(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049333
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20230403BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230403BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230403BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/068 20060101ALI20230403BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230403BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20230403BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20230403BHJP
A61K 35/644 20150101ALI20230403BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/282 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/739 20060101ALI20230403BHJP
A61K 36/87 20060101ALI20230403BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20230403BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230403BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20230403BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20230403BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K8/98
A61K36/068
A61P17/14
A61P43/00 121
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A61K38/01
A61K35/644
A61K36/185
A61K36/282
A61K36/48
A61K36/534
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A61K125:00
A61K127:00
A61K131:00
A61K133:00
A61K135:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159008
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】田邊 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】大戸 信明
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC37
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4C087ZA92
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4C088AB12
4C088AB29
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4C088AB56
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4C088AC05
4C088AC06
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4C088BA10
4C088MA02
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4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA92
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物由来の組成物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を提供する。
【解決手段】育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤に、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分として含有する育毛剤。
【請求項2】
ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分として含有する毛乳頭細胞増殖促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、成長期、退行期及び休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期にかけて新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞に働きかけてその増殖を促進する等、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。
【0003】
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において最も重要な役割を果たしており、従来、培養毛乳頭細胞に対象物質を接触させて、その細胞の増殖活性の有無及び/又は強弱を特定することで、その対象物質の育毛効果を検定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
従来、毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものとしてコンブ科、チガイソ科、レッソニア科、ヒバマタ科、ホンダワラ科、ミリン科、スギノリ科、ムカデノリ科、テングサ科、オゴノリ科、アオサ科から選ばれる3種以上の海藻抽出物(特許文献2参照)、オオバモクの抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-229978号公報
【特許文献2】特開2007-131571号公報
【特許文献3】特開2008-247784号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Trends Genet」,1992年,第8巻,p.56-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性の高い天然物由来の組成物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物からなる群から選択される1種又は2種以上を有効成分として含有する育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性の高い天然物由来の組成物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分として含有する。
【0011】
本実施形態における有効成分としての各種抽出物を得るために使用される抽出原料は、ショウガ、スターフルーツ、ワレモコウ、アカブドウ、アセンヤク、ガイヨウ、シナノキ、甜茶、冬虫夏草、トルメンチラ、プルーン、ペパーミント、リンゴ、ローヤルゼリー、及びユキノシタである。
【0012】
ショウガ(学名:Zingiber officinale)は、ショウガ科ショウガ属に属する植物であって、日本各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るショウガの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、果実部、根茎部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根茎部である。
【0013】
