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特開2023-48901太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、多孔質半導体電極基板の製造方法、太陽電池、および太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048901
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、多孔質半導体電極基板の製造方法、太陽電池、および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20230331BHJP
   H10K 30/50 20230101ALN20230331BHJP
【FI】
H01G9/20 111C
H01G9/20 111A
H01G9/20 111B
H01G9/20 203B
H01G9/20 203C
H01G9/20 309
H01L31/04 112Z
H01L31/04 112C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158481
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 基尋
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA20
5F151CB13
5F151DA20
5F151GA02
(57)【要約】
【課題】多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制でき、かつ、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる太陽電池用酸化物半導体ペーストを提供する。
【解決手段】酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤を含む太陽電池用酸化物半導体ペーストであって、前記酸化物半導体粒子の含有割合が44質量%以上57質量%以下であり、前記水の含有割合が36質量%以上48質量%以下であり、前記レベリング剤の含有割合が0.01質量%以上0.25質量%以下である、太陽電池用酸化物半導体ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤を含む太陽電池用酸化物半導体ペーストであって、
前記酸化物半導体粒子の含有割合が44質量%以上57質量%以下であり、前記水の含有割合が36質量%以上48質量%以下であり、前記レベリング剤の含有割合が0.01質量%以上0.25質量%以下である、太陽電池用酸化物半導体ペースト。
【請求項2】
前記酸化物半導体粒子は、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物半導体粒子を含む、請求項1に記載の太陽電池用酸化物半導体ペースト。
【請求項3】
前記レベリング剤は、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の太陽電池用酸化物半導体ペースト。
【請求項4】
導電性基板と、
前記導電性基板上に形成された、請求項1~3のいずれか一項に記載の太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いてなる多孔質半導体層と、を備える、多孔質半導体電極基板。
【請求項5】
前記多孔質半導体層における前記レベリング剤の含有割合は、前記酸化物半導体粒子100質量部に対して、0.01質量部以上0.3質量部以下である、請求項4項に記載の多孔質半導体電極基板。
【請求項6】
前記多孔質半導体層の平均表面粗さは0.9μm以下である、請求項4または5に記載の多孔質半導体電極基板。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物半導体ペーストを導電性基板上に塗工して塗膜を得る工程と、
前記塗膜を50℃以上250℃以下の温度で加熱乾燥する工程と、を含む、多孔質半導体電極基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4~6のいずれか一項に記載の多孔質半導体電極基板を備える、太陽電池。
【請求項9】
請求項8に記載の太陽電池が直列および/または並列に接続されてなる、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、多孔質半導体電極基板の製造方法、太陽電池、および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。太陽電池は、電子や正孔の移動に寄与する層が2つの電極により挟まれてなる。例えば、太陽電池の一つである色素増感型太陽電池は、通常、増感色素を吸着させた半導体層を含む光電極と、電解質層と、触媒層を含む対向電極とが順に並んでなる構造を有する。光電極の半導体層は、通常、導電性基材の片面上に形成されてなる。
【0003】
光電極の半導体層の形成は、例えば、半導体層を形成するための酸化物半導体ペーストを導電性基材上に塗工して塗膜を形成し、次いで該塗膜を加熱乾燥することにより行われる。
例えば、特許文献1には、酸化物半導体ペーストとしてのチタニアゾル溶液などを基板上に塗工して塗膜を形成し、次いで加熱および加圧処理を行うことにより、半導体層としての酸化チタン薄膜を得ることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、水と、所定のアルコールを主成分とする親水性有機溶媒とからなる分散媒体中に半導体ナノ粒子が分散されてなる粘性分散液(ペースト)を、電極基板上に塗工し、次いで乾燥および加熱処理を行うことにより、半導体多孔膜を得ることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、水に所定の二酸化チタンナノ粒子を分散させてなる、所定の粘度および固形分濃度を有する粘性分散液(ペースト)を電極基板上に塗工し、次いで乾燥および加熱処理を行うことにより、半導体多孔膜を得ることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、二酸化チタンナノ粒子および水を含む、所定のpHの二酸化チタンペーストを電極基板上に塗工し、次いで乾燥および加熱処理を行うことにより、多孔質半導体膜を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-282160号公報
【特許文献2】特開2006-76855号公報
【特許文献3】国際公開第2016/006227号
【特許文献4】国際公開第2020/158676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、太陽電池は高い光電変換効率を有することが求められている。しかしながら、従来の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、塗工時の流動性やレベリング性が悪く、そのため、該酸化物半導体ペーストを用いて得られる多孔質半導体膜(以下、「多孔質半導体層」ともいう)の表面平滑性が低下(すなわち、表面粗さが増加)したり、多孔質半導体層にピンホールが発生する問題があった。そして、このような多孔質半導体層を用いた太陽電池では、高い光電変換効率を得られないという問題があった。
【0009】
このような問題に対し、本発明者は、太陽電池用酸化物半導体ペーストにレベリング剤を添加することに着想した。しかしながら、太陽電池用酸化物半導体ペーストにレベリング剤を単に添加しても、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下やピンホールの発生を必ずしも抑制することができない場合があり、また、太陽電池の光電変換効率が低下する場合があることがわかった。
【0010】
