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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048663
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ロータリパンチユニット
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/08 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B26F1/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158103
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】305022598
【氏名又は名称】株式会社プロテリアルプレシジョン
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀一
【テーマコード(参考)】
3C060
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060AA03
3C060AA04
3C060AA06
3C060AA16
3C060BA01
3C060BB12
3C060BD03
3C060BG08
3C060BG11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】噛み合いの始点と終点の折れ込みの発生を抑制し、紙、樹脂、不織布、金属箔またはゴムから成る被穿孔材に容易に穿孔できるロータリパンチユニットの提供。
【解決手段】ダイス10を備えて一方向に回転する第1軸と、パンチ20を備えて第1軸の軸方向に平行かつ第1軸とは逆方向に回転する第2軸とを有し、ダイスおよびパンチの切刃10aが同期回転しながら噛み合うことにより、ダイスおよびパンチの切刃の間に供給された被穿孔材に穿孔し、ダイスの切刃の内径をDdとし、パンチの切刃の外径をDpとするとき、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、ダイスおよびパンチの切刃が噛み合いの始点で圧接し、ダイスの切刃の回転半径をRdとし、パンチの切刃の回転半径をRpとするとき、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、ダイスおよびパンチの切刃が噛み合いの終点で圧接するように、ロータリパンチユニットを構成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスを備えて一方向に回転する第1軸と、パンチを備えて前記第1軸の軸方向に対して平行かつ前記第1軸とは逆方向に回転する第2軸と、を有し、前記ダイスと前記パンチとが同期回転しながら噛み合いを行うことにより、前記ダイスと前記パンチとの間に供給された被穿孔材に穿孔するロータリパンチユニットであって、
前記ダイスの切刃の内径をDdとし、前記パンチの切刃の外径をDpとするとき、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接するように構成され、
前記ダイスの切刃の回転半径をRdとし、前記パンチの切刃の回転半径をRpとするとき、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチとの切刃とが前記噛み合いの終点において圧接するように構成される、ロータリパンチユニット。
【請求項2】
0.10mm≦(Rd-Rp)≦0.40mmの関係を満たすように構成される、請求項1に記載のロータリパンチユニット。
【請求項3】
前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接する状態にしたときに、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と前記ダイスの回転中心とを結んだ線分と、前記ダイスの回転中心と前記パンチの回転中心とを結んだ線分とがなす角をαとするとき、0°<α≦15°の関係を満たすように構成される、請求項1または2に記載のロータリパンチユニット。
【請求項4】
前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの終点とが、前記ダイスの回転中心に対してなす角をθ(ラジアン)とするとき、0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすように構成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロータリパンチユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリパンチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙または樹脂から成るシート材(被穿孔材)に綴じ孔を穿孔するために、ロータリパンチユニットが使用される。このようなロータリパンチユニットは、ダイスを備えて一方向に回転する第1軸と、パンチを備えて第1軸に対して平行かつ第1軸とは逆方向に回転する第2軸と、を有し、ダイスとパンチが同期回転しながら噛み合うことにより、ダイスとパンチとの間に次々と供給される被穿孔材に、次々と穿孔することができる。
【0003】
このようなロータリパンチユニットは、たとえば、特許文献1(特許第4390405号公報)に開示される。特許文献1が開示するロータリパンチユニットでは、ダイスの切刃(孔)とパンチの切刃との径差が「0mm~パンチの切刃の外径×0.005mm(0mmを含まず)」に設定される。さらに、ダイスの切刃とパンチの切刃との噛み合いの始点におけるダイスの切刃とパンチの切刃とのクリアランスが「0mm~パンチの切刃の外径×(-0.005mm)(0mmを含まず)」に設定される。この構成により、紙または樹脂から成るシート材(被穿孔材)に発生しやすい、噛み合いの始点における不具合、すなわち、パンチの切刃がダイスの孔の中に被穿孔材を折り込みながら突き破る異常な穿孔(以下、「折れ込み」という。)が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4390405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するロータリパンチユニットは、紙または樹脂から成る被穿孔材に穿孔することができる。ところが、このロータリパンチユニットでは、不織布から成る被穿孔材、銅やアルミニウムなどの金属箔から成る被穿孔材、あるいは、ゴムからなる被穿孔材に穿孔しようとしたときに、噛み合いの終点において、折れ込みが頻発した。そこで、特許文献1の開示内容を参酌し、噛み合いの終点側においても噛み合いの始点側と同様に、ダイスの切刃とパンチの切刃とのクリアランスの調整を試みようとした。しかし、噛み合いの始点におけるクリアランスを適切に維持しながら、噛み合いの終点におけるクリアランスを適切に確保することができる構成を見出すことができず、噛み合いの終点における被穿孔材の折れ込みの発生を抑制することができなかった。