スターフルーツ(学名:Averrhoa carambola)は、カタバミ科ゴレンシ属に属し、新鮮な果実は食用にされる。スターフルーツは、沖縄、中国東南部や雲南その他熱帯各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るスターフルーツの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、幹部、花部、蕾部、果実部、種子部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0014】
ワレモコウ(学名:Sanguisorba officinalis)は、バラ科ワレモコウ属に属する植物であって、日本、中国、ヨーロッパ等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るワレモコウの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、果実部、根部、根茎部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根部及び/又は根茎部である。
【0015】
アカブドウ(学名:Vitis vinifera)は、ブドウ科ブドウ属に属する植物であって、南西アジア、ヨーロッパ等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用され得るアカブドウの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茎部、蔓部、葉部、果実部、花部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0016】
アセンヤク(生薬名)は、アカネ科カギカズラ属に属するガンビールノキ(学名:学名:Uncaria gambir)の葉部及び若枝部から得られる。ガンビールノキは、東南アジア等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。アセンヤクは、口腔清涼剤、止瀉剤、整腸薬等として使用されている。
【0017】
ガイヨウ(生薬名)は、日本全土に分布しているキク科ヨモギ属に属する多年生草本であるヨモギ(学名:Artemisia princeps Pampanini)の葉部であり、これらの地域から容易に入手され得る。ガイヨウは従来、婦人科領域の止血、流産防止、寒証の腹痛の予防等に使用されている。
【0018】
シナノキ(学名:Tilia cordata Mill.,Tilia platyphyllos Scop.)は、シナノキ科シナノキ属に属する落葉高木であって、主に北海道から九州までの山地等に分布しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るシナノキの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、又は、これらの混合物等が挙げられるが、好ましくは花部である。
【0019】
なお、「花」とは、一般に種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体をいい、葉の変形である花葉と、茎の変形である花軸とから構成され、花葉には、萼、花弁、オシベ、心皮等の器官が含まれる。本実施形態において抽出原料として使用し得る「花部」には、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体の他、その一部、例えば、花葉、花被(萼と花冠)、花冠、花弁等も含まれる。
【0020】
甜茶(学名:Rubus suavissimus)は、バラ科キイチゴ属に属する灌木であって、中国南部等で自生しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得る甜茶の構成部位としては、葉部、茎部、花部、果実部、根部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0021】
冬虫夏草(学名:Cordyceps sinensis)は、子嚢菌類バッカクキン目バッカクキン科に属する菌類であって、チベットや中国等で生育しており、これらの地域から容易に入手され得る。冬虫夏草とは、昆虫又はその幼虫に寄生してその体内に菌核を形成し、宿主である昆虫又はその幼虫の体表面に形成される子実体のことをいう。冬虫夏草としては、蝶蛾類鱗翅目及び鞘翅目のコウモリ蛾(学名:Hepialus armoricanus Oberthur)の幼虫に寄生してその体内に菌核を形成し、宿主であるコウモリ蛾の幼虫の体表面に形成される子実体が知られている。抽出原料として使用し得る冬虫夏草の構成部位としては、子実体又は当該子実体と昆虫(又はその幼虫)との複合体等が挙げられるが、好ましくは、子実体と昆虫(又はその幼虫)との複合体である。
【0022】
トルメンチラ(学名:Potentilla tormentilla vulgaris)は、バラ科キジムシロ属に属する多年草であって、ヨーロッパ、西アジア、シベリア等に分布し、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るトルメンチラの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、地上部、根部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0023】
プルーン(学名:Prunus domestica)は、バラ科サクラ属に属する落葉高木であって、セイヨウスモモとも呼ばれる。プルーン(セイヨウスモモ)は、ヨーロッパ、アメリカ等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、茎部、花(蕾)部、果実部、果肉部、樹皮部、根部、塊根部、地上部またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは果肉部を酵素処理したものである。
【0024】
ペパーミント(学名:Mentha piperita)は、シソ科ハッカ属に属する多年草であって、ヨーロッパ、アメリカ等に分布しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るペパーミントの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、花部、樹皮部、地上部、根部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0025】
リンゴ(学名:Malus domestica)は、バラ科リンゴ属に属する落葉高木であって、日本や中国、ヨーロッパ等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るリンゴの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、果実部、果皮部、種子部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
【0026】
抽出原料としてのローヤルゼリーは、ヨーロッパ、アフリカ等に分布しているミツバチ科ミツバチ属に属するヨーロッパミツバチ(学名:Apis melifera L.,別名:セイヨウミツバチ)又はトウヨウミツバチ(学名:Apis indeca Radoszkowski)のうちの若い働き蜂の咽頭腺からの分泌物である。
【0027】
ユキノシタ(学名:Saxifraga stolonifera)は、ユキノシタ科ユキノシタ属に属する多年草であって、日本や中国等に分布しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るユキノシタの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、種子部、地上部、根部、これらの混合物、又は全草等が挙げられるが、好ましくは全草である。
【0028】