そこで、本発明は、多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制でき、かつ、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる太陽電池用酸化物半導体ペーストを提供することを目的とする。また本発明は、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる多孔質半導体電極基板およびその製造方法、該多孔質半導体電極基板を備える太陽電池、ならびに太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、酸化物半導体粒子、水、および水溶性溶剤を含む酸化物半導体ペーストにレベリング剤を含ませると共に、酸化物半導体ペーストにおける酸化物半導体粒子の含有割合、水の含有割合、およびレベリング剤の含有割合をそれぞれ所定の範囲内に制御することにより、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤を含む太陽電池用酸化物半導体ペーストであって、前記酸化物半導体粒子の含有割合が44質量%以上57質量%以下であり、前記水の含有割合が36質量%以上48質量%以下であり、前記レベリング剤の含有割合が0.01質量%以上0.25質量%以下であることを特徴とする。このように、レベリング剤を含み、かつ、酸化物半導体粒子の含有割合、水の含有割合、およびレベリング剤の含有割合がそれぞれ所定の範囲内である太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いれば、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、前記酸化物半導体粒子が、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物半導体粒子を含むことが好ましい。このように、酸化物半導体粒子が二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物半導体粒子を含めば、太陽電池の光電変換効率を更に向上させることができる。
【0014】
また、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、前記レベリング剤が、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含むことが好ましい。このように、レベリング剤がフッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含めば、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を更に向上させることができる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の多孔質半導体電極基板は、導電性基板と、前記導電性基板上に形成された、上述したいずれかの太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いてなる多孔質半導体層とを備えることを特徴とする。このように、上述したいずれかの太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて形成された多孔質半導体層を備える多孔質半導体電極基板は、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる。
【0016】
また、本発明の多孔質半導体電極基板は、前記多孔質半導体層における前記レベリング剤の含有割合が、前記酸化物半導体粒子100質量部に対して、0.01質量部以上0.3質量部以下であることが好ましい。このように、多孔質半導体層におけるレベリング剤の含有割合が上記所定の範囲内であれば、表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を更に向上させることができる。
【0017】
また、本発明の多孔質半導体電極基板は、前記多孔質半導体層の平均表面粗さが0.9μm以下であることが好ましい。このように、多孔質半導体層の平均表面粗さが0.9μm以下であれば、該多孔質半導体電極基板を備える太陽電池の光電変換効率を一層向上させることができる。
なお、本発明において、多孔質半導体層の平均表面粗さは実施例に記載された方法により測定することができる。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の多孔質半導体電極基板の製造方法は、上述したいずれかの太陽電池用酸化物半導体ペーストを導電性基板上に塗工して塗膜を得る工程と、前記塗膜を50℃以上250℃以下の温度で加熱乾燥する工程とを含むことを特徴とする。このように、塗膜の加熱乾燥温度が上記範囲内であれば、導電性基板が熱により劣化するのを抑制し得る。
【0019】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池は、上述したいずれかの多孔質半導体電極基板を備えることを特徴とする。このように、本発明の太陽電池は本発明の多孔質半導体電極基板を備えるため、高い光電変換効率を有する。
【0020】
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池モジュールは、上述した太陽電池が直列および/または並列に接続されてなることを特徴とする。このように、本発明の太陽電池モジュールは本発明の太陽電池を備えるため、高い光電変換効率を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制でき、かつ、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる太陽電池用酸化物半導体ペーストを提供することができる。
また、本発明によれば、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる多孔質半導体電極基板およびその製造方法、該多孔質半導体電極基板を備える太陽電池、ならびに太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、例えば、本発明の多孔質半導体電極基板を製造する際に用いることができる。本発明の多孔質半導体電極基板は、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて形成された多孔質半導体層を備えている。本発明の多孔質半導体電極基板は、例えば、本発明の多孔質半導体電極基板の製造方法により製造することができる。本発明の多孔質半導体電極基板は、例えば、本発明の太陽電池を製造する際に用いることができる。本発明の太陽電池は、本発明の多孔質半導体電極基板を備えている。本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池を備えている。
【0023】
(太陽電池用酸化物半導体ペースト)
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤を含む太陽電池用酸化物半導体ペーストであって、酸化物半導体粒子の含有割合、水の含有割合、およびレベリング剤の含有割合がそれぞれ所定の範囲内であることを特徴とする。これにより、この太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制しつつ、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる。
なお、本発明において、「ペースト」とは、固体粒子が分散媒体である水などの液体中に分散してなる分散系であって、流動性および粘性を有するものをいう。本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストにおいては、固体粒子である酸化物半導体粒子が固形分として分散媒体としての水などに分散されている。
また、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、任意で、上述した酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0024】
