が250℃以上である、〔2〕に記載の光学積層フィルム。
〔4〕 前記光学積層フィルムの総厚みが10μm以上100μm以下であり、前記B層の厚みが0.5μm以上10μm以下である、〔2〕または〔3〕に記載の光学積層フィルム。
〔5〕 前記光学積層フィルムのヘイズ(HZ)が2%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の光学積層フィルム。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造方法であって、前記第一外側層、前記中間層及び前記第二外側層を溶融共押出成形により製造することを含む、光学積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐光性のばらつきが抑制された光学積層フィルム及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態の光学積層フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
図2図2は本発明の一実施形態に係る光学積層フィルムの製造装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
〔1.光学積層フィルムの概要〕
図1は本発明の一実施形態の光学積層フィルムの断面を模式的に示す断面図である。図1に示す光学積層フィルム10は、第一外側層111、中間層120及び第二外側層112をこの順に備える。光学積層フィルム10は、中間層120が、ガラス転移温度Tg1(℃)を有し、脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂[1]、融点Mp1(℃)を有する紫外線吸収剤[1]、及び融点Mp2(℃)を有するヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層(A)である。
【0012】
本実施形態に係る光学積層フィルム10は、A層全体に占める熱可塑性樹脂[1]の割合が70重量%以上99.8重量%以下であり、紫外線吸収剤[1]の割合が0.1重量%以上20重量%以下であり、ヒンダードアミン系光安定剤[1]の割合が0.1重量%以上10重量%以下である。
【0013】
本実施形態に係る光学積層フィルム10は、Tg1、Mp1及びMp2が下記式(1)及び(2)を満たす。
【0014】
|(Mp1-Mp2)|≦100(℃) (1)
{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1>0(℃) (2)
【0015】
本実施形態によれば、中間層が式(1)及び式(2)を満たす熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層であることにより、面内での耐光性のばらつきが抑制された光学積層フィルムを提供できる。
【0016】
A層が式(1)及び(2)を満たすことにより、光学積層フィルムにおける面内の耐光性のばらつきを抑制しうる仕組みについて、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みにより制限されるものではない。
【0017】
紫外線吸収剤及び光安定剤といった添加剤を含む樹脂フィルムにおける面内での耐光性のばらつきは、樹脂フィルム中での添加剤の濃度むらにより生じる。また、前記の濃度むらは、樹脂フィルムの製造時において、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤及び光安定剤を溶融混練させて樹脂組成物とする際に各成分が十分に混ざり合わないことにより生じる。
【0018】
樹脂フィルム中での添加剤の濃度むらが生じる要因の一つとして、紫外線吸収剤及び光安定剤といった添加剤同士が十分に混ざり合わないことにより、紫外線吸収剤の偏在が生じたり、光安定剤の偏在が生じたりすることが考えられる。本実施形態においては、紫外線吸収剤の融点Mp1及びヒンダードアミン系光吸収剤の融点Mp2の融点差の絶対値が所定の値以下とする、すなわち式(1)を満たすように、融点の近い紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光吸収剤[1]を選択することで、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]を良好に混合させうることから、紫外線吸収剤の偏在及びヒンダードアミン系光安定剤の偏在による濃度むらを抑制し、フィルムの面内での均一な耐光性を達成しうる。
【0019】
また、樹脂フィルム中での添加剤の濃度むらが生じる他の要因の一つとして、熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤及び光安定剤といった添加剤とを溶融混練させて樹脂組成物とする際に、熱可塑性樹脂が十分に軟化する前に添加物が溶融してしまうことにより、熱可塑性樹脂及び添加剤を十分に混ぜ合わせることができず、熱可塑性樹脂中に添加剤の偏在が生じることが考えられる。本実施形態においては、添加剤である紫外線吸収剤[1]の融点Mp1及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2の平均値と、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg1との差を大きくすること、すなわち、式(2)を満たすように、熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]を選択することで、溶融混練時において熱可塑性樹脂[1]を十分に軟化させた状態で添加剤と良好に混合させうることから、熱可塑性樹脂中における添加剤の偏在による濃度むらを抑制し、フィルムの面内での均一な耐光性を達成しうる。
【0020】
〔2.中間層(A層)〕
本実施形態に係る中間層は、ガラス転移温度Tg1(℃)を有し、脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂[1]、融点Mp1(℃)を有する紫外線吸収剤[1]、及び融点Mp2(℃)を有するヒンダードアミン系光安定剤[1]を含むA層である。A層は、熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]を特定の割合で含む。また、A層においては、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1(℃)及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2(℃)が特定の関係を満たす。
【0021】
〔2.1.Tg1、Mp1及びMp2の関係〕
A層において、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1(℃)及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2(℃)は、下記式(1)及び(2)を満たす。
【0022】
|(Mp1-Mp2)|≦100(℃) (1)
{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1>0(℃) (2)
【0023】
式(1)は、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1とヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2との関係を示す関係式である。本実施形態においては、融点Mp1及び融点Mp2の差の絶対値(|(Mp1-Mp2)|)が100℃以下であることにより、フィルムの面内での耐光性のばらつきを抑制することができる。(|(Mp1-Mp2)|)は、通常、100℃以下であり、好ましくは70℃以下である。一方、(|(Mp1-Mp2)|)の下限は、通常、0℃以上でありえ、好ましくは35℃以上、より好ましくは50℃以上である。式(1)においては、Mp1がMp2より大きくてもよく、同等であってもよく、小さくてもよいが、Mp1がMp2よりも大きいことが好ましい。
