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特開2023-48992感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよびプリント配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048992
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよびプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20230331BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20230331BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20230331BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230331BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/027 502
G03F7/031
C08G59/17
C08F299/06
H05K1/03 610L
H05K1/03 610S
H05K1/03 610J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133407
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021157650
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC34
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC37
2H225AC54
2H225AC58
2H225AC63
2H225AC72
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD15
2H225AE12P
2H225AN39P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J036AA02
4J036AA05
4J036AD07
4J036AD11
4J036BA04
4J036CA21
4J036CA25
4J036EA09
4J036FA10
4J036HA02
4J036JA05
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA09
4J036KA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB032
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB221
4J127BB222
4J127BB281
4J127BB301
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD041
4J127BD061
4J127BD201
4J127BD412
4J127BD472
4J127BE051
4J127BE05X
4J127BE311
4J127BE31X
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BE411
4J127BE41Z
4J127BF301
4J127BF30Y
4J127BF361
4J127BF36Z
4J127BF451
4J127BF45Z
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG04Y
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127BG142
4J127BG14Y
4J127BG161
4J127BG16Z
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127BG181
4J127BG18Z
4J127CA01
4J127DA52
4J127FA17
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】柔軟性を高めつつ、一方で高湿環境および酸への曝露によっても基材からの剥離が生じにくい樹脂硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)アクリル当量が500g/eq以上10000g/eq以下である、ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)アクリル当量が500g/eq以上10000g/eq以下である、ウレタン(メタ)アクリレートと、
(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)溶剤と、
を含む、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表される樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。)
【化4】
(式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。)
【請求項3】
前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1000以上40000以下の樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1000以上100000以下の化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)光重合開始剤は、アシルオキシム系光重合開始剤である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)光重合開始剤は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるアシルオキシム系光重合開始剤である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の絶縁膜として用いてなる半導体パッケージ。
【請求項9】
請求項7に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の絶縁膜として用いてなるプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよびプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の小型化および薄型化に伴い、プリント配線の多層化が進んでいる。多層のプリント配線は、たとえば、ガラスやシリコンなどの無機基板上に、金属配線による回路が形成された導体層と樹脂製の絶縁層とを交互に積層することにより形成される。このような多層のプリント配線の製造方法として、いわゆるビルドアップ法が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-304931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの知見によると、特許文献1に記載のような、金属製の導体層と樹脂(樹脂硬化膜)製の絶縁層とを積層した多層のプリント配線には、温度変化により、絶縁層の絶縁性が低下してしまうことがあった。これは、導体層または基板と、絶縁層と、の間の熱膨張係数の差が大きく、温度変化時のこれらの体積膨張率が異なることにより生じた応力(歪み)により、絶縁層に微細クラックが発生するためだと考えられる。これに対し、架橋密度を低くして絶縁層に柔軟性を付与すれば、上記温度変化による絶縁性の低下は抑制できると考えられる。
【0005】
しかし、柔軟性の付与による熱耐性の向上を図ろうとすると、高湿環境下で基板と絶縁層との間の密着性が低下し、絶縁層が剥離してしまうことがあった。また、絶縁膜の耐酸性も低下し、エッチング時などに強酸性溶液に曝露されたときに、絶縁層が剥離してしまうことがあった。
【0006】