【0006】
この発明の目的は、噛み合いの始点および終点における折れ込みの発生を抑制し、紙または樹脂から成る被穿孔材に限らず、不織布、金属箔またはゴムから成る被穿孔材に対しても穿孔することができる、ロータリパンチユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、噛み合いの始点および終点において折れ込みが発生しやすい噛み合い状態を精査し、噛み合いの始点および終点の両方で、より適切な噛み合い状態を確保することができる構成を見出し、この発明に想到することができた。
【0008】
この発明に係るロータリパンチユニットは、ダイスを備えて一方向に回転する第1軸と、パンチを備えて前記第1軸の軸方向に対して平行かつ前記第1軸とは逆方向に回転する第2軸と、を有し、前記ダイスと前記パンチとが同期回転しながら噛み合いを行うことにより、前記ダイスと前記パンチとの間に供給された被穿孔材に穿孔するロータリパンチユニットであって、前記ダイスの切刃の内径をDdとし、前記パンチの切刃の外径をDpとするとき、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接するように構成され、前記ダイスの切刃の回転半径をRdとし、前記パンチの切刃の回転半径をRpとするとき、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチとの切刃とが前記噛み合いの終点において圧接するように構成される。
【0009】
この発明に係るロータリパンチユニットにおいて、0.10mm≦(Rd-Rp)≦0.40mmの関係を満たすように構成することが好ましい。
【0010】
この発明に係るロータリパンチユニットにおいて、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接する状態にしたときに、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と前記ダイスの回転中心とを結んだ線分と、前記ダイスの回転中心と前記パンチの回転中心とを結んだ線分とがなす角をαとするとき、0°<α≦15°の関係を満たすように構成することが好ましい。
【0011】
この発明に係るロータリパンチユニットは、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの終点とが、前記ダイスの回転中心に対してなす角をθ(ラジアン)とするとき、0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、噛み合いの始点および終点における折れ込みの発生が抑制され、紙または樹脂から成る被穿孔材に限らず、不織布、金属箔またはゴムから成る被穿孔材に対しても穿孔することができる、ロータリパンチユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係るロータリパンチユニットの実施形態の一例を模式的に示す図(正面図)である。
図2】この発明に係るロータリパンチユニットの実施形態の一例を模式的に示す図(部分断面を含む側面図)である。
図3】ダイスおよびパンチと被穿孔材との位置関係などについて説明するために示す図である。
図4】ダイスとパンチの噛み合いなどについて説明するために示す図である。
図5】ダイスとパンチの噛み合いの始点について説明するために示す図である。
図6図5に示すダイスとパンチの噛み合いの始点P1の近傍を拡大して示す図である。
図7】ダイスとパンチの噛み合いの終点について説明するために示す図である。
図8図7に示すダイスとパンチの噛み合いの終点P2の近傍を拡大して示す図である。
図9】噛み合いの終点P2の構成に関し、図8に示す構成との違いを説明するために示す参考図である。なお、図8に示す構成との対比を簡明にするため、各部の呼称および各部に付す符号を図8と共有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係るロータリパンチユニットについて、その実施形態の一例の構成を図1から図8に示し、適宜図面を参照して説明する。なお、この発明に係るロータリパンチユニットの構成は、ここに例示する実施形態の構成に限定するものではない。この発明に係るロータリパンチユニットの構成は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解することが相当である。なお、ロータリパンチユニットを構成する各部の呼称および各部に付す符号は、特段の断りがない限り、明細書および図面の記載において共用する。
【0015】
図1から図8に示すロータリパンチユニット1(以下、パンチユニット1という。)は、後述するように、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすように構成されるので、紙または樹脂に限らず、不織布、金属箔またはゴムから成る被穿孔材Sに対して、穿孔することができる。パンチユニット1は、たとえば、普通紙や印画紙などの厚さが0.01mm以上2mm以下の紙類、X線撮像用フィルムなどの厚さが0.02mm以上2mm以下の軟質樹脂類、不織布、布地およびフェルトなどの厚さが0.01mm以上2mm以下の布地類、導電性シートなどの厚さが0.02mm以上2mm以下の軟質ゴム類など、比較的軟質な材料から成る被穿孔材Sに穿孔することが可能である。また、パンチユニット1は、たとえば、銅箔やアルミニウム箔などの厚さが0.01mm以上1mm以下の比較的軟質な金属箔類、導電性基板および半導体基板などの厚さが0.01mm以上1mm以下の硬質樹脂類など、比較的硬質の材料から成る被穿孔材Sに穿孔することが可能である。
【0016】
パンチユニット1は、図1および図2に示すように、被穿孔材Sの下側(Z1側)に配置されるダイス10と、被穿孔材Sの上側(Z2側)に配置されるパンチ20と、を有する。また、ダイス10を備えて一方向(Q1方向)に回転する第1軸11と、パンチ20を備えて第1軸11の軸方向(X方向)に対して平行かつ第1軸11とは逆方向(Q2方向)に回転する第2軸21と、を有する。
【0017】
パンチユニット1において、第1軸11および第2軸21は、フレーム14によって回転自在に支持され、互いにX方向に沿って平行に、軸間距離Ldp(図3を参照)を保って、構成される。第1軸11の一端側(X2側)には、ギヤ12およびシザースギヤ13を備える。第2軸21の一端側(X2側)には、ギヤ22を備える。ギヤ12およびシザースギヤ13と、ギヤ22とは、バックラッシが可能な限りなくなるように、連結される。第1軸11の他端側(X1側)には、駆動源(図示略)が連結される。駆動源は、第2軸21の他端側(X1側)に連結することもできる。
【0018】
被穿孔材Sは、図2に示すように、パンチユニット1に対してY方向に供給され、Y2側からY1側に向かって移動する。図3に示すように、ダイス10を備える第1軸11は、穿孔動作中、パンチ20を備える第2軸21と同期しながら、一方向(Q1方向)に回転している。一方、パンチ20を備える第2軸21は、穿孔動作中、ダイス10を備える第1軸11と同期しながら、第1軸11とは逆方向(Q2方向)に回転している。したがって、ダイス10を備える第1軸11と、パンチ20を備える第2軸21とは、穿孔動作中、互いに逆方向に同期回転している。
