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特開2023-49023銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法、並びに混合銀粉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049023
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法、並びに混合銀粉
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230331BHJP
   B22F 1/103 20220101ALI20230331BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20230331BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230331BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230331BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20230331BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20230331BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230331BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20230331BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F1/103
B22F1/06
B22F1/05
B22F9/00 B
B22F9/24 E
H01B5/00 A
H01B1/22 A
H01B1/00 A
H01B13/00 501Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152974
(22)【出願日】2022-09-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021158541
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 政徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】中野谷 太郎
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA08
4K017BA02
4K017CA07
4K017EJ01
4K017FB03
4K017FB04
4K018BA01
4K018BB01
4K018BB04
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5G307AA08
(57)【要約】
【課題】導電性ペーストとして用いたときに、線幅を細くしても断線を起こしにくく、従来に比べて体積抵抗率の小さい銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法を提供する。
【解決手段】銀粉は、銀粒子の集合体としての銀粉であって、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下であり、銀粒子の粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子の集合体としての銀粉であって、
見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下であり、
前記銀粒子の粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下である銀粉。
【請求項2】
最大の空隙の面積率が、0.1%以上1.0%以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項3】
前記銀粒子の前記粒子断面において観察される空隙の総面積が当該粒子断面の断面積の5%以上である請求項1に記載の銀粉。
【請求項4】
体積基準のメジアン径が0.6μm以上2.0μm以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項5】
強熱減量値が1.0wt%以上3.0wt%以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項6】
銀の結晶子径が10nm以上28nm以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。
【請求項8】
銀水溶液とポリカルボン酸と表面処理剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【請求項9】
銀水溶液とポリカルボン酸と粒径調整剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【請求項10】
前記粒子析出工程における液温を10℃以上35℃以下とする請求項8又は9に記載の銀粉の製造方法。
【請求項11】
前記表面平滑化工程前の前記乾燥粉の見かけ密度が9.2g/cm3未満であり、粒子断面における粒子外周に外接する線の線長に対する、粒子外周線の線長の比が1.4を超える請求項8又は9に記載の銀粉の製造方法。
【請求項12】
請求項1~6に記載の銀粉と、見かけ密度が9.2g/cm3より大きい銀粉とを混合した混合銀粉。
【請求項13】
請求項12に記載の混合銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法、並びに混合銀粉に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や種々の電子デバイスの電極配線には、銀粉を用いた導電性ペーストが使用されている。積層コンデンサの内部電極、回路基板の電極配線、太陽電池やプラズマディスプレイパネル用基板の電極や回路などを形成する方法としては、例えば、銀粉をガラスフリットとともに有機溶媒中に加えて混練することによって製造される焼成型の導電性ペーストを基板上に所定のパターンに形成した後、500℃以上の温度で加熱することによって、有機溶媒を除去し、銀粒子同士を焼結させて導電膜を形成する方法が広く用いられている。
【0003】
このような用途に使用される導電性ペーストに対しては、電子部品の小型化へ対応するために、電極配線の高密度化、細線化などへの対応が要求される。そのため、使用される銀粉に対しては、銀粉を構成する粒子の粒径が適度に小さく粒度が揃っていること、有機溶媒中で分散していることが要求される。