<酸化物半導体粒子>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる酸化物半導体粒子は、太陽電池が備える多孔質半導体電極基板の多孔質半導体層において、その伝導帯に電子が注入される半導体として機能する。
そして、本発明において、太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる酸化物半導体粒子の含有割合は、太陽電池用酸化物半導体ペーストの重量を100質量%としたとき、44質量%以上57質量%以下であることを必要とする。酸化物半導体粒子の含有割合が44質量%未満であると、得られる多孔質半導体層において発電に有効な体積を充分確保することができず、光電変換効率が低下する。また、酸化物半導体粒子の含有割合が57質量%を超えると、太陽電池用酸化物半導体ペーストの粘性が過度に上昇して塗工性が悪化するため、レベリング剤を用いた場合であっても、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制することができず、光電変換効率が低下する。
得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を一層向上させる観点からは、酸化物半導体粒子の含有割合は45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、また、55質量%以下であることが好ましく、53質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる酸化物半導体粒子としては、特に限定されないが、金属酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物の金属元素としては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマスなどが挙げられる。これらの金属酸化物は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、太陽電池に一層高い光電変換率を発揮させる観点から、酸化物半導体粒子の材料としては、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化スズ(SnO)がより好ましく、二酸化チタン(TiO)が特に好ましい。
【0026】
したがって、酸化物半導体粒子は、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を主成分として含むことがより好ましく、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種からなることが更に好ましく、二酸化チタン粒子からなることが特に好ましい。
【0027】
ここで、「主成分」とは、含有割合が50質量%以上であることを指す。したがって、酸化物半導体粒子が、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を主成分として含む場合、その含有割合は、酸化物半導体粒子の合計質量を100質量%としたとき、50質量%以上である。そして、かかる場合、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ニオブ粒子、および酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種の含有割合は、酸化物半導体粒子の合計質量を100質量%としたとき、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0028】
<<その他の性状など>>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに配合する酸化物半導体の一次粒子としての平均粒径は、1nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上400nm以下であることがより好ましい。ペースト中の粒子の粒径は、一種単独または二種以上の複数を組み合わせたものでもよい。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、特記しない限り、超音波減衰分光法で測定された質量基準での粒度分布において小径側から計算した累積質量が50%となる粒径(D50)を表す。
【0029】
また、酸化物半導体粒子の粒子形状は、特に限定されることはなく、例えば、無定形、球体、扁平、多面体、コアシェル構造、中空形状、棒状(ファイバー状、ナノチューブ状)などの形状であり得る。
【0030】
さらに、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストの製造に用いる酸化物半導体粒子の状態は特に限定されることはなく、例えば、粉末状態である酸化物半導体粒子を用いてもよいし、水などの分散媒体中に酸化物半導体粒子が分散されてなるゾル(分散液)の状態のものを使用してもよい。
【0031】
上述した酸化物半導体粒子の平均粒径、粒子形状および状態などは、酸化物半導体粒子の製造方法によって異なり得る。
【0032】
<<酸化物半導体粒子の製造方法>>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる酸化物半導体粒子は、特に限定されることなく、公知の方法を用いて製造することができる。酸化物半導体粒子の製造方法としては、例えば「ゾル-ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)に記載されているゾル-ゲル法や、金属塩化物を鉱酸塩中で高温加水分解して酸化物微粒子を作製する方法や、金属化合物を気相中において高温で熱分解して超微粒子とする噴霧熱分解法などが挙げられる。これらの方法によって作られる二酸化チタン等の半導体の超微粒子およびナノ粒子については、柳田博明監修、微粒子工学大系第II巻、応用技術、フジテクノシステム(2002年)に解説されている。
【0033】
<水>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる水は、酸化物半導体粒子などの成分を分散させる分散媒体として機能するものである。本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストの水の含有割合は、太陽電池用酸化物半導体ペーストの重量を100質量%としたとき、36質量%以上48質量%以下であることを必要とする。水の含有割合が36質量%未満であると、太陽電池用酸化物半導体ペーストの粘性が過度に上昇して塗工性が悪化するため、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制することができず、光電変換効率が低下する。また、水の含有割合が48質量%を超えると、酸化物半導体粒子の含有割合が少なすぎるため、得られる多孔質半導体層において発電に有効な体積を充分確保することができず、光電変換効率が低下すると共に、乾燥に時間が掛かるため生産性も低下する。
得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池の光電変換効率を一層向上させる観点からは、水の含有割合は37質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、また、47質量%以下であることが好ましく、46質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
なお、太陽電池用酸化物半導体ペーストの製造の際に、水中に酸化物半導体粒子が分散してなる水性ゾルを使用する場合、当該水性ゾルに含まれる水を太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる水としてそのまま用いてもよい。
【0035】
<水溶性溶剤>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれる水溶性溶剤は、ペーストに流動性を付与して塗工性を向上させる目的として含まれるものである。
