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特開2023-48733EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048733
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230331BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158209
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】植野 能史
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AB21
4C092AC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギの時間的バラツキが小さいEUV光生成装置の提供。
【解決手段】チャンバと、プリパルスレーザ3Pと、メインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ3Mと、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナ409と、光路が結合されたプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光をターゲットに集光する集光ユニット22Aと、集光ユニットの位置を変更するステージ84と、メインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、EUVエネルギを検出するEUV光センサと、メインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサ445と、EUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるようにステージを制御し、パルスエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部5Bと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光が照射された前記ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、
光路が結合された前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光を前記ターゲットに集光する集光ユニットと、
前記集光ユニットの位置を変更するステージと、
前記コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前の前記メインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、
前記メインパルスレーザ光が照射された前記ターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、
前記ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記EUV光センサによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるように前記ステージを制御し、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記パルスエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、
を備えるEUV光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記EUV光生成制御部は、前記ステージと前記第1のアクチュエータとを交互に制御する、EUV光生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記EUV光生成制御部は、
現在位置と、前記現在位置と異なる第1点と、前記現在位置及び前記第1点と異なる第2点と、に照射位置を変更して、前記現在位置、前記第1点、前記第2点を含む3点の各位置で前記EUVエネルギの時間的バラツキ及び前記比率を指標として取得し、
前記EUV光生成制御部は、前記3点の位置における前記指標の勾配を算出し、
前記勾配に基づいて前記ステージ及び前記第1のアクチュエータを制御する、EUV光生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のEUV光生成装置であって、
前記第2点は、前記現在位置を挟んで前記第1点とは反対側に位置する、EUV光生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記EUV光生成制御部は、前記EUVエネルギが一定になるように前記メインパルスレーザ光のパルスエネルギを制御する、EUV光生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光が照射されたターゲットである拡散ターゲットの特性値を取得するためのミストセンサと、
前記プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、をさらに備え、
前記EUV光生成制御部は、前記特性値に基づいて、前記第2のアクチュエータを制御する、EUV光生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のEUV光生成装置であって、
前記特性値には、前記拡散ターゲットの傾き、サイズ、及び位置のうち少なくとも1つが含まれる、EUV光生成装置。
【請求項8】
請求項6に記載のEUV光生成装置であって、
前記第1のアクチュエータによる前記メインパルスレーザ光の位置調整と前記第2のアクチュエータによる前記プリパルスレーザ光の照射位置調整とが共通のオフセットを有する場合において、
前記EUV光生成制御部は、前記オフセットに対応して前記集光ユニットの位置を変更する、EUV光生成装置。
【請求項9】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光が照射されたターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、
前記光路が結合された前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光を前記ターゲットに集光する集光ユニットと、
前記集光ユニットの位置を変更するステージと、
前記コンバイナの上流に配置され、前記光路が結合される前の前記メインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、
前記メインパルスレーザ光が照射されたターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、
前記ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記EUV光センサによって検出される前記EUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるように前記ステージを制御し、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記パルスエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、
を備えるEUV光生成装置において、
前記ターゲットにパルスレーザ光を照射してEUV光を生成し、
前記EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記EUV光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
検査方法であって、
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光が照射されたターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、
前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、
前記光路が結合された前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光を前記ターゲットに集光する集光ユニットと、
前記集光ユニットの位置を変更するステージと、
前記コンバイナの上流に配置され、前記光路が結合される前の前記メインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、
前記メインパルスレーザ光が照射されたターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、
前記ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記EUV光センサによって検出される前記EUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるように前記ステージを制御し、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記パルスエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、