なお、同様の問題は、無機基板上に樹脂性の絶縁層を形成する際に広く見られることもわかった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、柔軟性を高めつつ、一方で高湿環境および酸への曝露によっても基材からの剥離が生じにくい樹脂硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物、当該感光性樹脂組成物から形成した樹脂硬化膜、ならびに当該樹脂硬化膜を有する半導体パッケージおよびプリント配線基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、以下[1]~[6]の感光性樹脂組成物に関する
[1](A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)アクリル当量が500g/eq以上10000g/eq以下である、ウレタン(メタ)アクリレートと、
(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)溶剤と、
を含む、
感光性樹脂組成物。
[2]前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表される樹脂である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。)
【化4】
(式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。)
[3]前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1000以上40000以下の樹脂である、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1000以上100000以下の化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(D)光重合開始剤は、アシルオキシム系光重合開始剤である、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(D)光重合開始剤は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるアシルオキシム系光重合開始剤である、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
本発明の他の態様は、下記[7]の樹脂硬化膜、に関する。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【0010】
本発明の他の態様は、下記[8]の半導体パッケージに関する。
[8][7]に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の絶縁膜として用いてなる半導体パッケージ。
【0011】
本発明の他の態様は、下記[9]のプリント配線基板に関する。
[9][7]に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の絶縁膜として用いてなるプリント配線基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柔軟性を高めつつ、一方で高湿環境および酸への曝露によっても基材からの剥離が生じにくい樹脂硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物、当該感光性樹脂組成物から形成した樹脂硬化膜、ならびに当該樹脂硬化膜を有する半導体パッケージおよびプリント配線基板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.感光性樹脂組成物
以下、本発明の一実施形態に関する感光性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)アクリル当量が500g/eq以上10000g/eq以下である、ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分は、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。(A)成分は、アルカリ現像液に対する可溶性を有し、感光性樹脂組成物にパターニング性を付与することができる。
【0015】
(A)成分は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有することが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシ基とを有することがより好ましい。(A)成分は、上記樹脂であれば特に限定されることなく、様々な種類の樹脂であり得る。(A)成分は、重合性不飽和基を有するため、感光性樹脂組成物に優れた光硬化性を与え、また硬化時に分子量が大きくなりバインダーとしての作用を発揮する。また、(A)成分は、酸性基を有するため、現像性およびパターニング特性(パターン線幅、パターン直線性)などを向上させる。
【0016】
(A)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、さらに多塩基酸カルボン酸またはその無水物と反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造時に、ヒドロキシ基と多塩基酸カルボン酸との反応でポリエステルが生成する。(A)成分は、上記ポリエステルの平均の重合度が2~500程度の低分子量の樹脂であることが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、いずれもこれらの一方または両方を意味する。
【0017】
上記エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jERYX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などの芳香族構造を有するエポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製、「リカレジン」は同社の登録商標)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製、「アラルダイト」は同社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。
【0018】
(A)成分の他の好ましい樹脂の例には、アクリル共重合体であるアルカリ可溶性樹脂が含まれる。
【0019】
上記アクリル共重合体の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0020】
硬化膜の耐熱性および耐溶剤性をより高める観点からは、(A)成分は複数個の芳香環を有することが好ましく、フルオレン構造を含む繰り返し単位を有することがより好ましく、ビスアリールフルオレン骨格を含む繰り返し単位を有することがさらに好ましい。たとえば、(A)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂であることが好ましい。
【0021】
【化5】
【0022】
式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。
【0026】
【化8】
【0027】
式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。
【0028】
一般式(1)で表される樹脂は、以下の方法で合成することができる。
【0029】
まず、下記一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのアルキレンオキサイド変性基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう。)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸誘導体、および下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0030】
【化9】
【0031】
式(5)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
式(6)、(7)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。
【0035】
上記エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本実施形態において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「ジオール(d)」ともいう。)である。