【0004】
こうした導電性ペースト用の銀粉を構成する粒子として、閉鎖された空隙を粒子内部に有する銀粒子が知られている(例えば、特許文献1参照)。粒子内部に閉鎖された空隙を有することにより、より低い温度(例えば400℃)でも焼成可能となる。
【0005】
特許文献1では、硝酸銀及びクエン酸の混合液に、アスコルビン酸水溶液を還元剤として添加して、無核かつ球状の開放連通多孔体(多孔質)である銀粒子を得ることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/063747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、得られる銀粒子には、粒子内部に閉鎖された空隙が存在し、その空隙内部には還元時に取り込まれた水分や有機物等が残留している。そして、焼成時には、この水分や有機物が銀粒子から外部に抜ける過程で、粒子の低温での焼結を促進するなどの効果があると考えられる。しかし、この空隙が大きいと空隙内部の残留物も多くなるため、焼成後においても還元剤や表面処理剤が電極配線内に残存し電気抵抗率が大きくなることが予想される。
【0008】
また、特許文献1の開放連通多孔体である銀粒子では、表面に多数の突起を有しており、このような銀粒子で構成された銀粉をペーストにしたときの粘度が高く、スクリーン版から吐出されるときに詰まりが発生し、細線化時に断線を引き起こしやすく、細線化に対応できない。
【0009】
そこで、本発明者らは、導電性ペーストとして用いた場合に、線幅を細くしても断線を起こしにくく、従来に比べて体積抵抗率の小さい銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、上述の課題を達成するための本発明に係る銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法の要旨構成は以下のとおりである。
【0011】
(1) 銀粒子の集合体としての銀粉であって、
見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下であり、
前記銀粒子の粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下である銀粉。
【0012】
(2) 最大の空隙の面積率が、0.1%以上1.0%以下である(1)に記載の銀粉。
【0013】
(3) 前記銀粒子の前記粒子断面において観察される空隙の総面積が前記粒子断面の断面積の5%以上である(1)又は(2)記載の銀粉。
【0014】
(4) 体積基準のメジアン径が0.6μm以上2.0μm以下である(1)~(3)の何れか一項に記載の銀粉。
【0015】
(5) 強熱減量値が1.0wt%以上3.0wt%以下である(1)~(4)の何れか一項に記載の銀粉。
【0016】
(6) 銀の結晶子径が10nm以上28nm以下である(1)~(5)の何れか一項に記載の銀粉。
【0017】
(7) (1)~(6)の何れか一項に記載の銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。
【0018】
(8) 銀水溶液とポリカルボン酸と表面処理剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、集合体としての粉体の見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【0019】
(9) 銀水溶液とポリカルボン酸と粒径調整剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【0020】
(10) 前記粒子析出工程における液温を10℃以上35℃以下とする(8)又は(9)に記載の銀粉の製造方法。
【0021】
(11) 前記表面平滑化工程前の前記乾燥粉の見かけ密度が9.2g/cm3未満であり、粒子断面における粒子外周に外接する線の線長に対する、粒子外周線の線長の比が1.4を超える(8)又は(9)に記載の銀粉の製造方法。
【0022】
(12) (1)~(6)の何れか一項に記載の銀粉と、見かけ密度が9.2g/cm3より大きい銀粉とを混合した混合銀粉。
【0023】
(13) (12)に記載の混合銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導電性ペーストとして用いたときに、線幅を細くしても断線を起こしにくく、従来に比べて体積抵抗率の小さい銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る粒子断面のSEM観察像における粒子外周線と粒子外周に外接する線を示す図である。
図2】本実施形態に係る粒子断面における粒子外周線と包絡線を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る粒子断面における粒子外周線と粒子外周に外接する線を示す模式図である。
図4】実施例1の銀粉中の銀粒子表面の100000倍のSEM観察像である。
図5】実施例1の銀粉中の銀粒子断面の100000倍のSEM観察像である。
図6】実施例2の銀粉中の銀粒子表面の100000倍のSEM観察像である。
図7】実施例2の銀粉中の銀粒子断面の100000倍のSEM観察像である。
図8】比較例1の銀粉中の銀粒子表面の100000倍のSEM観察像である。
図9】比較例1の銀粉中の銀粒子断面の100000倍のSEM観察像である。
図10】比較例2の銀粉中の銀粒子表面の100000倍のSEM観察像である。
図11】比較例2の銀粉中の銀粒子断面の100000倍のSEM観察像である。
図12】従来例の銀粉中の銀粒子断面の40000倍のSEM観察像である。
図13】実施例3の銀粉中の銀粒子断面の60000倍のSEM観察像である。
図14】実施例4の銀粉中の銀粒子断面の50000倍のSEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0027】
本実施形態に係る銀粉の概要を説明する。本実施形態に係る銀粒子の集合体としての銀粉は、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下である。銀粉中の銀粒子の粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下である。
【0028】
上記銀粒子の集合体としての銀粉の製造方法の一例は、銀水溶液とポリカルボン酸と表面処理剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、乾燥後の銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含む。表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで乾燥後の銀粒子の表面を平滑化する。また、原料混合工程において、表面処理剤に代えて、粒径調整剤を添加しても良い。