を備えるEUV光生成装置において、
前記ターゲットにパルスレーザ光を照射してEUV光を生成し、
前記EUV光を検査用光源として検査装置に出力し、前記検査装置内で、マスクに前記EUV光を露光して前記マスクを検査することを含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme Ultraviolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0203194号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0343729号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るEUV光生成装置は、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、プリパルスレーザ光が照射されたターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、光路が結合されたプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光をターゲットに集光する集光ユニットと、集光ユニットの位置を変更するステージと、コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前のメインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、メインパルスレーザ光が照射されたターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、EUV光センサによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるようにステージを制御し、レーザエネルギセンサによって検出されるパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、プリパルスレーザ光が照射されたターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、光路が結合されたプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光をターゲットに集光する集光ユニットと、集光ユニットの位置を変更するステージと、コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前のメインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、メインパルスレーザ光が照射されたターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、EUV光センサによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるようにステージを制御し、レーザエネルギセンサによって検出されるパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、を備えるEUV光生成装置において、ターゲットにパルスレーザ光を照射してEUV光を生成し、EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にEUV光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る検査方法は、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザと、プリパルスレーザ光が照射されたターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザと、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、光路が結合されたプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光をターゲットに集光する集光ユニットと、集光ユニットの位置を変更するステージと、コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前のメインパルスレーザ光の進行方向を変化させる第1のアクチュエータと、メインパルスレーザ光が照射されたターゲットが放射するEUV光のEUVエネルギを検出するEUV光センサと、ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、EUV光センサによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキが小さくなるようにステージを制御し、レーザエネルギセンサによって検出されるパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第1のアクチュエータを制御するEUV光生成制御部と、を備えるEUV光生成装置において、ターゲットにパルスレーザ光を照射してEUV光を生成し、EUV光を検査用光源として検査装置に出力し、検査装置内で、マスクにEUV光を露光してマスクを検査することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、LPP方式のEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、比較例に係るターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図3図3は、EUV光センサの配置を示す図である。
図4図4は、EUVエネルギ重心制御を示すブロック図である。
図5図5は、本開示の第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図6図6は、メインパルスレーザ光のパルスエネルギの制御を示すブロック図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るレーザ照射位置制御を示すフローチャートである。
図8図8は、本開示の技術に係る照射位置調整を示すフローチャートである。
図9図9は、位置探索の詳細を示すフローチャートである。
図10図10は、指標の取得例を示す図である。
図11図11は、改善方向に微小量移動する一例を示す図である。
図12図12は、本開示の技術に係る追加探索による指標取得の一例を示す図である。
図13図13は、追加探索位置に移動する一例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図15図15は、ミストセンサの配置の一例を示す図である。
図16図16は、ミストセンサにより撮像された拡散ターゲットの画像の一例を示す図である。
図17図17は、第2の実施形態に係るレーザ照射位置制御を示すフローチャートである。
図18図18は、本開示の技術に係る照射位置調整を示すフローチャートである。
図19図19は、位置探索の詳細を示すフローチャートである。
図20図20は、集光ユニットで補償する処理を含む照射位置調整のフローチャートを示す。
図21図21は、EUV光生成装置に接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図22図22は、EUV光生成装置に接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例に係るEUV光生成装置
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.第1の実施形態のEUV光生成装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用・効果
4.第2の実施形態のEUV光生成装置
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
4.4 変形例
5.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
図1に、LPP方式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられる。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2、ターゲット供給装置26を含む。チャンバ2は、密閉可能に構成されている。ターゲット供給装置26は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられている。ターゲット供給装置26から出力されるターゲット27の材料は、スズを含む。ターゲット27の材料は、スズと、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、又はキセノンとの組合せを含むこともできる。ターゲット27は、ドロップレット状である。