【0019】
ダイス10とパンチ20とが互いに逆方向に同期回転する間、図4から図8に示すように、特定のタイミングで、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いを行うことにより、ダイス10とパンチ20との間に供給された被穿孔材Sに対して、穿孔することができる。この発明で取り扱う「噛み合い」とは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとがオーバーラップ(図4に示すLzを参照)し、ダイス10の孔(切刃10a)の中にパンチ20の凸部(切刃20a)が侵入して離脱する間の動作、または、侵入して離脱する間の状態、を意図する。
【0020】
ダイス10は、第1軸11の軸方向(X方向)に対して直交方向に延在する孔、または、その孔を備える部品である。ダイス10の孔は、その孔の延在方向が、第1軸11の軸方向(X方向)に対して直交するように配置されている。ダイス10の孔は、少なくともその開口側において、その孔の延在方向に対する直交断面が円形状に形成されている。たとえば、同期回転中のダイス10とパンチ20とが図4に示す位置にある場合、第1軸11の軸方向(X方向)に対する直交方向はZ方向に対応し、ダイス10の孔の延在方向はZ方向に対応し、ダイス10の孔の開口側はZ2側に対応し、ダイス10の孔の延在方向に対する直交断面はX-Y断面に対応する。
【0021】
ダイス10の孔の開口周りの最外面は、ダイス10の切刃10aが第1軸11の軸心Odを中心として回転半径Rdで回転したときのダイス10の切刃10aの最外の回転軌跡円上に位置する円周面の一部(以下、円周面15という。)である。この回転半径Rdをダイス10(孔)の回転半径とする。なお、各図に示す円周面15は、簡明のため、略直線で作画している。ダイス10の切刃10aの円周面15は、たとえば、軸心Odを中心とする円筒研削、円筒研磨などにより機械的に高精度に形成することができる。ダイス10の円周面15の孔の角部の縁10b(図6および図8を参照)は、略90度のバリのない鋭利な角形に形成されている。ダイス10の円周面15の孔の鋭利な縁10bは、被穿孔材Sに切り込んだパンチ20の切刃20aが噛み合いを行う切刃10aとなる。ダイス10の切刃10aは、穿孔動作中、特定のタイミングで、パンチ20の切刃20aと噛み合いを行うことができるように構成されている。
【0022】
パンチ20は、第2軸21の軸方向(X方向)に対して直交方向に延在する丸棒状の凸部、または、その丸棒状の凸部を備える部品である。パンチ20の凸部は、その凸部の突出方向が、第2軸21の軸方向(X方向)に対して直交するように配置されている。パンチ20の凸部は、少なくともその先端側において、その凸部の突出方向に対する直交断面が円形状に形成されている。たとえば、同期回転中のダイス10とパンチ20とが図4に示す位置にある場合、第2軸21の軸方向(X方向)に対する直交方向はZ方向に対応し、パンチ20の凸部の突出方向はZ方向に対応し、パンチ20の凸部の先端側はZ1側に対応し、パンチ20の凸部の突出方向に対する直交断面はX-Y断面に対応する。
【0023】
パンチ20の丸棒状の凸部の最先端面は、パンチ20の切刃20aが第2軸21の軸心Opを中心として回転半径Rpで回転したときのパンチ20の切刃20aの最外の回転軌跡円上に位置する円周面の一部(以下、円周面25という。)である。この回転半径Rpをパンチ20(凸部)の回転半径とする。なお、各図に示す円周面25は、簡明のため、略直線で作画している場合がある。パンチ20の切刃20aの円周面25は、たとえば、軸心Opを中心とする円筒研削、円筒研磨などにより機械的に高精度に形成することができる。パンチ20の凸部の円周面25の角部の縁20bは、略90度のバリのない鋭利な角形に形成されている。パンチ20の凸部の円周面25の鋭利な縁20bは、被穿孔材Sに切り込む切刃20aとなる。パンチ20の切刃20aは、穿孔動作中、特定のタイミングで、ダイス10の切刃10aと噛み合いを行うことができるように構成されている。
【0024】
穿孔動作中、噛み合いの始点側(Y1側)から噛み合いの終点側(Y2側)に移行する途中のダイス10の切刃10aおよびパンチ20の切刃20aは、図4に示すような位置関係になる。この場合、図4に示すように、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの間には、隙間C1、C2が画成される。この隙間C1、C2が画成されるは、ダイス10の切刃10a(孔)の内径をDdとし、パンチ20の切刃20a(凸部)の外径をDpとするとき、Dd-Dp≧0mmの関係を満たすように構成されるためである。この隙間C1、C2は、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いを円滑にするために必要である。
【0025】
パンチユニット1は、穿孔動作中、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの径差に起因して、隙間C1、C2が画成される可能性を十分に考慮し、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが適切な噛み合い状態になるように構成することが重要である。そのためには、特に、噛み合いの始点および終点における、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの位置関係を適切に構成することが重要である。
【0026】
具体的には、ダイス10の切刃10aの内径をDdとし、パンチ20の切刃20aの外径をDpとするとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように構成する。
【0027】
加えて、ダイス10の切刃10aの回転半径をRdとし、パンチ20の切刃20aの回転半径をRpとするとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、噛み合いの終点P2において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように構成する。
【0028】
このとき、好ましくは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0.10mm≦(Rd-Rp)≦0.40mmの関係を満たすように構成する。
【0029】
また、好ましくは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において圧接する状態になるときに、ダイス10の切刃10aの噛み合いの始点P1とダイス10の回転中心になる第1軸11の軸心Odとを結んだ線分と、この軸心Odとパンチ20の回転中心になる第2軸21の軸心Opとを結んだ線分とがなす角をαとするとき、0°<α≦15°の関係を満たすように構成する。
【0030】
また、好ましくは、ダイス10の切刃10a噛み合いの始点P1と、ダイス10の切刃10aの噛み合いの終点P2とが、ダイス10の回転中心になる第1軸11の軸心Odに対してなす角をθ(単位:ラジアン)とするとき、0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすように構成する。