【0029】
銀粉の見かけ密度が8.2g/cm3未満であると、後述する還元剤や表面処理剤の影響を強く受ける結果導電性ぺーストとして用いた場合に、焼結後の配線の電気抵抗が大きくなってしまう問題がある。銀粉の見かけ密度が9.2g/cm3よりも大きいと導電性ペーストとして用いた場合、微細な配線を描画することが困難である。また、銀粉中の銀微粒子の粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1未満であると、焼成後に線幅を小さくすることが困難である。そして、1.4を超えると導電性ペーストとして用いた場合に印刷性が悪い。
【0030】
以下、本実施形態に係る銀微粒及びその製造方法について詳述する。
【0031】
(見かけ密度)
本実施形態における見かけ密度とは、銀粉中の銀粒子の見かけ密度である。本実施形態において見かけ密度は、ヘリウムガスを用いた乾式自動密度計(真密度測定装置ともいう)により測定する。具体的には、容器内が一定圧力になるまでヘリウムガスを充填したときのガス体積から粉体(本実施形態で銀粒子の集合体としての銀粉)の体積を測定し、粉体の重量をその体積で除算することで計算する。このときヘリウムガスは、粉体中の粒子表面の凹凸の空間、粒子と粒子の間隙の空間には到達するが、外部と連通していない粒子内の閉鎖した空間(後述する空隙)には到達できない。したがって、粉体中の粒子が粒子内部に閉じた空隙を含まない場合は真密度が測定されるが、粉体中の粒子が内部に閉じた空隙を含む場合、その粉体の見かけ上の密度は、真密度(本実施形態で銀の真密度)よりも小さくなる。そのため、銀の真密度は10.5g/cm3であるが、本実施形態に係る銀粉の見かけ密度は、銀粉中の銀粒子の内部に空隙が含まれるため、8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下である。また、より好ましくは8.5g/cm3以上9.2g/cm3以下であり、さらに好ましくは8.7g/cm3以上9.2g/cm3以下である。なお、上記説明のとおり、本実施形態における「見かけ密度」は、一定容積における粉体の充填度合いを示す「かさ密度」とは異なる。
【0032】
(粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線の線長との比)
本実施形態における粒子断面における外周線(粒子外周線10)の線長と粒子断面の外周に外接する線20の線長の比(L1/L2と記載する場合がある)は、銀粉中の銀粒子表面の凹凸度合いを示す指標である。粒子断面における外周線の線長(以下では、線長L1と記載する場合がある)とは、粒子断面の外周線の総長さである。粒子断面の外周に外接する線20とは、凹凸が存在する粒子表面において、粒子外周線10が描く、粒子の内側へ深く窪む部分については、凹部を平坦に慣らすように引いた線である。例えば、連続する凹凸において、凹部の頂部同士を直線で塞ぐように繋いだ線である。粒子断面の外周に外接する線20の線長(以下では、線長L2と記載する場合がある)とは、この外接する線の総長さである。そして、粒子の断面積は、粒子外周線10に囲まれた範囲の面積である。
【0033】
図1に、粒子外周線10と粒子断面の外周に外接する線20の線長の測定方法を示す。線長の測定は、粒子断面のSEM観察により行う。SEM観察は、SEM画像の撮像範囲内に、粒子一個の断面全体が収まる倍率で撮像する。本例では、粒子径(粒子の直径)は後述するとおり約1μmから2μmであるので、10万倍にて撮像した画像に基づいて測定する。測定は、画像の奥行は考慮せずに粒子断面に対して行う。銀粒子の中心付近をとおる断面を観察できていると断面積は大きくなることから、任意に選択した1視野の中では断面積の大きい銀粒子を選択して粒子断面の測定を行う。線長は、例えば、画像解析ソフト等を使用して粒子断面の輪郭をなぞることにより測定してよい。
【0034】
ここで、粒子断面の外周に外接する線20は、上記の粒子外周線10の一部と以下に定義する包絡線30の一部とで構成される。以下、図2及び図3を用いて、粒子断面の外周に外接する線20の決定方法について説明する。
【0035】
包絡線30とは、銀粒子断面の外周(粒子外周線10)上の凸部分に沿って粒子全体を囲う線である。すなわち、包絡線30とは、粒子外周線10上で連続する凹凸形状における、凸部間の凹部は、両凸部間に掛け渡されるように直線を描き、且つ、凸部の曲面に対してはこれに沿って描いた、粒子全体を囲う線である。包絡線30は、銀粒子断面の凹部を、直線で塞ぐように繋いだ線として描く。粒子外周線10における凸部の曲面部分の包絡線30は、粒子外周線10と重複する。
【0036】
本実施形態では、粒子断面の外周に外接する線20として、粒子外周線10上の深い凹部については上記包絡線30(深い凹部の包絡線31)を適用し、粒子外周線10上の浅い凹部(浅い凹部の包絡線32)については粒子外周線10を適用する。つまり、すべての凹部について包絡線30を用いるのではなく、包絡線30の直線と平行な線41を、凹部の粒子外周線10に1点で接するように引いたときの、平行線間の距離Dが、包絡線30の直線の長さの1/3以上の深さを有する凹部(深い凹部の包絡線31)に対しては、粒子断面の外周に外接する線20として、包絡線30を適用する。なお、距離Dは、包絡線30の垂線35に沿う方向における距離である。
【0037】
当該平行線間の距離が包絡線30の直線の長さの1/3未満の深さである浅い凹部(浅い凹部の包絡線32)に対しては、粒子外周線10を粒子断面の外周に外接する線20として、粒子外周線10を適用する。なお、粒子外周線10における凸部の曲面部分の包絡線30は、粒子外周線10と重複するので、外周に外接する線20としては粒子外周線10を適用する。
【0038】
図1にはSEM観察像として、図3には模式図として、粒子外周線10を破線として、粒子断面の外周に外接する線20を実線として示す。粒子表面の凹凸が少なく、また小さいほど粒子外周線10の線長と粒子断面の外周に外接する線20の線長との比は1に近づく。粒子表面の凹凸が多く、また大きいほどこの比の値は大きくなる。
【0039】
(空隙の断面積)
本実施形態における空隙の断面積は、粒子内に含まれる空隙の量や大きさを示す指標である。本実施形態においては、粒子断面において、外部と連通していない閉鎖された穴を「空隙」として定義する。粒子断面の粒子外周において外部と連通している穴は、粒子表面の凹凸とみなし、空隙には含まないで上述の粒子外周線10とする。「空隙」は粒子外周線10により囲まれた領域の内側に存在するものとする。上述のとおり、この空隙の存在により粒子の見かけ密度は小さくなる。