【0012】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられている。ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されている。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されている。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置されている。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられている。貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5、ターゲットセンサ4等を含む。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有し、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度等を検出するよう構成されている。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と外部装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。接続部29内部には、アパーチャ293が形成された壁291が設けられている。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されている。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えている。
【0016】
1.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給装置26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。EUV集光ミラー23は、放射光251に含まれるEUV光を、他の波長域の光に比べて高い反射率で反射する。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、外部装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。以下、反射光252をEUV光252と称する場合がある。
【0018】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括する。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理する。また、EUV光生成制御部5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、EUV光生成制御部5は、例えば、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例に係るEUV光生成装置
2.1 構成
【0020】
図2は、比較例に係るEUV光生成装置1Aの構成を示す一部断面図である。図3は、EUV光センサ70c~70eの配置を示す図である。図2及び図3に示すように、EUV光の出力方向をZ方向とする。ターゲット27の出力方向と反対の方向をY方向とする。Z方向とY方向との両方に垂直な方向をX方向とする。図2はX方向に見たEUV光生成装置1Aを示す。図3は-Z方向に見たEUV光生成装置1Aを示す。
【0021】
EUV光生成装置1Aは、EUV光生成制御部5Aと、チャンバ2Aと、ターゲット供給装置26と、レーザ装置3と、レーザ光進行方向制御部34Aと、EUV光センサ70c~70eと、を含む。
【0022】
チャンバ2Aの内部には、集光ユニット22Aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収部28と、EUV集光ミラーホルダ81と、プレート82及び83と、ステージ84が設けられている。チャンバ2Aには、ターゲット供給装置26が取り付けられている。EUV光センサ70c~70eは、後述するようにチャンバ2Aの内部に配置される。
【0023】
ターゲット供給装置26は、チャンバ2Aの壁面に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。ターゲット供給装置26は、溶融されたターゲット27の材料を、内部に貯蔵する。ターゲット供給装置26は、チャンバ2Aの内部に位置する開口部を有している。ターゲット供給装置26の上記開口部付近に、図示しない加振装置が配置されている。
【0024】
ターゲット供給装置26は、図示しないXZステージを備えている。EUV光生成制御部5Aは、ターゲットセンサ4(図1参照)の出力に基づいてXZステージを制御する。XZステージの制御により、ターゲット27がプラズマ生成領域25を通るようにターゲット27の軌道を調整することができる。
【0025】
レーザ装置3は、プリパルスレーザ3Pと、メインパルスレーザ3Mとを含む。プリパルスレーザ3Pは、プリパルスレーザ光31Pを出力するように構成されている。メインパルスレーザ3Mは、メインパルスレーザ光31Mを出力するように構成されている。プリパルスレーザ3Pは、例えば、YAGレーザ装置、あるいは、Nd:YVO4を用いたレーザ装置で構成される。メインパルスレーザ3Mは、例えば、CO2レーザ装置で構成される。メインパルスレーザ3Mは、YAGレーザ装置、あるいは、Nd:YVO4を用いたレーザ装置で構成されてもよい。
【0026】
レーザ光進行方向制御部34Aは、高反射ミラー341、342、345、346、405、及び406と、コンバイナ409とを含む。高反射ミラー341、342、345、346、405、及び406とコンバイナ409とは、それぞれホルダ343、344、347、348、407、408、及び410に支持されている。
【0027】
高反射ミラー341及び342は、プリパルスレーザ光31Pの光路に配置されている。
【0028】
高反射ミラー345及び346は、メインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。
【0029】
高反射ミラー405は、高反射ミラー346によって反射されたメインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。
【0030】
コンバイナ409は、高反射ミラー342によって反射されたプリパルスレーザ光31Pの光路に位置している。また、コンバイナ409は、高反射ミラー405によって反射されたメインパルスレーザ光31Mの光路に位置している。コンバイナ409は、プリパルスレーザ光31Pを高い反射率で反射し、メインパルスレーザ光31Mを高い透過率で透過させるように構成されている。コンバイナ409は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mの光路軸をほぼ一致させるように構成されている。
【0031】
高反射ミラー406は、コンバイナ409によって反射されたプリパルスレーザ光31Pと、コンバイナ409を透過したメインパルスレーザ光31Mと、の光路に配置されている。高反射ミラー406は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mを、チャンバ2Aの内部に向けて反射するように構成されている。本開示において、説明の便宜上、高反射ミラー406によって反射されたプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mをまとめてパルスレーザ光32と称することがある。
【0032】
プレート82は、チャンバ2に固定されている。プレート82には、プレート83が支持されている。集光ユニット22Aは、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222を含む。
【0033】
ステージ84は、プレート82に対するプレート83の位置を調整可能である。プレート83の位置が調整されることにより、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222の位置が調整される。レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222の位置は、これらのミラーによって反射されたパルスレーザ光33がプラズマ生成領域25で集光するように調整される。説明の便宜上、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222によって反射されたプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mをまとめてパルスレーザ光33と称することがある。
【0034】
EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ81を介してプレート82に固定されている。
【0035】
ターゲットセンサ4は、ターゲット検出領域Rを通過するターゲット27を検出するセンサである。ターゲット検出領域Rは、チャンバ2A内の所定領域であって、ターゲット供給装置26とプラズマ生成領域25との間にあるターゲット軌道上の所定位置に位置する領域である。
【0036】