【0024】
式(2)は、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2と、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)との関係を示す関係式である。式(2)は、添加剤の融点と熱可塑性樹脂のガラス転移温度との関係を示す関係式とも捉えうる。本実施形態においては、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2の平均値と熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1との差({(Mp1+Mp2)/2}-Tg1)が0℃よりも大きいことにより、フィルムの面内での耐光性のばらつきを抑制することができる。[{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1]は、通常、0℃より大きく、好ましくは3℃以上であり、より好ましくは5℃以上である。また、[{(Mp1+Mp2)/2}-Tg1]の上限値は、例えば、65℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは20℃以下である。
【0025】
紫外線吸収剤[1]の融点Mp1は、示差操作熱量計(DSC)を用いることにより測定しうる。この測定は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で行いうる。ヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2は、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0026】
熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1は、JIS K7121に基づき、示差走査熱量分析法により測定しうる。この測定は、室温から200℃まで20℃/minで昇温し、次いで40℃まで20℃/minで冷却した試料について、40℃から200℃まで10℃/minで昇温する条件で行いうる。
【0027】
〔2.2.A層の構成成分〕
A層は、熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]、及びヒンダードアミン系光安定剤[1]を少なくとも含み、前記の各成分をそれぞれ独立して特定の割合で含む。本実施形態に係る光学積層フィルムにおいて、「ある構成層全体に占める、ある構成成分の割合」とは、ある構成層の固形成分の総量に対する、ある構成成分の量の割合を指す。
【0028】
〔2.2.1.熱可塑性樹脂[1]〕
A層に含まれる熱可塑性樹脂[1]は、ガラス転移温度Tg1(℃)を有し、脂環式構造含有重合体を含む。
【0029】
熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)は、前記式(2)を満たすことができれば、具体的な温度については特に限定されない。光学積層フィルムの耐熱性を高める観点からは、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)は、好ましくは120℃以上、特に好ましくは140℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)は、例えば、脂環式構造含有重合体の種類及び量によって、調整しうる。
【0030】
熱可塑性樹脂[1]は脂環式構造含有重合体を含む。
脂環式構造含有重合体とは、繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。脂環式構造含有重合体は、通常、機械的強度、透明性、低吸水性、耐湿性、寸法安定性及び軽量性に優れる。脂環式構造含有重合体は、非晶性でもよいし、結晶性であってもよい。
【0031】
脂環式構造含有重合体の例としては、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物などが挙げられる。また、前記の脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。中でも、脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
【0032】
1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、より好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が前記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0033】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0034】
脂環式構造含有重合体の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びこの水素化物が好ましい。
【0035】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、低透湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
【0036】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0038】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0039】
前述した開環重合体及び付加重合体の水素化物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素化触媒の存在下で、炭素-炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素化することによって製造しうる。
【0040】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは50,000以下である。このような重量平均分子量を有する脂環式構造含有重合体は、機械的強度、成形加工性及び耐熱性のバランスに優れる。
【0041】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.4以下、特に好ましくは3.3以下である。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、脂環式構造含有重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、その脂環式構造含有重合体を含む層の安定性を高めることができる。
【0042】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算の値で測定しうる。樹脂がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いたGPCにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
【0043】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。脂環式構造重合体のガラス転移温度は、前述した熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)と同じ方法で測定しうる。
【0044】
脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂としては、様々な商品が市販されているので、それらのうち、所望の特性を有するものを適宜選択し、使用しうる。かかる市販品の例としては、商品名「ZEONOR」(日本ゼオン株式会社製)、「アートン」(JSR株式会社製)、「アペル」(三井化学株式会社製)、および「TOPAS」(ポリプラスチックス社製)の製品群が挙げられる。
【0045】
熱可塑性樹脂[1]は、脂環式構造含有重合体を1種類単独で含んでいてもよく、2種類以上の任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。また、熱可塑性樹脂[1]は、本発明の効果を損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体を含んでいてもよいが、本発明の効果を顕著に発揮させる観点からは任意の重合体の量は少ないことが好ましい。熱可塑性樹脂[1]100重量部に対する、任意の重合体の割合は、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下であり、0重量部以上でありえ、好ましくは0重量部である。
【0046】
A層全体に占める、熱可塑性樹脂[1]の割合は、通常、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、通常、99.8重量%以下、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。脂環式構造含有重合体を含む樹脂の量が前記範囲にある場合、A層が、脂環式構造含有重合体が有する特性を備えうる。
【0047】
〔2.2.2.紫外線吸収剤[1]〕
A層に含まれる紫外線吸収剤[1]は、前記の式(1)及び(2)を満たす融点Mp1を有する。
【0048】
紫外線吸収剤[1]の融点Mp1(℃)は、前記式(1)および(2)を満たすことができれば、具体的な温度については特に限定されないが、好ましくは180℃以上200℃以下である。
【0049】
紫外線吸収剤[1]としては、例えば、以下の紫外線吸収剤の中から適宜選択して用いうる。
【0050】
紫外線吸収剤としては、有機化合物からなる紫外線吸収剤が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が、特に好ましい。
【0051】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール等が挙げられる。このようなトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製の「アデカスタブLA-31」及びBASF社製の「チヌビン329」などが挙げられる。
【0052】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(へキシル)オキシ]-フェノール、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。このようなトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、BASF社製の「チヌビン1577」などが挙げられる。
【0053】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン2’,4’ージーtertーブチルフェニルー3,5-ジーtertー4-ヒドロキシベンソエート等が挙げられる。このようなベンゾフェノン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、シプロ化成社製の「シーソーブ712」等が挙げられる。
【0054】
A層全体に占める、紫外線吸収剤[1]の割合は、好ましくは、0.1重量%以上であり、より好ましくは、0.5重量%以上であり、特に好ましくは、5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0055】
〔2.2.3.ヒンダードアミン系光安定剤[1]〕
A層に含まれるヒンダードアミン系光安定剤[1]は、前記の式(1)及び(2)を満たす融点Mp2を有する。
【0056】
ヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2(℃)は、前記式(1)および(2)を満たすことができれば、具体的な温度については特に限定されないが、好ましくは、120℃以上180℃以下である。
【0057】
ヒンダードアミン系光安定剤[1]としては、例えば、以下のヒンダードアミン系光安定剤の中から適宜選択して用いうる。
【0058】
ヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、置換基を有していてもよい2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル基を有する化合物が挙げられ、例えば、カルボン酸の、置換基を有していてもよい2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルエステル(例、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、ビス{4-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート)、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-tert-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス{4-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシ)ピペリジル}カーボナート、1,6-ヘキサンジアミン,N,N’-ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ポリマーと2,4,6-トリクロロ-1,3,5,トリアジンとN-ブチル-1-ブタナミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応生成物等が挙げられる。
このようなヒンダードアミン光安定剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA-57」、BASF社製「キマソーブ2020FDL」、BASF社製「チヌビン770」等が挙げられる。
【0059】
A層全体に占める、ヒンダードアミン[1]の割合は、好ましくは、0.1重量%以上であり、より好ましくは、0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0060】
〔2.2.4.任意成分〕
A層は、前記の熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]以外にも、本発明の効果を妨げない限り、任意の成分を含みうる。任意成分の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤が挙げられる。A層は、任意成分を1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。ただし、本発明の効果を顕著に発揮させる観点からは、A層は任意の成分を含まないことが好ましく、よって、A層は、前記の熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]及びヒンダードアミン系光安定剤[1]のみを含むことが好ましい。
【0061】
〔2.3.中間層の厚み〕
中間層の厚みは、本実施形態に係る光学積層フィルムの使用目的に応じて設定しうる。具体的な中間層の厚みは、好ましくは9μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、特に好ましくは60μm以下である。
【0062】
〔3.第一外側層及び第二外側層〕