【0040】
粒子断面における空隙の最大面積及び総面積は、画像解析に基づいて行ってよい。例えば、画像解析ソフト等を使用して空隙の輪郭をなぞることにより測定してよい。測定に用いる粒子の個数は2個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましい。
【0041】
以下では、測定対象とした個々の粒子の断面に存在する空隙のうち、最大の断面積を有する空隙の断面積を、「最大の空隙の断面積」と称する。測定対象とした個々の粒子の断面において観察される空隙のうち最大の空隙の断面積の和を、当該粒子断面の断面積の和で除した値を本発明では銀粉の「最大の空隙の面積率」(%)と称する。例えば、測定対象とした銀粒子が5個の場合には、5個の銀粒子それぞれにおいて最大の空隙の断面積を求め、それらの和を、測定対象とした銀粒子5個の断面積の和で除したものが、最大の空隙の面積率である。最大の空隙の面積率は、0.1%以上1.0%以下の範囲内であることが好ましく、0.5%以上0.9%以下の範囲内であることがより好ましい。なお、測定対象とした各粒子それぞれにおける最大の空隙の断面積のうち、最も大きな断面積(以下、「最大の空隙の断面積の最大値」と称する)は、その空隙を有する銀粒子の断面積に対し0.1%以上1.5%以下の範囲内であることが好ましい。粒子断面で観察される空孔の数は特に限定されない。最大の空隙の面積率が1.0%以下であることで、大きな空隙が加熱時に膨張して電極膜の密度が低下し断線する可能性を低減することができる。
【0042】
以下では、ひとつの粒子断面が有する空隙の断面積の総和を空隙の総面積と称する。評価結果として用いる値としては、測定した全粒子の平均値を用いる。当該空隙の総面積は、その空隙を有する銀粒子の断面積(粒子外周線10に囲まれた範囲の面積)に対して平均値で5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。上限は特にないが、例えば20%以下とすることができ、11%以下としても良い。また、粒子の断面積に対する空隙の総面積の割合を「空隙率」(%)と称する。空隙の総面積が5%以上であることで、本発明の導電性ペーストを焼成する際に、焼成を促進する効果が期待できる。
【0043】
(メジアン径)
本実施形態における銀粉の粒度分布は、体積基準に基づいて行う。すなわち、メジアン径(累積50%粒子径、いわゆるD50)とは、体積基準における値である。粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布装置などを用いて測定することができる。本実施形態に係る銀粉のメジアン径は、0.6μm以上2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上1.8μm以下であることがさらに好ましい。0.6μm未満だと、導電性ペーストの粘度が過度に増加して使用が困難となる恐れがあり、2.0μmを超えると、スクリーン版からの導電性ペーストの吐出が悪くなり、印刷不良を起こす恐れがあるためである。
【0044】
(強熱減量値)
強熱減量値(以下では、Ig-Lossと記載する場合がある)は、所定温度に加熱して測定する。本実施形態に係る銀粉中の銀粒子は、粒子内部に多くの空隙を有するため、銀粒子が析出する際に粒子内に還元剤や表面処理剤などが多く残留した状態である。Ig-Lossを測定することにより、この内部に取り込まれた、還元剤や表面処理剤の量を見積もることができる。Ig-Lossは、1.0重量%以上3.0重量%以下であることが好ましく、1.4重量%以上2.5重量%以下であることがより好ましい。Ig-Lossの範囲が上記の範囲であれば、ペーストを焼成して電極配線を形成するときに、還元剤や表面処理剤が銀粒子内から放出されると共に銀粒子の収縮及び銀粒子間の結合を促進する。これにより、焼成後の線幅を小さくすることができる。なお、3.0重量%より多いと焼成後においても還元剤や表面処理剤が電極配線内に残存し電気抵抗率を大きくしてしまう可能性が高い。
【0045】
(結晶子径)
結晶子径(以下では、Dxと記載する場合がある)はX線回折装置を用いて、Scherrerの式(Dhkl=Kλ/βcosθ)によって求める。また、計算にはミラー指数(111)面のピークデータを用いてよい。Dxは10nm以上28nm以下であることが好ましく、Dxは13nm以上18nm以下であることがより好ましく、14nm以上16nm以下であることがさらに好ましい
【0046】
上述の特徴と併せて、Dxが小さいことで、ペーストを焼成して電極配線を形成するときの焼結開始温度を引き下げ、結晶間の焼結を促進し、焼成後の電極配線の線幅と電気抵抗を小さくすることができる。
【0047】
本発明の銀粉中の銀粒子は、上述の粒子断面において、長軸(銀粒子を2本の平行線で挟んだ場合、平行線間の距離が最大になる距離)と短軸(銀粒子を2本の平行線で挟んだ場合、平行線間の距離が最小になる距離)との比(アスペクト比)の平均値(平均アスペクト比)が1.0以上1.5以下の球状の銀粉である。表面は凸凹を有しており、観察される断面においても完全な円であることは少ない。平滑化処理前よりも平滑化処理後の方が、真球ではなく球の一部が潰れた形になる。
【0048】
(導電性ペースト)
導電性ペーストは本実施形態に係る銀粉を導電性フィラーとして含む。導電性ペーストは、銀粉の他に、溶剤、バインダーを含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。溶剤及びバインダー等は、使用態様に応じて適宜選定してよい。
【0049】
(銀粉の製造方法)
本実施形態に係る銀粉の製造方法について詳述する。本実施形態に係る銀粉の製造方法は、上述のとおり、原料混合工程と、粒子析出工程と、回収工程と、表面平滑化工程とを含む。
【0050】
(原料混合工程)
原料混合工程は、後述する各銀粒子を得るための原料となる混合液を得る工程である。混合液は、銀水溶液とポリカルボン酸と表面処理剤を混合した混合液とすることができ、または、銀水溶液とポリカルボン酸と粒径調整剤を混合した混合液とすることもできる。
【0051】
銀水溶液は、銀イオンを含有する水溶液である。銀水溶液は、水に可溶な銀塩であればよく、銀イオン供給源として、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、塩素酸銀、6フッ化リン酸銀、4フッ化ホウ酸銀、6フッ化ヒ酸銀、硫酸銀を挙げることができ、例えば硝酸銀水溶液とすることが好ましい。
【0052】
銀水溶液とポリカルボン酸とは、容器内において撹拌翼によって均一に混合されればよく、特に混合時間は限定されない。ポリカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びマロン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリカルボン酸であることが好ましい。ポリカルボン酸の添加量としては、銀に対して20質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。