EUV光センサ70c~70eのそれぞれは、後述するEUVエネルギ重心位置の評価を可能とする位置に配置されている。例えば、図3に示されるように、EUV光センサ70c~70eは、それぞれチャンバ2Aの壁面に取り付けられている。EUV光センサ70c~70eは、それぞれプラズマ生成領域25に向けられている。EUV光センサ70c及び70dは、XZ面に平行で、かつプラズマ生成領域25を通る仮想の平面を挟んで互いに鏡像となる位置に配置されている。EUV光センサ70d及び70eは、YZ面に平行で、かつプラズマ生成領域25を通る仮想の平面を挟んで互いに鏡像となる位置に配置されている。
【0037】
EUV光252のパルスエネルギ重心位置は、ターゲット27においてパルスレーザ光33が照射される位置を反映する指標の1つである。EUV光252のパルスエネルギ重心位置が所定の値に制御されることは、ターゲット27に対してパルスレーザ光33が所望の位置に照射されることを意味する。以下、EUV光252のパルスエネルギをEUVエネルギと称する場合がある。EUV光252のパルスエネルギ重心位置を単に「EUVエネルギ重心位置」と称する場合がある。また、EUV光252の性能を単に「EUV性能」と称する場合がある。
【0038】
2.2 動作
EUV光生成制御部5Aは、ターゲット供給装置26に制御信号を出力する。ターゲット供給装置26の内部に貯蔵されたターゲット物質は、図示しないヒータによって、当該ターゲット物質の融点以上の温度に維持される。ターゲット供給装置26の内部のターゲット物質は、ターゲット供給装置26の内部に供給される不活性ガスによって加圧される。
【0039】
不活性ガスによって加圧されたターゲット物質は、上述の開口部を介して噴流として出力される。上述の加振装置によってターゲット供給装置26のうちの少なくとも開口部の周辺の構成要素が振動することにより、ターゲット物質の噴流は複数のドロップレット(DL)に分離される。それぞれのドロップレットが、ターゲット27を構成する。ターゲット27は、ターゲット供給装置26からプラズマ生成領域25までの軌道に沿って-Y方向に移動する。ターゲット回収部28は、プラズマ生成領域25を通過したターゲット27を回収する。
【0040】
チャンバ2A内へ出力されたターゲット27は、ドロップレットの形態で進行し、ターゲット検出領域Rを通過する。ターゲット検出領域Rを通過したターゲット27は、プラズマ生成領域25に供給される。
【0041】
ターゲットセンサ4は、ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過したタイミングを検出する。EUV光生成制御部5Aは、ターゲットセンサ4から送信された通過タイミング信号を受信する。EUV光生成制御部5Aは、通過タイミング信号が所定の閾値より低くなったタイミングを、ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過したタイミングと判定する。すなわち、EUV光生成制御部5Aは、ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過したタイミングを特定する。EUV光生成制御部5Aは、通過タイミング信号が所定の閾値より低くなったタイミングで、ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過したことを示すターゲット検出信号を生成する。
【0042】
EUV光生成制御部5Aは、ターゲット検出信号を生成したタイミングから所定の遅延時間だけ遅延したタイミングで、プリパルスレーザ光31Pを出力する契機を与える第1のトリガ信号を、プリパルスレーザ3Pに出力する。プリパルスレーザ3Pは、第1のトリガ信号に従って、プリパルスレーザ光31Pを出力する。EUV光生成制御部5Aは、第1のトリガ信号を出力した後、第2のトリガ信号を、メインパルスレーザ3Mに出力する。メインパルスレーザ3Mは、第2のトリガ信号に従って、メインパルスレーザ光31Mを出力する。このようにして、レーザ装置3は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mを、この順で出力する。プリパルスレーザ光31Pは、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有することが好ましい。ピコ秒オーダーとは、1ps以上、1ns未満を意味する。プリパルスレーザ光31Pは、1ns以上、1μs未満のパルス幅を有するようにしてもよい。
【0043】
プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mは、レーザ光進行方向制御部34Aに入射する。プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mは、レーザ光進行方向制御部34Aを経て、パルスレーザ光32として集光ユニット22Aに導かれる。パルスレーザ光32は、集光ユニット22Aに含まれるレーザ光集光ミラー221によって反射される。レーザ光集光ミラー221によって反射されたパルスレーザ光32は、レーザ光集光ミラー222によって反射され、パルスレーザ光33としてプラズマ生成領域25に集光される。
【0044】
ステージ84は、EUV光生成制御部5Aから出力される制御信号によってプレート82に対するプレート83の位置を調整する。プレート83の位置が調整されることにより、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222の位置が調整される。プレート83及びステージ84は、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222を移動する移動ステージを構成する。以下の説明において、プレート83及びステージ84をまとめて単に移動ステージと称することがある。レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222を移動することにより、パルスレーザ光33に含まれるプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mの光路軸が同時に変化される。上述のように、レーザ光集光ミラー222の焦点と、パルスレーザ光33の集光点とがほぼ一致する。このため、ステージ84によるプレート83の移動方向及び移動距離と、パルスレーザ光33の集光点の移動方向及び移動距離とが、それぞれほぼ一致する。
【0045】
1つのターゲット27がプラズマ生成領域25に到達したタイミングで、当該ターゲット27にプリパルスレーザ光31Pが照射される。プリパルスレーザ光31Pが照射されたターゲット27はミスト状に拡散する。ターゲット27が所望の大きさに拡散したタイミングで、ターゲット27にメインパルスレーザ光31Mが照射される。なお、プリパルスレーザ光31Pが照射されることによりミスト状に拡散したターゲット27は、拡散ターゲット27とも称される。
【0046】
メインパルスレーザ光31Mが照射されたターゲット27はプラズマ化して、このプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光252は、EUV集光ミラー23で選択的に反射され、接続部29の中間集光点292に集光される。中間集光点292に集光されたEUV光252は、外部装置6に向かって出力される。
【0047】
プラズマ生成領域25に集光されるパルスレーザ光33の光路軸がドロップレット状のターゲット27の中心からずれると、EUVエネルギの低下などの問題が生じる。しかし、パルスレーザ光33の光路軸とターゲット27の中心とのずれを直接計測することは困難な場合がある。そこで、EUV光生成制御部5Aは、以下の原理により、EUVエネルギ重心位置を指標としてパルスレーザ光33の光路軸を制御する。
【0048】
図4は、EUVエネルギ重心制御を示すブロック図である。図4において、PPL-DLは、プリパルスレーザ光31Pが照射されるターゲット27を意味する。MPL-DLは、メインパルスレーザ光31Mが照射されるターゲット27を意味する。PPL-DLのEUV重心特性は、プラズマ生成領域25におけるターゲット27にプリパルスレーザ光31Pが照射される位置の特性を示す。MPL-DLのEUV重心特性は、プラズマ生成領域25におけるターゲット27に対するメインパルスレーザ光31Mが照射される位置の特性を示す。EUV光生成制御部5Aは、演算部51と、位置調整部52とを含む。演算部51は、PID(Proportional-Integral-Differential)演算により調整量を算出する。
【0049】
EUVエネルギ重心位置は、EUVエネルギ分布の重心位置である。EUVエネルギ重心位置は、EUVエネルギをEUV光センサ70c~70eで計測して得られた複数の計測値から特定された空間的な位置である。
【0050】
EUVエネルギ重心位置は、パルスレーザ光33の照射条件がEUV光性能を満たすような条件であるか否かを評価する指標である。従って、EUVエネルギ重心位置が目標重心位置となるように制御されることは、パルスレーザ光33がターゲット27に適切に照射されることを意味する。
【0051】
EUV光生成制御部5Aは、下式1により得られる評価値Cxを用いて、EUVエネルギ重心位置のX軸座標成分を評価する。また、EUV光生成制御部5Aは、下式2により得られる評価値Cyを用いて、EUVエネルギ重心位置のY軸座標成分を評価する。
Cx[%]={(E3-E2)/(E2+E3)}×100 ・・・(1)
Cy[%]={(E1-E2)/(E1+E2)}×100 ・・・(2)