第一外側層は、中間層の一方の表面側に配置される層である。第一外側層は、中間層と直に接していてもよく、他の層を介して配置されていてもよいが、前者であることが好ましい。また、第二外側層は、中間層の第一外側層側とは反対側の表面側に配置される層である。第二外側層は、中間層と直に接していてもよく、他の層を介して配置されていてもよいが、前者であることが好ましい。ここで、2つの層が「直に接する」とは、それら2層の間に他の層が無いことをいう。
【0063】
本実施形態に係る光学積層フィルムは、第一外側層及び第二外側層を有することにより、中間層からの紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤等の添加剤のブリードアウトを抑制しうる。
【0064】
第一外側層と、第二外側層とは、同一の材料により構成され、同一の厚みを有していてもよく、同一の材料により構成されるが厚みが異なっていてもよく、成分の種類、成分の重量比などが異なる材料により構成されていてもよい。光学積層フィルムの製造を容易にしうるとともに、光学積層フィルムのカールを抑制しうる観点からは、同一の材料により構成され且つ同一の厚みを有することが好ましい。
【0065】
第一外側層及び第二外側層として用いられる樹脂層は、通常、熱可塑性樹脂を含み、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、脂環式構造含有重合体を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、中間層との接着強度を高める観点からは前者であることが好ましく、中間層と同じ熱可塑性樹脂[1]を含むことがより好ましい。また、光学積層フィルムの滑り性を良好にしうる観点からは、第一外側層及び第二外側層は、粒子を含む層であることが好ましい。
【0066】
前述したように、第一外側層と第二外側層とは、同一の材料により構成され且つ同一の厚みを有することが好ましく、また、構成材料として熱可塑性樹脂[1]及び粒子を含むことが好ましいことから、本実施形態においては、第一外側層及び第二外側層が、それぞれ独立して、脂環式構造含有重合体[1]及び粒子を特定の割合で含むB層であることが好ましい。図1に示すように、光学積層フィルム10において、第一外側層111及び第二外側層112がそれぞれ独立してB層である場合、光学積層フィルム10は、その厚み方向において、第一外側層(B)、中間層(A)、及び第二外側層(B)がこの順に配置された積層構造を有する。
【0067】
〔3.1.B層の構成成分〕
B層は、少なくとも熱可塑性樹脂[1]及び粒子含み、前記の各成分を特定の割合で含む。
【0068】
〔3.1.1.熱可塑性樹脂[1]〕
B層は、熱可塑性樹脂[1]を含む。すなわち、B層はA層と同一の熱可塑性樹脂を含む。B層とA層とが同一の熱可塑性樹脂を含むことにより、A層及びB層の親和性を高めて接着強度を高くすることができる。
【0069】
第一外側層及び第二外側層としてB層を採用する場合、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)は、好ましくは120℃以上、特に好ましくは160℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。Tg1が前述の範囲にあることにより、光学積層フィルムの耐熱性を高くすることができるからである。
【0070】
B層全体に占める、熱可塑性樹脂[1]の割合は、B層の固形成分の総量100重量%に対して、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、通常、98.8重量%以下、好ましくは97重量%以下である。
【0071】
〔3.1.2.粒子〕
B層は、粒子を含む。
粒子としては、無機材料からなる無機粒子、有機材料からなる有機粒子、並びに、無機材料と有機材料とを組み合わせて含む複合粒子のいずれを用いてもよい。無機粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0072】
これらの例示した粒子の材料の中でも、シリカが好ましい。シリカの粒子は、透明性に優れ、内部ヘイズを生じ難く、着色が無いため、光学積層フィルムの光学特性に与える影響が小さい。
【0073】
前記のようなシリカ粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品の例を挙げると、日本触媒社製の「エポスターMX-050W」(平均粒子径80nm)、「シーホスターKE-W10」(平均粒子径110nm)、「エポスターMX-100W」(平均粒子径150nm~200nm);日産化学社製の「スノーテックスMP-2040」(平均粒子径150nm~200nm);アドマテックス社製の「アドマファインSO-C1」(平均粒子径0.3μm)、「アドマナノYC100C」(平均粒子径0.1μm);などが挙げられる。
【0074】
B層が含む粒子は、特定の範囲の平均粒子径を有する。粒子の具体的な平均粒子径は、通常、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.10μm以上であり、通常、0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
【0075】
粒子の平均粒子径は、下記の方法によって測定しうる。
レーザー回折法によって粒子の粒子径分布を測定する。測定された粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を、平均粒子径として採用しうる。
【0076】
B層全体に占める、粒子の割合は、通常、1重量%以上、好ましくは3重量%以上であり、通常、10重量%以下、好ましくは7重量%以下である。
【0077】
〔3.1.3.紫外線吸収剤[2]〕
B層は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。B層が紫外線吸収剤を含むことにより、第一外側層及び第二外側層の耐光性を高めうる。以下の説明では、B層に含まれる紫外線吸収剤を、A層に含まれる紫外線吸収剤[1]と区別するため、紫外線吸収剤[2]と表して説明する場合がある。
【0078】
B層は第一外側層及び第二外側層として用いられることから、紫外線吸収剤[2]としては、熱安定性が高いことが好ましい。紫外線吸収剤[2]の熱安定性が低いと、フィルムの製造時に加わる熱により紫外線吸収剤[2]が熱分解を起こし、フィルムの面内に異物が生じる場合がある。また、Tダイ法を用いた場合、ダイに熱分解物が付着することにより、フィルムにダイライン呼ばれるスジ状の欠陥が生じる場合がある。このような理由から、紫外線吸収剤[2]の熱安定性は高いことが好ましい。
【0079】
具体的には、紫外線吸収剤[2]の5%重量減少温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上であり、好ましくは420℃以下、より好ましくは400℃以下である。
【0080】
紫外線吸収剤[2]の5%重量減少温度は、紫外線吸収剤[2]の昇温時の重量変化を測定した際、加熱前の測定試料の重量に対して5%重量が減少したときの温度を指す。紫外線吸収剤[2]の5%重量減少温度は、熱重量計を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃~600℃の範囲で昇温した際の重量変化を観測することにより測定しうる。
【0081】
紫外線吸収剤[2]としては、前述した〔2.2.2.紫外線吸収剤[1]〕の項目で説明した紫外線吸収剤から適宜選択して用いうる。本実施形態においては、紫外線吸収剤[1]と紫外線吸収剤[2]とは同じ紫外線吸収剤であってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