【0053】
まず、銀水溶液とポリカルボン酸とを混合し、その後、表面処理剤を添加する。表面処理剤は、銀水溶液とポリカルボン酸との混合と同じタイミングで添加しても良い。表面処理剤に代えて粒径調整剤を添加しても良く、表面処理剤の添加は還元剤の添加後としても良い。
【0054】
表面処理剤としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸などの脂肪酸や、アミノ酸、ベンゾトリアゾールなどのアゾール類が挙げられる。表面処理剤の添加量としては、得られる銀粒子に対して0.1質量%以上2.0質量%以下とすることが好ましい。
【0055】
粒径調整剤としては、高分子アミンが挙げられ、本発明に係る高分子アミンは、第1アミン(-NH2)、第2アミン(=NH)のいずれか一つ、または、両者を共に有する高分子である。本発明に係る好ましい高分子アミンの具体例としては、アミノ化合物、イミノ化合物が挙げられる。なかでも、PEI(ポリエチレンイミン)が好ましい。特にイミン化合物であるPEIは、その構造が分子中に第一アミン及び第二アミンの両者を共に有する網状構造であり、本発明において好ましい結果を与える。粒径調整剤の添加量としては、得られる銀粒子に対して0.1質量%以上2.0質量%以下とすることが好ましい。
【0056】
(粒子析出工程)
粒子析出工程は、混合液に対し、還元剤を添加して銀粒子を析出させる工程である。前述の原料混合工程により、表面処理剤または粒径調整剤を添加した後の混合液に、還元剤を添加する。還元剤はアスコルビン酸又はその異性体からなる還元剤を使用する。
【0057】
還元剤添加時の液温は、10℃以上35℃以下が好ましく、15℃以上29℃以下とすることがより好ましい。温度が低いと、還元が十分に進まないため、銀粒子として回収できない場合がある。また、温度が高いと、得られる銀粒子の空隙のサイズやDxが大きくなりすぎる場合がある。
【0058】
(還元剤添加後の表面処理剤の添加)
還元剤添加後に、表面処理剤を添加しても良い。表面処理剤としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸などの脂肪酸や、アミノ酸、ベンゾトリアゾールなどのアゾール類が挙げられる。
【0059】
(乾燥工程)
乾燥工程は、粒子析出工程で得られた銀粒子の集合体を含む懸濁液から乾燥粉を得る工程である。乾燥工程は、その前にろ過工程、水洗工程を含んでもよい。
【0060】
ろ過は任意の方法で良い。水洗工程では、洗浄液の電気伝導率を測定し、電気伝導率が0.5mS/m以下となるまで水洗を繰り返し行うことが好ましい。乾燥工程では、強制循環式大気乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥装置等の乾燥機を使用することができる。このとき、粒子析出工程で得られた銀粒子の内部構造は内部に空隙を多く含むため、粒子内の銀結晶が分断されており、乾燥工程での加熱による結晶径の増加は抑制される。乾燥後の銀粒子は、見かけ密度が9.2g/cm3未満であり、粒子断面における粒子外周に外接する線20の線長に対する、粒子外周線10の線長の比が1.4を超える。
【0061】
(表面平滑化工程)
表面平滑化工程は、乾燥工程で得られた乾燥後の銀粒子の表面の一部を平滑化する工程である。粒子表面を「平滑化」するとは、粒子表面の凹凸を低減することを意味する。粒子表面の「一部」を平滑化するとは、乾燥粉において観察される粒子外周において外部と連通している穴の一部が残存しており、凹凸を完全に消失させるのではない(すなわち、L1/L2=1とはしない)ことを意味する。
【0062】
表面平滑化工程では、撹拌翼によって乾燥粉を流動化して、粒子同士を流動させ衝突させることで、粒子の表面を塑性変形させて、表面の凹凸を低減する。高速回転する撹拌翼を有する電動ミルを使用することが好ましい。粒子同士の衝突の際、粒子中の空隙が部分的に潰れ、空隙体積が減ることが考えられる。表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm3以上9.2g/cm3以下、かつ、粒子断面における外周線の線長と粒子断面の外周に外接する線20の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで乾燥後の銀粒子の表面を平滑化する。このとき削りカスや粗大粒子を除去する分級工程を追加しても良い。
【実施例0063】
以下、銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法の実施例を説明する。
【0064】
[実験例1]
(実施例1)
硝酸銀水溶液152.7g(銀の含有量32.2wt%)を純水3235gで希釈した。そして希釈した硝酸銀水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液(クエン酸濃度20wt%)433.5gを添加した。その後、表面処理剤(ステアリン酸をエタノールで10倍希釈したもの)を6.0g添加した。その後、液温を15℃として、さらにアスコルビン酸水溶液(アスコルビン酸試薬40.2gを160.6gの純水で希釈したもの)を還元剤として添加して、10分間撹拌することで、銀粒子を含む懸濁液を得た。
【0065】
次に、撹拌を停止して、銀粒子を含む懸濁液をヌッチェでろ過した。得られた銀粒子に洗浄水を通過させ、洗浄液の電気伝導率が0.5mS/m以下となるまで濾過後の銀粒子を水洗した。その後、洗浄後の銀粒子を73℃で10時間真空乾燥して乾燥粉を得た。
【0066】
更に、表面平滑化工程として、乾燥粉をサンプルミル(協立理工株式会社製、SK-M10)に投入し、30秒間の撹拌することを2回繰り返して実施例1に係る銀粒子の集合体としての銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の100000倍の粒子表面及び断面のSEM観察像を図4及び図5に示す。
【0067】
(実施例2)
液温を28℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の100000倍の粒子表面及び断面のSEM観察像を図6及び図7に示す。
【0068】
(比較例1)
表面平滑化工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の100000倍の粒子表面及び断面のSEM観察像を図8及び図9に示す。
【0069】
(比較例2)