【0036】
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストにおける水溶性溶剤の含有割合は、特に限定されないが、ペーストの塗工性を向上させる観点からは、太陽電池用酸化物半導体ペーストの重量を100質量%としたとき、5.5質量%以上であることが好ましく、6.5質量%以上であることがより好ましく、また、8.5質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
水溶性溶剤としては、特に限定されず、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤などを用いることができる。これらの水溶性溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、水溶性溶剤としては、アルコール系溶剤とエーテル系溶剤との混合溶剤を用いることが好ましい。
【0038】
アルコール系溶剤としては、ジアセトンアルコールなどのケトアルコール類;および、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、tert-ペンチルアルコール、シクロヘキサノール、4-tert-ブチルヘキサノール、α-テルピネオールなどの炭素原子数が2~10の直鎖状または分岐状のアルコール類が挙げられる。中でも、アルコール系溶剤としてはジアセトンアルコールを用いることが好ましい。
【0039】
エーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどが挙げられる。中でも、エーテル系溶剤としてはエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルを用いることが好ましい。
【0040】
<レベリング剤>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに含まれるレベリング剤は、ペーストを塗工した際の塗膜のレベリング性を向上させる目的として含まれるものである。ここで、本発明において使用するレベリング剤は、分子量が10000以下のものである。
【0041】
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストにおけるレベリング剤の含有割合は、太陽電池用酸化物半導体ペーストの重量を100質量%としたとき、0.01質量%以上0.25質量%以下であることを必要とする。レベリング剤の含有割合が0.01質量%未満であると、得られる多孔質半導体層における表面粗さの増加およびピンホールの発生を抑制できない。また、レベリング剤の含有割合が0.25質量%を超えると、得られる多孔質半導体層の導電性が悪化し、太陽電池の光電変換効率が低下する。多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池に一層高い光電変換効率を発揮させる観点からは、レベリング剤の含有割合は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、また、0.22質量%以下であることが好ましく、0.20質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
レベリング剤としては、特に限定されないが、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの各種界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池に一層高い光電変換効率を発揮させる観点からは、レベリング剤は、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を主成分として含むことがより好ましく、フッ素系界面活性剤および/またはシリコーン系界面活性剤からなることが特に好ましい。
【0043】
ここで、「主成分」とは、含有割合が50質量%以上であることを指す。したがって、レベリング剤が、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を主成分として含む場合、その含有割合は、レベリング剤の重量を100質量%としたとき、50質量%以上である。そして、かかる場合、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の含有割合は、レベリング剤の重量を100質量%としたとき、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0044】
<<フッ素系界面活性剤>>
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されず、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基および/またはフルオロアルキレン基を有する化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、主鎖にパーフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有硫酸エステル塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸塩などのアニオン性フッ素系界面活性剤;パーフルオロアルキル基含有アミン塩、パーフルオロアルキル基含有4級アンモニウム塩などのカチオン性フッ素系界面活性剤;パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマー、パーフルオロアルキル基含有スルホンアミドポリエチレングリコール付加物などのノニオン性フッ素系界面活性剤;パーフルオロアルキル基含有カルボキシルベタイン、パーフルオロアルキル基含有アミノカルボン酸塩などの両性フッ素系界面活性剤が挙げられる。
パーフルオロアルキル基の炭素数は、6個以上20個以下であることが好ましく、また、パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部は水素原子で置換されていてもよい。
これらのフッ素系界面活性剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池に一層高い光電変換効率を発揮させる観点からは、アニオン性フッ素系界面活性剤が好ましい。
なお、フッ素系界面活性剤として例示したものは、後述するアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、および両性界面活性剤には含まれないものとする。
【0045】
<<シリコーン系界面活性剤>>
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されず、分子内にシロキサン結合を有する界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、未変性ポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、ポリエステル変性ポリオルガノシロキサンなどのポリシロキサン化合物が挙げられる。これらのシリコーン系界面活性剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、得られる多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池に一層高い光電変換効率を発揮させる観点からは、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0046】
<<アニオン系界面活性剤>>
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、およびリン酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤を用いることができる。
【0047】
<<カチオン系界面活性剤>>