【0031】
ここで、噛み合いの始点とは、被穿孔材Sに対する穿孔を開始する前進側(Y1側)であって、穿孔動作中、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの最初の近接点(図5に示すP1を参照)またはその近傍(図6に示すP1を参照)を意図する。また、噛み合いの終点とは、被穿孔材Sに対する穿孔を終了する後進側(Y2側)であって、穿孔動作中、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの最後の近接点(図7に示すP2を参照)またはその近傍(図8に示すP2を参照)を意図する。
【0032】
ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすように構成することにより、噛み合いを行うダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのカジリを抑制することができる。この関係を満たさないパンチユニットは、たとえば、Dd-Dp<0mmの場合、一般的にいう締り嵌めの状態で噛み合いが行われることになり、特に、噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのカジリが発生しやすくなる。そのため、噛み合いに影響を与える各部品の機械加工、組立および調整を極めて高精度に行わなければならず、パンチユニットの生産性および廉価性などの観点で好ましくない場合がある。また、Dd-Dp>0.005mmの場合、噛み合いの始点P1におけるカジリの発生が抑制されやすいが、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの隙間C1がより大きくなる。そのため、噛み合いの始点P1に限らず、噛み合いの始点P1から終点P2に到るまで被穿孔材Sの折れ込みや千切れなどの不具合が生じやすくなり、穿孔の確実性および穿孔形成された孔の品位などの観点で好ましくない場合がある。
【0033】
加えて、噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように構成することにより、噛み合いの始点P1における被穿孔材Sの折れ込みなどの不具合の発生原因になる隙間C1の画成を確実に抑制することができる。これにより、噛み合いの始点P1における被穿孔材Sの折れ込みなどの不具合の発生を容易に抑制することができる。噛み合いの始点P1においてダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように構成するには、パンチユニット1を組み立てる際に、噛み合いの始点P1においてダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように調整すればよい。
【0034】
なお、Dd-Dp=0mmの場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1で圧接しなくても、設計上、隙間C1が画成されない。しかし、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aに限らず、ダイス10とパンチ20との同期回転に係る回転機構系および回転制御系には、加工寸法、機械的剛性、組立精度および制御精度などに、バラツキが生じる。そのため、このようなバラツキの影響を受けて、噛み合いを行うときにダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aの一方または両方が相手から逃げて、隙間C1が画成される可能性がある。そこで、噛み合いの始点P1における隙間C1の画成を確実に抑制するため、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において圧接するように構成する。
【0035】
被穿孔材Sに対する穿孔は、互いに逆方向に同期回転するダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いによる。被穿孔材Sがパンチユニット1に供給されると、ダイス10の円周面15がZ1側から被穿孔材Sを支持する。この状態で、Q1方向に回転するダイス10の切刃10a(孔)がZ1側から被穿孔材Sに近接し、同時に、Q2方向に回転するパンチ20の切刃20aがZ2側から被穿孔材Sに近接する。そして、ダイス10の切刃10aになる孔の縁10bと、パンチ20の切刃20aになる凸部の縁20bとが、噛み合いの始点P1(近傍)に達し、厚さ方向(Z方向)から挟み込んだ被穿孔材Sに接し、図5に示す噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いが始まる。
【0036】
ここで、噛み合いの始点に関し、参考として、特許文献1が開示するロータリパンチユニットの場合について説明する。特許文献1が開示するロータリパンチユニットでは、ダイスの切刃(孔)とパンチの切刃との径差が「0mm~パンチの切刃の外径×0.005mm(0mmを含まず)」に設定されるとともに、噛み合いの始点におけるダイスの切刃とパンチの切刃とのクリアランスが「0mm~パンチの切刃の外径×(-0.005mm)(0mmを含まず)」に設定される。そのため、噛み合いの始点側では、ダイスの切刃とパンチの切刃との重なりが発生する。この重なり量は、0mmよりも大きく、パンチの切刃の外径をDpとしたときに、最大「-0.005mm×Dp」になる。この重なりの発生により、噛み合いの始点における隙間の画成が抑制され、ダイスの切刃とパンチの切刃とが圧接される。
【0037】
この発明に係るパンチユニット1は、噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10a(孔の縁10bがある円周面15)がZ1側から被穿孔材Sを支持し、同時に、パンチ20の切刃20a(凸部の円周面25の縁20b)がZ2側から被穿孔材Sを押圧し、切り込む。そして、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが適度なオーバーラップ(図4に示すLzを参照)を伴うため、パンチ20の切刃20a(凸部の円周面25の縁20b)は被穿孔材Sを貫通し、図6に示すように、ダイス10の切刃20a(円周面15の縁10bがある孔)の中に入り込む。このとき、パンチユニット1は、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすように構成されるとともに、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において圧接するように構成される。これにより、パンチユニット1は、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いの始点P1における位置関係が適切に構成され、パンチ20の切刃20aが、ダイス10の切刃10a(円周面15の孔の縁10b)に対して隙間C1を画成することなく接し、さらに互いに圧接し合う。このように、噛み合いの始点P1において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとを圧接状態にすることにより、隙間C1の画成を確実に抑制することができる。