【0052】
E1は、EUV光センサ70cによるEUVエネルギの計測値である。E2は、EUV光センサ70dによるEUVエネルギの計測値である。E3は、EUV光センサ70eによるEUVエネルギの計測値である。Cxは、X軸方向におけるEUVエネルギ分布の偏在性を示す。Cyは、Y軸方向におけるEUVエネルギ分布の偏在性を示す。
【0053】
EUV光生成制御部5Aは、EUVエネルギ重心制御を実行可能に構成される。EUVエネルギ重心制御とは、EUV光252の生成中にEUV光センサ70c~70eのそれぞれの計測結果に基づいてEUVエネルギ重心位置が目標重心位置となるように集光ユニット22Aをフィードバック方式で制御することを意味する。具体的には、EUV光生成制御部5Aは、EUVエネルギ重心制御として、以下の処理を実行する機能を有する。
【0054】
EUV光生成制御部5Aは、ターゲット検出信号を生成したタイミングから所定の遅延時間だけ遅延したタイミングで、EUV光センサ70c~70eのそれぞれに第1ゲート信号を送信する。第1ゲート信号は、EUVエネルギを計測する契機をEUV光センサ70c~70eのそれぞれに与える信号である。EUV光センサ70c~70eは、それぞれ第1ゲート信号を受信すると、それぞれEUVエネルギを計測し、その計測値E1~E3をEUV光生成制御部5Aに送信する。
【0055】
EUV光生成制御部5Aは、上式1及び上式2を用いて、EUVエネルギ重心位置を評価する。EUV光生成制御部5Aは、評価値Cx及びCyに基づいて、現在のEUVエネルギ重心位置と目標重心位置との偏差を特定する。EUVエネルギ重心制御の目標重心位置として、ターゲット27に対してパルスレーザ光33の照射位置を最適化した時のEUV光252のパルスエネルギの重心の計測値を用いる。
【0056】
EUV光生成制御部5Aは、EUVエネルギ重心位置の計測値が目標重心位置となるように、ステージ84を駆動させる。具体的には、演算部51は、パルスエネルギ重心値の計測値と目標重心位置との差に基づいてPID演算を行うことによりステージ84の調整量を決定して位置調整部52に送る。位置調整部52は、決定された調整量に応じてステージ84を駆動して、パルスレーザ光33の集光位置を移動させる。
【0057】
2.3 課題
上述したように、EUV光生成制御部5Aは、目標重心位置に基づいて、EUVエネルギ特性を制御する。位置調整部52は、演算部51が算出した調整量に基づいて、ステージ84を移動させることによって、EUVエネルギ重心位置の計測値が目標重心位置になるように、コンバイナ409を通過したパルスレーザ光32を制御する。
【0058】
しかし、レーザ光進行方向制御部34A及び集光ユニット22Aに含まれる光学素子は、パルスレーザ光のエネルギによって加熱されることにより変形し、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mのそれぞれの光路が変化する場合がある。このとき、プリパルスレーザ光31Pの照射位置の時間的バラツキとメインパルスレーザ光31Mの照射位置の時間的バラツキとが異なることにより、PPL-DLのEUV重心特性とMPL-DLのEUV重心特性とに異なる変化が生じる場合がある。すなわち、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとのいずれかの光路が最適光軸から外れることにより、パルスレーザ光33がターゲット27に照射される位置にずれが生じ、EUVエネルギ重心値が変化する。ここで、最適光軸から外れた場合とは、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係がずれたことを指す。
【0059】
ステージ84は、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとを共に集光する集光ユニット22Aを保持して位置を変更する移動ステージである。そのため、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係がずれた場合に、ステージ84を移動させても、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの各々が最適に照射されるように各々の位置を補正することはできない。その結果、パルスレーザ光33がターゲット27の中心からずれた位置で照射され、EUVエネルギが不安定になり、不要な飛散物の量も増加する。飛散物は、デブリとも称される。
【0060】
また、EUV光センサ70c~70eから算出されるEUVエネルギ重心位置の計測に誤差が生じる場合がある。EUV光生成制御部5Aは、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係のずれを検知することができないため、誤差を多く含む計測値を使って照射位置制御を行ってしまう。その結果、パルスレーザ光33がターゲット27に適切に照射されない状態が続く場合がある。従って、パルスレーザ光33のターゲット27に対する照射位置制御において、EUVエネルギ重心値以外の指標を用いることが必要である。
【0061】
そこで、本開示は、後述するメインパルスレーザ光のパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率であるCE(Conversion Efficiency)、及びEUVエネルギの時間的バラツキを表すEUVエネルギ3σを指標としたパルスレーザ光33のターゲット27に対する照射位置制御を開示する。さらに、光学素子の熱変形によってパルスレーザ光33の光路が変化した場合でも、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係のずれを抑制すると共に、EUVエネルギの安定性を改善することを可能とするEUV光生成装置及び電子デバイス製造方法を開示する。
【0062】
3.第1の実施形態のEUV光生成装置
第1の実施形態のEUV光生成装置及びEUV光生成方法について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0063】
3.1 構成
図5は、本開示の第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bの構成を示す概略的に示す。第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bは、EUV光生成制御部5Bと、レーザ光進行方向制御部34Bと、を備える。EUV光生成装置1Bは、熱の影響等によりプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mのそれぞれの照射位置にずれが発生したときに、照射位置ずれを補償する機能を有する。
【0064】
EUV光生成制御部5Bは、EUV光生成装置1Bの連続稼働中に、EUVエネルギが一定になるようにメインパルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。以下、メインパルスレーザ光のパルスエネルギを、MPLエネルギと称する場合がある。
【0065】
図6は、MPLエネルギの制御を示すブロック図である。EUV光生成制御部5Bは、演算部51Bと、MPLエネルギ制御部53とを備える。演算部51Bは、PID(Proportional-Integral-Differential)演算により調整量を算出する。
【0066】
具体的には、演算部51Bは、EUV光センサ70c~70eによるEUVエネルギの計測値の合計又は平均と、EUVエネルギの目標値との差に基づいてPID演算を行う。演算部51Bは、PID演算により、EUVエネルギを一定にするためのMPLエネルギの調整量を決定してMPLエネルギ制御部53に送る。MPLエネルギ制御部53は、決定された調整量に基づいてメインパルスレーザ3Mを駆動することにより、MPLエネルギを制御する。
【0067】
従って、EUV光生成制御部5Bは、EUV光センサ70c~70eによる計測値とEUVエネルギの目標値との差に基づいて、MPLエネルギを制御することで、EUVエネルギを一定とする。しかし、MPLエネルギを制御するだけでは、EUVエネルギを一定に維持することが困難である。これは、光路における光学素子の熱変形によって、EUVエネルギの特性が変化するためである。そこで、本開示においては、EUV光生成制御部5Bは、EUVエネルギ3σ及びCEを指標として、ターゲット27にパルスレーザ光33を照射する位置を調整することを含むレーザ照射位置制御Bを行う。なお、CEは、EUVエネルギをMPLエネルギで割った値である。すなわち、CEは、MPLエネルギのEUVエネルギへの変換効率を表す指標である。
【0068】
EUVエネルギの安定性は、EUVエネルギの時間的バラツキを表すEUVエネルギ3σを指標として用いることで改善することができる。EUVエネルギ3σは、例えば、下式3により算出される。
EUVエネルギ3σ[%]=(3σ/μ)×100 ・・・(3)
【0069】
ここで、σは、単位時間に含まれる複数のパルスについてのEUVエネルギの標準偏差である。μは、単位時間に含まれる複数のパルスについてのEUVエネルギの平均値である。EUVエネルギ3σの算出に用いるEUVエネルギは、例えば、EUV光センサ70c~70eによるEUVエネルギの計測値の合計又は平均である。単位時間は、数秒であり、例えば、1~5秒程度である。ここで、EUVエネルギの安定性は、EUVエネルギ3σに代えて、例えばσのn倍を指標として用いてもよい。