B層全体に占める、紫外線吸収剤[2]の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。紫外線吸収剤[2]の割合を前述の範囲内とすることにより、B層からの紫外線吸収剤[2]のブリードアウトを抑制しうるからである。光学積層フィルムにおける紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する観点からは、A層全体に占める紫外線吸収剤[1]の割合よりも、B層全体に占める紫外線吸収剤[2]の割合は小さいことが好ましい。
【0083】
〔3.1.4.ヒンダードアミン系光安定剤[2]〕
B層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいてもよい。B層がヒンダードアミン系光安定剤を含むことにより、第一外側層及び第二外側層の耐光性を高めうる。以下の説明では、B層に含まれるヒンダードアミン系光安定剤を、A層に含まれるヒンダードアミン系光安定剤[1]と区別するため、ヒンダードアミン系光安定剤[2]と表して説明する場合がある。
【0084】
B層は第一外側層及び第二外側層として用いられることから、ヒンダードアミン系光安定剤[2]としては、熱安定性が高いことが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤[2]の熱安定性が低いと、フィルムの製造時に加わる熱によりヒンダードアミン系光安定剤[2]が熱分解を起こし、フィルムの面内に異物が生じる場合がある。また、Tダイ法を用いた場合、ダイに熱分解物が付着することにより、フィルムにダイラインが生じる場合がある。このような理由から、ヒンダードアミン系光安定剤[2]の熱安定性は高いことが好ましい。
【0085】
具体的には、ヒンダードアミン系光安定剤[2]の5%重量減少温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上であり、好ましくは420℃以下、より好ましくは400℃以下である。ヒンダードアミン系光安定剤[2]の5%重量減少温度は、前述の紫外線吸収剤[2]の5%重量減少温度の測定方法と同様の方法により測定しうる。
【0086】
本実施形態においてB層が、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]を含む場合、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]のそれぞれの5%重量減少温度が250℃以上であることが好ましい。紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]のそれぞれの5%重量減少温度が上位値以上であることにより、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]の熱分解による、光学積層フィルムの面状不良を効果的に抑制できるからである。
【0087】
ヒンダードアミン系光安定剤[2]としては、前述した〔2.2.3.ヒンダードアミン系光安定剤[1]〕の項目で説明したヒンダードアミン系光安定剤から適宜選択して用いうる。本実施形態においては、ヒンダードアミン系光安定剤[1]とヒンダードアミン系光安定剤[2]とは同じヒンダードアミン系光安定剤であってもよく、異なっていてもよい。
【0088】
B層全体に占める、ヒンダードアミン系光安定剤[2]の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。B層からのヒンダードアミン系光安定剤[2]のブリードアウトを抑制しうるからである。光学積層フィルムにおけるヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトを抑制する観点からは、A層全体に占めるヒンダードアミン系光安定剤[1]の割合よりも、B層全体に占めるヒンダードアミン系光安定剤[2]の割合は小さいことが好ましい。
【0089】
〔3.1.4.任意の成分〕
B層は、前述の脂環式構造含有重合体[1]、粒子、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]以外にも、必要に応じて任意成分を適宜選択して追加してもよいが、任意成分を含まないことが好ましく、よって脂環式構造含有重合体[1]、粒子、紫外線吸収剤[2]及びヒンダードアミン系光安定剤[2]のみを含むことが好ましい。任意成分については、前述の〔2.2.4.任意成分〕の項目で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0090】
〔3.2.B層の厚み〕
B層の厚みは、本実施形態に係る光学積層フィルムの使用目的に応じて設定しうる。具体的なB層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8.0μm以下、特に好ましくは6.0μm以下でありうる。本実施形態に係る光学積層フィルムにおいては、特に、光学積層フィルムの総厚みが10μm以上、100μm以下である場合、B層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、10μm以下である。
【0091】
〔4.光学積層フィルムの層構成、厚み及び物性〕
本実施形態に係る光学積層フィルムは、第一外側層、中間層及び第二外側層をこの順に備える。本実施形態に係る光学積層フィルムは、第一外側層と中間層とが直に接していてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。また、光学積層フィルムは、中間層と第二外側層とが直に接していてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。中でも、本実施形態においては、第一外側層と中間層とが直に接しており、かつ、中間層と第二外側層とが直に接していることが好ましい。各層の接着強度を高めるとともに、厚みの薄い光学積層フィルムとすることができるからである。
【0092】
光学積層フィルムの厚みは、任意の厚さに設定できるが、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上80μm以下としうる。本実施形態においては、光学積層フィルムの層構成として、第一外側層、中間層及び第二外側層の全てが、脂環式構造含有重合体を含む層構成を採用できることから、その耐熱性及び耐湿性を高めることができるので、光学積層フィルムの厚みを前記範囲のように薄くしても、積層フィルムの耐熱性及び耐湿性を十分なものとしうる。
【0093】
光学積層フィルムは、枚葉であっても、長尺であってもよい。本実施形態に係る光学積層フィルムは、巻き芯付近でのブロッキングの発生、擦り傷などの不良の発生が低減できるので、好ましくは長尺であって、ロールの形態である。光学積層フィルムが長尺である場合、積層フィルムの長さは、2000mを超えていてもよい。本実施形態に係る光学積層フィルムは、このように長尺のフィルムを巻き回してロールの形態とした場合であっても、前記のとおり巻き芯付近でのブロッキングの発生、擦り傷などの不良の発生を低減できる。
【0094】
「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限に特段の制限は無いが、通常、幅に対して10万倍以下である。
【0095】
光学積層フィルムの幅は、当該光学積層フィルムの使用目的に応じて設定しうる。光学積層フィルムの具体的な幅は、好ましくは500mm以上、より好ましくは700mm以上、特に好ましくは1000mm以上であり、好ましくは5000mm以下、より好ましくは4000mm以下、特に好ましくは3000mm以下である。
【0096】
光学積層フィルムのヘイズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。下限は、理想的には0.0%であるが、通常は0.5%以上である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、濁度計を用いて測定しうる。
【0097】