【0038】
パンチユニット1におけるダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いは、互いに逆方向に同期回転することによって、図5および図6に示す噛み合いの始点P1側(Y1側)から、図7および図8に示す噛み合いの終点P2側(Y2側)に向かって、移行する。噛み合いの始点P1側から噛み合いの終点P2側に向かって移行する間、ダイス10の切刃10aになる孔の縁10bと、パンチ20の切刃20aになる凸部の縁20bとが、オーバーラップ(Lz)を伴う噛み合いにより剪断角を構成し、剪断力によって被穿孔材SをY2側に向かって切り込んで行く。そして、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いは、図7および図8に示す噛み合いの終点P2に到る。
【0039】
ここで、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのオーバーラップ(Lz)について説明する。オーバーラップ(Lz)は、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いを可能にするために必要であり、オーバーラップ(Lz)を伴う構成にする点は、従来と同様である。図4に示すLzは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのオーバーラップ量である。オーバーラップ量Lzは、ダイス10の孔に侵入する向き(Z1側)を正方向とし、被穿孔材Sの材質、厚さおよび硬さ(柔軟性)の他、穿孔径、ダイス10の回転半径Rd、パンチ20の回転半径Rp、第1軸11の軸心Odと第1軸21の軸心Opとの離間長さ(軸間距離Ldp)、および、ダイス10とパンチ20の同期回転速度などを、必要に応じて、考慮して設定する。オーバーラップ量Lzは、Lz>0mmの関係を満たすように設定し、好ましくは、0mm<Lx≦1.0mmの関係を満たすように設定する。なお、Lz>0mmの関係を満たし、オーバーラップを伴うパンチユニット1は、Ddp<Rd+Rpの関係を満たす。
【0040】
たとえば、Lz=0mmの場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのオーバーラップが生じない。そのため、ダイス10の孔(切刃10a)の中にパンチ20の凸部(切刃20a)が侵入しないので、被穿孔材Sに切り込んだパンチ20の切刃20aが十分に貫通せず、被穿孔材Sに貫通孔が形成されにくい。なお、Lz<0mmの場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いが全く生じないので、被穿孔材Sに穿孔することができない。また、Lz>1mmの場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのカジリが発生しやすくなるので、過度なオーバーラップ量Lzは無駄である。ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとのカジリは、ダイス10の切刃10a(孔)の内径Dd、パンチ20の切刃20a(凸部)の外径Dp、ダイス10とパンチ20の同期回転速度、および、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1に侵入する角度(噛み合い角度)などに起因すると考えられる。
【0041】
また、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが適度なオーバーラップ(Lz)を伴うことにより、図6に示す噛み合いの始点P1および図8に示す噛み合いの終点P2のように、ダイス10の切刃10a(孔の円周面15の縁10b)に対して接触して圧接するパンチ20の切刃20aの部位を、凸部の円周面25の側面20cにすることができる。ダイス10の切刃10aに対して、パンチ20の凸部の円周面25の縁20bが接触して圧接する構成は、パンチ20の凸部の円周面25の縁20bが接触して圧接する構成に比べて、十分かつ確実な圧接状態を得ることができる。
【0042】
ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いが、噛み合いの始点P1側(Y1側)から図7および図8に示す噛み合いの終点P2に到るとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの位置関係を適切に構成することが重要である。
【0043】
具体的には、上記したように、ダイス10の切刃10aの回転半径をRdとし、パンチ20の切刃20aの回転半径をRpとするとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、噛み合いの終点P2において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するように構成する。このとき、好ましくは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0.10mm≦(Rd-Rp)≦0.40mmの関係を満たすように構成する。
【0044】
ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、Rd-Rp>0mmの関係を満たすように構成することにより、同期回転して噛み合いを行うダイス10の切刃10aを、パンチ20の切刃20aよりも早く回転移動させることができる。この構成においてダイス10の切刃10aが位置する円周面15は最外の回転軌跡円上に位置し、回転半径がRdのダイス10の切刃10aの最外の回転軌跡円の半径はRdになる。また、ダイス10の切刃10a噛み合いの始点P1と、ダイス10の切刃10aの噛み合いの終点P2とが、ダイス10の回転中心になる第1軸11の軸心Odに対してなす角をθd(単位:ラジアン)とするとき、ダイス10の切刃10aの最外の回転軌跡円上におけるダイス10の切刃10aの回転移動距離は、Rd・θdになる。なお、このθdは、図4に示すθに対応する。一方、パンチ20の切刃20aが位置する円周面25は最外の回転軌跡円上に位置し、回転半径がRpのパンチ20の切刃20aの最外の回転軌跡円の半径はRpになる。また、パンチ20の切刃20a噛み合いの始点P1と、パンチ20の切刃20aの噛み合いの終点P2とが、パンチ20の回転中心になる第2軸21の軸心Opに対してなす角をθp(単位:ラジアン)とするとき、パンチ20の切刃20aの最外の回転軌跡円上におけるパンチ20の切刃20aの回転移動距離は、Rp・θpになる。
【0045】
これにより、Rd-Rp>0mmの関係を満たす場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2まで同期回転して移動する間に、ダイス10の切刃10aをパンチ20の切刃20aよりもRd・θd-Rp・θpだけ長く回転移動させることができる。そして、ダイス10の切刃10aを、噛み合いの終点P2において隙間C2を画成させることなく、パンチ20の切刃20aに対して圧接させることが可能になる。