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型、およびピリジニウム塩型のカチオン系界面活性剤を用いることができる。
【0048】
<<ノニオン系界面活性剤>>
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、エーテル型、エステル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルコール型のノニオン系界面活性剤を用いることができる。
【0049】
<<両性界面活性剤>>
両性界面活性剤としては、特に限定されず、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、およびアミンオキシド型の両性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
<その他の成分>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストに任意に含まれるその他の成分としては、太陽電池用酸化物半導体ペーストのpHを調節するための酸、および、ペーストの粘度を高める目的または成膜時に導電性基板との密着性を高める目的で通常添加されるラテックスや樹脂などのバインダー材料などが挙げられる。
酸の具体例としては、本発明の所望の効果が得られる限り、特に限定されず、例えば、塩酸などが挙げられる。
太陽電池用酸化物半導体ペースト中の酸の含有割合は、太陽電池用酸化物半導体ペーストのpHが所望の範囲内に収まるように、適宜調整すればよい。なお、太陽電池用酸化物半導体ペーストのpHは、6以下とすることが好ましく、3以上5以下とすることがより好ましい。
【0051】
バインダー材料としては、セルロース系化合物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸などを用いることができる。
なお、高い空隙率の多孔質半導体層ができ、かつ多孔質半導体層の膜厚の制御が好ましく行なえるという点において、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系化合物が好ましく用いられる。
しかし、本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストはバインダー材料を実質的に含まないことが好ましい。バインダー材料を実質的に含まなければ、太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて低温下(例えば200℃以下)で多孔質半導体層を形成した場合であっても、形成される多孔質半導体層中にはバインダー材料が実質的に残留しないため、多孔質半導体層の導電性を十分に高く確保することができる。
なお、本発明において、「バインダー材料を実質的に含まない」とは、バインダー材料の含有量が固形分換算で1質量%以下であることを指す。
バインダー材料の含有量は、固形分換算で0.5質量%以下であることが好ましく、0質量%であることがより好ましい。
【0052】
<太陽電池用酸化物半導体ペーストの製造方法>
本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストは、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、ホモジナイザー、超音波分散装置、プラネタリーミキサー、高速ディスパー、自転・公転併用式のミキシングコンディショナーなどの公知の分散装置を用いて、水を含む分散媒体中に上述した成分を分散させることにより調製できる。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。
【0053】
(多孔質半導体電極基板)
本発明の多孔質半導体電極基板は、1)導電性基板と、2)該導電性基板上に形成された、上述した本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いてなる多孔質半導体層とを備える。そして、本発明の多孔質半導体電極基板では、多孔質半導体層が上述した本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて形成されているため、多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生が抑制されている共に、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる。
【0054】
<導電性基板>
導電性基板としては、例えば、チタン、ステンレス等の金属材料からなる金属基板などのそれ自身が導電性を有する基板;無機材料(例えば、ガラス)、有機材料(例えば、プラスチック)等の材料からなる基材(支持体)上に導電層を形成してなる基板;を用いることができる。なお、導電性基板の材料は、多孔質半導体電極基板の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質半導体電極基板に光透過性が求められる場合には透明性を有する材料を用いればよい。
【0055】
そして、フレキシブル性に優れた太陽電池を製造する観点から、導電性基板としては、可撓性プラスチックからなる支持体を有する導電性基板を用いることが好ましく、透明プラスチックフィルムを支持体として有する導電性基板(透明導電性プラスチックフィルム)を用いることが特に好ましい。
【0056】
透明導電性プラスチックフィルムは、支持体としての透明プラスチックフィルムと、透明プラスチックフィルム上に形成された導電層とによって構成される。支持体としての透明プラスチックフィルムは、無着色で、透明性、耐熱性、耐薬品性およびガス遮断性に優れ、且つ、低コストの材料からなることが好ましい。このような観点から、支持体としての透明プラスチックフィルムの好ましい材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などが用いられる。中でも、耐薬品性やコスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることが好ましい。
【0057】
透明導電性プラスチックフィルムの導電層には、導電材料として、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム等の金属;カーボンナノチューブ等の炭素系材料;インジウム-スズ複合酸化物、酸化スズ等の導電性金属酸化物;などを用いることができる。中でも、光学的透明性の観点から、導電性金属酸化物を用いることが好ましく、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)および酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。なお、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)の透過率は、光電変換効率およびディスプレイなどの視認性の観点から、そのピークが500~600nmであることが好ましい。
【0058】
導電層の表面抵抗値は特に限定されないが、通常150Ω/□以下であり、50Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが更に好ましい。
【0059】
この導電層上には集電のための補助リード線をパターニングなどにより配置させることができる。このような補助リード線は、通常、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケルなどの低抵抗の金属材料によって形成される。このような補助リード線がパターニングされた導電層においては、表面抵抗値は補助リード線を含めた表面の抵抗値として測定され、その値は好ましくは30Ω/□以下、さらに好ましくは20Ω/□以下である。
【0060】
<多孔質半導体層>