光学積層フィルムは、高い全光線透過率を有することが好ましい。光学積層フィルムの具体的な全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、特に好ましくは90%以上であり、理想的には100%である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm以上700nm以下の範囲で測定しうる。
【0098】
光学積層フィルムは、紫外線透過率が低いことが好ましい。具体的には、光学積層フィルムの波長390nmにおける光線透過率が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下であり、理想的には0%である。また、光学積層フィルムは、波長280nm~380nmにおける光線透過率が小さいことが好ましい。具体的な光学積層フィルムの波長280nm~380nmにおける光線透過率は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下であり、理想的には0%である。波長390nm及び波長280nm~380nmにおける光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて測定しうる。
【0099】
〔5.光学積層フィルムの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る光学積層フィルムは、溶融押出法によって製造しうる。光学積層フィルムを溶融押出法により製造する方法としては、例えば、光学積層フィルムを構成する各層を溶融押出法によりそれぞれ単層フィルムとして作製した後、必要に応じて接着層を介して貼り合わせてもよく、光学積層フィルムを構成する各層を溶融共押出法により同時に形成する方法であってもよいが、後者がより好ましい。
【0100】
すなわち、本実施形態に係る光学積層フィルムの好ましい製造方法は、前記第一外側層、前記中間層及び前記第二外側層を溶融共押出成形により製造することを含む。前述したように、本実施形態においては、光学積層フィルムとして、熱可塑性樹脂[1]を含むA層及びB層が、B層、A層及びB層の順に積層された3層構造を有することが好ましいことから、以下、前記3層構造を有する光学積層フィルムを製造する方法を例に挙げて説明する。
【0101】
図2は、本発明の一実施形態に係る光学積層フィルム10の製造装置200を模式的に示す側面図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る光学積層フィルム10の製造装置200は、成形機210と、キャストロール220とを備える。また、製造装置200は、必要に応じて、ピニング装置230及びフィルム搬送用の搬送ロール240を備えうる。
【0102】
成形機210は、リップ部211が形成されたダイス212を備える。リップ部211は、溶融された樹脂組成物としての溶融組成物を吐出可能な吐出口であり、通常は一方向に延在するスリット状に形成される。リップ部211は、当該リップ部211を通して溶融組成物を押し出して、そのリップ部211の形状に応じたフィルム状の溶融組成物としての溶融フィルム20を連続的に形成できるように形成される。
【0103】
キャストロール220は、溶融フィルム20を受けうる周面221を有するロール部材であり、通常は、周面221がダイス212のリップ部211に対向するように設けられる。このキャストロール220は、周面221上のフィルム搬送路に沿って溶融フィルム20を搬送できるように、矢印A220で示すように軸222を中心として周方向に回転可能に設けられる。また、キャストロール220の周面221の温度は、周面221で受けた溶融フィルム20を冷却できるように、適切な温度に調整されている。
【0104】
ピニング装置230は、溶融フィルム20の一部をキャストロール220の周面221に接触させるピニング処理を行うための装置であり、例えば、溶融フィルムに電荷を付与する静電ピニング装置、溶融フィルムにエアを吹き付けるエアピニング装置、溶融フィルムを押圧具で周面221に押し付けるタッチピニング装置、などが挙げられる。これらのピニング装置230によれば、溶融フィルム20をキャストロール220の周面221に適切な密着力で密着させて、当該溶融フィルム20のピニング処理が施された部分を周面221に固定することができる。また、空気が巻き込まれるので、一般に、ピニング処理を施されていない部分では、溶融フィルム20とキャストロール220の周面221との間には巻き込まれた空気の層が形成される。
【0105】
前述した製造装置200を用いる光学積層フィルム10の製造方法は、通常、樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを混練法により得る第一工程と、溶融状態の樹脂組成物としての溶融組成物を、ダイス212のリップ部211を通して押出して、溶融フィルム20を得る第二工程と、溶融フィルム20をキャストロール220の周面221で受ける第三工程と、を含む。
【0106】
第一工程では、樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを混練法により得る。樹脂組成物Aは、熱可塑性樹脂[1]、紫外線吸収剤[1]、及びヒンダードアミン系光安定剤[1]と、必要に応じて任意成分とを、例えば、複数のスクリューを備える押出機に供給して混練することにより、製造できる。押出機としては、二軸押出機を用いうる。混練温度としては、例えば、熱可塑性樹脂[1]のガラス転移温度Tg1(℃)を基準とした場合、通常Tg1以上であり、好ましくはTg1+5℃以上、より好ましくはTg1+10℃以上であり、好ましくはTg1+250℃以下、より好ましくはTg1+200℃以下、より好ましくはTg1+150℃以下である。また、混練温度としては、例えば、紫外線吸収剤[1]の融点Mp1、及びヒンダードアミン系光安定剤[1]の融点Mp2のうち高い温度Mp3を基準とすると、好ましくはMp3-120℃以上、より好ましくはMp3-100℃以上、さらに好ましくはMp3-50℃以上であり、好ましくはMp3+250℃以下、好ましくはMp3+200℃以下、特に好ましくはMp3+150℃以下である。混練温度を前述した範囲とすることにより、樹脂組成物Aに含まれる各成分を良好に混合することができる。
【0107】
樹脂組成物Bは、熱可塑性樹脂[1]及び粒子と、必要に応じて紫外線吸収剤[2]、ヒンダードアミン系光安定剤[2]及び任意成分とを、前記の押出機に供給して混練することにより製造できる。混練温度の好ましい範囲について、Tg1を基準とした範囲については、前述の樹脂組成物Aの混練温度の範囲と同様である。一方、混練温度として、紫外線吸収剤[2]、及びヒンダードアミン系光安定剤[2]のうち高い温度Mp4を基準とした範囲については、前述の樹脂組成物Aの混練温度のうちMp3を基準とした範囲と同様である。
【0108】
混練温度は、例えば、押出機の温度により調整しうる。
【0109】
第二工程では、光学積層フィルム10に含まれる樹脂組成物の共押出を行う。すなわち、第二工程では、光学積層フィルム10に含まれる樹脂組成物を含む溶融組成物を、成形機210のダイス212のリップ部211を通してフィルム状に押し出して、溶融フィルム20が形成される。溶融組成物は、B層用の樹脂組成物B、A層用の樹脂組成物A及びB層用の樹脂組成物Bを含む溶融組成物を押し出して、樹脂組成物Bの層、樹脂組成物Aの層及び樹脂組成物Bの層をこの順で含む溶融フィルム20を形成しうる。
【0110】
前記の第二工程において、樹脂組成物B、樹脂組成物A、及び樹脂組成物Bは、ダイス212内を溶融状態で流通し、通常はリップ部211を通過する以前に光学積層フィルム10と同じく層を形成して、その層を維持したままリップ部211を通して押し出される。よって、ダイス212内で樹脂組成物を溶融状態に維持するために、ダイス212の温度Tは、通常、樹脂のガラス転移温度よりも高く設定される。ダイス212の具体的な温度Tは、好ましくはTg1+100℃以上、より好ましくはTg1+110℃以上、特に好ましくはTg1+120℃以上であり、好ましくはTg1+200℃以下、より好ましくはTg1+180℃以下、特に好ましくはTg1+160℃以下である。前記のダイス212の温度Tは、通常、ダイス212のリップ部211の温度を表す。リップ部211の温度がフィルム幅方向(リップ部211の長さ方向)で一定でない場合、リップ部211の幅方向の温度の平均が前記範囲に収まることが望ましい。