【0046】
別の観点から、Rd-Rp>0mmの関係を満たすように構成されたダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとは、ダイス10の切刃10aの円周面15(最外の回転軌跡円)上のQ1方向を正方向とする周速をVdとし、パンチ20の切刃20aの円周面25(最外の回転軌跡円)上のQ2方向を正方向とする周速をVpとするとき、Vd>Vp(>0)の関係を満たす。これにより、Q1方向に回転して噛み合いを行うダイス10の切刃10aの円周面15の周速Vdが、Q2方向に回転して噛み合いを行うパンチ20の切刃20aの円周面25の周速Vpよりも大きくなり、ダイス10の切刃10aをパンチ20の切刃20aよりも早く回転移動させることができる。
【0047】
これにより、Rd-Rp>0mmの関係を満たす場合、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2まで同期回転して移動する間に、ダイス10の切刃10aをパンチ20の切刃20aよりもVd-Vpだけ早く回転移動させることができる。そして、ダイス10の切刃10aを、噛み合いの終点P2において隙間C2を画成させることなく、パンチ20の切刃20aに対して圧接させることが可能になる。
【0048】
噛み合いの始点P1では、上記したように、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが圧接するため、隙間C1が画成されていない。たとえば、Vd=Vpの場合、隙間C1が画成されていない噛み合いの状態から噛み合いが進行しても、噛み合い状態にあるダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの相対の位置関係は変化せず、噛み合いの終点P2側(Y2側)に隙間C2が画成されることになる。これに対して、Vd>Vp(>0)の関係を満たすパンチユニット1は、噛み合いの始点P1において隙間C1が画成されていない噛み合いの状態から噛み合いが進行するに連れて、ダイス10の切刃10a(孔の縁10b)がパンチ20の切刃20aよりも早く回転移動し、ダイス10の切刃10a(孔の縁10b)がパンチ20の切刃20a(凸部の側面10c)から離間して圧接状態が解消される。この後、Vd>Vpの関係を満たすダイス10の切刃10aは、パンチ20の切刃20aとの周速差(Vd-Vp)によりパンチ20の切刃20aとの径差(Dd-Dp)に対応する距離を埋めながらパンチ20の切刃20aとの噛み合いを行って、やがて、図7および図8に示す噛み合いの終点P2に到る。
【0049】
ここで、噛み合いの終点に関し、参考として、特許文献1が開示するロータリパンチユニットの場合について説明する。特許文献1が開示するロータリパンチユニットでは、ダイスの切刃(孔)とパンチの切刃との径差が「0mm~パンチの切刃の外径×0.005mm(0mmを含まず)」に設定されるとともに、噛み合いの始点におけるダイスの切刃とパンチの切刃とのクリアランスが「0mm~パンチの切刃の外径×(-0.005mm)(0mmを含まず)」に設定される。そのため、上記したように、噛み合いの始点では、ダイスの切刃とパンチの切刃との重なりが発生し、噛み合いの始点における隙間の画成が抑制され、ダイスの切刃とパンチの切刃とが圧接される。しかし、図9に示すように、噛み合いの終点P2では、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの重なりが発生しない。これは、噛み合いの始点で重なったダイスの切刃とパンチの切刃とが、噛み合いの始点から噛み合いの終点に向かって移動する間、ダイスの切刃とパンチの切刃とが同じ回転移動を行うように構成されているからである。
【0050】
したがって、特許文献1が開示するロータリパンチユニットの場合、噛み合いの終点P2に画成される隙間を埋めるという発想がなく、必然として、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの径差に対応する最大「0.005mm×Dp」の隙間C2が発生する。そのため、特許文献1が開示するロータリパンチユニットの場合、噛み合いの終点P2において、図9に示すように、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが接触せず、圧接することがない。それゆえ、図9に示す隙間C2の画成に起因して、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの接触が妨げられ、必要かつ重要と考えるダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの圧接状態が生じないので、噛み合いの終点P2においてバラツキが大きい不安定な噛み合い状態になることに起因して、折れ込みなどの不具合が発生しやすくなると考えられる。
【0051】
この発明に係るパンチユニット1は、上記したように、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすように構成される。この構成において、噛み合い状態にあるダイス10の切刃10aが、パンチ20の切刃20aとの周速差(Vd-Vp)によってパンチ20の切刃20aよりも先行することが可能な距離は、パンチ20の切刃20aとの径差(Dd-Dp)に対応する。したがって、噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2までの間に、ダイス10の切刃10aが最大で0.005mm先行するように、周速差(Vd-Vp)を構成すればよい。この観点で、パンチユニット1は、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いの終点P2における位置関係を適切に構成するために、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、Rd-Rp>0mmの関係を満たすように構成され、好ましくは、0.02mm≦Rd-Rp≦0.40mmの関係を満たすように構成される。
【0052】
ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが0.02mm≦Rd-Rp≦0.40mmの関係を満たす場合、被穿孔材Sの材質、厚さおよび硬さ(柔軟性)などに起因する抵抗力や噛み合いによる抵抗力の影響を受けてもダイス10の切刃10aの最大0.005mmの先行が確実になって、噛み合いの終点P2において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの安定な圧接状態を確実に構成することができる。なお、Rd-Rp>0.40mmの場合、噛み合いの終点P2において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの圧接がより強固になるが、圧接が強固になり過ぎるとカジリが発生する可能性が高まる。
【0053】