【0036】
【化12】
【0037】
式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。
【0041】
次に、上記得られるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する不飽和基含有硬化性樹脂を得ることができる。
【0042】
上記酸成分は、ジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分である。一般式(1)で表される樹脂を得るためには、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)と、を併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基などのヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0043】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0044】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0045】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0046】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0047】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、およびトリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0048】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0049】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物などが含まれる。
【0050】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、ならびに、脂環式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの鎖式炭化水素テトラカルボン酸などが含まれる。
【0051】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸、ならびに、鎖式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの脂環式テトラカルボン酸などが含まれる。
【0052】
上記芳香族炭化水素テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、およびナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸などが含まれる。
【0053】
上記テトラカルボン酸は、これらのうち、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸がより好ましい。
【0054】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0055】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)のかわりに、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、たとえば国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、およびターフェニルジオールなど)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基がそれぞれ反応してエステル結合した形の酸二無水物である。
【0056】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0057】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0058】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が0.5より大きいと、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が1.0以下だと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0059】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0060】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0061】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0062】
(A)成分は、重量平均分子量(Mw)が1000以上40000以下の化合物であることが好ましく、2000以上20000以下の化合物であることがより好ましい。(A)成分のMwがより高いほど、樹脂硬化膜の密着性および柔軟性を高め、かつ架橋密度を調整しやすくなる。一方で、(A)成分のMwがより低いほど、溶媒への(A)成分の溶解性が高まり、かつ(B)成分との相溶性を高めて、樹脂硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。(B)成分との相溶性をさらに高める観点からは、(A)成分のMwは1000以上4000以下であることが好ましく、2000以上4000以下であることが好ましい。本実施形態では、(B)成分としてアクリル当量が比較的大きく、分子量も大きい化合物を用いる。たとえば(B)成分の分子量(Mw)が3000以上であるようなときに、(A)成分のMwを4000以下とすることで、これらの相溶性を十分に高めることができる。
【0063】
(A)成分は、同様の観点から、酸価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0064】
本明細書において、各成分の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(たとえば、「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製))で求めたスチレン換算値とすることができる。また、酸価は、電位差滴定装置(たとえば「COM-1600」(平沼産業株式会社製))を用いて求めた値とすることができる。ただし、モノマーなどの、構造から分子量が計算できる化合物については、構造から計算して得た値をその化合物の分子量としてもよい。
【0065】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、パターニング特性を重視する場合には40質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の上記含有量が10質量%以上であると、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0066】
なお、(A)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
[(B)成分]
(B)成分は、アクリル当量が500g/eq以上10000g/eq以下であるウレタン(メタ)アクリレートである。
【0068】
(B)成分は、分子内に(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する。
【0069】
(メタ)アクリロイル基は、感光性樹脂組成物の露光感度を高めて現像性(解像性、たとえばパターンの直線性)を高め、かつ硬化時に適度な架橋構造を形成して基板への樹脂硬化膜の密着性を高める。
【0070】