【0070】
上述のように、CEは、EUV光生成装置の性能を表す1つの指標である。しかし、従来、常に指定されたEUVエネルギを安定的に出力することが求められるEUV光生成装置においては、CEは、EUVエネルギの制御の指標として利用されることはなかった。これは、CEを指標とするフィードバック制御を構築した場合には、安定的なEUVエネルギが保証されないからである。つまり、EUVエネルギが低下した場合に、MPLエネルギを低下させることによりCEを一定に維持する制御が行われ、EUVエネルギを一定にする制御が行われないことがある。
【0071】
レーザ光進行方向制御部34Bは、レーザエネルギセンサ445と、第1のアクチュエータM1と、ビームスプリッタ345Bと、を備える。
【0072】
第1のアクチュエータM1は、ホルダ348に取付けられている。第1のアクチュエータM1は、高反射ミラー346の姿勢を変更することによって、メインパルスレーザ光31Mの光路軸を制御するように配置されている。本開示の技術に係る第1のアクチュエータM1は、上記配置に限定されない。第1のアクチュエータM1は、メインパルスレーザ3Mからコンバイナ409までのメインパルスレーザ光31Mのいずれかの高反射ミラーの角度を制御可能なアクチュエータであってもよい。第1のアクチュエータM1は、EUV光生成制御部5Bに接続されている。
【0073】
ビームスプリッタ345Bは、メインパルスレーザ3Mから出力されるメインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。ビームスプリッタ345Bは、ホルダ347に支持されている。すなわち、ビームスプリッタ345Bは、EUV光生成装置1Aにおける高反射ミラー345に代えて設けられている。ビームスプリッタ345Bは、メインパルスレーザ光31Mを高い反射率で反射するように構成されている。さらに、ビームスプリッタ345Bは、メインパルスレーザ光31Mの一部をレーザエネルギセンサ445に向けて透過させるように構成されている。
【0074】
レーザエネルギセンサ445は、本開示の技術に係るレーザエネルギセンサの一例である。レーザエネルギセンサ445は、ビームスプリッタ345Bを透過するメインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。レーザエネルギセンサ445は、ビームスプリッタ345Bを透過したメインパルスレーザ光31Mを検出し、検出結果をEUV光生成制御部5Bに出力する。レーザエネルギセンサ445は、上記配置及び構成に限定されない。レーザエネルギセンサ445は、メインパルスレーザ3Mからコンバイナ409までのメインパルスレーザ光31Mの光路のいずれかの高反射ミラーをビームスプリッタに変更し、その透過光を計測するように配置してもよい。
【0075】
3.2 動作
次に、第1の実施形態のEUV光生成装置1Bの動作について説明する。具体的には、本実施形態に係るEUV光生成制御部5Bが実行するレーザ照射位置制御Bについて説明する。
【0076】
図7~9は、第1の実施形態におけるレーザ照射位置制御Bの処理手順を示すフローチャートである。図7は、第1の実施形態に係るレーザ照射位置制御Bを示すフローチャートである。レーザ照射位置制御Bは、ループ1において、集光ユニット位置調整ステップS110と、メインパルスレーザ照射位置調整ステップS120と、を交互に繰り返し実行させ、所定の終了条件を満たしたときに、ループ1を抜けて終了する。ループ1の所定の終了条件は、例えば外部装置6から入力されるEUV光出力停止指令の検出等、EUV光生成の停止を伴う状態への移行の検知でよい。
【0077】
集光ユニット位置調整ステップS110では、EUVエネルギ3σを指標として、集光ユニット22Aを位置調整する。メインパルスレーザ照射位置調整ステップS120では、CEを指標として、メインパルスレーザ光31Mの照射位置を調整する。集光ユニット22Aの位置調整及びメインパルスレーザ光31Mの照射位置調整において、共通のアルゴリズムを使用してもよい。なお、指標、探索幅Δ、及び位置偏差の許容値については異なるパラメータを用いる。
【0078】
図8は、照射位置調整Bの概略を示すフローチャートである。集光ユニット22Aの位置調整及びメインパルスレーザ光31Mの照射位置調整における共通のアルゴリズムとして照射位置調整Bを使用してもよい。照射位置調整Bは、X軸→Y軸→X軸の順、又はY軸→X軸→Y軸の順にループ2を実施する(ステップS201)。ループ2において、パルスレーザ光33のX軸又はY軸について、位置偏差が許容値未満になるまで、位置探索の作業を続ける。
【0079】
例えば、照射位置調整BをX軸→Y軸→X軸の順に実施した場合、2回の最適X位置の位置偏差が許容値以下である場合はループ2を抜ける。一方、2回のX軸探索の中で、1回目の最適X位置に対する2回目の最適X位置の偏差が許容値を超える場合、さらに位置探索が必要であると判定し、ステップS220における照射位置探索Bを続行する。ここで、許容値は、予め設定された値である。許容値は、これ以上探索しても大きな改善が見込めないとする指標を指す。例えば、1回目の探索後の最適X位置に対する、2回目の探索後の最適X位置の偏差が許容値以下である場合、これ以上探索しても大きな改善が見込めないとしてループ2を抜ける。
【0080】
ステップS220において、現在位置に対して正方向及び負方向に探索幅Δだけ照射位置を変更して、現在位置を含む3点のデータから性能改善方向を判定する。ここで、本実施形態において、負方向は、現在位置を挟んで正方向とは反対側に配置するが、本開示の技術に係る現在位置を含む3点はこれに限定されない。現在位置を含む3点は、現在位置と、現在位置と異なる第1点と、現在位置及び第1点と異なる第2点と、で構成されるものであればよい。また、3点のデータには、EUVエネルギ3σとCEが含まれる。集光ユニット22Aについては、EUVエネルギ3σが低減する方向に位置探索を行う。メインパルスレーザ光31Mについては、CEが上昇する方向に位置探索を行う。探索幅Δは、レーザスポット位置に対するCEの感度によって決定される。本実施形態では、探索幅Δは、0.5~5μm程度である。探索幅Δは、X方向とY方向とで異なる値であってもよい。特に、スポット強度分布が楕円の場合には、X方向とY方向とで異なる値とすることが好ましい。
【0081】
図9は、図8のステップS220に係る位置探索Bの詳細を示すフローチャートである。EUV光生成制御部5Bは、まず、ステップS221において、現在の照射位置を読み込み、探索軸を設定する。さらに、所定の閾値、探索幅Δ、微小量dΔ、及び追加探索回数Nを読み込む。所定の閾値、探索幅Δ、微小量dΔ、及び追加探索回数Nは、最初は一定の値とされていて、記憶部に記憶されていてもよい。
【0082】
次に、ループ3における処理を行う。ループ3において、3点の位置における指標を取得し、その勾配の絶対値が閾値以下である場合は位置探索の条件を満たしたとして、ループ3を抜ける。そうでない場合は、ループ3において位置探索の条件を満たすように処理が続けられる。以下、本実施形態において、3点の位置における指標の勾配を単に勾配と称する場合がある。
【0083】
具体的には、ステップS223において、現在位置から±Δだけ照射位置を変更して、現在位置を含む3点の位置で指標の値を取得する。図10は、指標の取得例を示す。例えば、X軸において位置探索Bを実施する場合は、図10に示すように、現在位置P1から+Δだけ照射位置を変更した位置P3と、現在位置P1から-Δだけ照射位置を変更した位置P2において指標を取得する。ここで、指標として、EUVエネルギ3σ又はCEを取得する。原則として、集光ユニット22Aを位置探索する場合は、EUVエネルギ3σを取得し、メインパルスレーザ光31Mを位置探索する場合は、CEを取得する。
【0084】
ステップS224において、現在位置を含む上記3点の位置で取得した指標の値に基づいて、当該3点における指標の勾配を算出する。例えば、上記P1、P2、及びP3において取得した指標の値に基づいて一次近似線を算出し、算出した一次近似線の傾きを勾配とする。
【0085】
ステップS225において、ステップS224で算出された勾配の絶対値と閾値とを比較し、勾配の絶対値が閾値以下である場合は、ループ3の終了条件を満たすものとして、改善方向へ微小量dΔ移動させて、ループ3を抜ける。図11は、改善方向に微小量dΔ移動する一例を示す。ステップS226において、図11に示すように、改善方向へ微小量dΔだけ移動させて、ループ3を抜ける。ここで、dΔ<Δである。また、ステップS226において、改善方向への移動に代えて、改善位置へ直接移動させてもよい。ここで、改善方向又は改善位置は、集光ユニット22Aによる位置探索の場合は、EUVエネルギ3σが小さくなる方向又は位置を指し、メインパルスレーザ光31Mによる位置探索の場合は、CEが大きくなる方向又は位置を指す。
【0086】
一方、ステップS225において、ステップS224で算出された勾配の絶対値と閾値とを比較し、勾配の絶対値が閾値より大きい場合は、ステップS225Aへ進む。
【0087】