図5に示す噛み合いの始点P1側(Y1側)から図7に示す噛み合いの終点P2側(Y2側)に到る間、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとは、ダイス10の切刃10a(孔の縁10bがある円周面15)がZ1側から被穿孔材Sを支持し、同時に、パンチ20の切刃20a(凸部の円周面25の縁20b)がZ2側から被穿孔材Sを押圧し、ダイス10の切刃10a(孔の縁10b)と噛み合いを進めながら被穿孔材Sを切り込む。このとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが適度なオーバーラップ(Lz)を伴うため、被穿孔材Sを切り込むパンチ20の切刃20a(凸部の円周面25の縁20b)は、図6に示す状態から図4に示す状態を経て図8に示す状態に到る間、ダイス10の切刃20a(円周面15の縁10bがある孔)の中に入り込んだ状態になる。そして、噛み合いの終点P2において、図8に示すような噛み合い状態になる。これは、上記したように、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、Rd-Rp>0mmの関係を満たすことでVd>Vpになることにより、噛み合いの終点P2においてダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが隙間C2を画成することなく圧接状態になるように構成されているからである。なお、パンチユニット1は、Rd-Rp>0mmの関係を満たしてオーバーラップ(Lz)を伴うため、Ddp<Rd+Rpの関係を満たす。
【0054】
噛み合いの終点P2において、被穿孔材Sを貫通したパンチ20の切刃20a(凸部の円周面25の縁20b)は、図8に示すように、ダイス10の切刃20a(円周面15の縁10bがある孔)の中に入り込んでいる。このとき、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、噛み合いの始点P1において圧接するように構成されていることにより、パンチ20の切刃20aが、ダイス10の切刃10a(円周面15の孔の縁10b)に対して接し、さらに互いに圧接し合う。これにより、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの噛み合いの終点P2における位置関係が適切に構成され、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの終点P2において圧接状態になり、隙間C2の画成を確実に抑制することができる。
【0055】
なお、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが適度なオーバーラップ(Lz)を伴う場合、噛み合いの終点P2においても、ダイス10の切刃10a(円周面15の孔の縁10b)に対して接触して圧接するパンチ20の切刃20aの部位が、凸部の円周面25の縁20bよりもむしろ凸部の円周面25の側面20cになる。このように、噛み合いの終点P2において、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとを圧接状態にすることにより、隙間C2の画成を確実に抑制することができる。
【0056】
パンチユニット1は、上記したように、好ましくは、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において圧接する状態になるときに、図5に示すように、ダイス10の切刃10aの噛み合いの始点P1とダイス10の回転中心(軸心Od)とを結んだ線分と、ダイス10の回転中心(軸心Od)とパンチ20の回転中心(軸心Op)とを結んだ線分とがなす角αが、0°<α≦15°の関係を満たすように構成される。この場合、ダイス10の切刃10a噛み合いの始点P1は、図5に示すように、ダイス10の切刃10aになる円周面15のY1側の縁10bに対応させる。
【0057】
この角度αは、噛み合いの始点P1に侵入するダイス10の切刃10a(縁10b)およびパンチ20の切刃20a(縁20b)が、被穿孔材Sの表面(X-Y平面)に対してなす角度と、略同じ角度になる。この角度αを、便宜上、噛み合い角と呼ぶ。なお、ロータリパンチユニットは、オーバーラップ(Lz)を伴うダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において噛み合いを行う場合、少なくとも、0°≦α<90°の関係を満たす。
【0058】
α=0°の関係を満たす場合、噛み合いの始点P1において、設計上、ダイス10の切刃10a(孔)の内周面とパンチ20の切刃20a(凸部)の側面20cとが接触して圧接する位置関係になる。この位置関係では、設計上、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが、互いに面による圧接状態になる。一方、図6に示すダイス10の切刃10aの鋭利な縁10bとパンチ20の切刃20aの側面20cとが接触して圧接する位置関係では、鋭利な角部(縁10b)と面による圧接状態になる。この観点で、面による圧接になるα=0°の構成よりも、鋭利な角部と面による圧接になる図6に示す構成(α>0°)の方が、より安定な圧接状態を得ることができる。
【0059】
α>15°の関係を満たす場合、噛み合いの始点P1に侵入するダイス10の切刃10a(縁10b)とパンチ20の切刃20a(縁20b)との噛み合い角度(αと略同じ角度)がより大きくなり、パンチ20の切刃20a(側面20c)がZ方向に対してなす角度(90°-αと略同じ角度)がより大きくなる。したがって、Z2側から近接して被穿孔材SのZ2側の表面(X-Y平面)に切り込む、パンチ20の切刃20a(縁20b)の切り込み角度(噛み合い角度)が、より大きくなる。パンチ20の切刃20aの被穿孔材Sに対する切り込み角度が大きくなるほど、パンチ20の切刃20aの側面20cが被穿孔材Sの表面に接触する割合が増すため、切り込み時の被穿孔材Sからの反発が大きくなる。
【0060】
上記の観点により、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとが噛み合いの始点P1において圧接する状態になるときに、好ましくは、0°<α≦15°の関係を満たすように構成される。
【0061】
パンチユニット1は、上記したように、好ましくは、ダイス10の切刃10a噛み合いの始点P1と、ダイス10の切刃10aの噛み合いの終点P2とが、ダイス10の回転中心になる第1軸11の軸心Odに対してなす角θ(単位:ラジアン)が、0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすように構成される。この場合、ダイス10の切刃10a噛み合いの始点P1は、図4に示すように、ダイス10の切刃10aになる円周面15のY1側の縁10bに対応させる。また、ダイス10の切刃10aの噛み合いの終点P2は、図4に示すように、ダイス10の切刃」10aになる円周面15のY2側の縁20bに対応させる。
【0062】