本発明者らの知見によると、架橋点が密に存在する樹脂硬化膜では、硬化時の硬化収縮や熱収縮により、樹脂硬化膜と無機基材との界面に生じる応力が大きくなる。このような樹脂硬化膜を高温高湿環境下に暴露し、吸収された水分によって樹脂硬化膜と無機基材との間の相互作用が弱まった際、蓄積された応力が開放され剥離が生じやすい。これに対し、(B)成分のアクリル当量を500g/eq以上とすることで、樹脂硬化膜の架橋点を疎らに分散させることで柔軟性を高め、かつ耐湿密着性を高めることができる。一方で、放射線(例えば紫外線)に対する(B)成分の感度を高め、現像時のパターニング特性(パターンの直線性、パターンの細線密着性)を担保する観点から、(B)成分のアクリル当量は10000g/eq以下とする。上記観点から、(B)成分のアクリル当量は、500g/eq以上5000g/eq以下であることが好ましく、1000g/eq以上5000g/eq以下であることがより好ましい。一方で、電極材料のマイグレーションによる短絡、特には高湿環境下でのマイグレーションによる短絡を抑制する観点からは、硬化膜の架橋密度を高めるため、(B)成分のアクリル当量を500g/eq以上1000g/eq以下とすることも好ましい。アクリル当量は、化合物の分子量(重量平均分子量)を(メタ)アクリロイル基の数で除算して得られる値とすることができる。
【0071】
さらには、ウレタン結合は、水素結合により樹脂硬化膜に柔軟性を付与して、基板や金属配線などへの樹脂硬化膜の密着性を高める。また、ウレタン結合は、湿度や酸により樹脂が劣化した後にも、水素結合による、基板や金属配線などとへの樹脂硬化膜の密着性を維持させる。
【0072】
(B)成分は、このように、高いアクリル当量により樹脂硬化膜の柔軟性および耐湿密着性を高め、かつ、ウレタン結合により耐湿密着性および耐酸密着性を高めるものと考えられる。
【0073】
(B)成分は、重量平均分子量(Mw)が1000以上100000以下の化合物であることが好ましく、1000以上50000以下の化合物であることがより好ましく、1000以上10000以下の化合物であることがさらに好ましい。(B)成分のMwが上記範囲であると、(A)成分との相溶性を高めて、樹脂硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。(A)成分との相溶性をさらに高める観点からは、(B)成分のMwは1000以上5000以下であることが好ましく、1000以上2000以下であることが好ましい。樹脂硬化膜の現像性および密着性を高めるために(A)成分としてMwが比較的大きい化合物を用いたとき、たとえば(A)成分の分子量(Mw)が3000以上であるようなときに、(B)成分のMwを5000以下や2000以下とすることで、これらの相溶性を十分に高めることができる。
【0074】
(B)成分の具体例には、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(NK オリゴ UA-4200、UA-160TM、UA-290TM、UA-W2A、UA-4400、UA-122P、U-200PA、いずれも新中村化学工業株式会社製)や、3個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(NK オリゴ UA-7100、新中村化学工業株式会社製)、その他の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UF-07DF、UF-C051、UF-C052、UF-C053、UF-C01、UF-C012,UF-8001G、DAUA-167など、いずれも共栄社化学株式会社製)などが含まれる。
【0075】
[(B’)その他の光重合性化合物]
なお、感光性樹脂組成物は、感度や架橋密度を調節等の観点から、(B)成分以外の光重合性化合物(以下、(B’)成分とする。)を含んでもよい。
【0076】
(B’)成分の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジフェニルフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールアラルキル型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーなどが含まれる。これらの(B’)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
(A)成分と光重合性化合物((B)成分および(B’)成分の合計)との配合割合(重量比(A)/((B)+(B’)))は、50/50以上90/10以下であることが好ましく、60/40以上80/20以下であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が50/50以上であると、硬化後の樹脂硬化膜の硬度が十分であり、また、未露光部において樹脂硬化膜の酸価が十分高いためにアルカリ現像性が高く、直線的でシャープなパターンを形成できる。(A)成分の配合割合が、90/10以下であると、((B)+(B’))成分の割合が十分に高いため、架橋構造を十分に形成して樹脂硬化膜の密着性を高めることができる。また、樹脂成分における酸価が適当で、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が過度に高くないことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落などを抑制することができる。
【0078】
(B)成分と(B’)成分との配合割合(重量比(B)/(B’))は、50/50以上100/0以下であることが好ましく、70/30以上100/0以下であることがより好ましい。この範囲とすることで、(B)成分による上記効果を十分に得ることができる。
【0079】
[(C)成分]
(C)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である。(C)成分は、樹脂硬化膜の耐薬品性を高め、かつ樹脂硬化膜の耐湿密着性を高めることができる。これは、(A)成分のカルボキシ基を、(C)成分のエポキシ基と本硬化(ポストベーク)時に反応させて保護することで、カルボキシ基に起因する(A)成分の吸湿性を低減することができるためと考えられる。
【0080】
(C)成分の例には、(A)成分について説明したエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物が好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物がより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物は、要求特性に合わせた硬化物の機械的強度や耐薬品性を両立することができる。
【0082】
(C)成分のエポキシ当量は、100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。また、(C)成分の数平均分子量(Mn)は、100以上5000以下であることが好ましい。(C)成分のエポキシ当量が100g/eq以上であると、硬化膜の耐溶剤性が高まる。(C)成分のエポキシ当量が300g/eq以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。また、(C)成分のMnが5000以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0083】
なお、(C)成分のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。
【0084】
(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の上記含有量を1質量%以上とすると、樹脂硬化膜の耐薬品性および耐湿密着性をより高めることができる。(C)成分の上記含有量を30質量%以下とすると、基板への樹脂硬化膜の密着性をより高めることができる。
【0085】
[(D)成分]
(D)成分は、光重合開始剤である。
【0086】
(D)成分は、重合性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させ得る化合物であれば、特に限定されるものではない。(D)成分の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物、アシルオキシム化合物などの光重合開始剤が含まれる。なお、本明細書において、光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0087】
アセトフェノン化合物の例には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが含まれる。
【0088】
トリアジン化合物の例には、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(ピプロニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0089】