上記の抽出原料からの抽出物に含まれる毛乳頭細胞増殖促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料から毛乳頭細胞増殖促進作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0029】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0030】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。抽出原料に含まれる毛乳頭細胞増殖促進作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0031】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0032】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0033】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0034】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0035】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0036】
なお、得られた抽出液はそのままでも育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0037】
また、上記抽出物は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料等に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0038】
本実施形態における有効成分である真珠タンパク質加水分解物は、真珠層を有する貝の貝殻及び/又は真珠を脱灰処理し、これにより得られる真珠タンパク質(コンキオリン)を加水分解したものである。
【0039】
真珠層を有する貝としては、例えば、ウグイスガイ科に属するアコヤ貝(学名:Pinctada fucata);イガイ科に属するイガイ(学名:Mytilus coruscum)、ムラサキイガイ(学名:Mytilus edulis);イシガイ科に属するイケチョウガイ(学名:Hyriopsis schlegelii)、カラスガイ(学名:Cristaria plicata)等が挙げられるが、これらのうちアコヤ貝を用いるのが好ましい。
【0040】
真珠層を有する貝の貝殻及び/又は真珠は、そのまま、又は粉砕して脱灰処理をする。貝殻及び/又は真珠の脱灰処理は、常法により行えばよく、例えば、貝殻及び/又は真珠に酸又はその水溶液を添加して撹拌する。
【0041】
脱灰処理に使用する酸としては、貝殻及び/又は真珠に含まれる炭酸カルシウム等の無機成分を十分に溶出させ得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸;シュウ酸、炭酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、酢酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混酸を使用してもよい。
【0042】
酸又はその水溶液の添加量は、貝殻及び/又は真珠に含まれる炭酸カルシウム等の無機成分を十分に溶出させ得る量であればよく、使用する酸の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
脱灰処理により得られた処理液を遠心分離、濾過、デカンテーション等の固液分離手段を付して不溶物を回収し、必要に応じて回収した不溶物に精製水を添加して再度遠心分離、濾過等の洗浄操作を繰り返し、不溶物を回収する。そして、得られる不溶物を、所望により粉砕機等を用いて微粉砕し、常法により乾燥して真珠タンパク質(コンキオリン)を得ることができる。
【0044】
得られた真珠タンパク質(コンキオリン)を加水分解して真珠タンパク質加水分解物を製造する。真珠タンパク質加水分解物を製造する際に用いることができる溶媒としては、水を含む限りにおいて、特に制限はなく、水を単独で用いてもよいし、水と酸(又はアルカリ)との混合溶媒を用いてもよい。
【0045】
溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0046】
真珠タンパク質(コンキオリン)の加水分解処理に使用し得る酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、真珠タンパク質(コンキオリン)の加水分解処理に使用し得るアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
酸又はアルカリの水溶液を使用して加水分解する場合、酸又はアルカリの水溶液の添加量や当該水溶液における酸又はアルカリの濃度は、貝殻及び/又は真珠に含まれる真珠タンパク質(コンキオリン)を加水分解し得るが、完全にアミノ酸にまで分解し得ない量であればよく、使用する酸又はアルカリの種類に応じて当該水溶液の添加量や当該水溶液における酸又はアルカリの濃度を適宜変更することができる。なお、加熱分解処理は、0~130℃、好ましくは50~110℃の温度条件下で、30分~10日間程度、好ましくは5時間~5日間程度行うことができる。
【0048】
加水分解処理により得られた溶液から酸又はアルカリを除去し、必要に応じて限外濾過処理をして高分子ペプタイドを除去し、さらに濃縮、乾燥等の処理をすることで、真珠タンパク質加水分解物を得ることができる。なお、酸又はアルカリは、加水分解処理により得られた溶液から常法により除去することができ、例えば、凍結乾燥、中和して脱塩する方法等が挙げられる。
【0049】
以上のようにして得られるショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物は、育毛作用を有しているため、その作用を利用して育毛剤の有効成分として用いられ得る。
【0050】
ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物が有する育毛作用は、例えば、毛乳頭細胞増殖促進作用に基づいて発揮される。ただし、上記抽出物が有する育毛作用は、上記毛乳頭細胞増殖促進作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。また、上記抽出物は、その毛乳頭細胞増殖促進作用を利用して、毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として使用してもよい。
【0051】
なお、本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤においては、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物のうちのいずれか1種を上記有効成分として用いてもよいし、それらのうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。上記抽出物のうちの2種以上を混合して有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定されればよい。
【0052】
本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物から選ばれる1種又は2種以上を製剤化したものであってもよい。
【0053】
上記抽出物及び加水分解物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物及び加水分解物を製剤化した育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進作用の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を活性化し、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成を促進することができる。これにより、育毛及び/又は養毛を促進することができ、種々の脱毛症(例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症等)を予防・改善することができる。ただし、本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0055】
本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤の患者に対する投与方法としては、皮下組織内投与、筋肉内投与、静脈内投与、経口投与、経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0056】
また、本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有するため、頭皮化粧料や頭髪化粧料等の化粧料等に配合するのに好適である。
【0057】