ステップS225Aにおいて、ステップS225における条件が満たされるまで、最大N回の追加探索を行う。本実施形態において、追加探索は、ステップS225において判定された改善方向においてのみ探索を行うが、本開示の技術に係る追加探索はこれに限定されるものではなく、改善方向以外の方向に追加探索を行ってもよい。図12は、追加探索による指標取得の一例を示す。例えば、図12に示すように、1回の追加探索を行う場合は、当該探索位置は位置P2から探索幅Δだけ移動した位置P4が追加探索位置となる。最大N回の追加探索を行った後、ステップS226へ進む。
【0088】
図13は、追加探索位置への移動の一例を示す。ステップS226において、図13に示すように追加探索位置P4へ探索幅Δだけ移動させた後、ステップS223へ戻り、再度ループ3の終了条件を満たすように位置探索処理が実施される。
【0089】
すなわち、ループ3において、勾配の絶対値が閾値以下になるまで位置探索が行われる。そして、最大N回の追加探索を実施した後に、ループ3の条件を満たして、ループ3を抜けた場合は、ステップS227へ進む。
【0090】
ステップS227において、追加探索によって改善された軸を記録する。記録された軸はS221で読み込まれる探索軸として上書きされ、次回の位置探索時に最初に探索される。一方、追加探索が発生せずにループ3の条件を満たした位置については、ステップS227の処理を行わずに、位置探索Bを終了する。
【0091】
上述したように、EUV光生成制御部5Bは、3点における指標の勾配に基づいて、ステージ84及び第1のアクチュエータM1を制御することによって、位置探索Bを実施する。
【0092】
第1の実施形態のEUV光生成装置1Bの他の動作については、比較例のEUV光生成装置1Aと同様であってもよい。
【0093】
3.3 作用・効果
以上説明したように、本実施形態のEUV光生成装置1Bは、チャンバ2内に供給されるターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光31Pを出力するプリパルスレーザ3Pと、プリパルスレーザ光31Pが照射されたターゲット27に照射されるメインパルスレーザ光31Mを出力するメインパルスレーザ3Mと、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mの光路を結合させるコンバイナ409と、光路が結合されたプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mをターゲット27に集光する集光ユニット22Aと、集光ユニット22Aの位置を変更するステージ84と、コンバイナ409の上流に配置され、光路が結合される前のメインパルスレーザ光31Mの進行方向を変化させる第1のアクチュエータM1と、メインパルスレーザ光31Mが照射されたターゲット27が放射するEUVエネルギを検出するEUV光センサ70c~70eと、ターゲット27に照射される前のメインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサ445と、EUV光センサ70c~70eによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキを表すEUVエネルギ3σが小さくなるようにステージ84を制御し、レーザエネルギセンサ445によって検出されるパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率としてのCEが大きくなるように第1のアクチュエータM1を制御するEUV光生成制御部5Bと、を備える。
【0094】
EUV光生成制御部5Bは、従来利用されることがなかったCEを指標として、メインパルスレーザ光31Mの照射位置を制御する。また、EUV光生成制御部5Bは、EUVエネルギ3σを指標として、集光ユニット22Aの位置を調整することで、パルスレーザ光33の照射位置を制御する。この結果、光学素子の熱変形に起因するプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係のずれを抑制することができる。
【0095】
また、ターゲット27に対するプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mの照射位置が常に最適な状態に維持されるため、EUVエネルギの安定性の改善が実現される。さらに、CEが高くなる条件によって運転することでデブリの発生が低減し、EUV集光ミラー23の寿命が向上する。
【0096】
4.第2の実施形態のEUV光生成装置
次に、第2の実施形態のEUV光生成装置及びEUV光生成方法について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0097】
4.1 構成
図14は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置1Cの構成を概略的に示す。図14に示すように、第2の実施形態に係るEUV光生成装置1Cは、ミストセンサ43と、第2のアクチュエータM2と、をさらに備える。EUV光生成装置1Cのその他の構成については、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bと同様である。
【0098】
プラズマ生成領域25に集光されたプリパルスレーザ光31Pは、プラズマ生成領域25に供給されたターゲット27を第1照射タイミングで照射する。ターゲット27は、プリパルスレーザ光31Pが照射されると、破壊され、マイクロドロップレット及びクラスタ等の微粒子がミスト状に拡散したミスト状のターゲット27に変容する。
【0099】
ミストセンサ43は、プラズマ生成領域25と対向するようにチャンバ2Aの壁に設けられている。ミストセンサ43は、拡散ターゲット27を撮像することにより画像を取得してEUV光生成制御部5Cに送信する。ミストセンサ43の動作は、EUV光生成制御部5Cによって制御される。
【0100】
ミストセンサ43は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサで構成されており、図示しない照明器具によって照明されたターゲット27もしくはターゲット27のシャドウグラフを撮像する。なお、ミストセンサ43は、複数設けられていてもよい。図15は、ミストセンサ43の配置の一例を示す。例えば、図15に示すように、2つのミストセンサ43が、それぞれの観測軸が互いに90度の角度をなすように配置されていてもよい。
【0101】
図16は、ミストセンサ43により撮像された拡散ターゲット27の画像の一例を示す。EUV光生成制御部5Cは、プリパルスレーザ光31Pを出力後のタイミングでミストセンサ43を制御して撮像することによって、一例として図16に示される画像を取得する。
【0102】
EUV光生成制御部5Cは、ミストセンサ43により撮像された画像に基づいて、拡散ターゲット27の特性値を得る。特性値は、ターゲット27へのプリパルスレーザ光31Pの照射位置と、ターゲット27の重心位置との差異に関連する値である。特性値には、拡散ターゲット27の傾き、サイズ、及び位置のうち少なくとも1つが含まれる。プリパルスレーザ光31Pの照射位置がターゲット27の重心位置からずれるほど、拡散ターゲット27の傾きが大きくなる。また、プリパルスレーザ光31Pの照射位置がターゲット27の重心位置からずれるほど、拡散量が減少するので、拡散ターゲット27のサイズが小さくなる。さらに、プリパルスレーザ光31Pの照射位置がターゲット27の重心位置からずれるほど、拡散ターゲット27の位置の変化量が小さくなる。
【0103】
例えば、図16に示すように、拡散ターゲット27の形状が楕円形である場合には、拡散ターゲット27の傾きは、楕円形の短径を含む軸と、プリパルスレーザ光31Pの照射軸とがなす角度θにより求められる。拡散ターゲット27のサイズは、楕円形の長径と短径とに基づいて求められる。拡散ターゲット27の位置は、楕円形の重心座標から求められる。
【0104】
第2のアクチュエータM2は、ホルダ344に取付けられている。第2のアクチュエータM2は、高反射ミラー342の姿勢を変更することによって、プリパルスレーザ光31Pの光路軸を制御するように配置されている。第2のアクチュエータM2は、上記配置に限定されない。第2のアクチュエータM2は、プリパルスレーザ3Pからコンバイナ409までのプリパルスレーザ光31Pのいずれかの高反射ミラーの角度を制御可能なアクチュエータであってもよい。第2のアクチュエータM2は、EUV光生成制御部5Cに接続される。
【0105】
EUV光生成制御部5Cは、得られた拡散ターゲット27の傾き、サイズ、及び位置などの特性値に基づいて、第2のアクチュエータM2を制御する。EUV光生成制御部5Cが第2のアクチュエータM2を制御することにより、プリパルスレーザ光31Pの位置及び方向が変更される。
【0106】
4.2 動作
次に、第2の実施形態のEUV光生成装置1Cの動作について説明する。具体的には、本実施形態に係るEUV光生成制御部5Cが実行するレーザ照射位置制御Cについて説明する。
【0107】
図17~19は、第2の実施形態における光路軸調整の処理手順を示すフローチャートである。図17は、第2の実施形態に係るレーザ照射位置制御Cを示すフローチャートである。
【0108】