ベンゾイン化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-tert-ブチルエーテルなどが含まれる。
【0090】
ベンゾフェノン化合物の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4‘-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0091】
チオキサントン化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが含まれる。
【0092】
イミダゾール化合物の例には、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが含まれる。
【0093】
アシルオキシム化合物の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-o-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-o-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-o-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシム、5-(4-イソプロピルフェニルチオ)-1,2-インダンジオン,2-(O-アセチルオキシム)などが含まれる。上記光重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
これらのうち、(D)成分は、アシルオキシム系(ケトオキシムを含む)光重合開始剤が好ましい。アシルオキシム系光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(B)成分を含む感光性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、樹脂硬化膜の現像性(解像性)を十分に高めることができる。
【0095】
アシルオキシム系光重合開始剤の例には、一般式(9)または一般式(10)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤が含まれる。
【0096】
【化15】
【0097】
式(9)中、R、Rは、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、RはC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0098】
【化16】
【0099】
式(10)中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R10は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR~R10の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0100】
また、(D)成分は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であることが好ましく、14000L/mol・cm以上であることがより好ましい。このような光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(B)成分を含む感光性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、感光性樹脂組成物の現像性(解像性)を十分に高めることができる。このような光重合開始剤の例には、Omnirad1312(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)、およびアデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0101】
本明細書において、光重合開始剤のモル吸光係数は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定し求めた値とすることができる。
【0102】
なお、(D)成分としては、活性ラジカル発生剤または酸発生剤を使用してもよい。
【0103】
活性ラジカル発生剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアントラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などが含まれる。
【0104】
酸発生剤の例には、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩類、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類などが含まれる。
【0105】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上述の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加してもよい。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組みわせて使用すると効果のあるアミン系化合物が含まれる。上記アミン系化合物の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0106】
(D)成分の含有量は、(A)成分と((B)+(B’))成分の合計100質量部に対して、2質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。また、(D)成分として、アシルオキシム系光重合開始剤を用いる場合には、(D)成分の含有量は、(A)成分と((B)+(B’))成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が2質量部以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(D)成分の含有量が30質量部以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0107】
[(E)成分]
(E)成分は、溶剤である。
【0108】
(E)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、およびジアセトンアルコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが含まれる。(E)成分は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0109】
(E)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(E)成分の含有量が30質量%以上であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0110】
[その他の成分]
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、その他の樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、カップリング剤、および粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。
【0111】
その他の樹脂成分の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、およびメラミン樹脂等が含まれる。
【0112】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。
【0113】
硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0114】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0115】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0116】
レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0117】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などが含まれる。
【0118】