【0111】
リップ部211から押し出される樹脂組成物の温度は、フィルム幅方向において均一であることが好ましい。よって、溶融フィルム20の温度は、幅方向において不均一であってもよいが、そのバラツキの程度は小さいことが好ましい。具体的には、幅方向に測定される溶融フィルム20の温度Tの最小値TRminと最大値TRmaxとの差TRmax-TRminは、好ましくは20℃以下、より好ましくは18℃以下、特に好ましくは15℃以下である。
【0112】
前記の温度の差TRmax-TRminは、例えば、ダイス温度TのPID制御の適正化、及び、ダイス212からの放熱の抑制により、小さくできる。
【0113】
リップ幅(溶融フィルムの厚みに対応する寸法)、リップ長さ(溶融フィルムの幅に対応する寸法)等のリップ部の寸法は、製造したい光学積層フィルムの寸法に応じて設定されることが好ましい。また、リップ部の算術平均粗さRaは、好ましくは0μm~1.0μm、より好ましくは0μm~0.7μm、特に好ましくは0μm~0.5μmである。ここで、算術平均粗さRaは、JIS B 0601-2001の準じて、カットオフ0.8mmで測定しうる。ダイス212は、通常、前記のように樹脂を押し出すための圧力を加えられるようにするため、図示しない押出機に接続して設けられる。
【0114】
第三工程では、前記のように形成された溶融フィルム20を、キャストロール220の周面221で受ける。ここで示す例では、溶融フィルム20の幅方向の両端部にピニング装置230によるピニング処理が施されるので、溶融フィルム20のその両端部はキャストロール220の周面221に接触させられる。そして、回転するキャストロール220に引っ張られて、溶融フィルム20は、キャストロール220の周面221に沿って搬送される。そして、このように周面221に沿って搬送されるときに、溶融フィルム20が冷却される。詳細には、溶融フィルム20の熱は、一部は周囲の空気中にも放熱されうるが、大部分はキャストロール220へ伝達され、それによって溶融フィルム20の冷却が進行する。この冷却によって溶融フィルム20が硬化し、長尺の光学積層フィルム10が連続的に得られる。
【0115】
周面221の温度は、所望の光学積層フィルム10が得られる範囲で任意であり、好ましくはTg1-50℃以上、より好ましくはTg1-40℃以上、特に好ましくはTg1-30℃以上であり、また、Tg1℃以下、好ましくはTg1-5℃以下、より好ましくはTg1-10℃以下である。
【0116】
こうして得られた光学積層フィルム10は、必要に応じて搬送ロール240に案内されてキャストロール220から離れ、下流へと送出される。送出された光学積層フィルム10は、通常、図示しない回収装置によって回収される。
【0117】
前述した光学積層フィルム10の製造方法は、更に任意の工程を含みうる。前述した製造方法は、例えば、キャストロール220で溶融フィルム20を冷却して得られた光学積層フィルム10を、冷却ロール(図示せず。)によって更に冷却する冷却工程を含んでいてもよい。また、上述した製造方法は、例えば、光学積層フィルム10から、ピニング処理によってキャストロール220に接触した部分(前記の例では、幅方向の端部)を除去するトリミング工程を含んでいてもよい。
【0118】
前述した製造方法においては、光学積層フィルムとして、B層、A層及びB層がこの順に積層された3層構造の積層フィルムの製造方法の例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、第一外側層及び第二外側層の少なくとも一方として、熱可塑性樹脂[1]以外の熱可塑性樹脂を含む層を採用する場合、その層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度、及び任意成分の種類をさらに考慮して、混練温度、ダイスの温度及び周面の温度を調整しうる。
【実施例0119】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0120】
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0121】
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
【0122】
(ガラス転移温度Tg)
重合体のガラス転移温度Tgの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tgを測定した。
【0123】
(厚みの測定)
フィルムの厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No. 543-390)を用いて測定した。複数の層からなるフィルム中の各層の厚みは、フィルムの断面を顕微鏡観察し厚みの比率を求め、当該比率及びフィルム全体の厚みから計算した。
【0124】
(耐光性のばらつき)
光学積層フィルム(幅500mm及び巻取長1000mm)を幅方向に100mm間隔、長さ方向に100mm間隔で50mm×50mmの試験片を25枚切り出した。各試験片に対し、スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機SX75)で100w/mで500時間の耐光試験を実施した。耐光試験後の各試験片の中央部のbを測定し、25枚の試験片の中でのbの最大値及び最小値の差が0.5以下をA、bの最大値及び最小値の差が0.5より大きく1.0以下をB、bの最大値及び最小値の差が1.0より大きいものをCとした。
【0125】
(耐熱性)
光学積層フィルムを両端及び中央部で50mm×50mmに切り出した3枚の試験片を、110℃のオーブンに1時間いれて加熱した。加熱前後の試験片の寸法変化率を万能投影機(ニコンソリューションズ製 V-12B)で測定した。寸法変化率の絶対値の平均値が0.1%以下をA、0.1%より大きく0.5%以下をB、0.5%より大きいものをCとした。寸法変化率は、加熱前の試験片の一辺の長さに対する、加熱後の試験片の一辺の長さの差の割合として求められる値である。
【0126】
(フィルム外観)
光学積層フィルムを1000mmの長さに切り出して、目視と顕微鏡でフィルム外観を観察した。幅500μm以上となるダイライン(スジ状欠陥)を「1本」としてダイラインの本数ndを評価し、フィルムの変形部分のうち長い方の径が500μm以上となる変形箇所を「1個」として変形箇所の個数ntを評価した。表1に示すように、前記ダイラインが3本以下、及び前記変形箇所が1個以下の少なくとも一方に該当する場合をAとし、前記ダイラインが3本より多く10本以下、及び、前記変形箇所が1個より多く5個以下の少なくとも一方に該当する場合をBとし、前記ダイラインが10本を超える場合、及び前記変形箇所が5個を超える場合の少なくとも一方に該当する場合をCとした。
【0127】
【表1】
【0128】
[製造例1:脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂1の製造]
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(ジシクロペンタジエン;以下、適宜「DCP」と略記することがある。)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ-3-エン(メタノテトラヒドロフルオレン;以下、適宜「MTF」と略記することがある。)、及び、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(テトラシクロドデセン;以下、適宜「TCD」と略記することがある。)を重量比5/70/25で混合した。この混合物を、公知の方法により、開環重合し、次いで水素化して、DCP/MTF/TCD開環重合体水素化物としての熱可塑性樹脂1を得た。