第2の実施形態のレーザ照射位置制御Cは、第1の実施形態のレーザ照射位置制御Bと比較して、EUV性能を診断するステップS140と、プリパルスレーザ照射位置を調整するステップS141と、をさらに備える。すなわち、レーザ照射位置制御Cにおいて、ステップS110と、ステップS120と、ステップS140と、ステップS141と、を交互に繰り返し実行させ、所定の終了条件を満たしたとき、ループ1Cを抜けて終了する。ループ1の所定の終了条件は、例えば外部装置6から入力されるEUV光出力停止指令の検出等、EUV光生成の停止を伴う状態への移行の検知でよい。
【0109】
ステップS140において、EUV性能としてEUVエネルギ3σ及びCEを診断する。そして、EUV性能が所定範囲内にある場合は、ループ1Cを繰り返す。一方、EUV性能が所定範囲外にある場合は、ステップS141に進む。
【0110】
ステップS141において、EUV光生成制御部5Cは、拡散ターゲット27の特性値を指標として、第2のアクチュエータM2を制御する。EUV光生成制御部5Cは、第2のアクチュエータM2を制御することにより、プリパルスレーザ光31Pの位置及び方向を変更する。これによって、ターゲット27に対するプリパルスレーザ光31Pの照射位置を常に最適な状態に維持することができる。
【0111】
図18は、本開示の技術に係る照射位置調整Cを示すフローチャートである。第2の実施形態に係る照射位置調整Cは、ループ2Cにおいて、第1の実施形態の位置探索ステップS220に代えて位置探索ステップS220Cを実行すること以外は、第1の実施形態と同様である。
【0112】
図19は、位置探索Cの詳細を示すフローチャートである。位置探索Cは、第1の実施形態に係る位置探索Bと比較して、ループ3Cにおいて、第1の実施形態のステップS223に代えてステップS223Cを実行すること以外は、第1の実施形態と同様である。
【0113】
ステップS223Cにおいて、指標として、拡散ターゲット27の特性値を取得すること以外は、ステップS223の処理と同様である。すなわち、位置調整Cにおいて、EUV光生成制御部5Cは、取得した拡散ターゲット27の特性値に基づいて、第2のアクチュエータM2を制御することによって、プリパルスレーザ光31Pの照射位置を探索する。
【0114】
4.3 作用・効果
以上説明したように、本実施形態のEUV光生成装置1Cは、チャンバ2内に供給されるターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光31Pを出力するプリパルスレーザ3Pと、プリパルスレーザ光31Pが照射されたターゲット27に照射されるメインパルスレーザ光31Mを出力するメインパルスレーザ3Mと、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mの光路を結合させるコンバイナ409と、光路が結合されたプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mをターゲット27に集光する集光ユニット22Aと、集光ユニット22Aの位置を移動するステージ84と、コンバイナ409の上流に配置され、光路が結合される前のメインパルスレーザ光31Mの進行方向を変化させる第1のアクチュエータM1と、プリパルスレーザ光31Pの照射位置を調整する第2のアクチュエータM2と、メインパルスレーザ光31Mが照射されたターゲット27が放射するEUVエネルギを検出するEUV光センサ70c~70eと、ターゲット27に照射される前のメインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギを検出するレーザエネルギセンサ445と、拡散ターゲット27の特性値を取得するためのミストセンサ43と、EUV光センサ70c~70eによって検出されるEUVエネルギの時間的バラツキを示すEUVエネルギ3σが小さくなるようにステージ84を制御し、レーザエネルギセンサ445によって検出されるパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率としてのCEが大きくなるように第1のアクチュエータM1を制御し、拡散ターゲット27の特性値に基づいてターゲット27に対するプリパルスレーザ光31Pの照射位置を最適な状態に維持するように第2のアクチュエータM2を制御するEUV光生成制御部5Cと、を備える。
【0115】
第2の実施形態に係るEUV光生成装置1Cは、上記第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bの作用・効果に加え、さらに、ターゲット27に対するプリパルスレーザ光31Pの照射位置を常に最適な状態に維持することができる。この結果、光学素子の熱変形によってプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとの同軸関係が変化した場合でも、プリパルスレーザ光31Pの照射位置とメインパルスレーザ光31Mの照射位置とを最適な状態に維持することができる。
【0116】
4.4 変形例
第2の実施形態において、EUV光生成装置は種々の変形が可能である。例えば、上記レーザ照射位置制御Cにおいて、高反射ミラー346と高反射ミラー342とが共通のオフセットを有する場合は、集光ユニット22Aで補償することが可能である。
【0117】
図20は、集光ユニット22Aで補償する処理を含む照射位置調整Dのフローチャートを示す。照射位置調整Dにおいて、ステップS240を含むこと以外は、照射位置調整Cと同様である。
【0118】
ステップS240において、高反射ミラー346と高反射ミラー342との共通のオフセットに対応する集光ユニット22Aの調整を行う。オフセットによる調整量は、集光ユニット22Aの場合は、エンコーダ値によって算出する。メインパルスレーザ光31M及びプリパルスレーザ光31Pの場合は、ポインティングセンサの制御ターゲット又はアクチュエータM1、およびM2のエンコーダ値によって算出する。ポインティングセンサの制御ターゲットは、不図示のポインティングセンサによって検出されるプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31M各々の光路軸の角度変位量に係るパラメータであってもよい。
【0119】
例えば、プリパルスレーザ光31Pの照射位置調整量がX方向に+15μm、メインパルスレーザ光31Mの照射位置調整量がX方向に+20μmとなった場合、集光ユニット22AをX方向に+15μm移動させる。このとき、集光ユニット22Aの動作に同期してメインパルスレーザ光31M及びプリパルスレーザ光31Pの照射位置をX方向に-15μmオフセットする。
【0120】
集光ユニット22Aへのメインパルスレーザ光31M及びプリパルスレーザ光31Pの入射位置によって、レーザスポット強度分布が変化することが知られている。このため、オフセット補償によって、集光ユニット22Aへのメインパルスレーザ光31M及びプリパルスレーザ光31Pの入射位置変化を最小限に抑えることができる。これにより、レーザスポット強度分布の変化を抑制することができるため、EUVエネルギ3σを低くし、かつCEを高く維持することに寄与する。また、プリパルスレーザ光31Pの照射位置調整量とメインパルスレーザ光31Mの照射位置調整量の制御範囲を確保することができる。
【0121】
5.その他
図21は、EUV光生成装置1Bに接続された露光装置6Aの構成を概略的に示す。図21において、外部装置6としての露光装置6Aは、マスク照射部68とワークピース照射部69とを含む。マスク照射部68は、EUV光生成装置1Bから入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部69は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6Aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0122】
図22は、EUV光生成装置1Bに接続された検査装置6Bの構成を概略的に示す。図22において、外部装置6としての検査装置6Bは、照明光学系63と検出光学系66とを含む。EUV光生成装置1BはEUV光を検査用光源として検査装置6Bに出力する。照明光学系63は、EUV光生成装置1Bから入射したEUV光を反射して、マスクステージ64に配置されたマスク65を照射する。ここでいうマスク65はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系66は、照明されたマスク65からのEUV光を反射して検出器67の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器67はマスク65の画像を取得する。検出器67は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク65の画像により、マスク65の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6Aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0123】
なお、検査装置6Bにおいて、上述のEUV集光ミラー23は、斜入射型であってもよい。また、図21及び図22において、EUV光生成装置1Bの代わりに、EUV光生成装置1Cが用いられてもよい。
【0124】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0125】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図22