界面活性剤の例には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが含まれる。
【0119】
カップリング剤としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、反応基として、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基等を有するものが好ましく、エポキシ基、イソシアネート基、メタクリル基を有するものがより好ましい。上記カップリング剤の具体例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0120】
[製造方法]
感光性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0121】
2.用途
上述の感光性樹脂組成物は、放射線の照射により樹脂硬化膜を形成する、絶縁材、接着剤、および保護膜などを含む各種用途に用いることができる。また、感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含むことにより露光後の現像が可能であるため、細線パターンを形成する用途にも好適に用いることができる。特には、高い密着性、耐湿性および耐酸性を有するため、プリント配線基板および半導体パッケージ用の絶縁膜、たとえばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、バッファーコート層、再配線層、層間絶縁層などの作製に好適に用いることができる。本願においては、半導体パッケージは、フリップチップパッケージ、ウエハレベルパッケージ等に加えて、例えば、フリップチップパッケージをインターポーザー上に積層したもの等のように、半導体チップを含みプリント基板上に実装できるような形態にしたものを含めたものを意味する。その他、塗料やインキのトップコート、プラスチック類のハードコート、および金属類の防錆膜等の作製に用いてもよい。
【0122】
たとえば多層プリント配線とするときは、たとえば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、およびスクリーン印刷法などの方法により、あらかじめ導体配線(第1の導体配線)が形成された基板の表面に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。その後、60~120℃程度で(E)成分(溶剤)を揮発させ、湿潤塗膜を乾燥させる。なお、ポリエステルなどの支持体の表面に感光性樹脂組成物を塗布して乾燥させてドライフィルムを形成し、このドライフィルムから基板に乾燥した塗膜を転写してもよい。
【0123】
その後、ネガマスクを介して塗膜を露光し、部分的に光硬化させる。露光は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などの公知の放射線の照射により行えばよい。これらの放射線のうち、紫外線が好ましい。照射する放射線の波長は、250nm以上400nm以下であることが好ましい。放射線の露光量は、25mJ/cm以上3000mJ/cm以下であることが好ましい。なお、ドライフィルムを用いるときは、転写前にドライフィルムで塗膜を露光してもよい。
【0124】
次に、塗膜をアルカリ現像して、露光されていない部分を除去する。現像方法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。また、現像に用いる現像液の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン、および1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕-5-ノナンなどのアルカリ(塩基性化合物)の水溶液などが含まれる。現像条件は、感光性樹脂組成物により異なるが、20~30℃の温度で、10~120秒行うことが好ましい。なお、上記現像は、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0125】
この露光および現像は、多層プリント配線のうち、スルーホールが形成される位置の塗膜を除去するように行う。
【0126】
その後、現像後の露光部を熱処理して、感光性樹脂組成物を本硬化(ポストベーク)する。ポストベークは、公知の方法(オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせ)などの公知の方法により行うことができる。加熱条件は、樹脂硬化膜が本硬化(ポストベーク)する温度であれば特に制限されないが、180~250℃の温度で20~120分間行われることが好ましい。
【0127】
その後、アディティブ法などの公知の方法で、樹脂硬化膜の表面に形成された導体配線(第2の導体配線)と、スルーホールのない表面を被覆して第1の導体配線と第2の導体配線とを接続するホールめっきと、を作製して、多層プリント配線が形成されたプリント配線基板を得ることができる。
【0128】
なお、上述の製造方法は感光性組成物の一例を示したものに過ぎず、多層構造ではない単層のプリント配線基板としてもよい。
【0129】
また、上述のプリント配線基板や半導体パッケージは、他の機能部品等と組み合わせて半導体装置としてもよい。
【実施例0130】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0131】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0132】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用の樹脂硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0133】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕から次式により求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0134】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0135】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0136】
[アクリル当量]
アクリル当量は、分子量をアクリル官能基数で割ることにより求めた。
【0137】
合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(5)においてArがベンゼン環で、lが0であるエポキシ樹脂、エポキシ当量256g/eq)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP :トリフェニルホスフィン
AA :アクリル酸
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP :トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
SA :無水コハク酸
TEA :トリエチルアミン
【0138】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
[合成例1]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0139】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.37g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0140】
[合成例2]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0141】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(10.06g、0.03mol)およびTHPA(11.89g、0.08mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(A)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は98mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2300であった。
【0142】