導電性基板上に形成される多孔質半導体層は、上述した本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いて形成されるものである。具体的には、多孔質半導体層は、導電性基板上に塗工された本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを加熱乾燥して、水および水溶性溶剤などの液体成分を除去して得られるものである。したがって、多孔質半導体層は、上述した酸化物半導体粒子およびレベリング剤を少なくとも含み、任意で、その他の成分を含む。そして、上述したとおり、多孔質半導体層では、表面平滑性の低下およびピンホールの発生が抑制されている。
【0061】
ここで、太陽電池の光電変換効率を一層向上させる観点から、多孔質半導体層の平均表面粗さは、0.9μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.6μm以下であることが更に好ましい。
【0062】
また、多孔質半導体層の厚さは、通常0.1μm以上50μm以下であり、1μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下であることがより好ましい。多孔質半導体層の厚さが上記下限値以上であれば、太陽電池の発電量を十分に高く確保することができる。一方、多孔質半導体層の厚みが上記上限以下であれば、多孔質半導体層中の電子の拡散性を十分に高く確保することができる。
なお、本発明において、多孔質半導体層の厚さは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0063】
また、表面平滑性の低下およびピンホールの発生を一層抑制しつつ、太陽電池に一層高い光電変換効率を発揮させる観点からは、多孔質半導体層におけるレベリング剤の含有割合は、酸化物半導体粒子100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、また、0.3質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下であることがより好ましい。
【0064】
本発明の多孔質半導体電極基板は、例えば、多孔質半導体層に色素を吸着させて色素増感型太陽電池の色素増感電極(光電極)として用いることができる。また、本発明の多孔質半導体電極基板は、色素に代えて、多孔質半導体層にペロブスカイト化合物などの光吸収材を吸着させて光電極として用いることもできる。このような色素または光吸収材としては、例えば、国際公開第2016/006227号に記載されたものを用いることができる。さらに、本発明の多孔質半導体電極基板は、多孔質半導体層上にペロブスカイト化合物層などの部材を順次設けてペロブスカイト型太陽電池として用いることもできる。ペロブスカイト化合物層などの部材は、特に限定されず、例えば、特開2016-143708号に記載されたものを用いることができる。
【0065】
(多孔質半導体電極基板の製造方法)
本発明の多孔質半導体電極基板の製造方法は、1)上述した本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを導電性基板上に塗工して塗膜を得る工程(塗工工程)と、2)得られた塗膜を50℃以上250℃以下の温度で加熱乾燥する工程(加熱乾燥工程)とを含む。以下、各工程について説明する。
【0066】
<塗工工程>
塗工工程では、上述した本発明の太陽電池用酸化物半導体ペーストを導電性基板上に塗工して塗膜を得る。ここで、導電性基板上に太陽電池用酸化物半導体ペーストを塗工する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、メタルマスク印刷法、グラビアオフセット印刷法、またはインクジェット印刷法を用いることができる。中でも、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
導電性基板としては、上述した「多孔質半導体電極基板」の項で説明したものを用いることができる。
なお、導電性基板として、プラスチックなどの材料からなる基材(支持体)上に導電層を形成してなる基板(例えば、ITO/PETフィルムまたはITO/PENフィルムなどの透明導電性プラスチックフィルム)を用いる場合、当該導電性基板の導電層側の面上に太陽電池用酸化物半導体ペーストを塗工するものとする。
【0067】
<加熱乾燥工程>
加熱乾燥工程では、導電性基板上に形成した太陽電池用酸化物半導体ペーストの塗膜を50℃以上250℃以下の温度で加熱し、塗膜を乾燥させる。
上述した、透明導電性プラスチックフィルムなどのプラスチックからなる支持体を有する導電性基板を用いた場合、効率良く乾燥を行ないつつ、支持体であるプラスチックの加熱による劣化を抑制する観点からは、加熱乾燥における加熱温度は、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、また、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。また加熱温度は、複数の温度領域を用いて多段階になっていても構わない。
塗膜の加熱乾燥は、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線(IR)乾燥炉などを用いて行うことができる。
また、加熱乾燥時間は、特に限定されず、加熱乾燥は、加熱乾燥温度に応じて、多孔質半導体の乾燥膜(層)が得られるのに十分な時間行えばよい。加熱乾燥時間は、通常、1分間以上120分間以下、好ましくは、5分間以上60分間以下である。乾燥時の雰囲気は、大気、窒素、アルゴンなど不活性雰囲気など特に限定されず、適時選択すればよい。
【0068】
以上の工程を経て、本発明の多孔質半導体電極基板が得られる。
【0069】
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、上述した本発明の多孔質半導体電極基板を備える。そのため、本発明の太陽電池は高い光電変換効率を発揮する。本発明の太陽電池は、限定されないが、例えば、色素増感型太陽電池またはペロブスカイト型太陽電池であり、色素増感型太陽電池であることが好ましい。
以下、本発明の太陽電池を、色素増感型太陽電池を例示して説明する。
【0070】
本発明の太陽電池の一例である色素増感型太陽電池は、例えば、上述した本発明の多孔質半導体電極基板の多孔質半導体層に色素を吸着させてなる色素増感電極(光電極)と;対向電極と;色素増感電極と対向電極との間に介在配置された電解質層とを備える。
【0071】
多孔質半導体電極基板の多孔質半導体層に吸着させる色素や吸着方法としては、特に限定されることはなく、例えば、国際公開第2016/006227号に記載されたものを用いることができる。
【0072】
また、対向電極としては、例えば、ガラス、チタン箔など金属箔、プラスチック等の有機材料からなる基材(支持体)上に導電層と触媒層を形成してなる基板を用いることができる。対向電極が有する導電層の導電材料としては、白金、金、銀、銅、チタン、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等の金属;カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素系材料;インジウム-スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性金属酸化物;などを用いることができる。中でも、耐腐食性の観点から、白金、チタン、ITO、および炭素系材料を用いることが好ましい。触媒層としては、金、ロジウム、ルテニウム、白金など貴金属粒子など、これらの元素の単一元素やコアシェル構造を含む粒子も含む文実樹の塗布物、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子、活性炭素、カーボンファイバー、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどがあり、これらを一種単独、二種以上組み合わせて用いてもよい。導電層の導電率は、通常30Ω/□以下、好ましくは、20Ω/□以下である。触媒層の形成法は、特に限定されないが、塗布、スパッタ、噴霧など公知の方法で適時選択すればよい。また触媒層の厚みは、0.001μm~100μmなど、所望の触媒や機械強度など性能が得られる厚みを設計すればよい。