0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係において、(Rd-Rp)・θの項は、Rd・θ-Rp・θと表わすことができる。Rd・θの項は、Q1方向に回転移動するダイス10の切刃10aの円周面15の孔の縁10bが、噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2まで回転移動する軌跡(円弧)の長さを表わす。Rp・θの項は、Q2方向に回転移動するパンチ20の切刃20aの凸部の円周面25の縁20bが、噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2まで回転移動する軌跡(円弧)の長さを表わす。したがって、(Rd-Rp)・θの項は、同期回転するダイス10の切刃10a(縁10b)とパンチ20の切刃20a(縁20b)とが、噛み合いの始点P1から噛み合いの終点P2まで回転移動するときの、回転移動距離の差を表わす。この回転移動距離の差分だけ、ダイス10の切刃10aがパンチ20の切刃20aよりも先進することにより、ダイス10の切刃10a(孔)の内径Ddとパンチ20の切刃20a(凸部)の外径Dpとの差(Dd-Dp)を埋めることができる。
【0063】
ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとは、上記したように、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、噛み合いの始点P1において圧接するように構成される。そのため、(Rd-Rp)・θの項は、少なくとも、ダイス10の切刃10aとパンチ20の切刃20aとの径差(Dd-Dp)が解消するように設定する。また、噛み合いの始点P1における圧接状態の解消に回転移動距離の差は必要ない(0mm)が、微視的な弾性変形を伴って重なり合う可能性、各部品の寸法精度および組立精度などを考慮して設定する。したがって、(Rd-Rp)・θの項は、噛み合いの終点P2において隙間C2が画成されずに圧接状態を構成するように、少なくとも、(Rd-Rp)・θ>0.005mmの関係を満たすように設定する。好ましくは、噛み合いの終点P2において確実に圧接状態を構成するように、(Rd-Rp)・θ≧0.01mmの関係を満たすように設定する。より好ましくは、噛み合いの終点P2において確実に圧接状態を構成し、十分な圧接力が得られるように、(Rd-Rp)・θ≧0.02mmの関係を満たすように設定する。なお、(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすことが好ましく、(Rd-Rp)・θ>0.10mmの場合、噛み合いの終点P2においてカジリの発生が懸念されるような過度な圧接状態になる可能性がある。
【0064】
以上述べたように、この発明によれば、上記した構成を有するパンチユニット1を提供することができる。上記した構成を有するパンチユニット1は、噛み合いの始点P1および噛み合いの終点P2における折れ込みなどの不具合の発生が抑制され、紙または樹脂から成る被穿孔材Sに限らず、不織布、金属箔またはゴムから成る被穿孔材Sに対しても、容易かつ安定に、穿孔することができる。特に、噛み合いの終点P2で折り込みの不具合が発生しやすい、不織布または金属箔から成る被穿孔材Sに穿孔する場合、格段の効果を期待することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 パンチユニット
10 ダイス
10a 切刃
10b 縁(角部の縁)
11 第1軸
12 ギヤ
13 シザースギヤ
14 フレーム
15 円周面(ダイスの最外の回転軌跡円)
20 パンチ
20a 切刃
20b 縁(角部の縁)
20c 側面(角部の縁の近傍)
21 第2軸
22 ギヤ
25 円周面(パンチの最外の回転軌跡円)
S 被穿孔材
PL パスライン
Dd ダイス(孔)の内径
Dp パンチ(凸部)の外径
Rd ダイスの回転半径
Rp パンチの回転半径
Od 軸心(ダイスの回転中心)
Op 軸心(パンチの回転中心)
Vd ダイスの最外の周速
Vp パンチの最外の周速
Ldp 軸間距離
Lz オーバーラップ量
C1 隙間(噛み込みの始点側)
C2 隙間(噛み込みの終点側)
α 噛み合い角

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスを備えて一方向に回転する第1軸と、パンチを備えて前記第1軸の軸方向に対して平行かつ前記第1軸とは逆方向に回転する第2軸と、を有し、前記ダイスと前記パンチとが同期回転しながら噛み合いを行うことにより、前記ダイスと前記パンチとの間に供給された被穿孔材に穿孔するロータリパンチユニットであって、
前記ダイスの切刃の内径をDdとし、前記パンチの切刃の外径をDpとするとき、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接するように構成され、
前記ダイスの切刃の回転半径をRdとし、前記パンチの切刃の回転半径をRpとするとき、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチとの切刃とが前記噛み合いの終点において圧接するように構成され
前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接する状態にしたときに、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と前記ダイスの回転中心とを結んだ線分と、前記ダイスの回転中心と前記パンチの回転中心とを結んだ線分とがなす角をαとするとき、0°<α≦15°の関係を満たすように構成される、ロータリパンチユニット。
【請求項2】
0.10mm≦(Rd-Rp)≦0.40mmの関係を満たすように構成される、請求項1に記載のロータリパンチユニット。
【請求項3】
前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの終点とが、前記ダイスの回転中心に対してなす角をθ(ラジアン)とするとき、0.02mm≦(Rd-Rp)・θ≦0.10mmの関係を満たすように構成される、請求項1または2に記載のロータリパンチユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
この発明に係るロータリパンチユニットは、ダイスを備えて一方向に回転する第1軸と、パンチを備えて前記第1軸の軸方向に対して平行かつ前記第1軸とは逆方向に回転する第2軸と、を有し、前記ダイスと前記パンチとが同期回転しながら噛み合いを行うことにより、前記ダイスと前記パンチとの間に供給された被穿孔材に穿孔するロータリパンチユニットであって、前記ダイスの切刃の内径をDdとし、前記パンチの切刃の外径をDpとするとき、0mm≦Dd-Dp≦0.005mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接するように構成され、前記ダイスの切刃の回転半径をRdとし、前記パンチの切刃の回転半径をRpとするとき、Rd-Rp>0mmの関係を満たすとともに、前記ダイスの切刃と前記パンチとの切刃とが前記噛み合いの終点において圧接するように構成され、前記ダイスの切刃と前記パンチの切刃とが前記噛み合いの始点において圧接する状態にしたときに、前記ダイスの切刃の前記噛み合いの始点と前記ダイスの回転中心とを結んだ線分と、前記ダイスの回転中心と前記パンチの回転中心とを結んだ線分とがなす角をαとするとき、0°<α≦15°の関係を満たすように構成される
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】