得られたこの熱可塑性樹脂1中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の溶液中に残留するノルボルネン系単量体の組成からガスクロマトグラフィー法による分析で計算したところ、DCP/MTF/TCD=5/70/25で、ほぼ仕込み組成に等しかった。
また、この熱可塑性樹脂1の重量平均分子量(Mw)は34,000、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)は2.1、水素化率は99.9%、ガラス転移温度Tgは160℃であった。
【0129】
[製造例2:脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂2の製造]
DCP及びMTFを重量比87/13で混合した。この混合物を、公知の方法により、開環重合し、次いで水素化して、DCP/MTF開環重合体水素化物としての熱可塑性樹脂2を得た。
得られた熱可塑性樹脂2中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の溶液中に残留するノルボルネン系単量体の組成からガスクロマトグラフィー法による分析で計算したところ、DCP/MTF=87/13で、ほぼ仕込み組成に等しかった。
また、この熱可塑性樹脂2の重量平均分子量(Mw)は38,000、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)は2.2、水素化率は99.9%、ガラス転移温度Tgは125℃であった。
【0130】
[製造例3:脂環式構造含有重合体を含む熱可塑性樹脂3の製造]
DCP及びMTFを重量比83/17で混合した。この混合物を、公知の方法により、開環重合し、次いで水素化して、DCP/MTF開環重合体水素化物としての熱可塑性樹脂3を得た。
得られた熱可塑性樹脂3中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の溶液中に残留するノルボルネン系単量体の組成からガスクロマトグラフィー法による分析で計算したところ、DCP/MTF=83/17で、ほぼ仕込み組成に等しかった。また、この熱可塑性樹脂3の重量平均分子量(Mw)は32,000、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)は2.2、水素化率は99.9%、ガラス転移温度Tgは105℃であった。
【0131】
[実施例1]
(A層用の熱可塑性樹脂組成物A)
製造例1により得られた熱可塑性樹脂1を94.5部、紫外線吸収剤a(ADEKA社製の「アデカスタブLA-31」、融点196℃)を5部、及びヒンダードアミン系光安定剤a(ADEKA社製の「アデカスタブLA-57」、融点130℃)を0.5部の比率で、二軸押出機により混合することにより、A層用の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0132】
(B層用の熱可塑性組成物B)
製造例1により得られた熱可塑性樹脂1を96.4部、粒子(アドマテックス社製の「アドマファインSO-C1」)を3部、紫外線吸収剤aを0.3部、及びヒンダードアミン系光安定剤aを0.3部の比率で、二軸押出機により混合することにより、B層用の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0133】
溶融組成物を吐出可能なリップ部を形成された単層ダイスを備えた共押出フィルム成形機と、ダイスのリップ部から押し出された溶融組成物で形成される溶融フィルムを受けうる周面を有するキャストロールと、キャストロールの下流に設けられた冷却ロールと、冷却ロールの下流に設けられた巻回機と、を備えるフィルム製造装置を用意した。
共押出フィルム成形機が備える単層ダイスには、当該単層ダイスを所望の温度に調整可能なヒーターが設けられていた。また、共押出フィルム成形機は、単層ダイスに連結されたフィードブロックを備え、このフィードブロックに供給される2種類の樹脂を、単層ダイスのリップ部を通して3層に共押出できるように設けられていた。リップ長さ(溶融フィルムの幅に対応する寸法)が750mmであった。
キャストロールは、当該キャストロールの周面が単層ダイスのリップ部に対向するように設けられていた。また、キャストロールは、所望の設定速度で周方向に回転可能に設けられていた。さらに、キャストロールの周面の近傍には、その周面が溶融フィルムを受ける位置のすぐ下流の地点で当該周面に溶融フィルムの端部を密着させうる静電ピニング装置が設けられていた。
【0134】
(フィルムの製造)
共押出フィルム成形機のフィードブロックに、第1外側層(B層)、中間層(A層)、及び第2外側層(B層)をこの順で備える溶融フィルムが得られるように、前述した熱可塑性樹脂組成物A及び熱可塑性組成物Bを供給した。供給された熱可塑性樹脂組成物A及び熱可塑性組成物Bは、溶融され、280℃に設定された単層ダイスに送られた。そして、溶融した熱可塑性樹脂組成物A及び熱可塑性組成物Bは、単層ダイス内で合流して層状となり、この層状の熱可塑性樹脂組成物A及び熱可塑性組成物B含む溶融組成物がリップ部を通ってフィルム状に押し出された。リップ部から押し出された溶融組成物により、第1外側層としての熱可塑性組成物Bの層、中間層としての熱可塑性樹脂組成物Aの層、及び、第2外側層としての熱可塑性組成物Bの層の層をこの順で備える溶融フィルムが得られた。
リップ部から吐出された溶融フィルムは、周面温度が155℃、周速度が5m/minのキャストロールの周面で受けられた。その直後、静電ピニング装置によって、溶融フィルムの幅方向両端部の第1外側層側の面が、キャストロールの周面に接触させられた。その後、この溶融フィルムが、キャストロールの回転に従って下流へと搬送されながら冷却されて、第1外側層に相当するB層、中間層に相当するA層、及び、第2外側層に相当するB層をこの順で備える積層フィルムが得られた。得られたフィルムの幅は500mmで巻取り長は1000mであった。フィルムの構成層(第一外側層/中間層/第二外側層)の各厚みは、2μm/36μm/2μmであった。
【0135】
[実施例2~6及び比較例1~4]
熱可塑性樹脂組成物A及び熱可塑性樹脂組成物Bの組成を表2~4に表される組成で製造したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
【0136】
表2~4における略語は、以下の意味を表す。また、表2に、表4及び5における紫外線吸収剤a~d、ヒンダードアミン系光安定剤a~c、及び粒子の詳細を示す。また、実施例1~6及び比較例1~4における混練温度、ダイス温度及び周面温度を表3に示す。
UVA:紫外線吸収剤
HALS:ヒンダードアミン系光安定剤
Tg1:脂環式構造含有重合体のガラス転移温度
Mp1:紫外線吸収剤の融点
Mp2:ヒンダードアミン系光安定剤の融点
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
[結果]
表4及び5に示すように、熱可塑性樹脂のTg1、紫外線吸収剤の融点Mp1、及びヒンダードアミン系光安定剤Mp2が、式(1)及び式(2)を満たす実施例1~6においては、積層フィルムの耐光性のばらつきを少ないものとすることができたのに対し、式(1)及び(2)を満たさない比較例1、式(1)を満たさない比較例3、並びに式(2)を満たさない比較例2及び4ではいずれも積層フィルムの耐光性のばらつきが生じていることが確認された。
【符号の説明】
【0142】
10 光学積層フィルム
20 溶融フィルム
111 第一外側層
120 中間層
112 第二外側層
200 製造装置
210 成形機
211 リップ部
212 ダイス
220 キャストロール
221 周面
222 軸
230 ピニング装置
240 搬送ロール
図1
図2