【0073】
さらに、色素増感電極と対向電極との間に介在配置させる電解質層としては、特に限定されず、例えば、国際公開第2016/006227号に記載された水系電解液、有機溶媒電解液、イオン性液体電解液(溶融塩電解液)等の電解液;P型半導体;などを用いることができる。
その他、封止材、集電電極、取り出し電極、保護層、バリアフィルムなどのバリア層、反射防止層などは公知のものを用いればよい。例えば、国際公開第2007/046499号、国際公開第2016/006227号などに記載されたものを用いることができる。
【0074】
<太陽電池の製造方法>
本発明の太陽電池の一例である色素増感型太陽電池は、上述した本発明の多孔質半導体電極基板を用いる限り、特に限定されず、既知の方法により製造することができる。例えば、国際公開第2007/046499号に記載のように、上記色素増感型太陽電池は、上述した色素増感電極(光電極)を用いて製造することができる。より具体的には、上述した光電極の、色素を吸着させた多孔質半導体層側の面と、対向電極の導電層側の面とを向き合わせた状態で、光電極と対向電極とをスペーサーを介して重ね合わせて、さらに、光電極と対向電極との間に電解質層としての電解液を注入することで、色素増感型太陽電池を製造することができる。
【0075】
(太陽電池モジュール)
本発明に係る太陽電池モジュールは、上述した本発明の太陽電池が直列および/または並列に接続されてなる。モジュール構造としては、Z型、W型、並列型、集電配線型、モノリシック型などの公知の構造がある。
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池を備えているため、高い光電変換効率を発揮する。
【0076】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、本発明の太陽電池を平面状または曲面上に配列し、各電池間に非導電性の隔壁を設けるとともに、各電池の電極(例えば、色素増感型太陽電池の光電極や対向電極)を導電性の部材を用いて電気的に接続することで得ることができる。
太陽電池モジュールの製造に使用する太陽電池の数は特に限定されず、目的の電圧に応じて適宜決定することができる。
【実施例0077】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における各種の測定および評価については、以下の方法に従って行なった。
【0078】
<多孔質半導体層の厚さおよび平均表面粗さの測定>
触針式形状測定装置(Bruker製 Dektak XT、プローブ先端直径:12.5μm)を用いて、作製した多孔質半導体層の厚さおよび平均表面粗さ(Ra)を測定した。
平均表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準じた規格により算出される値である。
【0079】
<多孔質半導体層のピンホールの観察>
各実施例および比較例において、レーザ顕微鏡(キーエンス製VHX-2000)を用いて、作製した多孔質半導体層についてピンホールの観察を行った。具体的には、作製した多孔質半導体電極基板(導電性基板上に多孔質半導体層が形成されてなるもの)を測定用透明ガラスステージ上にセットし、対物レンズx50倍にて下面側からの透過光の照射し、観察視野内におけるピンホールの存在の有無を確認した。
【0080】
<多孔質半導体層の波長530nmにおける光線透過率の測定>
各実施例および比較例において、多孔質半導体電極基板の作製に用いた導電性基板を紫外可視分光光度計(島津製作所製「UV1800」)にセットし、200~1100nmの範囲でベースライン測定を行った。次いで、作製した多孔質半導体電極基板(導電性基板上に多孔質半導体層が形成されてなるもの)を上記の紫外可視光分光光度計にセットし、分光光度測定を行い、多孔質半導体層の波長530nmにおける光線透過率の値を得た。光線透過率が低いほど、光を効率的に利用することができることを意味する。
【0081】
<太陽電池の電池性能>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mW/cm(JIS C8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行なった。
1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.05秒後から0.15秒後までの値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまで変化させる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流とした。
上記の電流電圧特性の測定結果より、作製した色素増感型太陽電池の短絡電流(Isc[mA])、電流密度(Jsc[mA cm-2])、解放電圧(Voc[V])、曲線因子(FF)、変換効率(η[%])、最大電力(Pmax[mW])、最大出力動作電流(Imax[mA])、最大出力動作電圧(Vmax[V])、および直列抵抗(Rs[Ω])を測定し、電池性能の評価を行なった。
【0082】
(実施例1)
<太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製>
二酸化チタン粒子の粉末45.0質量部と、水47.7質量部とを初めに混合した。さらに、水溶性溶剤としてのエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(EGTBE)5.2質量部およびジアセトンアルコール(DAA)2.0質量部を添加して、混合した。最後にレベリング剤としてのフッ素系界面活性剤(AGCセイケミカル製「サーフロン S-211」)0.1質量部を添加して混合物を得た。この混合物をプラネタリーミキサーとディスパーからなる2軸ミキサーを用いて1時間分散処理して、太陽電池用酸化物半導体ペーストとしての二酸化チタンペーストを調製した。
【0083】
<多孔質半導体電極基板の作製>
PEN製の基材上にITOからなる導電層が形成されてなる透明導電性プラスチックフィルム(厚み:125μm、導電層側の表面抵抗値:16Ω/□)を準備した。
透明導電性プラスチックフィルムを2cm×10cmに切断して得た導電性基板の導電層側の面に、上記二酸化チタンペーストと200メッシュのスクリーンとを用いたスクリーン印刷法により、直径7mmの円が1.5cm間隔で6個配列されたパターンを印刷した。その後、加熱乾燥(155℃×60分間)を行うことで、膜厚6.0μmの多孔質半導体層を形成した。これにより、導電性基板の導電層側の面上に多孔質半導体層が形成されてなる多孔質半導体電極基板を得た。
なお、多孔質半導体電極基板上に形成された多孔質半導体層を用いて、厚さ、平均表面粗さ(Ra)、ピンホールの有無、および光線透過率の測定または評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
<色素増感型太陽電池の作製>
Ruビピリジル錯体色素としてのビスイソシアネートビスビピリジルRu錯体のテトラブチルアンモニウム塩(N719)を、アセトニトリル:tert-ブタノール(1:1(体積比))の混合溶媒に濃度3×10-4モル/リットルとなるように溶解して得た増感色素溶液に、上記多孔質半導体電極基板を浸漬して、撹拌下40℃で60分放置した。これにより、多孔質半導体電極基板の多孔質半導体層に上記色素を吸着させて、色素増感電極(光電極)を作製した。
<電解液の調製>
ヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.1mol/L、t-ブチルピリジン0.5mol/L、および1,2-ジメチル-3プロピルイミダゾリウムヨージド0.6mol/Lとなるように、溶媒としてのアセトニトリルに溶解して、電解液を得た。
【0085】
PEN製の基材上にITO膜が形成されてなる透明導電性プラスチックフィルム(厚み:200μm、ITO膜側の表面抵抗値:15Ω/□)のITO膜側の面を、スパッタリング法により厚さ100nmの白金膜で被覆することで、ITO膜および白金膜の2層からなる導電層を有する導電性フィルム(表面抵抗:0.8Ω/□)を対向電極として作製した。