[合成例3]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0143】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(19.25g、0.07mol)およびTHPA(0.30g、0.002mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(A)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.3質量%であり、酸価(固形分換算)は97mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4700であった。
【0144】
[合成例4]
還流冷却機付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35mol)、GMA(49.8g、0.35mol)、St(31.2g、0.30mol))にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間攪拌し、共重合体溶液を得た。
【0145】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、不飽和基含有硬化性樹脂(A)-4を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0146】
表1および表2に記載の配合量(単位は質量%)で感光性樹脂組成物を調製した。表1および表2で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0147】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1:合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-2:合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-3:合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.3質量%)
(A)-4:合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
【0148】
((B)ウレタン(メタ)アクリレート)
(B)-1:NK オリゴ UA-4200(新中村化学工業株式会社製、分子量:1600、アクリル当量:800)
(B)-2:NK オリゴ UA-160TM(新中村化学工業株式会社製、分子量:4400、アクリル当量:2200)
(B)-3:NK オリゴ U-412A(新中村化学工業株式会社製、分子量:11400、アクリル当量:5700)
((B’)その他の光重合性化合物)
(B’)-4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製、分子量:730、アクリル当量:121)
(B’)-5:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド6モル付加物(アロニックスM-360、東亞合成株式会社製、分子量:580、アクリル当量:193)
(B’)-6:ビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物のジアクリレート(ライトアクリレートBP-10EA、共栄社化学株式会社製、分子量:780、アクリル当量:390)
(B’)-7:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(UA-306H、共栄社化学株式会社製、分子量:900、アクリル当量:150)
【0149】
(エポキシ化合物)
(C):テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(YX-4000、三菱ケミカル株式会社製)
【0150】
(光重合開始剤)
(D)-1:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(「Omnirad907」IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標、アセトフェノン系の光重合開始剤、365nmのモル吸光係数:60L/mol・cm)
(D)-2:2,4-ジエチルチオキサントン、キサントン系の光重合開始剤、(365nmのモル吸光係数:4600L/mol・cm)
(D)-3:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム)(「Irgacure OXE01」、BASFジャパン株式会社製、「Irgacure」は同社の登録商標、アシルオキシム系の光重合開始剤、365nmのモル吸光係数:2700L/mol・cm)
(D)-4:アデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標、アシルオキシム系の光重合開始剤、365nmのモル吸光係数:13200L/mol・cm)
(D)-5:Omnirad1312(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標、アシルオキシム系の光重合開始剤、365nmのモル吸光係数:17500L/mol・cm)
【0151】
なお、上記モル吸光係数は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定し求めた値である。
【0152】
(溶剤)
(E):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
[評価]
[破断点伸度評価用の樹脂硬化膜の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、離型アルミ箔「セパニウム」(東洋アルミ株式会社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が30.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで1000mJ/cmの紫外線を照射して、感光部分の光硬化反応を行った。
【0156】
次いで、露光した上記露光膜を23℃の0.8%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から10秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、露光膜の未露光部分を除去して離型アルミ箔上に8mm×100mmのパターンを形成し、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)した。最後に、樹脂硬化膜を離型アルミ箔より剥離し、実施例1~9、比較例1~5に係る樹脂硬化膜を得た。
【0157】
[破断点伸度評価]
テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製RTA250)を用い、幅8mmの硬化フィルムをチャック間長さ40mmとなるようにセットし、23℃の温度で、55%RH(相対湿度)の雰囲気条件下で引張速度5mm/分で引張試験を行った。
【0158】
[耐湿密着性、耐酸密着性および相溶性評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0159】
次いで、露光した上記露光膜を23℃の0.8%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて、30秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行った。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~9、比較例1~5に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0160】
[耐湿密着性評価]
2.7mmΦのエポキシ接着剤付きスタッドピンを上記樹脂硬化膜上に置き、80℃のオーブン中で30分乾燥させた後、熱風乾燥機を用いて150℃、60分間加熱硬化処理を行ってスタッドピンを樹脂硬化膜と接着させて密着性試験片とした。
【0161】
次いで、得られた各密着性試験片を、温度121℃、湿度100%、気圧2atmの条件下で100時間放置した。その後、スタッドプル剥離強度試験機(ロミュラス、Quad Group社製)を用いて、ガラス基板と樹脂硬化膜の密着強度を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0162】