表面平滑化工程を行わなかった以外は実施例2と同様にして、比較例2に係る銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の100000倍の粒子表面及び断面のSEM観察像を図10及び図11に示す。
【0070】
(従来例)
導電性ペーストに用いられる銀粉の従来例として、DOWAハイテック製のAG-4-8Fを用いた。銀粉中の銀粒子の40000倍の粒子断面SEM観察像を図12に示す。
【0071】
(銀粉評価)
銀粉の評価は以下に説明するとおり行った。
【0072】
見かけ密度は、乾式自動密度計で測定した。まず、10ccのプラチナるつぼに銀粉試料を10gから20g投入し、投入した銀粉重量を精密に測定した。そして、乾式自動密度計(マイクロメリティックス製 アキュピックII1340)を用いて測定に供した。るつぼ内が一定圧力になるまでヘリウムガスを充填したときのガス体積から粉体の体積を測定し銀粉重量をその体積で除算することで見かけ密度を計算した。
【0073】
Ig-Lossの測定は、銀粉の試料(2g)を精密に秤量(秤量値:w1)して磁性るつぼに入れ、800℃まで加熱した。そして恒量に至るのに十分な時間として800℃で30分間保持した。その後、冷却し、再度秤量(秤量値:w2)した。当該w1、w2を下記(式1)に代入し、強熱減量値を求めた。
【0074】
強熱減量値(質量%)=(w1-w2)/w1×100・・・(式1)
【0075】
粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布装置(マイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT-3300EXII)を用いて行った。測定の直前に、銀粉0.3gをイソプロピルアルコール40mLに加え、出力45Wの超音波洗浄器により5分間分散させた。そして当該分散液中の銀粒子の粒度分布を測定した。メジアン径(累積50%粒子径、いわゆるD50)は、体積基準による値を採用した。
【0076】
結晶子径(Dx)はX線回折装置を用いて、ミラー指数(111)面のピークデータを用いてScherrerの式(Dhkl=Kλ/βcosθ)によって求めた。この式中、Dhklは結晶子径の大きさ(hklに垂直な方向の結晶子の大きさ)(nm)、λは特性X線の波長(nm)(Coターゲット使用時0.17889nm)、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり(rad)(半価幅を用いて表す)、θは回折角のブラッグ角(rad)(入射角と反射角が等しいときの角度であり、ピークトップの角度を使用する)、KはScherrer定数(K=0.94)である。
【0077】
次に、銀粉中の銀粒子の断面観察を行った。まず、それぞれの試料を樹脂中に固化し、クロスセクションポリッシャーにより研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、FE-SEM(日本電子製JSM-6100)により各粒子の断面を10万倍で観察した。そして、銀粒子の中心付近の断面を観察できていると考えられる粒子断面の中から任意に各2個の粒子断面について、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View)を用いて、上記の線長L1、L2、及び、粒子外周線10で囲まれた面積(粒子断面積)、粒子内の各空隙の面積及び空隙の個数を測定した。この中から各粒子中の最大の空隙の断面積を選出し、選出した中の最大値(すなわち「最大の空隙の断面積の最大値」)を記載すると共に「最大の空隙の面積率」を算出した。また、平均値として線長の比としてのL1/L2及び空隙率を算出した。
【0078】
(導電性ペースト評価)
導電性ペーストの各特性の評価は以下に説明するとおり行った。
【0079】
まず、得られた銀粉89.7質量%と、ガラスフリット(岡本ガラス株式会社製のFSGCO2)2.0質量%と、分散剤としてオレイン酸0.4質量%と、樹脂としてエチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースの混合物0.2質量%と、溶剤としてテルピネオールとテキサノールとブチルカルビトールアセテートの混合物6.2質量%と、チクソ剤として水添ヒマシ油1.1質量%と、ライン形状保持剤としてジメチルポリシロキサン0.4質量%とをプロペラレス自公転式撹拌脱泡装置(株式会社シンキー製のAR250)で混練し、3本ロール(EXAKT社製の80S)で混練した後、メッシュ数500μmのメッシュを通過させることにより、導電性ペーストを得た。
【0080】
得られた導電性ペーストを用い、スクリーン印刷にて、線幅が18μm、20μm、22μm、24μm、26μm、28μm、30μmそれぞれの幅を有する試験用のスクリーンを用い、それぞれの電極配線をシリコンウエハ上に印刷した。そしてエレクトロルミネッセンスの発光観察により、各線幅での断線の有無を観察し、断線が生じていない最も細い線幅(印刷可能線幅と称する)を確認した。
【0081】
次に、導電性ペーストを用い、スクリーン印刷にて幅500μm、長さ37.5mmの配線をシリコンウエハ上に印刷した。得られた配線を、大気循環式乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DK-43)を用い、200℃で10分間の条件で乾燥した後、日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験炉を用いピーク温度770℃、インアウト21秒間の条件で焼成し導電膜を作製した。得られた導電膜について、抵抗値をデジタルマルチメーター(三菱ケミカル株式会社製、MCP-T410)を用いて抵抗値を測定した。その後、基板上で配線を印刷していない部分と配線を印刷している部分との差を表面粗さ計(東京精密株式会社製、サーフコム480B)にて測定し配線の膜厚とした。得られた抵抗値、膜厚より、以下の計算式(式2)を用いて導電膜の体積抵抗率を算出した。
【0082】
体積抵抗率(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×膜厚(cm)×線幅(cm)/線長(cm)・・・(式2)
【0083】
また、表面粗さ計により導電膜における膜厚と線幅を5か所測定し、導電膜のアスペクト比(膜厚/線幅)の平均値を計算した。
【0084】