【0086】
上記光電極を、直径7mmの円形の多孔質半導体層が中心となるように、2cm×1.5cmに切断した。また、上記対向電極を2cm×1.5cmに切断した後、電解液の注液口(直径1mm)をあけた。そして、光電極の色素を吸着させた多孔質半導体層側の面と、対向電極の導電層側の面とを向き合わせた状態で、厚み25μmのアイオノマー樹脂フィルム(三井デュポンポリケミカル製、ハイミラン1652)をスペーサーとして介在させて、光電極と対向電極とを重ね合わせ、110℃で5分間硬化処理を行なった。さらに、注液口より毛管効果によって上記電解液を注入した。最後に、UV硬化樹脂を塗布したカバーガラスを注液口に重ね、UV光をスポット照射することで、注液口をふさいだ。このような方法によりふさぐことで、色素増感型太陽電池を作製した。
そして、作製した色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す
【0087】
(実施例2)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、二酸化チタン粒子の粉末の添加量を50.0質量部とし、かつ、水の添加量を42.7質量部とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、二酸化チタン粒子の粉末の添加量を55.0質量部とし、かつ水の添加量を37.7質量部とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を47.6質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.2質量部とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5)
実施例2の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を42.6質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.2質量部とした以外は、実施例2と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例6)
実施例3の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を37.6質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.2質量部とした以外は、実施例3と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例7)
実施例2の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、レベリング剤として、フッ素系界面活性剤0.1質量部に代えてシリコーン系界面活性剤(楠本化成社製「ディスパロン「LS-480」、主成分100%)0.1質量部を添加した以外は、実施例2と同様にして太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例8)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を47.78質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.02質量部とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例9)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を47.55質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.25質量部とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例10)
実施例1の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、二酸化チタン粒子の粉末45.0質量部に代えて酸化亜鉛粉末52.8質量部を添加し、かつ、水の添加量を41.0質量部、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(EGTBE)の添加量を4.7質量部とし、ジアセトンアルコール(DAA)の添加量を1.4質量部とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1)
実施例2の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を42.8質量部とし、かつ、レベリング剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例2)
実施例2の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、水の添加量を42.3質量部とし、かつ、レベリング剤の添加量を0.52質量部とした以外は、実施例2と同様にして太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例3)
実施例4の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、二酸化チタン粒子の粉末の添加量を58.0質量部とし、かつ水の添加量を34.6質量部とした以外は、実施例4と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例4)
実施例4の太陽電池用酸化物半導体ペーストの調製において、二酸化チタン粒子の粉末の添加量を43.0質量部とし、かつ、水の添加量を49.6質量部とした以外は、実施例4と同様にして、太陽電池用酸化物半導体ペースト、多孔質半導体電極基板、および色素増感型太陽電池を調製または作製し、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の結果から、酸化物半導体粒子、水、水溶性溶剤、およびレベリング剤を含む太陽電池用酸化物半導体ペーストであって、酸化物半導体粒子の含有割合、水の含有割合、およびレベリング剤の含有割合がそれぞれ所定の範囲内に制御されたものを用いた実施例1~10では、得られる多孔質半導体層の表面粗さの増加やピンホールの発生を抑制しつつ、色素増感型太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができることがわかる。
これに対して、レベリング剤を含まない太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いた比較例1では、多孔質半導体層の表面粗さの増加やピンホールの発生が観察されると共に、色素増感型太陽電池の光電変換効率が悪化することがわかる。また、レベリング剤の含有割合が0.25質量%超である太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いた比較例2では、多孔質半導体層の表面粗さの増加やピンホールの発生は観察されなかったが、色素増感型太陽電池の光電変換効率が悪化することがわかる。また、酸化物半導体粒子の含有割合および水の含有割合がそれぞれ所定の範囲外である太陽電池用酸化物半導体ペーストを用いた比較例3および4では、多孔質半導体層にピンホールが発生するとともに、色素増感型太陽電池の光電変換効率が悪化することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、多孔質半導体層における表面平滑性の低下およびピンホールの発生を抑制でき、かつ、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる太陽電池用酸化物半導体ペーストを提供することができる。
また、本発明によれば、太陽電池に高い光電変換効率を発揮させることができる多孔質半導体電極基板およびその製造方法、該多孔質半導体電極基板を備える太陽電池、ならびに太陽電池モジュールを提供することができる。