(評価基準)
◎:密着強度が20kgf/cm超である
○:密着強度が10kgf/cm超20kgf/cm以下である
△:密着強度が5kgf/cm超10kgf/cm以下である
×:密着強度が5kgf/cm以下である
【0163】
[耐酸密着性評価]
上記樹脂硬化膜付き基板を、濃塩酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)に室温で10分間浸漬し、その後純水で洗浄した。浸漬後の樹脂硬化膜に、Super Cutter Guide(太佑機材株式会社製)を使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切り込みを入れ、マス目上にセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼ってから剥がす、クロスカット・ピーリング試験を実施した。なお、△以上を合格とした。
【0164】
(評価基準)
○:マス目の中の樹脂硬化膜は全く剥離していない
△:マス目の中の樹脂硬化膜の1/3未満が剥離している
×:マス目の中の樹脂硬化膜の1/3以上が剥離している
【0165】
[相溶性評価]
上記樹脂硬化膜付き基板を、濁度計「NDH5000」(日本電色工業株式会社製)を用いてヘイズ値を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0166】
(評価基準)
○:樹脂硬化膜付き基板のヘイズ値は10以下である
△:樹脂硬化膜付き基板のヘイズ値は10超50以下である
×:樹脂硬化膜付き基板のヘイズ値は50超である
【0167】
[解像性評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0168】
次いで、露光した上記露光膜を23℃の0.8%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から10秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、未露光部を除去して10μmおよび20μmのラインパターンを形成した。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~9、比較例1~5に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0169】
[解像性評価]
得られた樹脂硬化膜付き基板の樹脂硬化膜の10μmおよび20μmのラインパターンを、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、パターンの剥離の有無を判定した。なお、△以上を合格とした。
【0170】
(評価基準)
○:パターンに剥離が見られない
△:パターンのごく一部に剥離が見られる
×:パターンの大部分が剥離している
【0171】
[耐熱性評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、樹脂硬化膜付き基板を得た。なお、耐熱性評価の際には、得られた樹脂硬化膜を削り出して、TG-DTAの測定に用いた。
【0172】
[耐熱性評価]
(評価方法)
得られた樹脂硬化膜の粉末を、TG-DTA装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、空気中、30℃から400℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、検体の重量が5%減少する温度を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0173】
(評価基準)
○:5%重量減少温度が、300℃以上である
△:5%重量減少温度が、250℃以上、300℃未満である
×:5%重量減少温度が、250℃未満である
【0174】
[HAST耐性評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、銅製櫛歯電極付きガラス基板(テクノプリント株式会社製、銅膜厚:1μm、L/S:30μm/30μm)上に、加熱硬化処理後の膜厚が5.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0175】
次いで、露光した上記露光膜を23℃の0.8%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から10秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、未露光部を除去してはんだ接合を行う電極パッドを開口した。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~9、比較例1~5に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0176】
[HAST耐性評価]
(評価方法)
得られた樹脂硬化膜付き基板の電極パットに配線を接続し、櫛歯電極間に3.5Vの電圧を印加しながら、温度130℃、湿度85%の環境下で168時間評価を実施した。なお、評価は3検体ずつに対して実施し、△以上を合格とした。
【0177】
(評価基準)
○:3検体について、いずれも短絡は見られない
△:3検体中一部に短絡が見られた
×:3検体全て短絡した
【0178】
評価結果を表3および4に示す。
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
表3および表4に示されるように、上述した感光性樹脂組成物を硬化した樹脂硬化膜は、柔軟性が高く、ガラス基板との密着性および耐酸性に優れることがわかった。これは、(B)成分としてアクリル当量が500~10000g/eqのウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、樹脂硬化膜の架橋構造を維持しつつ柔軟性が向上したことにより、ガラス基材との界面にかかる応力を緩和でき、耐湿・耐酸密着性が向上したためと考えられる。
【0182】
また、(A)成分して、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂を用いることにより、ウレタン(メタ)アクリレートの柔軟性を維持しつつ、耐熱性に優れた樹脂硬化膜を得られることがわかった。これは、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂が芳香環を多数有することにより、熱安定性に優れているためと考えられる。
【0183】
実施例1~6で示されるように、(B)成分として、より重量平均分子量の高いウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合は、(A)成分の重量平均分子量を4000以下とすることで、感光性樹脂組成物の相溶性を向上することができ、樹脂硬化膜のヘイズを低下することができることがわかった。
【0184】
同様に、(A)成分として、重量平均分子量の高い不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を用いる場合は、(B)成分の重量平均分子量を2000以下とすることで、感光性樹脂組成物の相溶性を向上することが可能となる。
【0185】
実施例7~9で示されるように、(D)成分として、アシルオキシム系光重合開始剤を使用することにより、解像性が向上することがわかった。特に、実施例8・9に示されるように、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるアシルオキシム系光重合開始剤を使用することにより、より高解像度のパターン形成が可能となった。これは、光重合開始剤のラジカル発生効率が向上し、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上したためと考えられる。
【0186】
実施例1~3で示されるように、(B)成分のアクリル当量を1000以下とすることで、樹脂硬化膜のHAST耐性を向上できることがわかった。これは、アクリル当量を上記範囲とすることで、樹脂硬化膜の架橋密度を高め、基材との高密着性と低吸水性を両立することができるためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明は、耐湿信頼性や酸性エッチング液耐性に優れた感光性樹脂組成物を提供し、半導体パッケージやプリント配線基板に用いる絶縁膜として有用である。