以上の銀粉の評価結果及びペーストの評価結果について、表1及び表2に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び表2に示す結果から、実施例1及び実施例2の銀粉を用いた導電性ペーストでは、いずれの比較例及び従来例と比べても、電極配線について、アスペクト比の増大、印刷可能線幅の縮小及び体積抵抗率の低減が見られており、優れた導電性ペーストであることが分かる。そして、従来例の図12のような円形の空隙を有する銀粉の見かけ密度は9.8g/cm3であり、9.3g/cm3以上9.8g/cm3以下の範囲内であった。実施例の銀粉は従来の銀粉に比べて空隙が多く、見かけ密度が小さいことが分かった。また、図4から図11を参照して、実施例1及び2において特に、銀粉中の銀粒子が、空隙部を有しつつ平滑化された凹凸を有していることが分かる。このことは、実施例1及び2においては、撹拌による表面平滑化工程を実施したことにより、粒子表面が平滑化されL1/L2が小さくなった評価結果とも整合する。
【0088】
これに対し、例えば比較例1では、メジアン径、Ig-Loss及び見かけ密度は実施例1の値とでは大差ないものの、印刷可能線幅において実施例1は比較例1の2/3以下であり、アスペクト比も実施例1では0.3を超えている。ここで、表面の凹凸を示すL1/L2の値をみると、実施例1において1.1であるところ、比較例1では2.7であり、2倍以上の違いがある。この理由としては、表面平滑化を行っていない比較例1の銀粉は実施例1の銀粉に比べて銀粉中の銀粒子が表面に多数の突起を有しているため、ペーストにしたときの粘度が高くなっていることが予想される。そのため、狭いノズルから吐出するのに適さず、そのようなノズルを用いた印刷に適さないためと考えられる。すなわち、比較例1の銀粉は、電極配線の線幅を細くする用途には適さない。同様に、実施例2と比較例2も、メジアン径、Ig-Lossについては大きな差はないものの、印刷可能線幅において実施例2は比較例2の2/3であり、アスペクト比も実施例2では0.3を超えている。
【0089】
実験例1の結果から、実施例にあっては、表面平滑化工程を実施することにより、粒子表面の凹凸が小さくなり、L1/L2が小さくなり、その結果、優れた導電性ペーストが得られると考えられる。なお、実施例1と比較例1及び実施例2と比較例2との比較において、それぞれ実施例1、実施例2の方が見かけ密度が大きく、空隙率が小さいことが分かる。このことから、表面平滑化工程においては、粒子表面の凹凸を平滑化するときに、粒子同士の衝突により空隙の一部が潰れ、空隙体積が減ったことによるものと考えられる。
【0090】
[実験例2]
(実施例3)
硝酸銀水溶液3556.2g(銀の含有量31.98wt%)を純水66140.5gで希釈した。そして希釈した硝酸銀水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液(クエン酸濃度20wt%)10124.9gを添加した。その後、粒径調整剤としてポリエチレンイミン(純正化学株式会社製、平均分子量が約600である5wt%水溶液)を113.7g(銀に対して0.5wt%)添加した。
【0091】
その後、液温を20℃として、さらにアスコルビン酸水溶液(アスコルビン酸試薬1021gを4084gの純水で希釈したもの)を還元剤として添加した。還元剤の添加から1分後に表面処理剤として、ステアリン酸をエタノールで10倍希釈したものを銀に対してステアリン酸量が1.8wt%となるように添加した。その後、3分間撹拌することで、銀粒子を含む懸濁液を得た。
【0092】
次に、撹拌を停止して、銀粒子を含む懸濁液を加圧ろ過器でろ過した。得られた銀粒子に洗浄水を通過させ、洗浄液の電気伝導率が0.5mS/m以下となるまで濾過後の銀粒子を水洗した。その後、洗浄後の銀粒子を73℃で10時間真空乾燥して乾燥粉を得た。
【0093】
更に、表面平滑化工程として、乾燥粉をサンプルミル(協立理工株式会社製、SK-M10)に投入し、30秒間の撹拌することを2回繰り返して実施例5に係る銀粒子の集合体としての銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の60000倍の粒子断面のSEM観察像を図13に示す。
【0094】
(実施例4)
混合液の液温を28℃とした以外は、実施例3と同様にして実施例4に関わる銀粉を得た。得られた銀粉中の銀粒子の50000倍の粒子断面のSEM観察像を図14に示す。
【0095】
(銀粉評価)
実験例2においても、実施例3と実施例4に関する銀粉の評価は、実験例1における実施例1と同様に、上記に説明する方法で行った。
【0096】
(導電性ペースト評価)
実験例2では、実施例3、実施例4および従来例の銀粉についての導電性ペーストの各特性の評価は以下に説明するとおり行った。
【0097】
まず、得られた銀粉89.7質量%と、ガラスフリット(岡本ガラス株式会社製のFSGCO2)2.0質量%と、分散剤としてオレイン酸0.4質量%と、樹脂としてエチルセルロールとヒドロキシプロピルセルロースの混合物0.2質量%と、溶剤としてテルピネオールとテキサノールとブチルカルビトールアセテートの混合物6.2質量%と、チクソ剤として水添ヒマシ油1.1質量%と、ライン形状保持剤としてジメチルポリシロキサン0.4質量%とをプロペラレス自公転式撹拌脱泡装置(株式会社シンキー製のAR250)で混練し、3本ロール(EXAKT社製の80S)で混練した後、500μmのメッシュを通過させることにより、導電性ペーストを得た。さらに、導電性ペーストの粘度を測定し、粘度が100Pa・sを超える場合には、得られた導電性ペーストに上述した溶剤の混合物(テルピネオールとテキサノールとブチルカルビトールアセテートの混合物)を必要量添加し、粘度が50から100Pa・sの範囲に入るようにした導電性ペーストを得た。
【0098】
導電性ペーストの粘度は、回転式の粘度計によって測定した値を用いることができる。本実施形態では、粘度計としてブルックフィールド製DV-IIIを用い、以下の条件で
粘度を測定した。本実施形態におけるブルックフィールド製DV-IIIを用いた粘度の
測定においては、回転ローターにはCP-52コーンを用いた。測定温度は25℃とし、ローターの回転数は5rpmとした。粘度の値は、ローターを1分間回転させた時点の値を採用した。
【0099】
得られた導電性ペーストを用い、スクリーン印刷にて、線長150mm、線幅が10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、20μmそれぞれの幅を有する試験用のスクリーンを用い、それぞれの電極配線10本をシリコンウエハ上に印刷した。得られた配線を、大気循環式乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DK-43)を用い、200℃で5分間の条件で乾燥した後、日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験炉を用いピーク温度750℃、インアウト21秒間の条件で焼成し導電膜を作製した。得られた導電膜について、抵抗値をデジタルマルチメーター(ADCMT製、7451A)を用いて抵抗値(Ω)を測定した。抵抗値のバラつきが大きいことは線幅のバラつきが大きく一部に印刷の欠けが発生していることを示すことから、各線幅の電極配線の10本分の抵抗値の四分位範囲(第3四分位数-第1四分位数)の大きさが5Ω以下となるものを電極配線として適した印刷が出来ていると判断した。四分位範囲とは、10本の電極配線の測定値のうち、最小値を0%、最大値を100%として、計算により75%の値(第3四分位数)と25%の値(第1四分位数)を算出し、算出した第3四分位数から第1四分位数を引いた値のことを指す。そして、適した印刷が出来ている中で最も細い線幅を確認し、印刷可能線幅として記載した。