育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を配合可能な化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、リンス、ポマード等が挙げられる。育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。化粧料は、上記抽出物及び加水分解物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0058】
なお、本実施形態に係る育毛剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例0059】
以下、製造例、試験例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記製造例、試験例等に何ら制限されるものではない。なお、下記の試験例においては、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物は、製造例1~15で得られた各抽出物を被験試料として使用し、真珠タンパク質加水分解物は、真珠たん白抽出液LA-J(製品名,丸善製薬社製)を被験試料として使用した。
【0060】
〔製造例1〕ショウガ抽出物の製造
ショウガの根茎部の乾燥物100gに70容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ショウガ抽出物(5g)を得た。
【0061】
〔製造例2〕スターフルーツ抽出物の製造
スターフルーツの葉部の乾燥物100gに80容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、スターフルーツ葉抽出物(10g)を得た。
【0062】
〔製造例3〕ワレモコウ抽出物の製造
ワレモコウの根部及び根茎部の乾燥物100gに50容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ワレモコウ抽出物(24g)を得た。
【0063】
〔製造例4〕アカブドウ抽出物の製造
アカブドウの葉部の乾燥物100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、アカブドウ抽出物(5g)を得た。
【0064】
〔製造例5〕アセンヤク抽出物の製造
ガンビールノキの葉部及び若枝部から水にて抽出し乾燥して得られた抽出乾燥物100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、アセンヤク抽出物(20g)を得た。
【0065】
〔製造例6〕ガイヨウ抽出物の製造
ヨモギの葉部の乾燥物100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ガイヨウ抽出物(10g)を得た。
【0066】
〔製造例7〕シナノキ抽出物の製造
シナノキの花部の乾燥物100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、シナノキ抽出物(5g)を得た。
【0067】
〔製造例8〕甜茶抽出物の製造
甜茶の葉部の乾燥物100gに精製水1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、甜茶抽出物(20g)を得た。
【0068】
〔製造例9〕冬虫夏草抽出物の製造
冬虫夏草(複合体)の乾燥物100gに80容量%エタノール溶液1000mLを加え、還流抽出器を用いて80℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、冬虫夏草抽出物(13g)を得た。
【0069】
〔製造例10〕トルメンチラ抽出物の製造
トルメンチラの根部の乾燥物100gに精製水1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、トルメンチラ抽出物(8g)を得た。
【0070】
〔製造例11〕プルーン抽出物の製造
プルーン(セイヨウスモモ)の果肉部に水を加えて繊維素分解酵素にて分解した分解物100gを乾燥し、プルーン抽出物(30g)を得た。
【0071】
〔製造例12〕ペパーミント抽出物の製造
ペパーミントの葉部の乾燥物100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ペパーミント抽出物(8g)を得た。
【0072】
〔製造例13〕リンゴ抽出物の製造
リンゴの果実部100gに50容量%1,3-ブチレングリコール溶液1500mLを加え、室温で抽出を行い濾過した。得られた抽出液を乾燥し、リンゴ抽出物(4g)を得た。
【0073】
〔製造例14〕ローヤルゼリー抽出物の製造
ヨーロッパミツバチの咽頭部からの分泌物100gに50容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ローヤルゼリー抽出物(14g)を得た。
【0074】
〔製造例15〕ユキノシタ抽出物の製造
ユキノシタの全草の乾燥物100gに80容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ユキノシタ抽出物(12g)を得た。
【0075】
〔試験例〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物について、下記の方法により毛乳頭細胞増殖促進作用の試験を実施した。
【0076】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC,男性頭頂部由来)を、1%FCS及び増殖添加剤を含有する毛乳頭細胞用増殖培地(PCGM,東洋紡社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS(Fetal Bovine Serum)含有DMEM(Dulbecco’s modified minimal essential medium)を用いて1.0×104cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当り200μLずつ播種し、3日間培養した。
【0077】
培養後、培地を除去し、無血清DMEMに溶解した被験試料溶液(試料濃度は下記表1及び表2を参照)200μLを各ウェル添加し、更に4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の無血清DMEMを用いて同様に培養した。
【0078】
毛乳頭細胞増殖作用はMTTアッセイを用いて測定した。具体的には、培養終了後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLで無血清のDMEMに溶解したMTT((3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyltetrazolium Bromide、同仁化学研究所製)200μLを各ウェルに添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2-プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。そして、下記数式に従い毛乳頭細胞増殖促進率を算出した。
【0079】
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=(A/B)×100
式中の「A」は、被験試料を添加時のブルーホルマザン生成量を表し、「B」は、被験試料無添加時のブルーホルマザン生成量を表す。
【0080】
上記試験の結果を表1及び表2に示す。なお、上記式において、被験試料無添加の毛乳頭細胞増殖促進率は100%となる。
【0081】
【0082】
【0083】
表1に示すように、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物は、高い毛乳頭細胞増殖促進率を示した。この結果から、ショウガ抽出物、スターフルーツ抽出物、ワレモコウ抽出物、アカブドウ抽出物、アセンヤク抽出物、ガイヨウ抽出物、シナノキ抽出物、真珠タンパク質加水分解物、甜茶抽出物、冬虫夏草抽出物、トルメンチラ抽出物、プルーン抽出物、ペパーミント抽出物、リンゴ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、及びユキノシタ抽出物は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有することが確認された。