【0100】
線幅20μmで印刷して得られた導電膜をレーザー顕微鏡(キーエンス製VK-X1000)を用いて、線幅、高さ、断面積を測定した。得られた抵抗値、断面積より、上述の計算式(式2)を用いて導電膜の体積抵抗率を算出した。
【0101】
実施例3および実施例4の銀粉と、従来例の銀粉の評価について表3、表4に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
実施例3および実施例4の銀粉と、従来例のペーストの評価結果について、表5に示す。
【表5】
【0105】
実験例2の結果からは、実施例3および4と従来例の比較においても、実施例の銀粉は、導電性ペーストとして用いたときに、線幅を細くしても断線を起こしにくく、従来に比べて体積抵抗率の小さい銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法を提供することができることがわかった。
【0106】
[実験例3]
(実施例5)
ペースト作製する際に、見かけ密度が9.965g/cm3であり、メジアン径(D50)が2.0μmであり、結晶子径が38nmであり、Ig-Lossが0.6%である銀粉Aを用意した。銀粉Aに、実施例3にて得られた銀粉を20wt%添加して混合し、実施例5の銀粉を得た。その銀粉について、レオメータを用いて粘度を評価した以外は実施例3と同様に導電性ペーストを作製した。
【0107】
(比較例3)
実施例3にて得られた銀粉を添加しなかった以外は、実施例5と同様として比較例3に係る銀粉を得た。
【0108】
(導電性ペースト評価)
実験例3における実施例5、比較例3に係る導電性ペーストの粘度は、回転式のレオメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 MARS60)を用い、以下の条件で粘度を測定した。回転ローターにC35 2°/Tiを用い、測定温度は25℃とし、ずり応力を100秒間で10Paから1000Paまで指数関数的に増加させ、ずり速度を測定する。ずり応力[Pa]÷ずり速度[1/s]=粘度[Pa・s]より粘度を算出した。
【0109】
印刷可能線幅は実施例3と同様に、各線幅の抵抗値の四分位範囲により確認した。体積抵抗率は、線幅12μmで印刷して得られた導電膜を用いて、実施例3と同様に評価を行った。
【0110】
実施例5および比較例3のペーストの評価結果について、表6に示す。
【表6】
【0111】
実験例3の結果からは、本発明の銀粉は、見かけ密度の大きい他の銀粉と混合することでも、印刷可能線幅を小さくすることができ、体積抵抗率を低下させる効果を示すことが分かった。本発明の銀粉を他の銀粉に混合する場合の、本発明の銀粉混合量としては適宜設定することができ、例えば1~50wt%とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明の銀粉は、導電性ペーストとして用いたときに、線幅を細くしても断線を起こしにくく、従来に比べて体積抵抗率の小さい銀粉、銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト及び銀粉の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 粒子外周線
20 外周に外接する線
30 包絡線
31 深い凹部の包絡線
32 浅い凹部の包絡線
35 垂線
41 平行な線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子の集合体としての銀粉であって、
見かけ密度が8.2g/cm以上9.2g/cm以下であり、
前記銀粒子の粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下である銀粉。
【請求項2】
最大の空隙の面積率が、0.1%以上1.0%以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項3】
前記銀粒子の前記粒子断面において観察される空隙の総面積が当該粒子断面の断面積の5%以上である請求項1に記載の銀粉。
【請求項4】
体積基準のメジアン径が0.6μm以上2.0μm以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項5】
強熱減量値が1.0wt%以上3.0wt%以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項6】
銀の結晶子径が10nm以上28nm以下である請求項1に記載の銀粉。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。
【請求項8】
銀水溶液とポリカルボン酸と脂肪酸またはアゾール類である表面処理剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm以上9.2g/cm以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【請求項9】
銀水溶液とポリカルボン酸と高分子アミンである粒径調整剤とを混合して混合液を得る原料混合工程と、
前記混合液に還元剤を添加して銀粒子を析出させる粒子析出工程と、
前記銀粒子の集合体を乾燥させて乾燥粉を得る乾燥工程と、
乾燥後の前記銀粒子の表面の一部を平滑化して銀粉を得る表面平滑化工程とを含み、
前記表面平滑化工程では、見かけ密度が8.2g/cm以上9.2g/cm以下、且つ、粒子断面における外周線の線長と前記粒子断面の外周に外接する線の線長との比が、1.1以上1.4以下となるまで前記銀粒子の表面を平滑化する銀粉の製造方法。
【請求項10】
前記粒子析出工程における液温を10℃以上35℃以下とする請求項8又は9に記載の銀粉の製造方法。
【請求項11】
前記表面平滑化工程前の前記乾燥粉の見かけ密度が9.2g/cm未満であり、粒子断面における粒子外周に外接する線の線長に対する、粒子外周線の線長の比が1.4を超え、前記表面平滑化工程後の前記乾燥粉の見かけ密度が前記表面平滑化工程前よりも大きくなる請求項8又は9に記載の銀粉の製造方法。
【請求項12】
請求項1~6に記載の銀粉と、見かけ密度が9.2g/cmより大きい銀粉とを混合した混合銀粉。
【請求項13】
請求項12に記載の混合銀粉を導電性フィラーとして含む導電性ペースト。